2020年1月1日水曜日

売買チェック

*ブログの次回更新は4月。

■買い
・eBaseとマークラインズ
買った理由:NISAを使ってなかったから。両社ともビジネスモデルがそこそこ強く、時価総額が300億円以下だったから。割安感はなく、買うタイミングも中途半端だったが、長期(5年)で考えれば2倍は目指せると思った。今後さらに詳しく調べてみて、基本シナリオ(後述)どおりにいきそうにないと思ったら売却する。

■売り
・シンクロフード。1割売却。損益-29%。
業績が頭打ちだと思ったから。当初は株価が600円になったら全て売るつもりだったが、足下では投資回収期に入っており、地合い的にもそれほど問題なさそうなので、ゆっくりと売却していく。

チャート的には25日線と75日線でゴールデンクロスを形成し、200日線も越えてきたので上がりそう。一方で、週足の一目均衡表では売り雲にぶつかっており、累積売買高的にも600円あたりに「壁」があるので上がりにくそうでもある。ファンダメンタルズ的にも600円あたりが上限になりそう。もしここを越えれば次の「壁」がある800円くらいまではいきそう。

<1年チャート>
<3年チャート>

持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
この会社を3年くらいみているが勢いが全く落ちない。人材がパワスルすぎる。こういう会社の”オーナー”になれる株式制度はとてもよいものだと思った。今後3年の予想売上高成長率は年率35%程度。2020年の予想時価総額は1050~1700億円(株価4800~7600円)。2030年の予想時価総額は1兆円。

■シンクロ・フード
基本シナリオ:市場独占型プラットフォーマーではないので利益成長は厳しそう
今期と来期の売上高は中期計画より下振れしそうだが、利益の方はそこそこ堅調に推移しそう。ゆっくりと売却していく。今後3年の予想売上高成長率は年率5~15%。営業利益成長率は年率-5~5%。2020年の予想平均株価は400~600円。

業績に最もインパクトのある求人広告掲載数を記録していく。関東 2168(2057)
関西 694(634)  東海 461(339)  九州 99(100)  北海道・東北 69(92) 総計 3491(3222)
市場独占型の求人プラットフォーマー・インディードの掲載数も記録していく。東京都の飲食店 103391(70287) 大阪府の飲食店 42610(26955)
*( )内は前年同月

■ペプチドリーム
基本シナリオ:ペプチド創薬で最強のプラットフォーマーに
11/27のIRにペプドリが2015年から提携(2018年にライセンス提供)する米メルクが6つのプログラムすべてでヒット化合物を見つけたとあった。これは空売り機関のマディ・ウォーターズがいうような「業界平均以下」のスピードなのだろうか。素人目にはそうは見えないが・・。今後3年の売上高成長率は年率20%程度。2020年の予想時価総額は6000~9000億円(株価4800~7200円)。2030年の予想利益は、売上高成長率が年率20%なら300億円、年率30%なら700億円くらい。2030年の予想時価総額は2兆~5兆円。

■朝日ネット
基本シナリオ:ストックビジネスで地味に成長&株主還元
今後は法人向けが成長の牽引役になりそうだが、やや力強さにかけそうでもある。とりあえず最高益更新モードに入ったので目標株価750円まではのんびり待っていようと思う。今後3年の予想売上高成長率は年率6%程度でEPS成長率は年率15%程度。2020年の予想平均株価は700円(変動率±20%)。

■厳選ジャパン(投資信託)
基本シナリオ:ビッグチェンジ銘柄投資でテンバガー達成
優良銘柄群を調べていたら、思っていた以上に強そうな会社がいつくか見つかった。そろそろ独り立ちできそうになってきたので、頃合いを見てこの投信も売却していこうかと思い始めた。ただこの投信を2年間保有して収益は手数料込みで20%超あり、基本シナリオも崩れてないので、焦らずに考えていく。2020年の予想基準価額は12000円(変動率20%)。

■パーク24
基本シナリオ:最強のカーシェア・プラットフォーマーに。海外の「空港」駐車場事業は効率化しにくいので期待薄。
本決算ではカーシェア事業が好調で会員数は130万人、営業利益率は20%を突破。今期は利益率を25%程度まで伸ばせそうだという。12/1の日経には「18年のシェアリング関連は車市場全体の1%だったが、30年には24%まで増える」みたいなことが書いてあったので、長期的な見通しも悪くない。ただ株価はもうしばらく上がりにくそう。2600~3000円あたりの売り圧力が強く、ここを越えるには海外事業の黒字転換が必用かもしれない。今後3年の売上高成長率は年率5%で利益成長率は8%程度。2020年の予想平均株価は2600円(変動率20%)。2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいになりそう。

■eBase
基本シナリオ:最強の商品情報管理プラットフォームに
この会社は以前インフォマートに”ふっかけ”たことがあったので、あまり良い印象がなかったが、調べてみるとかなり手堅い商売をしていることがわかった。手がける事業は商品データを管理するプラットフォームで食品業界ではすでに標準のデータベースプラットフォームになっている。現在は日用雑貨、薬局用医薬品、家電、住宅建材などの領域にも進出しており、そこでも業界標準になりそうな雰囲気がある。今後は商品データとPOSデータを掛け合わせて売れ筋データなどを掘り起こし、それを販売する商売も始めるという。この会社の問題点はストック収益が半分くらいしかないこと。残りの半分はプラットフォームシステムの販売やシステム開発の請負によるものなので、景気後退期には業績が下振れしやすくなる。2030年の予想利益は現在の3~4倍くらいになりそう。チャート上の底値は1000円くらいか。

■マークラインズ
基本シナリオ:最強の自動車情報プラットフォームに
グローバルで企業向けの自動車情報プラットフォームを展開している。マークラインズ曰く競合するサイトは他にないという。現在、自動車の動力源はガソリン、EV、FCV、ハイブリッドなど多様化しており、自動車業界には自動運転やIOTなどで異業種から続々と参入してきているので潜在顧客は拡大している。現在の売上高比率は国内が55%と多いが、海外比率は年々高まってきており、自動車生産の9割は海外で行われているので、今後も海外比率は高まっていくという。この会社の問題点は自動車産業が景気後退の影響を受けやすいこと。景気後退期に入れば投資が止まる可能性が高くなる。それと本当にプラットフォーム(マッチングサイト)なのかという問題もある。マークラインズのサイトはただの情報集約サイトにしか見えなくもない。2030年の予想利益は現在の3~4倍くらいになりそう。チャート上の底値は1800円くらいか。

■今後の計画
2020年は世界経済の持ち直しや世界的な金融緩和・財政出動などで株式市場は穏やかに上昇しそう。ただ世界中で債務が積み上がっており、雇用も締まってきているので力強い景気拡大は期待しにくい。とりあえず今回の上昇局面では売りたい銘柄をポツポツ売っていこうと思う。

日経レバETFは日経平均が24500~25000円になったら売る。
シンクロフードは毎月1割ずつ売却していく。800円になったら全て売却する。
朝日ネットは750円になったら売る。
パーク24は3000円になったら売るかも。
厳選ジャパンは基準価額が13000円、もしくは日経平均が26000円になったら売るかも。
弁護士ドットコム、ペプチドリームは長期で保有する。

1ドルが110円になったらドルを少し売る。
日経平均が26000円になったら日経インバースETFを少し買う。
市場が大幅調整したら有望株を買う。

今後は中長期的に「日本円」が強そうなので、基本的には現金ポジションを増やす方向でいく。

■2019年の損益
+36%。
今年は損切りばかりしていたので大損してるように感じていたが、意外にも前年より増えていた。これは2018年の暮れに市場が暴落していたことも影響しているとは思うが、ポートフォリオの過半を占める弁護士ドットコムの躍進によるところが大きいように思う。去年はこの会社に救われたが今年もまた救われた。

2020年の損益予想は±30%。地合いと弁護士ドットコム次第の展開になりそう。場合によっては大きく資産が落ち込むこともありそうだが、長期目線で冷静に対処していきたい。今年も損益はあまり気にせず知識をつけることに専念していこうと思う。

有望株チェック

よく調べないで買った株は失敗することが多いので、これからはネチネチと調べてから買うことにする。

*ソフトバンクの”一流”投資家・孫正義氏はウィーワークの創業者と短時間会談しただけで投資を決め、その結果失敗している。このことからも事前によく調べることは大事だと思った。ちなみに孫氏は投資先の選択で「何よりも創業者で判断する」と語っているが、孫氏が投資するウィーワークやウーバーテクノロジーズの創業者はすでに“クビ”にされている。となると、この時点ですでにこれらの投資は失敗したと言えるのかもしれない。

■10倍株候補
<10倍株候補の条件は>
 ・上場4年以内の若い会社
 ・社長が若くやり手
 ・オーナー企業
 ・時価総額300億円以下の小型株
 ・長期的なテーマに合っている
 ・急成長している
 ・(IPOから時間が経過し、株価が右肩下がりになっているチャートが狙い目)

(今のところ候補はなし)

■優良銘柄(株価が急落したときに買いたい銘柄)
<優良銘柄の条件は>
 ・参入障壁が高い
 ・ストック型ビジネスを手がける
 ・時流に乗っている
 →業績が落ちにくく、利益成長を続けやすいビジネスモデル

・エムスリー
基本シナリオ:医療分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
医療分野で独占的なプラットフォームを築いている。事業カテゴリーはMR事業、治験事業、人材採用事業、複数の新規事業、海外事業の5つあり、それらすべてが順調に伸びている。国内のMR事業だけでもあと5倍の成長余地があり、他の事業もまだまだこれからといった感じ。クラウドカルテ事業は急速に伸びているが、この事業はMR事業や治験事業との相乗効果も見込める。AIプロジェクトも増加傾向で現在19本。2030年の予想利益は現在の4~6倍くらいになりそう。チャート上の底値(買い場)は2300円くらいか。

・リクルート
基本シナリオ:多数の独占型プラットフォームで安定成長&株主還元
元祖プラットフォーマーであるリクルートは、人材、住宅、飲食、美容分野などで多数の市場独占型(寡占型)プラットフォームを構築している。中でも最も勢いのあるのが人材マッチングプラットフォームのインディードで、19年3月期の売上高成長率は50%に達する。この分野の現在の市場規模は16兆円超あり、インディードの売上はまだ320億円に過ぎず成長余地は大きい。リクルートは2030年までにこの分野で世界トップになることを目指している。ただ会社全体で見た場合の売上高成長率は年率6%程度なので急成長企業とはいえない。人材関連事業が売上高の7割を占めるているので景気後退の影響を受けやすいという問題もある。2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいになりそう。チャート上の底値は3300円くらいか。

・カカクコム
基本シナリオ:多数の独占型プラットフォームで安定成長&株主還元
価格比較の分野で独占的なポジションを築いている。「価格コム」の成長は頭打ちだが、「食べログ」や新規メディア事業の「高速バス比較ナビ」「価格コム保険」「ガイエ(映画等のプロモーション事業)」などが今後の成長を牽引していきそう。2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいになりそう。チャート上の底値は2000円くらいか。

・GMOペイメントゲートウェイ
基本シナリオ:最強の電子決済代行プラットフォームに
電子決済代行で最も勢いのある会社。現在の日本のBtoCのEC化率は7%程度(決済処理金額6兆円)だが、これが2025年には15%(同18兆円)まで拡大するという。GMOPG社はこれまで市場成長率を7%程上回る速度で成長しているので、今後も市場拡大ペース以上の成長が期待できる。BtoC以上に大きな市場であるBtoB市場でも同様の事業をしているので成長余地はまだまだありそう。売上高成長率目標は年率25%を基準にしており、今期は14%と若干低下するが、来期以降は巡航速度に戻せるという。過去の実績を見ると言ったことはすべて着実に実行してきてきる会社なので、今回も言った通りの展開になりそう。2030年の予想利益は現在の4倍くらいになりそう。チャート上の底値は6800円くらいか。

・インフォマート
基本シナリオ:企業間取引の基幹プラットフォームに
現在インフォーマートのプラットフォームを利用する会社は38万社あり、その大半は請求書プラットフォームを利用している。請求書事業の売上高比率は全体の2割程度で赤字が続いているが、この事業の成長余地は少なくともあと3倍はあり、そこで培ったネットワークや請求書データを活かして新規事業も興していくという。問題はこれら新規事業の方向性がまだ明確に定まっていないところ。2030年の予想利益は現在の3~4倍くらいになりそう。チャート上の底値は750円くらいか。

・鎌倉新書
基本シナリオ:終活領域をITで変革し最強のプラットフォーマーに
葬儀分野のカテゴリーキラー。元々は葬儀関連の出版物を発行していた会社で、そこで構築したネットワークが最大の強み。日本では今後さらに高齢化が進んでいくので事業環境は良い。マッチングさせるに商品には墓、葬儀、仏壇、相続関連などがあり、9月からはセールスフォースを導入し、各サービスのクロスセルを増大させていくという。市場シェアはまだ3%以下なので成長余地は大きい。2030年の予想利益は現在の7~10倍くらいになりそう。チャート上の底値は1500円くらいか。

・ベネフィット・ワン。大企業向けの福利厚生代行サービスなど優良ストックビジネスを手がける。問題は決算説明資料を読んでも内容をすんなり理解できないこと。気が向いたらもう少し調べてみる。2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいになりそう。チャート上の底値は1800円くらいか。

・リログループ。福利厚生代行事業や借り上げ社宅管理事業、ホテル管理事業などのストック型事業や、海外赴任支援事業などを手がける。2023年までの中期経営計画はやや強気に見えるが、ここも有言実行タイプの会社のようなのでクリアできそう。2030年の予想利益は現在の3倍くらいになりそう。チャート上の底値は2500円くらいか。

・メニコン。コンタクトレンズのサブスク(定期購入)サービスを手がける。製品ラインアップの拡充や販売地域の拡大によりサブスク会員は順調に増えており、生産効率化が成功し利益率も向上している(第2四半期に利益を上方修正)。海外売上高は全体の1割程度で、こちらもそこそこ順調に伸びている。今後はオルソケアソロジーなどの新規事業も伸びていきそう。問題は売上高成長率(年率6%)と参入障壁がやや低いこと。2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいになりそう。チャート上の底値は3500円くらいか。
*オルソケアソロジーとは特殊なコンタクトレンズをはめて近視を矯正する治療法。中国ではすでに医師主導の治療が始まっているが、日本ではまだ公式には認められていない。メニコンは中国にそれ用のレンズを供給している。現在、スマホの普及などにより世界的に近視人口は増加しているので、近い将来この治療法が脚光を浴びる可能性もある。

■景気敏感株
景気敏感株は景気拡大期のパフォーマンスが非常に良いのでこれもチェックしていく。

<仕込むタイミングは>
・IMFの世界経済成長率予測が底打ち
・OECDの景気先行指数や、中国やグローバルの製造業PMIが底打ち
・台湾の電子・情報通信機器の輸出受注や半導体指数が底打ち

<半導体株>
*半導体株はデジタル革命の影の主役なので長期的な上昇トレンドが期待できる。
・信越化学工業、SUMCO、ディスコ、東京エレクトロン、サムスン、マイクロン、インテル・・。

<景気敏感株>
・日進工具、コンテック・・。

■観察中の銘柄
・チームスピリット
基本シナリオ:TeamSpiritで業務効率化、働き方の分析で生産性改善
TeamSpiritに含まれるクラウドソフトで最も他社と差が出そうなのが「経費精算」ソフトになるが、ラクスや米コンカーなど経費精算に特化して伸びている会社もあり、これらのソフトが企業に採用された場合はTeamSpiritが採用される可能性はほぼなくなるので、これらのソフトとの差を埋めていけるかが長期的な勝敗の分かれ目になりそう。ここでカギになるのがチームスピリットの開発力になるが、経費精算に特化している会社よりも従業員数が少なく、また社風にも若干問題がありそうなので、追いつくのはやや厳しそう。20年4月からはデータ改ざん不可能なクラウドシステムを構築すればキャッシュレス決済でも紙の領収書無しで税務申告ができるようになるようだが、TeamSpiritがそれに対応できるようになるのはいつになるのか正直見当もつかない(コンカーなどはすでにSuicaなどと共同研究を始めている)。こう考えていくと、チームスピリットが長期で力強く成長していくのは難しいのかもしれない。

短期の見通しでも少し不透明感が出てきた。12/5の日経の日経に「20年のソフトウエア投資の伸びが3年ぶりの低水準になるリスクがある。(略)セールスフォースも成長が鈍化する可能性がある」とあった。これは米国の話だが、日本でも同様な展開になると仮定すると、2020年のチームスピリットの業績は若干下振れるのかもしれない。今後3年の予想売上高成長率は年率25%程度。2020年の予想株価は2200円(変動率±25%)。

・ハウスドゥ
基本シナリオ:国内最大の不動産サービス・プラットフォームで課題解決
12/2の日経にリバースモーゲージは担保割れリスクが少なからずあるとあった。12/21の日経には、ハウスドゥは銀行が断ったリバースモーゲージ案件を引き受けるとあった。この流れでいくと、ハウスドゥのリーバースモーゲージ保証事業はそこそこリスクが高いのかもしれない。リーバースモーゲージ大国の米国でさえ民間事業者が保証事業からすべて撤退しているので、長期的にはハウスドゥも厳しくなっていくのかもしれない。今後3年の予想売上高成長率は年率13%程度。2020年の予想株価は1750円(変動率±20%)。

・パークシャテクノロジー
基本シナリオ:先端の深層学習知見を産業に落とし込んで業績拡大
12/23の日経に「勢い増すAIスタートアップ「トップ100社」」とあった。これは世界のAIスタートアップ3000社から選んだものらしいが、AI領域のレッドオーシャン化が着実に進んでいることがわかった。12/29の日経ではパークシャとそっくりな会社・アリスマーが見つかった。パークシャは果たして10年後に存在しているのだろうかと思った。投資回収期は2023年頃からになるので、とりあえずそれまではしばらく様子見。この会社の現在の妥当な企業価値は参入障壁の低さやAI人材の多さなどを考慮すると1000億円(株価3300円)くらいになりそう。

・エデュラボ
基本シナリオ:並のエドテック企業に
12/24の日経にエデュラボが顔認証でオンライン試験を始めるとあった。この試験は企業向けの英語能力を測定するもので、場所や時間を選ばずに安価に受験できるという。エデュラボはこういったハイテク・テスト事業に強みがあるように思うのだが、メディア・プラットフォーム事業に最も注力しているのが気がかり。AIによる文字の自動入力(OCR)に関しても不透明感が増しつつある。12/25にマザーズに上場したAI insideは文字を読み取るOCRソフトを販売しており、他にもCogent Labsなど同様の事業を手がける企業が多数見つかりつつある。長期的な見通しが芳しくなくなってきたので観察リストから除外する。今後3年の予想売上高成長率は15%程度、営業利益成長率は5~10%程度。2020年の予想株価は3500~5500円。

・メディアドゥ
基本シナリオ:最強の電子書籍取次プラットフォーマーに
LINEマンガは長期で生き残れそうな雰囲気になってきたが、電子書店の淘汰・集約問題とブロックチェーン・プロジェクトが「時限爆弾」になりそうなので、観察リストから除外する。今後3年の予想売上高成長率は年率20%、営業利益成長率は年率25%。2020年の予想平均株価は4800円(変動率±25%)。

■気になっている銘柄
・ブシロード
新日本プロレスや「バンドリ!」などのキャラクタービジネスを手がける会社。プロレス事業はタカラトミーを立て直したハロルド・ジョージ・メイ氏が社長に就任したのでまだまだ伸びそう。バンドリ!もアプリ売上ランキングでは好調のよう。今後は他社のキャラクターコンテンツのプロモーションを請け負うサービスも始めるという。株価が調整することがあれば調べたい。

月1社ずつ調べていく。今後はeBase、マークラインズ、ブシロード、2016年のIPOあたりを調べていく。

マクロ系金融資産チェック

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米長期金利 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:1.3%~2.3%の間で推移

長期金利に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・経済成長率+インフレ率↓
米長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になるが、今後は両者とも低下傾向になる。米国の2018年の経済成長率は2.9%、2019年は(予)2.4%、2020年は(予)2.1%で、インフレ率は2018年が2.4%、2019年は(予)1.82%、2020年は(予)2.27%になる。貿易戦争が激化した場合は、経済成長率は下振れし、物価には上昇圧力がかかる。
*数値はIMF予想

・金融政策↑
インフレ率が2%を下回り始めているので、FRBは7月に金融緩和に転じた。現在の政策金利は1.50~1.75%だが、政策金利の先行指標である米2年物国債利回りは1.58%なので、利下げはいったん打ち止めになりそう。今回の利下げは、景気後退に陥ってからの利下げではなく、将来の景気減速に備えた「予防的な利下げ」なので、景気浮揚効果により長期金利には上昇圧力がかかる。

FRBは10月から短期金融市場の資金不足(短期金利の急上昇)を解消するため、短期国債を月6兆5千億円のペースで購入していくことに決めた。これは長期国債などの資産を購入する量的緩和とは異なるが、市場に出回る資金量が増えるため、長期金利にも若干の低下圧力がかかる(景気浮揚効果による上昇圧力もかかる)。

・リスクオン、オフ↑
米中貿易戦争の休戦と金融緩和によりリスクオンに。

・財政赤字の拡大↑
米政府は財政支出を拡大しており、今後も年金や医療、福祉などの社会保障費が税収の伸びを上回って増加していきそうなので、長期的に財政赤字の拡大は続きそう。2018年の米国の財政赤字額は100兆円を超えており、この水準は当面続く見込み。

・米国債の人気低下↑
米10年国債の利回りは先進国の中では相対的に高いので海外から買われやすいが、足下では為替ヘッジコスト(2.2%?)が米長期金利(1.87%)を上回っているので、海外からの米国債の購入は減少しつつある。双子の赤字(貿易赤字と財政赤字)の拡大も人気低下の要因になる。
*ヘッジコストとは外貨の短期金利と運用国通貨の短期金利の差から生じるコスト

・資金需要の低下↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要がそれほど多くない。少子高齢化で住宅ローンなどの借り入れも減少している。

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みで潜在成長率が長期的に低下傾向にある。

・トランプ大統領の介入↓
低金利好きのトランプ大統領はFRBへの口先介入のみならず、FRBへ緩和派の人間を送り込むなどして金融緩和圧力をかけ続けている。

投機筋の持ち高
足下では売り越しが横ばい傾向なので、投機筋は長期金利が横ばいで推移するとみている。

・チャート↑
いったん底打ち。上値は2.3%あたりになりそう。


■WTI原油 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:45ドル~70ドルの間で推移

原油価格に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・産油国の採算ライン→
サウジが財政均衡に必要な水準は1バレル80ドル、アラブ首長国連邦は60ドル、ロシアは45ドル、米企業の採算ラインは45ドルになる。

・トランプ大統領の介入↓
トランプ大統領は低インフレ(低金利)と株高を切望しているので、原油価格の上がりにくい政策をとる。トランプ大統領の介入ラインはおそらく65ドルあたりになる。

・需要↑
原油の需要予測はIMFの世界経済成長率予想などを基につくられるが、2020年のIMFの予想経済成長率は2019年の3.0%から3.4%に上昇するので需要は持ち直しそう。

中長期的には景気後退や温暖化対策(再生エネルギーへのシフト)、脱プラスチック運動など需要を抑制する要因もあるが、人口増や世界経済の成長に伴い原油消費量は増加基調になる。IEA(国際エネルギー機関)によると石油需要は2040年まで拡大を続ける見通し。
*OPECは2040年の石油需要を現在の12%増の日量1億1060万バレルと見積もっている。
*ただ今後は地球温暖化防止運動が活発化していきそうなので、IEAやOPECのシナリオが崩れる可能性も少なからずある。

・供給→
イランやベネズエラの供給が減り、OPECとロシアが協調減産してるが、OPEC加盟国のイラクやナイジェリアなど順守率が低い国も多く、OPEC非加盟国の米国などの生産は伸び続けているので供給はややだぶつき気味。ただ米国のシェールオイルの優良鉱区はすべて開発し尽くされてしまっているようなので徐々に需給は締まっていきそう。

長期的には原油価格の停滞や脱化石燃料への投資家圧力などにより、新規の油田開発が停滞気味なので、供給不足に陥る可能性がある。
*現在ESG(環境、社会、企業統治)の観点を考慮しない企業は評価しないという流れになってきている。地球温暖化につながる化石燃料は環境リスクが高く、2019年3月には世界最大の政府系ファンド・ノルウェー政府年金基金が石油・ガス関連株の一部を投資先から外すという方針を示している。

・産油国で不測の事態が起こる↑
米国は2019年1月にベネズエラ国営石油会社への制裁を決定した。ベネズエラの産油量は投資不足などもあり著しく低下している。

リビアで内戦が激化している。生産設備の被害や輸送の寸断で一気に生産量が落ちる可能性がある。

米国は2019年5月にイラン産原油を全面禁輸することに決めた。イランは対抗措置として原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡(世界の石油タンカーの2割が通過)を閉鎖すると警告していたが、5月に入りさっそく通過するタンカーなどへの攻撃を開始。その後もゴタゴタが続いており、9月にはサウジのコアな石油処理施設が親イラン武装組織フーシから大規模な攻撃を受けた。今後しばらくは原油価格にリスクプレミアムが上乗せされそう。

・リスクオン、オフ→
ほぼ中立。地合いはリスクオンに傾きつつあるが、中東情勢の緊迫がリスクオフ要因になる。
*原油は株式と同じリスク資産になる。

投機筋の持ち高
買い越しポジションが増加傾向。投機筋は上がるとみている。

・為替↑
原油はドル建てのためドル高になると原油価格に低下圧力がかかるが、ドルはほぼ頭打ちの状態なので、今後は原油価格に徐々に上昇圧力が加わってきそう。ドル安になると新興国の輸入が増えやすくなるのでこれもまた上昇圧力になる。
(WTI原油価格連動型上場投信においては、ドル安(円高)が進むと基準価額が下がる)

・船舶の燃料規制↑
2020年から船舶燃料油の硫黄分濃度規制がはじまる。硫黄分の少ないWTI原油や北海ブレントには5ドル程度の価格上昇圧力がかかると言われている。

・チャート↑
中長期の上昇トレンドに入りそう。


■ドル円 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:105円~110円の間で推移

為替に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・日米の金融政策↓(↓は円高方向)
ドル円レートの基準値は購買力平価になるが、今は購買力平価(95円)から円安方向に振れている。円安方向に振れている最大の要因は日銀の金融緩和になるが、その緩和が限界に近づきつつある。一方で米国は金融緩和余地があり、足下では金融緩和に転じているので、徐々に円高圧力が高まりそう。

ただドル円相場と相関が高い日米長期金利差は、米国の「予防的利下げ」による景気浮揚効果により米長期金利が上昇し、拡大している(円安要因)。

・リスクオン、オフ↑
米中貿易戦争がいったん停戦し、金融緩和も再開されたのでリスクオンに。

*リスクオフになった場合のドル円の基本的な動きついて。まず条件反射的に円が買われる。そこからさらに不透明感が強まるとキャリー取引の巻き戻し(円の買い戻し)が起こる。本格的なリスクオフまで発展すると対外資産の引き上げ(投資撤退)と、その思惑による円買いが起こる。
 *キャリー取引とは金利差を狙った取引で、市場環境が落ち着くと低利通貨を売り高利通貨を買って金利差で収益を得る取引が盛んになる。ただ足下では円以外のユーロやドルも低金利通貨になりつつあるので、キャリー取引は減少しつつある。
 *日本が持つ対外純資産は世界最大の340兆円になるが、そのうち資産の引き上げが起こりやすい証券投資の割合は3割(100兆円)程度になる。

・ドル需給→
米長期金利は2018年10月の3.26%から2019年9月に1.42%まで低下し、日米金利差は縮小していたが、にもかかわらず円高はそれほど進まなかった。これはドル資金に対する需要の引き締まりによって起きていた可能性が高い。ドル需要が強かった要因は主に5つ。まず1つ目が金融規制(流動性規制、レバレッジ比率規制、自己勘定取引規制、MMF規制)の強化により米国勢によるドルの供給が絞られたこと。2つ目が2017年10月からFRBが保有資産を縮小し、民間金融機関の準備預金が減少したこと。3つ目が景気減速懸念が投資家のドル資金の出し渋りを招いたこと。4つ目が相対的に高金利を維持しているドル建て資産への証券投資需要が高かったこと。5つ目が米国で新規国債を巨額発行していること(これは基本的にはドル安要因になるが、今回はドル高要因になった)。

ドル不足を受けてFRBは9月に保有資産の拡大に転じ、ドルを大量供給してドル不足を緩和している。年間でドル需要が最も強くなるのは年末で、それ以降は徐々に需給が緩んでいくされる。

・米経済の強さ↑
資金は経済の強い国へ流れ、その国の株式や不動産などの資産が買われるが、米経済は相対的に強いのでドル資産が買われやすい。米経済にも減速感は漂い始めたが、デジタル革命の牽引役は米国なので、今後も長期的にドル資産が買われそう。

・日本企業の対外直接投資↑
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業の対外直接投資は今後も増えていきそう。日本企業の海外M&Aに1年半先行するといわれる世界製造業PMI(購買担当者景気指数)は2017年12月にピークアウトしているが、2019年1月~6月の対外直接投資は13兆6千億円と高水準で推移しており、2019年は過去最高を更新する見込み。なお、米中貿易戦争による貿易環境の不透明感は対外投資減少の要因になる。
*対外直接投資額のうち外貨建て(円売り)は半分程度になる。

・国内投資家の対外証券投資↑
日本の債券投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、為替差損回避(ヘッジ)付きでも高い運用利回りが見込める海外債権などを買っている。国内の超低金利は当面続きそうなので、今後も対外証券を積み増していく可能性が高い。
*足下では世界的な金利低下により外債の利回りも下がっているので外債購入は鈍りつつある。

日本の対外証券投資は年によってばらつきがあるが、平均すると年10兆円程度の買い越しになる。今後は異次元緩和前の比較的高い利回りで購入した国内債権の償還が始まるが、戻ってきたお金は国内債への再投資ではなく、外債に回る可能性が高い。2019年の償還額は47兆円になる。
*2019年1月~9月の海外証券投資額は18兆円超。
*国内勢が外債を買うときは、円を売って外貨を買い、その外貨で外債を買うわけだが、円を買う側の海外勢はその円で日本国債を買うことが多い。海外勢は1月~8月までの間に12兆円の日本国債を買っている。これは円高圧力になる。
*対外証券投資のうち外貨建て(円売り)は7割程度になる。

・経常収支↑
まずは貿易収支について
中期的には、輸入額の4分の1(20兆円)を占める原油・天然ガス価格がやや高止まりしているので貿易収支が徐々に悪化していきそう。長期的にも、スマホや医薬品などの輸入が増加傾向で、生産の海外移転などにより輸出の伸びが鈍化傾向なので貿易収支は悪化していきそう。2018年の貿易黒字額は1兆円になる。
*貿易ではドル決済が圧倒的に多いため、実需では年間7兆円くらいのドル不足が発生すると言われている(7兆円くらいの円売り圧力が発生する)。

(貿易収支を含む)経常収支は20兆円程度の黒字を維持しているが、この黒字の大半は過去に行った投資のリターンである所得収支が占めている。所得収支の黒字は貿易黒字と違い、半分程度が円に換えず現地で再投資されるため円買いフローは半分(10兆円)程度しか発生しない。

・投機筋の持ち高→(「円 投機的ネットポジション」で検索)
売り持ちが増加傾向。投機筋は円安が進むとみている。
*円を買い持ちした場合、スワップポイント(金利差収入)がマイナスになるので、買い持ちポジションは短命で終わることが多い。

購買力平価
ドル円の購買力平価は95円程度なので、円の下限は75円、上限は115円程度になる。米国の方が慢性的にインフレ率が高いので、購買力平価は長期的な円高傾向にあるが、米国のインフレ率は年々低下して日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。

・米財政赤字の拡大↓
米国の財政赤字は年100兆円を超え始めており、この水準は今後もしばらく続きそう。近い将来、米国債を消化するために大量のドルが発行される可能性が高い。

・米経常赤字の拡大↓
米国では経常赤字が10年ぶりの水準まで悪化しており、貿易赤字を解消するため、または不足する資金を海外から調達するために、プラザ合意のようなドル高是正策を実施する可能性がある。

・日本の財政赤字の拡大↑
日本の累積財政赤字はGDP比200%程度あり、今後も社会保障費の増大により財政赤字は拡大していく可能性が高いので、円離れがすすみそう。日本も米国同様、日本国債を消化するために大量の円が発行される可能性が高い。

・チャート→
大きな三角持ち合いを形成している。中長期で大きく下振れしそう。


■日経平均 (保有資産:日経レバETF)
今後1年の予想レンジ:21000~26000円で推移
日経平均に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・需給↑
日銀が日本株を買いまくっているので日本株は下がりにくい。日銀の買越額は年間6兆円規模になるが、他の投資主体の売り玉はつきつつあるので(海外投資家のアベノミクス後の買越額は8兆円まで縮小)、残りの売り玉はすべて日銀が吸収してくれそう。

 <2019年の主な投資主体の予想売買動向>
 日本銀行、金融政策により3~6兆円の買い越し。現状は4兆3千億円の買い越し。
 事業法人、自社株買いにより3~4兆円の買い越し。現状は4兆2千億円の買い越し。
 海外投資家、世界景気後退懸念により2~4兆円の売り越し。現状は8千億円の売り越し。
 個人投資家、相続に伴う換金売りで1~3兆円の売り越し。現状は4兆2千億円の売り越し。

・金融政策↑
金融緩和で市場に資金が供給されると資産価格(株価)は押し上げられるが、今は金余りの状態でさらに金融緩和をしているので株価は上がりやすい。11/30の日経によると「21年末までに世界の中銀による資産買い入れ額は増加し、20年前半まで、世界の政策金利の平均は低下し、過去10年でもっとも緩和的だった状態に戻る」とのこと。

・EPS(1株利益)↑
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益)× PER(人気度)で決まるが、2018年のEPSは-3%、2019年も(予)-3%、2020年は(予)5%になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因についても見ていく。
・為替↓
今後為替は中長期的に円高に振れていきそうなので、海外で6割を稼ぐ日本企業の利益は下振れしていきそう。

・海外景気↑
日本企業は海外で6割を稼いでいるので海外景気の影響を大きく受けるが、2020年は世界景気がやや持ち直すので日本企業はその恩恵を受けられそう。

・失業率↓
失業率が最低水準まで低下すると賃金が上昇して企業収益が圧迫され、労働量力不足で成長が頭打ちになるが、現在の失業率は最低水準(2.4%)にある。

・減価償却費や資源価格(原材料費)↓
景気拡大期の終盤は減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇して利益が圧迫される。

・金融政策→
景気拡大期の終盤は上昇した金利により企業の利益や資金調達環境は悪化するが、今回は金融緩和が続いているのでほとんど影響なさそう。
ーーーーー

・PER(人気度、リスク選好度)→
日経平均のPERは基本的に11~16くらいの間で推移するが、現在のPERは14.30。リスクオンや世界経済の回復、来期EPSの不透明感などを考慮すると、このくらいの水準が妥当なのかもしれない。

・利回り↑
日本株式の益回りは8%超で配当利回りは2%超と、日本国債の利回り0%より高いので、株式に資金が流れやすい。

投機筋の持ち高
売り越しはほぼ横ばい。投機筋は今後日本株が横ばいで推移するとみている。

裁定売り残高の方は、9/6の2兆円から7300億円まで減少している。一方で買い残高は8700億円まで増えている。投機筋は日本株が若干上がるとみている。
*裁定残高について。平時は売り残高よりも買い残高が多いのが普通。裁定買い残高が3000~6000億円まで減少すると「売られすぎ」、3.5兆~4兆まで増加すると「買われすぎ」の水準になる。

・チャート↑
上昇トレンド。ただし24000円台を突破できなければ不吉な三尊天井(トリプルトップ)を形成する。

市場環境チェック

株式市場への影響が大きい企業業績、金利、金融政策などをチェックしていく。

■ファンダメンタルズ
<EPS成長率>
・世界株式の2019年のEPS増加率は8%、2020年は10%?。
・米国株式の2019年のEPS増加率は3%、2020年は10%。
・欧州株式の2019年のEPS増加率は3%、2020年は5%?。
・日本株式の2019年のEPS増加率は-3%、2020年は5%?。
参照:12/22日経12/31日経など
→問題なし

<経済成長率>
・世界の2019年の成長率は3.0%、2020年は3.4%、2021年は3.0%?。
・米国の2019年の成長率は2.4%、2020年は2.1%、2021年は2.0%?。
・中国の2019年の成長率は6.1%、2020年は5.8%、2021年は5.5%?。
・ユーロ圏の2019年の成長率は1.3%、2020年は1.5%?、2021年は1.3%?。
・日本の2019年の成長率は0.9%、2019年は0.5%、2021年は0.5%?。
*数値はIMF予想。参照:10/16日経など
*IMFは5四半期期連続で下方修正している。
*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただしデジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほどには不況感が強まらない可能性もある。経済成長率を測る指標の一つであるGDPは、1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されているサービスの大半は公共財に近い性質があるため金銭的な数値には反映されにくい。今は若い人ほど幸福度が高いという調査結果が出ているが、これはデジタルサービスの恩恵を最も受けているためともいわれている。
*仏経済学者のジャン・フーラスティエは今から70年くらい前に「農耕社会、工業社会の後にはサービス社会へ移行するが、そこは経済成長のない世界になる」と言っている。11/27日経

ーーーーー
2017年頃から世界同時成長が起きており、このような状態は通常2,3年続くという。ただしこのような世界同時成長は景気サイクルの終盤に見られる特徴的な現象とも言われている。米ピムコは2019年に世界経済の同時減速が始まると予想している。

世界同時成長は海外で6割を稼ぐ日本企業には追い風になるが、その反面、海外の景気後退期は日本企業にとって強い向かい風になる。このような経済構造に円高効果が加わり、日本株は米国株の1.5倍くらい下落する。
→問題なし

<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2019年度が1.8%、2020年は2.2%、2021年は2.0%?。
・欧州の予想インフレ率は2019年度が1.2%、2020年は1.5%?、2021年は1.3%?。
・日本の予想インフレ率は2019年度が0.9%、2020年は1.3%、2021年は1.0%?。
*数値はIMF予想。参照:世界経済のネタ帳
*インフレ率が上がらないのもデジタル経済の影響が大きい。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば検索やSNSは無料だし、ネット上では価格比較を簡単にできるので超過収益を得にくくなっている。またスマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。他にも複製コストゼロのデジタル商品やシェアリングサービスの普及などもあり、物価はどうしても上がりにくくなっている。『FREE』の著者のクリス・アンダーソンは「モノ中心の経済はインフレ志向になるが、情報中心の経済はデフレ志向になる」と言っている。

ーーーーー
中央銀行の責務の1つは「物価の安定」になるが、中央銀行は経済にとってベストなインフレ率を2%としており、その水準で物価を安定させることを目標にしている。中央銀行が行う金融政策はインフレ率2%を基準に決められており、それより低ければ金融緩和、高ければ金融引き締めを行うことになる。先進国のインフレ率は長期的に低下傾向で、足下では2%を下回りはじめているので、今後長期で金融緩和が続く可能性が高い。
*マクロ環境やデジタル経済の影響を考慮すると、「インフレ率2%」には無理があるように見える。
→問題なし

<金利>
・米国の2年金利は1.58%で10年金利は1.87%。
・日本の2年金利は-0.12%で10年金利は-0.01%。
*米国の2年金利が10年金利を上回ると平均18ヶ月後に景気後退に陥るといわれるが、2019年8月にその2つが逆転した。現在は逆転が解消され金利差は0.29%。
 *ただし今回はFRBが量的緩和で長期国債を大量に買っていて長期金利の水準は元々低かったので従来のパターンはあてはまらないかもしれない。
*実質長期金利(名目長期金利-インフレ率)が-0.13%まで低下しているので、米株には割安感が出ている。
→問題なし

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・日本の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・中国の企業・家計債務残高はGDP比210%まで上昇しており、足下でも微増傾向。日本のバブル期のピークは220%になる。中国の債務拡大ペースはGDP成長率よりも速いので行き詰まるのは時間の問題になる。
・新興国の民間債務残高はGDP比140%で現在も微増傾向。
・過去10年で各国政府は債務を大きく膨らませている。
*GDPは債務返済能力を測る指標になる。
*米企業の債務残高は2011年のGDP比65%から2019年には過去最高の73%まで上昇している。一方で米家計の債務残高は2007年のGDP比97%から76%まで低下している。5/23日経
 *米企業の対GDP債務残高比率は10年移動平均線から3%超乖離しているが、これは直近3回の債務バブルのピーク時とほぼ同じ水準になる。7/19ダイヤモンド
*今は信用力の低い企業の債務が膨張しているが、全体で見ると健全な企業の貯蓄に相殺されている。11/10日経
*今のような低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では低金利が続きやすく、高債務の状態が維持されやすい(債務バブルが破裂しにくい)。
*先進国では超低金利が続いているので債務拡大はまだ続きそう。
*先進国ではレバレッジド・ローンと呼ばれる高リスクの貸し出しが増えている。
*今のように金利が経済成長率を下回っている状態が続くと企業は財務レバレッジを効かすだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にできるので債務が膨張しやすい。政府債務においては、今のように国債金利が名目GDP成長率を下回っている状態だと、多少の財政赤字を続けても債務残高GDP比を一定の水準に維持できる。日本政府の場合は対GDP比で2.5%程度の赤字を続けても債務残高GDP比を一定に維持できる。10/7日経10/8日経
*企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構図になっている。11/10日経
*中国の企業・家計債務は危険水準に達しているが、2018年に習政権は経済の筆頭課題に金融危機封じ込めを据えていたので(2018年中盤から景気重視に転換)、しばらくは心配しなくてもよさそう。
*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業によるものなので、計画に沿って徐々に削減していけそう。
*中国は、可処分所得に対する家計債務比率が日本のバブル期並の120%まで上昇しているので、今後深刻な消費不振に陥る可能性が高い(7/28日経)。ただ8月16日に中国政府が「2019年と2020年の個人の可処分所得を押し上げる政策を実施する」といっているので、当面は大丈夫そう。
*新興国は米国の金融引き締めなどで通貨安・高インフレ・高金利になり、債務圧縮局面に入りつつあったが、米国が金融緩和に転じ、新興国のインフレ率は中銀のターゲット内に収まっているので足下では落ち着いている。
→問題あり

<金融政策>
・米国は7月に金融緩和に転じた。
・欧州も9月に金融緩和に転じた。
・新興国も米金融緩和を受け緩和に転じつつある。
・日本は金融緩和を継続しているが限界に近づきつつある。
*金融緩和を長期で続けていくと、従来ならインフレが過熱して、それが金融緩和の歯止めになっていたが今回はそれがない。金融緩和が長期化した場合のメリットは失業率の低下やデフレ阻止になるが、デメリットは債務の増加や産業の新陳代謝の低下になる。
*金融緩和が長期化すると産業の新陳代謝が進まず(ゾンビ企業が存続する)、潜在成長率がさらに落ちていく。潜在成長率が落ちるとインフレがさらに起こりにくくなる。現在中銀がインフレを起こそうと行っている金融緩和は長期的にはインフレが起こりにくい経済構造を作るという一面もある。
*日本はこのまま金融緩和を続けると、金融仲介機能を持つ銀行の収益が落ち、金融政策が円滑に機能しなくなる恐れがある。日銀の責務には「物価の安定」の他に「市場・金融システムの安定」があるが、長期の金融緩和により金融システムが不安定になりつつある。
*スウェーデン中銀はマイナス金利では家計債務の膨張が止まらないなどの理由で2020年1月に政策金利を0%に引き上げることに決めた(12/20日経)。いよいよ金融緩和の限界が近づいてきたように見える。
*日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
 *MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することはなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によれば、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的には国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないとのこと。10/7の日経によると財政出動をして、長期的な収益率が政府の借入金利を上回るようなものに投資すれば、短期的に需要を押し上げるだけでなく、長期的にも財政状態を改善できるという。このような投資に該当するものには出生率向上策や気候変動への取り組みなどがあるという。ただし、今のような完全雇用の状況では労働力不足でこのような需要喚起策は打てない。
 *MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレなどで負担しなければならない。
  *MMTと日本の金融・財政政策は若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。
*日本や米国は慢性的な財政赤字体質なので、将来的にはMMTのような財政・金融政策に移行せざるを得ないように思う。
*先進国の金融政策はほぼ限界にきているので、次の景気後退時の景気刺激策は財政政策しかなさそう。
→問題なし

<政治>
・日本は安定。10月の消費税引き上げは政府の大盤振る舞い(支援給付金、軽減税率、教育無償化、補正予算)や携帯料金引き下げなどで「無風」で通過すると思っていたが、10月の消費支出は前回増税時(4.6%減)以上の5.1%減と予想以上の落ち込み。これは台風の影響もあるようだがそれでも落ちすぎのようみえる。今後は前回増税時に起きたようなデフレ傾向が強まっていくのかもしれない。政府はここらへんを意識してか(もしくはただの日銀の財政ファイナンス要請か)、12月5日に13兆円規模の大型経済対策(補正予算)を閣議決定した。SMBC日興証券の牧野氏によると、この政策により2020年度の上場企業の営業利益は1.2%程度押し上げられるという。12/12日経
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。足下では一時休戦に。
 *米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込んでいく。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏とも言われている。
・香港ではデモが続いているが、これはもしかすると中国民主化への序章になるかもしれない。ウイグル自治区では中国の思想を植え付ける100万人規模の再教育施設があるようだし、中国の監視・信用格付け社会では社会的弱者の不満が高まっているようなので、中国に経済ショックのような大きな打撃が加われば、一気に民主化の機運が高まっていく可能性がある。11月の香港区議会選挙では民主派が議席の85%(選挙前は約3割)を押さえた。
・英国のEU離脱問題は1月に「合意ありの離脱」で片がつきそう。ただしこれから始まるEUとの通商交渉は不透明感が強い。
・英国のグダグダ感が効いてか、EU域内のEU離脱派・懐疑派の勢いは当初よりも弱まっているもよう。しかし失業率・成長率の悪化や所得格差の拡大、価値観の分断を背景にしたポピュリズムは今後も長期にわたり続きそう。
→問題あり

<その他の景気後退シグナル>
・米景気の先行指標である米住宅着工件数は上昇トレンドが続いている。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は48.1と4ヶ月連続の50割れ。(同指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増える可能性が高まる)。一方で今の経済成長の牽引役である米ISM非製造業指数は53.9と堅調。
・失業率が最低水準まで低下すると企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになるが、米国の失業率は歴史的に低い水準(3.5%)にある。米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥ると言われているが、現在はまだ低下している。
・景気拡大期の終盤は、金余りと鈍化した成長率を引き上げるため巨大M&Aが盛んになるが、今がまさにその状態。*高値で行われたM&Aは景気後退期にのれんで巨額の減損が発生しやすい。
・世界景気の先行指標である銅価格は景気がピークアウトするかどうかの分岐点にあったが足下では反発している。
・世界景気を半年先取りするOECD景気先行指数は底打ちしつつある。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIも50を超え底打ちしつつある。とはいえ中国製造業PMIは10月まで6ヶ月連続で50割れしていたので、デフォルトが増えつつある。11/29の日経
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りは「問題なし」の水準で落ち着いている。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれるが、今はまだ「長短金利の逆転」だけ。
・起こり得ない衝撃的な事象の発生を織り込むSKEW指数(ブラックスワン指数)は133とやや高水準で推移している。
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多いが、今は「4,利上げ打ち止めを好感した反発」局面に入りつつあるので、いったん上がりそう。
→問題なし

■テクニカル
・チャート
中国と韓国以外は上昇トレンド。
→問題なし

・ディストリビューション・デー(機関投資家の売り抜け日)
(問題なさそうなのでカウントせず)
→問題なし

・騰落レシオ
日経平均 100
NYダウ 133
ナスダック ?
→問題なし

・信用評価損益率
ー11.70 %
→問題なし

■まとめ
株式市場は金融相場(業績停滞 × 金融緩和)がしばらく続きそう。

ーーーーー
1年以内に中国の債務バブルが破裂する確率:10%
中国の企業債務はデフォルトモードに入りつつあるが、中国の企業債務は実質的には政府債務のようなものなのでソフトランディングできそう。ただ2021年と22年に社債の償還がピークを迎えるようなので(12/27日経)、この時期のマクロ環境次第ではバブルがはじける可能性もある。

1年以内に米国が景気後退に陥る確率:45%
製造業は危険な状態に見えるが、経済の牽引役である非製造業が堅調で、中銀のバックアップもあるのでもうしばらくは景気を維持できそう。景気後退のきっかけは外部要因(中国の景気失速あたり)になりそう。
*景気後退とはGDPが2四半期連続でマイナス成長になること。

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■景気後退について
今は低金利、デジタル革命、政府・中銀のバックアップにより景気拡大が持続しやすい。一方で、債務の積み上がりや雇用の引き締まりにより力強い景気拡大は期待しにくい。となると今後は非常に穏やかな景気拡大が長期で続いていくのかもしれない。

以下、景気拡大が続きやすくなる(景気後退に陥りにくい)要因を一通り書いていく。
・イノベーションは経済成長の最も基本的な原動力になるが、今は世界中でイノベーション(デジタル革命)が起きている。
・バブルは借金をして資産を買いまくることによって生じるが、今回そのような現象はあまりみられない。
・社債市場はバブル気味だが、今のような低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では低金利が続きやすく、高債務の状態が維持されやすい。
・信用力の低い企業の債務が膨張しているが、全体でみると健全な企業の貯蓄に相殺されている。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、先進国では金融危機が起こりにくい。
・中国の不動産市場にはバブルの兆しがあるが、中国政府の需要抑制策により、日本のバブル期ほどの過熱感はない。ただし、シャドーバンキング商品(銀行理財商品、委託融資、信託商品)への投資は過熱感が強く、2017年末の残高は1000兆円とGDP比8割の規模まで膨らんでいる。
・中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国有企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。
・中国政府には財政出動や金融緩和の余地がある。
・中国は独裁体制のため、不況に陥るとすべての批判が指導部にふりかかる構造になっている。そのため指導部はなんとしても不況を起こさないようにする。
・トランプ大統領の再選には株価の維持もしくは上昇が不可欠なので、トランプ政権は株価の上がりやすい政策を採る。
・先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、現在のようなインフレが起こりにくい環境でインフレ2%を達成・維持するには株高のような資産価格の維持・上昇が不可欠になる。そのため中銀は株式市場に優しい政策をとらざるを得ない。
・中銀が量的緩和をして国債などの資産を大量に買っているので資産価格は下がりにくい(金利は上がりにくい)。中銀が資産売却を進めれば資産価格は下がるが、今のところそれを進める気配はない。足下では資産購入を再開している。シティグループは「21年末まで世界の中央銀行による資産買い入れ額は増加する」と言っている。11/30日経

景気後退に陥りやすくなる要因もいくつかあるので、それらも書いていく。
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景気後退シナリオ1:インフレが過熱し景気後退に陥る
景気循環の従来のパターンは金融緩和→失業率低下・債務拡大→景気拡大・インフレ過熱→金融引き締め→債務圧縮→景気後退になる。しかし今回は失業率が低下してもインフレが過熱せず、足下ではFRBが再び金融緩和をし始めている。
――――――――――――――――
景気後退シナリオ2:米長期金利が上昇し景気後退
今後、米長期金利は財政悪化(国債増発)により長期的に上昇していく可能性がある。長期金利が上昇すると株式や不動産が売られ、借り入れが減り、景気後退に陥りやすくなる。しかし今はプラスの利回りがついている米国債が人気で長期金利が上がりにくくなっている。またFRBがさらなる金融緩和の手段として長期金利のコントロールにも触れ出しているので、長期金利が今後大きく上昇していく可能性はそれほどない。
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景気後退シナリオ3:マイナス金利により金融機関が破綻し景気後退
先進国の金利はマイナス圏に突入しているので、利ザヤの縮小から金融機関が破綻していく可能性がある。金融機関が破綻すると信用収縮が起こり(金回りが悪くなり)、景気後退に陥りやすくなる。しかし現時点では中銀が民間金融機関に配慮しながら金融政策を行っているので、比較的穏やかな統廃合で済みそう。
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景気後退シナリオ4:中国のバブル崩壊による景気後退
中国の企業債務は積み上がっているが、その7割以上は実物投資ではなく、リスクの高い金融資産(シャドーバンキング商品)への投資に回っている。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して、連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。そのようにして景気後退に陥ると独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性も出てくる。独裁体制は経済的に成熟した社会には適さないシステムとも言われているので、その意味でもこのタイミングで独裁体制が終わる可能性がある。これらの政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただこのシナリオも上記のような理由で、実際に起こる確率はそれほど高くはない。
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景気後退シナリオ5:ウォーレン氏が米大統領に選出され景気後退
ウォーレン氏は反大企業的で、トランプ氏以上に対中強硬的(国内産業保護主義)であり、また各種規制を強化し、法人減税を見直す方針のようなので、ウォーレン氏が米大統領に選ばれた場合は景気後退に陥る可能性がある。しかし米国で選挙に行く人の大半は中道・保守派なので、急進左派のウォーレン氏が選出される可能性は低い。米国で過去に急進左派で大統領になった人はいない。
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景気後退シナリオ6:上記の景気後退シナリオ複数が同時に起こる
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景気後退シナリオ7:各国中銀がインフレ政策をやめる
先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、経済成長率が2%を下回り、インフレが起こりにくい経済構造でそのような政策を続けるのはもともと無理がある。日本においてはインフレ目標達成のために、日本銀行が日本株を最も買っているが、これはあまりにも不自然。そのためどこかでインフレ政策を転換する必要が出てくる。インフレ政策を転換すれば資産価格は下落するが、今のところインフレ政策よりもマシな政策はなさそうなので、インフレ政策が限界にくるまで(おそらく10年以内)この政策は続きそう。足下ではFRBが平均インフレ目標政策などを検討するなど、インフレ政策を強化する方向で動いている。
*平均インフレ目標政策とは、インフレ目標を下回る期間が長引けば、その後上回ることを許容し平均で目標達成を図る手法。
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■今後の計画
穏やかな景気拡大が続きそうなので持ち株はホールドの方向でいく。ただ景気後退に陥る可能性も少なからずあるので新規投資は控え目にしていく。

景気後退に陥り、円が90円くらいまで上昇、もしくは日経平均が17000円くらいまで下落したら、米欧通貨や外国株、日本株を買っていく。おそらく今回が最後の円高局面になると思うので、海外資産の比率を高めにしていく。
*日経平均が18000円以下になると日銀が保有するETFが簿価割れを起こし、円の信認が揺らぎ始め(円安圧力がかかり始め)、日本株が反発しやすくなる。

次の円高時に仕込みたい外国株
・(米)VISAや(米)マスターカード。両社はフィンテック企業のボス的存在で、電子マネーは結局ここらへんが中核になりそう。
・(米)P&G。経営体制は盤石で、”奇跡の化粧水”SK-IIが世界的にヒットしそう。10/23の日経によるとSK-IIは世界でヒットし始めているもよう。市場はでかいのでまだまだ伸びそう。
・(米)ボーイング。大型航空機はボーイングとエアバスの寡占状態で参入障壁は非常に高い。長期的な需要も旺盛。足下では新型機737MAXの墜落により受注が落ち込んでいるが、エアバスの生産も全然追いついてないようなので乗り換えられる心配はほとんどない。中国経済が底打ちしたところが仕込み時になりそう。ただ12/2の日経に「(排ガス対策などで)旅客機の世界は自動車に比べて20年以上遅れている」とあった。やはり寡占(または独占)ではいろいろと問題が出てくるなと思った。
・NASDAQ100ETF。第4次産業革命の中核ETF。
・アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信(為替ヘッジなし)。腕利き米国人が運用する趣味の良さそうなファンド。
・米国株式長期厳選ファンド。奥野一成氏が運用するビジネスモデルが堅固な企業に投資する永久保有系ファンド。積み立てオンリーなのがやや難。
・インド株のETF。インドは2040年まで人口ボーナス期が続く。
・インドネシア株のETF。インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続く。
・銅。銅をたくさん使う電気自動車などにより銅の需要は長期的に右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などにより供給が追いつかなくなる可能性がある。現在の銅の採算ラインは1トン5500ドル程度。

■次の上げ相場について
次の景気拡大期は中銀に金融緩和をする力があまり残されてなさそうなので今回のような資産インフレは期待できそうにない。今後の市場環境はゼロ成長、ゼロ金利が基本になりそうだが、そのような環境で投資収益を上げていくには企業の成長性に賭けるしかないように思う。どのようなときでも時代の変化に合わせて成長していく会社はあるので、そういうところを見つけて投資していきたい。