2019年7月5日金曜日

売買チェック

6月は売買なし。

持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
6月4日の日経に「日本(のリーガルテック)は英語圏に比べ周回遅れの状況」「英語圏のリーガルテック企業数は1千社近いが、日本は数十社程度」とあった。これは裏を返せば「日本のリーガルテックの成長余地はまだまだある」「リーガルテックのアイデアは1000くらいある」ということになり、これらのアイデアを弁護士ドットコムのプラットフォームに落とし込んでいけばこの会社はまだまだ成長していけると思った。

これは海外のアイデアのうちの1つなのかはわからないが、5月に弁護士ドットコムRightsという新規事業が立ち上がった。この事業はネット上の著作権侵害に対処するサービスで、弁護士ドットコムが用意する削除申請ツールを使えば、違法投稿を簡単に削除できるという。現状ではネット上に動画や漫画などの違法投稿が蔓延していて、被害額は出版業界だけで4000億円以上になるという。このサービスへの強い需要が期待できる。

それとこのサービスを見ていて思ったのだが、著作権をもっと利用しやすくするサービスがないものかとも思った。著作権を保護するのはもちろん大事だとは思うが、著作権を侵害しやすいネット環境で、従来のルールをカチカチに守るのも無理があるように思う。2/21の日経に「インターネット上でのコンテンツの自由な利用は海賊版サイトを生み出す温床であるものの、新たな発想や文化を生み出す原動力でもある。」とあったが、この意見には賛成で、ここらへんの新たなルール作りと著作権を使いやすくする仕組み作りが必要なのではないかと思った。当ブログでも数回、著作権を侵害してしまっているが、こういったサービスがあれば良いのにと思った。

今後3年の予想売上高成長率は年率35%程度。現在の企業価値は将来の予想利益などを勘案すると800~1300億円(株価3600~5800円)くらいか。2030年の予想時価総額は1兆円。

■シンクロ・フード
基本シナリオ:市場独占型プラットフォーマーではないので利益成長は厳しそう
シンクロフードが運営するプラットフォームの中で市場独占型はないかと考えてみたら、M&Aプラットフォームがそれに該当するのではないかと思った。これと似たようなサービスは現時点では他に見当たらず、新陳代謝の激しい飲食業界で出店費用と退店費用を削減できるこのサービスは今後伸びていくのではないかと思った。今後3年の予想売上高成長率は年率10~20%。営業利益成長率は年率0~5%。2019年の予想平均株価は600円。変動率は±20%。
業績に最もインパクトのある求人広告掲載数を記録していく。関東 2485(2466)
関西 671(671)  東海 272(300)  九州 107(64)  北海道・東北 107(125) 総計 3642(3626)
市場独占型の求人プラットフォーマー・インディードの掲載数も記録していく。東京都の飲食店 90003(83302) 大阪府の飲食店 36775(33805)
*( )内は先月

■ペプチドリーム
基本シナリオ:ペプチド創薬で最強のプラットフォーマーに
社長のリード・パトリック氏は常々強気な発言をしているが、にもかかわらず持ち株を徐々に落としていっていることがわかった。医学論文マニアのパトリック氏のことだからおそらく医薬ベンチャーあたりにでも出資しているのだろうが、それでも少し気になる。まあ、パトリック氏が主導するPDC研究をノバルティスと共同ですることが決まったようなので問題ないとは思うが。今後3年の売上高成長率は年率20%程度。現在の企業価値は将来の予想利益などを勘案すると6000~8000億円(株価4800~6500円)くらいか。2030年の予想時価総額は5兆円。

■朝日ネット
基本シナリオ:ストックビジネスで地味に成長&株主還元
火柱を立てて最高値更新。長く続いた横ばい圏からの出来高を伴う上昇なのでチャート的にはまだ期待できる。今はこういう地味株に資金が集まりやすいのかもしれない。ただ業績が地味なのは相変わらずなので(営業キャッシュフローの伸びだけは少し派手)、株価も徐々に地味な動きになっていきそう。今後3年の予想売上高成長率は年率6%程度でEPS成長率は年率15%程度。2019年の予想平均株価は650円(変動率±20%)。
<10年チャート>

■厳選ジャパン(投資信託)
基本シナリオ:ビッグチェンジ銘柄投資でテンバガー達成
この投信の主力銘柄が利益確定売りされているようなので、しばらく上値が重くなりそう。上位10銘柄に弁護士ドットコムが初登場。やはり「厳選」されたかという感じ。しかし常連のペプチドリームは姿を消してしまっている。今年の予想基準価額は11000円(変動率20%)。

■日進工具
基本シナリオ:ニッチトップの極細ドリルで市場開拓
5月に会社が出した今期の減収減益の業績予想は保守的なものだとは思うが、5月のグローバル製造業PMI(購買担当者景気指数)がまだ下げ止まっておらず、中国製造業PMIも節目の50を下回っているので、今期の業績はさらに下振れする可能性がある。
*PMI(購買担当者景気指数)とは、購買担当者の景況感を示した指標で、この指数が低下していれば、購買担当者が発注を控えめにしているということになる。発注は通常3~12ヶ月後のものになるので、PMIは企業業績の3~12ヶ月先の先行指標になる。2019年の予想平均株価は2400円(変動率20%)。今後3年の売上高成長率は年率0%。

■パーク24
基本シナリオ:最強のカーシェア・プラットフォーマーに。海外の「空港」駐車場事業は効率化しにくいので期待薄。
この会社が現在抱える最大の問題点はカーシェア事業の「月額基本料」かと思っていたが、決算動画を見たらそれが全くの誤解でカーシェア事業は極めて順調なことがわかった。決算動画後に株価が急反発したので、もしかしたら他の投資家も誤解していたのかもしれない。

この会社が現在抱える最大の問題点はおそらく買収した海外事業になる。前期は6億円の赤字で、赤字は今後もしばらく続きそうな雰囲気がある。一般に海外事業のM&Aは難しいと言われており、日本電産の永守社長は「日本企業による海外M&Aで成功しているのは2%」(6/11日経)と言っているし、元アナリストの藤田勉氏は「国境を越えるM&Aは川上産業では成功するが、自動車など川下産業では成功しない」(2/18日経)と言っている。加えてパーク24の海外事業の買収はこれが初めてで、買収した会社は成長余地の乏しそうな赤字企業になる。なので海外事業への強い不透明感はしばらく消えそうにない。とはいえ会社説明では現在の進捗は当初の計画通りとのことなので、とりあえずもうしばらく様子を見ようと思う。

チャートはWボトム+出来高を伴う陽線包み足で底打ち。しかし2500円より上には強い戻り売り圧力+分厚い雲があるので上値は重そう。今後3年の売上高成長率は年率5%で利益成長率も5%程度。2019年の予想平均株価は2400円(変動率20%)。

■コンテック
基本シナリオ:物流テック向け機器で業績拡大
株主総会の案内状と事業報告書が届いた。これらを読んでいるとイメージしていた会社とはだいぶ違うなあという印象を受けた。この会社は親会社がダイフクで、ロジザードの大株主になっているので、てっきり物流に特化した会社かと思っていた。しかし届いた資料を読むといろいろな事業を手がける特徴のつかみにくい会社ということがわかった(ホームページのIRを見てもわかりにくい)。この会社の株はスポーツ新聞の記事とチャートと四季報だけを見て買ったが、もうそういうのはやめようと思った。

それと今回の送付で気づいたことがもう一つ。事業報告書と一緒に配当に関する資料とクオカードが入っていたが、このクオカードは必要あるのだろうかと思った。使い勝手の悪いクオカードの分を配当に回したほうが良いのではないだろうか。保有する株式数とクオカードの額が正比例しないのも問題がある。クオカードを配ることでもしかしたら個人株主や安定株主が増えることもあるのかもしれないが、本質的にはあまり意味のないことだと思うのでやめたほうがよいのではないかと思った。これと同じことは日進工具にも言える。今後3年の売上高成長率は年率0%程度。今後3年の予想平均株価は1400円(変動率20%)。

■今後の計画
市場が反発したときに売りたい銘柄は、米ドル、日経レバETF、WTI原油ETF、コンテック、 日進工具、シンクロ・フード。
朝日ネット、パーク24は考え中。
弁護士ドットコム、ペプチドリーム、厳選ジャパンは長期で保有する予定。ただし弁護士ドットコムとペプチドリームは指標的にかなり割高なので、極端なバブル崩壊が起こりそうになってきたらいくらか売却していく(底打ちしたら買い戻す)。

マクロ系金融資産チェック

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米長期金利 (保有資産:米国国債4倍ベア7)
基本シナリオ:2019年は1.5%~2.5%の間で推移

長期金利に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・経済成長率+インフレ率↓
米長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になるが、今後は両者とも低下傾向になる。米国の2018年の経済成長率は2.9%、2019年は(予)2.5%、2020年は(予)1.8%で、インフレ率は2018年が2.4%、2019年は(予)2.0%、2020年は(予)2.7%になる。今後、米中貿易摩擦が激化した場合、経済成長率は下振れし、物価には上昇圧力がかかる。
*数値はIMF予想

・金融政策↓
景気後退懸念や金融市場の混乱などから、FRBは金融引き締めをいったん終了することに決めた。足下では金融緩和に転じそうな雰囲気になってきている。現在の政策金利は2.25-2.50%だが、政策金利の先行指標である米2年物国債利回りは1.75%まで低下している。

4/17の日経によると、FRBが利上げを止めたのは期待インフレ率が0%台になってしまった日本のようにならないためだという。期待インフレ率は一度0%台まで落ちてしまうと現状では再度引き上げる方法がないらしい(企業や消費者が将来も物価は低迷すると予測すると、企業は値上げや賃上げを抑制して慢性的に物価が上がりにくくなる)。

FRBは平均インフレ目標政策(景気後退時に物価が下振れした場合、その後の景気回復局面で2%を上回るインフレ率を容認し、後退期と回復期の平均で2%の物価上昇率を実現する政策)を検討し始めたので、この先インフレが多少上振れしても金利引き上げを見送る可能性が高い。

FRBは「政策金利がゼロにまで下がれば長期金利に上限を設ける手法を採用する可能性がある」とも言い始めたので、近い将来、日銀のように長期金利のコントロールを始める可能性もある。もしそうなれば長期金利には明確な天井ができる。

・リスクオン、オフ↑
景気後退懸念や米中貿易摩擦が落ち着きつつあるのでリスクオンになりそう。

・トランプ大統領の介入↓
低金利好きのトランプ大統領はFRBへの口先介入のみならず、FRBへ緩和派の人間を送り込もうとするなどして金融緩和圧力をかけ続けている。これは短期的には金利に低下圧力がかかるが、中長期では金融市場に歪み(バブル)が生じ金利上昇圧力がかかる。

・財政赤字の拡大↑
米政府は財政支出を拡大しており、今後も年金や医療、福祉などの社会保障費が税収の伸びを上回って増加していくので、長期的に財政赤字の拡大は続く。2018年の米国の財政赤字額は100兆円を超えており、この水準は当面続く見込み。

・米国債の人気低下↑
米10年国債の利回りは先進国の中では相対的に高いので海外から買われやすいが、足下では為替ヘッジコスト(2.9%)が米長期金利(1.95%)を上回っているので、海外からの米国債の購入は減少している。双子の赤字(貿易赤字や財政赤字)の拡大も人気低下の要因になる。
*ヘッジコストとは外貨の短期金利と運用元通貨の短期金利の差から生じるコスト

・資金需要の低下↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要がそれほど多くない。少子高齢化で住宅ローンなどの借り入れも減少している。

・潜在成長率の低下↓
生産性伸び率の低迷で潜在成長率が長期的に低下傾向にある。

投機筋の持ち高
足下では売りが減りつつあるので、いったん金利が反発しそう。

・チャート↑
長期チャートで完全に底抜けしているので、今後は下降トレンドになりそう。
<10年チャート>


■WTI原油 (保有資産:WTI原油価格連動型上場投信)
基本シナリオ:45ドルから70ドルの間で推移

原油価格に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・産油国の採算ライン→
サウジが財政均衡に必要な水準は1バレル80ドル、アラブ首長国連邦は60ドル、ロシアは45ドル、米企業の採算ラインは45ドルになる。

・トランプ大統領の介入↓
トランプ大統領は低インフレ(低金利)と株高を切望しているので、原油価格の上がりにくい政策をとる。トランプ大統領の介入ラインはおそらく65ドルあたりになる。

・供給↑
イランやベネズエラの供給が減り、OPECとロシアが協調減産してるので足下で供給はしまりつつある。しかしOPECは景気後退を懸念して2020年3月末まで協調減産を続けることを決めた。ロシアはシェア低下を気にして減産はやめるといっていたが、相場急落リスクに備え協調減産に同意。

WTI原油価格への影響が大きい米原油在庫も急速にしまりつつある。
*米原油在庫は市場予想からブレやすいが、これは米国のシェールオイルの生産動向を正確に把握しきれてないためだと言われている。

長期的には新規の油田開発が、原油価格の停滞や脱化石燃料への投資家圧力などにより停滞気味なので、将来の供給不安は残る。
*現在ESG(環境、社会、企業統治)の観点を考慮しない企業は評価しないという流れになってきている。地球温暖化につながる化石燃料は環境リスクが高く、3月には世界最大の政府系ファンド・ノルウェー政府年金基金が石油・ガス関連株の一部を投資先から外すという方針を示している。

・産油国で不測の事態が起こる↑
米国は1月にベネズエラ国営石油会社への制裁を決定した。ベネズエラの産油量は投資不足などもあり著しく低下している。

リビアで内戦が激化している。生産設備の被害や輸送の寸断で一気に生産量が落ちる可能性がある。

米国は5月にイラン産原油を全面禁輸することに決めた。イランは対抗措置として原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡(世界の石油タンカーの2割が通過)を閉鎖すると警告していたが、5月に入りさっそく通過するタンカーなどへの攻撃を始めた。6月にもタンカーへの攻撃あり。ただ6月の攻撃はイラン(革命防衛隊)のものではないとも言われていたが、イランが米無人機偵察機を撃墜したためややこしい展開になってきた。米フィクションドラマ「ホームランド シーズン4」によると米国とイランの外交ルートは消滅しているようなので、この調子でいくとちょっとした戦争が起こる可能性もある。これらの影響でホルムズ海峡を通過するタンカーの保険料は10倍まで高騰している。

・需要↓
景気後退懸念はあるが、景気後退は比較的穏やかなものになりそうなので需要が急激に落ち込む確率は低そう。ただOPECとIEA(国際エネルギー機関)は世界経済の減速により原油需要が減るとして、5月に続き6月も石油需要見通しを下方修正している。

中長期的には景気後退や温暖化対策(クリーンエネルギーへのシフト)など需要を抑制する要因もあるが、人口増や世界経済の成長に伴い原油消費量は増加基調になる。IEAによると石油需要は2040年まで拡大を続ける見通し。

・リスクオン、オフ↑
原油は株式と同じリスク資産なのでリスクオフ時に売られやすいが、今は金融緩和や米中貿易摩擦緩和によりリスクオンに転じつつある。

投機筋の持ち高
6月の始めあたりから買い越しが微増傾向。短期的にはもう少し上がりそう

・為替↑
原油はドル建てなのでドル高になると原油価格に低下圧力がかかるが、ドルはほぼ頭打ちの状態なので、今後は原油価格に徐々に上昇圧力がかかっていきそう。またドル安になると新興国の輸入が増えやすくなるのでこれもまた上昇圧力になる。
(WTI原油価格連動型上場投信においては、ドル安円高が進むと基準価額が下がる)

・船舶の燃料規制↑
2020年から船舶燃料油の硫黄分濃度規制がはじまる。硫黄分の少ないWTI原油や北海ブレントには5ドル程度の価格上昇圧力がかかると言われている。

・チャート→
どっちつかずな感じ。45~70ドルの間で動きそう。


■ドル円 (保有資産:レバ10倍でドル買い)
基本シナリオ:2019年は102円から112円の間で推移

為替に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・日米の金融政策↓(↓は円高方向)
ドル円レートの基準値は購買力平価になるが、今は購買力平価(96円)から円安方向に振れている。円安方向に振れている最大の要因は日銀の金融緩和になるが、その緩和が限界に近づきつつある。一方で米国は金融引き締めから緩和に転じつつあるので、徐々に円高圧力が高まりそう。6/26の日経によると、FRBが0.5%の利下げをすると日経均衡為替レートは105.9円が妥当な水準になるという。

・リスクオン、オフ↑
FRBは7月にも利下げに動きそうだが、今回の利下げは景気後退に陥ってからの利下げではなく、将来の景気減速に備えた予防的な利下げなになるので、実質金利の低下から短中期的にリスクオンになりそう。過去の似たような状況では利下げ後に円安に転じている。

米中貿易摩擦の緊張緩和もリスクオンの要因になる。

*リスクオフになった場合のドル円の基本的な動きついて。まず条件反射的に円が買われる。そこからさらに不透明感が強まるとキャリー取引の巻き戻し(円の買い戻し)が起こる。そして本格的なリスクオフまで発展すると対外資産の引き上げ(投資撤退)とその思惑による円買いが起こる。
 *日本が持つ対外純資産は世界最大の340兆円になるが、そのうち資産の引き上げが起こりやすい証券投資の割合は3割程度になる。
 *キャリー取引とは金利差を狙った取引で、市場環境が落ち着くと低利通貨を売り高利通貨を買って金利差で収益を得る取引が盛んになる。

・投機筋の持ち高↑(「米国商品先物取引委員会 円 投機的ネットポジション」で検索)
足下では円売りポジションがゼロに近づいている。円の買い戻しはほぼ一巡しており、リスクオンにもなりそうなので、いったん反発するかもしれない。

・日本の投資家の対外証券投資↑
日本の債券投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、為替差損回避(ヘッジ)付きでも高い運用利回りが見込める海外債権などを買っている。国内の超低金利は当面続きそうなので、今後も対外証券を積み増していく可能性が高い。

日本の対外証券投資は年によってばらつきがあるが、平均すると年10兆円程度の買い越しになる。2019年はすでに8兆円超を買い越している。今後は異次元緩和前の比較的高い利回りで購入した債権の償還が始まるが、戻ってきたお金は国内債への再投資ではなく、外債に回る可能性が高い。2019年の償還額は40兆円超になる。
*対外証券投資のうち外貨建て(円売り)は7割程度。

・経常収支→
中期的には輸入額の4分の1(20兆円)を占める原油・天然ガス価格がやや高止まりしているので貿易収支が徐々に悪化していきそう。長期的にもスマホや医薬品などの輸入が増加傾向で、生産の海外移転などにより輸出の伸びが鈍化傾向なので貿易収支は悪化していきそう。2018年の貿易黒字額は1兆円程度になる。

(貿易収支を含む)経常収支は20兆円程度の黒字を維持しているが、この黒字の大半は過去に行った投資のリターンである所得収支が占めている。所得収支の黒字は貿易黒字と違い、半分程度が円に換えず現地で再投資されるため円買いフローは半分(10兆円)程度しか生まれない。

・日本企業の対外直接投資↓
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業の対外直接投資は今後も増えていきそう。ただ2018年の対外直接投資は15兆円程度と高水準だったが、日本企業の海外M&Aに1年半先行する世界PMI(購買担当者景気指数)は2017年12月にピークアウトしているので、日本企業による海外M&Aもいったんピークアウトしそう。米中貿易摩擦による貿易環境の不透明感も対外投資減速の一因になる。
*対外直接投資額のうち外貨建て(円売り)は半分程度。

・日米の経済成長力↑
資金は景気の強い国へ流れ、その国の株式や不動産などの資産価格を押し上げるが、基本的には日本経済よりも米国経済のほうが景気が強い。ただ米国経済はすでにピークアウトしているので両国の成長力格差は縮小しつつある。

購買力平価
ドル円の購買力平価は96円程度なので、円の下限は75円、上限は120円程度になる。米国の方が慢性的にインフレ率が高いので、購買力平価は長期的な円高傾向にあるが、米国のインフレ率は年々低下して日本のインフレ率との差が縮まってきているので、ドル円の購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。

・米財政赤字の拡大↓
米国の財政赤字は年100兆円を超え始めており、それが50兆円の経常赤字と相まってドル離れが進みそう。近い将来、米国債を消化するために大量のドルが発行される可能性が高い。

・日本の財政赤字の拡大↑
日本の累積財政赤字はDGP比200%を超えており、今後も社会保障費の増大により財政赤字は拡大していく公算が高いので、円離れがすすみそう。日本も米国同様、日本国債を消化するために大量の円が発行される可能性が高い。

・チャート→
短期的には107円で十字線や下ひげが出ているのでいったん底打ちしたように見える。111円程度までの反発はあるかもしれない。
<3ヶ月チャート>

中長期的には三角持ち合いを形成しており、長期チャートではデッドクロスが完成しそうなので、そろそろ円高方向に大きく振れていきそう。
<10年チャート>


■日経平均 (保有資産:日経レバETF)
基本シナリオ:2019年は19000から24000のボックス圏で推移

日経平均に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・EPS(1株利益)→
日経平均株価は基本的にEPS(1株利益)× PER(人気度)で決まるが、2018年のEPSは-3%、2019年は(予)0%、2020年も(予)0%になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因についても見ていく。
・為替↓
今後為替は中長期的に円高に振れていきそうなので、海外で6割を稼ぐ日本企業の利益は下振れしていきそう。

・海外景気↓
日本企業は海外で6割を稼ぐわけだが、海外が景気後退に陥りそうなので、日本企業の業績も下振れしていきそう。

・失業率↓
失業率が最低水準まで低下すると賃金が上昇して企業収益が圧迫され、労働量力不足で成長が頭打ちになるが、現在の失業率は最低水準(2.5%)にある。

・減価償却費や資源価格(原材料費)↓
景気拡大期の終盤は減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇して利益が圧迫される。

・金融政策→
景気拡大期の終盤は上昇した金利により企業の利益や資金調達環境は悪化するが、今回の引き締めは穏やかなのでほとんど影響なさそう。
ーーーーー

・PER(人気度、リスク選好度)→
米中貿易摩擦や金融政策が落ち着きつつあるので、市場もいったん落ち着きそう。日経平均のPERは基本的に11~16くらいの間で推移するが、現在のPERは12.17になる。来期のEPSは下振れ懸念があるので、このくらいの水準が妥当なのかもしれない。

・需給↑
日銀が日本株を買いまくっているので日本株は下がりにくい。日銀の買越額は年間6兆円規模になるが、他の投資主体の売り玉はつきつつあるので(詳細は「長期計画チェック」)、売り玉はすべて日銀が吸収してくれそう。

 <2019年の主な投資主体の予想売買動向>
 日本銀行、金融政策により3~6兆円の買い越し。現状は2兆2千億円の買い越し。
 事業法人、自社株買いにより3~4兆円の買い越し。現状は2兆円の買い越し。
 海外投資家、世界景気後退懸念により1~3 兆円の売り越し。現状は1兆8千億円の売り越し。
 個人投資家、相続に伴う換金売りで1~3兆円の売り越し。現状は1兆4千億円の売り越し。

・金余り↑
市場にお金があふれると資産価格は上昇するが、足下では金融政策が緩和気味になりつつある。米国の実質長期金利は0%程度まで低下しており、株式に割安感がでやすい。

・利回り↑
日本株式の益回りは8%と日本国債の利回り0%より高いので、株式に資金が流れやすい。

投機筋の持ち高
売り越しが減少しているので、日本株はいったん反発するかもしれない。

・チャート→
24000円でダブルトップを形成しており、19000円で累積売買高のピークが来ているので、当面この範囲内で動きそう。

市場環境チェック

株式市場への影響が大きい企業業績、金利、金融政策などをチェックしていく。

■ファンダメンタルズ
<EPS成長率>
・世界株式の2018年のEPS増加率は15%、2019年は8%。
・米国株式の2018年のEPS増加率は22%、2019年は4%。
・欧州株式の2018年のEPS増加率は5%、2019年は7%。
・日本株式の2018年のEPS増加率は-3%、2019年は0%。
参照:2019/5/18日経など
→問題なし

<経済成長率>
・世界の2018年の成長率は3.7%、2019年は3.3%、2020年は3.6%。
・米国の2018年の成長率は2.9%、2019年は2.3%、2020年は1.9%。
・中国の2018年の成長率は6.6%、2019年は6.3%、2020年は6.1%。
・ユーロ圏の2018年の成長率は2.2%、2019年は1.3%、2020年は1.5%。
・日本の2018年の成長率は1.1%、2019年は1.0%、2020年は0.5%。
*IMFの予想。参照:2019/4/10日経
*IMFは3期連続で下方修正している。
*IMFは4月時点では、「世界の経済成長は19年に中国やインドの回復によって底入れし20年に持ち直す」といっている。

2017年あたりから世界同時成長が起きており、このような状態は通常2,3年続くという。ただしこのような世界同時成長は景気サイクルの終盤に見られる特徴的な現象とも言われている。米ピムコは2019年に世界経済の同時減速が始まると予想している。

世界同時成長は海外で6割を稼ぐ日本企業には追い風になる。しかしその反面、海外の景気後退期は日本企業にとって強い向かい風になる。このような経済構造に円高効果が加わり、日本株は米国株の1.5倍くらい下落する。
→問題なし

<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2018年度が2.4%、2019年は2.00%、2020年は2.73%
・欧州の予想インフレ率は2018年度が1.5%、2019年は1.5%?、2020年は1.8%?
・日本の予想インフレ率は2018年度が0.98%、2019年は1.07%、2020年は1.54%
*IMFの予想。参照:世界経済のネタ帳
→問題なし

<金利>
・米国の2年金利は1.75%で10年金利は1.95%。
・日本の2年金利は-0.21%で10年金利は-0.15%。
*米国の短期金利が長期金利を上回ると景気後退に陥るといわれるが、現在の長短金利差は0.2%。
*米国の実質長期金利(名目長期金利-インフレ率)が潜在成長率を上回ると景気後退に陥るといわれるが、足下の実質長期金利は0%で、潜在成長率は1.8%。
*米国の景気をふかしも冷やしもしない中立金利(2.75%)を政策金利が上回ると景気後退に陥るといわれているが現在の政策金利は2.25~2.5%。
*実質長期金利が0%まで低下しているので、米株には割安感が出ている。
→問題なし

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・日本の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・中国の企業・家計債務残高はGDP比210%まで上昇しており、足下でも微増傾向。日本のバブル期のピークは220%になる。
・新興国の民間債務残高はGDP比140%で現在も微増傾向。
・過去10年で各国政府は債務を大きく膨らませている。
*米企業の債務残高は2011年のGDP比65%から過去最高の73%まで上昇している。一方で米家計の債務残高は2007年のGDP比97%から76%まで低下している。2019/05/23日経
  *今のように金利が経済成長率を下回る状態が続くと企業は財務レバレッジを効かすだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にできるので債務が膨張しやすい。
 *米企業債務の積み上がりの一つにレバレッジドローン担保証券があるが、これは信用力の低い企業向けの融資を束ねて証券化したものになる。リーマン・ショックのきっかけとなったのは、信用力の低い個人向けの住宅ローンを束ねて証券化した債務担保証券になる。
*米企業の対GDP債務残高比率は増加比率の移動平均線から3%超乖離しているが、これは直近3回の債務バブルのピーク時とほぼ同じ水準になる。参照
*中国の企業・家計債務は危険水準に達しているが、2018年に習政権は経済の筆頭課題に金融危機封じ込めを据えていたので(今は違うかも)、しばらくは心配しなくてもよさそう。
*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業によるものなので、計画に沿って徐々に削減していけそう。
*先進国では超低金利が続いているので債務拡大はまだ続きそう。
*新興国は米利上げや原油高などで通貨安・高インフレ・高金利になり、債務圧縮局面に入りつつあったが、米利上げや原油高が止まり、インフレ率は各国中銀のターゲット内に収まっているので落ち着きつつある。
→問題あり

<金融政策>
・米国は金融緩和に転じつつある。
・日本は金融緩和を継続しているが限界に近づきつつある。日銀によると2020年4月頃までは現状の緩和水準を維持し、その後も長期で緩和を続けるとのこと。
・欧州も金融緩和に転じそうな雰囲気がある。
・世界の量的緩和は2017年3月にピークをつけ、その後は減少傾向にある。2019年には量的緩和量が明確なマイナスへと転じるといわれていたが、中国などが緩和方向に舵を切り始めたのでプラスを維持しそう。
・新興国も米利上げ停止を受け金融緩和に転じつつある。
*これまでの景気拡大や資産インフレは金融緩和が原動力であったため、金融引き締め局面に入ると全てが逆回転する。
*米国はトランプ大統領の財政拡大策により次の景気後退期には金融政策しか残されていない。そのためFRBは粛々と金融引き締めをすすめ、次回の金融緩和の余地を作っていかなければならない。しかし足下でFRBは市場や景気の安定を優先し、金融緩和方向に舵を切ろうとしている。
*米国ではトランプ大統領がFRBに金融緩和圧力をかけているが、これを続けているとジョンソン大統領やレーガン大統領のときの二の舞になる可能性がある。ジョンソン大統領のときはニクソンショック、レーガン大統領のときはプラザ合意というドルショックが起きている。
*日本はこのまま金融緩和を続けると、金融仲介機能を持つ銀行の収益が落ち、金融政策が円滑に機能しなくなる恐れがある。
*金融緩和が長期化すると産業の新陳代謝が進まず(ゾンビ企業が存続する)、潜在成長率がさらに落ちていく。そして潜在成長率が落ちるとインフレがさらに起こりにくくなる。現在中銀がインフレを起こそうと行っている金融緩和は長期的にはインフレが起こりにくい経済構造を作るという一面もある。
*日本は次の景気後退期に金融面でも財政面でも打つ手がほとんどない。
*日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
 *MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することはなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によれば、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的には国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項を入れておけば問題ないとのこと。
  *MMTと日本の金融・財政政策は厳密には異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。
*日本や米国は慢性的な財政赤字体質なので、将来的にはMMTのような金融・財政政策に移行せざるを得ないように思う。
→問題なし

<政治>
・日本は安定。19年の消費税引き上げは株式市場の鬼門になると思っていたが、政府の大盤振る舞い(支援給付金、軽減税率、教育無償化、補正予算)や携帯料金引き下げなどにより、消費増税の負担を相殺・超過しそうなので問題なさそう。
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。米中貿易摩擦は一時、緊張が高まっていたが、6月末の首脳交渉でいったん緩和。
・米中貿易戦争が長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込んでいく。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏とも言われている。
・英国のEU離脱の条件は、EUが新たな離脱国が出てくるのをけん制するため、英国にとって厳しいものになりそう。英国は国民投票を実施し、EU残留という形になるのかもしれない。
・英国のグダグダ感が効いてか、EU域内のEU離脱派・懐疑派の勢いは当初よりも弱まっているという。しかし失業率・成長率の悪化や所得格差の拡大、価値観の分断を背景にしたポピュリズムは今後も長期にわたり続きそう。
・1年前まで「病気の仔犬」「老いぼれ」などとけなし合っていたトランプ大統領と金正恩委員長が板門店の非武装地帯で「歴史的」な会談をしたようだが、二人ともどこか「軽さ」があるので、歴史的な「重み」は感じられない。しかしこんなことで平和になるのなら、こういうのも「あり」なのかなと思う。
→問題なし

<その他の景気後退シグナル>
・過去の景気後退期はすべて米国の需給ギャップがプラスに転じた後に始まっているが、足下ではすでにプラスに転じている。
・米景気の先行指標である米住宅着工件数は今のところまだ辛うじて上昇トレンドを保っている。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は51.7と適温圏内(50~55)で落ち着いている。
・失業率が最低水準まで低下すると企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになるが、米国の失業率は歴史的に低い水準(3.6%)にある。米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥ると言われているが、現在はまだ低下している。
・コモディティ、米国債、米国株、ドルの4資産の値動きで、年間収益が高い順位が、コモディティ、米国債の順番になるとその翌年に景気後退が起きると言われているが、2018年はドル、米国債、米国株、コモディティの順。2019年は今のところ米国株、ドル、コモディティ、米国債か?
・景気拡大期の終盤は、金余りと鈍化した成長率を引き上げるため巨大M&Aが盛んになるが、今がまさにその状態。*高値で行われたM&Aは景気後退期にのれんで巨額の減損が発生しやすい。
・景気拡大期の終盤には業績格差が広がりやすくなるが、今がまさにその状態。
・世界景気の先行指標である銅価格は景気がピークアウトするかどうかの分岐点まで低下している。
・世界景気を半年先取りするOECD景気先行指数は19ヶ月連続で低下しており、節目の100を下回っているが、この指数よりさらに先行性のあるOECD中国景気先行指数や中国製造業PMI、バルチック海運指数は底入れしつつある。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りは一時急上昇したが、足下では元の水準に戻っている。
・起こり得ない衝撃的な事象の発生を織り込むSKEW指数(ブラックスワン指数)は現在120と低位で推移している。
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多いが、今は「4,利上げ打ち止めを好感した反発」局面に入りつつあるので、いったん上がりそう。
→問題なし

■テクニカル
・チャート
→問題なし

・ディストリビューション・デー(機関投資家の売り抜け日)
日経平均 6日
NYダウ 3日
ナスダック 2日
→問題なし

・騰落レシオ
日経平均 121
NYダウ 139
ナスダック ?
→問題あり

・信用評価損益率
ー14.79 %
→問題なし。

■まとめ
問題なし10件、問題あり2件、中期的な危険度:35%、1年以内に米国が景気後退に陥る確率:50%、投資判断:様子見

金融相場(業績停滞×金融緩和)がしばらく続きそう。

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

現時点の予想では2020~2021年頃に景気後退期に入るとみている。ただ今回の景気拡大期は低成長・低金利の中で浅く長いものだったので、景気後退期も浅く長いものになりそう。

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過去の景気後退に共通するパターン:米国の長短金利が逆転した後、もしくは利上げ停止後、1,2年してから日本株が50%超下落。

2018年12月に長短金利が逆転し、利上げも停止されたので、今後1,2年以内に景気後退に陥る可能性が高まってきた。ただ今回の利上げ停止ポイントは過去の水準(5%超)と比べてだいぶ低く(2.5%)なりそうなので、景気後退は比較的穏やかなものになるかもしれない。
*政策金利2.25~2.5%とは、景気をふかしも冷やしもしない中立金利(2.75%)よりも低く、実質政策金利(名目政策金利-インフレ率)も0.25~0.50%と低いため、かなり緩和的な水準になる。
*今回の長短金利の逆転は従来のものとは成立パターンが異なる。過去のパターンは高インフレによって押し上げられた短期金利が長期金利を上抜いているが、今回は低インフレ下でFRBの利上げ停止によって下がった長期金利が短期金利を下抜いている。

これ以外にも景気後退や株価下落を穏やかにするいくつかの要因がある。
・リーマンショックの記憶がまだ残っているため、皆慎重になっている。
・バブルは借金をして資産を買いまくることによって生じるが、先進国では今回そのような現象はあまり見られない。・・と言われていたが実際は超低金利が長期にわたり続いているので、順調にバブルは醸成されていたもよう。ただこのバブルは主に債券市場で起きており、金利上昇や景気後退が起こらない限りは破裂しにくい。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、先進国では金融危機(信用収縮)は起こりにくい。
 *金融危機(信用収縮)、つまりクレジットの消失が起こらなければ、金余りの状態が続く。*クレジットとは世の中に流通する大半のお金のこと(参照)。
 *中国の不動産にはバブルの兆候がある。ただし中国政府の需要抑制策により、日本のバブル期ほどの過熱感はない。
 *中国で最も大きなバブルはシャドーバンキング商品(銀行理財商品、委託融資、信託商品)への投資になる。これらの投資は過熱感が強く、2017年末の残高は1000兆円とGDP比8割の規模になる。
 *バブル崩壊の仕組み。景気後退や金利上昇などにより株式や不動産などが売られはじめると、資産価格が上昇することを前提として資産を買っているバブル系投資家が資産の投げ売りを始め、資金の逆回転が起こる。
・中国政府には財政出動や金融緩和の余地がある。
・中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。
・中国は独裁体制のため、不況に陥るとすべての批判が指導部に降りかかる構造になっている。そのため指導部はなんとしても不況を起こさないようにする。
・FRBは次の景気後退期に財政政策や金融政策で打つ手がほとんど残ってないことがわかっているので、金融引き締めは慎重に進める。
・トランプ政権は2020年の大統領選に向けて景気刺激策を打ってきそう。株価の維持は再選への最低条件になる。
・各国中銀が量的緩和をして国債などの資産をたくさん買っているので資産価格は下がりにくい(金利は上がりにくい)。中銀が資産売却を進めれば資産価格は下がるが、今のところそれを進める気配はない。足下では資産購入を再開しそうな気配すらある。
・金融緩和により過剰な金余りが続いている。米メリルリンチによると2019年2月の機関投資家の現金保有比率は2009年1月以降で最も高い水準になる。すでに景気後退をかなり織り込んでいるようにもみえる。
・各国中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、現在のようなインフレが起こりにくい環境でインフレ2%を達成・維持するには株高のような資産価格の維持・上昇が不可欠になる。そのため中銀は株式市場に優しい政策をとらざるを得ない。
・現在、第4次産業革命が進行中で、これは今後も長期にわたり続く。
・先進国では株式以上に債券が割高なので、株式に優位性がでやすい。
・日銀は以前と比べて市場にとても優しくなっており海外勢とも歩調を合わせるようになっている。
・日本株に限れば、日銀のバックアップがあるので下がりにくい。
 *ただし日銀のバックアップがあるからこそ投資家が売ってくる可能性もある。1995年に為替が1ドル80円を突破したとき、日銀が「もうこれ以上無理だ」とドル買い介入をやめたら底打ちしたという。市場参加者はドルを売る相手がいなくなり、買い戻しを始めたらしい。2016年の半ばから日銀は日本株を年間6兆円ベースで買い始めているが、2016年に個人と海外が6兆9千億円、2017年に5兆1千億円、2018年に6兆円、2019年に入りすでに3兆2千億円を売り越している。ちなみにこの期間の日銀以外の主な買い手は事業法人と信託銀行になる。16年は6兆円、17年は2兆円、18年は4兆8千億円、19年は2兆1千億円を買い越している。
・日本株の売り玉が少なくなっている。海外勢はアベノミクスが始まった2012年から日本株を買い始めており、累積買越額が一時20兆円くらいまで膨らんだが、足下では7兆円くらいまで縮小している。個人投資家はこの間一貫して売り越しており、その額は約30兆円に上る。反対にアベノミクス以降に一貫して買い越しているのは日銀と事業法人になり、その累計額は約40兆円に達する。この両者は景気後退期には売り圧力になりにくい。

以上を総合すると、次の景気後退や株価の下落は比較的穏やかに進む可能性が高い。

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景気後退シナリオ2:株価上昇の原動力であった金融緩和と債務のサイクルがピークアウトし、景気後退に陥る
おそらく2018年末の株価下落はこれが主因になる。ただ今回の金融引き締めは穏やかなものになりそうなので、景気後退も穏やかなものになりそう。
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景気後退シナリオ3:上がり続ける米長期金利による景気後退
今後、米長期金利は需給要因により長期的に上昇していく可能性がある。米長期金利が上昇すると株式や不動産が売られ、借り入れが減り景気後退に陥る。景気後退に陥ると通常なら長期金利も低下するが、今回は需給要因により長期金利は下がりにくい。新興国では米金利上昇とそれに伴うドル高により、通貨安、インフレ、金利高が起こり景気後退に陥る。中国ではこれらに加え、過剰債務や貿易戦争、労働人口のピークアウトなどにより景気後退に陥る。日本や欧州は、これらの国々のあおりを受けて、景気後退に陥る。
*FRBが長期金利のコントロールについて触れ出したので、このシナリオはなくなりそう。ただ米国の長期国債は規模が大きく、また国内投資家が9割を保有する日本国債と違って国内投資家が6割しか保有していないので、日本のように長期金利をうまくコントロールできない可能性もある。
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景気後退シナリオ4:中国のバブル崩壊による景気後退
中国の企業債務は積み上がっているが、その7割以上は実物投資ではなく、リスクの高い金融資産(シャドーバンキング商品)への投資に回っている。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して、連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。そうなると企業は債務返済で手一杯になり、新たな投資ができなくなる。そのようにして不況に陥ると独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性も出てくる。そもそも独裁体制は経済的に成熟した社会には適さないシステムとも言われているので、その意味でもこのタイミングで独裁体制が終わる可能性がある。これらの政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。
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景気後退シナリオ5:景気後退シナリオ2,3,4が同時に起こる
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景気後退シナリオ6:各国中銀がインフレ政策をやめる
先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、経済成長率が2%を下回り、インフレが起こりにくい社会構造でそのような政策を続けるのはもともと無理がある。日本においてはインフレ目標達成のために、日本銀行が日本株を最も買っているが、これはあまりにも不自然。そのためどこかでインフレ政策を転換する必要が出てくる。インフレ政策を転換すれば資産価格は下落するが、今のところインフレ政策よりもマシな政策はなさそうなので、インフレ政策が限界にくるまで(おそらく10年以内)この政策は続きそう。足下ではFRBが平均インフレ目標政策などを検討するなど、インフレ政策を強化する方向で動いている。
*平均インフレ目標政策とはインフレ目標を下回る期間が長引けば、その後上回ることを許容し平均で目標達成を図る手法。
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今後日本企業の業績は海外景気の減速に伴い低下していきそうなので、資金を徐々に弱気型のETFなどにシフトしていく。ただ上記のように、株式市場の下落は比較的穏やかなものになりそうなので、利益成長を続けられそうな企業の株は保持しておく。米景気後退を受けて中国バブルが崩壊しそうになってきた場合は資金移動を拡大していく。

それ以外のパターンとして1ドル(1スイスフラン)が115円、もしくは米長期金利が3.5%になった場合は、その時点でドル(スイスフラン)を売っていく。
*米国の政府・民間債務は膨張しているので、長期金利が3.5%あたりまで上昇したら、FRBは債務危機を防ぐため、国債購入を再開して(ドルを大量発行して)日銀のように長期金利をコントロールしていく可能性が高い。
*スイスフランは日本円と同じ逃避通貨になるが、過去の金融危機時には金融政策の違いなどからスイスフランよりも日本円の方が大きく買われている(参照)。スイスフランには売りに回るとスワップポイント(金利差収入)が入るというメリットもある。

景気後退期に入り円が90円くらいまで上昇したら、もしくは日経平均が16000円台になったら、米欧通貨や外国株、日本株を買っていく。おそらく今回が最後の円高局面になると思うので、海外資産の比重を高めにしていく。
*日経平均が18000円以下になると日銀が保有するETFが簿価割れを起こし、円の信認が揺らぎ始める(円安圧力がかかり始める)。*日銀のETF保有額は現時点で自己資本の3倍になる。

次の円高時に仕込みたい外国株
*(米)ALPHABETはやっぱりなし。市場独占型プラットフォーマーは規模が大きくなりすぎると独占禁止法(反トラスト法)に引っかかりやすくなることがわかった。米・反トラスト法はこれまで「値上げで消費者が被害を受けるか」を違法の判断基準にしてきたたため、無料のグーグルやフェイスブックは反トラスト法違反に問うことができなかった。しかし司法省が反トラスト法の基本原則である「消費者の不利益」を幅広く捉えるようになり、「競争排除的な買収や合併」「イノベーションを妨げる」「競争の質を下げる」といった分野も新たな判断基準に加えはじめたので、ALPHABETなどの巨大IT企業は今後M&Aを手がけにくくなっていきそうだと思うようになった。解体される可能性も若干ある。
・(米)VISAや(米)マスターカード。両社はフィンテック企業のボス的存在で、電子マネーは結局ここらへんが中核になりそう。世界通貨「リブラ」も期待できる。
*ただしリブラのような仮想通貨(疑似通貨)は中銀のコントロールが及ばないため、その規模が大きくなるにつれ政府や中銀が潰しにかかるのがセオリーと言われている。
・(米)P&G。経営体制は盤石で、”奇跡の化粧水”SK-IIが世界的にヒットしそう。
・(米)ドキュサイン。英語圏で最強の電子契約プラットフォームになりそう。
・NASDAQ100ETF。第4次産業革命の中核ETF。
・アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信(為替ヘッジなし)。腕利き米国人が運用する趣味の良さそうなファンド。
・米国株式長期厳選ファンド。奥野一成氏が運用するビジネスモデルが堅固な企業に投資する永久保有系ファンド。積み立てオンリーなのがやや難。
・インド株のETF。インドは2040年まで人口ボーナス期が続く。
・インドネシア株のETF。インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続く。
・銅。銅をたくさん使う電気自動車などにより銅の需要は長期的に右肩上がりだが、供給は優良鉱山の減少や環境規制などにより追いつかなくなる可能性がある。銅採掘の採算ラインは1トン6000ドル程度になる。
・原油。原油価格が40ドル以下になると産油国、もしくは企業が採算割れを起こすので、40ドル以下になったら買い。新規の油田開発も停滞気味のようなので長期的な供給不安もある。

■次回の上げ相場について
次の景気拡大期は、中銀に金融緩和をする力があまり残されてなさそうなので、今回のような資産インフレはあまり期待できそうにない。とはいえ中銀が2%のインフレ目標にこだわり続ける限りは資産インフレがどうしても必要になってくるので、また新たな金融緩和策を考案して資産市場を盛り上げてくれるのではないかとも思っている。おそらく次の金融政策は現在日銀が行っているような財政ファイナンス、もしくはMMTのような財政主導の緩和策が主流になるのではないかと思う。