2019年9月1日日曜日

売買チェック

・レバ10倍で米ドル買い。全売却。損益-15%
(損益の内訳:為替差損が-37%(111.00円でドル買い、106.50円で売却)。スワップポイント(金利差収入)が+22%(保有期間は10ヶ月))。

8月に最後の円安局面が来ると思っていたが、あと一歩のところで米中貿易戦争激化により頓挫。今後はリスクオフや、景気後退懸念→米利下げ→日米金利差縮小による円高、が進んでいきそうなので手仕舞い。

■米中貿易戦争について
5月と8月の貿易戦争激化から、中国側が簡単に譲歩しないことがわかった。また米国側も景気や株価が堅調な状況では強硬手段で対抗することがわかった。

当初は米国の対中輸入額が中国の対米輸入額の3倍以上あるので、交渉は米国優位に進むと思っていた。しかし米国では大統領選が来年に迫っており、また米国が自由貿易の恩恵を世界で最も受けている国なので、今は中国側が若干優位と思うようになった。

中国側が譲歩しないのは、次世代テクノロジーの覇権争いだけでなく、米経済にダメージを与えて、次期大統領選でトランプ大統領を排除するのも目的だと思うので、今のような状況は2020年11月頃まで続くのかもしれない。

問題はその後になる。次期米大統領戦で、「中国とは仲良くやっていける」と語るバイデン氏が大統領になればそれほど問題なさそうだが、トランプ氏が再選した場合は、中国の債務バブルが破裂する可能性が出てくる。今回の貿易戦争では中国経済も甚大なダメージを受けるが、それが回復しない状況が続けば、政府が経済をコントロールできなくなる可能性が高い。

補足だが、今回の貿易戦争は世界経済に与えるダメージが深刻なので、それゆえにどこかで一気に停戦に向かう可能性も少なからずある。


・米国国債4倍ベア7。最後の1口売却。損益-29%
(損失の内容:米長期金利が3.2%の時に買い、1.6%の時に売却。保有期間は10ヶ月)
最後の1口は観察目的でずっと持っていようと思っていたが、持ってなくても観察できそうなので売却。長期金利はいったん反発するとは思うが上昇余地はそれほどなさそう。

・WTI原油ETF。全売却。損益+5%。
原油価格はしばらくボックス圏で推移するとは思うが、原油ETFはドル建てで、円高の影響を強く受けるので売却。

・日進工具。半分売却。損益-42%。
・コンテック。半分売却。損益-47%。
貿易戦争激化と円高進行により、業績がさらに下ブレると思ったから。
両社とも悪い会社ではなく、メガトレンドにも乗っているので、いつかは業績が回復するとは思うが、円高トレンドが収束するまでは厳しいと思った。

持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
米法廷ドラマ「グッド・ワイフ」と「グッド・ファイト」をついに見終わってしまった。さすがリドリー・スコットという感じで、ツボを押さえた内容で面白かった。この会社もツボを押さえた経営で快走を続けてくれればと思う。今のところはクラウドサインなどが着実にパワーアップしているようなので快調そのもののように見える。チャートは200日線を割り込んだので調整局面入り。株価下落は地合いによるものが大きそうだが、マザーズは長期の下方トレンドに入ったようなので今後さらに値を下げていくかもしれない。今後3年の予想売上高成長率は年率35%程度。現在の企業価値は将来の予想利益などを勘案すると800~1300億円(株価3600~5800円)くらいか。2030年の予想時価総額は1兆円。

■シンクロ・フード
基本シナリオ:市場独占型プラットフォーマーではないので利益成長は厳しそう
やはり業績が下ブレてきてしまった。ただ今回の減益については、移転・増床費用や人材採用費用が第1四半期に集中したためだと思うので特に問題なさそう(しかし決算短信などでこの点や投資進捗に触れてないのは問題。投資家に対してこのくらいの説明もできずに、顧客に対して気の利いた対応ができるのか疑問)。第2四半期も人材採用に投資するようなので、利益が回復するのは早くて第3四半期になりそう。株価はチャート的にはほぼ底に見える。今後3年の予想売上高成長率は年率10~20%。営業利益成長率は年率0~5%。今後1年の予想平均株価は400~600円。
業績に最もインパクトのある求人広告掲載数を記録していく。関東 2444(2238)
関西 728(611)  東海 327(337)  九州 108(111)  北海道・東北 78(183) 総計 3685(3480)
市場独占型の求人プラットフォーマー・インディードの掲載数も記録していく。東京都の飲食店 95660(75284) 大阪府の飲食店 37609(27758)
*( )内は前年同月

■ペプチドリーム
基本シナリオ:ペプチド創薬で最強のプラットフォーマーに
8/9の日経に「20年12月期は大型契約を見込んでおり、売上高は100億円以上の見通し」とあった。大型契約とはなんだろうか。業績インパクトが強そうなので、自社開発しているPDC(薬の運び屋)かもしれない。先日開発に成功した血液脳関門通過性PCDだろうか。今後3年の売上高成長率は年率20%程度。現在の企業価値は将来の予想利益などを勘案すると6000~8000億円(株価4800~6500円)くらいか。2030年の予想時価総額は5兆円。

■朝日ネット
基本シナリオ:ストックビジネスで地味に成長&株主還元
先月、「IOTのバックアップ事業がここの成長の牽引役になる」みたいなことを書いたが、8/5日の日経で格安スマホ業者がこの分野に続々と参入していることがわかった。地味な領域なので新規参入はそれほどないだろうと思っていたが甘かった。参入障壁はやっぱり大事だなと思った。今後3年の予想売上高成長率は年率6%程度でEPS成長率は年率15%程度。2019年の予想平均株価は650円(変動率±20%)。

■厳選ジャパン(投資信託)
基本シナリオ:ビッグチェンジ銘柄投資でテンバガー達成
ハウスドゥという会社が初登場。この会社はストック型ビジネスに転換しつつある不動産仲介業者のようで、業績とチャートは良好。不動産仲介店舗のビジネスモデルが良いようで、フランチャイズ加盟店が順調に増加している。この投信の今年の予想基準価額は11000円(変動率20%)。

<ハウスドゥの3年チャート> ハイプサイクル型のチャートパターン。期待相場が終わり、業績相場に移行したように見える。

■パーク24
基本シナリオ:最強のカーシェア・プラットフォーマーに。海外の「空港」駐車場事業は効率化しにくいので期待薄。
8/2の日経でカーシェア事業について「都心部の会員から『予約を取りづらくなった』との声を頂いている」「需要の高い都心部では、駐車場の用地不足や地価の高騰が進む。カーシェアの拠点に適した立地を確保するのは容易ではない」とあった。月次の進捗は順調だが、この先、成長が徐々に鈍化していくのかもしれない。昨日の決算は海外事業以外は好調だった。株価は決算後に出来高をつけて下落したので、しばらく上値の重い展開になりそう。今後3年の売上高成長率は年率5%で利益成長率も5%程度。2019年の予想平均株価は2400円(変動率20%)。

■日進工具
基本シナリオ:ニッチトップの極細ドリルで市場開拓
米中貿易戦争激化と円高進行で業績がさらに下ブレていきそう。チャート的にも長期のサポート線を割り込んでおり、売買の厚みのない”空白地帯”に入っているのでまだ下げそう。

マクロデータは、日本、米国、中国、東南アジア、欧州の製造業PMIが節目の50を下回っており、日本の7月の工作機械受注額は1012億円(1000億円が好不況の境目)とあまり良くない。

今後1年の予想平均株価は1500円くらい。今後3年の売上高成長率は年率-5%程度。

■コンテック
基本シナリオ:物流テック向け機器で業績拡大
ここも日進工具と同じでまだ下がりそうだが、チャート的には900円くらいで下げ止まりそう。今後1年の予想平均株価は1000円くらい。今後3年の売上高成長率は年率-5%程度。

■今後の計画
反発待ちをしていたが、だだ下がり(笑)。今回の失敗から、「利益成長が止まったと思った会社の株は、気づいた時点ですぐに売り始めたほうがいい」ということがわかった。

今売ろうと思っている銘柄は、日経レバETF、日進工具、コンテック、シンクロフード。
日経レバETF、日進工具、コンテックは日経平均が21500円あたりになったら売却する。シンクロフードは600円になったら売却する。

朝日ネット、パーク24は考え中。
弁護士ドットコム、ペプチドリーム、厳選ジャパンは長期で保有する。

今現在、投資妙味のありそうな金融商品はあるか? おそらく「日本円」あたりになると思うので現金ポジションを増やしていく。

・・とうとう宴が終わってしまった。これからしばらくは陰気な旅が続きそうだが、次のチャンスに備えて淡々と知識を付けていこうと思う。

マクロ系金融資産チェック

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米長期金利 (保有資産:なし)
基本シナリオ:今後1年は1.1%~2.1%の間で推移

長期金利に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・経済成長率+インフレ率↓
米長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になるが、今後は両者とも低下傾向になる。米国の2018年の経済成長率は2.9%、2019年は(予)2.6%、2020年は(予)1.9%で、インフレ率は2018年が2.4%、2019年は(予)2.0%、2020年は(予)2.7%になる。貿易戦争が激化した場合、経済成長率は下振れし、物価には上昇圧力がかかる。
*数値はIMF予想

・金融政策↑
インフレ率が2%を下回り始めているので、FRBは7月に金融緩和に転じた。現在の政策金利は2.00-2.25%だが、政策金利の先行指標である米2年物国債利回りは1.52%まで低下しているので、利下げはもうしばらく続きそう。ただ今回の利下げは、景気後退に陥ってからの利下げではなく、将来の景気減速に備えた予防的な利下げなので、景気浮揚効果により長期金利には上昇圧力がかかる。

FRBは長期金利のコントロールにも触れ出したが、もしそれを実行すれば長期金利には明確な天井ができる。

・リスクオン、オフ↓
米中貿易戦争が激化してリスクオフになりつつある。

・財政赤字の拡大↑
米政府は財政支出を拡大しており、今後も年金や医療、福祉などの社会保障費が税収の伸びを上回って増加していくので、長期的に財政赤字の拡大は続きそう。2018年の米国の財政赤字額は100兆円を超えており、この水準は当面続く見込み。

・米国債の人気低下↑
米10年国債の利回りは先進国の中では相対的に高いので海外から買われやすいが、足下では為替ヘッジコスト(2.2%)が米長期金利(1.49%)を上回っているので、海外からの米国債の購入は減少している。双子の赤字(貿易赤字や財政赤字)の拡大も人気低下の要因になる。
*ヘッジコストとは外貨の短期金利と運用元通貨の短期金利の差から生じるコスト

・トランプ大統領の介入↓
低金利好きのトランプ大統領はFRBへの口先介入のみならず、FRBへ緩和派の人間を送り込むなどして金融緩和圧力をかけている。これは短期的には金利に低下圧力がかかるが、中長期では金融市場に歪み(バブル)が生じ金利に上昇圧力がかかる。

・資金需要の低下↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要がそれほど多くない。少子高齢化で住宅ローンなどの借り入れも減少している。

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みで潜在成長率が長期的に低下傾向にある。

投機筋の持ち高
足下では売り越しが微増傾向にあるので、投機筋は長期金利がまだ下がるとみている。

・チャート↓
下降トレンド。


■WTI原油 (保有資産:なし)
基本シナリオ:しばらく45ドルから70ドルの間で推移

原油価格に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・産油国の採算ライン→
サウジが財政均衡に必要な水準は1バレル80ドル、アラブ首長国連邦は60ドル、ロシアは45ドル、米企業の採算ラインは45ドルになる。

・トランプ大統領の介入↓
トランプ大統領は低インフレ(低金利)と株高を切望しているので、原油価格の上がりにくい政策をとる。トランプ大統領の介入ラインはおそらく65ドルあたりになる。

・需要↓
景気減速により石油需要は年初の見込みより下振れているようだが、景気減速は比較的穏やかなものになりそうなので需要が急減することはなさそう。

中長期的には景気後退や温暖化対策(クリーンエネルギーへのシフト)など需要を抑制する要因もあるが、人口増や世界経済の成長に伴い原油消費量は増加基調になる。脱プラスチック運動も始まりつつあるが、石油化学製品を代替品に置き換えるには少なくともあと数十年はかかると言われている。IEA(国際エネルギー機関)によると石油需要は2040年まで拡大を続ける見通し。

・供給↑
イランやベネズエラの供給が減り、OPECとロシアが協調減産してるので足下で供給はしまりつつある。しかしOPECは世界景気後退を懸念して2020年3月末まで協調減産を続けることに決めた。ロシアはシェア低下を気にして減産はやめるといっていたが、相場急落リスクに備え協調減産に合意。

WTI原油価格への影響が大きい米原油在庫はしまりつつある。
*米原油在庫は市場予想からブレやすいが、これは米国のシェールオイルの生産動向を正確に把握しきれてないためだと言われている。

長期的には原油価格の停滞や脱化石燃料への投資家圧力などにより、新規の油田開発が停滞気味なので、将来の供給不安は残る。
*現在ESG(環境、社会、企業統治)の観点を考慮しない企業は評価しないという流れになってきている。地球温暖化につながる化石燃料は環境リスクが高く、3月には世界最大の政府系ファンド・ノルウェー政府年金基金が石油・ガス関連株の一部を投資先から外すという方針を示している。7月にはEUの政策金融機関、欧州投資銀行も化石燃料に関連する事業への新規融資を2020年までにやめるという方針を示した。

・産油国で不測の事態が起こる↑
米国は1月にベネズエラ国営石油会社への制裁を決定した。ベネズエラの産油量は投資不足などもあり著しく低下している。

リビアで内戦が激化している。生産設備の被害や輸送の寸断で一気に生産量が落ちる可能性がある。

米国は5月にイラン産原油を全面禁輸することに決めた。イランは対抗措置として原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡(世界の石油タンカーの2割が通過)を閉鎖すると警告していたが、5月に入りさっそく通過するタンカーなどへの攻撃を始めた。その後もゴタゴタが続いている。足下では若干落ち着いている印象。

・リスクオン、オフ↓
原油は株式と同じリスク資産になる。今は米中貿易戦争激化でリスクオフになりつつある。

投機筋の持ち高
買い越しポジションは横ばい傾向。投機筋は今くらいの水準で落ち着くとみている。

・為替↑
原油はドル建てのためドル高になると原油価格に低下圧力がかかるが、ドルはほぼ頭打ちの状態なので、今後は原油価格に徐々に上昇圧力がかかってきそう。ドル安になると新興国の輸入が増えやすくなるのでこれもまた上昇圧力になる。
(WTI原油価格連動型上場投信においては、ドル安・円高が進むと基準価額が下がる)

・船舶の燃料規制↑
2020年から船舶燃料油の硫黄分濃度規制がはじまる。硫黄分の少ないWTI原油や北海ブレントには5ドル程度の価格上昇圧力がかかると言われている。

・チャート→
移動平均線が収斂している。そろそろ上下どちらかに大きく振れそう。


■ドル円 (保有資産:なし)
基本シナリオ:今後1年は98円から108円の間で推移

為替に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・日米の金融政策↓(↓は円高方向)
ドル円レートの基準値は購買力平価になるが、今は購買力平価(96円)から円安方向に振れている。円安方向に振れている最大の要因は日銀の金融緩和になるが、その緩和が限界に近づきつつある。一方で米国は金融引き締めから緩和に転じつつあるので、徐々に円高圧力が高まりそう。6/26の日経によると、FRBが0.5%の利下げをすると日経均衡為替レートは105.9円が妥当な水準になるという。米中貿易戦争激化により、利下げ速度が速まりそう。

・リスクオン、オフ↓
米中貿易戦争激化でリスクオフになりつつある。

*リスクオフになった場合のドル円の基本的な動きついて。まず条件反射的に円が買われる。そこからさらに不透明感が強まればキャリー取引の巻き戻し(円の買い戻し)が起こる。本格的なリスクオフまで発展すると対外資産の引き上げ(投資撤退)とその思惑による円買いが起こる。
 *日本が持つ対外純資産は世界最大の340兆円になるが、そのうち資産の引き上げが起こりやすい証券投資の割合は3割程度(100兆円)になる。
 *キャリー取引とは金利差を狙った取引で、市場環境が落ち着くと低利通貨を売り高利通貨を買って金利差で収益を得る取引が盛んになる。

・投機筋の持ち高→(「米国商品先物取引委員会 円 投機的ネットポジション」で検索)
足下では投機筋による円ポジションが売り持ちから買い持ちに転じている。投機筋は円高が進むとみている。
*円を買い持ちするとスワップポイント(金利差収入)がマイナスになるので、拡大余地はそれほど大きくはなさそう。

・日本の投資家の対外証券投資↑
日本の債券投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、為替差損回避(ヘッジ)付きでも高い運用利回りが見込める海外債権などを買っている。国内の超低金利は当面続きそうなので、今後も対外証券を積み増していく可能性が高い。
*足下では世界的な金利低下により外債の利回りも下がっているので外債購入が鈍りつつある。

日本の対外証券投資は年によってばらつきがあるが、平均すると年10兆円程度の買い越しになる。今後は異次元緩和前の比較的高い利回りで購入した国内債権の償還が始まるが、戻ってきたお金は国内債への再投資ではなく、外債に回る可能性が高い。2019年の償還額は47兆円になる。
*対外証券投資のうち外貨建て(円売り)は7割程度になる。

・経常収支→
中期的には、輸入額の4分の1(20兆円)を占める原油・天然ガス価格がやや高止まりしているので貿易収支が徐々に悪化していきそう。長期的にも、スマホや医薬品などの輸入が増加傾向で、生産の海外移転などにより輸出の伸びが鈍化傾向なので貿易収支は悪化していきそう。2018年の貿易黒字額は1兆円程度になる。
*貿易ではドル決済が圧倒的に多いため、実需では年間7兆円くらいのドル不足が発生している。

(貿易収支を含む)経常収支は20兆円程度の黒字を維持しているが、この黒字の大半は過去に行った投資のリターンである所得収支が占めている。所得収支の黒字は貿易黒字と違い、半分程度が円に換えず現地で再投資されるため円買いフローは半分(10兆円)程度しか生まれない。

・日本企業の対外直接投資→
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業の対外直接投資は今後も増えていきそう。ただ2018年の対外直接投資は15兆円程度と高水準だったが、日本企業の海外M&Aに1年半先行する世界製造業PMI(購買担当者景気指数)は2017年12月にピークアウトしているので、日本企業による海外M&Aもいったんピークアウトしそう。米中貿易戦争による貿易環境の不透明感も対外投資減速の一因になる。
*対外直接投資額のうち外貨建て(円売り)は半分程度。

・日米の経済成長力↑
資金は景気の強い国へ流れ、その国の株式や不動産などの資産価格を押し上げるが、基本的には日本経済よりも米国経済のほうが景気が強いのでドルが買われやすい。足下では米国経済はすでにピークアウトしているので、両国の成長力格差は縮小しつつある。

購買力平価
ドル円の購買力平価は96円程度なので、円の下限は75円、上限は120円程度になる。米国の方が慢性的にインフレ率が高いので、購買力平価は長期的な円高傾向にあるが、米国のインフレ率は年々低下して日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。

・米財政赤字の拡大↓
米国の財政赤字は年100兆円を超え始めており、それが50兆円の経常赤字と相まってドル離れが進みそう。近い将来、米国債を消化するために大量のドルが発行される可能性が高い。

・日本の財政赤字の拡大↑
日本の累積財政赤字はGDP比200%を超えており、今後も社会保障費の増大により財政赤字は拡大していく可能性が高いので、円離れがすすみそう。日本も米国同様、日本国債を消化するために大量の円が発行される可能性が高い。

・チャート→
下降トレンド。

■日経平均 (保有資産:日経レバETF)
基本シナリオ:今後1年は19000から22000のボックス圏で推移
日経平均に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・需給↑
日銀が日本株を買いまくっているので日本株は下がりにくい。日銀の買越額は年間6兆円規模になるが、他の投資主体の売り玉はつきつつあるので(詳細は「長期計画チェック」)、売り玉はすべて日銀が吸収してくれそう。

 <2019年の主な投資主体の予想売買動向>
 日本銀行、金融政策により3~6兆円の買い越し。現状は3兆4千億円の買い越し。
 事業法人、自社株買いにより3~4兆円の買い越し。現状は2兆8千億円の買い越し。
 海外投資家、世界景気後退懸念により2~4兆円の売り越し。現状は2兆5千億円の売り越し。
 個人投資家、相続に伴う換金売りで1~3兆円の売り越し。現状は1兆1千億円の売り越し。

・EPS(1株利益)→
日経平均株価は基本的にEPS(1株利益)× PER(人気度)で決まるが、2018年のEPSは-3%、2019年は(予)0%、2020年も(予)0%になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因についても見ていく。
・為替↓
今後為替は中長期的に円高に振れていきそうなので、海外で6割を稼ぐ日本企業の利益は下振れしていきそう。

・海外景気→
日本企業は海外で6割を稼いでいるので、海外景気の影響を大きく受けるが、IMFの予想では2019年、2020年の世界景気はそこそこ堅調なようなので、業績もそこそこ堅調に推移しそう。

・失業率↓
失業率が最低水準まで低下すると賃金が上昇して企業収益が圧迫され、労働量力不足で成長が頭打ちになるが、現在の失業率は最低水準(2.3%)にある。

・減価償却費や資源価格(原材料費)↓
景気拡大期の終盤は減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇して利益が圧迫される。

・金融政策→
景気拡大期の終盤は上昇した金利により企業の利益や資金調達環境は悪化するが、今回は金融緩和が続いているのでほとんど影響なさそう。
ーーーーー

・PER(人気度、リスク選好度)→
米中貿易戦争激化によりPERは低下。日経平均のPERは基本的に11~16くらいの間で推移するが、現在のPERは11.59になる。リスクオフやEPS下振れ懸念があるので、このくらいの水準が妥当なのかもしれない。

・金余り↑
市場にお金があふれると資産価格は上昇するが、今後も金融緩和は続きそうなので株価は下落しにくい。

・利回り↑
日本株式の益回りは8%超、配当利回りは2%超と、日本国債の利回り-0.2%より高いので、株式に資金が流れやすい。

投機筋の持ち高
売り越しは横ばい。この指標では投機筋は日本株がこのくらいの水準で落ち着くとみている。

裁定売り残高の方は、買い残高と逆転し、過去最高の1兆9000億円まで積み上がっている。この指標では、投機筋はまだ日本株が大きく下がるとみている。
*一般に、平時では売り残高よりも買い残高が多く、裁定買い残高が3000~6000億円まで減少すると「売られすぎ」、3.5兆~4兆まで増加すると「買われすぎ」の水準になる。現在の裁定買い残は4800億円。

・チャート→
累積売買高的に、19000~22000円のボックス圏で推移しそう。

市場環境チェック

株式市場への影響が大きい企業業績、金利、金融政策などをチェックしていく。

■ファンダメンタルズ
<EPS成長率>
・世界株式の2018年のEPS増加率は15%、2019年は8%。
・米国株式の2018年のEPS増加率は22%、2019年は4%。
・欧州株式の2018年のEPS増加率は5%、2019年は7%。
・日本株式の2018年のEPS増加率は-3%、2019年は0%。
参照:2019/5/18日経など
→問題なし

<経済成長率>
・世界の2018年の成長率は3.7%、2019年は3.2%、2020年は3.5%。
・米国の2018年の成長率は2.9%、2019年は2.6%、2020年は1.9%。
・中国の2018年の成長率は6.6%、2019年は6.2%、2020年は6.0%。
・ユーロ圏の2018年の成長率は2.2%、2019年は1.3%、2020年は1.6%。
・日本の2018年の成長率は1.1%、2019年は0.9%、2020年は0.4%。
*IMFの予想。参照:2019/07/24日経
*IMFは4期連続で下方修正している。
*IMFは「貿易政策が解決しなければさらに下振れする」と言っている。
*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。

2017年あたりから世界同時成長が起きており、このような状態は通常2,3年続くという。ただしこのような世界同時成長は景気サイクルの終盤に見られる特徴的な現象とも言われている。米ピムコは2019年に世界経済の同時減速が始まると予想している。

世界同時成長は海外で6割を稼ぐ日本企業には追い風になる。しかしその反面、海外の景気後退期は日本企業にとって強い向かい風になる。このような経済構造に円高効果が加わり、日本株は米国株の1.5倍くらい下落する。
→問題なし

<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2018年度が2.4%、2019年は2.00%、2020年は2.73%
・欧州の予想インフレ率は2018年度が1.5%、2019年は1.5%?、2020年は1.8%?
・日本の予想インフレ率は2018年度が0.98%、2019年は1.07%、2020年は1.54%
*IMFの予想。参照:世界経済のネタ帳

中央銀行に課せられた最大の任務は「物価に安定」になるが、中央銀行は経済にとってベストなインフレ率を2%としており、その水準で物価を安定させることを目標にしている。中央銀行が行う金融政策はインフレ率2%を基準に決められており、それより低ければ金融緩和政策、高ければ金融引き締め政策を行うことになる。先進国のインフレ率は長期的に低下傾向で、足下では2%を下回りはじめているので、今後長期で金融緩和が続く可能性が高い。
→問題なし

<金利>
・米国の2年金利は1.52%で10年金利は1.49%。
・日本の2年金利は-0.31%で10年金利は-0.27%。
*米国の2年金利が10年金利を上回ると平均18ヶ月後に景気後退に陥るといわれるが、2019年8月に長短金利が逆転した。現在の差は-0.03。
*実質長期金利(名目長期金利-インフレ率)が-0.5%まで低下しているので、米株には割安感が出ている。
→問題あり

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・日本の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・中国の企業・家計債務残高はGDP比210%まで上昇しており、足下でも微増傾向。日本のバブル期のピークは220%になる。
・新興国の民間債務残高はGDP比140%で現在も微増傾向。
・過去10年で各国政府は債務を大きく膨らませている。
*米企業の債務残高は2011年のGDP比65%から過去最高の73%まで上昇している。一方で米家計の債務残高は2007年のGDP比97%から76%まで低下している。2019/5/23日経
  *今のように金利が経済成長率を下回っている状態が続くと企業は財務レバレッジを効かすだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にできるので債務が膨張しやすい。
 *足下ではレバレッジド・ローンと呼ばれる高リスクの貸し出しが増えている。
 *先進国では超低金利が続いているので債務拡大はまだ続きそう。
*米企業の対GDP債務残高比率は10年移動平均線から3%超乖離しているが、これは直近3回の債務バブルのピーク時とほぼ同じ水準になる。2019/7/19ダイヤモンド
*中国の企業・家計債務は危険水準に達しているが、2018年に習政権は経済の筆頭課題に金融危機封じ込めを据えていたので(2018年中盤から景気重視に転換)、しばらくは心配しなくてもよさそう。
*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業によるものなので、計画に沿って徐々に削減していけそう。
*中国は、可処分所得に対する家計債務比率が日本のバブル期並の120%まで上昇しているので、今後深刻な消費不振に陥る可能性が高い(2019/7/28日経)。ただ8月16日に中国政府が「2019年と2020年の個人の可処分所得を押し上げる政策を実施する」といっているので、当面は大丈夫そう。
*新興国は米金融引き締めなどで通貨安・高インフレ・高金利になり、債務圧縮局面に入りつつあったが、米国が金融緩和に転じ、インフレ率は中銀のターゲット内に収まっているので落ち着きつつある。
→問題あり

<金融政策>
・米国は7月に金融緩和に転じた。
・日本は金融緩和を継続しているが限界に近づきつつある。日銀によると2020年4月頃までは現状の緩和水準を維持し、その後も長期で緩和を続けるとのこと。
・欧州も9月に金融緩和に転じそう。
・新興国も米金融緩和を受け緩和に転じつつある。
*金融緩和を長期で続けていくと、従来ならインフレが過熱して、それが金融緩和の歯止めになっていたが今回はそれがない。金融緩和が長期化した場合のメリットは失業率の低下やデフレ阻止になるが、デメリットは債務の増加や産業の新陳代謝の低下になる。
*金融緩和が長期化すると産業の新陳代謝が進まず(ゾンビ企業が存続する)、潜在成長率がさらに落ちていく。潜在成長率が落ちるとインフレがさらに起こりにくくなる。現在中銀がインフレを起こそうと行っている金融緩和は長期的にはインフレが起こりにくい経済構造を作るという一面もある。
*日本はこのまま金融緩和を続けると、金融仲介機能を持つ銀行の収益が落ち、金融政策が円滑に機能しなくなる恐れがある。日銀に課せられた任務には「物価の安定」の他に「市場・金融システムの安定」があるが、長期の大規模緩和により金融システムが不安定になりつつある。
*米国ではトランプ大統領がFRBに金融緩和圧力をかけているが、これを続けているとジョンソン大統領やレーガン大統領のときの二の舞になる可能性がある。ジョンソン大統領のときはニクソンショック、レーガン大統領のときはプラザ合意というドルショックが起きている。
*日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
 *MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することはなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によれば、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的には国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないとのこと。
  *MMTと日本の金融・財政政策は若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。
*日本や米国は慢性的な財政赤字体質なので、将来的にはMMTのような財政・金融政策に移行せざるを得ないようにみえる。
*先進国の金融政策はほぼ限界にきているので、次の景気後退時の景気刺激策は財政政策しかなさそう。
→問題なし

<政治>
・日本は安定。19年の消費税引き上げは株式市場の鬼門になると思っていたが、政府の大盤振る舞い(支援給付金、軽減税率、教育無償化、補正予算)や携帯料金引き下げなどにより、消費増税の負担を相殺・超過しそうなので問題なさそう。
・日本と韓国が揉めているが、これは韓国側が韓国国内の問題から目をそらすため、もしくは政権支持率を上げるために仕掛けたものだと思っていたが、8/24の日経を読んで、中国が朝鮮半島を取り込むために裏で糸を引いているのではないかと思い始めた。
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。
 *米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込んでいく。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏とも言われている。
・香港ではデモが続いているが、これはもしかすると中国民主化への序章になるかもしれない。チベットでは中国の思想を植え付ける100万人規模の「再教育キャンプ」があるようだし、中国の監視・信用格付け社会では社会的弱者の不満が高まっているようなので、中国に経済ショックのような打撃が加われば、一気に民主化の機運が高まっていくのかもしれない。
・英国は強行離脱派のジョンソン氏が首相になったので強行離脱する可能性が高まってきた。今後EU離脱には「合意なしの離脱」「合意ありの離脱」「総選挙を実施して離脱延期」「再国民投票を実施して離脱撤回」のシナリオがあるが最後までもつれそう。
・英国のグダグダ感が効いてか、EU域内のEU離脱派・懐疑派の勢いは当初よりも弱まっているという。しかし失業率・成長率の悪化や所得格差の拡大、価値観の分断を背景にしたポピュリズムは今後も長期にわたり続きそう。
→問題あり

<その他の景気後退シグナル>
・過去の景気後退期はすべて米国の需給ギャップがプラスに転じた後に始まっているが、足下ではすでにプラスに転じている。
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はピークアウトしそうに見える。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は51.2と適温圏内(50~55)で落ち着いている。
・失業率が最低水準まで低下すると企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになるが、米国の失業率は歴史的に低い水準(3.7%)にある。米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥ると言われているが、現在はまだ低下している。
・景気拡大期の終盤は、金余りと鈍化した成長率を引き上げるため巨大M&Aが盛んになるが、今がまさにその状態。*高値で行われたM&Aは景気後退期にのれんで巨額の減損が発生しやすい。
・世界景気の先行指標である銅価格は景気がピークアウトするかどうかの分岐点にある。
・世界景気を半年先取りするOECD景気先行指数は低下が続いており、節目の100を下回っているが、この指数よりさらに先行性のあるOECD中国景気先行指数や中国製造業PMI、バルチック海運指数は底入れしつつある。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りは「問題なし」の水準で落ち着いている。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「インフレ高進」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれるが、今はまだ「長短金利の逆転」だけ。
・起こり得ない衝撃的な事象の発生を織り込むSKEW指数(ブラックスワン指数)は現在115と低位で推移している。
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多いが、今は「4,利上げ打ち止めを好感した反発」局面に入りつつあるので、いったん上がりそう。
→問題なし

■テクニカル
・チャート
マザーズが長期的な下方トレンドに入りつつある。マザーズのような新興市場は下落局面で自社株買いや日銀のような買い手がおらず、下げ止まりにくい。今は中銀の大規模緩和により市場全体が持ち上げられているので、400ポイントまで下げることはないとは思うが、600ポイントあたりまでは下げてもおかしくはない。
<10年チャート>
→問題なし

・ディストリビューション・デー(機関投資家の売り抜け日)
日経平均 5日
NYダウ 5日
ナスダック 5日
→問題あり

・騰落レシオ
日経平均 82
NYダウ 103
ナスダック ?
→問題なし

・信用評価損益率
ー14.83 %
→問題なし

■まとめ
問題なし件4、問題あり8件、中期的な危険度:45%、1年以内に米国が景気後退に陥る確率:65%、1年以内に中国の債務バブルが破裂する確率:10%、投資判断:様子見
*景気後退とはGDPが2四半期連続でマイナス成長になること。

金融相場(業績停滞 × 金融緩和)がしばらく続きそうだが、日本株は為替が円高に傾き始めているので上値が重くなりそう。

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

現時点の予想では2020~2021年頃に景気後退期に入るとみている。ただ今回の景気拡大期は低成長・低金利の中で浅く長いものだったので、景気後退期も浅く長いものになりそう。・・もしくは、今後はデジタル革命と低金利が続きそうなので、浅い景気後退期の後に穏やかな景気拡大期が長期で続く、という展開になるかもしれない。

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過去の景気後退に共通するパターン:米国の長短金利が逆転した後、もしくは利上げ停止後、1,2年してから日本株が50%超下落。

2018年12月に長短金利が逆転し、利上げも停止されたので、今後1,2年以内に景気後退に陥る可能性が高まってきた。ただ今回の利上げ停止ポイントは過去の水準(5%超)と比べてだいぶ低く(2.5%)なりそうなので、景気後退は比較的穏やかなものになるかもしれない。
*政策金利2.5%とは、景気をふかしも冷やしもしない中立金利(2.75%)よりも低く、実質政策金利(名目政策金利-インフレ率)も0.5%と低いため、かなり緩和的な水準になる。
*今回の長短金利の逆転は従来のものとは成立パターンが異なる。過去のパターンは高インフレによって押し上げられた短期金利が長期金利を上抜いているが、今回は低インフレ下でFRBの利上げ停止によって下がった長期金利が短期金利を下抜いている。

以下、景気後退や株価下落を穏やかにする要因を列記していく。
・リーマンショックの記憶がまだ残っているため、皆慎重になっている。
・バブルは借金をして資産を買いまくることによって生じるが、先進国では今回そのような現象はあまり見られない。・・と言われていたが実際は超低金利が長期にわたり続いているので、順調にバブルは醸成されていたもよう。ただこのバブルは主に債券市場で起きており、金利上昇や景気後退が起こらない限りは破裂しにくい。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、先進国では金融危機(信用収縮)は起こりにくい。
 *金融危機(信用収縮)、つまりクレジットの消失が起こらなければ、金余りの状態が続く。*クレジットとは世の中に流通する大半のお金のこと(参照)。
 *中国の不動産にはバブルの兆候がある。ただし中国政府の需要抑制策により、日本のバブル期ほどの過熱感はない。
 *中国で最も大きなバブルはシャドーバンキング商品(銀行理財商品、委託融資、信託商品)への投資になる。これらの投資は過熱感が強く、2017年末の残高は1000兆円とGDP比8割の規模になる。
 *バブル崩壊の仕組み。景気後退や金利上昇などにより株式や不動産などが売られはじめると、資産価格が上昇することを前提として資産を買っているバブル系投資家が資産の投げ売りを始め、資金の逆回転が起こる。
・中国政府には財政出動や金融緩和の余地がある。
・中国は独裁体制のため、不況に陥るとすべての批判が指導部に降りかかる構造になっている。そのため指導部はなんとしても不況を起こさないようにする。
・中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。
・トランプ政権は2020年の大統領選に向けて景気刺激策を打ってきそう。株価の維持は再選への最低条件になる。
・先進国のインフレ率は2%を下回りつつあるので、今後長期で金融緩和が続きそう。
・先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、現在のようなインフレが起こりにくい環境でインフレ2%を達成・維持するには株高のような資産価格の維持・上昇が不可欠になる。そのため中銀は株式市場に優しい政策をとらざるを得ない。
・中銀が量的緩和をして国債などの資産を大量に買っているので資産価格は下がりにくい(金利は上がりにくい)。中銀が資産売却を進めれば資産価格は下がるが、今のところそれを進める気配はない。足下では資産購入を再開しそうな雰囲気になりつつある。
・金融緩和により過剰な金余りが続いている。米メリルリンチによると2019年2月の機関投資家の現金保有比率は2009年1月以降で最も高い水準になる。
・現在、第4次産業革命が進行中で、これは今後も長期にわたり続く。
・先進国では株式以上に債券が割高なので、株式に優位性がでやすい。
・日本株に限れば、日銀のバックアップがあるので下がりにくい。
 *ただし日銀のバックアップがあるからこそ投資家が売ってくる可能性もある。1995年に為替が1ドル80円を突破したとき、日銀が「もうこれ以上無理だ」とドル買い介入をやめたら底打ちしたという。市場参加者はドルを売る相手がいなくなり、買い戻しを始めたらしい。2016年の半ばから日銀は日本株を年間6兆円ベースで買い始めているが、2016年に個人と海外が6兆9千億円、2017年に5兆1千億円、2018年に6兆円、2019年に入りすでに3兆7千億円を売り越している。ちなみにこの期間の日銀以外の主な買い手は事業法人と信託銀行になる。16年は6兆円、17年は2兆円、18年は4兆8千億円、19年は3兆4千億円を買い越している。
・日本株の売り玉が少なくなっている。海外勢はアベノミクスが始まった2012年から日本株を買い始めており、累積買越額が一時20兆円くらいまで膨らんだが、足下では6兆円くらいまで縮小している。個人投資家はこの間一貫して売り越しており、その額は約30兆円に上る。反対にアベノミクス以降に一貫して買い越しているのは日銀と事業法人になり、その累計額は40兆超になる。この両者は景気後退期には売り圧力になりにくい。
 *08/22の日経によると、12年11月以降の海外勢の買い越し額は株価上昇を加味して試算すると16兆円になるという。

以上を総合すると、次の景気後退や株価の下落は比較的穏やかに進む可能性が高い。

――――――――――――――――
景気後退シナリオ2:インフレが過熱し景気後退に陥る
景気後退に至るのお馴染みのパターンは金融緩和→失業率低下・債務拡大→インフレ過熱→金融引き締め→債務圧縮→景気後退になるが、今回は失業率が低下してもインフレが過熱しないので、景気後退に陥りにくい。足下ではFRBがインフレを起こそうと金融緩和に転じている。
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景気後退シナリオ3:米長期金利上昇による景気後退
今後、米長期金利は需給要因(財政悪化など)により長期的に上昇していく可能性がある。長期金利が上昇すると株式や不動産が売られ、借り入れが減り景気後退に陥る。景気後退に陥ると通常なら長期金利も低下するが、今回は需給要因により長期金利は下がりにくい。新興国では米金利上昇とそれに伴うドル高により、通貨安、インフレ、金利高が起こり景気後退に陥る。中国ではこれらに加え、過剰債務や貿易戦争、労働人口のピークアウトなどにより景気後退に陥る。日本や欧州は、これらの国々のあおりを受けて、景気後退に陥る。
*FRBが長期金利のコントロールについて触れ出したので、このシナリオはなくなりそう。ただ米国の長期国債は規模が大きく、国内投資家が9割を保有する日本国債と違って国内投資家が6割しか保有していないので、日本のように長期金利をうまくコントロールできない可能性もある。
――――――――――――――――
景気後退シナリオ4:マイナス金利により金融機関が破綻し景気後退に陥る
先進国の金利はマイナス圏に突入しているので、利ザヤの縮小から金融機関が破綻していく可能性が高い。金融機関が破綻すると信用収縮が起こり(金回りが悪くなり)、景気後退に陥りやすくなる。ただ現時点では中銀が民間の金融機関を気にかけながら金融政策を行っているので、銀行が破綻するとしても非常に穏やかなものになりそう。その場合、景気への影響も軽いものになる。
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景気後退シナリオ5:中国のバブル崩壊による景気後退
中国の企業債務は積み上がっているが、その7割以上は実物投資ではなく、リスクの高い金融資産(シャドーバンキング商品)への投資に回っている。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して、連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。そうなると企業は債務返済で手一杯になり、新たな投資ができなくなる。そのようにして不況に陥ると独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性も出てくる。そもそも独裁体制は経済的に成熟した社会には適さないシステムとも言われているので、その意味でもこのタイミングで独裁体制が終わる可能性がある。これらの政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。
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景気後退シナリオ6:景気後退シナリオ複数が同時に起こる
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景気後退シナリオ7:各国中銀がインフレ政策をやめる
先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、経済成長率が2%を下回り、インフレが起こりにくい社会構造でそのような政策を続けるのはもともと無理がある。日本においてはインフレ目標達成のために、日本銀行が日本株を最も買っているが、これはあまりにも不自然。そのためどこかでインフレ政策を転換する必要が出てくる。インフレ政策を転換すれば資産価格は下落するが、今のところインフレ政策よりもマシな政策はなさそうなので、インフレ政策が限界にくるまで(おそらく10年以内)この政策は続きそう。足下ではFRBが平均インフレ目標政策などを検討するなど、インフレ政策を強化する方向で動いている。
*平均インフレ目標政策とはインフレ目標を下回る期間が長引けば、その後上回ることを許容し平均で目標達成を図る手法。
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■今後の計画
米中貿易戦争が激化・長期化しそうな気配になってきたので、景気後退シナリオ5が実現する可能性が少し高まってきた。ただそれが起こるとしてもまだまだ先になりそうなので、基本的には持ち株ホールドの方向でいく。

それ以外のパターンとして1ドル(1スイスフラン)が110円、もしくは米長期金利が3.0%になった場合は、その時点でドル(スイスフラン)を売っていく。
*米国の長期金利が3.0%あたりまで上昇したら、FRBはデフレ退治のために国債購入を再開して(ドルを大量発行して)、日銀のように長期金利をコントロールしていく可能性が高い。
*スイスフランは日本円と同じ逃避通貨になるが、過去の金融危機時には金融政策の違いなどからスイスフランよりも日本円の方が大きく買われている(参照)。スイスフランには売りに回るとスワップポイント(金利差収入)が入るというメリットもある。

景気後退期に入り円が90円くらいまで上昇したら、もしくは日経平均が16000円台になったら、米欧通貨や外国株、日本株を買っていく。おそらく今回が最後の円高局面になると思うので、海外資産の比重を高めにしていく。
*日経平均が18000円以下になると日銀が保有するETFが簿価割れを起こし、円の信認が揺らぎ始め(円安圧力がかかり始め)、日本株が反発しやすくなる。

次の円高時に仕込みたい外国株
・(米)VISAや(米)マスターカード。両社はフィンテック企業のボス的存在で、電子マネーは結局ここらへんが中核になりそう。
・(米)P&G。経営体制は盤石で、”奇跡の化粧水”SK-IIが世界的にヒットしそう。
・(米)ウーバー。そこら中でウーバー・イーツが走り回っているが、仕組み作りが別格だと思った。近々コンビニ商品の配送も始めるらしい。ただ、ウーバーイーツが売上高に占める割合はまだ2割程度で、ウーバー(ライドシェア事業)の方は自動運転が実用化されるまで黒字化は困難とも言われている。
・NASDAQ100ETF。第4次産業革命の中核ETF。
・アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信(為替ヘッジなし)。腕利き米国人が運用する趣味の良さそうなファンド。
・米国株式長期厳選ファンド。奥野一成氏が運用するビジネスモデルが堅固な企業に投資する永久保有系ファンド。積み立てオンリーなのがやや難。
・インド株のETF。インドは2040年まで人口ボーナス期が続く。
・インドネシア株のETF。インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続く。
・銅。銅をたくさん使う電気自動車などにより銅の需要は長期的に右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などにより供給が追いつかなくなる可能性がある。現在の銅採掘の採算ラインは1トン6000ドル程度になる。
・原油。原油価格が40ドル以下になると産油国や米企業が採算割れを起こすので、40ドル以下になったら買い。新規の油田開発も停滞気味のようなので長期的な供給不安もある。

■次回の上げ相場について
次の景気拡大期は、中銀に金融緩和をする力があまり残されてなさそうなので、今回のような資産インフレはあまり期待できそうにない。とはいえ中銀が2%のインフレ目標にこだわり続ける限りは資産インフレがどうしても必要になってくるので、また新たな金融緩和策を考案して資産市場を盛り上げてくれるのではないかとも思っている。おそらく次の金融政策は現在日銀が行っているような財政ファイナンス、もしくはMMTのような財政主導の金融緩和策が主流になるのではないかと思う。

有望株チェック

衝動買いや「1日調査」で買った株は失敗しやすいので、これからはネチネチと調べてから買うことにする。

■10倍株候補
<10倍株候補の条件は>
 ・上場4年以内の若い会社
 ・社長が若くやり手
 ・オーナー企業
 ・時価総額300億円以下の小型株
 ・長期的なテーマに合っている
 ・急成長している
 ・(IPOから時間が経過し、株価が右肩下がりになっているチャートが狙い目)

(今のところ候補はなし。探してもないけど)

■優良銘柄(株価が急落したときに買いたい銘柄)
<優良銘柄の条件は>
 ・参入障壁が高い
 ・ストック型ビジネスを手がける
 ・時流に乗っている
 →業績が落ちにくく、利益成長を続けやすいビジネスモデル

・エムスリー。医療分野で独占的なプラットフォームを築いている。問題は成長力がやや鈍化傾向なところ。2030年の予想利益は現在の2~4倍くらいか。
・リクルート。市場独占型プラットフォームを多数保有している。問題は会社がでかいので調べるのが大変そうなところ。足下では持ち合い株の解消やリクナビ問題でいい感じに調整し始めている。2030年の予想利益は現在の2~4倍くらいか。
・カカクコム。価格比較の分野で独占的なポジションを築いている。問題は飲食店の口コミが「食べログ」から「グーグル」に流れていることなど。2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいか。
・インフォマート。企業間取引の基幹ITインフラを構築している。問題は将来の市場規模がどのくらいなのかまだよくわからないこと。2030年の予想利益は現在の2~5倍くらいか。
・GMOペイメントゲートウェイ。決済代行プラットフォームで半独占的なポジションを構築している。問題はこの会社のことをまだよく知らないこと。2030年の予想利益は現在の3~5倍くらいか。
・ベネフィット・ワン。大企業向けの福利厚生代行サービスなど優良ストックビジネスを手がける。問題は業績の伸びがやや穏やかなこと。足下ではM&Aなどで加速している?2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいか。
・リログループ。中小企業向けの福利厚生代行サービスなど優良ストックビジネスを手がける。問題は業績の伸びがやや穏やかなこと。2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいか。

■調査中の銘柄
メディアドゥ
基本シナリオ:最強の電子書籍取次プラットフォーマーに
地合いは良くないが、株価の推移は堅調でほぼ予想通り。ただやはり増資リスクが気がかり。今後3年の売上高成長率は年率20%、営業利益成長率は年率25%。2019年の予想平均株価は3500円(変動率±25%)。

■気になっている銘柄
△ステムリム
ステムリムはやっぱりなし。臨床試験バブルや再生誘導医薬という独自技術は面白そうだと思ったが、公募価格の大幅ディスカウントや大株主を見て、プロ(機関投資家や製薬会社)の評価は芳しくなく、臨床試験の成功率や薬剤の医学的インパクトはそれほど高くないと思ったから。

・エデュラボ
教育×テクノロジーのエドテック企業。エドテックは黎明期にあるので今後大きく成長しそう。

・パークシャテクノロジー
AI関連の会社で、技術顧問に東大教授の松尾豊氏がいるのが肝。AIはレッドオーシャン市場だが、松尾氏はAI事情に精通しているので、勝ち抜ける道を進める可能性がある。AIは純粋に知性の勝負になるので東大系の会社なのも良い。先日増資で200億円を調達しているので仕込むタイミングとしては悪くなさそう。

今後調査をしていく順番はエデュラボ、パークシャテクノロジー、ベネフィットワン・・の順。月1社程度を調べていきたい。もしくは10倍株候補を探索する。

エデュラボ

■調べようと思ったきっかけ
日経マネー4月号に「国内エドテックの雄」「2021年までの3年間で年間平均30%の売上成長が目標」とあったから。

■どんな会社か
英検のネットメディア事業とテスト受託事業などを手がける。
ビジネスモデルをソフトウェア受注型からライセンス販売型に転換し、AIを導入してから、利益率は上昇傾向にある。

■成長ストーリー
「教育改革の波に乗って業績拡大」が基本シナリオ。

2020年から国の教育指導要領が英語をより強化したものに変わる。小学校では3年生から英語が必修化され、大学入試共通テスト(元センター試験)の英語試験では、「読む、書く、聞く、話す」の4技能を測るテストに変わる。

大学入試共通テストでは、英語科目だけ民間6団体7種類のテストが採用されることが決まっており、その内の1つである英検とタッグを組むエデュラボは、ここで一気に受験生を取り込む計画を立てている。

現時点では、英検のテストが民間試験の中で、料金、試験回数、会場数の面で優位な状況にあるため(参照)、英検が中心プレーヤーになれる可能性が高い。すでにその流れが来ているのか、英検とエデュラボが共同で運営する英検のポータルサイトと学習サイトは会員数が前年比70%超の勢いで増えており、足下では320万人を突破している。
大学入試共通テストの英語試験の市場規模は80億円程度で、英語学習の市場規模は??億円程度になる。

テスト受託事業では、今年文科省の「全国学力・学習調査」を受託している。このような調査はその性質上、調査会社をコロコロ変えるわけにもいかないので、エデュラボが今年を無難に乗り切れれば、来年以降も受託できる可能性が高い。項目反応理論やAIによる自動採点を採用した学力調査の評価は高く、今後各自治体や教育機関などからの受託増も期待できる。学力調査の市場規模は70億円程度になる。

テスト受託で培ったAIによる文字の自動入力技術は教育以外の分野でもビジネス展開し始めている。すでにRPA事業を手がける伊藤忠テクノやブレインパッドなどIT企業10社程度と組み、ライセンス販売を始めている。現在の提供分野の比率は教育関連が4%程度にすぎず、金融機関や保険会社などへの比率が圧倒的に大きくなっている。RPA市場は巨大なので、長期的にはこの分野での技術提供が業績の牽引役になる可能性もある。
*RPAとは定型的なデスクワークをAIなどで自動化する技術

■問題点
・2020年に始まる大学入試共通テストの英語試験で批判が噴出している。英語は民間試験7種が採用されることに決まっているが、それぞれの試験で測る英語力が異なり、成績の一律比較ができないという指摘がある。また各試験の料金(5800円~25000円)や回数、会場数の差が大きく、試験機会が不平等になるという指摘もある。これらの点を考慮してか、5月時点で国立大82校のうち35校が「民間試験で一定の成績を取ることを出願の条件とするが、合否判定には使わない」とし、東北大など3校は「一切使わない」としている。エデュラボの最大顧客は英検であり、この領域に現在も大きく投資しているので、大学入試の動向次第ではエデュラボに大きな損失が発生する可能性がある。現時点で、このテスト制度には少し無理を感じるので、エデュラボの計画通りに行かない可能性は十二分にある。

・ITを活用した教育事業ではすでに競争が激化している。ベネッセやリクルート、ジャストシステムなどの大手企業や、スタディプラスなど勢いのある新興企業などが多数参入しており、すでに牙城を築きつつある領域もある。エデュラボはドコモやイーオンなど各業界のトップ企業と組んで事業を展開していく作戦のようだが、やや不透明感がある。

・AIによる文字の自動入力もレッドオーシャン市場になる。エデュラボが開発した文字の自動入力ソフトは現時点では”業界最高水準”のようだが、似たような技術を持つ会社は他にもあるので、長期的には利益率が低下していく可能性がある。深層学習や機械学習は読み込むデータ量が多ければ多いほど精度が上がっていくので、成長速度を上げてより精度を高めていけるかがポイントになる。

■ビジネスモデルの強度 ★★★
・参入障壁は高いか。★★★。英検に関しては高いが、それ以外はいまいち。
・ストック型ビジネスか。★★★。英検プラットフォーム事業は英検の人気が続く限りストック型になる。テスト受託事業は過去に何度か失注もしているようなので微妙。
・時流に乗っているか。★★★★。教育のICT化(IT化)の波には乗っているが、大学入試の動向には不透明感がある。

■チャート
25日線を抵抗線とした下方トレンドになる。4000円あたりでいったん下げ止まりそう。しばらく4000~5000のボックス圏で推移しそう。
<1年チャート>

■まとめ
エデュラボが目標としている年率30%の売上成長、営業利益率20%を前提とすると現在のPER50倍にそれほどの割高感はないが、大学入試改革やAI事業には不透明感があるので、今くらいの水準が妥当のように感じる。投資は大学入試共通テストの英語試験が軌道に乗りそうになるまでは無理そう。とりあえずしばらく様子見。