2022年7月1日金曜日

売買チェック 4~6月

 売買なし。

持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■ジモティー
基本シナリオ:最強の地元取引プラットフォームに
手数料収入にピークアウトの兆しが見え始めた。第1四半期の手数料収入が前第4四半期の収入を下回っていた。以前、1度だけジモティーのエスクロー決済を使って物品を販売したことがあるが、売値1000円に対して、実際に口座に振り込まれたのは450円だった。直取引の場合、金銭受け渡しの手間はほぼないので、エスクロー決済への需要はあまりないのかもしれない。手数料収入がジモティーの一番の成長ドライバーになると思っていたので、ここがコケると痛い。今後ジモティーの売上高成長率は年10%くらいにとどまるのかもしれない。

ジモティーが北見工業大と不要品のリユースで協定を結んだ。学生が卒業する際に発生する不要品をジモティーを介して在校生に譲渡しやすくするという(4/7日経)。このような状況は他の学校でもありそうなので、広く普及してくれればと思う。

業界誌「リサイクル通信」によると、中古品の国内市場規模は2020年の2兆4000億円から2025年には3兆5000億円に膨らむという(5/15日経)。ジモティーもこの流れに乗って成長してくればと思う。

メルカリが新潟県加茂市と連携して、家庭の不要品を「メルカリShops」を通じて販売していくという(6/2日経)。これはジモティーの事業と若干被るが、メルカリでは送料がかかるので棲み分けはできそう。ジモティーでも配送はできるので、この点はあまり問題なさそう。

ただ、この流れで行くとメルカリがジモティーを買収する可能性もある。メルカリと組めばジモティーの成長力は上がりそうだが、メルカリの収益性はフリマ市場の競争激化により低下傾向にあるので、買収される相手としてはあまり好ましくない。買収されるならZホールディングスの方がよさそう。ZホールディングスならPayPayが使えるので、ジモティーのエスクロー決済の利便性も高まるのではないかと思う。

社外取締役にM&Aに詳しそうな弁護士が入った。決算説明資料に「事業展開のスピード加速のため、M&Aを活用することも選択肢の一つ」とあるので、今後M&Aもしていくのかもしれない。現在の手持ち資金は11億円くらいなので、場合によっては増資もありそう。

*<ジモティーの主要カテゴリーの投稿件数>は、投稿件数が「取引終了分」も含めたものに変わってしまったので、今回から中止。代わりにグーグルトレンドでジモティーの注目度を見ていく。しかしなぜ投稿件数の表示方法を変えてしまったのだろうか。取引終了分を含めた投稿件数の表示はユーザーにとってはナンセンスでしかない。投資家目線なのだろうか。それとも弱者特有の自分を少しでも大きく見せたい心理が働いたのだろうか。ジモティーユーザーの大半はスマホで取引しているため、パソコン版でしか表示されない投稿件数の影響はさほど大きくはなさそうだが、ジモティースタッフのセンスが心配になる。

<グーグルトレンド 過去5年の推移>
伸びは弱めだが右肩上がり。

<グーグルトレンド 過去20年の推移とメルカリとの比較>
ジモティーの注目度がメルカリレベルまで高まるとすると、あと8倍くらいの成長余地がある。ただ今のペースで行くと、そこにたどりつくまであと60年はかかりそう。

第2四半期の売上高予想
まずは前回の予想の振り返りから。前回の売上高予想は「ページビューが小幅増、広告単価は微減~横ばい、エスクロー決済手数料が4500万円と想定すると、4億6千万円~5億2千万円になる」だった。

実際は、ページビューは小幅増、広告単価は小幅減、エスクロー決済手数料は3700万円、売上高は4億6千万円だった。広告単価とエスクロー決済手数料が予想より下振れていた。収益は会社計画よりは若干上振れたようだが、売上は予想値の下限であり、手数料収入がマイナス成長だったので、全体的にネガティブな印象。

これらを踏まえて、第2四半期の売上高予想は、ページビューが横ばい、広告単価は小幅減、エスクロー決済手数料が3300万円と想定すると、売上高は4億2千万円~4億5千万円になる。

今後3年の予想売上高成長率は年率10~15%程度。現在の妥当だと思える時価総額は100億円(株価1650円、PSR5倍)くらい。2030年の予想売上高・利益は現在の3~4倍くらい。

■イントラスト
基本シナリオ:債務保証事業で未収金撲滅
市場区分の見直しでイントラストがプライム市場に移った。イントラストはプライム市場の上場基準を満たしていないので、てっきりスタンダード市場に移るのかの思っていたがそうではなかった。将来的にプライムの上場基準を満たす可能性があればプライム市場に移れるらしい。

プライム移行によりイントラストの「中期経営計画」の謎が解けた。中期計画の数字には無理感があったが、この計画を達成すればちょうどプライムの上場基準を満たせる笑。中期計画はプライムありきのものだったのかもしれない。

しかしなぜプライム市場にそんなにこだわるのだろうか。プライム市場に上場すると気候変動の情報開示や英文でのIRが必要になる。イントラストにそういったものが必要だろうか。イントラストは限られた経営資源を商品開発やサービスの充実に集中させた方がよいのではないかと思った。ただ高い目標を掲げて、そこに向かって励んでいくのも悪くはないかなとも思う。

会社が出した今期の業績予想は売上高62億円(前期比25%増)、営業利益14.5億円(同22%増)になる。ビジネスモデル的には達成は難しそうだが、社長は「固い数字」「必達」と言っているので少し期待したい。

今回の業績予想で一番問題に感じたのは、医療費用保証事業がほとんど伸びないこと。ここが伸びないとイントラストの独自色がなくなり、ただの家賃保証会社になってしまう。それでは面白味に欠ける。医療費用保証は医療機関側にメリットの多いものだと思っていたが、何か見落としている問題があるのかもしれない。

今期は事業用物件の保証にも力を入れていくという。社長はこれまで「リスクが高いからやらない」みたいなことを言っていたが、今回それが一転した。リスクヘッジの見込みがたったので第2四半期以降は積極的に引き受けていくという。これで業績の拡大は期待できそうだが、ジェイリースの二番煎じなので、競争優位に立つのは難しそう。

コロナの影響で日本企業の債務が膨らんでいる。民事再生法の予備軍が24万社あるといった推計もあるので、今後倒産が増える可能性がある(4/9日経4/9日経)。もしそうなれば家賃保障事業の未収金が増えるのは避けられそうにない。ただ実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)が延長されたようなので、倒産はしばらく増えないかもしれない。6/6日経

2027年までのイントラストの成長シナリオと業績予想をざっと書いておく。今後2年は家賃債務保証事業が業績を牽引し、24年3月期の売上高は70億円、営業利益は16億円になる。その後は医療費用保証が業績を牽引し、27年3月期の売上高は100億、営業利益は22億になる。この時点での医療費用保証の導入病院数は800(マーケットシェア10%)になる。

今後3年の予想売上高成長率は年10~15%程度。現在の妥当だと思える時価総額は180億円(株価800円、PSR3倍)。2030年の予想売上・利益は現在の2.5~3倍くらい。

■ステムリム
基本シナリオ:再生誘導医薬でテンバガー達成
変形性膝関節症と慢性肝疾患のフェーズ2試験の結果が来年の2~4月頃にわかる予定(バイオテックリポート6/8)。それまでは無風になりそう。

今後3年の予想売上高成長率は年率0~20%程度。業績が急拡大するのは早くて2年後。現在の妥当だと思える時価総額は600億円(株価1000円)くらい。2030年の予想利益は30~500億円くらい。

■今後の計画
インフレが落ち着くまで静観する。ただし米VIX指数が40超、騰落レシオが70以下になった場合は少し買う。

米国が景気後退に陥る確率が高まり、原油相場が天井を打ちそうな雰囲気が出てきたら、米ドルを売る。

次の景気拡大期に上がりそうな株をリストアップ・調査していく。

有望株チェック

よく調べないで買った株は失敗することが多いので、これからはネチネチと調べてから買うことにする。

<10倍株候補の条件>
 ・上場5年以内の会社
 ・社長が若くやり手
 ・オーナー企業
 ・時価総額が300億円以下
 ・長期的なテーマに合っている
 ・急成長している
 ・(IPOから時間が経過し、株価が右肩下がりになっているチャートが狙い目)

<優良企業の条件>
 ・参入障壁が高い
 ・ストック型ビジネスを手がける
 ・時流に乗っている(潜在市場が大きい)
 →業績が落ちにくく、利益成長を続けやすいビジネスモデル
(例)エムスリーやインフォマートなど

■気になっている会社
・スマレジ。クラウドPOSレジを提供する会社。競合は数社あるが、主要プレーヤーは決まってきており、棲み分けもできそうなので、今後順調に成長していけそう。株価は大きく下げており、先日、自社株買いを発表したので、株価は底に近いのではないかと思う。

・インフォマートとZホールディングス。2社のビジネスモデルは強く成長余地はまだまだありそうだが、大きく売られている。ただ時価総額がでかいのがネック。

・パークシャ・テクノロジー。ハイプサイクル的に人工知能は今後本格的な普及期に入りそう。この領域はレッドオーシャンだが、この会社の人材は地頭が良さそうなので勝ち抜けそう。投資回収期に入りつつあるので投資するタイミングとしても良さそう。ただ第2四半期決算で、買収した企業の個別業績が表示されなくなったので、相乗効果がどれだけあるのかがわからなくなってしまった。もう少し観察が必要になりそう。

・SBIホールディングス。FRBが金融緩和に転じたときに買いたい銘柄。この会社はフィンテック分野に大きく投資をしているので長期保有でも問題なさそう。

・SUMCO。シリコンウエハーを製造する会社。高品質のシリコンウエハーへの引き合いは強く、増産投資もしているので、長期で成長していけそう。株価が大きく下げているときに買えば3倍は目指せそう。

マクロ系金融指標チェック

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米10年金利
今後1年の予想レンジ:2.0%~3.8%の間で推移

米長期金利に与える影響が大きい要因順にみていく。
・経済成長率+インフレ率↑
長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になる。2022年の経済成長率は+2.8~4.0%、インフレ率は+4.0~6.5%になる見込み。
*数値はFRB予想やIMF予想などを参照

・金融政策↑
FRBはインフレ対策として量的引き締めを22年5月に開始し、政策金利を22年末に3.4%、23年末に3.8%まで引き上げる予定(その後は利下げに転じる予定)。6/17日経
*FRBが保有資産を3割売却した場合、長期金利は約1%押し上げられるとされる。4/8日経

*政策金利引き上げると長期金利に上昇圧力がかかるが、金利引き上げは需要を抑制するので長期金利には下押しの圧力もかかる。政策金利を中立金利(2.4%)を超える水準まで引き上げると、下押し圧力の方が強くなる。

*FRBは政策金利を2.5%超に引き上げ、保有する債権を3割(300兆円)売却すると、長期金利の上昇などによりFRBの保有する債券に含み損が生じ(ドルの信用に懸念が生じ)、長期金利がさらに上がりやすくなる。2/20日経3/18日経
*3月末時点で、FRBは米国債と住宅ローン担保証券に約45兆円の含み損を抱えている。5/28ロイター

*金利が上がると政府債務の金利負担が大きくなるので、政府は予算規模を縮小せざるを得なくなる。それは長期金利(景気)を下押しする。

・リスクオン、オフ↓
今はインフレが高進しているのでリスクオフ気味。コロナ収束や金余りはリスクオン要因になる。リスクオフ時は国債が買われやすくなる。

・米国債の人気上昇→
米長期金利は海外の主要先進国の長期金利よりも相対的に高いので、海外勢から買われやすい。米長期金利が2%を超えると巨額の買い需要が発生するともいわれる。

ただ米金利上昇により為替ヘッジコストが上昇しており、現状では米長期債の利回りからヘッジコストを差し引くと利回りがほとんどなくなってしまう。日本の一部金融機関は米国債から日本国債に資金をシフトしている。6/3日経

・資金需要の低下、金余り↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になる。デジタル企業は設備投資のための資金需要が少ない。少子高齢化の影響で借り入れなども減っている。

金余りで運用難に陥っている金融機関や企業は多く、そういうところがこぞって米国債を買っている。日経日経

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みなどで潜在成長率は低下傾向にある。

・財政赤字の拡大↑
米国の財政赤字は毎年100兆円を超えているので、米国債の供給増や通貨の信認低下により、長期金利には上昇圧力がかかる。ただ、他国の財政状況も似たようなものなので、相対的にたいした影響はない。

投機筋は米10年債先物を大きく売り越している。投機筋は今後金利が上がるとみている。

・チャート↑
<10年チャート> 長期線を力強く越えてきたので、上昇トレンドに転換しそう。

<前回の予想「今後1年の予想レンジ:1.5%~2.7%の間で推移」が外れた要因>
・FRBは資金収支の問題から大幅な利上げはできないと予想していたが、あまり影響なかったもよう。
・ウクライナ危機の影響などでインフレが予想以上に長引いている。
・今回のような利上げと量的引き締めがセットになった二重の引き締めは過去に例がない。不透明感が強まると買い手不在になりオーバーシュートしやすくなると思った。


■WTI原油
今後1年の予想レンジ:80ドル~150ドルの間で推移

原油価格に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・需要↑
原油の需要は世界経済成長率にほぼ連動する。2022年の世界経済成長率は+3.0~4.4%程度になる。

長期では、温暖化対策や職場・学校のリモート化などにより石油需要は減る可能性がある。仏トタルや英BPは2030年頃に石油需要がピークアウトすると予想している(11/6ヴェリタス日経)。一方、世界人口は今後も増えていくので石油需要は増える可能性もある。米エネルギー情報局(EIA)は2050年の石油需要は2020年比で4割増になると予想している(10/8日経)。

今回のロシアのウクライナ侵攻で原油・ガスの供給途絶リスクが表面化したので、脱炭素シフトが前倒しされ、需要のピークアウトが早まる可能性が出てきた。4/23ヴェリタス

・供給↑
OPECや米国の増産ペースは鈍いが(6/2日経)、22年の需給はほぼ均衡する見通し。23年はやや供給不足に陥る見通し。6/16日経

長期では、脱炭素の潮流を受けて油田開発投資が大きく減っており、また再生可能エネルギーの普及には時間がかかるので、大幅な供給不足に陥る可能性がある。原油の先物市場では、将来の需要切迫を見越して価格が上昇傾向にある。4/26日経

・産油国で不測の事態が起こる↑
ロシアがウクライナに侵攻したため、西側はロシアからの原油調達を絞りつつある。一方、中国やインドはロシアからの原油輸入を増やしている。
ベネズエラやイランは米国から制裁を受けており、産油量が減っている。ただ米政権は2国への制裁を緩和するようなので、いずれ供給は増えそう。
中東では石油施設へのテロ攻撃が度々起きている。3/26日経
*石油(エネルギー)は人間にとって食料と同じ生活必需品のため、わずかでも不足が生じると価格が跳ね上がりやすくなる。

・産油国や産油企業、再生可能エネルギーの採算ライン→
サウジアラビアが財政均衡に必要な水準は1バレル83ドル、アラブ首長国連邦(UAE)は70ドル、イラクは60ドル、ロシアは42ドル、米企業の採算ラインは45~70ドル、再生可能エネルギーは30~80ドルになる。基本的に原油価格はこの範囲内に収まりやすい。

・リスクオン、オフ↓
リスクオフ気味。原油は株式と同じリスク資産になるので、リスクオフ時は売られやすい。

・インフレ対策↑
原油などの商品は最良のインフレヘッジ手段になる。足元ではインフレ対策としても買われている。

・為替↓
原油はドル建てのためドル高になると原油価格に下押し圧力がかかる。足元ではドル高が進んでいる。

・チャート
<10年チャート> ゴールデンクロスを形成。力強い上昇トレンドに。ただ出来高が減りつつあるので、上昇の勢いは弱まりそう。


■ドル円
今後1年の予想レンジ:115円~145円の間で推移

為替に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・日米の長期金利差↑(↓は円高方向)
FRBは3月に金融引き締めに転じ、米長期金利が大きく上昇している。一方、日銀は金融緩和を続け、無制限の国債買い入れにより10年金利を0.25%に抑えようとしている。
*国債買い入れによる通貨供給も円安要因になる。

金利差拡大によりキャリー取引が増えている。
*キャリー取引とは金利差を狙った取引。金利差が大きくなると低利通貨を売り、高利通貨を買って、金利差で収益を得る取引が盛んになる。現在のような状況では低利通貨の円は売られやすく、高利通貨のドルは買われやすくなる。

・日本の経常収支↑
輸出主導の経済構造が変わり、円安・資源高の影響で、日本の貿易収支は赤字に転落しつつある。日本はこれまで年20兆円程度の経常黒字を維持してきたが、今年は4兆円程度になりそう。5/13日経
*海外からの旅行や留学が元の水準に戻れば、3兆円程度の経常収支押し上げ効果があるとされる。5/8日経5/14ヴェリタス6/10日経
*日本の製造業の海外生産比率は1998年に10%だったが、2020年には22%になっている。6/14日経

・日米の経済の強さの違い↑
資金は経済の強い国へ流れ、その国の株式や不動産などが買われる。デジタル革命を主導する米経済は相対的に強いのでドル資産が買われやすい。
*日本の個人投資家は2021年に海外株を8兆3千億円買い越しており、その9割程度は米国株になる。日本株の買越額は280億円になる。6/6日経

・ドル需給↑
FRBがドルを大量供給しているのでドルはだぶつき気味だったが、ウクライナ危機により基軸通貨ドルの需要が高まっている。

・リスクオン、オフ→
インフレ高進やウクライナ危機によりリスクオフ気味。日本は世界一の対外純資産国なのでリスクオフ時に円は買われやすいが、上記要因により円が買われにくくなっている。

・日本企業の対外直接投資↑
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業は海外での直接投資を増やしている。ここ数年は年12~22兆円の買い越しが続いている。対外純資産に占める対外直接投資の比率は増加傾向で、2020年には47%まで上昇している。一方、対外証券投資の比率は28%まで低下している。11/17日経

・国内投資家の対外証券投資↑
日本の機関投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、高い運用利回りが見込める海外債権や株式などを買っている。個人投資家は成長力の高い海外株を積極的に買っている。ここ数年は両者合わせて年10兆円超の買い越しが続いている。

・海外投資家の国内証券投資↓
円調達時の上乗せ金利(ベーシススワップ)が低く、日本国債の金利は安定しているため、海外投資家は日本国債を年10兆円程度のペースで買い越している(3/16日経)。ただ足元では国債価格下落を見越して売りに回っている。6/24日経

・投機筋の持ち高↓(「円 投機的ネットポジション」で検索)
投機筋は売りを継続している。投機筋は円安が進むとみている。
*円を買い持ちした場合はスワップポイント(金利収入)がマイナスになるので、買いポジションが長く続くことは少ない。

購買力平価
物価が上がると(インフレが進むと)、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると(デフレが進むと)、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必用なくなる(購買力は上がる)。この物価変動に着目して二国間の通貨価値をならしたものが購買力平価になる。

日本より米国の方が慢性的にインフレ率が高いので円の購買力平価は長期的な円高傾向にある。ただ米国のインフレ率は年々低下しており日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。為替相場は長期的にはこの購買力平価に収斂していくとされているので、円の下限は75円、上限は115円くらいになる。

*コロナ禍で日米のインフレ格差が広がっている。この状態が続くと円には強い上昇圧力がかかる。

・日銀が保有する日本国債の値下がり↑
日銀は日本国債を515兆円保有しており(6/28日経)、10年債の利回りが0.65%に達した場合、国債の含み損が日銀の自己資本11兆円を上回り、実質的な債務超過と見なされるリスクがある(6/28日経)。そうなれば通貨の信認が低下する。

・日銀が保有するETFの簿価割れ→
日銀の自己資本は約10兆円なのに対し、保有する日本株ETFは簿価で約35兆円ある。日銀の保有するETFの損益分岐点は日経平均株価21000円くらいであり、ここを下回ると自己資本が目減りし通貨の信認が低下する。日経平均株価が15000円台まで下がると日銀は債務超過に転落し、さらに通貨の信認が低下する(日経)。ただ現時点ではそこまで下がる可能性は低い。

・米制裁によるドル離れ↓
米国は対立する国に「ドル取引の制限や禁止」といった金融制裁を課すことがある。現時点で米国はロシアやイラン、トルコ、中国などに金融制裁を課しており、これらの国々は米国債の保有を大きく減らしている。今のところドル離れは一部に留まっているが、今回のロシア制裁(ロシア中銀が保有するドル資産凍結)をきっかけに、ドル離れが加速する可能性がある。3/17日経

・日米政府の過剰債務↑
日本政府の債務は返済不可能な水準まで膨れ上がっているので、2030年頃に円の大暴落が起きる可能性がある。米国も似たような状況だが、基軸通貨なので大暴落は起きにくい。

・キャピタルフライト↑
日本は財政問題や少子高齢化、経済の低成長などの問題を抱えているため、日本人が円資産を海外資産にシフトする可能性がある。国内の家計の預貯金は約1000兆円あり、その1%(10兆円)でも外に向かうと円相場へのインパクトは大きくなる。

・チャート
<10年チャート>
「4月に24ヶ月移動平均線が60ヶ月移動平均線を上抜いており、これによって、下から順に60ヶ月、24ヶ月、12ヶ月が並んだ。いずれも右肩上がりとなり、最も上に現値が位置する状態を維持。強い上昇トレンドを示唆するパーフェクトオーダーを示現している。前回のパーフェクトオーダー完成は13年11月で、その後15年6月に125円まで上昇した。今回もここから1年前後は上昇トレンドが続く可能性が高い。1998年の高値の147円を更新する可能性もある」6/11ヴェリタス
*下のチャートの移動平均線は12ヶ月、24ヶ月、60ヶ月のものではない。

<前回の予想「今後1年の予想レンジ:105円~130円の間で推移」が外れた要因>
・米長期金利が予想以上に上昇したから(FRBが予想以上に政策金利を引き上げようとしたから)。
・インフレ高進が予想以上に長引いているから。


■日経平均
今後1年の予想レンジ:23000~31000円で推移

日経平均に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・金融政策↓
世界の中銀の総資産と世界の株価指数はほぼ連動している(日経)。コロナ禍では世界の主要中銀は市場に1300兆円を供給し株価は大きく上昇したが、現在はその資金の吸収に動いているので株価は大きく下落している。中銀の資金吸収は今後1年で約260兆円になる見込み。6/1日経

*現時点で中銀はまだ資産をほとんど売却していないのにもかかわらず、株式市場は大きく下落している。機関投資家の現金保有比率は2020年春のコロナ危機下の水準(5.9%)に近い5.6%まで高まっており(6/16日経)、個人投資家の現金保有比率もコロナ発生直後の水準(19.1%)まで高まっているので(6/28日経)、やや売られすぎの感がある。

・米長期金利↓
長期金利が上昇すると株式から債権へ資金が流れやすくなる。

*米長期金利上昇により、米大手銀の債券含み損は約5兆5000億円(自己資本の4%程度)まで膨らんでいる。この状態ではリスク資産投資ができなくなる。過去の例では含み損率が3%を超すと株価の大幅調整が起きている。週刊エコノミスト 2022年4月19日号(最終ページ)

・為替↑
円安が進むと海外勢は日本株を買いやすくなる。実際、1ドル130円を超える円安局面では海外勢は日本株を買い越している。

・利回り↑
日本株式の益回りは約7.33%、配当利回りは約2.45%と、日本の10年国債の利回り0.22%より高いので、株式に資金が流れやすい。

・需給↑
海外勢の売り玉はなくなりつつあり、大きく下げたときは日銀や企業が買い支えるので日本株は下がりにくい。

主な投資主体の売買動向を予想
<2022年の予想と現状>
 日本銀行:予想は日本株の買い支えで1兆円の買い越し。現状は5千億円の買い越し。
 事業法人:予想は自社株買いで4兆円の買い越し。現状は2兆円の買い越し。*現時点で企業が発表している2022年度の自社株の買い入れ枠は約4.2兆円。5/25日経6/3日経
 海外投資家:予想は景気後退を懸念して1兆円の売り越し。現状は1兆8千億円の売り越し。
 個人投資家+投資信託:予想は逆張り投資で1兆円の買い越し。現状は9千億円の買い越し。

・EPS(1株利益)↑
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益)× PER(期待度・人気度)で決まる。2022年の予想EPSは0~10%程度になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因についても見ていく。
・為替→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので為替相場の影響が大きい。今後は円安で推移しそうなので利益は増えそうではある。しかし輸入価格が高騰しており(3/10日経)、この分を価格転嫁できなければ利益はそれほど増えない。大和証券は1ドル130円程度の場合、円安による輸出金額の押し上げ効果よりも、輸入価格の上昇によるマイナス影響の方が大きく、GDPは0.05%ほど押し下げられると試算している。6/10日経

・海外景気→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので海外景気の影響を大きく受ける。2022年はコロナが収束し世界景気が正常化しそうではあるが、インフレ高進(金融引き締め)などにより景気には強い下押し圧力がかかっている(インフレは消費者の購買力を奪い、消費主導の不況を起こす)。

・失業率↑
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益が圧迫され、労働量力不足で成長が頭打ちになりやすい。現在の失業率はコロナ前よりもやや高い水準にある。

・減価償却費や資源価格↓
減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇すると利益が圧迫される。足元では減価償却費は横ばいだが、資源価格は上昇している。

・金融政策↓
金融引き締めで金利が上昇すると企業の利益や資金調達環境は悪化する。日本は金融緩和を続けているが、世界全体で見れば金融引き締め環境にある。
ーーーーー

・PER(期待度、リスク選好度)↑
日経平均の過去のPERは11~17くらいだが、現在のPERは12.92倍とやや低位の水準にある。今後EPSが下がる可能性もあるので、妥当な水準に見える。

投機筋の持ち高
買い残は7500億円で、裁定売り残高は2700億なので、投機筋は日本株が少し上がるとみている。
*一般に、裁定買い残高が3000~6000億円まで減少すると「売られすぎ」、3.5兆~4兆まで増加すると「買われすぎ」とされる。

・個人投資家の流入↑
コロナ禍の「巣ごもり」や「老後2000万円問題」などの影響で株式市場に個人投資家が流入している。米株式市場においては個人の売買シェアがコロナ前の10%から(一時)25%まで高まっている。日経

2021年末の米国の家計(個人)の現預金は2000兆円とコロナ前より500兆円増えている。ゴールドマン・サックスは22年の個人による株式の買い越しが20兆円になると予想している(4/5日経)。ただ、足元で米個人投資家の心理が「異常な弱気」に傾いているので、そこまで買われない可能性もある。ちなみに、この指標が「異常な弱気」を付けた後の6~12ヶ月は平均以上の株価上昇になりやすいとされる。6/1日経

*投資家の強欲と恐怖指数(Greed and Fear Index)は現在「Extreme Fear(極度の恐怖)」となっている。このように市場心理が悲観過ぎるときは、すでに株価にほぼすべての悪材料が織り込まれているので、意外な好材料に株価が反発しやすくなる。6/6東洋経済

・パッシブ運用の膨張↑
パッシブ運用にはストック効果(積み上げ効果)があるので、この運用が増えれば株価は下がりにくくなる。現在、投信やETFでパッシブ運用の比率が高まっており、世界では44%、日本では73%まで高まっている。ただパッシブ運用が増えると流動性が低下し、値動きが激しくなりやすいという問題がある。日経日経

・チャート↑
<10年チャート> 調整気味ではあるが、まだ上昇トレンドを保っている。


■東証グロース指数(旧マザーズ指数)
今後1年の予想レンジ:800~1150の間で推移

東証グロース指数に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・金融政策↓
東証グロース指数は中銀総資産との相関が全市場の中で最も高いので、中銀の資産縮小時には真っ先に売られやすい。とはいえ、先にも触れたように中銀が資産を売り始める前に、マザーズ指数はコロナ前の水準まで下げているので、やや売られすぎの感がある。

金利の上昇も小型グロース株には逆風になる。金利が上昇すると将来の成長期待を買われている小型グロース株ほどバリュエーションが低下しやすくなる(詳細は後述)。また小型グロース企業には赤字企業が多く、金利上昇により成長資金を調達しにくくなる。

・需給↓
グロース市場は日銀の買い支えがなく、自社株買いもあまり期待できないため、相場下落時は下げ止まりにくい。

東京グロース市場での海外投資家の売買シェアは約50%を占め、海外投資家は昨年の11月からほぼ一貫して売り越している(ヴェリタス3/53/19日経)。ただそろそろ売り玉が突きそうなので下げ止まりそうでもある。

個人投資家は多数が含み損を抱えているので大きな買いはあまり期待できない。

・EPS(1株利益)成長率
不明。グロース指数を構成する企業群の連結損益合計はおそらくマイナス。今後の見通しも不明(要調査)。

<反転シグナル>
信用評価損益率の急激な悪化は一つの反転シグナルになる。信用評価損益率が急激に悪化して、追い証回避の投げ売りが殺到すると、信用での買い持ちが急減して需給が軽くなる。過去の例では、そのタイミングで海外投資家が買いに転じるパターンが多い。

現在の信用評価損益率は-28%と平均よりかなり低いが、下落の仕方が緩やかなのでセリングクライマックスのような投げ売りはまだ見られない。

2007~2009年の金融危機では、2007年12月に信用評価損益率が-30%を超え、そこから約1年5ヶ月にわたってマイナス幅が30を超えている。この間にマザーズ指数は900台から300近くまで落ちている。当時も今も金融引き締めなど似たような局面であり、このような前例をふまえると、東証グロース指数はあと1年くらい調整が続くかもしれない。ヴェリタス3/5

<マザーズ指数の10年チャート> 緩やかな下降トレンド。底は600くらいになりそう。

市場環境チェック

 株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などを見ていく。

■EPS成長率
・世界株式の2022年の予想EPS成長率は10%。
・米国株式の2022年の予想EPS成長率は8~10%。2023年は5~10%。
・欧州株式の2022年の予想EPS成長率は0~10%。
・日本株式の2022年の予想EPS成長率は0~10%。2023年は3%。 
*参照、5/14日経5/15日経など
*今は金利低下で企業の利払い費が減少しており、経済のデジタル化で設備投資や人件費も減少しているので、利益が増えやすくなっている。

■経済成長率
・世界の2022年の予想成長率は3.6%、2023年は3.6%。
・米国の2022年の予想成長率は3.7%、2023年は2.3%。
・中国の2022年の予想成長率は4.4%、2023年は5.1%。
・ユーロ圏の2022年の予想成長率は2.8%、2023年は2.3%。
・日本の2022年の予想成長率は2.4%。2023年は2.3%。
*数値はIMF予想。4/20日経
*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほどには不況感が強まらない可能性もある。(経済成長率を測る指標のGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。)

*コロナの影響で2020年の日本のGDPは落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が向上していれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。日経

*デジタルサービスやデジタルツールはGDPや生産性の統計には反映されにくい。現在それらの影響を測る新しい指標の開発も進んでいる。2/15日経

■インフレ
・米国の予想インフレ率は2022年が4.0~6.5%。
・欧州の予想インフレ率は2022年が4.0~6.0%。
・日本の予想インフレ率は2022年が1.5~2.5%。
*参照:12/11ヴェリタスなど
*参照:米PCE(個人消費支出物価指数)、米CPI(消費者物価指数)ユーロHICP日本CPI。中央銀行は主にこれらの指数を使って政策決定する。
*米国の今後10年の予想インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレ率10年)は2.36%。ブレーク・イーブン・インフレ率とは債券市場の予想物価上昇率で、実質金利を算出するときなどに用いる。

世界中でインフレが高進している。インフレ要因とデフレ要因を一通りあげて、今後のインフレ動向を予想していく。

<インフレ要因>
★コロナ禍特有のもの
・供給基盤が破壊され供給不足が生じている。
・コロナが収束せず供給不足が長引いている。
・コロナで対面型サービスの人気が落ち、賃金が上昇している。
・コロナ対応に慣れてきて需要が増している。
・政府から給付金が支給され需要が増している。
・金融緩和の影響で資産価格や商品価格が上昇している。
・量的緩和の影響で通貨価値が下落している。
 
★コロナ後も続くもの
・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。脱炭素シフトにより2030年まで年0.7%程度の物価押し上げが見込まれている(11/19日経ヴェリタス11/6ヴェリタス11/6)。主要中銀が加盟する「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)」は50年までに脱炭素社会への移行が円滑に進む場合、日本でさえインフレ率が3%程度に達すると予想している。4/28日経
*脱炭素シフトが完了すれば再生可能エネルギーはデフレ要因になる。

・異常気象や世界人口増、新興国の経済成長、バイオ燃料需要、肥料価格上昇などにより、食料価格が上昇傾向にある。12/31日経2/4日経6/11ヴェリタス
・ロシアのウクライナ侵攻により食料・資源・エネルギー価格が上昇している。西側の制裁は長引きそうなので、これらの価格は高止まりしそう。ただ、過去50年間の戦時の商品価格の高騰を分析すると、開戦5ヶ月後に5割程度まで高騰してピークを付けた後、下落に転じるパターンが多い。その流れでいくと商品価格は7月頃にピークを付ける可能性がある。5/24日経

・人手不足で賃金が上昇している。米国では求人件数が1000万件を超えているが、完全失業者は600万人まで減っている。仮に失業者全員が求人に応じたとしても、400万件程度の求人が充足されない計算になる。コロナ前の景気拡大局面のピークでも未充足数は150万件程度だったので人手不足感は強い。労働参加率が低いのは、コロナ感染への懸念や雇用条件に対する不満だけでなく、移民の伸び悩み、高齢化の進展、株高による早期退職(160万人)、”アンチワーク”など構造的な要因も絡んでいるので、早期解決は難しそう(11/19日経1/15ヴェリタス2/7日経)。ただ、求人数には実体のない求人情報も多数含まれているといった推計もあるので(6/12日経)、実際の求人件数はもう少し少ないのかもしれない。
・米住居費が上昇している。家賃上昇が2022年と23年の米CPIを1.1ポイント押し上げると見込まれている。2/19日経
・経済の脱グローバル化で、製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇している。
・世界の生産年齢人口比率は2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなくなる可能性がある。11/10日経

<デフレ要因>
・経済や社会がデジタル化している。コロナの影響でデジタルシフトが加速している。
*経済や社会のデジタル化は強力なデフレ圧力になる。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば検索やSNSは無料だし、ネット上では価格比較を簡単にできるので売り手は超過収益を得にくくなっている。またスマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。他にも複製コストゼロのデジタルソフトやシェアリングサービスの普及などもあり、価格は下がりやすくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争が起きると価格がゼロに近づく。

・イノベーションが加速している。今はインターネットやAIにより情報・人・モノのイノベーション(新結合)が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。
・金融引き締めに転じている。金融引き締めには需要を減らす効果がある。米消費者態度指数は過去最低にまで落ち込んでいる。6/11日経
・世界的に経済成長率が鈍化している。過去40年で米国の潜在成長率は3%前後から2%前後に低下している。2/8日経
・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向(収入に占める支出の割合)は低い。
・世界的に少子高齢化が進んでいる。高齢者は支出が少ない。高齢者を支えるための税金が増えている。
・世界的に労働人口が減少傾向にある。消費が縮小する。
・人手不足で成長力が低下している。
・人手不足で経済・社会のデジタル化が加速している。
・経済の脱グローバル化で、製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇してはいるが、「自動化」により、そのコストが徐々に減少している。
・経済のグローバル化は終わったわけではなく、安価な輸入品は増えている。
・米国においてはドル高が進んでおり、自国通貨高による輸入増と輸出減がインフレを押し下げている。

以上をまとめると、あと3ヶ月くらいはインフレが高進し、その後は徐々に落ち着いていきそう。ただ米国では需給ギャップが当面プラス圏で推移するようなので(10/29日経)、あと2年くらいは高水準のインフレが続くかもしれない。

■金利
・米国の2年金利は2.99%で10年金利は3.09%。30年金利は3.19%。
・日本の2年金利は-0.05%で10年金利は0.22%。30年金利は1.29%。

*(名目金利からインフレ率を差し引いた)実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態では、国債を買ったり銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。これまでG20の半数以上の国で実質金利がマイナス圏にあったが、ここ数ヶ月でプラス圏に浮上する国が増えている。

*投資家は企業が将来生み出すであろう利益から金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益は減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分が多くなり、理論価値が下がりやすくなる。
*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.4%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。
*米10年金利が米2年金利を下回ると、その1年~1年半後に景気後退に陥ることが多い。米国では6月に一時10年金利が2年金利を下回っている。世界中でも同様の現象が起きている。6/30日経
*景気拡大期の「良い長期金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場へのネガティブな影響が大きい。ヴェリタス
*景気拡大期終盤に金利が上昇すると、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こりやすくなる。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。

■債務
・世界の債務はコロナ下で急拡大し過去最高のGDP比350%に達している。2/12日経

*債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くとどこかで必ず資金の逆回転が起こる。債務拡大ペースはここ10年、毎年GDPの成長速度を上回っている。
*債務の質は劣化しており、米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割超が格付けの最も低いトリプルBになっている。*日本には低格付け債市場がない。
*米欧の低格付け企業向けの融資「レバレッジドローン」の融資実行額が過去最高水準で推移している。借り手の返済能力は落ちており、今後の金利上昇局面では返済に行き詰まる企業が続出する可能性がある。日経

*金利が経済成長率を下回っている状態では、企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にすることができるので債務が膨らみやすくなる。政府も多少の財政赤字を続けていても債務残高のGDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。
*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構造になっている(参照)。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りていない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。
*2021年は日米の倒産件数が過去最低水準まで低下しているが(1/13日経1/18日経)、
負債は膨らんでおり、政府の金融支援は間もなく終わるので、2022年は倒産件数が急増する恐れがある。

*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。削減できなくても政府債務は実質的に返済不要なので特に問題なさそう。
*中国の可処分所得に対する家計債務比率は日本のバブル期並の120%まで高まっている。中国は今後深刻な消費不振に陥る可能性がある。参照
*中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる。日経

*新興国のドル建て債務の増加も著しく、10年前の約2倍(約500兆円)まで増えている。足元ではドル高が続いており実質的な返済負担が増している。一部の国ではデフォルト懸念が高まっており、デフォルトがいったん起きてしまうとドル高が一段と進み、デフォルトが連鎖しやすくなる。3/15日経

<バブルについて>
バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより生じる現象。現在バブルは発生しているが、その投資主体は民間から政府(中央銀行)にシフトしているのでバブルは破裂しにくい。足元ではインフレが高進しており、その対策として中央銀行が資産を売却しはじめてはいるが、政府債務は実質的に返済不要なのでインフレが落ち着けば売却を止める可能性が高い。バブルが完全崩壊する可能性は低い。
*先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、深刻なバブル崩壊(金融危機)は起こりにくい。デフォルトが発生し、それが連鎖しても金融機関は7%超の自己資本比率を維持できるとされる。参照

■金融政策、財政政策
・世界中の中銀がインフレ対策で金融引き締めに転じている。ただ日本や中国など一部の中銀は金融緩和を続けている。5/14日経6/19日経
*日銀が金融引き締めをしないのは、日本のインフレ率が2%程度と低く、コストプッシュ型の悪いインフレのため。日銀は現在のような需要不足の状態で引き締めをすると景気後退に陥ると考えている。
 ただ、日銀は国債を無制限で購入し10年債利回りを0.25%に抑えようとしているが、日銀の操作の及ばない20年国債や30年国債の利回りは0.8%超に上昇しており、利回り曲線に歪みが生じている。このような歪みはどこかで修正され、修正されるときには何かしらの波乱が起こる。第二次世界大戦時にも政府が国債市場に介入し、同じような歪みが生じているが、その歪みは円の大暴落(ハイパーインフレ)によって修整された。現在も日銀の操作の及ばない為替市場が歪みを修正しようとしており円安が進んでいる。日銀の思惑通りにインフレが9月頃までにピークアウトしない場合は、さらに円安が進む可能性が高い。5/7ヴェリタス

*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利をあまり引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀は政策金利を2%まで上げると債務超過に陥るとされる(日経)。FRBは政策金利を2.5%まで上げると資金収支が「逆ザヤ」ぎりぎりの水準まで悪化するとされる。2/5ヴェリタス
*MMTは日本が行っている金融・財政政策とは若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。

■政治
・日本の政治は比較的安定。岸田政権の支持率は60%と高水準で推移している(6/26日経)。ただ財政支出ではばらまき色が強く、その効果を検証する仕組みもないので(1/6日経3/22日経3/22日経)、今後も愚策が繰り返されそう。
・海外は不安定。ロシアが「一線」を越えてしまったので、ロシアと西側との関係は当分冷え込みそう。ロシアは資源大国なので世界経済に下押しの圧力がかかる。
・米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に長期にわたり続きそう。
*米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制を強化している。規制が厳しくなると民間の活力がそがれるので今後成長が鈍化する可能性がある。
・米欧は格差拡大や価値観の分断を背景にしたポピュリズム(大衆迎合主義)が拡大しつつある。ポピュリズムは目先の利益を優先するので、長期的な成長力が落ちやすくなる。

■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数は右肩上がりで推移している。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は56.1と高水準で推移している。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数も55.9と高水準で推移している。
*同指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増える。
米国の失業率は減少傾向で現在は3.6%。ほぼ「完全雇用」の水準(3.5%)にある。
*米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥るとされる。
*米失業率が「完全雇用」の水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。日経
・米景気の先行指標であるダウ輸送株ラッセル2000は下げ基調になっている。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは50.2とほぼ中立の水準にある。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りは1月頃から上昇基調になっている。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれる。現在は3つ起きている。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は2~3の段階になる。

■その他指標
・日米の騰落レシオは104、89と問題のない水準。
・日本株の信用評価損益率は-12.23%と問題のない水準。
・チャートは全体的に下降気味だが、10年チャートではまだ一応上昇トレンドを保っている。

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
高インフレにより景気後退に陥る確率が高まってきた。民間・政府ともに債務山積みの状態で金利を引き上げているので、景気には強い下押し圧力がかかっている。ただコロナは落ち着きつつあり、イノベーションの勢いは止まりそうにないので景気後退に陥ったとしても回復は早そう。インフレが落ち着けば、また長期の景気拡大期に戻れるのではないかと思う。

<補足>
景気循環(債務循環)の基本的なパターンは不景気 →金融緩和 →景気拡大(債務拡大)・失業率低下 →景気過熱・インフレ過熱 →金融引き締め →景気後退(債務圧縮)の流れになる。足元では景気が過熱する前にインフレが過熱しているので、従来のパターンとは少し異なる。現在は景気が弱い状態で金融引き締めをしているので、景気後退(停滞)に陥りやすい。

■他の景気後退シナリオ
景気後退シナリオ1:中国のバブル崩壊で景気後退
中国の民間債務残高は積み上がっており、GDP比220%に達している(日経)。景気下振れなどでいったんデフォルトが起これば、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。バブルが崩壊すれば独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性もある。そうなれば政治的混乱が相まって不況が深刻化する。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただ中国政府には財政・金融政策をする余地があるのでバブルが崩壊する可能性は低い。

ただ中国ではゼロコロナ政策が長引きそうな雰囲気になってきている。中国には有効性の低いワクチンしかなく、ゼロコロナ政策をやめると一年以内に200万人の死者が出ると推計されているので(5/7ヴェリタス5/12日経5/12日経5/13日経6/23日経)、簡単にやめられそうにはない。しかしこの政策を続けると経済が低迷しバブルが崩壊する可能性がある。

景気後退シナリオ2:中国が武力で台湾を併合し、米中戦争が激化して景気後退
中国が2024年頃までに武力で台湾を併合するとの見方が増えている(11/2日経1/24日経1/24日経1/31日経)。実際にそれが起これば米中戦争が激化し、世界景気には強い下押し圧力がかかる。ただ今回のロシアの件で、他国に武力侵攻すれば国際社会の包囲網がいかに厳しくなるかを中国は痛感しているはずなので、中国が侵攻する可能性は低下している。3/18日経4/5日経4/20日経

景気後退シナリオ3:「脱成長」経済システムに転換して景気後退
COP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は「産業革命以前から21世紀末までの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指して、努力を追求することを決意」することで合意したが、現在その実現は絶望的な状況にある。各国の2030年時点での目標がすべて達成されても21世紀末までの気温上昇は2.4度になるとされる。そうなれば海面上昇で沈む島国が出て、山火事や巨大台風などの自然災害が多発し、水不足、食糧危機、感染症のリスクなどが増大する。このような未来が科学的に予測されている現状で対策を取らないという選択肢はない。問題の根幹は現在の「成長型」経済システムにあるので、「脱成長」の経済システムに転換する必要がある(1/11日経)。ただ現在の状況で「脱成長」の経済システムに転換すれば景気後退は避けられなくなる。

深刻な景気後退に陥ると、財政問題や福祉問題など目先の深刻な問題が噴出するようになり、それらの問題に対処せざるを得なくなる。そのため経済システムの転換は当分先になりそう。環境危機が目先の大問題に発展したときに初めて転換の機運が生まれるのかもしれない。

もしくはAI・ロボット社会が温暖化問題の打開策になる可能性もある。温暖化の最大の要因は「人の活動」になるが、AIやロボットが進化・普及すれば、世界で数十億人の「無用者階級」が生まれそうなので(『21 Lessons』)、長期的に人が減っていく可能性が高い。そうなれば環境問題は解決するのではないかと思う。

景気後退シナリオ4:災害や紛争で景気後退?
大災害や戦争が起こると景気には強い下押し圧力がかかる。しかし、こうしたことが起こると必ず政府が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば景気はV字回復することが多い。一般に、災害や紛争は押し目買いのチャンスといわれる。今回のようなパンデミックも株式市場には追い風で、社会・経済構造の転換や金融緩和などにより、長期にわたる株高が発生しやすくなる。ロイター

ただし日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は1000兆円規模の損失が発生し、日本は深刻な景気後退に陥る可能性が高い。日経

■今後の計画
円が105円くらいまで上昇したら、3倍以上の値上がりが見込める海外資産を買っていく。ただ馴染みのある海外企業はすべて巨大なので株価の大幅上昇は見込みにくい。無理して買わないようにする。

・米市場に上場している「半導体ETF」、「サイバー・セキュリティETF」。AI・ロボット社会では半導体企業とサイバー・セキュリティ企業の力強い成長が期待できる。基準価額が大きく下げているときに買えば3倍は狙えそう。

・アーク・イノベーションETF。キャシー・ウッド氏が運用する「破壊的イノベーション」企業に集中投資するファンド。ウッド氏は「AI」「ロボット」「ブロックチェーン」「ゲノム解析」「エネルギー貯蔵」の5つのテクノロジーが次の10年で世界を変えると考えている。ただ、氏が投資する企業は、将来性はあっても利益の出ていないところが多く、そのような企業は景気悪化時には財務不安が高まり売られやすい。このファンドは低金利を前提にしたファンドともいえる。このファンドを買うとしたら、景気が底打ちして低金利になったときになる。

・バークシャー・ハザウェイ。ウォーレン・バフェット氏が経営する会社。バフェット氏は投資する会社の将来性だけではなく、キャッシュフロー(利益)も重視しており、組み入れ銘柄は財務の安定性や健全性が高い企業が多い。そのため景気悪化への耐性がある。バークシャーは10兆円を超す手元資金が問題視されていたが、足元の下げ局面では積極的に買いに動いている(5/2日経)。景気回復時には大きな反発が期待できる。問題はバフェット氏が92歳と高齢なこと。持ち前の目利き力でよい後継者を選んでいるとは思うが、氏の能力を引き継ぐのは難しそう。

・米GXOロジスティクス。物流サービスを受託する会社。消費者から不良品や使用済み製品などの返品を受け付ける事業に強みがある。ITを駆使して商品の点検や修理、廃棄や返金といった複雑なプロセスを請け負うので、ただの商品配送よりも付加価値が高くなりやすい。小売業者からの引き合いは強く、参入障壁は高いようなので、長期の成長が期待できる。3/9日経

・アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、アップル、セールスフォース。これらの大型株はまだまだ成長しそう。巨大企業だが株価が落ちたところで買えば3倍を目指せるかもしれない。

よさそうな新興国株は、インド株のETF、東京海上インドオーナーズ株式オープン。インドは人口ボーナスで2050年頃までは成長が続きそう。ただ、成長率の高い国はインフレ率も高いので株価が上昇しても為替差損で思ったほど利益を得られないかもしれない。
*GDP成長率とインフレ率は同程度になる。

よさそうな商品は銅。グリーン革命で需要は右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などで供給不足に陥りそう。日経5/16日経

日本円と米ドルが暴落しそうになったら、スイスフランやスイスフラン建てのETF(UBS ETF スイス株 (MSCIスイス20/35))を買っていく。 

■今後の株式市場について
日本や米国の公的債務は返済不可能な水準まで積み上がっており、この巨額の債務を返済するには財政を健全化するか、インフレを起こすしかない。ただ生活者に余裕のない状態で財政を健全化しようとすると逆効果になるので、現実的にはインフレを起こすしかない。

しかし、そのインフレもデジタル化やグローバル化などの影響で起こりにくくなっている。この状態でインフレを起こすには中銀が通貨を大量供給するしかない。現在、政府が大量発行した国債を中銀が買い取る形で通貨を大量供給しているが、この構図は今後もしばらく続く可能性が高い。

このような状態が続くと通貨の価値(信認)が落ちていき、資産価格には上昇圧力がかかる。株式市場はこのような流れで今後、長期で上昇を続けるのではないかと思う。

ただし、このような政策を永遠に続けることはできない。このような政策を続けていると、どこかで必ず通貨の信認喪失が起こる。そうなると通貨安・インフレが加速し、国内からお金が逃げ出し、株式市場は大暴落(中長期では大暴騰?)する。それが起こるタイミングはおそらく、日本の経常収支が赤字に転落したとき(国の借金が民間の貯蓄を上回ったとき)になる。危機は2030年頃に訪れるかもしれない。
日経によると2031年に日本が財政破綻する確率は50%になる。