2020年4月3日金曜日

売買チェック 3月

*ブログの次回更新は7月。

■買い
・日経レバETF 買い増し
新型コロナウイルスの感染拡大がピークアウトしてなかったので買うのはまだ早いとは思ったが、日経平均株価に大底シグナルが出ていたので打診買い。日経平均のPBRは一時0.82倍、騰落レシオは40、信用評価損益率は-31%まで低下していた。加えて東証一部ではセリングクライマックスを示唆するような出来高をつけており、その直後に日銀がETF購入目標額を引き上げたので需給的にも底だと思った。

*リーマンショック大底時の日経平均PBRは0.81倍。3/17日経
*セリングクライマックスとは「売りの最終局面」という意味。過去の例では東証一部の時価総額に対する売買代金の比率が1%程度まで高まったときがセリングクライマックスになっている。3月13日の東証一部の時価総額は482兆円、売買代金が4兆8900億円で、時価総額に対する売買代金の比率は0.98%まで高まっていた。3/6日経

<TOPIXの1年チャート> 3月13日の出来高が急増している。

・米ドル売り(レバ10倍)
円高のトリガー(米景気後退)が引かれそうだから。
円が90円になった場合、もしくは新型コロナが収束しそうになったら買い戻す。損失が-10%になった場合も買い戻す。

■売り
・日経レバETF 全売却 損益-14%
新型コロナウイルスは一気に収束するような性質のものではないとわかったから。3/24の日経に米ジョンズ・ホプキンス大発の情報として「呼吸器に感染して広がるウイルスで、症状が軽いのに感染力があるものが特に危ない。新型コロナは目に見えず、人をすぐには殺さず、気管などで増え拡散していく。ほとんど症状が出ない患者たちが感染を拡大させる。このウイルスは世界で壊滅的被害をもたらす恐れがある。」みたいなことが書いてあった。

石油価格戦争が始まったのも売り要因。米シェール企業の破綻が信用不安を加速させそう。

・朝日ネット 全売却 損益+28%
優良企業だがポートフォリオ再構築のために売却。

・・売った後に気づいたが、ここはテレワーク関連銘柄だった。今後はリモートワークの環境整備ために回線を増強する投資が増えていきそう。ASAHIネットの通信品質は高いので引き合いが強くなりそう。少し失敗。

・パーク24 全売却 損益-42%
コロナショックが長引きそうだから。この会社の現在の流動比率は90%なので、資金繰りが厳しくなりそうだと思った。

・マークラインズ 全売却 損益-20%
会社を調べてみたら、あまり強そうな会社ではなかったから。
自動車販売台数は2017年にピークアウトしていたが(1/5日経)、コロナショックでさらに下ブレそうだから。「情報プラットフォーム」事業はそれほど影響を受けなさそうだが、「プラットフォーム関連」事業が大幅に落ち込むと思った。

・シンクロフード 1月~3月にかけて3割売却 損益-58%
決算と分売とコロナショックで株価急落。チマチマ売却作戦失敗。株式市場ではこのようなアクシデントもあるので、チマチマ売却にも問題があることがわかった。

ただ今回の根本的な敗因はこのようなアクシデントではなく、時価総額を気にしていなかったことになる。時価総額に着目していたらおそらくもっと早くに「高い」と気づいていたはず。シンクロフードは純利益が7億円くらいでピークアウトしそうだが、それで時価総額150億円(株価550円、PER21倍)には割高感があった。今回、株価の数値自体にはあまり意味がないことがわかったので、これからは時価総額を中心に見ていく。

・・シンクロフードは株式投資の良き教師だと思っているが、少し厳しすぎるところがある。だんだん腹が立ってきた(笑)。

売買チェック 2月

■買い
・チームスピリット
クラウドソフト「TeamSpirit」に競争力があると思ったから。2019年にマザーズに上場した企業の2割がTeamSpiritを採用していたのが決め手。

・鎌倉新書とメドピア
優良プラットフォーマーっぽいのに「コロナショック」で大きく下げていたから。

*これらの銘柄は日経平均が22000円を割ったときに仕込んだが、結果的には失敗だった(一部損切りした)。当初、新型コロナウイルスはインフルエンザ程度のものだと考えていたが誤りだった。この点について、レオスキャピタルが2月25日に出したレポートが参考になったので簡単にメモっておく。

「現在、現金の比率を過去最大規模まで高めている。現金比率を上げた理由は「不確実性」が広がっているため。新型コロナウイルスで市場にとって重要なのは致死率が高いか低いかではなく、「不確実性」が広がっているかどうか。市場は「不確実性」をなにより嫌う。

現時点ではウイルスの感染拡大を止める方法はなく、有効な治療薬もない状態で、世界に急速に広がっている。感染の広がりがピークアウトしたと確認できるまでは「不確実性が広がる」と見るのが適切。

経済面では、日本の昨年10-12月のGDPが年率6.3%減少しているので、日本株が上昇する要因は少ない。加えてウイルス対策で外出を控えたり、イベントを中止したりすることは消費の急ブレーキ要因になる。中国での生産停滞も株式の下落要因になる。米国株は高い水準まで買い上げられているので「不確実性の広がり」に対する危険度は増していると考えるのが妥当。

今後の方向性としては買いを目指していく。ここから株式市場が一気に反発することも考えられるが、その場合は機動的な買いによって市場の上昇に置いて行かれないように準備しておく。その上で、もしパニックのような下げ相場がくれば、それこそバーゲンセールで、たっぷり仕込む。その際に投資する銘柄は現在リストアップしている。」

■売り
・鎌倉新書は全売却、チームスピリットは100株残しで全売却 損益-10%
損切りラインに達したから。中小型株は中長期で上値が重そうだと思ったから。

・メドピア 全売却 損益+4%。
中小型株は上値が重そうだったから。この会社のコアなプラットフォーム(医師掲示板プラットフォーム)がエムスリーとかぶっていたから。ただ業績は急拡大しており、オンライン産業医プラットフォームなど新規事業が伸びていきそうなので観察は続ける。

売買チェック 1月 フェローテック

■買い
・フェローテック
半導体関連の出遅れ銘柄。1月8日付の大スポ記事がきっかけ。株式評論家の北浜流一郎氏は毎年、証券関係者仲間を集めて忘年会を開くようだが、そこで各人の翌年一押し銘柄をあげてもらうという。その忘年会で2年連続トップになった雨宮栄子氏(京子氏?)が挙げていたのがこの銘柄。雨宮氏は去年、弁護士ドットコムを挙げていていたのでなにか通じるものを感じていたが、日経でフェローテックを調べてみると11/8の日経でフェローテックIRが「業績は今期が大底になる」と言っていたのでよさそうだと思った。チャート的にも「セットアップ」が完了しているように見えた。

<1月9日時点での1年チャート> 底値を切り上げながら移動平均線が収斂している。

<1月9日時点での5年チャート> 累積売買高的には「底」で、中期の移動平均線でもゴールデンクロスを形成しそう。ただし、赤い線(1500円)あたりが「天井」になりそう。

<1月9日時点での5年チャート> 一目均衡表では雲が薄くなりつつある。


フェローテックについて調べてみた。

■どんな会社か
半導体関連製品などを製造・販売する会社。半導体分野のニッチ領域に強く、真空シールやサーモモジュールは世界シェアトップ。売上の8割は海外になる。

今期の予想売上高は850億円で、その内訳は大きい順に
・その他(産業用刃物、組み立て受託など)172億円
・石英製品 160億円
・サーモモジュール 126億円
・セラミックス 88億円
・半導体ウエハー 81億円
・真空シール 80億円
・洗浄事業 64億円
・EBガン・LED蒸着装置 38億円
・CDV-SIC(炭化ケイ素) 21億円
・石英るつぼ 11億円
・磁性流体 7億円
になる。営業利益率は例年10%程度だが、今期は売掛金の未回収や為替差損により7%程度まで低下する。

■成長ストーリー
「デジタル革命と『中国製造2025』の波に乗って業績拡大」が基本シナリオ。

今は世界中でデジタル革命が起きているので、今後長期で半導体製品の需要拡大が見込める。また中国では国策『中国製造2025』で半導体の内製化率を現在の15%から2025年に70%まで高める目標を掲げている。中国に「本拠地」を置くフェローテックはこれらの需要を的確に捉えていくことを基本戦略としている。

フェローテックは2017~2019年に1000億円程度の設備投資をしているが、その大半は中国の工場向けになる。中でも最も投資をしているのが半導体ウエハー製造工場向けで、中国の半導体ウエハー市場でトップシェアをとることを目指している。

次に力を入れているのが半導体洗浄事業で、中国ではすでに6割のシェアを抑えており、今後は市場の拡大に合わせて成長させていくという。

5G関連で成長しているのがサーモモジュール事業になる。現在、中国製の5G通信機器で使われているサーモモジュールの9割はフェローテック製になるが、この需要は2023年までに現在の4倍まで拡大する見込みという。
*サーモモジュールとは対象物を温めたり冷やしたりする半導体冷熱素子で、自動車の温調シート、通信機器、医療機器、家電などに使われる。

投資フェーズのピークは過ぎたが、今後も年間100~200億円の投資は続けていくという。投資先は半導体ウエハーの再生工場や半導体開発・分析センターなどで、投資資金は自己資金に加えて、中国政府からの補助金、株式市場からの調達などを考えているという。

今期の会社の売上高予想は850億円で、来期が1100億円、再来期が1250億円になる。現在の生産能力の売上高ポテンシャルは1600~2000億円くらいあるという。

■問題点
・半導体ウエハーが供給過剰になりそう
フェローテックは「ムーアの法則が限界を迎えつつある」として供給過剰懸念を否定しているが、フェローテックが製造する半導体ウエハーは参入障壁の低いレガシー半導体になる。中国では政府のバックアップなどにより(レガシー)半導体ウエハー工場の建設ラッシュが続いているが、政府の需要見通しは往々にして外れるので、今後は鉄鋼業界で起きているような供給過剰に陥っていく可能性がある。中国政府はかつて鉄鋼産業を全面的にバックアップしていたが、その後供給過剰に陥り、現在でもそれは解消されていない。中国の鉄鋼業界ではゾンビ企業が続出しており、その余波は中国国外の鉄鋼業界にまで及んでいる。フェローテックもゆくゆくはゾンビ企業になる可能性がある。
*ムーアの法則とは半導体の性能が2年で2倍になるという法則
*レガシー半導体とは先端品より3世代前の半導体で、家電や顔認識チップ、パワー半導体などに使われる。
*パワー半導体とは電力制御を行う半導体で、主にモーターの駆動や家電、自動車の電力制御などに使われる。フラッシュメモリーやDRAMなどのメモリー系半導体と違ってオーダーメイド品が多いため、価格が比較的安定しやすいという特徴がある。
*ゾンビ企業とは利払い費が利益を上回る企業。

・賀副社長を止める人がいない
フェローテックはブルーオーシャン戦略(ニッチトップ戦略)からレッドオーシャン戦略(競争激化戦略)に転換しつつあるが、この戦略を主導するのがフェローテックの実質的な経営者である賀副社長になる。レッドオーシャン戦略は破滅に向かいやすい戦略なので改めたほうがよさそうだが、賀副社長を止められそうな人物が見当たらない。社長はすでに人生の回想モードに入っているようだし、社長の息子のもう1人の副社長はパワー不足でとてもエネルギッシュな賀副社長を止められそうにない。

賀副社長には半導体ウエハー事業を単体で上場させる計画もあるようだが、他の優良事業を守るためにも、ウエハー事業は賀副社長とセットで、本体から切り離した方がよいのかもしれない。

・財務状態が悪い
フェローテックは積極投資により自己資本比率が26%まで低下しており、流動比率も危険な水準に達しつつある。賀副社長は「営業キャッシュフローの水準から借入金の返済は心配ない」と語っているが、ちょっとしたアクシデントで一気に資金繰りが苦しくなる恐れがある。現在、中国ではデフォルトが増え始めており、フェローテックでも第2四半期に中国で5億円のデフォルト(売掛金の未回収)が発生している。中国の景気はすでにピークアウトしているので、フェローテックは今後「デフォルトショック」に見舞われる可能性がある。
*足下では「新型肺炎の流行」というただならぬアクシデントが生じている。
*フェローテックは2月に無担保新株予約権付社債で37億円の資金調達をしているので多少の余裕はできたのかもしれない。

・中国で工場建設費未払いの訴訟を起こされている
2019年11月に竣工した中国の工場で建設費未払いの訴訟を起こされている。建設会社側は図面の提供遅延や度重なる行程変更により追加費用が発生したと主張しているが、フェローテック側は建設会社が事前の承認なしに追加工事をし、当初の工事代金を大幅に超過したとして支払いを保留している。フェローテックは工場の竣工を急いでいる中で追加工事の要請しているわけだが、そこで着工を承認してないという主張にはやや無理を感じる。今は中国政府が指定した第三者機関が鑑定を進めているところだが、結局はフェローテック側が支払うことになりそう。なお、追加費用の総額は約60億円になる。

・賀副社長の予測精度が低い
賀副社長は2017年に「来期の売上高は1000億を突破する」と語っているが、その後業績が下振れし、現在においても1000億円は突破してない。来期以降はさすがに突破しそうだが、賀副社長の予想はあまりあてになりそうにない。上記投資案件も賀副社長の想定通りにいかない可能性が高い。

・為替差損が起こりそう
フェローテックの海外売上高比率は8割と高いので、円高になると為替差損が発生する。今後は世界景気減速とともに円高傾向が強まっていきそうなので、業績が下ブレやすくなりそう。人民元が1元安くなるとフェローテックには3億円の為替差損が発生するという。

・新工場の立ち上げがうまくいくのか疑問
この2年間に中国で8つの工場を立ち上げているが、権限はすべて各工場に委譲し、純利益だけで評価していくという。新工場の立ち上げはこんな数字だけの管理でうまくいくのか疑問。

・信用買い残が多く、上値が重そう。

■まとめ
フェローテックは真空シールでグローバル・ニッチトップということは知っていたので良さそうだと思ったが、調べてみるとニッチトップとは真逆の方向に進んでいることがわかった。厳しそうなので撤退の方向で行く。


『ミネルヴィニの成長株投資法』には「出遅れ株には手を出すな」とあり、「出遅れ株は先導株より割安に見えるが、売上高と利益の伸びで劣っているので実際は「割高」になる。出遅れ株には出遅れる理由が必ずあり、またたとえ上がりだしたとしても先導株ほど上がることはめったにない。そして上がりだしたときが相場の終盤にさしかかっている警告になる」とあるが、それも一理あると思うので、今後は出遅れ株には手を出さないようにする。

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■売り
・フェローテック 全売却 損益-9%。
損切りラインに達したから。シリコンサイクル的には盛り返す可能性もまだありそうだが、長期では厳しいと思った。

・・「よく調べないで買った株は失敗することが多い」とブログに書いているにもかかわらず、またやってしまった(笑)。買った直後に新株予約権付社債を発行するIRがあり、フェローテックの「本拠地」中国で新型肺炎が発生したのはツイてないとは思ったが、それ以上によく調べないで買ったのがまずかったと思う。今後は同じ過ちを繰り返さないようにしたい。

ただ今回は大きく買っていたわけではなかったので、損失もそれほど大きくはならなかった。それに買ったからよく調べたわけで、このパターンもそれほど悪くないかなとも思った。

参考までに現在のフェローテックのチャートも載せておく。
<5年チャート> チャートは底割れ。これまでの「底」が「天井」になりそう。

「株のお姉さん」雨宮京子

雨宮京子氏について少し調べてみたら、昨年12月に夕刊フジで開催された「株1グランプリ」でブシロードを選んでいたことがわかった。弁護士ドットコムといい、ブシロードといい、趣味が若干かぶる。フェローテックにしてもピンとくるものがあった。雨宮氏がどうやって銘柄を選んでいるのか気になったので雨宮氏について調べてみた。調べたのは雨宮氏が2005年に書いた『株の教則本』。

<銘柄の選び方>
・会社は四季報や日経会社情報で見つける。業績は営業利益を重視する。
・相場の流れをつかむために新聞、テレビ、ラジオを見る(聴く)。
・日常生活からもトレンドをつかむ。例えば満員電車はネタの宝庫で、今何が流行っているのかがわかる。自分で確かめられるものがあると判断をしっかり下せるようになる。

<その他、印象に残ったところ>
・18年の経験からはっきりいえるのは、儲かる人は株式に精通し、ノウハウを身につけ、自分なりの投資法を確立している人。
・失敗を避けようとせず、失敗から学ぶようにしていけば投資の技術が身につく。
・大きく資産を増やすなら中長期投資。成長が見込まれる銘柄が暴落した後、じっくりと拾い、長く持つようにする。
・新興市場は発行株式数が少ない企業が多いから値動きが一方向になりやすい。いったん人気がなくなると買いが全く入らなくなるなど、下げ方が激しくなりがち。
・短期売買は新高値や新安値を更新した後にそのトレンドに沿って売買するのがセオリー。その方向に株価が加速するケースが多く、新高値(新安値)を更新した直後に買う(売る)と効果的。
・新安値更新後のナンピン買いは損をしやすい。
・損切りが大切。ダメな株を持っていると死に金になり投資効率が悪くなる。

■まとめ
雨宮氏と銘柄の趣味がかぶったのは、基本的な考え方が少し似ていたからかなと思った。

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一応、雨宮栄子氏についても調べてみた。ネット検索ではほとんどヒットせず。1987年に出版された『お茶の間株式スクール』を読むと、1958年に大学(東大)を卒業しており、現在は84歳くらいになっているので、すでに引退している可能性が高い。経歴はラジオたんぱ(現ラジオ日経)に入社し、司会・解説などを務め、編成局局次長待遇に(その後は不明)。

<株式投資の基本>
株式投資で大事なのは
・余裕資金で投資する。
 目的のあるお金で投資するとお金が必要になった時に株価が下がっていることが多い。
・自分の判断で売買する。
 失敗したときに吸収できることが多い。
・売買のタイミングに気をつける。
 どんなに優良株でもタイミングを間違えると損をする。
・ある程度の基礎知識は身につける。

<その他、印象に残ったところ>
・株の世界では株のリズムだとか、相場の循環性とか、他の株との関連性とかがあり、理屈だけでなく実践を通して体得する部分も大きい。
・相場が下がってくるともっと下がると思い、上がってくるともっと上がると思うのが人情。株価の天井、大底を見つけるのは難しい。とにかく買う場合は相場の安い日に買い、売る場合は高い日に売るのが大事。
・株式市場ではどんな上昇相場のときでも年に1,2度の買いのチャンスが必ずやってくる。
・最もオーソドックスな投資法は、相場が低迷しているときに今後成長しそうな株を買い、あとは企業の成長を楽しみに長期投資に徹すること。
・株式投資でボロ儲けを考えると投棄になりがち。そのような方法ではたまに儲かることはあっても、他の銘柄で大きく損をしたりして、結局はトータルで少しも儲からないことが多い。
・年に1~2割の利益で十分と考えればそれなりの堅実な投資法がある。

・「今回の大上昇相場の背景は一口にいって金余り。世界的に金融緩和傾向で、原油価格が停滞していて、デフレ傾向のなかで、低金利や不景気などから適当な運用対象が見つからない大量の資金が証券市場へ流れ込み、世界同時株高現象を引き起こしている。

今回の上昇相場が終わるときは、これら株高を支えている要因に変化が起こったときになる。金利の上昇、原油価格の反発、インフレの兆し。このような兆しが見えると、これまで株式市場に流れていた膨大な資金が他の運用対象、高利回りの貯蓄商品、土地、モノ、貴金属などに移ってしまう。

相場を動かす材料には突発的なものもあるが、基調的な要因の多くは前もって少しずつ変化の兆しが見えてくるもの」

持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
第3四半期決算は法律相談の有料会員数が初の減少。これは検索由来のアクセス数減少によるものだという。アクセス数の減少は11月初旬頃からとのことなので、これは10月25日にグーグルの検索エンジンに導入されたAIアルゴリズム「BERT」の影響かもしれない。このアルゴリズムは人の読解力(平均値)を超える驚異的なものらしく、質問(検索ワード)に対してより的確な「答え」を提示できるようになるという(1/1日経)。このアルゴリズム投入によってアクセス数が減少したというのはあまりよい兆候ではないが、社長は「アクセス数は12月末ぐらいに底を打ち、現在回復基調にある」といっているので、アクセス数の減少は新アルゴリズム導入初期の混乱によるものかもしれない。

ただアクセス数が回復しても今後有料会員数は伸び悩んでいく可能性が高い。昨年11月に弁護士ドットコムはLINEなどと提携して「LINE弁護士相談」というサービスを始めており、また政府はネット上でAIを使い離婚やネット売買でのトラブルなどの解決策を示す仕組みづくりをはじている(1/30日経)。さらにはネットで無料の法律相談を受け付けるサイトも登場しはじめているので、今後ネットでの法律相談はこういったところにも分散していくのではないかと思う。有料会員事業の売上高比率は15%程度(成長率13%程度)なので、業績へのインパクトはそれほど大きくはなさそうだが、アクセス数の増減は弁護士広告(紹介)事業にも影響してくるので今後注意深く見ていこうと思う。

それ以外の事業はいつもながらの順調な伸び。中でもクラウドサインの契約送信数は顕著に伸びており、これは導入企業数の増加も影響しているとは思うが、CMによる認知効果も大きかったのではないかと思う。これほどの効果を期待できるならCMをもっと流せばいいのにとも思うが、2週間のプロモーションで2億円かかったようで、第4四半期にはこういったプロモーションはかけないという。一株主としてはこういった勝算の高そうな投資なら赤字や増資などはそれほど気にならないのだが、決算後のストップ安を見ると、そうは考えない株主も多いのかもしれない。

決算以上に気になったのが、決算翌日に出た日経記事になる。そこには電子契約の市場規模予測が載っており、矢野経済研究所は「18年に228億円だった国内市場規模は23年に353億円に急拡大する」と予測していた。またネットで市場規模について検索してみると19年6月にITRという調査会社が「2019年が55億で2022年には117億まで拡大」と予測している。これは当初の想定とはだいぶ異なる。ただ矢野経済研究所の市場成長率予測は年率10%程度、ITRは28%程度なのに対し、クラウドサインの売上高成長率はこれまで年率100%を超えているので、これらの予測値は参考程度にしかならなさそうでもある。ただそれでも業績予想はもう少し控え目にした方がよいのかなと思った。

それと米ドキュサインについて書かれていた箇所も少し気になった。日本で主に契約がなされる場は国内契約(不動産契約や雇用契約など)なので、国内で独走しているクラウドサインの地位が簡単に揺らぐとは思わないが、すでにドキュサインを導入している国内のグローバル企業もある。ユーザー目線で考えると、コストや使い勝手の面で一つのサービスに絞るのがベストになるが、法律が絡んだややこしい電子契約の場合はローカライズ(現地最適化)が進んだものを使うしかなさそうなので、これは2つのサービスを使っていくしかないのかなと思った。

今日の日経に「はんこ文化、在宅勤務阻む」とあった。会社の印鑑は家に持ち帰れないため、契約書を在宅勤務で作っても押印のために出社しなければならないという。電子契約を導入すればその手間が省けるので、この会社は「対コロナ銘柄」になるのかなと思った。IR資料を見ると第4四半期の契約送信件数も順調に伸びている様子。

今後3年の予想売上高成長率は年率35%程度。この会社の現在価値は、ビジネスモデルの強度や将来の予想利益などを考慮すると1000億円(株価4500円、PSR(株価売上高倍率)20倍)くらいか。ただ地合いや新型コロナによる経済停滞を考慮すると株価は3400円(時価総額750億円)くらいまで落ちる可能性もある。2030年の予想売上高は、売上高成長率が年率25%の場合は400億円、年率35%の場合は860億円。2030年の予想時価総額は4000~8000億円。

■ペプチドリーム
基本シナリオ:ペプチド創薬で最強のプラットフォーマーに
本決算説明資料を読んだが、BMSの免疫チェックポイント阻害剤がお蔵入りしそうなのが残念だった。ただそれでも今期は2~6つが臨床入りし、売上高は100億円を突破する予定とのことなので、全体で見ればそれほど問題はないのかなと思った。

今後3年の売上高成長率は年率20%程度。この会社の現在価値は5000億円(株価4000円、PER100倍)くらいか。2030年の予想利益は、売上高成長率が年率20%なら300億円、年率30%なら700億円。2030年の予想時価総額は2兆~5兆円。

■厳選ジャパン(投資信託)
基本シナリオ:ビッグチェンジ銘柄投資でテンバガー達成
基準価額は一時8000円割れ。この投信は中小型株の比率が高いが、今後は中小型株に買いが入りにくそうなので厳しい展開になりそう。資産運用は1人でなんとかなりそうなので、反発したところで売却してこうと思う。ただこの投信のポートフォリオの観察は続ける。

■シンクロ・フード
基本シナリオ:市場独占型プラットフォーマーではないので利益成長は厳しそう
「本決算まで横ばい、本決算でいったん上昇」というシナリオを描いていたが、それも崩れてしまった。コロナが落ち着けば株価は反発すると思うが、ビジネスモデルに問題があるので、反発は弱くなりそう。

去年2月のブログに「グーグルで「飲食 求人 東京」「飲食 求人 大阪」で検索すると(シンクロフードが)トップに表示され続けている」とあるが、現在同じように検索してみると東京では3番手、大阪では2番手に表示される。またプレイスオーダーズ(小型飲食店向けの食材発注システム)は今後伸びそうだと思っていたが、インフォマートが参入してきたので、こちらも厳しくなってきた。コロナも長引きそうなので、今後も淡々と売っていこうと思う。

今後3年の予想売上高成長率は年率-10~10%。営業利益成長率は年率-10~0%。この会社の現在価値は、ビジネスモデルの強度や将来の予想利益を考慮すると75億円(株価280円)くらいか。コロナの影響を考慮すると時価総額40億円(株価150円)くらいか。

業績に最もインパクトのある求人広告掲載数を記録していく。
<2月>
関東 2601(2484) 関西 798(733)  東海 498(345)  九州 102(108)  北海道・東北 72(108) 総計 4071(3778)
市場独占型の求人プラットフォーマー・インディードの掲載数も記録していく。東京都の飲食店 110650(79166) 大阪府の飲食店 47378(30353)
*( )内は前年同月

<3月>
関東 2543(2558) 関西 806(813)  東海 500(339)  九州 109(118)  北海道・東北 87(126) 総計 4045(3954)
市場独占型の求人プラットフォーマー・インディードの掲載数も記録していく。東京都の飲食店 110625(90647) 大阪府の飲食店 47353(36102)
*( )内は前年同月

<4月>
関東 1917(2611) 関西 684(762)  東海 493(336)  九州 109(111)  北海道・東北 82(130) 総計 3285(3950)
市場独占型の求人プラットフォーマー・インディードの掲載数も記録していく。東京都の飲食店 96335(81312) 大阪府の飲食店 41274(32805)
*( )内は前年同月

■eBase
基本シナリオ:最強の商品情報管理プラットフォームに
買った直後に株価が上昇して幸先のよいスタートを切れた。いちよし証券が「食品業界における成功モデルを他業界に広げ、商品情報における各業界のデファクトスタンダードを狙う成長性を評価」とコメントしてから上がったので、ここらへんのことはまだ株価に織り込まれてなかったのかもしれない。

eBASEのコアな事業(商品情報管理プラットフォーム)の売上高は20億円くらいで、現在の時価総額は315億円(株価670円)なので、今くらいの時価総額が上限なのかもしれない。今後3年の予想売上高成長率は年率10%。2020年の予想時価総額は320億円(株価700円、PSR15倍)。2030年の予想利益は現在の3倍くらいか。

■チームスピリット
基本シナリオ:TeamSpiritで業務効率化、働き方の分析で生産性改善
第1四半期決算は好決算だった。契約ライセンス数が前年同期比50%伸びていたのもよかったが、それ以上に2018年に続き、2019年もマザーズの新規上場企業の2割でTeamSpiritが採用されていたのがよかった(マザーズ企業の15%(322社)がTeamSpritを採用)。これまでクラウドソフト「TeamSpirit」にはやや悲観的な見方をしてきたが、トップクラスの新興企業にこれだけ採用されているということは、かなり競争力のあるソフトではないかと思った。

ただ内部統制の問題は依然として未解決のまま。社長は事業に精通していて、長期的なビジョンもあり、決して“イヤな”タイプにも見えないのだが、従業員の口コミを見ると、社内が若干混乱しているように見える。ただ事業は軌道に乗っているようなのであとは時間が解決してくれるのかなと思う。

前回ブログで「(米国の)20年のソフトウエア投資の伸びが3年ぶりの低水準になるリスクがある。(中略)セールスフォースも成長が鈍化する可能性がある」と日経記事を引用したが、1月15日の日経?に「日本は依然としてクラウドの普及率は低い。米調査会社IDCによると、会計業務でのクラウドの浸透率は日本では14%と、米国(53%)や英国(35%)を下回る」とあったので、日本のクラウドサービスはまだまだ成長が続きそうだと思った。

*訂正。以前書いたチームスリピリットの調査レポートに「「働き方改革」法案は2019年4月に施行」と書いたが「2020年4月に施行」の誤り。それと「独SAPは2025年までに現行のERPのサポートを終了する」と書いたが、独SAPは2月に「サポートを2027年まで延長する」と方針転換している。

今後3年の予想売上高成長率は年率30%程度。2020年の予想時価総額は260億円(株価 1600円、PSR10倍)。

■今後の計画
当初は「5月頃に新型コロナが落ち着いて株式市場が底打ちし、財政拡大と金融緩和により金融相場が加速する」というシナリオを描いていたが、状況がかなり変わってきた。今後は「コロナショック」により、このまま景気後退期に突入しそう。これを機にポートフォリオを再構築していこうと思う。

弁護士ドットコム、ペプチドリーム、eBASE、チームスピリットは長期で保有する。シンクロフードと厳選ジャパンは売却していく。

エムスリーが2200円になったら少し買う。

米景気後退が本格化してきたら、米ドル売りを積み増す。

マークラインズ

■どんな会社か
企業向け自動車情報ポータルサイトを手がける会社。サイトには自動車の生産・販売台数をはじめ、部品メーカー情報、技術・市場調査レポート、環境規制・法規制情報など、自動車産業に関連するあらゆる情報が網羅されている。英語や中国語にも対応しグローバルで展開。有料会員の約半数は海外企業になる。

2019年12月期の売上高は23.8億円で営業利益は8.7億円(営業利益率36%)。
売上高の内訳は大きい順に
情報プラットフォーム事業 17.5億円
コンサル事業 2億円
プロモーション・部品調達代行事業など 1.8億円
市場予測情報販売事業 1.3億円
人材紹介事業 1.2億円
になる。売上高の伸び率は情報プラットフォーム事業が前期比+11%で、それ以外の「プラットフォーム関連事業」が前期比+34%になる。

2020年12月期の予想売上高は29億円(前期比+22%)、営業利益は10億円(前期比+14%)になる。

■成長ストーリー
「最強の自動車情報プラットフォームに」が基本シナリオ。

現在、自動車業界ではCASE(つながる、自動運転、シェアリング、電動化)というキーワードを軸に「100年に1度」の大変革が起きており、自動車業界にはこれまで自動車とあまり関わりのなかった通信やAI、IOT企業などが新規参入してきている。また動力源も多様化しており、従来のガソリンやディーゼルに加えて、EV(電気自動車)、燃料電池車、HVなどが登場してきている。このような大きな変化が起きているときに最も重要になるのは情報になる。マークラインズは自動車業界で中核の情報プラットフォームになることを目指している。

そうなるための戦略は主に3つ。まず1つ目が海外市場の開拓になる。マークラインズの潜在顧客は日本が約7000社、海外が約9万社になるので、海外市場の開拓が重要になる。海外ではすでに5拠点(米国、中国、ドイツ、インド、タイ)に営業所を設けており、今後はここへの投資を強化して営業機能や調査能力を高めていくという。第1四半期にはドイツと中国の営業所を移転・増床している。サイトの一部では韓国語、タイ語、スペイン語、ドイツ語などにも対応し始めており、アクセス数は増加傾向にあるという。

2つ目はCASE関連企業の取り込み、になる。今後自動車の付加価値は「車体」から「サービス、ソフトウェア」に移行していくので、自動運転やシェアリング関連の会社を取り込んでいくことが重要になる。マークラインズの会員はすでに業種的な広がりができつつあり、日本の通信大手3社や中国のファーウェイなども顧客になっているという。

3つ目が関連事業の拡大になる。ネットビジネスには成功するための3つのCがあるという。まず1つ目のCがコンテンツで、これは「良質なコンテンツを作る」という意味になる。2つ目のCがコミュニティで、「多くの会員が集まるコミュニティを作る」、3つ目のCがコマースで、「多くの会員が集まったコミュニティで多彩なサービスを提供していく」という意味になる。マークラインズは2018年にようやくこのコマースの段階にたどり着いたので、今後はコマース(プラットフォーム関連事業)に力を入れていくという。

関連事業にはコンサル事業や市場予測調査、部品調達代行、人材紹介などあるが、これらの事業は年率30%超の勢いで伸びている。

「情報プラットフォーム」で扱う情報コンテンツも引き続き強化していくという。現時点では予測調査に強い英LMCオートモーティブ、自動運転調査に強い米VSI、調査会社の米HISオートモーティブ、分解調査に強いMunro社などと提携し、レポートなどを販売しているが、今後も各調査会社との提携を増やしていくという。

社長は「プラットフォームは規模の経済が働きやすいので今後業績の伸びは加速していくだろう」と語っている。

■問題点
・海外への投資が弱い
マークラインズは海外市場を開拓するとは言っているが、海外へ積極的に投資をしているようには見えない。マークラインズの従業員数は現在140人くらいいるが、日本要員は約100人で、海外には40人くらいしかいない。海外には5拠点あり、単純計算すると1拠点当たり約8人になる。8人でいったい何ができるのかと思う。

経営幹部に外国人(中国人)が2人しかいないのも問題で、本気で海外に攻め込もうとしているようには見えない。

それ以前の問題として、投資自体が少ない。2019年12月期の投資キャッシュフローはわずか1100万円しかない。そして配当性向は40%を維持している。この会社のお金の使い方を見ていると、今後力強く成長していけるようには見えない。

・プラットフォーム機能が弱い?
マークラインズの「情報プラットフォーム」は、情報や部品の売り手と買い手をダイレクトにマッチングさせる作りにはなってないようなのでプラットフォームとしての機能が弱そう。社長は「自社サイトを顧客にとってなくてはならないものにしていきたい」と語っているが、現時点ではその段階には達してないように見える。

情報収集はマークラインズの社員がメーカーなどに直接聞き取り調査などをして集めているようだが、そのようなやり方では集められる情報はたかが知れているし、即時性にも欠ける。マークラインズの「プラットフォーム」に部品メーカーや調査会社などが直接情報を入力できる仕組みにすれば自然と情報が集まるとは思うのだが、今のところそのような仕組みを作ろうとしている気配はない。
*実際にマークラインズのサイトを使ったことがないので詳細は不明。要調査。

・アクセス数が減少してる?
昨年11月から新規会員数の伸びが前年同月比減となっている。これはグーグルの検索エンジンに新AIアルゴリスズム「BERT」が導入された影響かもしれない。マークラインズは情報サイトを主業としているのでアクセス数の落ち込みは致命傷になり得る。
*2月の新規会員数は4ヶ月ぶりに前年同期比でプラスになっているが、これはアクセス数が回復したためか、コロナショックで情報需要が増加したためなのか、どちらなのかわからない。

2018年7月にも「アルゴリズムショック」が起きてるが、そのときはインデックスページ(見せるページ)を5倍に増やすなどしてアクセス数を回復させている。今回もSEO(検索エンジン最適化)対策を実施しているとは思うが、「BERT」にはこれまでのような小手先のテクニックは効かない可能性もある。アクセス数の回復にはやや不透明感が漂う。

それとマークラインズはアクセス数の推移を、問題が起こったときにしか公開してないのも問題。

・社風に問題がある?
従業員の口コミには「ワンマン経営」というコメントが目立つ。また「離職率が高い」「キャリアアップは望めない」「売上至上主義」などの口コミもあり、最近まで労働訴訟を起こされていたようなので、企業風土はあまりよくないのかもしれない。このような状態では優秀な人材は集まりにくそう。

・景気後退の影響を受ける
情報投資は基本的には数年先を見据えてするのもなので、多少の景気後退では落ちにくいという性質がある。しかし2008年の金融危機後には2年連続で減収減益となっている。世界の自動車の新車販売台数は2017年にすでにピークアウトしているので、今後業績が下振れていく可能性がある。

・地合いが悪い
中小型株指数はすでにピークアウトしているので、今後の相場環境はあまりよくない。

・自動車業界では企業が減っていく?
今後、自動車はシェアリングやライドシェアなどでコモディディ化していくといわれている。また電動化により部品数が10分の1に減り、工場の自動化により働く人も減っていくともいわれている。もしそうなれば、自動車メーカーや部品メーカーの淘汰が進んでいき、マークラインズの顧客も減っていく可能性がある。しかしデロイト・トーマツの予測では「自動車産業の総付加価値は2015年の450兆円から2030年には630兆円まで拡大する」とのことなので、マークラインズが良質な情報・サービスを提供し続けるかりぎりは、それほど問題ないのかなと思う。
*参照:『週刊エコノミスト 2020年 1/28号』「自動車革命で伸びる会社」

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★(3.3)
・参入障壁は高いか。★★★★。社長は「競合はおらず、18年間かけて作ったサイトなので簡単には真似できない」と語っているのでそこそこ高そう。
・ストック型ビジネスか。★★★☆。会員事業なので基本的にはストック型になる。ただプラットフォーム機能が弱く、顧客にとってなくてはならないという感じではなさそうなので、強固な顧客基盤とはいえないのかもしれない。
・時流にのっているか。★★☆。ネットでの情報提供サービスは今のトレンドになるが、投資が弱いので時流には乗り切れてないように見える。

■チャート
<5年チャート> 特に問題はなさそうだが、1年チャートでは200日線を割っているので、しばらく上値の重い展開が続きそう。

■まとめ
ビジネスモデルはそこそこ強そうなので業績が急落することはなさそうだが、投資が弱いので今後の力強い成長は期待しにくい。買い増しはなし。しばらく様子見。

エムスリー

■調べようと思ったきっかけ
今買えそうなのはここくらいしかなかったから。中小型株は地合いが悪く、大型株も景気後退懸念で厳しそうだと思った。医療関連の会社は景気後退期に入っても業績が堅調に推移しやすいのでよいと思った。

■どんな会社か
医療系のプラットフォームを手がける会社。医療従事者専門サイト「m3.com」には日本の医師の9割以上(28万人以上)が登録。海外にも事業展開しており、世界の医師の約半数(580万人)がエムスリーのサービスを利用している。事業カテゴリーは医療情報提供事業、臨床治験事業、転職支援事業、海外事業、新規事業の5つ。

2019年3月期の業績から、事業カテゴリー別の売上高を見ると
・医薬情報提供事業 410億円(前年比+20%)
・治験事業 220億円(+3%)
・転職支援事業 130億円(+26%)
・海外事業 250億円(+12%)
・新規事業 120億円(+84%)
になる。総売上高は1130億円で営業利益は300億円、営業利益率26%になる。

2020年3月期の業績予想は売上高1300億円(前年比+15%)、営業利益350億円(+13%)、営業利益率26%になる。第3四半期までの進捗は順調なので今期もやや超過して終わりそう。

■成長ストーリー
「医療分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに」が基本シナリオ。

今後は世界の大部分で少子高齢化が進み、医療の高度化などによって財政に占める医療費の比率は高まっていく。持続可能な財政運営をしていくには医療費の削減が不可欠になる。エムスリーはITで医療の無駄を省き、質を高めていくことを基本戦略としている。

成長の柱は3つ。1つ目は既存事業の深堀になる。エムスリーの祖業は製薬会社のMR(医薬情報担当者)が担ってきた業務をネット上で代替する医薬情報提供事業になるが、この事業は日本市場においてあと4~5倍の成長余地がある。

医師が情報収集にかける時間は、学会・医学誌が全体の44%、ネットが39%、MRが17%になるが、製薬会社が医薬品のマーケティングにかけるコストはMRが全体の91%(1兆5000億円)、学会・医学誌が7%(1000億円)、ネットが2%(400億円)になる。エムスリーはMRからネットへの代替余地があと1600億円はあるとみている。

他の既存事業(治験事業や転職支援事業など)もネットとの相性がよいので、あと数倍の拡大余地がある。

2つ目が海外市場の開拓になる。海外市場は日本市場の10倍以上の規模があるので、長期で成長していくには海外市場の開拓が不可欠になる。エムスリーはM&Aを軸に現在10カ国(米国、欧州諸国、中国、インド、韓国)で事業を展開している。世界で2番目に大きい中国市場では医薬情報提供事業を行っており、中国人医師の3分の2以上(300万人以上)がサービスに登録している。中国は国土が広く、MRだけでカバーするのは大変なので、この事業の売上は年率40%超の勢いで伸びている。

3つ目が新規事業になる。エムスリーがこれまでターゲットにしてきた市場はマーケティング市場とR&D(研究開発)市場になるが、これらは医療市場全体(日本は40兆円)の約1割に過ぎない。今後は残り9割の市場を新規事業がカバーしていくことになる。
*IR資料には「日本の医療市場は2025年に54兆円に拡大」とある。

現在すでに稼働している事業は26あり、構想分も合わせると約50ある。エムスリーは海外10カ国に事業展開しているので、そこに50を掛け合わせると、500の事業ポテンシャルがあることになる。今は最短でスケールできる方法を考えながら事業を展開していっているという。

新規事業を3つほど紹介する。
・AIアルゴリズム診断事業、AIアルゴリズムプラットフォーム事業
エムスリーは画像診断などを行うAIアルゴリズムを開発(または出資)しており、そのプログラムは現在20以上ある。今期中にそれらの診断アルゴリズムをクラウド経由で使えるようにする予定で、それらを集めたプラットフォームも稼働する予定だという。なお、このプラットフォーム上では他社開発された診断アルゴリズムも使えるようになるという。

・クラウドカルテ事業
エムスリーは日本でクラウドカルテ事業を行っており、すでにトップシェア(1200万人)を抑えている。2019年にはフランスのトップシェア企業を買収。クラウドカルテ事業は治験事業や医薬情報提供事業との相乗効果も見込める。

・オンライン診療プラットフォーム事業
エムスリーは2019年12月にLINEと共同でオンライン健康相談サービスを開始。日本ではこれまで医師会の反発により保険適用のオンライン診療が認められてこなかったが、新型コロナを機に、特例でだが、認める方向になりつつある。この分野には競合がひしめいているが、エムスリーには日本のほぼすべての医師が登録しているので、覇権をとれる可能性がある。

決算説明資料には「成長ポテンシャルは10~20倍」と書かれているが、上記を考慮すると十分達成可能な目標に見える。

■問題点
・独禁法リスクがある?
エムスリーの市場占有率は高まりつつあるので、今後は独占禁止法に抵触するリスクがある。グーグルやフェイスブックは「イノベーションを妨げる」「競争排除的な買収や合併」などの理由でM&Aが承認されにくくなっているが、エムスリーも今後承認されにくくなる可能性がある。M&Aはエムスリーの成長ドライバーなので、もしこれができなくなれば成長力を大きくそがれることになる。ただエムスリーの市場占有率は事業ごと、国ごとにまちまちなので、今のところ法に抵触するリスクはそれほど高くはない。

・ローカライズが必用
医療制度は国によって異なるのでローカライズ(現地最適化)が必要になる。そのため、グーグルやフェイスブックのようにサービスを一気に世界中に普及させることはできない。

・海外では市場を独占していない
エムスリーは日本市場ではほぼすべての医師を囲い込んでいるが、海外市場でほぼすべての医師を囲い込めそうなのは中国と韓国くらいしかなさそう。プラットフォーム事業で最も重要なことは、市場を独占(または寡占)できるかどうかになるが、もしそれができない場合は、じり貧に陥っていく可能性が高くなる。エムスリーは米国で治験管理事業を行っているが、もし他に医師の大半を囲い込んでいるプラットフォームがあれば、今後はそちらに仕事を奪われる可能性が高くなる。

現時点では競合関係について不明なことが多いが、この点は中長期的に最も重要なので、今後調べていこうと思う。

・プロが売っている
2019年10月にJPモルガンと米Harding Loevnerが保有比率を5%以下に落としている。JPモルガンに至ってはその後、空売りまで始めている。これまでの経験上、米系投資会社がIT企業を分析する能力は非常に高いことがわかっているので、エムスリーのビジネスモデルには何か問題があるか、もしくは現在の株価(3250円)は割高である可能性が高い。
*両社が株式を売っていたのは株価が2500円以下の時になる。

・ホームページに社長の顔写真がない
レオスキャピタルの藤野英人氏は企業のホームページに社長や役員の顔写真のないのは「商売に対する覚悟がない」「なにか後ろ暗いところがある」と語っているが、エムスリーのホームページには社長の顔写真がない。ただ、この会社の事業を見る限りは健全そうなので、これはそれほど気にしなくてもよいのかなと思う。ちなみに米アルファベットのホームページにも社長の顔写真はない。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★★。
・参入障壁は高いか。★★★☆。国内はほぼ独占しているので参入障壁は非常に高い。しかし海外はまちまち。
・ストック型ビジネスか。★★★★。「医師がグーグルより使う」リピーターの多いプラットフォームなのでストック型。海外は不明。
・時流に乗っているか。★★★★★。ITによる変革(効率化)は今のトレンド。投資も積極的なので今後も時流に乗って行けそう。

■チャート
<10年チャート>緑の線がトレンドラインに見える。累積売買高的には1500円(時価総額1兆円)あたりが大底になりそう。

■まとめ
小型株のような爆発力はなさそうだが、長期の安定成長は期待できる。ただ海外の状況が不明なのでもうすこし調査が必用。

■後記
エムスリーは時価総額が2兆円を超える会社なので調べるのが大変そうだと思っていたが、いざ調べてみたら、これまで最も簡単に終わった。IR資料は必要最小限の言葉でわかるようにまとめてあり、いかにも「できるコンサル」という感じだった。
*エムスリーの社長はマッキンゼーの元パートナー。

エムスリーのホームページも非常にシンプルな作りになっている。情報過多の時代にはこれくらいが「正解」だと思うが、こういったセンスが各事業にも反映されていて、それで支持を得ている面もあるのかなと思った。

有望株チェック

よく調べないで買った株は失敗することが多いので、これからはネチネチと調べてから買うことにする。

■10倍株候補
<10倍株候補の条件は>
 ・上場4年以内の若い会社
 ・社長が若くやり手
 ・オーナー企業
 ・時価総額300億円以下の小型株
 ・長期的なテーマに合っている
 ・急成長している
 ・(IPOから時間が経過し、株価が右肩下がりになっているチャートが狙い目)

(今のところ候補はなし)

■優良銘柄(株価が急落したときに買いたい銘柄)
<優良銘柄の条件は>
 ・参入障壁が高い
 ・ストック型ビジネスを手がける
 ・時流に乗っている
 →業績が落ちにくく、利益成長を続けやすいビジネスモデル

・エムスリー
基本シナリオ:医療分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
医療分野で独占的なプラットフォームを築いている。事業カテゴリーはMR事業、治験事業、人材紹介事業、複数の新規事業、海外事業の5つあり、それらすべてが順調に伸びている。国内のMR事業(医薬品情報サイト事業)だけでもあと5倍の成長余地があり、他の事業もまだまだこれからといった感じ。クラウドカルテ事業やAI事業も面白そうだが、今後最も伸びしろがありそうなのが海外事業になる。世界最大の臨床試験市場がある米国や、人口が10億を超える中国のMR事業は高い成長が見込める。2030年の予想利益は現在の4~6倍くらいになりそう。チャート上の底値(買い場)は2300円くらいか。

・リクルート
基本シナリオ:多数の独占型プラットフォームで安定成長&株主還元
元祖プラットフォーマーのリクルートは、人材、住宅、飲食、美容分野などで多数の市場独占型(寡占型)プラットフォームを構築している。中でも最も勢いのあるのが人材マッチング・プラットフォームのインディードで、19年3月期の売上高成長率は50%に達する。この分野の現在の市場規模は16兆円超あり、インディードの売上はまだ320億円に過ぎない。リクルートは2030年までにこの分野で世界トップになることを目指している。ただ会社全体で見た場合の売上高成長率は年率6%程度なので急成長企業とはいえない。また人材関連事業が売上高の7割を占めるているので景気後退の影響を受けやすいという問題もある。2030年の予想利益は現在の3倍くらいになりそう。チャート上の底値は2600円、もしくは1500円くらいか。

・カカクコム
基本シナリオ:多数の独占型プラットフォームで安定成長&株主還元
価格比較の分野で独占的なポジションを築いている。「価格コム」の成長は頭打ちだが、「食べログ」や新規メディア事業の「高速バス比較ナビ」「価格コム保険」「ガイエ(映画等のプロモーション事業)」などが今後の成長を牽引していきそう。2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいになりそう。チャート上の底値は2000円くらいか。

・GMOペイメントゲートウェイ
基本シナリオ:最強の電子決済代行プラットフォームに
電子決済代行で最も勢いのある会社。現在の日本のBtoCのEC化率は7%程度(決済処理金額6兆円)だが、これが2025年には15%(同18兆円)まで拡大するという。BtoC以上に大きな市場であるBtoB市場でも決済関連の事業をしているので成長余地はまだまだありそう。売上高成長率目標は年率25%を基準にしており、今期は14%と若干低下するが、来期以降は巡航速度に戻せるという。この会社の業績予測精度は高いので、今回も言った通りの展開になりそう。2030年の予想利益は現在の3~4倍くらいになりそう。チャート上の底値は6800円、もしくは5500円くらいか。

・インフォマート
基本シナリオ:企業間取引の基幹プラットフォームに
現在インフォマートのプラットフォームを利用する会社は約40万社あり、その大半は請求書プラットフォームを利用している。請求書事業の売上高比率は全体の2割程度で赤字が続いているが、この事業の成長余地は少なくともあと3倍はあり、そこで培ったネットワークや請求書データを活かした新規事業も期待できる。問題はこれら新規事業の方向性がまだ明確に定まっていないこと。2030年の予想利益は現在の3~4倍くらいになりそう。チャート上の底値は450~550円くらいか。

2020年12月期の会社の業績予想は大幅減益。今期は請求書事業を中心に営業、販促、サーバーに投資していくという。今後3年の売上高成長率は年率10%くらいになりそう。利益の方は損益分岐点を超えると急速に高まっていくビジネスモデルなので年率15%くらいの成長は期待できる。

・鎌倉新書
基本シナリオ:終活領域をITで変革し最強のプラットフォーマーに
葬儀分野のカテゴリーキラー。元々は葬儀関連の出版物を発行していた会社で、そこで培ったネットワークが最大の強み。日本では今後さらに高齢化が進んでいくので事業環境は良い。マッチングさせるに商品には墓、葬儀、仏壇、相続関連などがあり、9月からはセールスフォースを導入し、各サービスのクロスセルを増大させていくという。市場シェアはまだ3%以下なので成長余地は大きい。2030年の予想利益は現在の7~10倍くらいになりそう。チャート上の底値は900円くらいか。

・ベネフィット・ワン。IRがわかりにくいのでなし。

・リログループ。今後も成長していけるとは思うが投資負担が重くなっていきそうなのでなし。

・メニコン。コンタクトレンズのサブスク(定期購入)サービスを手がける会社。製品ラインアップの拡充や販売地域の拡大によりサブスク会員は順調に増えており、生産効率化により利益率も向上している(第2四半期に利益を上方修正)。海外売上高は全体の1割程度で、こちらもそこそこ順調に伸びている。今後はオルソケアソロジーなどの新規事業も伸びていきそう。
*オルソケアソロジーとは特殊なコンタクトレンズをはめて近視を矯正する治療法。中国ではすでに医師主導の治療が始まっているが、日本ではまだ公式には認められていない。メニコンは中国にそれ用のレンズを供給している。現在、スマホの普及などにより世界的に近視人口は増加しているので、近い将来この治療法が脚光を浴びる可能性もある。

3月にコンタクトレンズの巨大工場が完成。これでコンタクトレンズの生産量が倍増するので成長が加速しそう。新工場では製造設備のみならず倉庫も自動化されているので利益率がさらに高まりそう。2030年の予想利益は現在の3~4倍くらいになりそう。チャート上の底値は3500円くらいか。

■コロナショックが直撃した銘柄
コロナが落ち着けば反発しそう。
業績が回復していく順番は
・鉄道会社、JR
・求人広告会社、リクルート、エンジャパン
・不動産会社、ハウスドゥ、パーク24、TKP
・飲食店、鳥貴族
・国内旅行会社、
・ホテル会社、共立メンテナンス
・航空会社、ANA、JAL
・海外旅行会社、HIS、近畿日本ツーリスト
・クルーズ旅行会社、ベストワンドットコム、米カーニバル、米ノルウェージャン
*ただし、今回の危機で多額の借り入れをするところは回復が遅れるので、キャッシュに余裕があるところが投資対象になる。

■景気敏感株
景気敏感株は景気拡大期のパフォーマンスが非常に良いのでこちらもチェックしていく。

<仕込むタイミングは>
・IMFの世界経済成長率予測が底打ち
・OECDの景気先行指数や、中国やグローバルの製造業PMIが底打ち
・台湾の電子・情報通信機器の輸出受注や半導体指数が底打ち

<半導体株>
*半導体株はデジタル革命の影の主役なので長期的な上昇トレンドが見込める。
・信越化学工業、ディスコ、サムスン、アルファベット・・。

<景気敏感株>
・日進工具、コンテック・・。

・日本電産。1/12の日経に「永守会長は日本電産の連結売上高を30年度に10兆円と現在の6倍以上にする目標を話し・・」とあり興味が湧いた。この成長戦略の核はEV用駆動モーターになるようだが、EV市場は大きく、日本電産はモーターに強みがあるので売上10兆円も不可能ではないかもしれない。ただ、この市場はレッドオーシャン市場(巨大市場)であり、モーターはブラックボックス化できないので、最終的には汎用品に強い中国勢あたりと消耗戦になる可能性もある。独ボッシュやデンソーといった強力なライバルもいる。

■観察中の銘柄
・パークシャテクノロジー
基本シナリオ:先端の深層学習知見を産業に落とし込んで業績拡大
四半期決算だけでははっきりしたことは言えないが、第1四半期決算ではAIアルゴリズム事業の成長が止まったように見える。もしかすると競争は予想以上に激しいのかもしれない。チャートは底抜けし、下値模索開始。現在の時価総額は430億円だが、パークシャと同等の人材をそろえるアリスマーの推計市場価値は160億円なので、最終的にはそのあたりまで落ちるのかもしれない。

・ハウスドゥ
基本シナリオ:国内最大の不動産サービス・プラットフォームで課題解決
ハウス・リースバック事業とリバースモーゲージ保証事業には少し問題ありそうだが、ニーズが強そうなので結局はなんとかなりそう。ただ売上高成長率は10%程度で、投資負担が重そうなので観察リストから除外する。

■気になっている銘柄
・ブシロード
新日本プロレスや「バンドリ!」などのキャラクタービジネスを手がける会社。プロレス事業はタカラトミーを立て直したハロルド・ジョージ・メイ氏が社長に就任したのでまだまだ伸びそう。ただバンドリ!の方はアプリ売上ランキングで減速気味。

サイバーエージェントがプロレス団体「ノア」を買収した。生き馬の目を抜くネット広告業界で勝ち抜いてきた社長が陣頭指揮を執っているようなので手強い相手になりそう。ただこれでプロレス業界が全体的に盛り上がるという面もありそうなので、それほど悪い展開ではないのかもしれない。

・TKPとマネーフォワード
経営者がおもしろそうな感じ。ただTKPは流動比率が69%の状態でコロナショックが直撃しているのでかなり大変そう。

・ビジョナリーホールディングス
2019年12月にエムスリーが30億円出資し、大株主になった会社。エムスリーと共同で次世代型のメガネ屋をつくるとのことなので期待できる。

・手間いらず
株価が急落していたのでリスト入り。宿泊施設向け予約管理システムが伸びていきそう。営業利益率は6割以上と高い。競合にリクルート系がいるのが気がかり。

月1社ずつ調べていこうとは思うが、まずはその前に2017年以降のIPOをざっと調べて銘柄をリストアップしていこうと思う。

マクロ系金融資産チェック

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米長期金利 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:0%~1%の間で推移

長期金利に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・経済成長率+インフレ率↓
米長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になるが、今後は両者とも低下傾向になる。米国の2019年の経済成長率は2.4%、2020年は(予)-10~-5%で、インフレ率は2019年が1.8%、2020年は(予)0%になる。足下では新型コロナウイルスが流行しており、経済とインフレには強い下押し圧力がかかっている。
*2019年の数値はIMF予想。

・財政赤字の拡大↑
米政府は財政支出を拡大しており、今後も年金や医療、福祉などの社会保障費が税収の伸びを上回って増加していくので、長期的に財政赤字の拡大は続きそう。2018年の米国の財政赤字は100兆円を超えており、この水準は当面続く見込み。2020年は新型コロナ対策により財政赤字は200兆円を超えそう。

・金融政策↓
インフレ率が2%を下回り始めているので、FRBは2019年7月に金融緩和に転じた。現在は新型コロナ対策で政策金利をほぼ下限(0~0.25%)まで下げている。

3月23日にFRBはドル不足や金利急騰を抑えるために量的緩和(資産購入)を無制限で実施することに決めた。今後、米政府が発行する国債はFRBがすべて買い取りそう。

・リスクオン、オフ↓
米中貿易戦争の休戦と金融緩和によりリスクオンになりつつあったが、コロナショックと石油価格戦争で再びリスクオフに。

・米国債の人気低下↑
米10年国債の利回りは先進国の中では相対的に高いので海外から買われやすかったが、足下では為替ヘッジコスト(2.2%?)が米長期金利(0.87%)を上回っているので、海外からの米国債の購入は減りつつある。双子の赤字(貿易赤字と財政赤字)の拡大も人気低下の要因になる。
*ヘッジコストとは外貨の短期金利と運用国通貨の短期金利の差から生じるコスト

・資金需要の低下↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要がそれほど多くない。少子高齢化で住宅ローンなどの借り入れも減少している。

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みで潜在成長率は長期的な低下傾向にある。

・トランプ大統領の介入↓
低金利好きのトランプ大統領はFRBへの口先介入のみならず、FRBへ緩和派の人間を送り込むなどして金融緩和圧力をかけ続けている。

・チャート
チャートは底抜け。しばらく停滞しそう。

■WTI原油 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:15ドル~45ドルの間で推移

原油価格に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・産油国の採算ライン↑
サウジが財政均衡に必要な水準は1バレル60~83ドル、アラブ首長国連邦(UAE)は70ドル、イラクは60ドル、ロシアは42ドル、米企業の採算ラインは45ドルになる。3/10日経3/10日経
*ただし、ロシアは「今後6~10年に1バレル25~30ドルの水準になっても乗り切れる」と言っている(3/10ロイター)。ただ、3/24日経にはロシアについて「低水準の油価が続けば3年程度で資金が尽きる」とある。
*サウジは値下げでシェアを拡大させれば当座はしのげると見込んでいるが(3/11日経)、サウジの2020年の財政予算は1バレル80ドルの原油価格を前提としてつくられており、現在の原油価格(1バレル24ドル)でこの予算をこなすにはシェアを現在の倍以上まで高める必用がある。しかしサウジの生産能力は現時点では1.3倍程度までしか高められないので、シェアを倍増させるのは現実的には不可能。他の産油国も似たような状況なので、結局はどこかで協調減産を再開することになりそう。

・トランプ大統領の介入↑
米石油企業は米企業業績への影響が大きいが、原油価格が1バレル40ドルを下回る状況が続くと、石油企業が抱える多額の負債の返済が難しくなり、信用リスクが高まる恐れがある。信用収縮が起こり景気後退に陥ると大統領選にも影響してくるのでトランプ政権は原油価格が下がりすぎないよう産油国に政治的圧力をかける。3/20ロイターによると、米政府はすでにその方向で動いているもよう。

一方で、原油価格が1バレル65ドル以上になると、インフレに上昇圧力がかかるので、インフレ上昇(金利上昇)を嫌うトランプ大統領は原油価格の上がりにくい政策をとる。

・需要↓
原油の需要予測はIMFの世界経済成長率予想などを基につくられるが、2020年のIMFの予想経済成長率はコロナショックにより、当初の3.4%から「0%以下」に下振れ。3/29の日経ヴェリタスには「大手シンクタンクは今後2~3カ月の間に世界の石油需要は日量1200万~2500万バレル減少すると予測。ヒューストンの専門家は通年で日量約600万バレル減少すると予測」とある。
*平時の世界の石油消費量は日量1億バレル程度。

今回のコロナショックでは商談や会議のバーチャル化が急速に普及しているので、コロナが収まっても航空旅客需要は以前の水準に戻らない可能性が高い。

中長期的には景気後退や温暖化対策(再生エネルギーへのシフト)、脱プラスチック運動など需要を抑制する要因もあるが、人口増や世界経済の成長に伴い原油消費量は増加基調になる。IEA(国際エネルギー機関)は石油需要が2040年まで拡大を続けると予測している。OPECは2040年の石油需要を現在の12%増の日量1億1060万バレルと予測している。ただし、今後は脱炭素の流れが加速していきそうなので、IEAやOPECのシナリオが崩れる可能性も少なからずある。

・供給↓
「コロナショック」で需要が弱まる中、OPECプラスが協調減産の協議をしたが、シェア低下を恐れるロシアが反対し交渉決裂。サウジはそれを受け、価格下支えから市場シェア重視の戦略に転換した。米バンク・オブ・アメリカは「価格競争の標的が米国のシェールオイルの場合、原油価格下落は長期にわたる公算が大きい」「原油価格は将来的に1バレル20ドルを下回る」と言っている(3/9ロイター)。
*石油価格戦争には高コストな再生エネルギー生産者を市場から追い出すという意図もある。
*サウジのエネルギー政策は2019年9月からムハンマド皇太子と異母兄のアブドルアジズ王子・エネルギー相が決めているが、2人はテクノクラート(技術官僚)ではないため、近視眼的な政策をしている可能性が高い。

原油輸出シェアの全体の3分の2を占めるOPEC非加盟国の供給も増加傾向にあるので需給はかなり緩んでいる(1/12日経)。

長期的には原油価格の停滞や脱化石燃料への投資家圧力などにより新規の油田開発が停滞しているので、将来の供給を確保できなくなるリスクがある。
*現在ESG(環境、社会、企業統治)の観点を考慮しない企業は評価しないという流れになってきている。地球温暖化につながる化石燃料は環境リスクが高く、2019年3月には世界最大の政府系ファンド・ノルウェー政府年金基金が石油・ガス関連株の一部を投資先から外すという方針を示している。

・産油国で不測の事態が起こる↑
米国は2019年1月にベネズエラ国営石油会社への制裁を決定した。ベネズエラの産油量は投資不足などもあり著しく低下している。

リビアでは内戦が激化している。生産設備の被害や輸送の寸断で一気に生産量が落ちる可能性がある。

米国は2019年5月にイラン産原油を全面禁輸することに決めた。イランは対抗措置として原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡(世界の石油タンカーの2割が通過)を閉鎖すると警告していたが、5月に入りさっそく通過するタンカーなどへの攻撃を開始。その後もゴタゴタが続いており、9月にはサウジの中核の石油処理施設が親イラン武装組織フーシから大規模な攻撃を受けた。2020年1月には米国がイラン革命防衛隊司令官を殺害。イラン側は反発し米基地への報復攻撃をしたが、その後はやや落ち着きつつある。

・リスクオン、オフ↓
中東情勢の緊迫や新型コロナウイルスの蔓延でリスクオフに。
*原油は株式と同じリスク資産になる。

・為替↑
原油はドル建てのためドル高になると原油価格に低下圧力がかかるが、ドルはほぼ頭打ちの状態なので、今後は原油価格に徐々に上昇圧力が加わってきそう。ドル安になると新興国の輸入が増えやすくなるのでこれもまた上昇圧力になる。
(WTI原油価格連動型上場投信においては、ドル安(円高)が進むと基準価額が下がる)

・船舶の燃料規制↑
2020年から船舶燃料油の硫黄分濃度規制がはじまる。硫黄分の少ないWTI原油や北海ブレントには5ドル程度の価格上昇圧力がかかると言われている。

・チャート↓
チャートは底抜け。しばらく停滞しそう。


■ドル円 (保有資産:ドル売り)
今後1年の予想レンジ:90円~110円の間で推移

為替に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・日米の金融政策↓(↓は円高方向)
ドル円レートの基準値は購買力平価になるが、今は購買力平価(95円)から円安方向に振れている。円安方向に振れている最大の要因は日銀の金融緩和になるが、その緩和が限界に近づきつつある。一方で米国は金融緩和余地があり、足下のコロナショックで最大限の緩和をし始めている。ただ今回の緩和で米国も打ち止めになりそう。

・日米の長期金利差↓
日米の長期金利差はドル円相場との相関が高いが、コロナショックや石油価格戦争による景気後退懸念により米長期金利が急低下している。日本の長期金利はすでに下限に達しているので、日米の長期金利差は縮小しつつある。

・米財政赤字の拡大↓
米国の財政赤字は年100兆円を超え始めており、コロナショックにより今年はさらに100兆円超上乗せされそう。FRBは大量に発行される国債の買い手としてドルを大量に発行している。
*今現在、日本でも同様のことが、ほぼ同規模(対GDP比)で起きているが、米ドルは基軸通貨なので米国は今後、より積極的に財政拡大(ドル発行)していくことができる。その場合は日本も円高対策で米国と足並みをそろえようとするはずだが、日本政府の債務は対GDP比で200%を超えており、コロナの影響も比較的軽いので、米国についていけない可能性がある。

・米経済の強さ↓
資金は経済の強い国へ流れ、その国の株式や不動産などの資産が買われるが、デジタル革命を主導する米経済は相対的に強いのでこれまではドル資産が買われやすかった。しかしコロナショックや石油価格戦争により米景気が後退する確率が高まってきたので、ドル資産は売られやすくなっている。米国以外の国も景気後退に陥りそうだが、これまで最も買われてきた資産は米国資産なので、その反動が最も大きくなるのも、おそらく米国資産になる。

・リスクオン、オフ↓
コロナショックと石油価格戦争でリスクオフに。

*リスクオフになった場合のドル円の基本的な動きついて。まず条件反射的に円が買われる。そこからさらに不透明感が強まるとキャリー取引の巻き戻し(円の買い戻し)が起こる。本格的なリスクオフまで発展すると対外資産の引き上げ(投資撤退)と、その思惑による円買いが起こる。
 *キャリー取引とは金利差を狙った取引で、市場環境が落ち着くと低利通貨を売り、高利通貨を買って金利差で収益を得る取引が盛んになる。ただ足下では円以外のユーロやドルも低金利通貨になりつつあるので、キャリー取引は減少傾向にある。
 *日本が持つ対外純資産は世界最大の340兆円になるが、そのうち資産の引き上げが起こりやすい証券投資の割合は3割(100兆円)程度になる。
 *足下では米投資家が対外資産を引き上げ始めている(ドル高要因)。
 *日本でも対外資産の引き上げが起こりつつある。3月22日にはソフトバンクグループが最大4.5兆円の資産を売却すると発表。今後も厳しい決算をにらんだドル建て資産の売却が続くかもしれない。

・ドル需給↑
「コロナショック」により、企業にはキャッシュが入ってこなくなったため、企業は手元資金を増やす動きを活発化させている。金融機関は投資ファンドの解約・返金に備えるため、他の金融機関への短期資金の融通を大幅に抑えている。基軸通貨の米ドルは世界の大部分で資金調達に使われているので、ここでも強いドル需要が発生している。そのためドル需給はかなり締まっており、銀行間の翌日物金利は一時2%まで上昇している。

ただ、足下では各国中銀が協調してドル資金を大量に供給しており、また金融規制(バーゼル3)を緩和しているため、需給は緩みつつある。これら一連の動きはリーマンショック発生直後の動きと似ているが、リーマンショック時は需給が落ち着いた後、ドル安に転じている。3/24日経

・国内投資家の対外証券投資↑
日本の債券投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、為替差損回避(ヘッジ)付きでも高い運用利回りが見込める海外債権などを買っている。国内の超低金利は当面続きそうなので、今後も対外証券を積み増していく可能性が高い。しかし今はコロナショックが起きているので、対外証券投資はしばらく停滞するかもしれない。
*足下では世界的な金利低下により外債の利回りも下がっているので外債購入は鈍りつつある。
*年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2020年度の外国債券での運用比率を従来の15%から25%まで引き上げることに決めた(目標値から6%までの乖離は許容)。この変更により、今後15~25兆円の対外証券投資需要が発生する。4/1日経

日本の対外証券投資は年によってばらつきがあるが、平均すると年10兆円程度の買い越しになる。今後は異次元緩和前の比較的高い利回りで購入した国内債権の償還が始まるが、戻ってきたお金は国内債への再投資ではなく、外債に回る可能性が高い。2020年の償還額は33兆円程度になる。
*2019年の対外証券投資は9兆5000億円。
*国内勢が外債を買うときは、円を売って外貨を買い、その外貨で外債を買うわけだが、円を買う側の海外勢はその円で日本国債を買うことが多い。海外勢は1月~8月までの間に12兆円の日本国債を買っている。これは円高圧力になる。
*対外証券投資のうち外貨建て(円売り)は7割程度になる。

・日本企業の対外直接投資→
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業の対外直接投資は今後も増えていきそう。2019年の対外直接投資は22兆8千億円と過去最大を記録している。日本企業は200兆円以上の現金・預金を抱えており、今後も対外直接投資が続く可能性は高い。しかし今はコロナショックが起きているので、対外投資はしばらく停滞しそう。
*対外直接投資額のうち外貨建て(円売り)は半分程度になる。

・米経常赤字(貿易赤字)の拡大↓
米経常赤字は10年ぶりの水準まで悪化しているが、原油価格急落(米産油量減少により石油の輸入が増える)によりさらに悪化する可能性が高い。

・日本の経常収支↓
まずは貿易収支について。
海外現地生産の拡大やスマホ・医薬品の輸入が増加傾向で、これは貿易赤字要因だが、輸入額の4分の1(20兆円)を占める原油・天然ガスの価格が足下で急落しているので、今年の貿易収支は黒字が増えていきそう。
*2019年の貿易黒字額は約5000億円になる。

(貿易収支を含む)経常収支は20兆円程度の黒字を維持しているが、この黒字の大半は過去に行った投資のリターンである所得収支が占めている。所得収支の黒字は貿易黒字と違い、半分程度が円に換えず現地で再投資されるため円買いフローは半分(10兆円)程度しか発生しない。

・日銀が保有するETFの簿価割れ↑
日銀の自己資本は8兆円なのに対し、保有する日本株ETFは約30兆円ある。ETFの損益分岐点は日経平均株価が19500円くらいで、ここを下回ると自己資本が目減りし通貨の信認が揺らぎ始める。日経平均株価が13000円台まで下落すると債務超過に転落し、さらに通貨の信認が落ちる。3/9日経
*日銀のETF購入にも円安作用がある。

・投機筋の持ち高↓(「円 投機的ネットポジション」で検索)
買い持ちが増加傾向。投機筋は円高が進むとみている。
*ただし円を買い持ちした場合はスワップポイント(金利差収入)がマイナスになるので、買い持ちポジションが長く続くことは少ない。

購買力平価
物価が上がると(インフレが進むと)、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると(デフレが進むと)、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必用なくなるので購買力は上がる。この物価変動に着目して二国間の通貨価値をならしたものが購買力平価になる。

日本円を米ドルと比較した場合、米国の方が慢性的にインフレ率が高いので円の購買力平価は長期的な円高傾向にある。ただ米国のインフレ率は年々低下していて日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。為替相場は長期的にはこの購買力平価に収斂していくとされるが、現在の購買力平価は95円程度なので、円の下限は75円、上限は115円くらいになる。

・チャート↓
<5年チャート> 大きな三角持ち合いを形成している。移動平均線的には大きく下振れしそうな感じ。ただ下ヒゲが出てるので、下げにくそうでもある。


■日経平均 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:13000~20000円で推移

日経平均に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・EPS(1株利益)↓
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益)× PER(人気度)で決まるが、2019年のEPSは-8%、2020年は(予)-40~0%になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因についても見ていく。
・為替↓
今後為替は中長期的に円高に振れていきそうなので、海外で6割を稼ぐ日本企業の利益は下振れしていきそう。

・海外景気↓
日本企業は海外で6割を稼いでいるので海外景気の影響を大きく受けるが、2020年はコロナショックで世界景気が景気後退に陥りそう。

・失業率↓
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益が圧迫され、労働量力不足で成長が頭打ちになるが、現在の失業率は最低水準(2.4%)になる。

・減価償却費や資源価格(原材料費)↑
景気拡大期の終盤は減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇して利益が圧迫されやすいが、コロナショックと石油価格戦争により資源価格は大幅に低下している。

・金融政策→
景気拡大期の終盤は上昇した金利により企業の利益や資金調達環境は悪化するが、今回は金融緩和が続いているのでほとんど影響なさそう。
ーーーーー

・PER(人気度、リスク選好度)→
日経平均のPERは基本的に11~16くらいの間で推移するが、現在のPERは11.90。コロナショックによる景気後退懸念を考慮すると、このくらいの水準が妥当なのかもしれない。

・需給↑
日銀が日本株を買いまくっているので日本株は下がりにくい。日銀の買越額は年間6~12兆円規模になるが、他の投資主体の売り玉はつきつつあるので(アベノミクス後の海外投資家の買越額は7兆円まで縮小)、残りの売り玉はすべて日銀が吸収してくれそう。

 <2020年の主な投資主体の予想売買動向>
 日本銀行、金融政策により6~12兆円の買い越し。現状は2兆5千億円の買い越し。
 事業法人、自社株買いにより2~3兆円の買い越し。現状は1兆3千億円の買い越し。
 海外投資家、景気後退懸念で2~4兆円の売り越し。現状は1兆7千億円の売り越し。
 個人投資家、逆張り投資で1~3兆円の買い越し。現状は1兆8千億円の買い越し。

*原油安により中東産油国が財政赤字に陥りそうなので、政府系ファンドが金融市場から資金を引き上げる可能性が出てきた。中東産油国が抱える金融資産は約200兆円になる。

・金融政策↑
日本株はFRBの量的緩和(資産買い入れ)との相関が強いが、FRBは3月から無制限の量的緩和を始めている。

・利回り↑
日本株式の益回りは8%超、配当利回りは2%超と、日本国債の利回り0%より高いので、株式に資金が流れやすい。

投機筋の持ち高
買い残は7000億円で、裁定売り残高は1兆6000億まで拡大している。投機筋は日本株が下がるとみている。
*裁定残高は通常、売り残高よりも買い残高が多い。一般に、裁定買い残高が3000~6000億円まで減少すると「売られすぎ」、3.5兆~4兆まで増加すると「買われすぎ」の水準になる。

・チャート↓
<10年チャート> 三尊天井完成。一目均衡表(月足)の雲を下抜けしているので、地合いが大きく転換したように見える。

市場環境チェック

株式市場への影響が大きい企業業績、金利、金融政策などをチェックしていく。

■ファンダメンタル
<EPS成長率>
・世界株式の2019年のEPS増加率は8%、2020年は-30%~0%
・米国株式の2019年のEPS増加率は3%、2020年は-40~0%
・欧州株式の2019年のEPS増加率は3%、2020年は-40~0%
・日本株式の2019年のEPS増加率は-8%、2020年は-40~0%
*2020年はコロナショックで大きく落ち込みそう。
*ただ長期的には、金利低下により企業の利払い費が減少しており、経済のデジタル化に伴い設備投資や人件費が減少しているので、企業の利益は増えやすい状況になっている。
→問題あり

<経済成長率>
・世界の2019年の成長率は2.9%、2020年は-5~0%以下
・米国の2019年の成長率は2.4%、2020年は-10~-5%
・中国の2019年の成長率は6.1%、2020年は-5~0%
・ユーロ圏の2019年の成長率は1.3%、2020年は-10~-5%
・日本の2019年の成長率は0.9%、2020年は-10~-5%
*参照:4/2日経
*IMFは2020年の世界経済の成長率が「マイナスに陥る」と言っている。3/25日経
*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。しかしデジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほどには不況感が強まらない可能性もある。経済成長率を測る指標の一つであるGDPは、1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されているサービスの大半は公共財に近い性質があるため金銭的な数値には反映されにくい。今は若い人ほど幸福度が高いという調査結果が出ているが、これはデジタルサービスの恩恵を最も受けているためともいわれている。
*仏経済学者のジャン・フーラスティエは今から70年くらい前に「農耕社会、工業社会の後にはサービス社会へ移行するが、そこは経済成長のない世界になる」と言っている。11/27日経

ーーーーー
2017年頃から世界同時成長が起きており、このような状態は通常2,3年続くという。ただしこのような世界同時成長は景気サイクルの終盤に見られる特徴的な現象とも言われている。米ピムコは2019年に世界経済の同時減速が始まると予想している。

世界同時成長は海外で6割を稼ぐ日本企業には追い風になるが、その反面、海外の景気後退期は日本企業にとって強い向かい風になる。このような経済構造に円高効果が加わり、日本株は米国株の1.5倍くらい下落する。
→問題あり

<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2019年度が1.8%、2020年は0%
・欧州の予想インフレ率は2019年度が1.2%、2020年は0%
・日本の予想インフレ率は2019年度が0.9%、2020年は0%
*2019年の数値はIMF予想。世界経済のネタ帳・米国 日本
*インフレ率が上がらないのもデジタル経済の影響が大きい。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば検索やSNSは無料だし、ネット上では価格比較を簡単にできるので売り手は超過収益を得にくくなっている。またスマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。他にも複製コストゼロのデジタル商品やシェアリングサービスの普及などもあり、物価はどうしても上がりにくくなっている。『FREE』の著者のクリス・アンダーソンは「モノ中心の経済はインフレ志向になるが、情報中心の経済はデフレ志向になる」と言っている。

*原油など商品価格の停滞もインフレ停滞の要因になる。かつての景気回復局面では商品価格も大きく上昇していたが、今回の景気回復局面では成長率が穏やかなため商品価格は上がりにくくなっている。また経済のサービス化に伴い財への需要が弱くなっている面もある。加えて、環境保護や社会の持続性などで省資源化が求められていることもあり、今後も商品価格の停滞が続く可能性は高い。
ーーーーー
中央銀行の責務の1つは「物価の安定」になるが、中央銀行は経済にとってベストなインフレ率を2%としており、その水準で物価を安定させることを目標にしている。中央銀行が行う金融政策はインフレ率2%を基準に決められており、それより低ければ金融緩和、高ければ金融引き締めを行うことになる。先進国のインフレ率は長期的に低下傾向で、足下では2%を下回りはじめているので、今後長期で金融緩和が続く可能性が高い。
*デジタル経済や商品価格の停滞、少子高齢化、グローバリゼーションなどを考慮すると、中銀の「インフレ率2%」目標には無理があるように見える。
*2025~2030年あたりにビッグデータ分析などで現実をより精緻にとらえた新しい経済理論が作られるとも言われている。そのあたりになればインフレに対する捉え方も変わりそう。
→問題なし

<金利>
・米国の2年金利は0.23%で10年金利は0.57%。
・日本の2年金利は-0.13%で10年金利は-0.00%。
*米国の2年金利が10年金利を上回ると平均18ヶ月後に景気後退に陥るといわれるが、2019年8月にその2つが逆転した。
*実質長期金利(名目長期金利-インフレ率)は2月までマイナス圏で推移していたが、直近ではプラス圏に浮上したようなので、米株には割高感が出始めている。3/21日経
→問題あり

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・日本の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・中国の企業・家計債務残高はGDP比210%まで上昇しており、足下でも微増傾向。日本のバブル期のピークは220%になる。
・新興国の民間債務残高はGDP比140%で現在も微増傾向。
・過去10年で各国政府は債務を大きく膨らませている。
*GDPは債務返済能力を測る指標になる。
*米企業の債務残高は2011年のGDP比65%から2019年には過去最高の73%まで上昇している。一方で米家計の債務残高は2007年のGDP比97%から76%まで低下している。5/23日経
 *米企業の対GDP債務残高比率は10年移動平均線から3%超乖離しているが、これは直近3回の債務バブルのピーク時とほぼ同じ水準になる(7/19ダイヤモンド)。債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回った状態が続くと、どこかで必ず逆回転が起こる。
*今は信用力の低い企業の債務が膨張しているが、全体で見ると健全な企業の貯蓄に相殺されている(11/10日経)。FRB元議長のグリーンスパン氏は「米企業の資本支出がキャッシュフローを上回ると(「純借り入れ」の状態になると)景気後退に陥るが、現時点ではまだそのような状態にはなっていない。過去50年、このような状態で景気後退に突入したことはない」といっている。1/6日経
*過去の景気拡大期では家計の貯蓄余剰が減ったり、企業の投資超過が広がったりしているが、現在は家計の貯蓄余剰が膨らんでおり、企業は概ね収支均衡の状態にある(1/15日経)。*貯蓄余剰の状態になると、余ったお金で国債を買うか現金のまま持つようになるので金利には低下圧力がかかる。
*今のような低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では低金利が続きやすく、高債務の状態が維持されやすい。
*先進国では超低金利が続いているので債務拡大はまだ続きそう。
*2019年には投資適格債の半分以上が、格付けの最も低いトリプルBになっている。*トリプルBとは、投資不適格債(ジャンク債)より1段階高い格付け。
*信用格付けの低い企業は米シェール企業などエネルギー企業に多いが、原油安によりそれらの信用リスク(デフォルトリスク)が高まり始めている。
*今のように金利が経済成長率を下回っている状態が続くと企業は財務レバレッジを効かすだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にできるので債務が膨張しやすい。政府債務においては、今のように国債金利がGDP成長率を下回っている状態だと、多少の財政赤字を続けても債務残高GDP比を一定の水準に維持できる。日本政府の場合は対GDP比で2.5%程度の赤字を続けても債務残高GDP比を一定に維持できる。10/7日経
*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構図になっている(11/10日経)。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りてない中で財政支出を減らしても、景気悪化を招き財政赤字は膨らみやすくなる。*財政赤字が拡大すると公共サービスなどの政府機能が落ちていく。
*中国の企業・家計債務は危険水準に達しているが、2018年に習政権は経済の筆頭課題に金融危機封じ込めを据えていたので(2018年中盤から景気重視に転換)、しばらくは心配しなくてもよさそう。
*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業によるものなので、計画に沿って徐々に削減していけそう。
*中国は2016年に政府出資で資産管理会社(AMC)を設立し、不良債権の最終処理を進めている。*AMCとは銀行の不良債権を分離して買い取り、それを海外の投資銀行や資産運用会社などに売却する会社。
*中国は可処分所得に対する家計債務比率が日本のバブル期並の120%まで上昇しているので、今後深刻な消費不振に陥る可能性が高い(7/28日経)。ただ中国政府は8月にその対策を打つといっているので、当面は大丈夫そう。
*中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障など政府支出が急拡大していく可能性が高い。1/18日経
*新興国や資源国はコロナショックや石油価格戦争により、通貨安・高インフレ・高金利になり、債務圧縮局面に入りつつある。
→問題あり

<金融政策、財政政策>
・コロナショックで世界中が金融緩和に転じている。
・日米欧は金融緩和が限界に近づきつつある。
*スウェーデン中銀は2020年1月にマイナス金利だと家計債務の膨張が止まらないなどの理由で政策金利を0%に引き上げている(12/20日経)。金融緩和の限界が露呈しつつある。
*金融緩和を長期で続けていくと、従来ならインフレが過熱して、それが金融緩和の歯止めになっていたが今回はそれがない。金融緩和が長期化した場合のメリットは失業率の低下やデフレ阻止になるが、デメリットは債務の増加や産業の新陳代謝の低下になる。
*金融緩和が長期化すると産業の新陳代謝が進まず(ゾンビ企業が存続する)、潜在成長率が落ちていく。潜在成長率が落ちるとインフレが起こりにくくなる。現在中銀がインフレを起こそうと行っている金融緩和は長期的にはインフレが起こりにくい経済構造を作っている面もある。
*日本はこのまま金融緩和を続けると、金融仲介機能を持つ銀行の収益が落ち、金融政策が円滑に機能しなくなる恐れがある。日銀の責務には「物価の安定」の他に「市場・金融システムの安定」があるが、長期の金融緩和により金融システムが不安定になりつつある。
*株価と相関の強い中銀の量的緩和(資産購入)は2019年は40兆円ほどだったが今年は130兆円まで拡大する見込み(1/18ロイター)。コロナショックにより中銀は量的緩和をさらに増やしているので500兆円くらいまで拡大するかもしれない。
*日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
 *MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することはなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によれば、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的には国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないとのこと。10/7の日経には財政出動をして、長期的な収益率が政府の借入金利を上回るようなものに投資すれば、短期的に需要を押し上げるだけでなく、長期的にも財政状態を改善できるとある。このような投資に該当するものには出生率向上策や気候変動への取り組みなどがあるという。ただし、今のような完全雇用の状況では労働力不足でこのような需要喚起策は打てない。
 *MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を、国民が増税や高インフレなどで負担しなければならない。
 *MMTで高インフレになった場合、中銀は金利を引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで利上げをしたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上がる、という悪循環に陥ってしまう。
  *MMTと日本の金融・財政政策は若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。
*日本や米国は慢性的な財政赤字体質なので、将来的にはMMTのような財政・金融政策に移行せざるを得ない。
*先進国の金融政策はほぼ限界にきているので、次の景気後退時の景気刺激策は財政政策しかない。
*今回のコロナショックで先進国はMMTのような政策に移行したように見える。
→問題なし

<政治>
・日本は安定。ただ経済の方は景気後退入りがほぼ確定したので、財政赤字がさらに膨らんでいきそう。
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。ただ足下では一時休戦に。
 *米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込んでいく。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏とも言われている。
・香港ではデモが続いているが、これはもしかすると中国民主化への序章になるかもしれない。ウイグル自治区では中国の思想を植え付ける100万人規模の再教育施設があるようだし、中国の監視・信用格付け社会では社会的弱者の不満が高まっているようなので、中国に経済ショックのような大きな打撃が加われば、一気に民主化の機運が高まっていく可能性がある。足下で起こっている「コロナショック」は政治的にも経済的にもかなりの打撃になりそう。中国政府は新型ウイルスは米軍によるものだと主張し始めたが、中国の民主化工作として考えると効果がありそうなので、「もしかしたら」という可能性はある。ただ米国は2018年時点でコロナウイルスが自国民にも被害を及ぼす危険性を認識しているので(3/24日経)、さすがにそれはなさそう。ただそれでも米ジョンズホプキンス大がコロナウイルスの危険性を報告した2年後にその条件にぴったり合ったコロナウイルスが発生してるので、人為的なニオイがしなくもない。
*中国政府はコロナウイルスの無症状感染者を「他者に感染させるリスク無し」として放置してるが、もしこれで流行の第2波が来たら(もう来てる?)政府は致命傷を負いそう。
・英国はEUから「合意ありの離脱」をしたが、これから始まるEUとの通商交渉は不透明感が強い。
・英国のグダグダ感が効いてか、EU域内のEU離脱派・懐疑派の勢いは当初よりも弱まっている。しかし失業率・成長率の悪化や所得格差の拡大、価値観の分断を背景にしたポピュリズムは今後も長期にわたり続きそう。
・今年の米アカデミー賞(作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞)は韓国映画の『パラサイト』が受賞したが、この映画は貧富格差がテーマになる。今後はこの格差が世界の主要テーマになっていきそう。
→問題あり

<その他の景気後退シグナル>
・米景気の先行指標である米住宅着工件数は上昇トレンドが続いている。
・世界景気の先行指標である世界新車販売台数は2018年、2019年と2年連続で減少している。*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数はいったん2月に持ち直して節目の50を超えたが、4月はコロナショックで再び49に低下。(同指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増えると言われる)。一方で経済成長の牽引役である米ISM非製造業指数は、52.5と堅調さを維持している。
・失業率が低下すると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになるが、米国の失業率は最低水準(3.5%)まで低下していた。しかしコロナショックにより4.4%に上昇。米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥ると言われているが、この調子でいくと前四半期から大幅に上昇しそう。
・景気拡大期の終盤は、金余りと鈍化した成長率を引き上げるため巨大M&Aが盛んになるが、今がまさにその状態。*高値で行われたM&Aは景気後退期にのれんで巨額の減損が発生しやすい。
・世界景気の先行指標である銅価格は景気がピークアウトするかどうかの分岐点にあったが足下ではピークアウトしたもよう。
・世界景気を半年先取りするOECD景気先行指数は直近の数値は発表延期のため不明。(4月8日に発表予定)
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIはコロナショックで2月に過去最低の35まで落ち込んでいたが、3月は52に回復。ただ、PMIは生産や受注が前月と比べて増えたかどうかを調べるものなので、節目の50を超えたからといって必ずしも経済が全面的に回復したという意味にはならない。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りはコロナショックで大きく下落したが、FRBの量的緩和策で若干持ち直しつつある。*FRBは低格付け債は購入しない。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれるが、今は「長短金利の逆転」「社債スプレッドの拡大」が起きている。
・起こり得ない衝撃的な事象の発生を織り込むスキュー指数(ブラックスワン指数)は118と低位で落ち着いている。・・今回は「ブラックスワン」が2羽も飛んできたにもかかわらず、この指数はほとんど反応しなかった。この指数はそもそも、買う権利(コール)に対する売る権利(プット)の需給の強さから算出したものなので、「ブラックスワン」を織り込む機能は元からついてなかったのかもしれない。この指数は使えないのでチェックリストから除外する。
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多いが、今は「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」ステージに入ったようにみえる。
→問題あり

■テクニカル
・チャート
1/22のブルームバーグに「日経平均に大相場のシグナル」とあった。記事によると過去40年で4回現れた12カ月線と24カ月線のゴールデンクロスがもうじき完成するそうで、もしそれが完成すれば、2万9000円付近まで上昇する可能性があるという。ただし、4回のうち1回はゴールデンクロスになったところが天井になっているという。現状から判断すると、今回はこの天井パターンになりそう。
ーーーーーーーーー
2/9の日経ヴェリタスに「米国株、2000年と相似」とあった。記事によると「当時も予防的利下げが実施され、景気拡大が続き米国の主要株価指数は最高値更新を続けた。一方で、ダウ輸送株や中小型株で構成するラッセル2000などは99年夏頃までにピークアウトしていた。今回も主要株価指数は最高値更新を続けているがダウ輸送株やラッセル2000は18年の高値を抜けず頭打ちとなっている。金利が大きく上がるまでは過剰流動性相場が続く可能性も否定できないが、6~7月頃までには天井を打ち、00年のような急落が生じる可能性がある」とあった。今は金利は上昇していないが、コロナショックにより急落している。
*ダウ輸送株やラッセル2000は景気の先行指標になるとも言われている。
→問題あり

・ディストリビューション・デー(機関投資家の売り抜け日)
日経平均 8日 *急落し始めたところ(2月20日)から1ヶ月分カウント
NYダウ 11日 *2月20日から1ヶ月分カウント
ナスダック 10日 *2月20日から1ヶ月分カウント
<NYダウの6ヶ月チャート> 
→問題あり

・騰落レシオ
日経平均 66
NYダウ 78
ナスダック ?
→問題なし

・信用評価損益率
ー25 %
→問題なし

■まとめ
コロナショックで本格的な景気後退期に入りそう。世界中の政府・中銀が景気を下支えしようとしているが、コロナショックで需要が消滅しているので厳しい展開になりそう。
*景気後退とはGDP成長率が2四半期連続でマイナス成長になること。

ーーーーー
1年以内に米国が景気後退に陥る確率:95%
コロナが収束しないかぎりは、景気後退入りは避けられそうにない。

1年以内に中国の債務バブルが破裂する確率:50%
中国ではすでにデフォルトモードに入っていたが(11/29日経)、コロナショックでそれが加速しそう。社債の償還がピークを迎える2021年,2022年頃(12/27日経)に中国共産主義は危機を迎えるのかもしれない。

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■景気後退について
今後はコロナショックで景気後退に陥りそう。新型コロナウイルスは終息するのに少なくとも1~2年はかかりそうなので(4/2日経)、しばらくは厳しい展開が続くかもしれない。ただこの期間に累積債務がある程度は整理されそうなので、コロナ後は健全な市場に戻り、また景気拡大期が始まりそう。

景気の落ち込みを和らげる要素もいくつかあるので、それらを一通り書いていく。
・イノベーションは経済成長の最も基本的な原動力になるが、今は世界中でイノベーション(デジタル革命)が起きている。
・バブルは借金をして資産を買いまくることにより生じるが、今回そのような現象はあまりみられない。
・社債市場は若干バブル気味だが、今のような低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では低金利が続きやすく、高債務の状態が維持されやすい。
・信用力の低い企業の債務が膨張しているが、全体でみると健全な企業の貯蓄に相殺されている。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、先進国では金融危機が起こりにくい。
・中国の不動産市場にはバブルの兆しがあるが、中国政府の需要抑制策により日本のバブル期ほどの過熱感はない。ただし、シャドーバンキング商品(銀行理財商品、委託融資、信託商品)への投資は過熱感が強く、2017年末の残高は1000兆円とGDP比8割の規模まで膨らんでいる。
・中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国有企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。
・中国政府には財政出動や金融緩和の余地がある。
・中国は独裁体制のため、不況に陥るとすべての批判が指導部にふりかかる構造になっている。そのため指導部はなんとしても不況を起こさないようにする。
・トランプ大統領の再選には株価の維持、もしくは上昇が不可欠なので、トランプ政権は株価の上がりやすい政策を採る。
・先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、現在のようなインフレが起こりにくい環境でインフレ2%を達成・維持するには株高のような資産価格の維持・上昇が不可欠になる。そのため中銀は株式市場に優しい政策をとらざるを得ない。
・中銀が量的緩和をして国債などの資産を大量に買っているので資産価格は下がりにくい(金利は上がりにくい)。中銀が資産売却を進めれば資産価格は下がるが、今のところそれを進める気配はない。足下ではコロナショックで大規模な資産購入を始めている。

コロナ以外の景気後退シナリオもいくつかるので、それらも一通り書いていく。
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景気後退シナリオ?:災害や紛争が起こる
日本ではいずれ必ず南海トラフ地震が起こるといわれており、中東では紛争などの地政学リスクが高まりつつある。また足下では新型肺炎が流行している。こうした問題が起こると景気には強い下押し圧力がかかり、過去のパターンでは株価が15~35%下落している(参照)。しかしこのような状況になると必ず政府や中銀が大規模な支援策を講じるので景気(株価)は反発しやすくなる。また”一過性”の問題が過ぎ去さると需要はV字回復することが多い。一般に、災害や紛争は押し目買いのチャンスになると言われている。
*ただし、今回のコロナのように問題が世界に及び、それが長引きそうな場合は、そのまま景気後退に陥ることもある。
*日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は景気後退を通り越して財政破綻するとも言われている(10/11日経)。もしそうなった場合は1000兆円超の損失が発生するようなので強烈な株安・円安が発生する可能性が高い。
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景気後退シナリオ1:石油価格戦争により景気後退
足下では原油安が進んでおり、米石油企業が破綻する可能性が出てきた。石油企業が破綻すると、信用リスクが高まり、デフォルトが連鎖しやすくなる。米企業債務は過去最高水準まで高まっているので、信用収縮によりそのまま景気後退に陥るリスクがある。ただ米政府は原油価格が下がりすぎないよう産油国と話し合いを始めているので、近々折り合いそう。
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景気後退シナリオ2:中国の債務バブル崩壊により景気後退
中国の企業債務は積み上がっているが、その7割以上は実物投資ではなく、リスクの高い金融資産(シャドーバンキング商品)への投資に回っている。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。そのようにして景気後退に陥ると独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性も出てくる。独裁体制は経済的に成熟した社会には適さないシステムとも言われているので、その意味でもこのタイミングで独裁体制が終わる可能性がある。これらの政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。

当初、中国政府には財政拡大・金融緩和の余地があるので危機は避けられると思っていたが、米中貿易戦争でデフォルトモードに入っていたところでコロナショックが起きたのでクラッシュする可能性が出てきた。中国の企業債務は巨額なので、政府がコントロールしきれない可能性がある。
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景気後退シナリオ3:マイナス金利により金融機関が破綻し景気後退
先進国の金利はマイナス圏に突入しているので、利ザヤの縮小から金融機関が破綻していく可能性がある。金融機関が破綻すると信用収縮が起こり(金回りが悪くなり)、景気後退を招きやすくなる。しかし現時点では中銀が民間金融機関に配慮しながら金融政策を行っているので、比較的穏やかな統廃合で済みそう。足下ではコロナショックが起きているが、大手金融機関の財務状態は良好なので、金融機関が破綻するとしても小規模なもので済みそう。
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景気後退シナリオ4:各国中銀のインフレ政策が限界に達し景気後退
先進国中銀はこれまで金融緩和で市場を支えてきたが、その金融緩和が限界に達しつつある。今後、市場は支えを失い、大崩れする可能性がある。ただ、中銀の通貨発行能力は健在なので、財政ファイナンスで市場を支えていけそう。
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景気後退シナリオ5:米長期金利が上昇し景気後退
米国は財政が著しく悪化しているので、長期金利が上昇する可能性が出てきた。長期金利が上昇すると株式や不動産が売られ、借り入れが減り、景気後退に陥りやすくなる。ただ、今はFRBが国債を買い取ってくれるので、長期金利は低水準で安定しそう。
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景気後退シナリオ6:インフレが過熱し景気後退
景気循環の従来のパターンは金融緩和→失業率低下・債務拡大→景気拡大・インフレ過熱→金融引き締め→債務圧縮→景気後退になる。しかし今回は失業率が低下してもインフレが過熱せず、足下ではFRBがインフレを起こそうと再び金融緩和を始めている。
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景気後退シナリオ7:サンダース氏が米大統領に選出され景気後退
サンダース氏は反大企業的・反富裕層的で、年300兆円の増税案を提唱しているので、サンダース氏が米大統領に選ばれた場合は景気後退に陥る可能性がある。ただ民主党の大統領候補にサンダース氏が選ばれる可能性は現時点でほぼない。
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景気後退シナリオ8:上記の景気後退シナリオ複数が同時に起こる
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■今後の計画
コロナショックと中国バブル崩壊で深刻な景気後退に陥る可能性が出てきたので、投資は控え目にしていく。

今後、円が90円くらいまで上昇、もしくは日経平均が13000円くらいまで下落したら、米欧通貨や外国株、日本株を買っていく。おそらく今回が最後の円高局面になると思うので、海外資産の比率を高めにしていく。

次の円高時に仕込みたい外国株
・UBS ETF スイス株 (MSCIスイス20/35) 。スイス株式で構成されたETF。”最強通貨”のスイスフラン建てなので円安・ドル安対策によさそう。組み込まれている銘柄はネスレやロシュなどの優良グローバル企業なので安定成長も期待できる。
・(米)アルファベット、アマゾン、マイクロソフト。規制リスクはあるが、グローバルITインフラ企業としての地位は揺るぎそうにない。投資が旺盛なのでまだまだ成長しそう。
・(米)VISAや(米)マスターカード。両社はフィンテック企業のボス的存在で、電子マネーは結局ここらへんが中核になりそう。
・(米)フェイスブック、ツイッター。SNSで盤石な地位を確立しており、年率10%超の成長が期待できる。
・(米)セールスフォース、ドキュサイン。日本企業を調べていて見つけた優良成長企業。社風が良さそうなのがいい。
・(米)P&Gはなし。優良企業なのは間違いないが、成長力に物足りなさを感じた。
・(米)ボーイングもなし。次期主力機の737MAXが失敗作のようだから。1/11のJIJI.COMに2017~2018年頃のボーイングの社内メールで737MAXについて「道化が設計」「家族は乗せない」とあり、2/26の日経3/11の日経には「(737MAXの)燃料タンクから布きれや金属片などの大量の異物が見つかり」「落雷によってエンジンが停止する恐れがある」とあったので、本当に「道化」が設計していたのかもしれない。またメールから企業風土に問題があることもわかった。この会社は一度破綻して企業風土を一新したところが買い場になるかもしれない。
・NASDAQ100ETF。第4次産業革命の中核ETF。国内市場で簡単に買えるのが利点。
・アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信(為替ヘッジなし)。腕利き米国人が運用する趣味の良さそうなファンド。
・米国株式長期厳選ファンド。奥野一成氏が運用するビジネスモデルが堅固な企業に投資する永久保有系ファンド。積み立てオンリーなのがやや難。
・インド株のETF。インドは2040年まで人口ボーナス期が続く。
・インドネシア株のETF。インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続く。
・銅。銅をたくさん使う電気自動車などにより銅の需要は長期的に右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などにより供給が追いつかなくなる可能性がある。現在の銅の採算ラインは1トン5500ドル程度。

■次の上げ相場について
次の景気拡大期は中銀に金融緩和をする力があまり残されてなさそうなので今回のような資産インフレ相場は期待できそうにない。今後の市場環境はゼロ成長、ゼロ金利が基本になりそうだが、そのような環境で投資収益を上げていくには企業の成長性に賭けていくしかないように思う。どのようなときでも時代の変化に合わせて成長していく会社はあるので、そういうところを見つけて投資していきたい。
*ゼロ金利が続くという前提では、企業の将来キャッシュフローを現在価値に割り引く際に割引率が低下し、また資本コストも低下するので、成長株(高ROIC株)に優位性が出やすくなる。12/4日経3/6日経
*今後はデジタル・ロボット革命により人の労働(賃金)が減り、資本側に富がより蓄積されていきそうなので、資本(株式など)の保有は不可欠になりそう。2/19日経

敏腕ファンドマネージャー7 北原淳平

1月16日の日経ヴェリタスに、「19年夏に日興アセットマネジメントに移った北原淳平氏が8月から担う日本株のアクティブ投信は、12月末までの同種のファンドのなかでトップの運用成績をあげた」とあった。北原氏について少し調べてみると2018年に国内投信で唯一のプラスリターンをあげた「オーナーズ株式オープン」の元ファンドマネージャーであることがわかった。興味が湧いたので調べてみた。

■運用成績
・東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープン。2013年4月の開設から2019年7月まで運用。プラスリターンは300%超。運用年度でのマイナスリターンは一度もなし。

・日興アセット・ミュータント。2019年8月から運用。運用成績は「同種のファンドのなかでトップ」。

■経歴など
元鉄鋼業界アナリスト。(コメント抜粋・編集)「アナリスト時代は目標株価をはじき出すために膨大な時間をかけて業績予想モデルを構築していたが、いくら業績を正しく予想しても株価の動きまでは読み切れなかった。マクロ経済モデルにまで手を広げてみても結果は同じだった。次第に数字の予想はいずれコンピューターのほうがうまくできるようになるだろうと考えるようになり、人にしかできない付加価値を追求するようになった。

経営者に話を聞いていくと、オーナー経営者は「会社が社会に必用とされているかどうか」をより深く考えており、強いリーダーシップによって業績が着実に伸びていることがわかった。所有と経営が分離しないオーナー企業の業績がよいとの論文は世界で多く見られており、オーナー企業で組成した仮ファンドのバックテストの結果も良好だったことから、「オーナーズ株式オープン」を開設した。」

■オーナー企業の強みと弱み
<強み>
・オーナー経営者は株主と利害関係が一致するので”最強”のガバナンス体制が構築されやすい。
・株主視点の経営をするので成長資金が集まりやすい。
・オーナー経営者は在任期間が長く、業績不振でもすぐにやめることができないので長期目線の経営をする。事業環境が厳しいときでも設備投資をあまり減らさない傾向があり、業績が一時的に落ち込んでもリカバリーする力が強い。
・意思決定が早い。サラリーマン経営者は自分の任期中に事業が失敗しても問題を先送りする傾向があるが、オーナー経営者は結局自らが責任をとらなければならないため先送りしない。オーナー経営者は肝いりで始めたことでも失敗したと思ったらすぐに手のひらを返すことができる。
・リスクをとってチャレンジする傾向が強く、新規事業にも積極的に取り組む。
・利益率の高いビジネスを手がける傾向がある。

<弱み>
・事業継承リスクがある。オーナー企業の強みはオーナーの経営力になるが、その経営者がなんらかの理由で会社を抜けた場合は会社が傾く恐れがある。
・ワンマン経営になることがある。経営者の独断に陥るとガバナンスが効かなくな恐れがある。
・刻々と思考が変化するオーナー経営者も多いが、そういう場合はスピード感を持って仕事をする優秀な社員ほどしっぺ返しを食らいやすい。このような状況になると社員が自ら事業を牽引する力が弱まり、指示待ち人間が増えやすくなる。
・親族間でトラブルが起こることがある。
・一族経営の場合、一族以外の人間は社長になれないため、優秀な人材が入ってきにくい。
・会社を私物化するオーナーもいる。

■運用手法:オーナー企業投資法
投資する企業はオーナー企業のみで、銘柄は次の3段階で絞り込んでいく。

まずは経営者の持ち株比率が5%以上の銘柄を抽出する。その基準に該当する銘柄は全上場企業約3700社のうち約1000社になる。次にこの中から極端に流動性の低い銘柄を除いた上で、オーナー経営者と面談して約100社まで絞り込む。最後に利益の見通しやフェアバリューとの乖離率などを踏まえて約30社まで絞り込む。投資する会社の規模や業種に制約はないが、結果的には創業年数の浅い内需小型株が投資対象になることが多い。

経営者と面談する際には「長期ビジョンは明確か」「社会の役に立とうと考えているか」「経営戦略について経営者自ら合理的に説明できるか」「事業戦略が独断になっていないか」といった点に注目する。その上で経営者の戦略が理解できるか、経営者を信じられるかを判断の最重要ポイントとする。原則として経営者と会えない企業には投資しない。投資をした後も3~6ヶ月に1回は経営者と面談する。

中長期的な企業の成長力に注目しているので銘柄の入れ替えは月に0~2件程度になる。短期的な相場動向を気にして銘柄を入れ換えることはない。

市場平均指数や貿易摩擦などのマクロ環境はあまり気にしない。外部環境の変化を当てるのはそもそも難しく、その変化に対応できる経営者を選別することに力を注いだほうがリターンが上がりやすい。素晴らしい経営者は逆風下でも増益を確保したり、たとえ業績が一時的に悪化しても素早い経営判断で立て直すことができる。
*「ミュータント」ファンドでは、ポートフォリオの約2割をマクロ要因銘柄で構成している。

ポートフォリオの変動率を下げるためウェイト調整は適宜行う。株価が上昇して割高感が出た銘柄は売却し、割安感のある銘柄に入れ換えるなどして、毎年プラスを出すことを重視する。中小型株への投資比率が高いファンドでは、割高な銘柄を購入し、その後相場が下落してパフォーマンスが悪化し、それを受けてファンドの解約注文が増えるという悪循環に陥りやすい。

経営者との面談で経営者の発言がブレたり、経営ビジョンがズレ始めたと感じた場合も売却する。

「短期的に大きなリターンをあげることより、長期にわたって安定したリターンを出す」「オーナー企業こそがリスクをとって新たな事業を進めることができる。リスクをとって成長するオーナー企業を長期にわたって応援する」というのが基本的な運用方針になる。

参考:(グーグル検索と日経検索で「北原淳平」でヒットした記事)

テスラ再考

テスラの時価総額が一時17兆円を突破した(自動車メーカーでは2位)。以前ブログに「テスラの破綻型ビジネスモデル」と書いたが、全く破綻しそうにない(笑)。どこに間違いがあったのかを考えていく。

以前ブログに書いた内容を簡単にまとめると、「参入障壁の低い電気自動車業界ではテスラは差異化を図れない」になる。しかし現時点では、テスラは差異化を図れているように見える。

テスラが差異化を図れた一番大きなところはおそらくCASEに対応していたことになる。CASEとは、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared (シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった造語で、今後自動車業界はこのCASEというキーワードを軸に転換していくとされる。テスラはこの中のElectric(電動化)だけでなく、他の要素すべてにも対応していた。テスラ車は常にネットに接続されており、高速道路では自動運転を利用でき、シェアリング構想(車に乗っていない時に自動運転タクシーなどで利用)もあった。

加えて、テスラは車を「モノ」というよりも「利用」の方に重点を置いて開発していたところも差異化を図れていると思った。テスラは「車の利用をいかに快適にするか」という視点で事業を構想しており、例えば電気自動車は充電に時間がかかるが、テスラはスーパーなどの立地の良い場所に専用駐車場を設けて、買い物をしている間に充電できるようにしている。充電する際にも充電ケーブルをつなぐだけで、テスラのアカウントに登録されているクレジットカードに接続され、そこから電気料金が引き落とされる仕組みになっている。

テスラ創業者のイーロン・マスク氏が住むロサンゼルスにおいては渋滞を解消するためにトンネル(ハイパーループ)まで掘り始めている。また電気自動車に給電する電力が化石燃料由来では意味がないということで、太陽光発電や蓄電池を製造する会社を買収して発電事業を始めている。(発電領域でも「革命」を起こしつつあり、いずれは電力会社から電気を買うよりも安い価格で自家発電できるようになりそう。2/18日経

こうした構想力に加えて、中国のEV製造工場を着工からわずか10ヶ月で稼働させるなど実行力にも長けている。テスラは一時、研究開発投資が停滞していたが、こうした構想力や実行力、「環境技術で地球を救う」といった大義などに感銘を受けた優秀な若手が続々と入社し、研究開発投資は再び盛り返しつつある。

今回株価が上昇したのは、黒字転換やESG投資の流れ、金融バブルなども影響しているとは思うが、上記にあげた面も評価されたのではないかと思う。

ただ株価の上昇がこのまま続くのかと考えると、それは難しいようにも感じる。まず前回のブログで触れた参入障壁の低さの問題は依然として残されている。テスラのビジネスモデルは真似しようと思えばできるもので、すでに中国のバイトンなどはテスラと同じくらい高性能でかつ低価格な電気自動車を発売し始めている。またトヨタやフォルクスワーゲンは年1兆円超の研究開発投資をして追い上げてきている。テスラの自動車製造台数は現在、トヨタやフォルクスワーゲンの4%以下にすぎないが、このような状況で両社の販売台数に簡単に追いつけるとも思えない。

電力供給の問題もある。電気自動車2万台を1度に給電するには原発1基分の発電設備が必用ともいわれるが(2017/9/19日経)、もしこの電力を再生エネルギーで賄おうとすれば現在の発電能力の増加ペースでは間に合いそうにない。この電力不足が電気自動車普及の足かせになりそうでもある。

ソフトウェアの問題もある。今後自動車の付加価値は車体からソフトウェアに移っていくとされるが、ソフトウェア(自動運転ソフトやOS)では最終的にはグーグル系のウェイモ、もしくは中国の百度(バイドゥ)あたりが覇権をとりそうな雰囲気がある。もしそうなった場合はテスラ車の価値は激減する。

このように考えていくと、今のテスラの株価は少し過大に評価されているようにもみえる。さすがに今後すぐに破綻するとは思わないが、株価はしばらく上値が重い展開が続くのではないかと思う。

■今はSF的な発想が必用?
テスラ社を創業したマスク氏はテスラの他にスペースX(ロケット開発)、ボーリング社(ハイテク・トンネル開発)、ニューラリンク(脳とコンピューターを直接つなぐ仕組みを開発)などを創業している。また火星移住計画やAI脅威論なども唱えているが、これらはすべてSF小説にもあるアイデアになる。

マスク氏がかつて所属していたペイパルはSFマニア集団だったといわれているが、他のメンバーもペイパル売却後に様々な会社を興している。ティール氏はビッグデータ分析のパランティア、ハーリー氏はYouTube、ホフマン氏はリンクトインを創業している。これらの会社立ち上げにもSF的な発想(素養)が影響していたのではないかと思う。

イノベーションには「新結合」という訳語があるが、ネット時代は情報が集まりやすく、人が繋がりやすいので、この「新結合」が起こりやすい。今は「新結合」が起こる速度が加速しているので、SFのような一見非現実的なアイデアも具現化しやすいのではないかと思う。となると、今は少し突飛と思えるくらいのSF的な発想(ビジョン)があるくらいがちょうどよいのかもしれない。

*このブログを書いていても、情報が以前よりも格段に集めやすくなっているのではないかと感じる。会社を調査する際にも、「ネット以前」ならおそらく1ヶ月かけても集められないような情報を、今なら1日で集めることができる。