2017年2月24日金曜日

個人投資家の優位な点2

『勝つ投資 負けない投資』(片山晃、小松原周)を読んでいたら、個人投資家の優位な点が新たに見つかったので追記しておく。

■前回書いた個人投資家の優位な点は
1,身軽。資金が少ないので流動性の低い小型株でも売買できる。
2,長期投資ができる。目先の成績を気にしなくてもよいので長期目線で保有できる。
3,集中投資できる。思い切ったリスクを取ることができる。
4,説明責任がない。試行錯誤して好きなように投資(投機)できる。失敗しても文句を言われることはない。

今回新たに加わるのは2つ。
5,下げ相場で完全撤退できる。
投資信託にはフルインベストメントというルールがあり、運用資産のうち現金で持っておけるのは数%までという決まりがある。
*このような理由から投資信託には市場平均に買った、負けたというような比較が生まれるという。
6,未来を見通す力は機関投資家と互角であり、AIよりも優位
業績分析やテクニカル分析ではAIや機関投資家にはかなわない。しかし投資の最大の付加価値は未来のストーリーを読むことにあり、個人投資家はこの点において機関投資家と互角もしくは優位であり、AIよりも優れている。

機関投資家の優位な点も新たに1点追加
■前回書いた機関投資家の優位な点は
1,仕事として毎日同じようなことをしているので経験が豊富になっていく。
2,経験豊富な同僚や専門家と相談できる。ブルームバーグのような高価な情報端末も利用できる。
3,企業価値を計る物さしを持っており、基本的な勝ちパターンを知っている。
4,会社訪問をして社長や役員と面会できる。
5,投資する上で様々な制約があるので、その枠の中だけで考えれば良い。

今回新たに加わるのは
6,様々なプロセスを経て徹底的に調べているので大きく外すリスクは少ない。

■個人投資家の優位な点を最大限活かすにはどうな投資法がベストか
→将来性のある小型成長株に集中投資して、それを長期保有し、相場が天井を打ったときに完全撤退する。
→敏腕ファンドマネージャーが買っている中小型株の中から銘柄を選んでリスクを減らしていく。

中小型株の優位な点

『勝つ投資 負けない投資』(片山晃、小松原周)に中小型株の優位な点も書かれていたのでそれもまとめていく。

■中小型株の優位な点
1,価値のギャップがある。
時価総額の小さな小型株はアナリストもついてないし、業績の一挙一動を見ている投資家の数も少ないので、価値を分析しきれずに割安に放置されていることが多い。まだ織り込まれていない材料が豊富で、そこから得られる価値のギャップはたくさん残されている。こういった企業はサプライズが起こることが多くなり、投資の機会も多くなる。

一方、大企業になると情報開示の透明性は高く、ニュースやアナリストも多い。このようなガラス張りの状況ではサプライズは起こりにくい。たとえサプライズが起こったように見えても大抵は”織り込み済み”となっていることが多いため投資妙味は少ない。

投資家として最も注力すべき部分はこの情報が非効率的となっている市場や銘柄に投資することになる。

投資のタイミングは情報が非効率な時、つまり人気がないときに行うのがベストになる。その銘柄に多くの投資家が注目するようになったときが売却のタイミングとなる。

2,業績変化率が高い
大企業では業績がいきなり2倍になることはないが、小さい会社なら業績が数年で2倍になることは起こりうる。

3,外部要因の影響を受けにくい
大企業はマクロデータのような外部要因の影響を受け、景気との連動が高くなる。一方、中小型株では景気のような外部要因の影響は受けるが、ビジネスに勢いがある会社は景気の波を押し切って成長を続けるようなケースが数多くある。

4,分析が容易
中小型株は事業構造がシンプルなため業績や業務内容を理解しやすい。

5,中小企業の信頼性や競争力は大企業と差はない
中小企業は会社の信頼性が低いとか、競争力が低いなどといわれることもあるが、実際そんなことはない。

■備考 小型成長株のタイプは優等生型と劣等生サプライズ型がある
きれいな右肩上がりのチャートを描く優等生型は、ビジネスモデルがしっかりしていて、その優位性が脅かされない限り業績は順調に拡大していくタイプ。
問題点はサプライズが少ないので急騰が起こりにくいことと、期待値が高いため業績が期待外れだと株価が急落してしまうこと。

誰からも期待されてない劣等生型は、チャートの横ばいが続くが、思いのほか良い数字を出すと株価は過激な反応を示す。一気に注目が集まるので株価は行き過ぎることが多く、短期間で大きなリターンを得ることができる。

『マーケットの魔術師』たちのその後3 マーティン・シュワルツ

書籍『マーケットの魔術師』に登場した人物で、印象に残った人たちのその後を追ってみた。3回目は短期トレードで驚異的なパフォーマンスを上げたマーティン・シュワルツ。
*『マーケットの魔術師』は当時著しいパフォーマンスを上げていた16人のトレーダーたちのインタビュー集。1989年に出版。

■本に載っていた実績
・全米トレード選手権(投資期間4ヶ月)に10回出場して9回優勝。平均リターンは210%。
・全米トレード選手権(投資期間1年)に1回だけ出場して781%のリターンで優勝。

・アナリスト時代の10年間は負け続ける
・独立した1978年からの2年間で5000ドルを14万ドルまで増やす
・1980年は60万ドルの利益
・1981年から1988年までは毎年100万ドル以上の利益
・先物取引では4万ドルを2000万ドルに増やす。
・独立してからは資産の3%以上の損を出した月は一度もない。

■投資手法
・アナリスト時代はファンダメンタル専門。
・独立してからはテクニカル専門。
・様々な手法を取り入れ、独自のアプローチを組み立てる。
・確率を重視した数多くの指標を開発し、ローリスクで相場に入るポイントを見つける。
・いろいろな比率やオシレーターを計算させて独自のチャートを導き出す。

・投資先は株式、オプション、先物

■経歴
・アムハースト大学
・コロンビアビジネススクール
・海兵隊の予備役に入り士官に。極限状態の訓練で心身を鍛える。
・除隊してコロンビアビジネススクールに戻りMBAを取得。
・証券アナリストになり証券会社業界で転職を繰り返す。
・独立しトレードをはじめる。
・1985年から小さいファンドを運用し始める。

■人物、哲学
・一日12時間は働く。仕事をしないと不安になって仕方がないという。
・研究熱心。教育が成功するカギだという。
・利益をいかに伸ばしていくかについて常に改善に努める。この作業を「おそらく死ぬまで続けるだろう」と語っている。
・エゴと金儲けの違いがわかってから間違いを受け入れられるようになった、とも。

■<予想> 現在のマーティン・シュワルツはどうなっているのか
・研究熱心でトレードセンスも抜群なので今頃は名だたる億万長者
・金がたまり、投資に飽きて、何か全く別のことをしている
・コンピュータートレードが参入してきて利幅が減り撤退

■その後
・投資中毒になり健康を害し投資からは半ば引退。今トレードはごく限られた範囲でしかやっていないという。
・1999年に自伝「Pit Bull」を出版。
・1998年の引退後は馬主になり、様々なレースで勝ち星を挙げている。
参考:wikipedia , forextraders

2017年2月17日金曜日

『マーケットの魔術師』たちのその後2 ウイリアム・オニール

書籍『マーケットの魔術師』に登場した人物で、印象に残った人たちのその後を追ってみた。2回目は1回目で調べたデビッド・ライアンの師匠ウイリアム・オニール。
*『マーケットの魔術師』は当時著しいパフォーマンスを上げていた16人のトレーダーたちのインタビュー集。1989年に出版。

■本に載っていた経歴
1958年、証券会社に就職。リサーチを担当。
1964年、ウィリアム・オニール社を設立。コンピューターによる株式市場の総合的な情報提供ではリーダー的存在に。
1983年にインベスターズ・デイリーを発刊。統計情報、EPSランク、チャート情報などを掲載。
1988年に「オニールの成長株発掘法」を出版。

■本に載っていた実績
1962年から63年のトレードで5000ドルを20万ドルに増やす。
1978年から1988年までのパフォーマンスは年率40%以上。

■投資手法
・新高値を突破した成長株を買う手法
・銘柄選別基準であるCANSLIMにより銘柄を発掘。
・-7%損切りなどでリスク管理を徹底。

■その他の印象に残った箇所 
「投資信託への投資は素晴らしいと思っているが、問題はほとんどの人がそれをどう扱ったらよいのか知らないこと。投資信託で成功するカギは買ったらあとはただじっと座っていること。成長株に分散投資したファンドは上げ相場では75~100%上昇し、下げ相場では20~30%しか下がらない。急落した時には買い増したほうがいい」。

■その後
1997年、投資信託事業を売却。*この時期のパフォーマンスは不明。
1998年、ネットでデイリーグラフオンラインという株式検索システム事業を始める。2010年には次世代検索システム「マーケットスミス」が始動。
2009年、「オニールの成長株発掘法 第4版」を出版。
2015年のインベスターズ・ビジネス・デイリーのサイトの月間訪問者数は400万人。
2016年にインベスターズ・ビジネス・デイリーは日刊から週刊になる。ウェブサイトでは毎日更新。
2016年のアメリカ大統領選では、サイトでトランプ氏リードを一貫して示す。
オニール氏は今も健在で、アメリカ各地で投資セミナーをしている。
ウィキペディア

スクリーニング法 CAN SLIM

■CAN SLIMとは
ウィリアム・オニールが開発した暴騰銘柄発掘のためのスクリーニング法。
CANSLIMのそれぞれの文字は暴騰する株の初期段階の特徴7つの頭文字をとったもの。

Cは四半期のEPSのことで、前年同期比20~50%以上の伸びが必要。
Aは通期のEPSのことで、過去5年間の伸び率は年率20%以上必要。
Nは何か新しいもののことで、新製品や新サービス、業界の変化、新高値、新しい経営者などを指す。
Sは発行株式数のことで、株式数の少ない株、中小型株がいい。
Lは先導株のこと。出遅れ株は伸びない。
Iは機関投資家の持ち株比率のことで5~20%がよい。機関投資家が株価上昇の牽引力になる。ただし極端に高いのはよくない。相場が悪くなった時に売り手に回られてしまうから。
Mは市場のこと。弱気相場では先導株が真っ先に落ちていくから買わない方がいい。

この投資法の根底には「動かない株は持っていても意味がない」という哲学がある。

投資するタイミングは底値固めから出来高をともなって上放れ始めたところがベスト。新高値を突破したらなお良い。

CANSLIMで抽出できる銘柄は市場全体の2%以下。CANSLIM銘柄の投資成功率は60%程度。その中で傑出した銘柄は10のうち1つか2つ。

このやり方で負けが続いたら市場全体が悪くなるかもしれないというサインと捉える。

参考「マーケットの魔術師」

天井シグナル2 ディストリビューション日

相場の天井シグナルには高ボラティリティや騰落レシオがあることがわかったが、さらにもう一つディストリビューション(売り抜け)日というのがあることもわかった。

ディストリビューション日とは、日経平均などの主要株価指標で当日の終値が前日の終値よりも安くなるとともに出来高が前日よりも増える日のことで、この日が過去1ヶ月の間に5回以上あると、その1,2ヶ月後に大幅下落する可能性が高くなるというもの。ディストリビューション日とは別の言い方をすれば機関投資家の売り抜け日のようなもの。

過去の急落を振り返ってみると
2016年2月の急落では、その2ヶ月前の12月にディストリビューション日が6回発生。
2015年8月のチャイナショックの急落では、6月に9回発生。
2008年10月のリーマンショックの暴落では、8月に7回、9月に9回発生。
2007年8月の急落では、7月に9回発生。

ディストリビューション日の法則はウィリアム・オニールが過去50年におけるすべての天井を研究した成果から導き出されている。

過去1ヶ月の日経平均チャートを見ると意外にもディストリビューション日が6回も発生している。ということは、あと1,2ヶ月したら暴落するのだろうか。ただ出来高の変化は乏しく微妙な感じではある。ちなみにNYダウでの発生は1回だけ。

参考「新高値ブレイク投資術」


追記2017/03/03 1月と2月のディストリビューション日数
1月 5日
2月 3日

追記2017/04/07
3月 6日
NYダウ 3月 5日

追記2017/05/12
4月 4日
NYダウ (ほぼ横ばいなのでカウントせず)
ナスダックは安定感ある上昇トレンドなのでカウントせず

2017年2月10日金曜日

『マーケットの魔術師』たちのその後 デビッド・ライアン

『マーケットの魔術師』に登場した人物で、印象に残った人たちのその後を追ってみた。まず1人目はデビッド・ライアン。
*『マーケットの魔術師』は1989年当時著しいパフォーマンスを上げていた16人のトレーダーたちのインタビュー集。

■どんな人物か
中学から投資を始め、年齢とともに投資に対する興味は増していく。大学卒業後の1982年に尊敬する投資家・ウイリアム・オニールの会社に就職。入社4年でバイスプレジデントとなりオニールの片腕になる。

■本に載っていた実績
・1985年に全米投資選手権株式部門で優勝。年間161%のリターン。
・1986年は160%のリターンで2位。
・1987年も100%超のリターンで優勝。

■投資手法
・成長株が新高値を突破してから買う手法。
・オニールの投資手法CANSLIMを独自に改良して銘柄を発掘。
・損切りなどのリスク管理を徹底する。

■投資に対する考え
・銘柄選択の過程のすべてが素晴らしいゲームであり宝探し。
・勉強して、1つ1つのトレードから学ぼうとする人間は時間とともに進歩していく。
・普通の投資家よりも成功したのは、自分のやりたいことをやり続け、興味がつきなかったため。
・今後も毎年トレードで成功していく自信あり。

■その後
1992年にオニールの会社のファンドマネージャーに
1997年にオニールの会社の投資信託事業は他社に売却され退職
*この期間の投資パフォーマンスは不明。
1998年にライアンキャピタルマネジメントを設立。友人や家族など70人から資金を集めて小さなファンドを運営する。
全米最大のホームレスシェルターを運営する非営利団体ユニオンレスキューミッションの役員になる。
(参照:ウィキペディア

■2011年に行われたインタビュー(一部抜粋)
Q.ライアンキャピタルのパフォーマンスはどうか?
現在までに300%上昇している。

Q.30年マーケットで生き残っているが、長寿の秘訣は何か?
リスクコントロールだ。市場が下がり始めたら素早く売ることが大事。収拾がつかなくなるくらいの損失を出してはいけない。

Q.相場環境は変わったか?
4,5年前から劇的に変わった。高頻度取引などのコンピューターによるトレードで大量のノイズが生まれ、ボラティリティも非常に高くなった。取引は非常に難しくなった。
また先進国の多大な債務や低成長経済では、上げ相場にはなりにくく、過去に起こったようなブレークアウトは起こりにくくなった。

Q.CANSLIMは今でも通用するか?
コンピュータのスクリーニングでCANSLIM銘柄を探し出すことが簡単にできるようになり、過去のようには機能しなくなってきた。ただ上げ相場のときには今でも通用するし、それが市場でお金をつくる最も早い方法であることは変わりない。

Q.どんな株に投資をしているのか?
今でも成長株投資をしている。

Q.同じ手法で投資をしているのか?
やり方は少し変えたが、それらの方法は教えたくない。皆が同じようにするとうまみが消えてしまうから。
(参照:http://www.newtraderu.com/2013/04/27/3409/

天井シグナル 騰落レシオ

書籍『マーケットの魔術師』に「騰落レシオは株価が高値をつける2-3ヶ月前に天井を付ける傾向がある」とあった。

日経平均は2016年12月15日に騰落レシオ165という大天井を付けている。上記の法則でいくとそろそろ調整が入るころかもしれない。

だがしかし今回のトランプバブルの暴騰パターンはアベノミクス初動時のパターンと酷似してもいる。アベノミクスが始動した1ヶ月後の2012年12月19日に騰落レシオは164を付けており、その後3月まで株価は上がり続けている。3月の終わりに一旦調整に入りそうになったが4月の始めに黒田バズーカが発射されて、そこからさらに上昇し5月の終わり頃まで上がり続けている。そして5月23日にピークを付けた後は一気に1月頃の水準まで急落している。

上記を総合すると、トランプバブルは4月ごろに調整に入るのかなと思う。

2017年2月3日金曜日

日経平均4万へ 3つの仮説

■武者リサーチ代表の新大陸発見説
「歴史を振り返ると新大陸発見が成長を加速させてきた。今、全く新しい大陸であるサイバー大陸が発見された。非常に大きな経済資源が発見され、それがものすごい勢いで有効活用され始めている。

サイバー大陸は米国によって発見され、米企業が支配している大陸である。これからあらゆる生活やビジネスがサイバー大陸に移行し最も重要な大陸となっていく。世界中の国々は米国のプラットフォーム企業にテラ銭を払っていくので、その結果ドル高が起こる。

日本は円安になり、また日本は貯蓄余剰をもつため日銀は長期金利ゼロ政策を続けなければならない。バリュエーションから見れば日経平均は4万円でも割高ではない。米国株も上昇するが、日本株のパフォーマンスが最もよくなる。市場が調整することはあっても長期的なこのシナリオは不変」。
参考:日経マネー3月号

→しかしテクノロジーの進化によって衰退する産業もでてくる。そららを踏まえるとそれほど株価全体が押し上げられるのか疑問。

■キッチンカブー代表の株高国策説
「アベノミクスでは株高=国策といっていいほど株高狙いの政策をしている。東京オリンピックの開催が決定して、外国人旅行者を呼び込もうという状況で、日本が円高政策と採ることはありえない。少なくともオリンピックまでは円安が容認される。

米国経済の復活による米国株高や、米国の金融緩和の縮小による円安も日本の株高を後押しする。

日本の財政問題やアベノミクスの失速懸念、米国経済の破綻などによって世界恐慌が起こるといった話も出てきてはいるが、波乱はあっても1929年のような世界恐慌が起こることはない。当時と今ではマーケットの規模が全く違い、今は投資マネーの半分以上が信用取引や先物などのヘッジ取引による現物以外の資金で構成されているので、昔の経済理論で今の市場について語ることはできない。大きな流れで見れば相場全体は確実に浮上していく。

2020年に日経平均は35000円、ドル円の為替レートは140-150円になると予想」。
参考:「億万長者になれる株入門」

■ブログ管理人の貨幣価値下落説
低成長経済かつ高齢化社会の日本では歳入を増やしたり、歳出を減らしたりしていくことは事実上不可能なため、日本が抱える莫大な借金を返済する唯一の方法はインフレになる。

インフレを起こすために政府や日銀は消費税増税凍結や金融緩和などのインフレ政策をしていくことになる。そういった政策をすると貨幣価値は下落していき、それと連動して、貨幣で企業価値を評価する株式市場は底上げされていく。

政府や日銀は、江戸時代末期や第二次世界大戦後に巨額の債務を返済するために起こったハイパーインフレを避けるために、今後も穏やかなインフレ策をとっていくのはほぼ間違いない。

2%のインフレで日経平均を500円、5円の円安で500円、日銀のETF購入で1500円程度市場平均を上昇させていくと見積もると、毎年だいたい2500円程度日経平均は底上げされていくのではないかと考えている。

テクノロジーの進化と衰退する産業

テクノロジーが進化すると人がする仕事は減っていく。写真プリント1つとっても、今では現像する人がいらなくなり、フィルムもいらなくなって、お金をかけずにプリントするとができる。

スマホを例にとっても、カメラ、時計、音楽プレイヤー、テレビ、書籍、メモ帳、各種センサーなどがすべてスマホに入っているため、これらの産業は衰退していっている。

今後、自動運転車が実用化されればドライバーは失業し、人工知能が進化すれば事務職や会計士もいらなくなる。

3Dプリンターの発達で歯科技工士の仕事もなくなりつつある。

テクノロジーの進化によって消えていく仕事をあげればキリがない。その進化によって新たな職種が多く生み出されているわけでもない。新たな職種といえばせいぜいデジタル技術をさらに進化させるエンジニアやアナリストくらいだろうか。

アメリカでは失業率が改善しても賃金が上がらないといっているが、上記であげたような高賃金の職種がどんどん失われているので、そうなるのは当然のように思う。

経済学者のフラーは1970年代に「「生計を立てる」という考えが時代遅れとなり、生活費を稼がなければならないという考えも時代遅れとなる。毎日車やバスで数百億円分のエネルギーを使い、富を生み出してはくれない時代遅れの仕事に行くのはバカげている。彼らに金を払って家にいてもらえば全世界は一日一兆円を節約できる。人々に家にいてもらうために金を払うのが理にかなうようになる」と言っているが、この予言は当たりそうだ。ヘリコプターマネーは近い将来、現実のものとなるかもしれない。

追記2017/02/27
インド準備銀行の総裁だったラジャンさんは、失業した中年白人の怒りは移民に向かっているが、それは間違いで、真の原因は新テクノロジーだと言っている。また1930年頃の世界大恐慌の原因は大量生産方式の確立という新テクノロジーによるもの、とも言っていた。
参考:日経2017/2/26

追記2017/04/07
「米ボールステイト大学が15年に行った調査によると、製造業で失われた雇用の88%は自動化とその関連要因によるもので、貿易によるものではないという。(中略)コンピューターの音声認識能力が人間並みになれば、小売り業の雇用は半分以上、金融・保険業では3分の2がなくなりかねないという」
参考:日経2017/3/10