2017年12月8日金曜日

デフレ脱却時は不動産株?

日本のデフレ脱却が現実味を帯びてきた。日本のインフレ率はまだ0%台だが、完全雇用の状態で、需給ギャップや企業物価指数、最終材価格はすでに上昇に転じている。一般に、企業物価指数や最終材価格が上昇すると半年後に消費者物価も上昇するといわれているのでデフレ脱却は時間の問題のように思われる。それに加えて世界同時成長により世界中の物価も上がりはじめている。今年8月には主要50カ国の消費者物価はすべてプラスに転じたという。国際商品価格や原油価格も上昇基調にあり、このような外部環境も日本のデフレ脱却の追い風になる。

では今後デフレ脱却した時に恩恵を受けるのはどのセクターになるのか。その1つは不動産セクターになるように思う。なぜなら実物資産である不動産はインフレに強いから。実際、アベノミクス初動時にはインフレ期待で不動産セクターは暴騰している。今回はそこまでいかないとしても、ある程度の水準訂正は起こるのではないかと思う。

参考:「上昇に転じた世界物価」2017/11/15日経

月1の売買チェック

■買い
・和田興産 (買い増し)
買った理由:前項でインフレ時には不動産株に投資妙味があるようなことを書いたが、インフレに頼らずとも不動産企業は業績好調なため株価は上昇していきそうな雰囲気がある。それに加えて不動産株は割安に放置されており高配当なため下値不安は小さい。

不動産株が割安に放置されている主な要因は建築費の上昇になるが、西日本においては東京五輪や東日本大震災復興の影響が小さいため建築費の上昇は小幅に抑えられている。マンション価格は東京ほど高騰しておらずサラリーマンでも手が届く範囲のため販売は好調に推移しているという。

神戸を拠点とする和田興産は仕入れ面に強みあり、神戸市内での供給棟数は19年連続首位だという。苦瓜ファンドマネージャーによると、少なくとも今後2年は高水準の業績が続く見込みだという。

・東武住販 (買い増し)
買った理由:ここは主に中古住宅を再生販売している会社なので建築費上昇の影響をそれほど受けない。九州や中部地方の住戸販売は好調なため業績の上振れが期待できる。

■売り
・鈴茂器工 10月に買い増した分のみ売却 損益-4%
売った理由:決算が予想外の下振れをして通期業績に不透明感がでてしまったため。ただ長期的な見通しに変化はないので、かねてからの持ち株は当面保有。
成功したところ:売買のタイミング。
失敗したところ:過去1年の決算が増収増益基調だったので、今回も増収増益だろうと楽観しすぎていたこと。フロー型ビジネスはこのように決算がブレやすいので気をつけたい。

・相模ゴム 全株売却 損益+78%
売った理由:この会社の製品に価格相応の価値があるとはどうしても思えず、amazonの販売ランキングやレビューを絶えず気にしてしまったから。それと来期からは増産体制が整うようだが、競合企業のオカモトを見ても海外販売がそれほど伸びているようには見えなかったから。
成功したところ:売買のタイミング。
失敗したところ:たとえまわりの評価(売上)がよくても、自分の評価がいまいちな場合は、持っていて疲れた。

月1の持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律関連のことなら弁護士ドットコム
シナリオに変化なし。チャートは長期では上昇トレンドだが短期では上値が重い。売上高成長率は35%程度。適正株価。

■技研製作所
基本シナリオ:圧入工法を世界に普及させる
シナリオに変化なし。チャートは上昇トレンド。売上高成長率は15%程度。適正株価。

■ペプチドリーム
基本シナリオ:ペプチド創薬で新領域を開拓
シナリオに変化なし。チャートは長期では上昇トレンドだが現在は保ち合い。売上高成長率は35%程度。適正株価。

■東武住販
基本シナリオ:景気回復で中古再生住宅の販売が好調に。支店を増やして売上拡大。
シナリオに変化なし。チャートは上昇トレンド。売上高成長率は15%程度。割安。

■和田興産
基本シナリオ:景気回復でマンション販売が好調に
シナリオに変化なし。チャートは上昇トレンド。売上高成長率は8%程度。割安。

■鈴茂器工
基本シナリオ:飯ロボを世界に普及させる
シナリオに変化なし。チャートは200日線を割り始めたため保ち合いに移行した感じ。売上高成長率は13%程度。適正株価。

■スパークス
基本シナリオ:株式市場が盛り上がり、投信を手がけるスパークスの株価は上昇
シナリオに変化なし。チャートは上昇トレンド。売上高成長率は5%程度だが利益成長率は20%程度。適正株価。

■今後の戦略
ペプチドリームが3000円以下、弁護士ドットコムが1250あたり、東武住販が1300以下、和田興産が900以下、スパークスが315くらいで落ち着いたら買い増していく。

月1の市場環境チェック

株式市場への影響が大きい金利、金融政策、企業業績を重点的にチェックしていく。

■ファンダメンタル
<金利>
・米国の短期金利は1.25%、長期金利は2.37%。短期金利が長期金利を上回ると債務圧縮局面に入りバブルが崩壊すると言われているが、それはもう少し先になりそう。
・日本の長短金利は0%。
・中国の短期金利は3.7%、長期金利は3.9%。

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%。リーマンショック時のピークである160%から減少し、足下では横ばい傾向。ただし個人債務残高に限ればリーマン時を超えている。
・日本の民間債務残高はGDP比150%。1990年頃のピーク220%から減少し、足下では横ばい傾向。
・中国の民間債務残高はGDP比200%で現在も上昇中。日本のバブル期のピーク220%に近づきつつある。

<金融政策>
・日本は金融緩和を継続。年間6兆円の株式購入政策も継続。
・欧州は金融緩和を縮小&延長。利上げは早くても18年9月以降。
・米国はすでに引き締めに転じているが速度は穏やか。
・中国は金利を徐々に引き上げている。

<経済成長率>
・世界の2017年のGDP成長率は3.6%で2018年は3.7%と良好。
・日本の2017年のGDP成長率は1.5%で2018年は0.7%とまずまず。

<EPS成長率>
現在、世界同時成長が起きており、このような状態は通常2,3年続くらしい。ただしこのような世界同時成長は景気サイクルの終盤に見られる現象とも言われている。
世界同時成長は海外で6割を稼ぐ日本企業には追い風になる。
・世界株式の2017年の予想EPS上昇率は26%、2018年は11%、2019年も11%と良好。
・日本株式の2017年の予想EPS上昇率は15%超で、来年以降も10%程度が続きそう。
・アメリカは今期も来期も10%超上昇。

27年間ファンドマネージャーを務めているレオスキャピタルの藤野英人氏は「この27年間、日本は抜けることのないトンネルの中にいるような感じだったが、そこからいよいよ抜けるのではないかというくらい、日本企業の明るい兆しが見えてきている。この30年間は、日経平均は2万円を上値に横ばい、それにインフレも起きないフラットな時代だった。しかし大きな変化が起きそうな気がする」とコメントしているので、今後の見通しは良さそう。

<政治>
・日本の政治は安定。ただペジーコンピューティングの詐欺事件で安倍政権が絡んでいる疑いがでてきたので、また内閣支持率が下がりそう。
・海外の政治は不安定。
・北朝鮮がややリスク。

■テクニカル
・チャート
世界中の株式市場が上昇トレンド

・ディストリビューションデー
ダウ 2日
ナスダック 3日
日経平均 5日

・ヒンデンブルグオーメン
無点灯

・トレードインディケーター
先月:危険度43% → 今月:62%
参考:eワラントのトレードインディケーター

・騰落レシオ
日経平均 100
ダウ 107
ナスダック ?

・信用評価損益率
先月-8% →今月-7.7%

■結論
米国株は割高感がでてきており、中国は過剰債務がややリスク。
しかしながら世界経済は総じて順調で、金余りも続いているので、中期的な市場環境は比較的良好。

世界の運用資産は急増

世界の資産運用残高は2007年の5300兆円から2016年には7900兆円に増加しているという。そしてこれが2025年には1京6000兆円まで増えるという。

運用資産残高が増加している主な要因は金融緩和による金余り、先進国の高齢化、新興国の台頭によるものだという。なかでも新興国の台頭によるところが大きく、世界の中間層は今後10年で1.5倍の43億人まで膨らむという。

現在の資産運用残高7900兆円は世界のGDPとほぼ同額になり、2025年の1京6000兆円にいたってはその時点のGDPを超過している可能性が高い。

金余りは相場は当面続きそうである。

参考:将来不安「過剰貯蓄」走らす 2017/11/16日経

中銀はなぜインフレにこだわるのか

日銀やFRBなどの中央銀行はインフレ率2%に異常にこだわっているように見える。FRB理事長のイエレンさんは「低インフレの放置は極めて危険だ」と常々言っており、つい先日にはFRBで政策見直し論が浮上したという。その見直し論とは年2%の物価上昇を目指す方針は変わらないものの、目標が未達となれば、その翌年は2%を上回る物価上昇で前年の未達分をカバーするというものだという。もしこのような政策になった場合、物価が停滞したときの利上げペースは今よりさらに減速することになる。

中央銀行がインフレにこだわるのは、ただ単に国が抱える莫大な債務を軽くするためだけではなさそうなので、そこら辺について調べていく。

経済学の常識ではデフレは悪らしい。デフレになるとモノやサービスを安く買えるというプラスの面はあるが、経済全体で見ればマイナス面の方が大きく、経済が縮小し国民の生活が苦しくなるという。

デフレの仕組みは次のようになる。不景気になりモノが売れなくなると物価が下がる。物価が下がると企業の儲けが減り、働き手の賃金が下がる。賃金が下がるとさらにモノが売れなくなる。そうなると企業は投資を抑制し人員を削減するようになる。そしてまた・・という悪循環になる。

中央銀行がインフレにこだわる理由は上記のようなものだとわかったが、ではインフレを永遠に起こしていくことは可能だろうか。個人的には難しいように思う。なぜなら成熟社会はすでに豊かなため消費は増えにくく、またグローバル競争や雇用形態を一変させそうな新しい技術が相次いでいるので賃金が上がりにくくなってるから。構造的にインフレが起こりにくくなっているように思う。

では、このような社会構造で金融緩和をして無理にインフレを起こそうとするとどうなるか。先月も同じようなことを書いたが、金融資産や実物資産にばかり資金が流れ込み、資産価格が膨張していく。膨張した資産によって消費は多少増えるだろうが、それもたかがしれている。結果的に、資産価格の膨張ばかりが起こるようになる。

中央銀行がインフレにこだわっている限りは資産価格が膨張していきそうなので、とりあえず株式はしばらく持ってようと思った。

参考:FRB、物価目標に見直し論 2017/11/29日経