2022年4月1日金曜日

売買チェック 1~3月

 ■1月
・ジモティー、アイパートナーズ、ステムリム 買い増し
マザーズが大きく売り込まれていたから。

しかしこれらを買った後にマザーズは20%超下落してしまった笑。これまでマザーズ市場の分析はしていなかったので、今後はマザーズ市場(現・東証グロース市場)も分析していく。

12月の始めごろは高インフレが続きそうな雰囲気があったので、株式を買うのは当面控えようと思っていたが、12月のひふみアカデミーで代表の藤野さんが「個人的な感覚でいうと一番強気レベルになってきた。相当割安圏にきた。個人でもスポットで勝負しようと思っている。(小型グロース株は)マーケットが反転期を迎えたときに爆騰する」みたいなことを言っており、それに影響されてしまった。今後は自分で立てた仮説に従って売買し、その結果を検証するスタンスに徹していこうと思う。

■2月
・イントラスト 買い増し
コンピュータウイルス「Emotet(エモテット)」感染のIRの後に株価が大きく下げていたから。IRに確認すると深刻な被害にはならなさそうだったので少し買い増しした。しかしその後さらに下落。3/18日経に「国内企業がサイバー被害を開示した後に株価が徐々に低下し、50日後には平均で6.3%落ち込む」とあったので、買うのが少し早かったのかもしれない。

ただ今回の株価下落はそれだけが要因ではなかった可能性もある。来期は家賃保証事業の未収金が増えそうな気配があり(詳細は後述)、それを懸念して下げていた可能性もある。同業のあんしん保証の株価も低下基調なので、こちらの影響の方が大きかったのかもしれない。

・アイ・パートナーズフィナンシャル 全売却 損益-29%
売った理由は4つ。1つ目はアイ・パートナーズが新規顧客開拓のサポートをしていなかったから。または新規顧客を開拓したくてもできないと思ったから。

アイ・パートナーズ所属のIFAは大手金融機関に所属する金融アドバイザーと比べて信用力・資本力が圧倒的に弱いので新規顧客を開拓するのは難しそうだと思った。金融機関から金融アドバイザーとその顧客を吸収するだけのビジネスにはあまり魅力を感じなかった。

2つ目はストック型ビジネスモデルとは言い切れなさそうだったから。業績を見ると収益が着実に積み上がっているようにも見えるが、顧客(主に高齢者)が亡くなったり、IFAが退職したりすると、その分収益が落ち込む。顧客の新規開拓も難しそうなので、収益を着実に積み上げていくのは難しそうだと思った。

3つ目は決算が悪かったから。第3四半期決算発表時に業績と目標IFA数の下方修正をした。今後の相場環境はやや厳しそうなので、業績もしばらく厳しそうだと思った。

4つ目はロボアドバイザーがIFAの代わりになりそうだから。金融テクロジーの進化は著しく、現在ロボアドバイザーは個人にパーソナライズした金融アドバイスをできるようになりつつある。ロボアドバイザーの過去5年の運用成績も悪くないので、今後、資産形成層はロボアドバイザーに流れていきそうだと思った。ヴェリタス2/12ヴェリタス3/19

・・今回の敗因は2つ。観察期間が短かったことと、機械的な損切りプランを立てていなかったこと。馴染みのないビジネスに投資する場合は半年くらいの観察期間を設けた方がよさそうだと思った。半年の観察期間を経ても見落とす問題はありそうなので、機械的な損切りプランも用意しといた方がよさそうだと思った。

*前回書いた「アイパートナーズ・レポート」の訂正
レポートには「IFA経由の預かり資産の潜在市場は240兆円」と書いているが、72兆円の誤り。決算説明資料に「(米国の)IFA経由の預かり残は資産ベースで40%」とあり、当初これは証券市場全体の中での40%だと思っていたが、実際は金融アドバイザー経由の資産ベースの中の40%とわかった。証券市場全体の中での金融アドバイザー経由の資産規模はおそらく30%くらいになりそうなので、潜在市場は240兆円の30%(72兆円)くらいになりそうだと思った。

■3月
売買なし。

持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■ジモティー
基本シナリオ:最強の地元取引プラットフォームに
本決算の数字は悪くなかったが、ページビューや投稿数、手数料収入の伸びが弱いのが気になった。これら3つが伸びないと成長がおぼつかなくなるので、やや不透明感が出てきた。ただ会社の方もこの点については「物足りない成長率」と認識しており、「今後さらに成長率を加速させる取り組みを推進」とのことなので、なんとかなりそうでもある。

もう一点気になったのが、また社員が減っていたこと(47→44名。アルバイトは増えている)。これで成長できるのかと思ったが、3/12ヴェリタスに「ジモティーは健全な財務基盤を確保する方針をとってきた。上場から2年で順調に利益を上げ、「今期は人材採用に投資を回せる段階になった」(加藤社長)。開発体制の強化を通してサービス開発を加速させ、事業規模の拡大をねらう。」とあったので、この点もそれほど心配しなくてよさそう。

今後の主な成長戦略3つを簡単にまとめておく。
1つ目はリユース市場で自治体との提携加速。これまでに提携した自治体との成果がポツポツ出始めたので(2/20日経2/17日経CNBC)、今後提携が加速していきそう。

2つ目は中古車の個人取引の拡大。ジモティーはエスクロー決済(ローン決済も含む)や車の鑑定士派遣などを提供しているので、取引は徐々に増えていきそう。ただ、自動車整備・管理SaaSを提供するファーストグループも同様のサービスを始めるようなので、ライバルが増えそうでもある。ファーストグループは車両50万台の詳細な情報(オーナーの信用情報も含む)があるので、手強い相手になる可能性がある。両社が提携すればいいのにと思う。2/15の日経3/22日経

3つ目は求人マッチングの拡大。ジモティーはオンライン面談のサポートや資格書類のチェックなどもしていくようなので、こちらも徐々に利用が増えていきそう。ジモティーは一部の自治体と提携してインフラ維持の仕事などを紹介しているので、この点は他にはない強みになりそう。

「ジモティー」の主要カテゴリーの投稿件数
・売ります・あげます 2021年1月 1013333 →4月 1096141 →7月 1178114 →10月 1238714 →2022年1月 1309130 →4月 1386640
・メンバー募集 71879 →74732 →77377 →80309 →82160 →84313
・助け合い 27226 →28662 →30099 →31277 →31913 → 2328
・不動産 518859 →402393 →553245 →539483 →677740 →620391
・アルバイト 46999 →61359 →58679 →68459 →81161 →92251
・正社員 15335 →17574 →17149 →17817 →20679 →20020
・イベント     →31575 →32906 →34227 →36395 →31918
・中古車      →43199 →45112 →48214 →51367 →51822
・教室・スクール   →18364 →18958 →19491 →20010 →20561
・地元のお店     →13453 →14113 →14765 →15274 →15413
・里親募集      →7628 →7997 →8426 →8628 →8700
*投稿件数は取引終了分はカウントされないので実際の投稿件数はもっと多い。

投稿件数を見ると、「メンバー募集」や「助け合い」のカテゴリーでは明らかに伸びが鈍化している。競合が出てきたのかもしれない。「売ります・あげます」カテゴリーは前年同期比でまったく伸びていない。ここが一番の問題。ただ取引が活発になって取引終了した分が多くなった可能性はある。

第1四半期の売上高予想
まずは本決算予想の振り返りから。前回の予想は「第3四半期よりページビューが小幅増で、広告単価が微増、エスクロー決済手数料4500万と想定すると、16億9千万円~17億3千万円くらいになりそう」だった。

実際はページビューが小幅増で、広告単価が大幅増、エスクロー決済手数料が3800万で売上高は17億1千万円だった。広告単価とエスクロー決済手数料の予想が少し外れた。

以上をふまえて、第1四半期の売上高予想は、ページビューが小幅増、広告単価は微減~横ばい、エスクロー決済手数料が4500万円と想定すると、4億6千万円~5億2千万円になる。

今後3年の予想売上高成長率は年率10~25%程度。現在の妥当だと思える時価総額は200億円(株価3300円、PSR10倍)くらい。2030年の予想売上高・利益は現在の4~7倍くらい。

■イントラスト
基本シナリオ:債務保証事業で未収金撲滅
第3四半期決算はほぼ計画通りの数字だったが、業務委託費や未収金が前期比で大幅に増えているのが気になった。

今後は、日本企業の業績がパッとしない中で、コロナ下で実施された「ゼロゼロ融資」の返済が始まるので企業倒産が増えていきそうであり(3/29日経)、またある調査では「住宅ローンの返済に困っている人の相談件数はコロナ前に比べて1.5倍になっている」といったデータもあるので(3/5ヴェリタス)、未収金が増えそうな気配がある。

来期の業績は計画値よりもやや下ブレるのではないかと思う。とはいえ、10%程度の成長はできそうでもある。

前回のブログで、養育費保証事業はビジネスとして成立しにくそうと書いたが、決算説明で社長も「ビジネスとして成立させるのは難しい」と言っていた。この事業はうまくいかないと莫大な赤字が発生する仕組みなので、少し安心した。ただこの事業は社会的に意義のあるものなので、なんとか工夫してビジネスとして成立させてくれればと思う。

医療費用保証の継続率が99.9%とわかった。この事業が今後一番の成長ドライバーになるので、この調子でいってくれればと思う。

今後のイントラストの成長シナリオと業績予想をざっと書いておく。今後2年は家賃債務保証事業が業績を牽引して、24年3月期の売上高は70~80億、営業利益は16~20億になる。その後は医療費用保証が業績を牽引し、27年3月期の売上高は100~120億、営業利益は20~25億になる。この時点での医療費用保証の導入病院数は1600(マーケットシェア20%)になる。

今後3年の予想売上高成長率は年10~15%程度。現在の妥当だと思える時価総額は180億円(株価800円、PSR3倍)。2030年の予想売上・利益は現在の3~4倍くらい。

■ステムリム
基本シナリオ:再生誘導医薬でテンバガー達成
研究開発は順調に進んでいるもよう。ただ治験の結果が出るのは23年2月以降なので、それまでは退屈な展開になりそう。

肝硬変のフェーズ2試験をしているが、ステムリムの薬剤は「軽症」の肝硬変への適用とわかった(参照)。市場規模はそれほど大きくないのかなと思った。

SMBC日興証がステムリムの目標株価を1400円から1800円に引き上げた。レポートを読んでいないので根拠は不明だが、進捗が順調なものだと受け取りたい。

今後3年の予想売上高成長率は年率0~20%程度。業績が急拡大するのは早くて2年後。現在の妥当だと思える時価総額は600億円(株価1000円)くらい。2030年の予想利益は30~500億円くらい。

■今後の計画
インフレが落ち着くまで静観する。ただ小型株が現状よりさらに大きく下げることがあればポツポツ買っていく。VIX指数が40超、騰落レシオが70以下になった場合も買っていく。

・・マザーズ撃沈により頓死してしまった笑。今年は資産面では悲しい年になりそうだが、現在のように市場が大きく動くときは変動要因がはっきりするので観察のしがいはありそう。知識面で実り多い年にしたい。

有望株チェック

よく調べないで買った株は失敗することが多いので、これからはネチネチと調べてから買うことにする。

<10倍株候補の条件>
 ・上場5年以内の会社
 ・社長が若くやり手
 ・オーナー企業
 ・時価総額が300億円以下
 ・長期的なテーマに合っている
 ・急成長している
 ・(IPOから時間が経過し、株価が右肩下がりになっているチャートが狙い目)

<優良企業の条件>
 ・参入障壁が高い
 ・ストック型ビジネスを手がける
 ・時流に乗っている(潜在市場が大きい)
 →業績が落ちにくく、利益成長を続けやすいビジネスモデル
(例)エムスリーやインフォマートなど

■気になっている会社
・Finatextホールディングス。”テンガバーファンドマネージャー”の古賀直樹氏が1/29日のヴェリタスで「投資先の一つであるFinatextホールディングス(4419)のように、成長力に比べ必要以上に売られた銘柄も多い。」と言っていた。少し調べてみると「(Finatextホールディングスのような)黒子が存在感を増す背景にはデータ連係の仕組みのAPIを活用する「エンベデッドファイナンス(組み込み型金融)」の拡大がある。米ライトイヤー・キャピタルの予測では2025年の市場規模が2300億ドル(約26兆円)と、20年比で10倍強に急成長する」(2021/12/23日経)といった情報もあるので面白そうだと思った。

・パークシャ・テクノロジー。ハイプサイクル的に人工知能は今後本格的な普及期に入りそう。この領域はレッドオーシャンなのが問題だが、業績は順調に積み上がっており、この会社の人材は地頭が良さそうなので勝ち抜けるのではないかと思う。この会社の投資回収期が2023年頃からというのもいい。

・米GXOロジスティクス。物流サービスを受託する会社。消費者から不良品や使用済み製品などの返品を受け付ける事業に強みがある。ITを駆使して商品の点検や修理、廃棄や返金といった複雑なプロセスを請け負うので、ただの商品配送よりも付加価値が高くなりやすい。小売業者からの引き合いは強く、参入障壁は高いようなので、長期の成長が期待できる。3/9日経

・米アーク・イノベーションETF。キャシー・ウッド氏が運用するイノベーション・ファンド。氏の目利き力は本物っぽいので米新興テクノロジー企業成長の恩恵を受けられそう。基準価額はコロナ前の水準まで下がったので割高感はない。円安がネック。


マクロ系金融指標チェック

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米10年金利
今後1年の予想レンジ:1.5%~2.7%の間で推移

米長期金利に与える影響が大きい要因順にみていく。
・経済成長率+インフレ率↑
長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になる。2022年は経済成長率+2.8~4.0%、インフレ率+3.5~5.5%になる見込み。
*数値はFRB予想やIMF予想などを参照

・金融政策↓
FRBはインフレ対策として量的引き締めを22年5月にも開始し、政策金利を22年に7回(1.75~2.25%)、23年に2~4回(0.50~1.00%)上げ、最終的に2.8%まで引き上げる予定。3/17日経3/26日経

*政策金利引き上げると長期金利に上昇圧力がかかるが、金利の引き上げは現在のインフレの主因である供給側には直接作用せず、需要を抑えてそれでインフレを低下させるので、長期金利(景気)には下押しの圧力もかかる。

*FRBは政策金利を2.5%まで引き上げるとFRBの資金収支が「逆ザヤ」の状態になるので(2/5ヴェリタス)、2.8%まで上げられない可能性が高い。米債券市場ではすでに「利上げ末期」の兆候が出ている。2/20日経

*FRBは量的引き締めも大胆にできない可能性が高い。米ゴールドマン・サックスはFRBの資産が今後3年で約3割少ない6兆ドルに減ると予想しているが(3/18日経)、FRBが資産を売却すると長期金利が上昇し、FRBの保有債券に含み損が生じるので(ドルの信用に懸念が生じるので)(2/20日経)、大量には売却できない可能性が高い。

とはいえ、米政権の支持率低下対策やインフレ不況対策(高インフレは消費者から購買力を奪い消費主導の不況を引き起こす)のため、FRBは当面強力な金融引き締めスタンスを維持しそう。

*金利が上がると政府債務の金利負担が大きくなるので、政府は予算規模を縮小せざるを得なくなる。そうなるとそれも長期金利(景気)を下押しする。

・リスクオン、オフ↓
インフレが高進しているのでリスクオフ気味。コロナ収束や金余りがリスクオン要因になる。

・米国債の人気上昇↓
米長期金利は海外の主要先進国の長期金利より相対的に高いので、海外勢から買われやすい。米長期金利が2%を超えると巨額の買い需要が発生するともいわれる。

ただ、ウクライナ危機などによりドル需要が強まっており、ベーシススワップ(ドル調達時の上乗せ金利)は0.4%まで上昇している(3/16日経)。その分、海外勢の旨味は減少する。

・財政赤字の拡大↑
2018年から米国の財政赤字は年100兆円を超えており、2020年、2021年はコロナの影響で300兆円を超えている(日経)。米国債の供給増や通貨の信認低下により長期金利には上昇圧力がかかる。2022年の財政赤字は100兆円程度になる。

*財政支出を拡大すると景気刺激の面からも長期金利に上昇圧力がかかる。

・資金需要の低下、金余り↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になる。デジタル企業は設備投資のための資金需要が少ない。少子高齢化の影響で借り入れなども減っている。

金余りで運用難に陥っている金融機関や企業は多く、そういうところがこぞって米国債を買っている。日経日経

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みなどで潜在成長率は低下傾向にある。

投機筋は米10年債先物を大きく売り越している。投機筋は今後金利が上がるとみている。

・チャート→
<10年チャート> 長期では下降トレンド。ただ足元では長期線を力強く越えてきたのでしばらく上昇トレンドが続きそう。

<前回の予想「今後1年の予想レンジ:1.2%~2.0%の間で推移」が外れた要因>
・ウクライナ危機が起こって資源高になり、インフレ圧力が高まった。
・FRBが予想以上の金融引き締めシナリオを示した。

■WTI原油
今後1年の予想レンジ:80ドル~150ドルの間で推移

原油価格に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・需要↑
原油の需要は世界経済成長率にほぼ連動する。2022年の世界経済成長率は+3.0~4.4%程度になる。

長期では、温暖化対策や職場・学校のリモート化などにより石油需要は減る可能性がある。仏トタルや英BPは2030年頃に石油需要がピークアウトすると予想している(11/6ヴェリタス日経)。一方、世界人口は今後も増えていくので石油需要は増える可能性もある。米エネルギー情報局(EIA)は50年の石油需要は20年比で4割増と予想している(10/8日経)。

・供給↑
OPECや米国は増産基調にあるが、ウクライナ危機により日量200~300万バレル程度(世界需要の2~3%程度)の供給懸念が生じている。3/5ヴェリタス3/8日経3/17日経

石油(エネルギー)は人間にとって食料と同じ生活必需品のため、不足が生じた場合、価格が跳ね上がりやすい性質がある。ただ、中国やインドはロシア産原油を輸入するようなので、ロシアが生産を止めない限りは供給の方はそれほど問題なさそう。

脱炭素の潮流を受けて油田開発投資が大きく減っており、また再生可能エネルギーの普及には時間がかかるので、長期では供給不足に陥る可能性がある。

・産油国で不測の事態が起こる↑
ロシアがウクライナに侵攻し紛争が起きている。西側はロシアからの原油調達を絞りつつある。
世界最大の石油埋蔵量を誇るベネズエラでは米国の制裁や政治の混乱、投資不足などにより産油量が激減している。
イランでは米国から制裁を受けており、産油量が減っている。ただ米政権はイランとベネズエラへの制裁を緩和する方向のようなので、今後この2国の供給は増えそう。
中東では度々石油施設へのテロ攻撃が起きている。3/26日経

・産油国や産油企業、再生可能エネルギーの採算ライン→
サウジが財政均衡に必要な水準は1バレル83ドル、アラブ首長国連邦(UAE)は70ドル、イラクは60ドル、ロシアは42ドル、米企業の採算ラインは45~70ドル、再生可能エネルギーは30~80ドルになる。原油価格はこの範囲内で収まる可能性が高い。

・リスクオン、オフ↓
リスクオフ気味。
*原油は株式と同じリスク資産になる。

・インフレ対策↑
原油などの商品は最良のインフレヘッジ手段になる。足元ではインフレ対策の一環としても買われている。

・為替↓
原油はドル建てのためドル高になると原油価格に低下圧力がかかる。足元ではドル高基調になっている。

・チャート
<10年チャート> 上昇トレンド。長い上ヒゲが出ているので、110ドルくらいが天井になるのかもしれない。

<前回の予想「今後1年の予想レンジ:70ドル~120ドルの間で推移」が外れた要因>
・ウクライナ危機が勃発し、供給懸念が強まった。

■ドル円
今後1年の予想レンジ:105円~130円の間で推移

為替に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・日米の長期金利差↑(↓は円高方向)
FRBは3月から金融引き締めに転じた。一方、日銀は大規模な金融緩和を続けている。日米の金融政策の違いや、経済成長率、インフレ率の格差などから金利差は拡大傾向にある。

金利差拡大によりキャリー取引が増えている。
*キャリー取引とは金利差を狙った取引。金利差が大きくなると低利通貨を売り、高利通貨を買って、金利差で収益を得る取引が盛んになる。現在のような状況では低利通貨の円は売られやすくなる。

・日本の経常収支↑
輸出主導の経済構造が変わり、資源高の環境下で、日本は経常赤字に転落しつつある。1月の経常収支は1.1兆円の赤字になっている(3/9日経)。日本はこれまで年20兆円程度の経常黒字を維持してきたが、現在の資源高、円安が続くと通期でも赤字になる可能性がある。

・日米の経済の強さの違い↑
資金は経済の強い国へ流れ、その国の株式や不動産などが買われる。デジタル革命を主導する米経済は相対的に強いのでドル資産が買われやすい。
*日本の個人投資家は2021年に海外株を約7兆円買い越しており、その大半は米国株になる。日本株の買越額は約350億円になる。12/30日経

・ドル需給↑
FRBがドルを大量供給しているのでドルはだぶつき気味だったが、ウクライナ危機により基軸通貨ドルの需要が高まっている。

・リスクオン、オフ→
インフレ高進やウクライナ危機により、リスクオフ気味。日本は世界一の対外純資産国なのでリスクオフ時に円は買われやすいが、上記要因により円が買われにくくなっている。

・日本企業の対外直接投資↑
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業は海外での直接投資を増やしている。ここ数年は年12~22兆円の買い越しが続いている。対外純資産に占める対外直接投資の比率は増加傾向で、2020年には47%まで高まっている。一方、対外証券投資の比率は28%まで低下している。11/17日経

・国内投資家の対外証券投資↑
日本の機関投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、高い運用利回りが見込める海外債権や株式などを買っている。個人投資家は成長力のある海外株を積極的に買っている。ここ数年は年10兆円程度の買い越しが続いている。

・海外投資家の国内証券投資↓
ベーシススワップ(円調達時の上乗せ金利)が低下しており、日本国債の金利は安定しているため、海外投資家は日本国債を年10兆円程度買い越している。3/16日経

・投機筋の持ち高↓(「円 投機的ネットポジション」で検索)
投機筋は売りを継続している。投機筋は円安が進むとみている。
*円を買い持ちした場合はスワップポイント(金利収入)がマイナスになるので、買いポジションが長く続くことは少ない。

購買力平価
物価が上がると(インフレが進むと)、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると(デフレが進むと)、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必用なくなる(購買力は上がる)。この物価変動に着目して二国間の通貨価値をならしたものが購買力平価になる。

日本より米国の方が慢性的にインフレ率が高いので円の購買力平価は長期的な円高傾向にある。ただ米国のインフレ率は年々低下しており日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。為替相場は長期的にはこの購買力平価に収斂していくとされているので、円の下限は75円、上限は115円くらいになる。

*コロナ禍で日米のインフレ格差が広がっている。この状態が続くと円には強い上昇圧力がかかる。

・日銀が保有するETFの簿価割れ→
日銀の自己資本は約10兆円なのに対し、保有する日本株ETFは簿価で約35兆円ある。日銀の保有するETFの損益分岐点は日経平均株価21000円くらいなので、ここを下回ると自己資本が目減りし通貨の信認が低下する。日経平均株価が15000円台まで下がると日銀は債務超過に転落し、さらに通貨の信認が落ちる(日経)。現時点ではそこまで下がる確率は低い。

・日銀が保有する日本国債の値下がり→
日銀は日本国債を500兆円超保有している。金利が2%まで上昇すると、当座預金への利払い負担が国債の運用利回りを上回る「逆ざや」が生じ、債務超過に陥る可能性がある(10/1日経)。ただ現時点ではそうなる可能性は低い。

・米制裁によるドル離れ↓
米国は対立する国に「ドル取引の制限や禁止」といった金融制裁を課すことがある。現時点で米国はロシアやイラン、トルコ、中国などに金融制裁を課しており、これらの国々は米国債の保有を大きく減らしている。今のところドル離れは一部に留まっているが、今回のロシア中銀が保有するドル資産凍結によりドル離れが加速する可能性がある。3/17日経

・日米の財政政策→
巨額の財政出動をすると景気を押し上げ、自国通貨も押し上げる効果があるが、一方で財政赤字の拡大により通貨の信認が低下し、自国通貨を押し下げる効果もある。日米の財政支出や財政赤字は対GDP比で同程度になる。

・日本政府の過剰債務↑
日本政府の債務は返済不可能な水準まで膨れ上がっているので、2030年頃に円の大暴落が起きる可能性がある。米国も似たような状況だが、基軸通貨なので大暴落は起きにくい。

・チャート
<10年チャート> ゴールデンクロスを形成したのでしばらく上昇トレンドが続きそう。

<前回の予想「今後1年の予想レンジ:105円~120円の間で推移」が外れた要因>
・米長期金利が予想以上に上昇したから。
・ウクライナ危機が起こり、資源価格が急騰したから。

■日経平均
今後1年の予想レンジ:23000~32000円で推移

日経平均に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・金融政策↓
世界の中銀の総資産と世界の株価指数はほぼ連動している(日経)。2022年の中銀の総資産は微減になる見通し。

米欧の中銀は資産の購入を停止・売却する方向だが、中国は購入する方向。1/16ロイターなど。

*現時点ではまだ売却に動いていないにもかかわらず、株式市場は大きく下落している。機関投資家の現金保有比率はコロナ前までの水準(5.9%)まで高まっており(3/16日経)、やや売られすぎの感がある。

・米長期金利↓
長期金利が上昇すると株式から債権へ資金がシフトしやすくなる。

・為替↑
円安が進むと海外勢は日本株を買いやすくなる。
国内製造業の利益は増えやすくなる。

・利回り↑
日本株式の益回りは約6.88%、配当利回りは約2.10%と、日本長期国債の利回り0.22%より高いので、株式に資金が流れやすい。

・需給↑
大きく下げたときは日銀が買い支えるので日本株は下がりにくい。
主な投資主体の売買動向をみていく。
<2022年の予想と現状>
 日本銀行:予想は日本株の買い支えで1兆円の買い越し。現状は2千億円の買い越し。
 事業法人:予想は自社株買いで2兆円の買い越し。現状は7千億円の買い越し。
 海外投資家:予想は景気後退を懸念して1兆円の売り越し。現状は2兆1千億円の売り越し。
 個人投資家+投資信託:予想は逆張り投資で1兆円の買い越し。現状は5千億円の買い越し。

・EPS(1株利益)↑
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益)× PER(期待度・人気度)で決まる。2022年の予想EPSは0~10%程度になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因についても見ていく。
・為替→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので為替相場の影響が大きい。今後はやや円安基調で推移しそうなので利益が増えそうではある。しかし輸入価格の高騰により企業物価指数が大幅に上昇しており(3/10日経)、この分を価格転嫁できなければ利益はそれほど増えない。

・海外景気→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので海外景気の影響を大きく受ける。2022年はコロナが収束し世界景気が正常化しそうではあるが、インフレ高進(金融引き締め)などにより景気後退に陥る可能性もある。

・失業率↑
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益が圧迫され、労働量力不足で成長が頭打ちになりやすい。現在の失業率はコロナ前よりもやや高い水準にある。

・減価償却費や資源価格↓
減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇すると利益が圧迫される。足元では減価償却費は横ばいだが、資源価格は急騰している。コスト上昇分を価格転嫁できれば問題ないが、日本では景気回復の実感が薄いので、現在それをやるのは難しそう。

・金融政策↓
金融引き締めで金利が上昇すると企業の利益や資金調達環境は悪化する。FRBは3月に金融引き締めに転じており、徐々に資金調達環境は悪化している。
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・PER(期待度、リスク選好度)↑
日経平均の過去のPERは11~17くらいだが、現在のPERは13.43倍とほぼ中立の水準。今後EPSが下ブレる可能性もあるので、妥当な水準に見える。

投機筋の持ち高
買い残は1兆3200億円で、裁定売り残高は2500億なので、投機筋は日本株が上がるとみている。
*一般に、裁定買い残高が3000~6000億円まで減少すると「売られすぎ」、3.5兆~4兆まで増加すると「買われすぎ」とされる。

・個人投資家の流入↑
コロナ禍の「巣ごもり」や「老後2000万円問題」などの影響で株式市場に個人投資家が流入している。米株式市場においては個人の売買シェアがコロナ前の10%から足下では25%にまで高まっている。日経

・パッシブ運用の膨張↑
パッシブ運用にはストック効果(積み上げ効果)があるので、この運用が増えれば株価は下がりにくくなる。現在、投信やETFでパッシブ運用の比率が高まっており、世界では44%、日本では73%まで高まっている。ただパッシブ運用が増えると流動性が低下し、値動きが激しくなりやすくなるという問題がある。7/18日経10/20日経

・チャート↑
<10年チャート> 調整はしているがまだ上昇トレンドを保っている。

<前回の予想「今後1年の予想レンジ:27000~34000円で推移」が外れた要因>
・ウクライナ危機が起こって資源高になり、日本企業のEPS低下懸念が生じた。
・金融引き締めにより景気後退に陥る可能性が出てきた。

■東証グロース指数(旧マザーズ指数)
今後1年の予想レンジ:800~1150の間で推移(*4月1日の指数を1000と想定)

東証グロース指数に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・金融政策↓
東証グロース指数は中銀総資産との相関が全市場の中で最も強いので、中銀の資産縮小時には小型グロース株が真っ先に売られやすい。週刊エコノミスト2022年1月11日号(最終ページ)には「マザーズ指数は日銀の当座預金残高と連動」といった指摘もあり、実際、日銀の当座預金残高の推移とマザーズ指数の推移はほぼ一致している。

とはいえ、中銀が資産を大きく減らす前に、グロース指数は中銀が資産を大きく増やす前(2020年2月)の水準以下まで売り込まれているので、やや売られすぎの感がある。マザーズ指数はFRBが13年12月にテーパリングを決めた際にも急落したが、半年後には決定前の水準を回復している。3/2日経

金利上昇も小型グロース株には逆風になる。金利が上昇すると将来の成長期待を買われている小型グロース株ほどバリュエーションが低下しやすくなる(詳細は後述)。また小型グロース企業は赤字が多く、金利上昇により成長のための資金調達をしにくくなる。

・需給→
グロース市場は日銀の買い支えがなく、自社株買いもあまり期待できないため、相場下落時はプライム市場と比べて下がりやすい。

2021年11月から今年3月までマザーズ指数は下げ続けたが、この下げの主因は海外投資家の売りになる。海外投資家はマザーズ市場での売買シェアの約半分を占め、11月から3月にかけほぼ一貫して売り越している。ヴェリタス3/53/19日経

個人投資家は株価が下げたときに買いに回るが、現在多数が含み損を抱えており、投資余力は低下している。

・EPS(1株利益)成長率 ??
不明。グロース指数を構成する企業群の連結損益合計は赤字っぽい(2020年時点では赤字)。
参照:週刊エコノミスト2022年1月11日号(最終ページ)

<反転シグナル>
信用評価損益率の急激な悪化が反転の目安になりそう。信用評価損益率が急激に悪化して、追い証回避の投げ売りが殺到すると、信用での買い持ちが急減して需給が軽くなる。そのタイミングで海外投資家が買いに転じるパターンが多い。

マザーズの信用評価損益率は2月に-40%まで悪化。2018年12月の急落時には-35%まで悪化してその後、指数はV字回復している。ただ今回の下落は、下落の仕方が穏やかなので、セリングクライマックスのような投げ売りはまだ見られない。

2007~2009年の金融危機では、2007年12月に信用評価損益率が-30%を超え、2008年10月に-65%まで落ち込んでいる。約1年5ヶ月にわたってマイナス幅が30を上回っており、この間にマザーズ指数は900台から300近くまで落ち込んでいる。当時も今も金融引き締め局面であり、このような前例をふまえると、東証グロース指数はあと1年程度調整局面が続くのかもしれない。ヴェリタス3/5

・チャート→ 穏やかな下方トレンド。底は600くらいになりそう。

市場環境チェック

 株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などを見ていく。

■EPS成長率
・世界株式の2022年の予想EPS成長率は10%。
・米国株式の2022年の予想EPS成長率は8%。
・欧州株式の2022年の予想EPS成長率は0~10%。
・日本株式の2022年の予想EPS成長率は0~10%。
*参照:3/22日経3/26日経など。
*今は金利低下で企業の利払い費が減少しており、経済のデジタル化で設備投資や人件費も減少しているので、利益が増えやすくなっている。

■経済成長率
・世界の2022年の予想成長率は4.4%以下、2023年は3.8%。
・米国の2022年の予想成長率は4.0%。
・中国の2022年の予想成長率は4.8%。
・ユーロ圏の2022年の予想成長率は3.9%。
・日本の2022年の予想成長率は3.3%。
*数値はIMF予想。1/26日経3/23日経
*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほどには不況感が強まらない可能性もある。経済成長率を測る指標のGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。

*コロナ下で2020年の日本のGDPは落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が向上していれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。日経

*デジタルサービスやデジタルツールはGDPや生産性の統計には反映されにくい。現在それらの影響を測る新しい統計・指標の開発も進んでいる。2/15日経

■インフレ
・米国の予想インフレ率は2022年が3.5~5.5%。
 米国の今後10年の予想インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレ率10年)は2.86%。
・欧州の予想インフレ率は2022年が3.0~5.0%。
・日本の予想インフレ率は2022年が1.5~2.5%。
*参照:12/11ヴェリタスなど
*参照:米PCE(個人消費支出物価指数)、米CPI(消費者物価指数)ユーロHICP日本CPI。中央銀行は主にこれらの指数を使って政策決定する。

世界中でインフレが高進している。インフレ要因とデフレ要因を一通りあげて、今後のインフレ動向について考えていく。

<インフレ要因>
★コロナ禍特有のもの
・供給基盤が破壊され供給不足が生じている。
・コロナが収束せず供給不足が長引いている。
・コロナで対面型サービスの人気が落ち、賃金が上昇している。
・コロナ対応に慣れてきて需要が急増している。
・政府から給付金が支給され需要が増している。
・金融緩和の影響で資産価格や商品価格が上昇している。
・量的緩和の影響で通貨価値が下落している。

★コロナ後も続くもの
・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。脱炭素シフトにより2030年まで年率0.7%程度の物価押し上げが見込まれている。11/19日経ヴェリタス11/6ヴェリタス11/6
*脱炭素シフトが完了すれば再生可能エネルギーはデフレ要因になる。
・異常気象や世界人口増、新興国の経済成長、バイオ燃料需要、肥料価格上昇などにより、食料価格が上昇傾向にある。12/31日経2/4日経
・ロシアのウクライナ侵攻により食料・資源・エネルギー価格が上昇している。西側の制裁は長引きそうなので、これらの価格は高止まりしそう。
・人手不足で賃金が上昇している。米国では求人件数が1000万件を超えているが、完全失業者は足元で600万人まで減っている。失業者全員が求人に応じたとしても、400万件程度の求人が充足されない計算になる。コロナ前の景気拡大局面のピークでも未充足数は150万件程度だった。労働参加率が低いのは、コロナ感染への懸念や雇用条件に対する不満だけでなく、移民の伸び悩み、高齢化の進展、株高による早期退職(160万人)、”アンチワーク”など構造的な要因も絡んでいるので、早期解決は難しそう。11/19日経1/15ヴェリタス2/7日経
・米住居費が上昇している。家賃上昇が2022年と23年の米CPIを1.1ポイント押し上げると見込まれている。2/19日経
・経済の脱グローバル化で、製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇している。
・世界の生産年齢人口比率は2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなく可能性がある。11/10日経

<デフレ要因>
・経済や社会がデジタル化している。コロナの影響でデジタルシフトが加速している。
*経済や社会のデジタル化は強力なデフレ圧力になる。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば検索やSNSは無料だし、ネット上では価格比較を簡単にできるので売り手は超過収益を得にくくなっている。またスマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。他にも複製コストゼロのデジタルソフトやシェアリングサービスの普及などもあり、価格は下がりやすくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争が起きると価格がゼロに近づく。

・イノベーションが加速している。今はインターネットやAIにより情報・人・モノの新結合(イノベーション)が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。
・金融引き締めに転じている。金融引き締めには需要を減らす効果がある。
・世界的に経済成長率が鈍化している。過去40年で米国の潜在成長率は3%前後から2%前後に低下している。2/8日経
・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向(収入に占める支出の割合)は低い。
・世界的に少子高齢化が進んでいる。高齢者は支出が少ない。
・世界的に労働人口が減少傾向にある。消費が縮小する。
・人手不足で成長力が低下している。
・人手不足で経済・社会のデジタル化が加速している。
・経済の脱グローバル化で、製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇してはいるが、「自動化」の普及により、そのコストも徐々に減少している。
・経済のグローバル化は終わったわけではなく、安価な輸入品は増えている。

まとめると、あと半年くらいはインフレが高進し、その後は徐々に落ち着いていきそう。ただ米国では需給ギャップが当面プラス圏で推移するようなので(10/29日経)、あと2年くらいは高水準のインフレが続くかもしれない。

■金利
・米国の2年金利は2.28%で10年金利は2.35%。30年金利は2.46%。
・日本の2年金利は-0.041%で10年金利は0.21%。

*(名目金利からインフレ分を差し引いた)実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態では、国債を買ったり、銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。現在、G20の半数以上の国で実質長期金利がマイナスになっている。足元で金利は上昇しているが、米金利が3%まで上がっても、米実質金利はマイナス圏にとどまる見通し。

*投資家は企業が将来生み出すであろう利益から金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益が減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分が多くなり、理論価値が下がりやすくなる。

*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.4%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。
*米10年金利が米3ヶ月金利を下回ると、その1年~1年半後に米景気は後退することが多い(3/26ヴェリタス)。米10年金利が米2年金利を下回った場合もしかり。足元では一時10年金利が2年金利を下回っている(3/30日経)。ただ”オオカミ少年”のFRBは「(期間10年などの)長期金利を物差しにした金利差は景気予測の指標に適さない」と言っている。3/29日経

*景気拡大期の「良い長期金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場へのネガティブな影響が大きい。ヴェリタス
*景気拡大期終盤の金利上昇では、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こりやすい。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。

■債務
・世界の債務はコロナ下で急拡大し過去最高のGDP比350%に達している。2/12日経

*債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くとどこかで必ず逆回転が起こる。債務拡大ペースはここ10年、毎年GDPの成長速度を上回っている。
*債務の質は劣化しており、米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割超が格付けの最も低いトリプルBになっている。*日本には低格付け債市場がない。
*米欧の低格付け企業向けの融資「レバレッジドローン」の融資実行額が過去最高水準で推移している。借り手の返済能力は落ちており、今後の金利上昇局面では返済に行き詰まる企業が続出する可能性がある。日経

*今のように金利が経済成長率を下回っている状態では、企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にできるので債務が膨らみやすくなる。政府債務においても、多少の財政赤字を続けていても債務残高GDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。
*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構図になっている(参照)。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りていない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。
*2021年は日米の倒産件数が過去最低水準まで低下しているが(1/13日経1/18日経)、
負債は積み上がっており、政府の金融支援は間もなく終わるので、2022年は倒産件数が急増する恐れがある。

*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。削減できなくても政府債務は実質的に返済不要なので特に問題なさそう。
*中国の可処分所得に対する家計債務比率は日本のバブル期並の120%まで高まっている。中国は今後深刻な消費不振に陥る可能性がある。参照
*中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる。日経

*新興国のドル建て債務の増加も著しく、10年前の約2倍の約500兆円まで増えている。足元ではドル高が続いており実質的な負担が増している。一部の国ではデフォルト懸念が高まっており、デフォルトがいったん起きるとドル高が一段と進みやすくなり、デフォルトが連鎖しやすくなる。3/15日経

<バブルについて>
バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより生じる現象。現在もバブルは発生しているが、その投資主体は民間から政府(中央銀行)にシフトしているのでバブルは破裂しにくい。しかし、足元ではインフレが高進しつつあり、その対策として中央銀行が資産を売却する可能性が高まりつつある。ただ、FRB以外の中央銀行は今のところ大規模な資産売却を検討していないので、極端なバブル崩壊は起こりにくそう。
*先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、深刻なバブル崩壊(金融危機)は起こりにくい。デフォルトが発生し、それが連鎖しても金融機関は7%超の自己資本比率を維持できるとされる。参照

■金融政策、財政政策
・世界中の中銀がインフレ対策で金融引き締めに転じている。日銀だけが緩和を続けている。

*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利をあまり引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀が金利を2%まで上げると日銀は債務超過に陥るとされる(10/1日経)。FRBは政策金利を2.5%まで上げると資金収支が「逆ザヤ」ぎりぎりの水準まで悪化するとされる。2/5ヴェリタス
*MMTは日本が行っている金融・財政政策とは若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。

■政治
・日本の政治は比較的安定。岸田政権の支持率は61%と高水準で推移している(3/27日経)。ただ財政支出ではばらまき色が強く、その効果を検証する仕組みもないので(1/6日経3/22日経3/22日経)、今後も愚策が繰り返されそう。
・海外は不安定。ロシアが「一線」を越えてしまったので、ロシアと西側との関係はしばらく冷え込みそう。ロシアは資源大国なので世界経済に下押し圧力がかかりそう。
・米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に長期にわたり続きそう。
*米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制を強化している。強い規制があると民間の活力がそがれるので今後成長が鈍化する可能性がある。
・米欧は格差拡大や価値観の分断を背景にしたポピュリズム(大衆迎合主義)が拡大しつつある。ポピュリズムは目先の利益を優先するので、成長力が落ちやすくなる。

■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数は右肩上がりで推移している。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は58.6と高水準で推移している。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数も56.5と高水準で推移している。
*同指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増える。
米国の失業率は減少傾向で現在は3.8%。「完全雇用」の水準(3.5%)に近づいている。
*米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥るとされる。
*米失業率が「完全雇用」の水準(3.5%)まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。日経
・米景気の先行指標であるダウ輸送株は高値圏で推移しており、ラッセル2000はやや調整気味。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは49.5と中立の水準をやや下回っている。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りは1月頃から上昇基調となっている。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれる。現在は「物価上昇」「社債スプレッドの拡大」の2つが起きている。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は2~3の段階になる。

■その他指標
・日米の騰落レシオは106、112と問題のない水準。
・日本株の信用評価損益率は-11.36%と問題のない水準。
・チャートは全体的に横ばい気味だが、まだ上昇トレンドを保っている。

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
高インフレにより景気後退に陥る確率が高まってきた。民間・政府ともに債務山積みの状態で金利を引き上げるので、景気には強い下押し圧力がかかる。ただコロナは落ち着きつつあり、イノベーションの勢いは止まりそうにないので景気後退に陥ったとしても回復は早そう。インフレが落ち着けば、また長期の景気拡大期に戻れるのではないかと思う。

<補足>
景気循環の基本的なパターンは不景気 →金融緩和 →景気拡大(債務拡大)・失業率低下 →景気過熱・インフレ過熱 →金融引き締め →景気後退(債務圧縮)の流れになる。足元では景気が過熱する前にインフレが過熱しているので、従来のパターンとは少し異なる。現在は景気が弱い状態で金融引き締めをしているので、景気後退(停滞)に陥りやすい。

■他の景気後退シナリオ
景気後退シナリオ1:中国のバブル崩壊で景気後退
中国の民間債務残高は積み上がっており、GDP比220%に達している(日経)。景気下振れなどでいったんデフォルトが起これば、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。バブルが崩壊すれば独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性もある。そうなれば政治的混乱が相まって不況が深刻化する。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただ中国政府には財政・金融政策をする余地があるのでバブルが崩壊する可能性は低い。

景気後退シナリオ2:中国が武力で台湾を併合し、米中戦争が激化して景気後退
中国が2024年頃までに武力で台湾を併合するとの見方が増えている(11/2日経1/24日経1/24日経1/31日経)。実際にそれが起きれば米中戦争が激化し、景気には強い下押し圧力がかかる。ただ今回のロシアの件で、武力侵攻すれば国際社会の包囲網がいかに厳しくなるかを中国は実感しているはずなので、中国が侵攻する可能性は低下している。3/18日経

景気後退シナリオ3:「脱成長」経済システムに転換して景気後退
COP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は「産業革命以前から21世紀末までの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指して、努力を追求することを決意」することで合意したが、現在その実現は絶望的な状況にある。各国の30年時点での目標がすべて達成されても21世紀末までの気温上昇は2.4度になるとされる。そうなれば海面上昇で沈む島国が出て、山火事や巨大台風などの自然災害が多発し、水不足、食糧危機、感染症のリスクなどが増大する。このような未来が科学的に予測されている現状で対策を取らないという選択肢はない。問題の根幹は現在の経済システムにあるので、「脱成長」の経済システムに転換する必要がある(1/11日経)。ただ現在の状況で「脱成長」の経済システムに転換すれば景気後退は避けられなくなる。

深刻な景気後退に陥ると、財政問題や福祉問題など目先の深刻な問題が噴出するようになり、それらの問題に対処せざるを得なくなる。そのため経済システムの転換は当分先になりそう。環境危機が目先の大問題に発展したときに初めて転換の機運が生まれるのかもしれない。

景気後退シナリオ4:災害や紛争で景気後退?
大災害や戦争が起こると景気には強い下押し圧力がかかる。しかし、こうしたことが起こると必ず政府が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば景気はV字回復することが多い。一般に、災害や紛争は押し目買いのチャンスといわれる。今回のようなパンデミックも株式市場には追い風で、社会・経済構造の転換や金融緩和などにより、長期にわたる株高が発生しやすくなる。ロイター

ただし日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は1000兆円規模の損失が発生し、深刻な景気後退に陥る可能性が高い。日経

■今後の計画
円が100円くらいまで上昇したら、3倍以上の値上がりが見込める海外資産を買っていく。ただ馴染みのある海外企業はすべて巨大なので株価の大幅上昇は見込みにくい。無理して買わないようにする。

よさそうな米国株は、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、アップル、フェイスブック、セールスフォース。

よさそうな新興国株は、インド株のETF、東京海上インドオーナーズ株式オープン。インドは人口ボーナスで2050年頃までは成長が続きそう。ただ、成長率の高い国はインフレ率も高いので株価が上昇しても為替差損で思ったほど利益を得られないかもしれない。
*GDP成長率とインフレ率は同程度になる。

よさそうな商品は銅。グリーン革命で需要は右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などで供給不足になりそう。日経

日本円と米ドルが暴落しそうになったら、スイスフランやスイスフラン建てのETF(UBS ETF スイス株 (MSCIスイス20/35))を買っていく。 

■今後の株式市場について
日本や米国の公的債務は返済不可能な水準まで積み上がっており、この巨額の債務を返済するには財政を健全化するか、インフレを起こすしかない。しかし生活者に余裕のない状態で財政を健全化しようとすると逆効果になるので、現実的にはインフレを起こすしかない。

しかし、そのインフレもデジタル化やグローバル化などの影響で起こりにくくなっている。この状態でインフレを起こすには中銀が通貨を大量供給するしかない。現在、政府が大量発行した国債を中銀が買い取る形で通貨を大量供給しているが、この構図は今後もしばらく続く可能性が高い。

このような状態が続くと通貨の価値(信認)が落ちていき、資産価格には上昇圧力がかかる。株式市場はこのような流れで今後、長期で上昇を続けるのではないかと思う。

ただし、このような政策を永遠に続けることはできない。このような政策を続けていると、どこかで必ず通貨の信認喪失が起こる。そうなると通貨安・インフレが加速し、国内からお金が逃げ出し、株式市場は大暴落する。それが起こるタイミングはおそらく、日本の経常収支が赤字に転落したとき(国の借金が民間の貯蓄を上回ったとき)になる。危機は2030年頃に訪れるかもしれない。
日経によると2031年に日本が財政破綻する確率は50%になる。