2018年2月9日金曜日

敏腕ファンドマネージャー6 岩谷渉平

投資信託で唯一基準価格10倍を達成した岩谷氏について調べてみた。

■運用パフォーマンス
・DIAM新興市場日本株ファンド。2007年11月に設定。設定来の上昇率は1101%。
*岩谷氏が担当になったのは2011年でこの時点の設定来上昇率は15%程度。
・未来変革日本株ファンド。2016年1月に設定。設定来上昇率は37%。
・厳選ジャパン。2017年9月設定。設定来上昇率は12%。

■ファンドマネージャーになった経緯
日本興業銀行(現みずほ銀行)で予算や決算を担当していたとき、自社の株価にミスプライスが生じており、それがちょっとしたきっかけで修正されたことに気づいたのがきっかけ。その後UBSに転職し、自らの評価と市場の評価のギャップに着目するファンドマネージャーに。

■投資法 ビッグチェンジ銘柄投資
1,銘柄探し
社会の課題を解決できる会社は必ず成長するので、そういった会社を探す。課題が大きければ大きいほど成長の伸びしろも大きくなる。このような視点で見た場合、PERが100倍を超えるユーザベースやペプチドリームは割安株になる。

また0から1を生み出す会社も探す。新薬や新素材の開発など、人々がまだ課題として認識してないものを新たに事業化する会社もよい。

このような会社を探すときにはAIやビッグデータも利用する。

2,企業分析
課題解決のカギとなる技術やサービスを調べるのももちろん大切だが、それ以上に経営者の問題意識を調べることが重要になる。経営者のインタビュー記事や、経営者に実際会って人と成りを確認し、どんな志があるのか、誰の役に立つビジネスをしようとしているのかをチェックする。一般にオーナー企業や長寿企業の経営者は社会に必要とされる事業を真剣に考えている場合が多く、上場後も成長を続けるベンチャー企業は、上場前後で「自社のため」から「社会のため」へと意識が変わっていることが多い。

3,買うときのポイント
小型株や新興株は変動が激しいので下落リスクを抑える必要がある。その際安く買うことが最大の防御となる。安いときは他の投資家がまだ会社の前向きな変化に気づいていないときと、他の投資家全員が「この銘柄はダメだ」と思っている時になる。他の投資家全員が悲観的になっている時に買い向かうには日頃から財務情報だけでなく知財や人材など非財務情報もチェックしておく必要がある。

4,保有時のポイント
解決する課題が大きいほど成果が出て株価に反映されるまで時間がかかるので、基本的には長期保有になる。企業がタブーや常識を打ち破ろうとする過程において失敗することもあるが、成長のゴールをしっかりイメージして保有し続ける。ただこれは難しいことであり、一緒に悩んだり背中を押してくれたりする仲間がいたほうがよい。

市場環境によって組み入れ銘柄を変更することもある。基本的には上昇局面ではマザーズなどの変動率の大きな成長株を中心に組み入れ、横ばいや下落局面では大型株を中心に組み入れる。

5,売るときのポイント
相場上昇時の売り時は難しいので、買うときにどれくらい成長しそうかをイメージしておくことが大切。株価が上昇したときは一部を利確していくが、いきなり売り切ってしまうことはない。

6,社内リソースを活用する
50兆円以上の資産を運用するアセットマネジメントONEには日本株のファンドマネージャーだけで60名が在籍している。マクロ分析や企業調査などの社内リソースはフル活用する。

■今後の日本株について
課題先進国といえる日本にはまだまだたくさんの課題が残っているため課題解決のチャンスは多い。産業の新陳代謝が起こる限り日本株でも投資チャンスはある。

岩谷氏は2017年に新設した投信「厳選ジャパン」でも基準価格10倍を達成できるだろうと述べている。

■日本が抱える課題の一例
・日本は人口が減少しているので今後は生産性を上げることが重要になってくる。IOTやAIなど積極的なIT活用によって仕事を効率化させる事業を展開する企業にはこれからますます活躍の余地が広がる。人材や教育に関わるビジネスも重要になってくる。
・仮想通貨の決済などに使うブロックチェーン技術にも注目している。この技術は紙の台帳などで管理していたデータをデジタル台帳に置き換えるもので、低コストでの安全な運用が可能になり、登記や公証人制度、特許といった既存の仕組みを一変させる可能性がある。経産省は国内の潜在的な市場規模を67兆円と見積もっている。

参考:「『AI+ヒト』運用とクオンツがチーム アセマネOne」ヴェリタス2017/5/28
   「たった一人のテンバガー運用者」ヴェリタス2017/10/15
   (グーグル検索と日経電子版検索でヒットした記事)

天井(大底)シグナル4 信用評価損益率

今さらという感じもするが信用評価損益率について調べてみる。

信用評価損益率とは信用取引で買っている投資家の損益率を表す指標。信用取引で買っている人は利益が出たものから売却していくため損益率は基本的にマイナス圏(-3%~-9%)で推移する。一般に-3%を超えると相場の天井に近く、-20%を下回ると相場の底に近いと言われている。

過去7年で損益率が-20%に達したのは2012年6月と2016年6月になるが、その後株価は大きく上昇している。一方で-3%を超えたのは2013年1月と4月と2014年1月になるが、その後株価はいったん下落しているものの持ち直している。*この時は+5%まで上昇している。

チャートから判断すると信用評価損益率は相場の天井を見るより相場の底を見るのに有効なように見える。

過去、損益率が-20%に達しているのはだいたい3,4年に1回のペースなので、次回の底は2019年か2020年ころにくるのかもしれない。ただしリーマンショック級の大暴落がきた場合は、損益率が-40%程度まで下落する可能性はある。

直近では、1月12日に4年ぶりの水準である-3.63%まで上昇している。日本株はここでいったん天井を打ったのかもしれない。

参考:第20回「信用評価損益率について」
   信用評価損益率とは?

天井シグナル5 個人投資家の売買動向

『金持ち父さん 貧乏父さん』の著者であるロバート・キヨサキ氏によれば、上昇相場の最終局面には個人投資家が株や投資信託を買いまくるという。しかし今のところそういった兆候は見られない。個人投資家は2015年は5兆円、2016年は3兆1千億円、2017年は5兆8千億円を売り越している。大天井はもう少し上にあるのかもしれない。

また『ウォールストリートジャーナル式 経済指標の読み方のルール』によると「個人投資家は本来動くべき方向とは逆のほうに向かって動いている場合が多いので、正反対の動きに出ればいい」とあるので、今は買い時なのかもしれない。

補足になるが、2015年から2017年で日本株の最大の買い手は日銀になる。2015年は3兆円、2016年は6兆円、2017年は6兆円を買い越している。そして日本の潜在成長率は0%台になる。今回の個人投資家の売り越しはあながち間違いとは言い切れないのかもしれない。

天井シグナル6 機関投資家の現金比率

メリルリンチによると世界の機関投資家の現金保有比率が4.5%を下回ると相場は天井をつけるという。2018年1月の現金保有比率は5年ぶりの水準である4.4%まで下落しており、メリルリンチのステラテジストは「3月末までに株式のポジションはピークを迎える」といっている。

なかなか使えそうな指標だが、この指標の問題点は一般人がこの指標が載っているメリルリンチの「グローバル機関投資家調査レポート」を見れないこと。

米、適温相場終了

先月「米金利上昇の影響」の項で、米国の実質長期金利が1%上昇するとダウには割高感が出て25%(6600ドル)下落する可能性があると書いた。

先月から実質長期金利は0.4%上昇しており、上記の式に当てはめると2600ドル下落することになる。実際の市場では2800ドル下落しているので、ほぼ計算通り動いていることになる。

では今後の長期金利はどのように推移していくのだろうか。

長期金利にはファンダメンタル的にもテクニカル的にも強い上昇圧力がかかっているように見える。

米国は大型減税と大型インフラ投資により景気が上振れしそうであり、一方で財政赤字が拡大して米国債の需給は悪化しそうである。この両面から長期金利に強い上昇圧力がかかる。加えてFRBの国債売り出しや、国防費増も需給のマイナス要因になる。

チャートでは長期の移動平均線を短期と中期の移動平均線が上抜いているため上昇圧力が強い。月足のチャートではダブルボトムを形成しそうであり、月足の一目均衡表では雲を上抜けしているので心理的な抵抗帯もなくなっている。
<5年チャート>

<10年チャート>

ではこのまま長期金利が急上昇していくのかと言えば、そういうわけでもないように思う。インフレの上昇が長期で続くとは思えないし、金余り環境も当分続きそうだから。ゴールドマンサックスは2018年末の長期金利を3%と予測しているが、そのあたりで落ち着くのではないかと思う。

ただ米国の金利は上昇基調に入ったようなので、米株が以前のようにガンガン上がっていくような状況は終わったように思う。

「米欧利上げの年、株高に」

日経ヴェリタス(1月21日)の記事によると、過去のパターンでは米国が利上げをして、その後欧州が利上げを開始した年には、日本株は平均で3~4割上昇しているという。これは金融緩和をしている日本が相対的に優位になるためだという。

欧州の利上げは2018年9月以降から2019年頃になりそうなので、日経平均3万円超えはそのあたりになるように思う。

また今日付の日経新聞には「世界の金利の上昇局面では日本株は真っ先に上昇しやすい」とある。その理由は金利が上昇する景気拡大期に入ると、輸出企業が牽引する日本株のパフォーマンスが向上するためだという。金利差拡大による円安も輸出企業の業績の追い風になるという。
参考:「米2年債は日本株の鏡?」

月1の売買チェック

■買い
・朝日ネット
業績とチャートは今が底で、今後は両方とも上がっていきそうだったため購入。来期以降の業績は増収増益基調になり、チャートは長期の移動平均線を短期と中期の移動平均線が上抜いているので上昇圧力が強い。

<5年チャート>

■売り
朝日ネットを買うために鈴茂器工(+105%)と技研製作所(+59%)を全売却。

月1の保有株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律関連のことなら弁護士ドットコム
先日の決算は順調だったが、今後は成長がやや鈍化しそうなので今後3年の売上高成長率は年率35%→30%にダウン。チャートは問題なし。今年の予想平均株価は1900円(変動率±30%)

■朝日ネット
基本シナリオ:IOT需要を捉えて業績拡大
去年から今年にかけてプロバイダー事業で通信環境改善の設備投資をしているが、通信コストがどの程度上昇しているのかまだわからないため来期の業績はやや不透明。先ほど出た決算を見たが今期は下方修正が入りそう。今後3年の予想売上高成長率は年率7%程度、EPS成長率は年率20%程度。今年の予想平均株価は650円(変動率30%)

■ペプチドリーム
基本シナリオ:ペプチド創薬で新領域を開拓
ファンダメンタルとチャートは問題なし。今後3年の売上高成長率は年率35%程度。今年の予想平均株価は4600円(変動率±35%)

■東武住販
基本シナリオ:景気回復で中古再生住宅の販売が好調に。支店を増やして売上拡大。
ファンダメンタルとチャートは問題なし。今後3年の売上高成長率は年率15%程度。今年の予想平均株価1700円(変動率±30%)

■厳選ジャパン(投資信託)
基本シナリオ:ビッグチェンジ銘柄投資でテンバガー達成
純資産額がふくれてきてしまった。1月には13億円程度だったが足下では20億円程度になっている。この投信は「20数銘柄に集中投資」という制約があるので、純資産額がふくれてしまうと小型株に投資ができずパフォーマンスが落ちてしまう。このまま純資産額が膨らみ続けたら解約しようかなと思う。予想基準価格上昇率は30%程度。今年の予想平均価格14500円(変動率±20%)

■和田興産
基本シナリオ:景気回復でマンション販売が好調に
増資で株価は下がってしまったが基本シナリオに変化なし。今後3年の売上高成長率は年率5%程度。今年の予想平均株価は1250円だったが、株式が希薄化した分ダウンして1150円(変動率±30%)。

■スパークス
基本シナリオ:株式市場が盛り上がり、投信を手がけるスパークスの株価も上昇
すべては市場環境次第の銘柄。中長期では問題ないと思うので当面放置。先日の決算は非常に良かったがやはり400円のところにある戻り売りに押し返されてしまった。2018年の予想平均株価は390円(変動率±40%)
<3年チャート>

■今後の戦略
バブルの最終局面では割安株が上がりやすいようなので、割安株で良さそうなのがあれば買っていく。

月1の市場環境チェック

株式市場への影響が大きい金利、金融政策、企業業績を重点的にチェックしていく。

■ファンダメンタル
<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2017年度が2.0%で、2018年度が2.2%。
・欧州は2017年度が1.4%で2018年度が1.5%。2019年が1.6%。
・日本は2017年度が0.7%で、2018年度が0.9%。
→問題なし。ただ米欧のインフレは一時的に加速しそう。

<金利>
・米国の2018年末の短期金利は2.25%~2.5%、長期金利は3%程度。2019年末の短期金利は3.0%~3.5%、長期金利は3.5%程度。
・日本の短期金利と長期金利はともに2018年末も2019年末も0%台。
・中国の現在の短期金利は3.7%、長期金利は3.9%。長期金利は1年前よりも1.0%上がっている。
→問題なし。ただ米金利はしばらく乱高下しそう。

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%。リーマンショック時のピークである160%から減少し、足下では横ばい傾向。ただし個人債務残高に限ればリーマン前を超えている。
・日本の民間債務残高はGDP比150%。1990年頃のピーク220%から減少し、足下では横ばい傾向。
・中国の民間債務残高はGDP比200%で現在も上昇中。日本のバブル期のピーク220%に近づきつつある。
→問題あり。アメリカでは消費がピークアウトしつつあり、中国の債務は危険水準。

<金融政策>
・米国はすでに引き締めに転じているが速度は穏やか。
・日本は金融緩和を継続。
・欧州は量的緩和を2018年9月まで延長。利上げは早くても18年9月以降。インフレ率は2%に達していないので引き締めは穏やかなものになりそう。
・中国は金利を徐々に引き上げている。
・世界の主要中銀による量的緩和は2017年3月に過去最高の20兆円/月に達しているが、2018年末には6兆円/月まで縮小し、2019年半ばにはマイナスへ転じる。
→問題あり。米欧は引き締め速度を上げそう。世界の量的緩和はピークアウトしている。

<経済成長率>
・世界の2017年のGDP成長率は2.7%、2018年は3.1%、2019年は3.0%と良好。
・米国の2017年のGDP成長率は2.2%、2018年は2.5%、2019年は2.2%と良好。
・欧州の2017年のGDP成長率は2.2%、2018年は2.35、2019年は2.0%と良好。
・日本の2017年のGDP成長率は1.5%、2018年は1.3%、2019年は0.8%とまずまず。
現在、世界同時成長が起きており、このような状態は通常2,3年続くという。ただしこのような世界同時成長は景気サイクルの終盤に見られる特徴的な現象とも言われている。
世界同時成長は海外で6割を稼ぐ日本企業には追い風になる。
→問題なし

<EPS成長率>
・世界株式の2017年の予想EPS上昇率は26%、2018年は11%、2019年も11%と良好。
・アメリカの2017年の予想EPS上昇率は15%超で、2018年は20%(うち減税効果分が8%)。
・日本株式の2017年の予想EPS上昇率は15%超で、2018年は10%程度。
→問題なし

<政治>
・日本の政治は安定。
・海外の政治は不安定。2018年秋にアメリカで中間選挙があるが共和党の1党体制が崩れる可能性がある。
・北朝鮮や中東に地政学的リスク。
→問題なし

■テクニカル
・チャート
今回の下落で移動平均線との乖離率が小さくなり、過熱感が解消してきた。

<日経平均の5年チャート> チャート上の底値は2万円

<NYダウの5年チャート> 長期の移動平均線との乖離率はまだ高く過熱感は解消されていない。このまま2万ドルあたりまで下落しても不思議ではない。

・ディストリビューションデー
日経平均 8日
ダウ 5日
ナスダック 6日
→問題あり。調整は今後数ヶ月続きそう。

・トレードインディケーター
危険度 11月43% →12月62% →1月69% →2月74%
参考:eワラントのトレードインディケーター

・騰落レシオ
日経平均 80
ダウ 83
ナスダック ?

・信用評価損益率
-4.47%

■まとめ
日本株は米株に振り回され目先調整しそうだが中期的には問題なし。

日本株の底値はチャートでは2万円になり、ファンダメンタルズでは22000円になる。
*22000円は 来期の日経平均予想EPS1650円 × 過去5年の最低PER13.5倍 で求めた。
今は押し目買いのタイミングのように思う。 

■今回のバブルについて
過去のバブルは主にレバレッジ(負債をテコにした投資)により形成されているが、今回のバブルはレバレッジというよりも、中央銀行による通貨の大量供給や、新興国の経済成長による運用残高の増加によって底上げされた側面が強いので、バブルが崩壊しても(債務圧縮&景気後退局面に入っても)下落は限定的になると思う。過去のバブル崩壊では60%程度下落しているが、今回は35~40%程度ですむように思う。