2018年9月7日金曜日

売買チェック

■売り
・シンクロフードを6割売却 損益0%
基本シナリオ「飲食店向けの最強プラットフォーマーに」が間違っていたから。
プラットフォーム企業が長期的な繁栄を享受する上で最も重要なことは市場を独占することになるが、シンクロフードにはそれが無理だとわかった。求人広告ではインディードが、物件情報ではアットホームがすでに市場を独占していた。また2つのアナリストレポートにはシンクロフードの価格競争力は圧倒的とあったが、実際には価格の面でもインディードが無料と圧倒的だった。今後はアナリストレポートに書かれていることを鵜呑みにせず、業績の要所になる部分は裏をとっていきたい。

そもそもシンクロフードが巨大市場で勝負していることがまず問題だった。巨大市場には実態がつかめないほど多くの競合がひしめいており、長期的にはじり貧に陥っていく確率が高い。プラットフォーム企業はまず小さな市場を創出し、そこを独占して、そこからビジネスを大きくしていかねばならないという基本を見落としていた。

ただこのように問題は見つかったが、これでシンクロフードが投資不適格になったとも思っていない。このような競争環境は今にはじまったものではなく、これまでずっと続いてきたものである。にもかかわらずシンクロフードの業績は絶好超である。ここから経営手腕が高くビジネスモデルが強いことがわかる。今後も”総合”プラットフォーム企業として着実に成長していける可能性も残されているように思う。

・弁護士ドットコムを一部売却 損益+300%
インフォマートが電子契約市場に参入してきたから。
7月にインフォマートが参入してきたときは、導入コストや使い勝手の面でクラウドサインに分があると思ったが、インフォマートにはすでに23万社以上ものネットワークがあり、他サービスとの親和性が高そうなため手強い競合になるかもしれないと思った。

■買い
・朝日ネットを買い戻し
先月シンクロフードに乗り換えるために売ったが、それが間違いだと思ったから。

・日経レバETFを新規買い
ファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも上がりそうだから。

・FXでドルを買い増し
トルコショックで押し目がきたと思ったから。

持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
クラウドサインは競合にインフォマートが現れて不透明感がでてきた。ただここのスタッフは極めて優秀そうなので杞憂に終わりそうでもある。株価はクラウドサインの契約数激増を好感して最高値を更新したが、バブりはじめた感じもある。今後3年の売上高成長率は年率30%程度。今年の予想平均株価は不明。もしも株価が4500円(時価総額1000億円)を越えたらさらに売却していく予定。

■シンクロフード
基本シナリオ:飲食店の運営をITで変革・サポートし総合プラットフォーマーとして盤石な地位を築く
シンクロフードが市場を独占できないことはわかったが、筋肉質な経営で着実に成長していってほしい。チャートは25日線と75日線でゴールデンクロスを形成しそうだが、株価の上に一目均衡表(週足)の雲があるので上値は重そう。今後3年の予想売上高成長率は年率30%程度。今年の予想平均株価は1000円(変動率±35%)。
業績に最もインパクトのある求人広告掲載数を記録していく。関東 2238(2179)  関西 611(611)  東海 337(302)  九州 111(135)  北海道・東北 183(195) 総計 3480(3422)
*( )内は先月の数
市場独占型の求人プラットフォーマー・インディードの掲載数も記録していく。東京都の飲食店 75284 大阪府の飲食店 27758

■ペプチドリーム
基本シナリオ:ペプチド創薬で最強のプラットフォーマーに
臨床試験でフェーズ2以降に進んでいるものはまだ1本もないので、業績の伸びはしばらく穏やかなものになりそう。ただ研究の進捗は概ね順調なようなので大きな問題はない。今後3年の売上高成長率は年率30%程度。今年の予想平均株価は4600円(変動率±35%)。

■朝日ネット
基本シナリオ:ストックビジネスで地味に成長&株主還元
EPS的に上場来高値突破は来期以降になりそうだが、業績とチャートが底堅く、配当がそこそこあるのがよい。8月に発表されたファイバーゲートとの業務提携は、今後地味に効いてきそう。今後3年の予想売上高成長率は年率6%程度でEPS成長率は15%程度。今年の予想平均株価は550円(変動率±15%)。

■厳選ジャパン(投資信託)
基本シナリオ:ビッグチェンジ銘柄投資でテンバガー達成
この投信を保有してから、短中期的には「プロでもけっこう外す」という当たり前のことに気づいた。ただ基準価額は最高値を突破してきたので長期的な視点は健在のよう。今年の予想基準価額上昇率は30%程度で予想平均価額14000円(変動率±30%)。

■日経レバETF
基本シナリオ:ファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも中期的に上昇
企業業績は上振れ気味であり、日銀のバックアップもあるので下値不安は小さい。ただ短期的には貿易摩擦などの不透明感があるので上がりにくそう。チャートは三角保ち合いを形成しているが、出来高(パワー)不足で23000円の壁はしばらく越えにくそう。日経平均の今後1年の予想平均株価は25000円(変動率±15%)。

■パーク24
基本シナリオ:最強のカーシェアプラットフォーマーに。海外駐車場事業の効率化で利益拡大。
第3四半期決算で日本事業が順調なことは確認できたが、海外事業の赤字は印象が悪い。海外事業は日本で培ったノウハウを導入して改善を図っているようだが、のれん代の償却などもあり、黒字化まではしばらくかかりそう。チャートは決算後に長い上ひげをつけたので、上値は重そう。今後3年の売上高成長率は5%で利益成長率は10%程度。今年の予想平均株価は3200円(変動率20%)。

■FXでドル買い
基本シナリオ:中期ではドル高、長期では円高
円高、ドル高の要因を列記し、各々の中期的なインパクトを★で表していく。
<円高要因>
・日本よりも米国のほうがインフレ率が慢性的に高いので購買力平価は円高傾向。★★
・米国の保護貿易政策により米国のインフレが加速。
・日本の経常収支は黒字が続いている。★★★
・日本企業による海外企業の巨額買収により経常黒字がさらに拡大する。★
・米国の財政赤字拡大により米国の経常収支がさらに悪化。★
・米国は完全雇用下における保護貿易政策により貿易赤字が拡大する。★
 *完全雇用下では米国内で生産を増やすことができず、輸入するしかない。
・日本は対外純資産を世界で最も保有している。
・日銀の金融緩和が限界に近づきつつある。★
・トランプさんの口先介入。
・米国景気の減速と利上げの鈍化。
・世界が景気後退期に入る。
・貿易戦争や新興国不安によるリスクオフ。★★
・金融危機や戦争、大災害によるリスクオフ。
<ドル高要因>
・日本より米国のほうが経済に勢いがある。★★★
・米国の金融政策は引き締め傾向で金利が高い。★★★
・米国のリパトリ減税により米国にドルが環流している。★★★
・米国の保護主義により米国の貿易赤字が減少するという思惑が生じる。★
・日本企業による海外企業の巨額買収。★★★
・不透明感が払拭された後のリスクオン。
→短期的には貿易戦争などのリスクオフにより円高圧力が強くなることもありそうだが、中期的には円高要因の★が11個、ドル高要因の★が13個でドル高圧力が強そう。

■コンテック
基本シナリオ:ダイフクとファナック向けのエッジコンピューティング機器で業績拡大
第一四半期決算の売上高成長率は前期比0%で物足りなさはあるが、自動化投資は拡大していきそうなので、とりあえずしばらく様子見。今後3年の売上高成長率は5%で利益成長率は10%程度。今年の予想平均株価は2400円(変動率20%)。

■今後の戦略
売り込まれた優良株があれば買っていく。

市場環境チェック

株式市場への影響が大きい金利、金融政策、企業業績などをチェックしていく。

■ファンダメンタルズ
<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2018年度が2.4%。
・欧州の予想インフレ率は2018年度が1.5%。
・日本の予想インフレ率は2018年度が0.9%。
→米欧のインフレ速度は高まりつつあるが、今のところ特に問題なし。
→貿易戦争が激化したら米国のインフレは加速する。

<金利>
・米国の短期金利は2.63%で長期金利は2.88%。
・日本の短期金利は-0.11%で長期金利は0.10%。
→貿易戦争が激化したらインフレの加速に伴い米国の政策金利は上昇する。トランプ大統領はFRBに「金利を上げるな」と牽制しているが、金利を上げざるを得なくなるような保護貿易政策を推進している(笑)。
→貿易戦争が沈静化すれば、需給の緩みから米長期金利は上昇する可能性が高い。18年の米国債発行額は110兆円超になる。
→米国の短期金利が長期金利を上回ると景気後退に陥るといわれるが、長短金利差が0.25%とせばまってきた。9月にFRBが利上げをしたら逆転する可能性もある。
→米国の実質長期金利(名目長期金利-インフレ率)が潜在成長率を上回ると景気後退に陥るといわれるが、足下の実質長期金利は0.5%で、潜在成長率は1.8%。
→米国の実質長期金利が下がってきているので、相対的に米国株に割安感が出てきた。

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・日本の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・中国の民間債務残高はGDP比210%まで上昇しているが、足下では横ばい傾向。日本のバブル期のピークは220%になる。
・新興国の民間債務はここ10年の金融緩和で膨らんでおりGDP比140%。現在も微増傾向。
・過去10年で債務を最も膨らませたのは各国政府と中央銀行になる。
→米企業債務額は過去最高水準に達しているが、利益がそれを上回っているので特に問題なさそう。
→中国の債務は危険水準に達しているが、習政権は経済の筆頭課題に金融危機封じ込めを据えているので、それほど心配しなくてもよさそう。ただ貿易戦争などで経済成長が大きく下振れすれば一気に債務圧縮局面に入る可能性がある。
→新興国は米利上げや原油高などで通貨安・高インフレ・高金利になり、債務圧縮局面に入りそうだが比較的穏やかなものになりそう。
→今回の債務拡大の主役は政府・中銀なので、極端な債務圧縮は起こらなさそう。

<金融政策>
・米国は引き締めに転じている。
・日本は金融緩和を継続しているが限界に近づきつつある。
・欧州は量的緩和を2018年12月に終了し、利上げは19年の夏以降になる。
・世界の量的緩和は2017年3月にピークをつけ、その後は減少傾向にある。2019年には明確なマイナスへと転じる。
→やや問題あり。引き締め速度は穏やかだが全体的に引き締め傾向。これまでの経済拡大は金融緩和が原動力であったため、マイナス転換によりすべてが逆回転する可能性がある。
*米国はトランプ大統領の財政拡大策により次の景気後退期には金融政策しか残されていない。そのためFRBは粛々と金融引き締めを進めていくしかない。
*日本は次の景気後退期に、ヘリマネなどの禁じ手をのぞけば、金融面でも財政面でも打つ手がない。

<経済成長率>
・世界の2018年のGDP成長率は3.9%、2019年も3.9%と良好。
・米国の2018年のGDP成長率は2.9%、2019年は2.7%と良好。
・ユーロ圏の2018年のGDP成長率は2.2%、2019年は1.9%と良好。
・日本の2018年のGDP成長率は1.0%、2019年は0.9%とまずまず。
現在、世界同時成長が起きており、このような状態は通常2,3年続くという。ただしこのような世界同時成長は景気サイクルの終盤に見られる特徴的な現象とも言われている。
世界同時成長は海外で6割を稼ぐ日本企業には追い風になる。
*半面、海外の景気後退期は日本企業にとって強い向かい風になる。このような経済構造に円高効果が加わり、日本株は米国株の1.5倍くらい下落する。
*アメリカの財政支出の効果は2019年に切れるので20年以降に景気後退リスクがある。
→中期的には特に問題なし

<EPS成長率>
・世界株式の2018年の予想EPS上昇率は11%、2019年も11%。
・米国の2018年の予想EPS上昇率はは20%(うち減税効果分が8%)。
・日本株式の2018年の予想EPS上昇率は10%。2019年も10%。

<政治>
・日本は安定。ただトランプ大統領当選を的中させた占い師Love Me Doことラブちゃんが、8月の大スポで「安倍首相はいま急激に運がおちている。そして2019年に大ピンチを迎える」といっているのでアベノミクスが頓挫する可能性もある(笑)。
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。米中貿易戦争に至っては中国の譲歩で一旦落ち着くと思ったが、中国は米国が貿易戦争で大きな不利益を被ることをわかっているので、長期戦に持ち込むのではないかと思いはじめた。中国が政策金利を引き下げたのもおそらく長期戦に備えるため。

<その他の景気後退シグナル>
・過去の景気後退期はすべて米国の需給ギャップがプラスに転じた後に始まっているが今は0%程度?。
・コモディティ、米国債、米国株、ドルの4資産の値動きで、年間収益が高い順位が、コモディティ、米国債の順番になるとその翌年に景気後退が起きると言われているが、今年は今のところコモディティ、米国株の順。
・景気拡大期の終盤は、金余りと鈍化した成長率を引き上げるため巨大M&Aが盛んになるといわれているが、今がまさにその状態。
・世界景気の先行指標である銅価格が、ピークアウトするかどうかの分岐点にある。
<COMEX 銅先物の5年チャート>


■テクニカル
・チャート
→特に問題なし

・ディストリビューションデー
日経平均 2日
NYダウ 5日
ナスダック 5日
→特に問題なし

・騰落レシオ
日経平均 85
NYダウ 110
ナスダック ?
→特に問題なし

・信用評価損益率
ー9.73%
→特に問題なし

eワラントのトレーディングインディケーター
<サムモデル>「中立」
危険度:11月43% →12月62% →1月69% →2月74% →3月52% →4月52% →5月36% →6月43% →7月39% →8月44% →9月61%

<オノダモデル>「売り」
2018/1/18に「売り」に転換。2018/2/20に「買い」に転換 。2018/5/18に「売り」に転換 。2018/7/17に「買い」に転換。2018/08/20に「売り」に転換。

■まとめ
中期的には特に問題なし。短期的には貿易戦争などで市場が荒れそうな雰囲気もあるが、日銀のサポートラインが日経平均の20000~21500円あたりにありそうなので、日本株の下げ余地は限定的になりそう。

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

現時点の予想では2020年頃に景気後退期に入るとみている。ただ今回の景気拡大期は低成長・低金利の中で浅く長いものだったので、景気後退期も浅く長いものになりそう。

2019年の半ば頃になったら徐々に株式とドルを売って、米国債を買っていく。

ただしそれよりも前に
・日経平均が3万円
・1ドルが120円
・米長期金利が4%
このいずれかになった場合は、その時点でポートフォリオをシフトしていく。

景気後退期に入り円が80円くらいまで上昇したら、米国債を売って、米国株や日本株、ドルを買っていく。

メルカリはアメリカで成功するか

日本でフリマ事業を展開するメルカリはアメリカでも同事業を展開しようとしているが、アメリカではすでにeBayという洗練されたプラットフォーマーが市場を独占しているので、成功する可能性はほとんどない。

メルカリが日本で成功したのは、ひとえにヤフーの体たらくが招いたものにすぎないように思う。メルカリが登場する前のヤフオクのシステムはとにかく煩雑で、住所や送料などの基本情報さえもいちいち入力し、やりとりしなければならなかった。一度ヤフオクとeBayでほぼ同時期に落札したことがあったが、米国で落札したeBayのほうが先に届いたこともあった。もしヤフーがeBayを手本にしてシステムを改善したり、フリマ事業をはじめていたりしたら、メルカリの参入余地はなかったように思う。

メルカリは日本の成功体験に味をしめ、海外に進出することになったわけだが、上記のように事情が大きく異なるので同じようにいく可能性はほとんどない。経営陣はとっくにここらへんのことに気づいているはずだが、すでに”ゴール“を達成しているようなので撤退が遅れる可能性がある。

やや話はそれるが、メルカリには上場ゴールのような節があった。メルカリは上場時に行使できるストックオプションが全株式の10%以上あり、6月の上場時には6月締めの決算にもかかわらず伸び率の高い売上予想だけ開示して、赤字のEPSは非開示にしている。これは資金調達のみならずストックオプションを売り抜けるために株価をつりあげようとしているように見える。メルカリは口では長期目線の経営をするといっているが、この行動を見る限り極めて短期目線にみえる。少なくとも公正さには欠ける。このようなスタンスではアメリカはもとより長期的に成長していくのも難しいように思う。

長短金利が逆転するとなぜ景気後退が起こるのか

米国の短期金利が長期金利を上回ると、その1-2年後に景気が後退するといわれているが、どうして長短金利が逆転すると景気後退が起こるのか。

一般には、長期金利が経済の“実力”で、その“実力”を短期金利が上回ってしまうと引き締めすぎになり景気を冷やしてしまうためだといわれている。また金融機関にとっては短期の調達金利と長期の貸出金利の差である利ざやが減るので貸し出しが抑制的になり、これもまた景気の下押し圧力になるという。

長短金利の逆転は過去50年すべての景気後退に先行してきたようなので、今回も長短金利が逆転すれば景気後退が起こる確率は高い。長短金利の逆転はもう少し先になるかもしれないが、過去よりもだいぶ低い水準で転換しそうなので、今回の景気後退は比較的穏やかなものになるかもしれない。

参考:「米利上げ、適温相場の寿命は縮んだか」 2017/12/18日経
        「円安シナリオに落とし穴 米長短金利、来年に逆転も 」2017/12/27日経