2018年3月9日金曜日

最強のビジネスモデルとは

ペイパルやパランティアを創業したピーター・ティール氏によると、最強のビジネスモデルとは市場独占型だという。競争は「負け犬」のするもので、独占こそが長期的な繁栄を享受できるという。

ピーター・ティール氏が語る市場を独占する方法は以下のようになる。

1,小さな市場を狙う
ビジネススクールでは「小さな市場はそれだけ価値が低いのだから成功できない」と教えるが、最初から巨大市場を独占しようとするのは大きな間違い。巨大市場にはものすごい数の競合が存在するため生き残るだけで精一杯になる。最初は小さな市場の独占を狙い、そこを足がかりとして市場を拡大していくのがよい。

(例)Amazonは最初はネットで本だけを売っていた。Facebookの最初のユーザーはハーバード大学の生徒だけだった。

2,皆と同じことはしない
一般に「幸せな家庭は皆同じような理由で幸せだが、不幸せな家庭はそれぞれの家庭ごとに別々の理由がある」といわれるが、ビジネスではこの逆になる。幸せな会社はそれぞれが違うことをやっているから幸せなのであり、不幸せな会社は皆と同じことをやって失敗するから不幸せになる。

(例)アップルはそれまで存在しなかった包括的に優れたデザインのiPhoneを開発した。

3,2番手よりも10倍は優れていなければならない
他社が真似できないような技術力があるのも独占企業の必須条件になる。Amazonの技術は必ずしも高いとはいえないが、他の書店よりも10倍の書籍をそろえ、オンラインで効率的にそれを販売するビジネスを確立した。Googleは検索に初めてページランク機能を搭載し他社よりも圧倒的にすぐれた検索結果を生み出せるようにした。

4,ネットワーク効果がある
ネットワーク効果とは利用者の数が増えるにつれ、より利便性が高まっていくというもの。例えば皆がフェイスブックを使っている場合、自分もフェイスブックを使うのが理にかなうようになり、その結果利用者がどんどん増えていく。

5,基盤を強化していく
小さな市場を独占したら投資やM&Aによって基盤をより強固にしていく。そうすればブランドやネットワーク効果がさらに強くなり、参入障壁が高くなっていく。GoogleはYouTube、フェイスブックはインスタグラム、Amazonはホールセールなどを買収し基盤を強化している。

いったん市場を独占してしまえば、競合や目先の利益を気にする必要がなくなり、長期目線の経営でますます繁栄していくことができる。

参考:「独占せよ」 “伝説の起業家”ピーター・ティールが成功するビジネスの核心を語る
   『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』(ピーター・ティール、NHK出版)

プラットフォーマー

独占型ビジネスモデルの代表例がプラットフォーム企業になる。米国の時価総額トップ5(アップル、アルファベット、Amazon、マイクロソフト、フェイスブック)はすべてプラットフォーム企業になる。

プラットフォームとは基盤という意味で、ビジネスにおいては取引やコミュニケーションの「場」を提供するという意味合いがある。プラットフォームビジネスでは利用者が増えるほど「場」の価値は高まり、従来では成立しなかったようなニッチ分野の取引市場も、インターネットの普及により成立するようになってきた。

プラットフォーム企業はいったん市場を独占してしまえば、他の会社が後からその市場に参入することはほぼ不可能になり、「場」を提供しているだけのため独占禁止法にも抵触しにくい。利用者にとっても「場所」は1つのほうが利便性が高いため独占は許容されやすい。

独占型プラットフォーム企業の他の良い点は、リピーターが多いため収益にストック性があり、また競合がいないため高収益を保持することができることになる。そして独占している市場が成長市場であれば市場の成長と連動して業績を拡大させることができる。時価総額が50兆円を超えるAmazonやアルファベットでも、いまだに年率20%以上の成長を続けることができるのは一重にプラットフォーム企業であるため。

プラットフォーム企業に株式投資をすることにおいては、会社の方向性を見通しやすく、競合を調べる必要がないというメリットもある。私はプラットフォーム企業である弁護士ドットコムとペプチドリームに投資をしているが、持っていて非常に安心感がある。

投資における問題点は、強いビジネスモデルのため人気が高く、通常の投資尺度ではどうしても割高に見えてしまうこと。


以下、日本のプラットフォーム企業をざっと調べていく。

・エムスリー。医師向けの医薬品情報サイトを運営し、医薬情報担当官(MR)を配置しなくても医師に情報を提供できるプラットフォームを運営。治験や人材のプラットフォームも手がける。事業を海外に水平展開しているため伸びしろはまだまだある。
売上高成長率20% 営業利益率30% PER76倍 時価総額1兆4600億円


・アイスタイル。化粧品口コミのプラットフォームを運営。口コミサイトの成長は頭打ち
になりつつあるが、掲載された口コミの情報を使ってリアル店舗を展開し新たな成長ステージに入りつつある。
売上高成長率40% 営業利益率8% PER98倍 時価総額1130億円

・カカクコム。商品比較サイトのプラットフォームを運営。成長の伸びは穏やかになっているが売上や利益率は高水準を維持している。株価は保ち合いの状態だが、今後は配当UP、もしくはアイスタイルのようなさらなる成長が期待できる。
売上高成長率8% 営業利益率40% PER24倍 時価総額3930億円

・クックパッド。料理レシピのプラットフォームを運営。いったんは市場を独占していたが、経営者が変わって経営方針が変わり、動画付きレシピを提供する競合企業が現れたため業績は低下傾向。
前社長がいるときは株価が高かったが、それはオウチーノやみんなのウェディングなどのプラットフォーム企業を買収して、プラットフォーム帝国を築こうとしていたからのように思う。
売上高成長率0% 営業利益率30% PER18倍 時価総額620億円


・じげん。様々なプラットフォーム事業を展開・買収し、プラットフォーム帝国を築こうとしている。問題は市場を独占しているプラットフォーム事業が見当たらないこと。
売上高成長率30% 営業利益率30% PER66倍 時価総額1290億円


・夢の街創造委員会。出前の注文プラットフォームを運営。成長率や利益率はそこそこだがPERは175倍まで達している。決算の伸びはいまいちでも株価はそれほど落ちない。
売上高成長率10% 営業利益率15% PER175倍 時価総額840億円

・シンクロフーズ。飲食店物件仲介のプラットフォームを運営。まだ市場を独占したわけではないが、コンサル出身のやり手経営陣がその牙城を築きつつある。
売上高成長率30% 営業利益率40% PER128倍 時価総額420億円

・ゴルフダイジェストオンライン。ゴルフ関連の総合プラットフォームを運営。ゴルフは斜陽産業だが業績は堅調。
売上高成長率10% 営業利益率7% PER20倍 時価総額175億円

・IBJ。婚活関連で最大のプラットフォーム。日本は人口減なため市場としては厳しそうな印象だが、出生率の低下という解決すべき社会的課題があるので、今後も伸びていきそう。
売上高成長率10% 営業利益率15% PER38倍 時価総額450億円

・インフォマート。企業間取引のプラットフォーム。最近社長が交代して株価が息を吹き返した。
売上高成長率15% 営業利益率25% PER81倍 時価総額1360億円

・鎌倉新書。葬儀関連のプラットフォームを運営。
売上高成長率15% 営業利益率25% PER96倍 時価総額250億円

・ビューティガレージ。美容室向け商材のプラットフォームを運営。
売上高成長率20% 営業利益率6% PER32倍 時価総額130億円

・マークラインズ。車部品情報のプラットフォーム。
売上高成長率15% 営業利益率30% PER48倍 時価総額260億円

参考:株式投資のためのプラットフォームビジネス概論

有望なベンチャーとは

ピーター・ティールはファウンダーズファンドというベンチャーキャピタルも運営しており、彼が投資するベンチャー企業はもちろん将来市場を独占する可能性のある会社になるが、それ以外にもベンチャーキャピタリストならではの視点があったので簡単にまとめていく。

1.創業チームのチームワークがよい
「創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップは後で直せない」という法則があるため創業時のチームは極めて重要になる。創業メンバーは起業前から経験を共有していないと一緒にうまくやっていけない可能性が高くなる。

2.初期の社員は似通った考えを持つメンバー
スタートアップは経営資源が限られており、素早く効率的に動かないと生き残れないため、同じ考え方の人が集まっている方がうまくいく。

3.フルタイムの社員でないといけない
一時的に業務を手助けするコンサルタントやパートタイマーは短期目線になるのでいほうがいい。また仲間が毎日同じ場所で働いていないと不一致が生まれやすくなるので遠隔地勤務もよくない。

4.CEOの給料は少ないほういい
CEOへの高額な現金報酬は現状維持のインセンティブになるだけで、積極的に問題を表に出して解決していく動機にならない。逆に現金報酬の少ない経営者は企業全体の価値を上げることに力を注ぐようになる。

5.社員に高額の現金報酬を与えない
社員についても同じことがいえる。ボーナスやインセンティブ報酬は将来に価値を生み出そうというインセンティブにはならず社員を短期思考にさせてしまう。

米パランティア

パランティアはピーター・ティールらが創業した会社だが、少し変わった会社だったので調べてみた。

この会社はもともとペイパルでカードの不正利用や不審なお金の動きを感知するシステムを開発していたが、他の分野でも応用が利くということで2004年にパランティアとして創業。

この会社が作ったソフトは多様なデータを大量に集め、それを分析して探しているものを見つけたり、パターンを見いだしたりするというもの。諜報活動や個人を対象にしたスパイ活動に最適なもので、ビン・ラディンの居所を突き止めるのに一役買ったという。現在はこの技術をベースにしたコンサルティング事業を手がけており、当初の顧客はCIAやNSAなどの諜報機関だったが、今ではコカコーラ、JPモルガン、富士通など多岐にわたる。

企業でコンサルティングする場合は、パランティアが開発したデータマイニング(掘り出し)ソフトを使って、企業内にある散らばった様々な情報(アンケート、エクセル表、文書、写真、キーボードの操作、電子メール、チャット、HP閲覧履歴、クレジットカード履歴、その人の郵便履歴や自動車での出勤ルートなど)を目的に応じて収集し、相関性を加味しながらデータを結合、分析、パターン化し、結論を出していく。この作業は今まで戦略コンサルが行ってきたものだが、パランティアではこれを驚くほど短時間でできるという。

ピーター・ティールは2005年に原油価格が50ドル前後だったときに今後5年間で100ドル超になる予想し、また不動産バブルがはじけると予想している。2016年の米大統領選挙では選挙直前の9月にトランプ大統領に多額の寄付をしており、つい先日にはVIX指数に賭けて大勝ちしている。パランティアの技術はこれまでとらえきれなかった世の中の動きをデータで浮き彫りにする力があるとされおり、これらの予想はその情報分析を用いて導き出したものかもしれない。

この会社は近いうちに上場するといわれているが現在の推定時価総額は2兆円になる。

参考:(アクセスできなくなっている)

バブル最終局面の特徴

シティ顧問の藤田勉氏によると「歴史的に上昇相場の最終局面では株価は過度に上昇する傾向がある。現在のようにマーケットに黄色信号がともっているときは株価がまだまだあがる可能性がある」

「1980年以降、順イールドをともなう金利上昇で株価の上昇相場が大きく崩れた例はない。短期的には株式市場は大きな調整をするかもしれないが、そこは買いのチャンスになる。ただし最終局面では株価が乱高下するので、今から買い増すのはリスクの割にリターンがそれほど見込めないから気をつけたがいい」
*順イールドとは長期金利が短期金利より高いこと。

藤田氏の見立てでは日経平均株価は2020年に3万円に到達し、その後急落するとのこと。「現時点では相場を転換させる直接的なきっかけは見極めにくく、バブルの原因は崩壊してからでないとわからない。過去のバブル崩壊の前にはこれといった大事件があったわけではなく、突如として相場が転換し、気がついたときには長期下落相場に突入していた」

「現時点での最大のリスク要因は新興国経済の過熱になる。新興国の資源消費が旺盛で、エネルギー価格に大きな上昇圧力がかかり、これが世界的なインフレ率上昇と、それに伴う急速な金融引き締めをもたらす」

「過去の日経平均のバブル崩壊後の下落率は1989-1992が63%、2000-2003が64%、2007-2009が62%で、今回もいったん崩れれば半値以下になる可能性がある」

「ただ株価が永遠に上がり続けることはないのと同様に、株価が永遠に下がり続けることもないので、下落が落ち着いたら株を仕込むべきだ」とのこと。

参考:「世界でバブルの兆候 成長銘柄に長期投資を」2017/12/31ヴェリタス
   「高値波乱 今こそ海外ETF」2018/2/18ヴェリタス

ハイプサイクル銘柄 テラスカイ

2016年に続いて2017年もクラウドコンピューティングが日本のハイプサイクルの幻滅期にきている。
クラウドの雄であるテラスカイのチャートが落ち着いた感じだったので調べてみた。

■どんな会社か
企業のクラウド導入を支援する事業とクラウド関連のソフト開発を手がけている。日本のクラウド創世記からクラウドに取り組んできたリーディングカンパニー。

■成長ストーリー
ハイプサイクルにあるようにクラウドは今後本格的な普及拡大期に入る。それに伴いクラウド導入支援で経験豊富なテラスカイの業績も拡大期に入る。

クラウドシステムを扱うベンダーにはAmazon、セールスフォース、マイクロソフト、Googleなどいろいろあるが、テラスカイはそれらを連携させるソフトも開発しており、そのソフトはデファクトスタンダード(事実上の標準)となっている。また2017年にはクラウドで初のグループウェアソフトも開発しており採用は順調に拡大しているという。これらのソフト販売もクラウド普及とともに拡大していくように思う。

現在はクラウド導入支援事業が業績を牽引する形だが、長期的にはソフト事業も大きな柱になっていく可能性が高い。営業利益率はクラウド導入支援が15%でソフト事業は30%になる。

■参入障壁は高いか
低い。すでに競争は激化している。しかしテラスカイの主要ターゲットは技術的なハードルの高い大企業となるのでそれほど問題はない。

■強み
・現在クラウドのOSで最もシェアが高いのはセールスフォースになるが、テラスカイはセールスフォース認定の高スキルエンジニアの数が日本でトップになる。
・先行者利益がある。早い段階からクラウドをやっているため経験豊富で、お客も初めてやるクラウドはよく知っている人にお願いしたいということで依頼がくる。それでさらに経験値を高めて次のお客様につながっていくという好循環ができている。

■問題点
・人手不足。ここ3年は仕事を断っている状態が続いているという。
・今期は人員を200人程度増やす予定だというが、予定通りに採用できるかわからない。
・採用できたとしても戦力になるまで時間とコストがかかる。
・テラスカイは2019年2月期も投資を優先するとのことなので来期の営業利益率も5%程度になる。営業利益率が10%を超えるのは2020年2月期からになる。
・収益のうち7割はフロー型でストック型は3割程度。

■社長の経歴など
新潟出身。東京理科大で情報科学を学び日本IBMに入社し研究所に配属される。しかし田舎がイヤということで営業職に転じる。13年間勤務し2000年にはトップセールス賞を受賞。37歳で退社し日本でのセールスフォースの立ち上げに営業の責任者として参加。その後ザヘッドの社長を経て、そのときのメンバーと共にテラスカイを立ち上げる。社長が解決しようとしている課題は、日本のIT企業のブラックな労働環境を浄化すること。クラウドはシステム開発の期間が従来よりも圧倒的に短いのでブラックな環境を浄化する力があるという。社長はテラスカイを「エンジニアのパラダイスにしたい」と言っている。

■チャート
<1年チャート> 上昇トレンド


<3年チャート> 累積売買高的には今が底 一目均衡表では売り雲を抜けている。


■結論
競合が多く、ビジネスモデルもそれほど強くないが、クラウドがハイプサイクルの幻滅期に来ており、社長は洞察に優れているタイプに見える。なんとなくだが面白い展開になりそうなので投資してみる。

月1の売買チェック

■買い
テラスカイ。理由は前項で書いたとおり。

■売り
朝日ネット(損益率-3%)を1部売却。前回の決算で売上・利益ともに予想を下回っていたから。

月1の保有株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律関連のことなら弁護士ドットコム
2月の社長の話によるとクラウドサインの黒字化は2,3年後とのことなので、今後3年の売上高成長率は年率30%→27%にダウン。しかしリーガルテックに最も力を入れていくということなので長期的見通しは変わらず。チャートは問題なし。ビジネスモデルの強度は★★★★(リーガルテック分野が不透明)。今年の予想平均株価は1900円(変動率±30%)

■ペプチドリーム
基本シナリオ:ペプチド創薬で新領域を開拓
特に問題なし。今後3年の売上高成長率は年率35%程度。ビジネスモデルの強度は★★★★★。今年の予想平均株価は4600円(変動率±35%)

■朝日ネット
基本シナリオ:IOT需要を捉えて業績拡大
前回の決算は売上と利益の伸びが予想以下だったため、今後の見通しは不透明に。今後3年の予想売上高成長率は年率6%程度でEPS成長率は年率15%程度。ビジネスモデルの強度は★★★。今年の予想平均株価は650円→550円(変動率±15%)にダウン。

■東武住販
基本シナリオ:人口減のため中古再生住宅はメガトレンドに。支店を増やして売上拡大。
特に問題なし。今後3年の売上高成長率は年率15%程度。ビジネスモデルの強度は★★★。今年の予想平均株価1700円(変動率±30%)

■厳選ジャパン(投資信託)
基本シナリオ:ビッグチェンジ銘柄投資でテンバガー達成
特に問題なし。予想基準価格上昇率は30%程度。今年の予想平均価格14500円(変動率±20%)

■テラスカイ
基本シナリオ:クラウドシフトの波にのって業績拡大
特に問題なし。今後3年の売上高成長率は年率40%程度。利益成長率は15%程度。ビジネスモデルの強度は★★★。今年の予想平均株価は5500円(変動率30%)。

■和田興産
基本シナリオ:景気回復でマンション販売が好調に
増資失敗、チャート終了、自律反発なしという結果に(笑)。今回の教訓は「長期的な見通しのよくない株はアクシデントが起きたらすぐに売り」ということ。チャートはとりあえず底打ちした感じ。適当なところで売却していく。ビジネスモデルの強度は★★。今年の予想平均株価は900円(±10%)

■スパークス
基本シナリオ:株式市場が盛り上がり、投信を手がけるスパークスの株価も上昇
特に問題なし。ビジネスモデルの強度は★★★。今年の予想平均株価は390円(変動率±40%)

■今後の戦略
和田興産と朝日ネットは売却していく。テラスカイはぽつぽつ買っていく。

月1の市場環境チェック

株式市場への影響が大きい金利、金融政策、企業業績を重点的にチェックしていく。

■ファンダメンタルズ
<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2017年度が2.1%で、2018年度が2.2%。
・欧州は2017年度が1.4%で2018年度が1.5%。2019年が1.6%。
・日本は2017年度が0.7%で、2018年度が0.9%。
→問題なし。

<金利>
・米国の現在の短期金利は1.5%で長期金利は2.87%。2018年末の予想短期金利は2.25%~2.5%、長期金利は3%程度。2019年末の短期金利は3.0%~3.5%、長期金利は3.5%程度。
・日本の短期金利と長期金利はともに2018年末も2019年末も0%台。
・中国の現在の短期金利は2.9%、長期金利は3.9%。
→問題なし。米長期金利は上がり始めているが、日本や欧州の金利は低いままなので3%程度で落ち着きそう。

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%。リーマンショック時のピークである160%から減少し、足下では横ばい傾向。ただし個人債務残高に限ればリーマン前を超えている。
・日本の民間債務残高はGDP比150%。1990年頃のピーク220%から減少し、足下では横ばい傾向。
・中国の民間債務残高はGDP比200%で現在も上昇中。日本のバブル期のピーク220%に近づきつつある。
→問題あり。中国の債務は高水準。

<金融政策>
・米国はすでに引き締めに転じているが速度は穏やか。
・日本は金融緩和を継続。
・欧州は量的緩和を2018年9月まで延長。利上げは早くても18年9月以降。インフレ率が2%に達していないので引き締めは穏やかなものになりそう。
・中国は金利を徐々に引き上げている。
世界の主要中銀による量的緩和は2017年3月にピークの20兆円/月をつけ、その後は減少傾向。2019年にはマイナスへ転じる。
→問題あり。全体的に引き締め傾向。

<経済成長率>
・世界の2017年のGDP成長率は2.7%、2018年は3.1%、2019年は3.0%と良好。
・米国の2017年のGDP成長率は2.2%、2018年は2.5%、2019年は2.2%と良好。
・欧州の2017年のGDP成長率は2.2%、2018年は2.35、2019年は2.0%と良好。
・日本の2017年のGDP成長率は1.5%、2018年は1.3%、2019年は0.8%とまずまず。
現在、世界同時成長が起きており、このような状態は通常2,3年続くという。ただしこのような世界同時成長は景気サイクルの終盤に見られる特徴的な現象とも言われている。
世界同時成長は海外で6割を稼ぐ日本企業には追い風になる。
→問題なし

<EPS成長率>
・世界株式の2017年の予想EPS上昇率は26%、2018年は11%、2019年も11%と良好。
・アメリカの2017年の予想EPS上昇率は15%超で、2018年は20%(うち減税効果分が8%)。
・日本株式の2017年の予想EPS上昇率は15%超で、2018年は10%程度。
→少し問題あり。もしも為替が100~105円くらいで落ち着くと日本の今年のEPS成長率は0%になる。

<政治>
・日本の政治は安定。
・海外の政治は不安定。
→問題なし

■テクニカル
・チャート
日経平均は2月14日に2万950円の一番底をつけ、3月5日に同等の2万930円の二番底をつけているため下げ止まった感じ。ダウはデッドクロスになりそうだが、特に問題なし。

・ディストリビューションデー
日経平均 先月は8日 →今月は5日
ダウ 先月は5日 →今月は5日
ナスダック 先月は6日 →今月は2日
→問題なし。落ち着きつつある。

・トレードインディケーター
危険度 11月43% →12月62% →1月69% →2月74% →3月52%
参考:eワラントのトレードインディケーター

・騰落レシオ
日経平均 84
ダウ 103
ナスダック ?

・信用評価損益率
ー8.86%

■まとめ
特に問題なし。日本株は為替が円安基調に戻ったらまた上がっていきそう。

為替は短期的には毛抜き底がでており、長期的には分厚い抵抗帯があるので、テクニカル的にはこれ以上下がりにくい。貿易戦争が始まらなければ持ち直すと思う。
<3ヶ月チャート>
<10年チャート>