2017年5月26日金曜日

株は割安?

今の株価は割高ともいわれているが、金融資産の中では相対的に見ると割安らしい。中でも割高なのは債券で、マイナス金利の債券に至っては投資した金額がマイナスになってしまう。そのため低金利が続く限りは株高は許容されるという。バフェットが「米国株は現在の金利水準では割安」といっていたが、このあたりのことを言っていたのかなと思う。

では低金利はいつまで続くのか。

そもそも低金利なのは社会が豊かなためらしい。金利がゼロの社会では、投資してもリターンはゼロということで、それ以上の投資を必要としない社会を意味するという。ある試算によると日本で年収1000万以上の人は中世のルイ16世並みの暮らしができるという。

FRBは足下の経済環境が良いため短期金利を上げはじめているが、長期金利の方は長期的な成長が見込めないためかほとんど変化がない。成熟社会では成長を追求するシステム自体がもう古いのかもしれない。

低金利が続くもう一つの理由は技術革命といわれている。現在、IT(情報技術)やロボットが世界を驚異的なスピードで変えており、コストをそれほどかけずに生産性を劇的に改善させることができる。スマホを例にとっても、スマホ1台にカメラや時計、音楽プレーヤーなどさまざまな機能が内蔵されており、関連する産業は衰退していっている。

このような環境では低金利(低成長)は当面続きそうに思える。

過去の統計によると、短期金利が上がり長期金利が変わらない状況では株高になりやすいという。

参考:「ロシア疑惑 米株は崩れず」日経ヴェリタス2017/05/21
   「トランプ大統領の「敗北」」日経マネー2017年7月号

実は業績相場だった?

2012年にアベノミクスが始まって以降、株高が続いている。株高は金融緩和によるものとばかりと思っていたが実はそれだけではなかったらしい。2012年以降、日経平均は予想EPSとほぼ連動しているという。

EPSの推移を見ていくと2008年には950円で、それが金融危機後の2009年には0円近辺まで下落している。そしてそこから2015年の1250円まで右肩上がりで上昇し、そこでピークをつけてからいったん調整して、足下の2017年5月に跳ね上がって過去最高の1395円まで上昇している。

2015年に株価21000円をつけたときのPERは16.5倍で、今のPERは14.1倍である。このPERの差は金融緩和策の弾切れや為替動向によるものかもしれないが、もし過去2年の平均PERである15倍まで上昇すれば株価は20900円になる。


ちなみに2015年のEPS1250円の時の為替は1ドル121円で、現在のEPS1395円の為替は1ドル108円になる。収益力が強化されているのがわかる。

EPSをチャートにすると、2015年のピーク以降に三角保ち合いを形成しており、足下では急激に上ぶれている。テクニカル的にはEPSは当面強含む可能性が高い。もし業績に連動していく相場であるなら、20000円は通過点でしかなさそうだ。

参考:「2万1000円超へ上昇も」日経ヴェリタス2017/05/21

吹き上げそうなチャート発見 FPG →△

キンドルアンリミテッドで過去の日経マネー(2016年10月号)を読んでいて見つけた銘柄。これは個人投資家・今亀庵さんの保有銘柄(当時)で、氏によると今後は強化された相続増税への対策という新しい需要を取り込むビジネスが狙い目だという。

FPGにおいては相続増税対策の収益は全体の数%しかないが、チャートがよさそうなので調べてみた。

■チャートで目をひいところ
・長期チャートが非常に底堅い。
・大きな三角保ち合いを形成している。
・長期の移動平均線はゴールデンクロスを形成しており、短期でも形成しそう。

<10年チャート・月足の一目均衡表> 長期の戻り売り圧力はほとんどなく、株価は下がりにくい。

<5年チャート・累積売買高> 累積売買高では今が底になる。大きな三角保ち合いを形成しており、移動平均線は2年ぶりのゴールデンクロスを形成している。

<1年チャート> 200日線を75日線が上抜いているので上昇圧力は強い。近いうちに25日線と75日線のゴールデンクロスを形成する確率は高い。

「チャート=凝縮されたファンダメンタルズ」という観点で見れば、これだけでかなり有望なのがわかる。一応、会社についても調べていく。

■どんな会社か
中小企業の課税繰り延べニーズに特化したニッチなビジネスを手がけるニッチトップ企業。

課税繰り延べメリットのある日本型オペレーティングリース商品が売上の9割を占める。
日本型オペレーティングリース商品とは、航空会社や海運会社など輸送関連会社の設備投資ニーズと日本の中小企業の課税繰り延べニーズを結びつけたもの。FPGはこの間に入り、リース商品の組成、販売、管理を行い、その対価として手数料を得ている。

日本型は欧米型オペレーティングリース商品と違い、利回りを追求していないためリース料を低く設定することができ、そのためリース案件の組成において欧米企業より優位に立つことができる。また世界の航空会社や海運会社のリースニーズは旺盛で、今後長期間にわたりリース商材が不足することはないという。

中小企業はリース商品を買うことで、投資額に比べて資産価値を大きくでき、減価償却による利益の圧縮効果を得ることができる。一般に、リース商品は一時的に利益が膨らんだ場合や、数年先に大型投資を予定している場合に利益を平準化させるために利用される。
*課税の繰り延べが目的であり、節税とは異なる。

設備投資がないため配当性向は40%(利回り3.6%)と高い。

■成長ストーリー
中小企業の業績拡大と課税繰り延べリース商品の認知度向上に伴いFPGの業績が拡大していく、というのが基本ストーリー。

中小企業の業績は、前項「実は業績相場だった?」で触れたように、今後しばらく拡大していきそうなので、旺盛な需要が期待できる。

認知度については、東証一部に昇格し知名度や信用力が向上しており、また提携する金融機関数(110件)や会計事務所数(3100件)が順調に増えているため、認知度は徐々に高まっている。

業績は、第2四半期が終わった時点で売上、利益ともに過去最高を更新しているが、予定している組成金額の進捗率はまだ26%(前期比-42%)にすぎない。残りの74%は下期にクリアできるとのことだが、もし今の収益ペースでそれらをこなせば業績は大幅に上振れする。
追記 2017/05/28
残りの74%を下期に組成するわけだが、組成した商品は1年以内に売りさばけばいいわけで、下期の業績にダイレクトに反映するわけではない。また上期の業績は前期の売れ残りを売っていたというわけで、もしかしたら今、組成が遅れているのは前期の供給が過剰だからかもしれない。

■参入障壁(競争力)は高いか
日本型オペレーティングリースを手がけるのは十数社あるが、専業はFPGと野村ハブコックアンドブラウン、ジャパンインベストメントアドバイザーの3社になる。FPGは市場シェア3割を占める最大手になる。

この事業は組成ノウハウを持ち、投資家から広く出資を募ることができなければ成り立たないので過去25年間で新規参入はほとんどないという。銀行系リース会社はこのようなビジネスに不慣れで事業の拡大には消極的という。

*FPGのシェアは2015年の32%から2016年には29%に落ちている。2014年にマザーズに上場したジャパンインベストメントアドバイザーが急速に成長しているためかもしれない。利益率の高いビジネスなので今後さらに競争が激化していく可能性はある。

■問題点
・最大のリスクは借り手側の破綻になる。もしそうなるとリース料が入ってこなくなり、投資家に損失が発生してしまう。しかし事業開始以来、借り手側のリース料不支払いや倒産はない。リース先はルフトハンザやエールフランスなど一流の会社になる。

・航空会社や海運会社の業績の影響を受ける。地政学リスクもある。

・税制改正によって商品設計の見直しが必要になる。しかしFPGの説明によると迅速に柔軟に対処できるとのこと。

・商品在庫は商品組成から1年以内に売り切る必要がある。1年を超えた場合は、投資家はリース期間中で最も大きい初年度の損金を決算に取り入れることができなくなり、商品の価値が劣化してしまう。しかし事業開始以来、1年を超えて売れ残ったことはないという。FPG曰く「自社の最大の強みは確実に売りさばく力」とのこと。

・この会社のお金の流れがよくわからない。キャッシュフロー計算書を読んでも独自の用語がたくさん出てきてよく理解できない。

■結論
チャートもファンダメンタルズも大きな問題はなさそうなので1040円で購入。資金の10数%を投資。

追記2017/05/29
FPGがニッチな分野を切り開いたわけだが、参入障壁はそれほど高くなさそうなことがわかってきた。金融商品の組成進捗率の低さからは供給過剰気味なことがうかがえ不透明感が出てきた。売却していく。

2017年5月19日金曜日

「定期的に間違いを繰り返しなさい」

これは『マーケットの魔術師』で最も印象に残った言葉。
ブルース・コフナーは師匠のマイケル・マーカスにこのように言われ、「間違うことは悪いことではない。ベストの判断を下して間違え、またベストの判断を下して間違える。そして3回目のベストの判断を下すと、その後に自分のお金が倍になることだと思う」と解釈している。
*コフナーは現在5500億円を保有する資産家

しかしこれは「ベストを尽くして間違える」という意味ではなく、「意図的に間違えろ」という意味で言っているように見える。米投資家のミネルヴィニが「うまくいった時期のあとに「もうわかった」と思ったとき最大の損失をする。利益は不注意につながり、不注意は災難を招く。成功が続くと度を超えた願望を持ってしまう」と言っているように、うまくいっている時期のあとは調子に乗って大きなミスを犯しやすい。うまくいっている時に気を引き締めるために、わざと負けろと言っているのではないかと思う。

脳科学的にも「わざと負ける」ことは有用らしい。そもそも人類の歴史は競争の歴史であり誰もが心のどこかに「勝ちたい」という気持ちをもっているため、わざと負けるという思考回路が働かなくなっているという。わざと負けるようにすると脳の使われていなかった部分が刺激され、自分の視点を変えたり、新たな考え方を生み出すことにつながるという。

今年に入ってから投資パフォーマンスが非常に良い。ここで調子に乗らないためにも、また新たな視点を得るためにも「わざと負ける投資」をやってみようと思う。

わざと負ける投資

どれほどの効果があるか半信半疑だが、前項で触れた「わざと負ける投資」をやってみる。

「負ける投資法」はどのようにすればいいかと考えていて今ぱっと思いついたのは
・今やっている投資法と逆の投資法
・新高値投資法と逆の新安値投資法
・ストップ高投資法と逆のストップ安投資法
の3つになる。この中で新高値投資法やストップ高投資法はやったことがないので、経験豊富な「今やっている投資法」と逆の投資法をやってみる。

今やってる投資法のチェックポイントは
・売り圧力が弱い
・成長ストーリーがある
・参入障壁(競争力)が高い
・割安感がある
・地合いが良い
になる。

この反対は
・売り圧力が強い
・衰退ストーリーがある
・参入障壁が低い
・割高感がある
・地合いが悪い
になる。
*今回は地合いは無視する。

まずは衰退していく産業を探していくと百貨店、時計、製紙、印刷、カメラあたりが見つかる。この中から売り圧力の強い銘柄を探していくと、三越伊勢丹、セイコー、イムラ封筒、リコー、ニコンあたりがピックアップできる。業績を見ても皆、減収・減益基調で問題ない。

この中で配当が低いのは三越伊勢丹とニコンになり、チャートを見てより上がりにくそうなのは三越伊勢丹になるのでここをターゲットにする。

高級衣料品を扱う百貨店は典型的な斜陽産業であり、その上三越伊勢丹は従業員が1万2千人いて平均給与が830万円と人件費がかなり重い。生き残り策は規模縮小や統廃合くらいしかなく、業績が拡大していくストーリーを描きにくい。会社は所有する不動産の再開発やネット販売に力を入れていくとは言っているが、効果が出るとしてもそれはかなり先になる。

今買ってもよいのだが、足下の株価は決算後の失望売りでかなり売り込まれているため自律反発する確率が高い。1200円くらいまで反発したときに逆押し目買いを入れていこうと思う。

「給与明細は見るな」さんま

明石家さんまによると昔の芸人は給与明細を見るなと言われていたという。理由は収入を見て少ないと気分が落ち込むし、ありすぎると油断してしまうからとのこと。どちらにしてもお金の影響を受けて芸が小さくなってしまうという。

投資においても同じことが言えると思う。含み損を見るとストレスが生じてしまい、含み益を見ると油断が生まれてしまう。そしてそれらが投資判断のノイズとなり、小さなトレードしかできなくなってしまう。

私は「知識を得ることが最良のストック型収益」という境地に達して以来、損益は見ないようにしていたが、上記のような意味でもやはり損益は見ない方がいいと思った。

2017年5月12日金曜日

中小型株15 アイチコーポレーション △

「グローバルラップ日本小型株式ファンド」の月報で見つけた銘柄。

■どんな会社か
高所作業車のメーカーで国内シェアは約6割。海外売上高比率は5%程度。高所作業車の売上高規模は世界3位。東証1部上場で時価総額は630億円。

■成長ストーリーは
「インフラ投資のグローバルトレンドに乗って成長していく」というのが基本ストーリー。

日本での業績はほぼ頭打ち。ただし高所作業車を作る工場のIT化や生産設備の合理化を進めており利益率は上昇傾向にある。現時点で営業利益率は12%程度だが、近いうちに15%を超えていきそう。

今後の牽引役は海外になる。特にアジア圏ではインフラ投資が活発になりはじめたばかりで開拓余地は大きい。

つい先日の決算で今期の業績予想が発表されたが売上、利益ともに微増となっている。しかし会社の業績予想は保守的な傾向があり上振れ余地がある。2014年の会社予想は売上が480億円で営業利益が33億円だったが、実績は490億円と42億円に上振れている。2015年も530億円と50億円が、570億円と63億円に上振れており、2016年も600億円と69億円が、620億円と78億円へ上振れている。特に営業利益の上振れが著しい。
2017年も過去のパターンでいくと630億円と80億円が、650億円と92億円あたりまで上振れそう。

■参入障壁(競争力)は高いか
日本ではシェアが60%あり、そこからさらに上昇傾向にあるので盤石といえる。
海外はほぼ未開拓なのでよくわからない。ただ日本のトップ企業であり、トヨタ系列でもあるので、競争力は高そう。

■問題点
海外に高所作業車の研修拠点がないこと。今後は海外が主戦場になっていくわけだが、日本のような万全のサポート体制がないと普及が順調に進まない可能性がある。

アイチコーポレーションを唯一分析しているいちよし経済研究所は5月1日に通期業績予想を92億円から会社計画並みの80億円に、来期を98億円から72億円に引き下げている。今期の下期に国内での高所作業車の需要が減少するとのこと。
しかし会社の投資キャッシュフローをみると、15年が30億、16年が50億、17年が80億と増えており、今後業績が右肩下がりになっていくような会社のお金の使い方ではない。今後も業績はじわりと拡大していくのではないかと思う。

■戻り売り圧力はあるか
短期的にはあるが長期的にはそれほどない。
               <1年チャート>

<3年チャート>

■チャートはどうか
短期的には会社の保守的な業績予想や、いちよしのレーティングにより大きく売られているため上がりにくそう。
しかし中長期では上昇トレンドに乗っており、業績が拡大しているにも関わらず保ち合いが2年ほど続いているので、今後業績が上振れしたら株価も素直に上振れしそう。

■結論
生産性向上のための投資を増やしており、またインフラ投資のグローバルトレンドに乗ろうとしているので成長余地はまだある。指標面で割高感はなく、テクニカル的にも底堅いので790円で購入。上記の2点が順調に進み成長株と認識されれば、今年度中に1300円くらいまではいくのではないかと思う。

しかしながら現在保有している他の銘柄と比べると今後の見通しや成長率の面で若干見劣りするので、保有している銘柄に問題が生じた場合にシフトしていこうと思う。

追記2017/05/16
主力の国内向けは下期にピークアウトしそうで、海外展開はやや不透明。当面上値は重そうなので買値で売却。

ペプドリ 細胞膜を突破できるか

ペプチドリームが抱える最大の問題点は環状ペプチドが細胞膜を透過できるかどうかになる。経口薬にするには細胞膜を透過できなければならず、長期的に見るとこの問題を解決することが極めて重要になる。

医薬品になる化合物の法則にリピンスキーの法則(改訂版)というものがある。製薬会社はこれに準じて候補化合物の選定を行っている。この法則の中に「分子量は1000以下」という条件がある。環状ペプチドの平均分子量は1500であり、この条件から逸脱している。

昨年開かれた武田科学財団のシンポジウムでも中分子医薬が細胞膜に跳ね返されているという報告が多かったという。リピンスキーの法則の改訂版を作ったKihlberg教授も環状ペプチドは過剰な注目を浴びていると言っている。

素人的には、分子量1000までしか通らない細胞膜に、分子量1500の環状ペプチドを通すのは物理的に無理があるのではないかと思っていた。しかしながら調べてみると打開策もありそうなので、それらをメモっていく。

方法1 ペプチドを環状化する
ペプチドを環状化するとPSA(分子極性表面積)が増して細胞膜透過性が向上するという。免疫抑制剤としてすでに製品化されているシクロスポリンという環状ペプチドは分子量が1200あるにもかかわらず細胞膜を透過している。昨年12月にはノバルティスが経口可能な環状ペプチドを作ったとの報がペプチドリームのIRから出されている。

方法2 分子量1000以下の環状ペプチドを作る

方法3 胎盤形成時の細胞融合に関わるシスシチンの部分ペプチドを使う
これを使えば従来の細胞膜透過性ペプチドよりも細胞質への送達効率を数十倍向上させられるという。抗体や核酸のような高分子化合物でも細胞内に取り込めるという。
これは細胞膜を透過させるとうよりも、細胞に吸収させるという方法。

方法4 オリゴ核酸誘導体を使う
*詳細は不明

方法5 ???
*発見次第メモっていく。

参考 リピンスキーの呪縛を中分子薬が打開する秘策 2016年1月25日
   慶大、タンパク質の細胞質送達を促進するヒト由来ペプチドを発見
   日経産業新聞 2017年4月13日

ストップ高投資法

2009年からの6年間で2000万円を100倍の20億円に増やした個人投資家・今亀庵さんの投資法。資産100倍は、信用取引をフル活用し、まずリートで資産を10倍にし、そこから小型株に投資しさらに10倍にして達成している。

この小型株投資のときに併用したのがストップ高投資法になる。これはストップ高した銘柄を分析して、業績が3倍から5倍伸びそうな株を購入していくというもの。当てがはずれても制限値幅内におさまるためリスクはそれほど高くなく、成功率は2割程度でも大勝ちできるという。

この投資法は勢いのある銘柄を見つける新高値投資法に近い。

■そんな今亀庵さんの今後の相場観
「・・今回の下落で3億円も資産が減りましたが、私はまだまだ強気です。最低でもあと5年は上昇相場が続くと見ているため、今回は保有株数の調整に留めました」
*2015年インタビュー時のもの

参考:7年で資産は115倍 「ストップ高」の伸びしろを読む 2016/8/5
   退職後のたった6年で資産を100倍に!2015/11/14

2017年5月5日金曜日

敏腕ファンドマネージャー4 藤村忠弘

鈴茂器工やエフオンなどの購入のきっかけとなった「超小型株投信」のファンドマネージャー。この人のことは知っていたがスパークスの最高投資責任者(CIO)が超小型株を運用していたとは少し意外。

■運用する投信
・スパークス超小型株式ファンド。過去1年間のリターンは38%。15年9月の設定来のリターンは42%。
・グローバル・ラップ日本小型株式ファンド。過去1年間のリターンは20%。1998年の設定来の累積リターンは約300%
・スパークス・スモールキャップファンド。過去1年間のリターンは16%。2000年の設定来の累積リターンは約300%。

■投資手法 中小型成長株投資
まずは常識的な目で良い会社を見極める。その会社の商品や購入したいか、サービスを利用したいか、またはその会社で働きたいかなどを消費者や会社員の目線で考える。社会にとって必要な企業は短期的に損を出したとしても長期的には必ずプラスに転じる。

次に経営者と会う。厳しい状況になってもあきらめずにがんばり抜くだけの情熱や執念を持っているかを確かめる。市場環境に左右されずに変わらぬ運用方針を貫くというのは難しいが、それをするには経営者に対する信頼が必要になる。優秀な経営者が着実なマネジメントをしていれば市場の要因に業績が一時的に左右されることがあっても長い目で見れば決して揺らぐことはない。

最後に長期的に成長できるビジネスモデルかどうかを見極める。他者と差別化できる強みがあるか、高い参入障壁があるかなどをチェックする。

こうした手法で大きく値上がりするのは3割程度だが十分収益はあがる。

機械的な損切りはせず、ビジネスモデルにほころびが生じたり、経営者が突然交代したりといった場合に売却を検討する。株価下落の要因が為替の変動など外部環境の変化によるものなら買い増しも検討する。

■その他 藤村氏が説く注意事項
テンバガー狙いは危険。企業価値はそれほど急激に変化しない。
注目度の高い旬の銘柄は割高なものが多く、注目が薄れれば急落することも多い。長期にわたって成長する株を買ったほうがいい。

参考:日経マネー6月号
   決してブレないスパークスの安定感

敏腕ファンドマネージャー5 塩住秀夫

ペプドリファンにはお馴染みのファンドマネージャー。

■運用するファンド
レッグメイソンIFジャパンエクイティファンド。2016年のリターンは29%、2015年のリターンは49%。1996年の設定来のリターンは約400%。約800億円の運用資産を日本の内需成長株38社に集中投資。

■投資手法 中型成長株投資
株式投資で重視するのは企業の成長性と経営者の資質。

まずは日本の社会や経済構造を観察して、どのような業種が日本経済の新たな牽引役になるのかを考える。今ならデフレや高齢化、人口減少がトレンドになる。そのトレンドの恩恵を受ける業種は医療、介護、ネット関連であり、その業種の中でトップ企業として生き残っていきそうな銘柄を探していく。

銘柄選びのポイントは業績伸張の裏づけのあるもの。増収率と増益率が過去2年は少なくとも2割以上あり、今後2年も2割以上が見込めるものがいい。売上の伸びが重要で、これがともなわないと4~5年後に大きな企業には育たない。

高値つかみを避けるためPEGレシオ(PERをEPS成長率で割ったもの)が1倍を超える銘柄は基本的に買わない。これは株価が企業の成長を上回っていることを意味するため。ただし独占的な地位を築いて高成長を続けている企業の場合はPEGレシオでは株価の適正水準を判定できないので使わない。

良さそうな銘柄が見つかったら経営者と会う。いかに嘘を言わないか、素直な人であるかを重視する。投資で最も難しいのは成長株を持ち続けることだが、我慢して持ち続けられるかどうかは、企業の成長と経営者の手腕に強い信頼を置けるか否かにかかっている。そのためにも企業について調べると同時に、経営者と何度も話して信頼できる人かどうかを確かめていく。

投資する銘柄が決まれば集中投資していく。株で成功するにはこれが大事。2,3銘柄は大きく損を出すが、大幅に値上がりする銘柄が補ってくれる。

売却は経営者の発言内容が変わったり、将来の利益成長に対する確信がなくなったりしたときに行う。

■その他ポイント
集中投資は短期的に浮き沈みが激しくなりやすく、苦しい時が続く時がある。重要なのは経験で、半年や1年間苦労を重ね、数年後に利益を上げるという成功体験を得られれば、長期投資のスタンスを維持できるようになる。

■長期投資に転向した理由
証券マン時代に上司から年初のポートフォリオをそのまま持っていたらどんな成績だったか計算するよう助言され、それを確認したらポートフォリオに変更を加えない方がパフォーマンスが良かったと気づいたため。

■失敗談
「リーマン・ショック前に新興不動産会社を保有していたが、それらが軒並み破綻した。急成長に目を奪われ判断を誤った。現在不動産会社は1社も保有していない」

■今後の相場観
日本株の先行きには楽観的。日本株はまだ上げ相場の第2段階とみている。悲観的な意見がある限り上げ相場は続く。日銀の2%の物価上昇率目標が達成間近と言われ始める2018~19年が第3段階になる。2020年にインフレ目標を達成するとみんな楽観的になり、そこが相場の終わりになる。

参考:日経マネー6月号
   ブルームバーグ「72歳ファンドマネージャー 内需一徹 設定来400%」
   日経2016/9/27「日本株で安定利益 個人は成長株の長期保有を」
   日経2017/4/10「投資家の金言「度胸は成功の母」」

中国の債務

中国の債務については「経済は機会のように動く」のところでもあっさり書いたが、先日の日経ヴェリタスに詳しく書かれていたので簡単にメモっておく。

・中国の債務は官民合計でGDP比300%に接近しており、債務残高の増加に歯止めがかかっていない。中国の政治経済の安定性は秋の党大会まで維持されるとの見方が大勢だが、その後にリスクが表面化する可能性がある。

・中国経済のハードランディング懸念が後退しているのは事実だが、これは資本規制の強化や過剰な投資による作為的な虚像感がある。

・不動産部門の上場企業の3分の1はデフォルトの瀬戸際にありつつも、なお借り入れを続けて存続しているゾンビ企業になる。

・バブル後の日本は過剰債務に苦しみ、貸し出しを増やした銀行の経営がゆらいだ。貸し渋りや貸しはがしによる企業の倒産が急増し、1990年後半の金融危機を誘発。債務圧縮が一段落するのに10年を要した。過剰債務の処理に手間取りデフレにも陥った。

■まとめ
中国は近いうちに債務圧縮が必要で、債務圧縮をすれば景気後退に陥る。私は以前は金融緩和をすれば景気後退は避けられると思っていたが、それをすると債務が増加してしまうのでそれもできそうにない。2017年秋の中国党大会が終わった後に中国政府が債務圧縮に動いたら、破綻企業が相次いで経済が急降下する可能性がある。

参考 ヴェリタス2017/4/30 「リスクは中国経済・日本政治に」
   グーグルニュースや日経でも検索