2024年4月1日月曜日

1月~3月の売買

 ■2月
・プラスアルファ・コンサルティング 買い増し
決算が下振れて株価は急落したが、長期で見れば買い場だと思った。もともと株価が2400円以下になったらNISAで1000株買う予定だったので、タイミング的には今かなと思った。

1000株を3日に分けて買う予定だったが、1日目に買った後に新たな問題が発覚したので、300株しか買わなかった。

保有株

保有比率の高い順に見ていく。

■プラスアルファ・コンサルティング
基本シナリオ:「タレントパレット」事業を軸に2030年に利益2~4倍

第1四半期決算は売上高が予想の下限値を下回ってきた。PAC社は上場してからこれまで3期の決算発表をしているが、過去2回の第1四半期決算では、その直近の第4四半期決算の売上高を1~2億円上回ってきた。それが今回は0.7億円下回っていた。

今回、売上の足を引っ張ったのは2022年に買収した「キミスカ」事業になる。この事業は大学生向けのダイレクトリクルーティング・マッチングサイトを営む事業になるが、この事業の売上高が前年同期比でまったく伸びていない。直近の第4四半期からは急減している。PAC社は「キミスカは売上が後半に偏る傾向がある」とは言っているが、ゼロ成長は印象が悪い。

「キミスカ」事業を運営する子会社のグローアップ社を調べてみると、社長がPAC社の副社長で、副社長がPAC社の執行役員であることがわかった。グローアップ社の創業者は買収された後、早々に辞めていた。

ダイレクトリクルーティング業界についてたいした知見もなく、人脈もない経営陣が、競争の激しい市場でうまくやっていけるのだろうか。たかだか導入社数1500程度の「タレントパレット」との相乗効果で大きく成長できると思ったのだろうか。今回売上が伸びなかったのは単なる季節要因ではなく、経営戦略に問題があった可能性がある。

2/13日経に「2024年の新卒採用の求人倍率は1.71倍だが、大企業に限ると約0.4倍になる。これは何十年も続く傾向」とある。「タレントパレット」のメインターゲットは大企業になる。大企業では1人の求人に対し、100人以上の応募が殺到することも多々あるようなので、ダイレクトリクルーティングの需要はあまりないのかもしれない。

どうして創業者(や経営陣)は辞めたのか。それは自社株を全く持っていなかったことが主因になりそうだが(株式は全て親会社に押さえられていた)、引き留める方法はいくらでもあったはず。そもそも新市場を切り開いてきた優秀な経営陣を残すのが買収の最低条件で、それなしで買収すること自体がおかしい。PAC社は人的資本経営をサポートするシステムを提供しているが、自社では人的資本を重視していないのかもしれない。

この件を見る限り、PAC社の社長は自信過剰で支配欲の強いタイプに見える。PAC社の元社員が書いた口コミには「オーナー社長が「自分の王国を作りたかったんだ」と語り・・」とあるので、社長は”スマートなビジネスパーソン”というよりも、”王様タイプ”なのかもしれない。だとすると、今後のM&Aは期待しにくくなる。
*この元社員の口コミは全体的にネガティブに偏り過ぎているので信頼性は低い。

これまでグローアップ社の買収はリクルートが米Indeedを買収したような協業型だと思っていた。米Indeedが関連企業の米Glassdoorを買収したように、グローアップ社も周辺企業を買収して、自社プラットフォームを強化していくものとばかり思っていた。しかし、実態は全く違っていた。

ミスったかなという感じ。

「キミスカ」事業は今後どうなるか。グローアップ社の買収後、1年間は順調に成長しており、業績が悪化したのは今回が初めてなので、今回だけたまたま業績が悪かったという可能性もある。ただ買収後1年間業績が伸びたのは前経営陣の戦略の影響が大きそうで、今回業績が落ち込んだのは、その影響がなくなったためではないかと思う。

PAC社は2月の決算発表時に、採用コンサル会社の買収を発表している。この会社を買収した目的は「タレントパレット」との相乗効果など、いろいろ触れられているが、真の目的は「キミスカ」事業の立て直しではないかと思う。買収したATTACK社の社長は業界に通じていて、成長志向も強そうなので、期待はできる。しかし一度成長力の落ちた会社を立て直すのは難しいのではないかと思う。

以上から、今期の「キミスカ」事業はゼロ成長を予想する。ゼロ成長の場合、PAC社の今期の予想売上高は期初予想から3億円下振れして135億円になる。


決算でもう一つ問題に感じたのが、マーケティング事業の利益率が落ちていること。第1四半期の売上高は前年同期比11%伸びているが、営業利益は2.8%しか伸びていない。通期の業績予想を見ると、営業利益は前期比で微減になっている。この市場は競争が激しいので、じり貧に陥っているもよう。ソフトウェア市場は参入障壁が低いので、ヒューマンリソース事業もいずれは似たような展開になるかもしれない。

ただ「タレントパレット」のような人事のシステムは基幹システムのようなものなので、一度導入すると乗り換えにくくなる。また「タレントパレット」が外部のリスキリングサービスや福利厚生サービスなどと連携していけば、強固なプラットフォームができるので、参入障壁はマーケティング事業より高くなりそう。

ヒューマンリソース事業が順調に成長していけるのならば、マーケティング事業の利益率はそれほど問題にならないのかもしれない。なぜならマーケティング事業の知見はヒューマンリソース事業にも生かされているから。ヒューマンリソース事業が順調に伸びていく限りは、この点はあまり気にする必要はないのかもしれない。


ただ生成AIの登場により、全事業の利益率が落ちていく可能性も出てきた。

1/18日経産業には、「生成AIを導入したERP(統合基幹業務システム)により、システム開発の流れが根本から変わる」みたいなことが書いてある。記事を要約、抜粋すると次のようになる。

「SaaS型のERPに生成AIが導入され始めた。これまでERPに蓄積したデータを活用するには、データ分析に特化したデータベース(データウェアハウス)を構築し、それらを分析するソフト(ビジネスインテリジェンス・ソフト)が必要だったが、生成AIによりそれらが不要になりつつある」

「SaaS型ERPの導入が主流になると、ERP導入プロジェクトで工数がかかるのはカスタマイズやアドオン開発といった導入時ではなく、導入後になる。ERPが新たに提供する生成AIの機能をどう使うのか、定期的に発生するバージョンアップの作業支援など、ERPの導入後に注力するビジネスモデルに変わらざるを得ないのではないだろうか」

もしこのように生成AI・ERPがソフトウェアの中心になるとしたら、PAC社のようなITベンダーの役割は従属的にならざるを得えない。加えて、生成AI・ERPを提供している独SAPなどもタレントマネジメントシステムを提供しているので、こういうところにシェアを大きく奪われる可能性もある。

PAC社がオービックのようなERP会社に買収してもらうという手もあるかもしれないが、そうなると「王国」がなくなってしまう可能性があるので、そうなる確率は低い。

ただ、生成AI・ERPに合わせて外部のITベンダーが頻繁にカスタマイズをしていくのは困難であり、生成AI・ERPと既存のシステムは共存も可能なので、この点はそれほど心配しなくてもよいのかもしれない。


ヤフー掲示板のPAC社スレッドに「うちの会社では「見える化エンジン」を生成AIで置き換えられないか検討が進んでいる」とあった。確かに生成AIには情報を分析する機能もあるので、「見える化エンジン」のようにマーケティングでも使えそう。しかし「見える化エンジン」はマーケティングのノウハウが結晶化されたソフトウェアなので、そのすべてを生成AIに置き換えるのは難しそうでもある。加えて、PAC社は「見える化エンジン」に生成AIを導入しはじめているので、競争力は保てるのではないかと思う。

3/25日経産業には「企業によるシステム内製の動きが活発化しているが、頓挫してしまうケースが多い」とある。

とはいえ、生成AIはソフトウェアの開発を容易にするので、今後システム内製の難易度が下がっていくのは間違いない。いずれは生成AIだけで「見える化エンジン」のようなシステムを作成(コピー)し、それを自社で簡単にカスタマイズできるようになるかもしれない。そうなるとPAC社のストックビジネスは崩壊する。


2/3日経に「米アルファベットのAI研究を主導する英ディープマインドの共同創設者スレイマン氏は「5~10年以内に経営するAIが誕生する」と予想している」みたいなことが書いてあった。今後、人の判断が完全に不要になる時代がくるとは思わないが、減るのは間違いない。PAC社のシステムは人の判断の精度を高めることを目的に作られているので、人が判断する頻度が減ると、システムの存在価値が薄れる可能性がある。

*余談だが、英ディープマインドのスレイマン氏は3月に米マイクロソフトに引き抜かれ、新組織「マイクロソフトAI」のCEOに就任している(3/20ロイター)。「経営するAI」はマイクロソフトから生まれるのかもしれない。


現時点で、この先PAC社の利益率が落ちていくかどうかははっきりしないが、1つ確実に言えることは、今後AIの進化により事業環境が激変していくということ。ここで生き残るには、AIをシステムに積極的に取り入れて、高速に進化していくしかなさそう。

「IT業界は技術の陳腐化が激しい」とは聞いていたが、今回のケースでそれがよくわかった。この業界の会社に投資するのはリスクが高いとわかった。

PAC社は手堅い投資先と思って集中投資をしていたが、そうではなさそうなことがわかった。今回のケースから、会社の問題は短期間の調査ですべてわかることはない、未来のことは予見しきれない、投資はこのような不確実な状況で行わなければならないので投資先は分散させないといけない、という常識的な教訓を得た。


決算ではポジティブな要素もあった。それは決算説明資料に「ヨリソル」事業の今期の予想数値が登場したこと。「ヨリソル」は”学生版「タレントパレット」”になるが、それが今期から本格始動しそうな雰囲気になってきた。資料によると、今期予想は契約50件、売上1億円、営業損失1億円になる。今期業績へのインパクトは小さそうだが、SBIレポートによると「”校務 DX”と呼ばれる公共系特需の時期と(「ヨリソル」の)展開時期が重なる」とあるので、今後の進展に期待したい。


3/4のSBIレポートに「タレントパレットの価格改定が 24/4/1 より順次行われる。基本月額費用部分で 10~14%程の値上げとなる」とあった。これにより利益率の上昇は期待できるが、タイミング的にはどうかと思った。SBIは「今回の値上げによるマイナスインパクトは皆無若しくはごく軽微なものに留まると予想」とは言っているが、第1四半期の「タレントパレット」導入件数は93件で、前年同四半期の113件から20件減っている。対して競合の「カオナビ」は導入件数を151件から162件と11件増やしている。大企業向けに限ると18件から23件に5件増えている。

「カオナビ」は低価格に強みがある。現在のような状況で「タレントパレット」を値上げをすると、競争力がさらに落ちる可能性がある。PAC社は今期の導入件数を390と予想しているが、この調子でいくとそこから下振れして360件くらいになりそう。「タレントパレット」事業でも業績が下振れる可能性が出てきた。

PAC社は2022年に新規事業の営業支援・分析系SaaS「セールス・スクエア」を立ち上げている。もし今期「タレントパレット」の導入件数が下振れしたら、このソフトウェアがうまく機能していなかったことがわかる。それを確認する意味でも、今期の導入件数には注目していきたい。


2/25日経に「SaaS型CRM(顧客管理)最大手のセールスフォースがAIに力を入れている
」とあった。セールスフォースのCRMのシェアは断トツトップで、資金力、開発力、データ量などで他を圧倒しているので、おそらく今後もさらに差を広げていく可能性が高い。3/25日経産業には、セールスフォースのCRMに生成AI導入をどのように導入したのかが書かれていたが、PAC社の部分的な導入と比べ、より包括的なものだった。こうなってくるとPAC社のCRM「カスタマーリングス」のじり貧は避けられなさそうだと思った。


3/17日経に「社員の健康をデータで把握・管理し、生産性向上につなげる」みたいな記事が載っていた。そこではソフトバンクやKDDI、日清HDなどの事例が紹介されていたが、それら企業を調べてみると、ほとんどの企業が「タレントパレット」を導入していることがわかった。「タレントパレット」の新機能開発・導入は順調に進んでいることがわかった。ただ戸田建設が独SAPの「サクセスファクターズ」を導入しているのは少し気になった。

3/22日経に「厚生労働省は2024年度に、社員の健康増進を図る中小企業への補助金を新設する」とあった。中小企業は「タレントパレット」のメインターゲットではないが、今後、社員の健康増進の機運が高まっていきそう。「タレントパレット」の健康データ管理・分析機能の引き合いが強まるかもしれない。

3/20日経に(「タレントパレット」を導入している)日本特殊陶業が「全社員のスキルを可視化している」との記事が載っていた。日本特殊陶業はEVシフトにより事業転換を迫られており社員をパワーアップして新事業を立ち上げる必要があるという。そこで「タレントパレット」の「スキルマップ」などを活用して、社員のスキルを見える化し、学ぶ意欲や新事業への攻めの志を養おうとしている。このような導入事例を見ると「タレントパレット」の成長余地は大きそうだと思った。


1/13ヴェリタスに「企業業績や株価と相関が高いのは、設備投資や研究開発より人的投資」みたいなことが書いてあった。1/18日経には「日本の無形資産投資は90年代以降停滞しており、GDPに対する無形資産投資の比率でみると米国に大きく遅れを取っている。中でも、「人への投資」である人的資本投資がこの10年低迷している」「日本企業のイノベーション実現率を上げるためには人的資本投資を十分にする必要がある」みたいなことが書いてある。

23年には有価証券報告書で「人的資本」に関する取り組みの開示が始まっている。米国では有価証券報告書に「人件費のうち企業の成長につながる投資はどの部分かを明示させる」方向に進んでいるようなので、いずれは日本も同じようになりそう(2/3ヴェリタス)。この流れでいくと、今後日本では人的資本への投資が活発化していきそう。


2023年11月に「タレントパレット」の競合のHRBrainがスウェーデン拠点の投資ファンド、EQTに買収された。HRBrainはEQT支援のもと、顧客を大企業に広げたり、新たなサービスを開発したりしていくという(ブルームバーグ11/27)。西欧系の投資ファンドはデータ活用の知見が豊富なので、いずれHRBrainは手強い競合になる可能性がある。


PAC社は3月に“今後30年の人事の未来を考えるシンクタンク”「HR未来予測プロジェクト」を発足した(IR)。競争優位性を保つにはこのような専門性・先見性は絶対に必要なので、このシンクタンクは長期的には重要な存在になりそう。順調に知見を蓄積していければ、今後激変するであろう市場環境の中でも生き残れるのかもしれない。


<今期の売上高予想>
「キミスカ」事業がゼロ成長、「タレントパレット」事業がやや下振れ、それ以外は期初予想通りと仮定すると
第2四半期の売上高予想は32.4億円(累計63.0億円)
第3四半期の売上高予想は34.4億円(累計97.4億円)
第4四半期の売上高予想は36.6億円(累計134.0億円) 通期の成長率20%
通期の純利益の成長率25%
になる。


<妥当な時価総額はどのくらいか>
これまで時価総額を見積もるのにPSR(株価売上高倍率)を主に使ってきたが、これからはPER(株価純利益倍率)をベースに考えていく。
*PSRは売上高をベースにした指標で、PERは純利益をベースにした指標になる。SaaS企業を評価する場合、今後利益率が上昇していくことを前提に売上高ベースで企業価値を評価することが多いが、SaaS企業は結局利益が出ないというケースも少なからずあるので、今後は純利益に焦点を絞って分析していく。純利益は株主のものであるので、その意味でもこちらに着目した方が合理的ではないかと思う。ただ純利益は特別損益などにより大きく変動することもあるので、PSRも規模感を測る目安として使っていく。

PERをベースにした場合、時価総額を算出する式は
純利益 × PERになる。

PAC社の今期の予想純利益は33億円になる。
PERはどのくらいか。まず業界平均のPERは約30倍になる。そこに今後3年の年平均売上高成長率20%、営業利益率30%を加味すると、PERは35~45倍くらいになる。さらにそこに「キミスカ」事業や「タレントパレット」事業の下振れ懸念、生成AIによる不透明感を加味すると、PERは35~40倍くらいになる。

以上から、純利益33億円 × 予想PER35~40倍で、推定時価総額は1155~1320億円になる。このときのPSRは8.5~9.7倍になる。なお、国内SaaS企業の平均PSRは5~10倍になる。


今後3年の予想売上高成長率は年15~25%程度、予想利益成長率は20~30%。現在の妥当だと思う時価総額は1155~1320億円(株価2700~3150円、PER35~40倍、PSR8.5~9.7倍)。2030年の予想売上高は現在の2~2.5倍くらい、予想純利益は現在の2~4倍くらい。



■イントラスト
基本シナリオ:家賃債務保証と医療費用保証で2028年に売上高150億円、営業利益30億円

第3四半期決算もほぼ計画通り。特に問題なし。

医療費用保証「スマホス」は公立大系の病院や日本赤十字社系の病院に導入され始めた。この調子でいってくれればと思う。

2024年は物価高や人手不足、過剰債務などの問題で企業倒産が増えそうだが、激増するという感じでもなさそう。1/15日経

2/21日経に単身高齢者向けの家賃債務保証に関する記事が載っていた。記事によると、単身高齢者は今後も右肩上がりで増えていき、2030年には800万世帯に迫るという。一方、持ち家比率は低下していき、賃貸住宅ニーズが高まると予想されている。政府はここでの家賃保証を手がける業者を認定・バックアップする制度を創設するという。

この領域はイントラストがターゲットとしている領域とは少し異なるが、成長市場なので商売上手なイントラストが参入したらおもしろくなりそう。少し期待したい。

2/24日経2/24日経に、養育費の不払い問題に関する記事が載っていた。現在、多くの自治体が離婚の「合意文書」を作成するための補助金を支給し始めているようで、この合意文書があれば、養育費を徴収しやすくなるという。イントラストの養育費保証事業はまだ軌道に乗っていないが、養育費を回収しやすい下地ができれば、事業が軌道に乗る可能性がある。

今後3年の予想売上高成長率は年10~20%程度。現在の妥当だと思う時価総額は230億円(株価1000円、PER18倍、PSR2.7倍)。2030年の予想売上・利益は現在の2.5倍くらい。


■今後の計画
しばらく静観する。

米国が景気後退に陥って5~10ヶ月くらいたったころに株式などを買っていく。できたらドル建て資産を買っていく。米VIXが40超、日経平均の騰落レシオが65以下になった場合も買っていく。景気後退に陥らなさそうな場合は、その時また考える。

有望株

よく調べないで買った株は失敗することが多いので、これからはネチネチと調べてから買うことにする。

<10倍株候補の条件>
 ・上場5年以内の会社
 ・社長が若い
 ・オーナー企業
 ・時価総額が300億円以下
 ・長期的なテーマに合っている
 ・急成長している
 ・(IPOから時間が経過し、株価が右肩下がりになっているチャートが狙い目)

<優良企業の条件>
 ・参入障壁が高い
 ・ストック型ビジネスを手がける
 ・時流に乗っている(潜在市場が大きい)
 →業績が落ちにくく、利益成長を続けやすいビジネスモデル
(例)エムスリーやリクルートなど

■良さそうな会社
・M&A総研ホールディングス
AIを使ったM&Aマッチングシステムを手がける会社。荻野CFO「集合知で買い手を探すため、効率が良く、人間では思いつかないマッチングが生み出せる」。この会社の売上高成長率と利益率は尋常じゃない。M&Aマッチングシステムはネットワーク効果が働きやすいので、高水準の成長と利益率を維持できるかもしれない。問題は株価がすでに高値圏にあることと、株式流動比率が低いことあたり。


・霞ヶ関キャピタル
不動産コンサルティング会社。複数のテナントが入る貸冷凍冷蔵倉庫も開発する。冷凍冷蔵倉庫はフロンを使わない環境負荷の低いタイプを導入しており、中小企業の需要を捉えている。AIで荷物を識別するシステムを導入して作業を自動化する冷蔵冷凍倉庫も計画している。冷凍冷蔵倉庫は労働環境が過酷なため省人化の需要が強い。

この会社も高速成長している。問題は財務状態がいまいちで、設備投資が大きそうなところ。少し苦手なタイプの会社。

2023年12月に大型の増資をした。当面の成長資金を得たようなので仕込むタイミングとしては悪くなさそう。

・・この2銘柄の株価は発見した当時と比べて2倍以上になってしまった。全く買えてないのが悲しい。高速成長している会社を見つけたら、面倒くさがらず、とりあえず調べてみることが大事だと思った。

今回この2銘柄が上昇したのは「ひふみ投信」のレオス・キャピタルが大量保有したことも影響してそう。M&A総研に関しては藤野さんが「ひふみアカデミー」で「経営者と人事システムが素晴らしい」と絶賛していた。


・レオス・キャピタル・ワークス
社長の藤野さんが”完全復活”していたのでおもしろそうだと思った。以前からレオスキャピタルの「ひふみアカデミー」(YouTube)は見ていたが、コロナ過になり、藤野さんが別荘に本拠を移して、リモートワークになったあたりから途端につまらなくなった。その後、藤野さんが投資責任者を辞め、動画に登場しなくなると、全く見なくなってしまった。しかし藤野さんが投資責任者に戻ったと知り、最近また「ひふみアカデミー」を見てみると、以前の予見性や分析力が復活していたので、レオス株はおもしろくなりそうだと思った。

藤野さんは株式市場を熟知しており、上場したからには必ず成長・株価上昇を目指すはず。そしてその戦略もすでにあるはず。業績的にはすでに損益分岐点を超えており、今後は売上高の拡大に伴い利益も成長していきそう。新NISAは強い追い風になる。SBIの子会社というところもおもしろい。PERは12倍、時価総額160億円なので、割高感もない。

問題は2つ。1つは藤野さんの力が大きすぎること。藤野さんが抜けたらおそらくこの会社は失速する。あとは地合いの悪化。景気循環的にいつ株式市場が暴落してもおかしくない。それでも有望ではあるので、気が向いたら調べてみたい。


・SBIホールディングス
2019年に米チャールズ・シュワブが米国株の売買手数料無料化に踏み切ると大規模な業界再編が起こり、独立系のオンライン証券は消滅した。その後、顧客の投資コストはゼロに近くなり、証券会社は手数料依存から脱却し、資産残高重視への転換に成功した。顧客と証券会社の利益相反が減り、証券会社のビジネスモデルは「顧客と共に栄える」ものになった。チャールズ・シュワブの株価は業界再編後、2倍くらいまで上昇している。日本では2023年10月にSBI証券と楽天証券が株式の売買手数料無料化に踏み切っており、米国と似たような展開が期待できる。新NISAの追い風もある。

去年の年末にこの成長ストーリーを思いつき、株式を少し買おうと思っていたが、年明け早々から大きく上がってしまい結局買えなかった。まさかここまで日本株が上がるとは思っていなかったので、これはしょうがないのかなと思う。


・三陽商会
三陽商会は「バーバリー」との契約を解除されてから業績が急落していたが、ゴールドウィンで”株価テンバガー”を達成した経営者が三陽商会の社長に就任し、足元で業績は回復基調にある。成長戦略はゴールドウィンのときと同じ。商品数を絞り込み、徹底した在庫管理(高精度な需要予測)をし、高品質化し、複数の強いブランドを育てること。顧客ターゲットはアッパーミドルやハイエンド層。現在「ポール・スチュアート」など7つの基幹ブランドを育成中で、2023年2月期には各ブランドで黒字化を達成している。今後は各ブランドの収益拡大を推し進めていく予定。


・レノバ
KDDIやイー・モバイルを創業した千本倖生氏が名誉会長になっている会社。レノバは再生エネルギーを開発する会社なので事業環境は悪くない。株式は大きく売り込まれており仕込むタイミングとしても悪くなさそう。問題は3つ。1つ目は千本氏が名誉会長になってしまい経営の一線から退いていること。2つ目は財務状態がよくないこと。3つ目はバイオマス発電に力を入れていること。バイオマス発電は本当に環境に優しいのかという問題がある。英国では持続可能性の観点から政府がバイオマス発電の補助金をカットする可能性が浮上しており、バイオマス発電を手がける英ドラックス・グループの株価は大きく売り込まれている。レノバは大株主の住友林業などと協業して廃材などで発電するはと思うが、少しひっかかるところがある(要調査)。


・メック
電子基板の表面処理剤を製造する会社。CPUに使う半導体パッケージ基板用の高機能品は世界シェアほぼ100%。研究開発投資に積極的で価格競争力は強く、営業利益率は20%を超える。近年注力しているのが高周波の電気信号のロスを抑える技術。5Gや次世代自動車向けの需要拡大が期待できる。


・SREホールディングス
適正な不動産の売買価格をAIで素早く査定するシステムを手がける。AIによる査定価格と実際の成約価格を比べた誤差率は4%程度で、人が判断したときの誤差率は7~8%なので、AIの方が適正な価格を算出できることがわかる。契約社数は2500社と1年前から7割増。解約率は0.6%程度。このシステムは消費者側にも利点がある。不動産を売りたいときは情報が不足し、適正な価格の判断ができず、買い手側が優位な状況が多い。AI査定で作成した査定書には解析データが記載されているので消費者も客観的に適正価格を知ることができる。矢野経済研究所は不動産テック市場は25年度に20年の2倍に膨らむと予想している。SREホールディングスは培った技術を応用し、証券会社向けのAIシステムも開発。証券会社の顧客の住所から不動産価格を推定し、過去の証券取引データと組み合わせて潜在的な富裕層を見つけ、金融商品の提案につなげている。社長は「業界を超えて需要は高い」と語る。


・アサヒホールディングス
貴金属リサイクルの大手。貴金属の価格は高騰しており、貴金属のリサイクルはメガトレンドになっている。アサヒは全国に回収ルートを持つのが強みで、新工場稼働により業績の拡大が期待できる。


・オプティム 
法人向けにモバイル端末を管理するシステムを提供する。モバイル端末のセキュリティーや不正利用の防止設定、紛失時の遠隔操作などを一括で管理できる。モバイル端末管理の市場では4割近いシェアを持つ。リモートワーク普及を追い風に底堅い需要が続いている。

今後注力するのが「X-Techサービス」と呼ぶ産業DX事業。端末管理事業で培ったクラウド上で大量のデータやIDを管理する技術を応用し、IoT端末を用いたDXサービスの開発に取り組む。その一例が、ドローンを用いたスマート農業システム。作物を育てるほ場を測量・空撮し、気象情報と組み合わせてAIで分析。農薬や肥料散布の適切なタイミングを計算した上で、オプティムがドローンのパイロットを派遣し、生産者に代わって散布する。他にも、土木現場での3次元測量や医療現場での手術ロボット運用支援など、複数の業種でDXサービスに参入する。全体の売上高に占める「X-Techサービス」の割合は既に4割弱に達しており、近くモバイル端末管理事業の売上高を逆転するもよう。今後は売上高、営業利益ともに年率10%の成長を維持しながら積極的に研究開発部門に投資していく考え。

2050年には国内の農業人口が現状より8割減るとの推計もあるので、農業DXは伸びそう。肉体労働系DXは競合があまり多くなさそうなのでよさそう。

マクロ系金融指標

 市場の仕組みを理解しやすい順番でみていく。

■米10年金利
今後1年の予想レンジ:2.5%~4.4%の間で推移

米長期金利に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・経済成長率+インフレ率→
長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になる。2024年の予想米GDP成長率は+1.3~2.1%%、予想インフレ率は+2.2~3.2%になる。

・金融政策↓
FRBはインフレが落ち着いてきたとして政策金利の引き上げをやめた。2024年に3回の利下げを実施する予定で、それを実施した場合、2024年末の政策金利は4.5~4.75%になる。

*政策金利が中立金利(2.6%)を超えると、景気(長期金利)には下押し圧力がかかる。

FRBは国債などの保有資産を年間7200億ドル(約108兆円)のペースで売却している。今後2年間そのペースで資産を売却していくと、長期金利には1%近い上昇圧力がかかる。ただ金利引き下げとは矛盾した政策になるので、利下げと同時に保有資産の売却もやめる可能性がある。

FRBは3月に量的引き締めを減速する方針を表明した。3/22日経

・財政悪化による国債増発↑
米政府の財政はコロナ禍以降、大きく悪化しており、今後も悪化し続ける可能性が高いため、米財務省は米国債の発行を段階的に増やすと公表している。金利が高止まりした状態では公的債務の利払い費も増加し、財政はさらに悪化しやすくなる。米国債市場の需給悪化により、長期金利は上昇しやすくなる。

・リスクオン・リスクオフ↑
米景気は比較的堅調で、もうじき利下げしそうなので、リスクオン気味。

・米国債の人気上昇→
米長期金利は海外の主要先進国の長期金利よりも高いので、海外勢から買われやすい。2022年の買越額は約100兆円と過去最大になっている。しかし足元では米国外の先進国の金利も上がっているので、海外勢は米国債の購入を減らし、自国債を買い始めている。

米国債を世界で最も保有しているのは日本になるが、米国債利回りから為替ヘッジコストを差し引くと利回りがなくなってしまうので、一部の金融機関は米国債の購入をやめ、日本国債を買い始めている。

米国債を日本の次に多く保有する中国は、米国との対立や人民元安阻止のために米国債を着々と売却している。

・米企業の社債発行増↑
米企業の社債発行が急増している。米国債より投資妙味の大きい高格付け社債の発行増加により、長期金利に上昇圧力がかかっている。2/28日経

・資金需要の低下、金余り↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要がそれほど多くない。少子高齢化の影響で借り入れ需要も減っている。

金余りで運用難に陥っている米金融機関や米企業は多く、そういうところがこぞって米国債を買っている。バフェットさんも買っている。

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みなどで潜在成長率は低下傾向にある。

・チャート↓
<10年チャート> 天井を打ったように見える。ただ上昇トレンドが転換するかはまだ不明。



■WTI原油
今後1年の予想レンジ:60ドル~110ドルの間で推移

原油価格に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・需要↑
原油の需要は世界経済成長率にほぼ連動する。2024年の予想世界GDP成長率は2.8%になる。

長期では、再生可能エネルギーの増加や学校・職場のリモート化などにより石油需要が減少していく可能性が高い。仏トタルや英BPは2030年頃に石油需要がピークアウトすると予想している。

一方で、世界人口増や再生エネルギー開発の滞りなどにより、石油需要が増えるという見方もある。米エネルギー情報局(EIA)は2050年の石油需要が2020年比で4割増になると予想している。英シェブロンは2023年から45年にかけて石油需要は約15%増加すると予想している。

・供給↓
OPECプラスは1バレル90ドル前後の水準を維持することを目的に減産に動いていたが、足元ではOPEC内の足並みが乱れ始めている。米国ではシェールオイル採掘への逆風や採掘コスト増などからこれまで増産ペースが鈍かったが、直近では原油高を背景に産油量が急増している。米国、ブラジル、ガイアナは2023年に年間産油量記録を更新しており、今年も更新する見込み。2/3ヴェリタス1/12日経

これまで脱炭素の潮流を受けて油田開発投資は大きく落ち込んでいたが、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにエネルギー不足の懸念が生じ、化石燃料の開発投資が急増している。1/22日経

・産油国で不測の事態が起こる↑
中東では石油施設へのテロ攻撃が度々起きており、パレスチナではイスラム組織とイスラエル軍の戦闘が激化している。供給網の混乱などにより、今後供給量が減る可能性がある。

*石油(エネルギー)は人間にとって食料と同じ生活必需品のため、わずかでも不足が生じると価格が跳ね上がりやすい。

・産油国、産油企業、再生可能エネルギーの採算ライン→
サウジアラビアで財政均衡に必要な原油価格の水準は1バレル85ドル、ロシアでは80ドル、アラブ首長国連邦(UAE)は75ドル、米産油企業の採算ラインは50~80ドル、再生可能エネルギーは30~80ドルになる。原油価格はこの範囲内に収まりやすい。

・リスクオン、オフ↑
リスクオン気味。
*原油は株式と同じリスク資産なので、リスクオフ時には売られやすい。

・インフレ対策↑
原油などの商品はインフレヘッジ手段になる。足元ではインフレ対策としても買われている。

・為替↓
原油はドル建てのため、ドル高になると原油価格に下押し圧力がかかる。足元ではドル高基調。

・チャート→
<10年チャート> チャート的には落ち着いた感じ。60ドルを底にボックス圏で推移しそう。



■ドル円
今後1年の予想レンジ:125円~158円の間で推移

為替に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・日米金利差↑ (↑は円安方向、↓は円高方向)
<短期金利>
日米の短期金利は現在約5%開いている。3月に日銀は利上げに動いたが、利上げ幅はわずか0.1%ため、金利差はほとんど縮まっていない。今後もしばらく大きく縮まる見込みはない。

金利差拡大によりキャリー取引が増えている。
*キャリー取引とは金利差を狙った取引。短期金利差が大きくなると低利通貨を売り、高利通貨を買って、金利差で収益を得る取引が盛んになる。
*世界で金利が最も低い水準にある日本の円は、キャリー取引の調達通貨として選ばれやすい。対ドル以外でも売られやすくなっている。2/21日経
*市場が荒れ始めると金利収入以上の為替差損を抱えるリスクが増すので、手仕舞われやすくなる。

<長期金利>
米長期金利と日本の長期金利の差は4%くらいある。長期金利の差もしばらくこのくらいの水準を保ちそう。

・日本の経常収支↓
円安や資源高、産業競争力の低下などにより、貿易収支は悪化傾向にある。(貿易収支を含む)経常収支は年10~20兆円の黒字の水準にはあるが、海外での再投資などにより、稼いだ外貨の半分くらいしか日本に戻らなくなっている。1/11日経3/27日経

・米国の経常収支↑
米国は経済が強いので経常収支は改善傾向にある。

・日米の経済の強さの違い↑
資金は経済の強い国へ流れ、その国の株式や債権、不動産などが買われる。デジタル革命を主導する米経済は相対的に強いのでドル資産が買われやすい。3/22日経
*日本の個人投資家は2021年に海外株を8兆3千億円買い越しており、その約9割は米国株になる。同年の日本株の買越額は280億円になる。

・リスクオン、オフ↑
リスクオン気味。

・日本企業の対外直接投資↑
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業は海外での直接投資を増やしている。ここ数年は年12~22兆円の買い越しが続いている。

・国内投資家の対外証券投資↑
日本の機関投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、高い運用利回りが見込める海外債権や株式などを買っている。個人投資家は成長力の高い海外株を買っている。ここ数年は両者合わせて年10兆円超の買い越しが続いている。

・海外投資家の国内証券投資↓
円調達時の上乗せ金利(ベーシススワップ)が低く、日本国債の金利は安定しているため、ここ数年、海外投資家は日本国債を年10兆円程度のペースで買い越している。

*海外勢は2023年半ば頃から日本株を大きく買い越しているが、これは先物の円売りを合わせて投資していることが多いので、円高要因にはなりにくい。1/24日経

・投機筋の持ち高↑(「円 投機的ネットポジション」で検索)
投機筋は円を大きく売り越している。円が下落するとみている。
*ドルを売り持ちした場合はスワップポイント(金利差分)を支払わなければならないので、ドル売りが長く続くことは少ない。
*スワップポイントはドル買い時よりもドル売り時の方が高く設定される傾向がある。例えば、日米短期金利差が約3%あった2022年9月にドルを1万ドル買った場合、1日の金利差収入は92円くらいになるが、ドル売った場合は金利差損失が1日159円くらいになる。

・個人投資家の売買動向
日本の個人投資家によるFX取引が為替市場の約2割を占めており、相場を動かす原動力になりつつある(1/19日経)。足元の売買動向は不明。

・ドル需給↑
FRBがドルを大量供給しているのでドルはだぶつき気味だったが、米長期金利の上昇や、ロシアやアルゼンチンの通貨不安、中国経済の先行き懸念などにより、ドルの需要が高まっている。

・米制裁によるドル離れ↓
米国は対立する国に「ドル取引の制限や禁止」といった金融制裁を課すことがある。現時点で米国はロシアやイラン、トルコ、中国などに金融制裁を課しており、これらの国は米国債の保有を大きく減らしている。今のところドル離れは一部に留まっているが、今回のロシアへの制裁(ロシア中銀が保有するドル資産凍結)をきっかけに、ドル離れが加速する可能性がある。

購買力平価
物価が上がると(インフレが進むと)、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると(デフレが進むと)、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必用なくなる(購買力は上がる)。この物価変動に着目して二国間の通貨価値をならしたものが購買力平価になる。

インフレ率は日本より米国の方が慢性的に高いので円の購買力平価は長期的な円高傾向にある。ただ米国のインフレ率は年々低下しており日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。

現在の購買力平価(企業物価)は91円になる。為替相場は長期的にはこの値に収斂していくとされるが、近年では投機取引の拡大や資本の自由化などから購買力平価の影響力は弱まっている。

・日銀の財務状態の悪化↑
日本の長期金利が1%まで上昇した場合、日銀は債務超過に陥る。日銀は国債について満期保有を前提とした会計処理を採用しており、債務超過になっても日銀は自ら通貨を発行できるので資金繰りに行き詰まることはないが、円に対する信用は落ちる。
*日銀は長期金利が1%に上昇した場合、日銀が保有する国債に28兆円の含み損が生じ、5%に上昇した場合は108兆円の含み損が生じると試算している。

・日本政府の過剰債務↑
日本政府の債務は返済不可能な水準まで膨れ上がっており、2030年頃には臨界点に達し円の暴落が起きる可能性がある。米国政府の債務も返済不可能な水準まで積み上がっているが経済が強く、ドルは基軸通貨なのでドルの暴落は起きにくい。

・日銀が保有するETFの簿価割れ→
日銀の自己資本は約10兆円なのに対し、保有する日本株ETFは簿価で約35兆円ある。日銀の保有するETFの損益分岐点は日経平均株価21000円くらいであり、日経平均株価が15000円台まで下がると日銀は債務超過に転落する。ただ現時点でそこまで下がる可能性は低い。

・キャピタルフライト↑
日本は財政問題や経済低迷などの問題を抱えているため、日本人は円資産を海外資産にシフトし始めている。国内の家計の預貯金は約1100兆円あり、その1%(11兆円)でも海外に向かえば円相場へのインパクトは大きくなる。2024年に始まった新NISAでキャピタルフライトが加速しつつある。1/12日経1/18日経2/3日経2/4日経2/3ロイター

・為替介入→
今後、円安を止めるために政府・日銀が為替介入する可能性がある。ただ売り玉(保有する米国債)は限られており、また単独介入のため、為替市場への影響はほとんどない。

・チャート
<10年チャート> 「2022年の高値は151.9円、23年の高値が151.9円と、152円の目前に強いレジスタンス(上値抵抗)があることがわかる。一方、22年1月安値の113.4円から23年1月安値の127.2円を結んだラインが、23年終盤の140.2円までの反落局面でサポート(下値支持)として機能したこともわかる。チャートは上昇型の三角持ち合いになっており、レジスタンスを上方向にブレイクすれば強い買いシグナルになる。つまり152円の壁を突破すれば次の心理的節目である155円に向けた続伸の可能性が高まる。仮に今回も152円の壁を越えられないようならサポートラインに向けて失速する可能性もある。上昇型の三角持ち合いは上昇トレンドの継続を基本シナリオとするチャート形状ではるが、レジスタンスラインを超えるのに時間がかかくほど、上昇トレンド終了の可能性も高まる」1/27ヴェリタス

上値抵抗を突き抜けそうなチャートに見える。突き抜けなかったらトリプルトップで当面の天井になる。



<なぜ予想が外れたのか>
前回のブログ予想は「今後1年の予想レンジ:1ドル120~145円」だったが、現在は1ドル151円まで円安が進んでいる。米10年金利のチャートと連動すると思っていたが、実際は少し違っていた。予想が外れた要因を考えていく。

要因1、米経済が強かった
「マグニフィセント7」など、米ビッグテックの稼ぐ力が強く、日本の”デジタル赤字”が拡大している。
米国ではバイデン政権の保護主義的な政策により、国内生産回帰が加速している。これにより、ドルの海外への流出が減っている。米国外の企業も米国に生産拠点を作らざるを得なくなっており、米国への投資が増えている。
米国のエネルギー関連収支は、シェール革命を契機に大幅に改善し、原油に関しては純輸出国へと転じている。経常収支が改善しやすくなっている。
米経済が堅調なため、FRBは政策金利を下げられない。

要因2、日本の金融緩和は続く
日銀総裁は3月に利上げはしたが、会見で緩和的な金融環境を維持することを強調している。米国の堅調な景気と相まってキャリー取引が拡大している。

要因3、新NISAの資金が外国株に流れた
2024年1月に始まった新NISAで、個人投資家は外国株をこぞって買っている。

<どうしてこれらを予想できなかったのか>
興味がないから。為替は複雑すぎて手を出す気になれない。
今後もこんな感じでいいから、緩やかに知識をつけていこうと思う。

<今後どうなるか>
長期的な基調は円安。米景気が腰折れしたときに一時的に円高、という展開になりそう。



■日経平均
今後1年の予想レンジ:30000~43500円で推移

日経平均に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・金融政策→
世界の中銀の総資産と世界の株価指数はほぼ連動している。2023年まで各国の中銀は金融引き締めをしていたが総資産はほとんど減っていない。2024年は金融引き締めをゆるめそうなので、中銀の総資産は高水準で維持されそう。

・金利→
金利が上がると、株式から債権へ資金が流れやすくなる。足元で金利はピークアウトしつつある。

金利上昇により金融機関が保有する債券の含み損が膨らんでいる。金融機関の含み損率が高まると株式などのリスク資産投資が減少する。

・為替↑
円安が進むと海外勢から見た日本株は割安感が出る。現在、円の価値は過去最低水準にある。

・需給↑
海外勢は2023年の半ば頃から日本株を買い始めている。日本企業のは自社株を大量に買っている。2024年からは新NISAが始まり、個人投資家の買いも期待できる。日銀の買い支え政策は終了したが、日本株の需要は比較的堅調。

主な投資主体の売買動向
<2024年の予想>
日本銀行:保有株の売却で3000億円の売り越し。1/9日経
事業法人:自社株買いで5兆円の買い越し。 今のところ7500億円の買い越し
海外投資家:日本企業への期待と世界経済のソフトランディング期待から3兆2000億円の買い越し。 今のところ3兆1000億円の買い越し。
信託銀行:ポートフォリオのリバランスにより3兆円の売り越し。 今のところ3兆6000億円の売り越し。
金融機関:謎の理由で4兆円の売り越し。 今のところ4兆4000億円の売り越し。
個人投資家:新NISAや順張り投資で1兆円の買い越し。 今のところ1兆2000億円の売り越し。

・EPS(1株利益)↑
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益) × PER(期待度・人気度)で決まる。2024年の予想EPSは+10%程度になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因をみていく。
・為替↑
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので為替相場の影響を大きく受ける。今は円安気味なので利益は増えている。

・海外景気↑
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので海外景気の影響を大きく受ける。足元の世界景気は比較的堅調。

・自社株買い↑
自己株式はEPSを計算する際に分母の株式数から除かれるため、自社株買いにはEPSを押し上げる効果がある。日本企業は自社株買いに積極的で、2023年の自社株の取得実績は約8兆2000億円になる。2024年も同程度の規模になる見込み。
12/29日経には「自社株買いをしても、その分株数も減り、時価総額も同じ割合で減るので理論的には自社株買いをしても株価は不変」とあるが、自社株買いにより需給が改善したり、ROEが上がったり、企業の「自社株は安い」というアナウンスメント効果があったりするので、株価は上がりやすくなる。

・失業率↓
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益を圧迫する。労働量力不足で成長が頭打ちになりやすい。現在の失業率は最低水準にある。

・減価償却費や資源価格→
減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇すると利益が圧迫される。足元では両方とも横ばい傾向。

・金融政策→
金融引き締めで金利が上昇すると企業の利益や資金調達環境は悪化する。日本では金利がやや上昇しているが、わずかであり、もうしばらく金融緩和は維持される予定。
ーーーーー

・PER(期待度、リスク選好度)→
日経平均の過去のPERは11~17倍くらいで、現在のPERは17倍と上限に近い。ただ今期の日本企業の予想EPSは前期比+10%程度の予想が多いので、それを加味すると現在の水準は妥当にみえる。

・リスクオン、リスクオフ↑
リスクオン気味。

・株式利回り↑
東証プライムの益回りは約5.9%、配当利回りは約2.10%と、日本の10年国債の利回り0.71%より高いので、株式に資金が流れやすい。

・中国株からのシフト↑
中国の景気停滞リスクや地政学リスクから、中国投資離れが拡大している。その代替投資先の1つとして日本株が選ばれている。

投機筋の持ち高
買い残は2兆2800億円で、裁定売り残高は5000億となっている。投機筋は日本株が上がるとみている。

・個人投資家の流入↑
日本の家計が抱える預金・現金は約1100兆円あり、コロナ禍の「巣ごもり」や「老後2000万円問題」などの影響で株式市場に個人投資家が流入している。2024年に始まった新NISAでさらなる流入も期待できるが、その大半は海外株に流れている。

・パッシブ運用の膨張↑
パッシブ運用にはストック効果(積み上げ効果)があるので、この運用が増えると株価は下がりにくくなる。現在、投信やETFでパッシブ運用の比率が高まっており、世界では44%、日本では73%まで高まっている。

・チャート↑
<10年チャート> 出来高を増やして新高値を突破しているので基調は強い。底は3万円くらいになりそう。


<どうして予想が外れたのか>
前回のブログでは「今後1年の予想レンジ:27000~37000円」と予想していたが、現在の株価は40360円で、予想を大きく上振れている。どうして予想が外れたのかを考えてみる。

要因1、日本株EPSの上昇
株価を決める最大の要因であるEPSが順調に拡大していた。
円安がEPS拡大に寄与した。

要因2、AI、半導体ブーム
生成AIブームにより、AIや半導体株が大きく上がった。「世界の時価総額伸びの52%が半導体」(2/23日経)という記事や、「日経平均とエヌビディア株は連動性が極めて高い」(3/2ヴェリタス)という記事もあり、半導体株が日本株の指数上昇を牽引した。

要因3、海外勢が買いやすい環境だった
円安や金利差をいかしたヘッジ取引などにより、海外勢が日本株を買いやすい環境だった。3/15日経

要因4、東証の資本効率改善要請
企業の変革期待や、積極的な株主還元により、企業の魅力が高まった。自社株買いが増えたことにより、株式需給も改善した。

要因5、新NISAの影響
2024年1月から新NISAが始まり、日本株への資金流入量が増えた。とはいえ、2024年1~3月に個人は約1兆2000億円(投資信託を含めると3兆円)売り越しているので、新NISAは今回の日本株上昇にはあまり寄与していないのかもしれない。

<どうしてこれらを予想できなかったのか>
要因を個別に見ていくと、要因1は、日本企業の予想EPSコンセンサスを見られるサイトを知らなかったから。こういうサイトを見つけたい。要因2は、これは投資家のセンチメントなので、予測は難しい。ただ画期的な技術革新はこのくらいのインパクトがあるということは覚えておきたい。要因3は、知識不足。こういう買い方があるということを知らなかった。要因4は、単純な株高要因を見落としていた。

<今後はどうなるか>
長期で上昇。米景気腰折れでいったん下落して、また上昇。


■東証グロース250指数
今後1年の予想レンジ:600~950の間で推移

東証グロース指数に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・金融政策↑
東証グロース指数は中銀の総資産残高の影響を全市場の中で最も受けるので、中銀の資産縮小時には真っ先に売られやすい。ただ、グロース指数はすでに金融緩和前の水準まで売られているので底を打ったように見える。

金利の上昇も小型グロース株には逆風になる。金利が上昇すると将来の成長期待で買われている小型グロース株はバリュエーションが低下しやすくなる(詳細は後述)。また小型グロース企業には赤字企業が多く、金利上昇時には成長資金を調達しにくくなる。借金の金利負担も重くなる。2024年は世界の中銀は金融引き締めを緩めていく見込みなので、グロース株にはプラスの相場環境になるかもしれない。

・需給↑
グロース市場は日銀の買い支えがなく、自社株買いもあまり期待できないため、相場下落時は下げ止まりにくい。ただ海外投資家は売り尽くした感があるので、売り圧力はそれほど強くなさそう。個人投資家の含み損は減少傾向にあるので、そろそろ個人も動き出しそう。

・EPS(1株利益)成長率
不明。

<グロース市場の反転シグナル>
信用評価損益率の急激な悪化は一つの反転シグナルになる。信用評価損益率が急激に悪化して、追い証回避の投げ売りが殺到すると、信用取引での買い持ちが急減して需給が軽くなる。過去の例では、そのタイミングで海外投資家が買いに転じるパターンが多い。

2007~2009年の金融危機では、2007年12月に信用評価損益率が-30%を超え、そこから約1年5ヶ月にわたってマイナス幅が30を超えている。この間にマザーズ指数は900台から300近くまで落ちている。当時も今も金融引き締めなど、似たような状況であり、このような前例を踏まえると、2年の停滞が続いた東証グロース指数はそろそろ反発するかもしれない。

<グロース250の10年チャート> 底値感がある。緑線と赤線が下向きから上向きに反転しそうであり、その2つがゴールデンクロスになったら株価は紫線あたりまで上がりそう。

市場環境

 株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などをみていく。

■EPS成長率
・世界株式の2024年の予想EPS成長率は-5~10%。
・米国株式の2024年の予想EPS成長率は-3~15%。
・中国株式の2024年の予想EPS成長率は0~10%。
・欧州株式の2024年の予想EPS成長率は-5~8%。
・日本株式の2024年の予想EPS成長率は-5~10%。


■経済成長率
・世界の2024年の予想GDP成長率は2.6~3.1%、2025年は3.0~3.2%。
・米国の2024年の予想GDP成長率は1.3~2.1%、2025年は1.7%。
・中国の2024年の予想GDP成長率は4.2~4.7%、2025年は4.1~4.2%。
・ユーロ圏の2024年の予想GDP成長率は0.6~1.3%、2025年は1.3~1.7%。
・日本の2024年の予想GDP成長率は0.9~1.0%、2025年は0.8~1.0%。
・インドの2024年の予想GDP成長率は4.5~6.5、2025年は6.5%。
*数値はIMFとOECDと世界銀行の予想。1/9日経1/30日経2/6日経

世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほど不況感は強まらない可能性もある。
*経済規模を示すGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。

*コロナの影響で2020年の日本のGDPは落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が向上していれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。


■インフレ
・米国の2024年の予想インフレ率は2.2~3.2%。
・欧州の2024年の予想インフレ率は2.2~3.5%。
・日本の2024年の予想インフレ率は1.5~2.5%。
*参照:1/23日経など
*米国のブレーク・イーブン・インフレ率(10年)は2.32%。ブレーク・イーブン・インフレ率とは債券市場の予想物価上昇率で、実質金利を算出するときなどに用いる。

世界中でインフレ率が下がりにくくなっている。インフレ要因とデフレ要因を一通りあげて、今後のインフレ動向を考えていく。

<インフレ要因>
★コロナ特有のもの
・供給基盤が破壊され供給不足が生じている。
・コロナで対面型サービスの人気が落ち、賃金が上昇している。
・コロナが落ち着いてきて需要が増している。
・政府から給付金が支給され需要が増している。
・金融緩和の影響で資産価格や商品価格が上昇している。
・量的緩和の影響で通貨価値が下落している。
→現在、これらの要因はほぼ解消されている。

★コロナ後も続くもの
・人手不足で賃金が上昇している。米国においては求人件数が700万件程度まで減ると賃金上昇率が3%程度まで落ち、FRBの2%物価目標と整合するとされるが、1月の求人件数は886万件とまだ少し多い(3/7日経)。求人件数は下げ渋り始めているので、700万件程度まで減るにはあと1年はくらいかかりそう。

・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。脱炭素シフトにより2030年まで年0.7~1.0%程度の物価押し上げ効果が見込まれている。
*脱炭素シフトが完了すれば再生可能エネルギーは強力なデフレ圧力になる。

・ウクライナや中東地域の戦争によってエネルギーコストが上昇している。

・異常気象や世界人口増、新興国の経済成長、バイオ燃料需要、肥料価格上昇、ウクライナ戦争などにより、食料価格が上昇傾向にある。農作物・肥料価格の先行指標である農業ETFは高値圏で推移している。

・経済の脱グローバル化(グローバル化の再構築)で製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇している。

・世界の生産年齢人口が2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなくなる可能性がある。

・米欧でインフレやAIへの不安などからストライキが頻発している。1/5日経1/5日経


<デフレ要因>
・世界中の中央銀行が強力な金融引き締めをしている。金融引き締めには需要を減らす効果がある。

・経済のデジタルシフトが加速している。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。検索やSNSは無料で、ネット上では価格比較を簡単にできるため売り手は超過収益を得にくくなっている。スマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。複製コストゼロのデジタルソフトやシェアリングサービスの普及などもあり、価格は下がりやすくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がゼロに近いので、競争が起きると価格がゼロに近づく。

・イノベーション(新結合・技術革新)が加速している。今はインターネットやAIにより、情報や人やモノの「新結合」が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。

・産業の「自動化」により、生産コストが低下している。
・世界的に経済成長率が鈍化傾向にある。過去40年で米国の潜在成長率は3%前後から2%前後に低下している。
・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向(収入に占める支出の割合)は低い。
・世界的に少子高齢化が進んでいる。子どもが減って高齢者が増えると総需要が減る。
・人手不足で成長力が低下している。
・金融引き締めなどの影響で資産価格が下落している。

以上をまとめると、賃金(サービス)以外のインフレは落ち着きつつあるので、インフレは徐々に落ち着いていきそう。ただ過去の例では賃金インフレはしぶとく続いているので、米国でインフレ率が2%になるのは2025年頃になりそう。

インフレが落ち着いた後も、脱炭素シフトや人手不足、脱グローバル化などの構造要因は残るので、しばらくは以前のような超低インフレに戻らない可能性が高い。

日本においては、人手不足が悪化していきそうなため、デフレからインフレに転換する可能性がある。加えて、円安や産業構造の変化、訪日外国人の急増、緩和的な金融政策などもあり、インフレが進みやすい環境になっている。インフレが高進した場合、キャピタルフライトが発生し、インフレ・円安スパイラルが止まらなくなる可能性もある。ただ、日本は人口が減っており、少子高齢化社会なので、需要の基調は弱い。インフレが起こるとしても穏やかなものになりそう。

超長期では、エネルギー革命や材料革命、AI・ロボット革命により超デフレ(無料社会)になる可能性がある。


■金利
・米国の政策金利は5.50%で、3ヶ月金利は5.38%、2年金利は4.62%、10年金利は4.20%、30年金利は4.34%になる。
・日本の政策金利は0.30%、2年金利は-0.17%、10年金利は0.72%、30年金利は1.47%になる。

*名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態では、国債を買ったり銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。逆に実質金利がプラスの状態では国債などの「無リスク資産」に資金が集まりやすくなる。現在、米国の実質金利はプラス圏にあり、「無リスク資産」に資金が流れやすくなっている。日本や豪州の実質金利はいまだマイナス圏にある。

*現在の債券は魅力的な水準まで利回りが高まっている。たとえばリスクのほとんどない米2年債は利回りが4.62%もある。その他の質の高い債権にも魅力的な利回りのものが多くなっている。今後利回りがさらに上がる可能性もあるが、急上昇期はすでに終わった可能性が高いので、株式などのリスク資産より、債券に資金が流れやすくなっている。

*投資家は企業が将来生み出すであろう利益から金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益は減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分は多くなり、理論価値が下がりやすくなる。

*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.6%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。

*米10年金利が米2年金利を下回ると、その1年~1年半後に景気後退に陥ることが多い。米国では2022年7月から10年金利が2年金利を下回っており、現在もその状態が続いている。
*米10年金利が米3ヶ月金利を下回ると、その後、比較的すぐに景気後退する傾向がある。2022年10月からこの逆イールドが発生している。
*銀行は短期金利で資金を調達して、長期金利で企業などに貸し出して利ザヤを得る。しかし長短金利が逆転すると逆ザヤになるので融資が減る。その結果、企業の投資も減り景気が後退しやすくなる。

*景気拡大期の「良い長期金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場へのネガティブな影響が大きい。

*景気拡大期終盤に金利が上昇すると、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こる。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。

*利上げ局面で中銀が利上げを停止すると市場は急速に利下げを織り込み始め、株高が続くことが多い。警戒が必要なのはその後になる。金利が高い中での株高は危うい株高となり、なにかのきっかけでショックが起こることが多い。過去を振り返っても、利上げ終了後は1年ほど株が上がり、「サブプライムローン」の破綻などがショックの引き金を引くことが多かった。過去の例では、「○○ショック」は懸念された箇所からではなく、疑いもしなかったところから起こっていることが多い。

・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は4の段階になる。


■債務
・世界の債務はコロナ下で急拡大し過去最高水準のGDP比336%に達している。ただ、コロナ過の経済対策により、家計や企業、金融機関の財務状態はコロナ前よりも健全になっているためデフォルトが急に増える状況ではない。

・銀行の財務状態は比較的良好だが、銀行に比べて規制・監督体制の緩い「シャドーバンク(ノンバンク)」の債務は急拡大している。世界のファンドや年金基金、保険会社などノンバンクの金融資産は21年に239兆ドル(3京6000兆円)と07年比で2.4倍に増え、銀行を大きく上回っている。ノンバンクは信用力の低い企業へ融資することが多く、英調査会社プレキンの予測では、ノンバンクによる企業向け融資(プライベートクレジット)の世界全体の運用資産は2027年末に2兆3000億ドル(345兆円)と年平均10.8%で拡大していく見通し。プライベートクレジットは金融規制の対象外にあるためデフォルトリスクを把握しづらい。金利が高止まりし景気後退に陥ればデフォルト率が7%くらいまで上昇する可能性がある。
*プライベートクレジット事業者は2008年の金融危機後に設立されたところが多いため、デフォルトの影響は未知な部分が多い。

・米金融市場では商業用不動産が大きな”爆弾”になっている。商業用不動産の10年間の価格上昇率は日本が20%なのに対し、米国は50%になっている。米国の商業用不動産向け貸出額は2010年から2023年まで約2倍に膨らんでいる(日本は同期間に3割増)。リモートワークの浸透や金融引き締めによるオフィス需要の低下によりオフィスの空室率は20%に迫っている。金利上昇により商業用不動産向けの融資基準は厳格になるなか、2024年に80兆円規模の償還期限が到来する。そこで借り換えができない場合、物件は市場で売却されるため、市場価格の調整圧力はかなり大きくなる。米欧ではGDPに占める商業用不動産の割合が1~2割に高まっているため、不動産バブルが崩壊すれば米経済は大きく下押しされる。米不動産ファンドは世界中に分散投資しているため、ファンドのリバランスで世界中の商用不動産に売りの連鎖が波及する恐れがある。2/7日経

・金利引き上げの影響は企業が借金を借り換えるタイミングで最も大きくなる。2022年3月のゼロ金利解除から1年4ヶ月で5%超に及んだ今回の急速利上げで2024年は企業の利払い負担が一気に増す。そのタイミングでデフォルトが続出する可能性がある。

・債務の質は劣化しており、米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割超が格付けの最も低いトリプルBになっている。欧州においては高リスク社債への懸念が高まっている。トリプルC以下の国債に対するスプレッド(上乗せ金利)は17%まで高まっている。これは2012年の欧州危機の水準になる。1/16日経

・米国の企業負債のGDP比率は12年には65%前後だったが、足元では80%に迫る水準まで上昇している。借り手の返済能力は落ちており、現在の金利高止まり局面では返済に行き詰まる企業が続出する可能性がある。

・米政府の公的債務のGDP比率は07年の35%から22年には97%まで高まっており、53年には181%まで上昇する見込み。

*金利が経済成長率を下回っている状態では、企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にすることができるので債務が膨らみやすくなる。政府も多少の財政赤字を続けていても債務残高のGDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。

*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構造になっている。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りていない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。財政刺激をしてインフレ率を2%まで上昇させることができれば、実質的な政府債務を年2%減らすことできるので、財政支出はそれほど問題ならなくなる。1/11日経。ただし金利が同程度上がったら問題になる。

*債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くと、どこかで必ず資金の逆回転が起こる。債務拡大ペースはここ10年以上、毎年GDPの成長速度を上回っている。

・中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる。2023年は過去最大の財政赤字(約74兆円、GDP比3%)を計上する見通し。
・国際決済銀行(BIS)によると、22年6月の中国の非金融部門の債務残高はGDP比295%に達し、98年3月末の日本の296%と肩を並べている。

・中国は前例のない投資主導経済を20年にわたって続けている。過去40年間に消費のGDP比は53%から38%へ低下し、消費が投資を下回り続けたことも異例。この投資主導経済の実態はコスト先送りによる需要創造になる。多くの資産が健全資産とはいえず、不良資産が積み上がっている。(一方、米国では労働者に購買力を与え、生活水準を向上させることで需要を創造してきた。過去40年間に米国の消費のGDP比は60%から68%に上昇している。)

・新興国のドル建て債務の増加も著しく、10年前の約2倍(約500兆円)まで増えている。足元ではドル高が続いており実質的な返済負担が増している。一部の国ではデフォルト懸念が高まっており、デフォルトがいったん起きればドル高が一段と進み、デフォルトが連鎖しやすくなる。

・国際金融協会(IIF)によると、新興国の債務残高は22年3月に1京3000兆円とリーマン危機直後の4倍まで増えている。債務破綻の危機に直面する新興国が増えている。

・世界で過剰債務企業が増えている。本業の利益が借金の利払いより少ない”ゾンビ”企業が全上場企業(2万4500社)に占める比率は2021年度に16%になっている。直近ではこうした企業が破綻に追い込まれる事例が相次いでおり、仏アリアンツは23年に世界の企業の倒産が21年比で26%増えると予想している。

・米ムーディーズは今後の世界の社債について、最も悲観的なシナリオだとデフォルト率が14.5%になると予想している。これは1933年の世界大恐慌の最中の15.8%以来の水準になる。リーマン・ショック時のデフォルト率は12.1%になる。

<バブルについて>
バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより生じる現象。現在バブルは発生しているが、その投資主体は民間から政府(中央銀行)にシフトしているので、バブルは破裂しにくい。政府が資産を売却すればバブルは破裂するが、政府債務は実質的に返済不要なので資産を大きく売却する可能性は低い。足元で一部中銀はインフレ対策として資産の売却を始めてはいるが、インフレが落ち着けば売却をやめるので、”中銀バブル”が完全崩壊する可能性は低い。


■金融政策、財政政策
・2023年は世界中の中銀がインフレ対策で金融引き締めを行っていたが、2024年は金融緩和に転じるもよう。米バンク・オブ・アメリカは2024年に世界の中央銀行が年間で152回の利下げに踏み切ると予想している。

・日銀が金融引き締めをしないのは、日本のインフレ率が2%程度と低く、コストプッシュ型の悪いインフレのため。日銀は現在のような需要不足の状態で引き締めをすると景気後退に陥ると考えている。ただ、2023年4~6月期は需要超過に転じている。この状態が続けば金融引き締めに転じる可能性がある。ただ需要超過は大きく進みそうにはないので、引き締めに転じるとしても穏やかなものになりそう。

*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利をあまり引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀は政策金利を1%まで上げると2年程度で債務超過に陥るとされる。FRBは政策金利を3.0~3.8%まで上げると金利収支が「逆ざや」に転じるとされる。ECBも金利引き上げにより財務状態が危機的な水準に陥る可能性が高い。
*MMTは日本が行っている金融・財政政策とは若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。


■政治
・日本の政治は比較的安定しているが、ちぐはぐな政策や政治資金問題で内閣支持率は20%台まで低下している。財政支出も相変わらずの大盤振る舞いで、この調子でいくと近い将来、日本は財政破綻する。
・海外は不安定。ウクライナ戦争により、ロシアと西側の関係は当分冷え込みそう。
・パレスチナではイスラエルの計画通り?戦争が始まった。中東地域はしばらく不安定な状態が続きそう。
・米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に長期にわたり続きそう。
*米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・米国では資本主義の帰結として、格差拡大が続いており、民主主義が機能不全に陥りつつある(2023/10/28日経1/8日経ひふみアカデミー2024年1月)。近々政治的な大混乱(分断)が起こる可能性がある。

・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制を強化しているので、民間の活力がそがれつつある。国外からの投資も、その不透明感から著しく減っている。この調子でいくと中長期でも経済成長が減速していく可能性が高い。中国共産党が一党支配を最優先する限りこの傾向は続き、中国は最終的にロシアのような国になる可能性がある。
・23年の対中国直接投資額は21年の51兆円の1割程度まで落ち込んでいる。2/19日経
・中国経済がかつての日本のようなデフレに陥りつつあるという見方が強まっている。日本は1990年代から不良債権、雇用、設備の3つの過剰に悩まされた。中国も今同じ3つの過剰に悩まされている。当時の日本は欧米市場へのアクセスが確保され、海外に活路を求められた。しかし今の中国は米国と対立し、欧州でも中国製EVを締め出す動きが広がっている。米欧の半導体輸出規制により先端半導体の調達にも支障をきたしており、技術的にも追い詰められつつある。3/7日経産業

・EUは域内で財務格差が広がりつつあるが、コロナ危機やウクライナ戦争などの危機でEU加盟国の結束は強まっており、政治は比較的安定している。
・2024年の米大統領選でトランプ氏が返り咲いた場合、米国外の先進諸国は経済面と政治面で厳しい状態に陥る可能性がある。世界は権威主義的な超大国に支配されるようになり、そこでの最大の敗者は欧州で、不法移民に圧倒され、ロシアに脅かされ、中国の挑戦を受け、経済的にも軍事的にも弱く、政治的にも分裂し、経済的、地政学的な衰退に直面する可能性がある。1/27ヴェリタス


■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はピークアウトはしているが依然高水準にある。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米個人消費の先行指標である12月の消費者信頼感指数は104とそれほど悪くない水準にある。同指数が80を下回ると景気後退のリスクが高まる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は低下傾向で47.8と16ヶ月連続で中立水準を下回っている。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数は52.6と中立水準を上回っている。下降トレンドではあるが下げ止まりつつある。
*ISM指数やPMI指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増えやすくなる。
ユーロ圏のPMIは45.7。好不況の分かれ目である50を21カ月連続で下回っている。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは49.1とほぼ中立な水準。基調としては横ばい傾向。
・世界景気の先行指標である銅価格はピークアウトしているが、高値圏を維持している。
・世界景気の先行指標である半導体指数(SOX指数)は2022年10月頃に底を打ち、大きく反発している。現在、最高値を更新している。
米国の失業率は低位で推移しており現在3.9%。ほぼ「完全雇用」の水準(3.5%)にある。
*米国では失業率が前年同月と比べて0.25%上がると景気後退に陥りやすくなる。
*失業率の3カ月平均が、過去12カ月の最低値から0.5ポイント上昇した時に景気後退が始まりやすい。2023年の失業率の最低値は3.4%で2023年の後半に3ヶ月平均が一時3.9%に近づいている。
*米失業率が「完全雇用」の水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。
・米景気の先行指標であるダウ輸送株ラッセル2000はそこそこ高値圏で推移している。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りはピークアウトしつつあるようにみえる。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るとされる。現在は3つ起きている。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照


■その他の株式シグナル
米個人投資家の心理は株価の先行指標になる。個人投資家の心理は株式市場の「逆指標」になるとされ、「悲観」の場合は大底、「楽観」の場合は天井を示唆することが多い。この指標が「異常な弱気」を付けた後の6~12ヶ月は平均以上の株価上昇になりやすい。現在は「楽観(強気)」の水準。

ブルベア指数も米個人投資家の心理を示し、株価の先行指標になる。現在は+27%と「強気」の水準。

投資家の強欲と恐怖指数も株価の先行指標になる。この指標が「Extreme Fear(極度の恐怖)」となっている場合は、すでに株価にほぼすべての悪材料が織り込まれていることが多く、株価は好材料に反発しやすい(東洋経済)。現在は71で「Greed(貪欲)」の水準。

・米機関投資家の株式持ち高比率を示すNAAIM Exposure Indexも先行指標になる。この値が80を超えると過度の楽観、20を下回ると過度の悲観になる。現在は103と過度の楽観になる。

米VIX指数(変動率指数、別名「恐怖指数」)も株価の先行指標になる。この指標が低位にある場合は「楽観」を意味し、株価が上昇しやすくなる。しかし、低位の状態が続くと投機的売買が盛んになり、その後株価が急落することが多い。現在のVIX指数は13.1と低位な水準にある。

・1871年以降の米国の平均的な景気後退期間は16.7ヶ月になる。株式は景気に6ヶ月先行するので、景気後退が始まって10ヶ月くらいたった頃が仕込み時になる。

・景気後退入りすると最初の数ヶ月間に株価が大きく下落する傾向がある。景気後退入りして最初の4ヶ月間のどこかで株式を買った場合、その後6ヶ月間のリターンはマイナスに終わることが多い。景気後退入りから5~14ヶ月の間に株式を買った場合は、その後6ヶ月の投資リターンはプラスになりやすい。


■その他の指標
・日経平均の騰落レシオは125と過熱の水準。
・日本株の信用評価損益率は-2.55%と“天井”に近い水準。
・先進国の株価チャートでは、軒並み最高値を突破しており、基調は強い。新興国でもインドSENSEXやブラジルボベスパが最高値を更新している。

長期計画

 「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」といわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
景気循環的にそろそろ景気後退に陥りそう。ただ家計や企業、金融機関の財務状態は比較的良好なため深刻な景気後退に陥る可能性は低い。

*景気循環(債務循環)の基本的なパターンは、不景気 →金融緩和 →景気拡大(債務拡大)・失業率低下 →景気過熱・インフレ過熱 →金融引き締め →景気後退(債務圧縮) →不景気 の流れになる。

現在、プロの間では「景気後退には陥らない」という意見が多数派を占めている。本当にそんなことが可能なのか。景気後退要因と景気浮揚要因を列記して考えてみる。

<景気後退要因>
・企業債務はGDP比で過去最高水準まで高まっており、金利も2008年の金融危機前と同水準まで高まっている。いつ資金の逆回転が起きてもおかしくない。一度「債務爆弾」が爆発すれば、市場の疑心暗鬼が高まり爆発が連鎖しやすくなる。現在、米国にある大きな債務爆弾は「商業用不動産債務」と「シャドーバンキング債務」になる。
・米欧などの先進国中銀はこの2年で政策金利を急激に引き上げている。金利高の影響は1年くらいの時差をもって経済に反映される。2024年はその影響が現れる年になる。
・過去のパターンでは米利上げ停止後1年くらいに「○○ショック」が起こり景気後退に陥っている。今回FRBは2023年9月頃から利上げを停止しているので、今年の9月頃に「○○ショック」が起こる可能性がある。
・逆イールドが発生している影響で、融資・投資が減っている。銀行の融資態度は景気との相関が強く、過去、融資基準の厳格化が進んだ時期には景気後退が発生している。
・米家計のコロナ貯蓄はほぼゼロになっている。10月からは学生ローンの返済が再開されている。クレジットカード債務や自動車ローンの延滞率は足元で13年ぶりの高さになっている。1/29日経
・株式市場の牽引役になっている「生成AIブーム」が”幻滅期”に入り、いったんしぼむ可能性がある。
・2008年に起きた金融危機では、中国の大型投資により世界経済は救われたが、今回はそのような支え手がいない。

<景気浮揚要因>
・失業率が低い。米GDPの約7割は個人消費が占めるが、失業率が低水準の状態で維持されると、所得が維持され、消費が落ち込みにくくなる。1960年代以降に8回あった景気後退局面では、失業率が平均で3%強上昇しているが、今後想定される失業率の上昇幅はその半分にも満たない。
・米国では家計債務の約7割を住宅ローンが占めるが、コロナ過の低金利時代に多くの世帯が住宅ローンを借り換えているので、債務返済コストが低くなっている。住宅価格は高騰しており、その含み益を借り換えで現金化する手法も活発になっており、約60兆円の余剰資産が生じたという試算もある。1/26日経
・米家計は金融資産の5割を株式や投資信託などで運用しているので、株高により、家計は潤っている(1/29日経)。この20年の株価上昇の結果、家計の金融資産の増加は個人所得の増加の6倍になっている。住宅価格は3倍に上昇している。2/21日経産業
・景気サイクルの終盤にもかかわらず、米家計のバランスシートは健全。家計の可処分所得に占める元利払いの返済負担比率は低下している。
・デジタル化が米国経済を強靱化している。デジタルエコノミーの伸び率は平均年7%超あり、それが米経済を下支えしている。
・インフレが鈍化している。コロナ禍で深刻になっていた移民減少や半導体不足などの供給制約が緩和されてきている。インフレ指数の約3割を占める賃料も落ち着き始めている。
・インフレの主因となっていた、新型コロナやウクライナ戦争の供給ショックが落ち着きつつある。
・現在はサービス業が経済成長を主導しているので、景気が落ち込みにくい。サービス業は投資資金を製造業ほど必要とせず、イノベーションが起こりやすいので、成長力が落ちにくい。
・米国では半導体産業や環境産業(EVなど)などの巨大産業を政府が支援しているので、景気が落ち込みにくい。
・インドなどの新興国経済が好調。中国はいろいろと問題を指摘されているが、それでも4%超の成長をできる見通し。
・過剰流動性(金余り)が維持されている。コロナ禍で政府がばらまいた資金が市場にまだ高水準で残っている。マネーストック(民間に流通しているお金の総量)は長期的に右肩上がりで増え続けている。

<まとめ>
景気後退に陥るかどうかは微妙なところだが、現時点では深刻な景気後退は避けられそうな雰囲気。米失業率がポイントになりそうなので、そこを重点的に見ていきたい。


■他の景気後退シナリオ
景気後退シナリオ1:中国のバブル崩壊で景気後退
中国の民間債務は積み上がっており、GDP比220%に達している。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こりやすい。バブルが崩壊すれば独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性もある。そうなれば政治的混乱も相まって不況が深刻化する。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただ中国政府には財政・金融政策をする余地があるのでバブルが崩壊する可能性は低い。

中国政府が取れる政策が限られてきた。政府や民間企業の債務残高の合計はGDP比で約300%に膨らんでおり、大規模な財政支出はしにくい。一方、人民元安が進んでおり、中国人民銀行(中央銀行)は大幅な利下げをしにくくなっている。


景気後退シナリオ2:中国が武力で台湾を併合し、米中戦争が激化して景気後退
中国が2024年頃までに武力で台湾を併合するとの予想がある。実際にそれが起きれば米中戦争が激化し、世界景気には強い下押し圧力がかかる。ただ中国は西側から制裁を受けると食糧危機に陥るリスクが高いので、中国が台湾に侵攻する可能性は低い。戦争を仕掛けるとしたら米国側からになる。

とはいえ、中国は米国債を売り続けており、「安全資産」である金の保有は増やしている。台湾に侵攻する可能性も少しはあるのかもしれない。


景気後退シナリオ3:「脱成長」経済システムに転換して景気後退
COP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は「産業革命以前から21世紀末までの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指して、努力を追求することを決意」することで合意したが、現在その実現は絶望的な状況にある。各国の2030年時点での目標がすべて達成されても21世紀末までの気温上昇は2.4度になるとされる。そうなれば海面上昇で沈む島国が出て、山火事や巨大台風などの自然災害が多発し、水不足、食糧危機、感染症のリスクなどが増大する。このような未来が科学的に予測されている現状で対策を取らないという選択肢はない。問題の根幹は現在の「成長型」経済システムにあるので、「脱成長」の経済システムに転換する必要がある。ただ、現在の状況で「脱成長」の経済システムに転換すれば景気後退は避けられなくなる。

深刻な景気後退に陥ると、財政問題や福祉問題など目先の深刻な問題が噴出するようになり、それらの問題に対処せざるを得なくなる。そのため経済システムの転換はしばらく先になりそう。環境危機が目先の大問題に発展したときに初めて転換の機運が生まれそう。

2022年は世界各地で記録的な熱波や干ばつが発生した。2023年もしかり(1/13日経1/13日経3/25日経)。英保険仲介大手のエーオンによると22年の気象災害の損失は2990億ドル(約40兆円)に達するという。IPCCは「産業革命前に比べた世界の気温上昇は2030年代初めにも抑制目標の1.5度に達する」と予測している。経済システム転換の機運は早々に訪れるのかもしれない。

もしくはAI・ロボット社会が温暖化問題の打開策になる可能性もある。温暖化の最大の要因は「人の活動」になるが、AIやロボットが進化・普及すれば、数十億人の「無用者階級」が生まれるともいわれているので、人が減っていく可能性がある。そうなれば環境負荷の低い社会が実現する。

国連が2022年7月に発表した世界人口推計では「2086年に104億人で人口はピークを迎える」と予測しているが、この数値は2019年の予測「2100年に109億人でピークを迎える」からピーク時期が前倒しされている。AIやロボット、教育などの影響を考えると、今後もピーク時期の前倒しが続く可能性が高い。


景気後退シナリオ4:災害や紛争で景気後退?
大災害や戦争が起こると景気には強い下押し圧力がかかる。しかし、こうしたことが起こると必ず政府が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば景気はV字回復することが多い。一般に、災害や戦争は押し目買いのチャンスといわれている。今回のような新型コロナウイルスのパンデミックも株式市場には追い風で、社会・経済構造の転換や金融緩和などにより、株高が発生しやすくなる。

ただし、日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は1000兆円規模の損失が発生するようなので、景気後退もしくは財政破綻する可能性がある。


■今後の計画
円が125円くらいまで上昇したら、3倍以上の値上がりが見込める海外資産を買っていく。

・米市場に上場している「銅ETF」「銀ETF」「ウランETF」
「グリーン革命」で銅需要は右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などで供給不足に陥りそう。銀やウランもグリーン経済の影響で供給不足に陥りそう。ただ銅は今後2~3年はやや供給過多に陥るという見方もある。

・マグニフィセント7+1
マイクロソフト、アップル、アマゾン、アルファベット、メタ、テスラ、エヌヴィディア+セールスフォースはすでに巨大企業だがさらに巨大になりそう。この中で現在一番割安感があるのはアルファベットになる。アルファベットに対する規制リスクは高いが(2/29日経3/8日経)、AIやデータ、自動運転などの分野ではトップクラスにいるので、今後大きな成長が期待できる。・・AIはマイクロソフトが独占しそうな雰囲気になってきた。2/27ロイター3/3日経

・ファーストトラスト・クラウド・コンピューティングETF
この「クラウドETF」は、マイクロソフトやアマゾンなどクラウド基盤を提供する銘柄と、クラウド経由でソフトウェアを提供するSaaS銘柄で構成されている。株価は最高値から大きく下落しているが、ビジネスモデルや長期的な見通しは悪くない。

・グローバルX・AI & ビッグデータETF
 ロボ・グローバル・ロボティクス&オートメーションETF
 ファーストトラスト・ナスダック・サイバーセキュリティーETF
 iシェアーズ・半導体ETF
AI・ロボット社会ではAI企業、ロボット企業、セキュリティー企業、半導体企業の力強い成長が期待できる。

・メルカドリブレ
ナスダックに上場している南米最大のeコマース企業。ビジネスモデルはAmazonのマーケットプレイスに近い。もう一つ手がける事業がフィンテック事業。南米は欧米などと異なり、銀行口座やクレジットカードを保有してない利用者が多い。ラテンアメリカ市場ではオンラインで販売した際に支払処理をどのように行うかが大きな問題となっている。メルカドリブレはそれぞれの国情に併せてQRコードなどを活用した様々な決済サービスを提供している。ラテンアメリカはインターネットの普及自体が遅れているため先進国と比べて出遅れ感があり、その分成長余地が残されている。問題はカントリーリスクになる。サービスを提供している18カ国のうち、アルゼンチン、ベネズエラ、ニカラグアのリスク評価は最低ランクで、最大の売上を稼ぐブラジルも下から3番目の評価になる。ビジネス自体は順調であっても為替レートが大幅に低下すればドル建ての業績は悪化してしまう。

・SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンド 手数料0.23%
 三菱UFJ-eMAXIS Slim 全世界株式 手数料0.05%
 三菱UFJ-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)手数料0.09%
つみたてNISAで使えそうな投信。インベスコQQQは手数料が他よりも少し高いが、成長力を加味すれば大した問題ではなさそう。つみたてNISAは米株が暴落したときに始める予定。

『投資の教科書』

 日経新聞の元記者が書いた『転換の時代を生き抜く投資の教科書』を読んだ。この本の基本コンセプトは「投資は資産形成だけでなく、教養になる」というもの。新味があり、なかなかおもしろかったので、印象に残ったところを簡単にメモっておく。

●「株式投資を始めると、あらゆるものへの関心が飛躍的に高まり、ニュースが自分ごととして入ってくる。そしてさまざまな出来事がつながっていく。こうした発想の連鎖はビジネスパーソンに必要な教養やセンスにもなる。」
*「 」内は要約

確かに株式投資を始めてから新聞をよく読むようになり、ちゃんと理解できるようになった。以前は日経新聞の「経済教室」なんて誰が読むんだと思っていたが、今では興味を引く見出しがあれば目を通すようになった。これは「金を賭ける」という緊張感がなし得たことだとは思うが、結果的に教養もついたように思う。

それとこれはブログを書いているから言えることになりそうだが、投資ブログを始めてから分析力や創造力もアップしたように思う。ブログで株価に影響を与えそうな情報を集めて、あれこれ考えながらまとめていくと分析力が高まる。また情報を整理していると情報同士がつながって思いがけないアイデアが浮かぶことも多い。

世界経済フォーラム(WEF)が2023年に発表した雇用の未来予測リポートには、今後5年間に重要性が増すスキル1位に創造的思考、2位に分析的思考が挙げられている(2023/5/1WEF)。投資ブログによりこれらスキルをトレーニングできそうだと思った。

●「投資は経営の疑似体験になる。投資(経営)の世界で連戦連勝が続くことはまずない。いろいろなリスクに向き合いながら判断を重ねていくことにより、リスクの取り方、向き合い方のバランス感覚が鍛えられていく。投資はビジネスパーソンのマインドセットを磨く手軽なリスキリングともいえる。」

株式投資では、投資した会社の経営戦略や経営判断を分析して、この先どうなるかを予想し、その結果を見ていくわけだが、確かにこれは経営の疑似体験ともいえる。自分で経営判断をすることはできないが、経営者の経営判断を判断することはできる。そしてリアルな世界でその結果を見ることができる。株式投資をしていると、経営判断力やリスクマネジメント力も鍛えられそうだと思った。

●「株式市場は世界中の英知とマネーが網引きする世界。さまざまなバックグラウンドを持つ投資家が参加し、その誰もが利益を得たいと考えている。何十年も前からある理論が通用するといった悠長な世界でもない。昨日まで通用していた理屈が全く通じないこともある。」

これまで株式投資で楽をしようと必勝パターンを探してきたが、なかなか見つからないのはこういうことかなと思った。株式投資では勤勉さや機敏さ、柔軟さが重要で、怠けながら勝つのは難しそうだと思った。

●「「事実は小説より奇なり」という。投資の世界では予定調和とは無縁の経済ドラマが繰り広げられている。日々の生々しい出来事をどう解釈し、お金を動かすのか。さまざまな要因が複雑に絡み合い、めまぐるしく動き、その帰結が株価や為替レートといった数字として表れる。そこには幾多もの人間ドラマが埋め込まれている。こんな小説は書こうと思っても書けない。」

株式投資には確かにドラマ要素がある。会社を創業して上場までこぎ着けた社長は例外なくキャラが濃い。そしてその周りには優秀な人たちが集まっていることが多い。今はそれらの人たちがSNSなどで情報を発信しているので、見ていていろいろな発見がある。

こういったキャラクターは並の作家には創作できない。だからヘタなドラマより株式投資ドラマのほうがよほど刺激的になるのではないかと思う。自分が投資した会社のドラマが不愉快な結末で終わることが多いのは残念だが、それでもドラマとして見ればなかなかの出来ではないかと思う。

このブログがこんなに長く続いたのは絶えず予想外のドラマが起こり続けていることも一つの要因かもしれない。

本書で参考になったのは、こうした意義的なところだけでなく、PERやPBR、自己資本比率、バランスシートなどの基礎知識的なところも参考になった。これまでこうした指標や財務諸表は知っているつもりだったが、本書を読んで、あまり理解していないことがわかった。本書を読んでから、会社の企業価値を評価する際は、PSRではなくPERを使うようになった。

PCEとCPIの違いや、マネーストックなど、マニアックな用語の解説も参考になった。これらもわかっているようでわかっていなかった。実戦で使えそうな知識が増えた。

あとは人間・後藤達也の考え方や哲学が少しわかったのもよかった。後藤さんのことは日経記者時代から注目していたが、後藤さんが「ウォール街ラウンドアップ(電子版では「NY特急便」)」に書く、長期金利などの仕組みと時事情報を絡めた、キレ味鋭い説得力のある記事はとても参考になった。あれこそまさに「投資の教科書」だった。高速でこのような質の高い記事を書ける人はどのようになっているのかと興味があった。本書でその謎が少し解けた。

個人的に少し残念なのは、後藤さんが日経新聞を辞めてしまったこと。現在、後藤さんはXやYouTube、note、各メディアなどで活躍しているが、そこで発信している情報は主に初心者向けのものになるので正直物足りない。後藤さんの頭脳ポテンシャルが最大限発揮されるのは日経新聞だと今でも思っている。

本書で少し気になったのは、ところどころ太字になっていること。これはnoteでも見られることだが、少し押しつけがましく感じる。重要と思うところは個人個人で違うので、なくてもいいのではないかと思った。