2020年10月2日金曜日

売買チェック

*ブログの次回更新は1月。

■9月
9月の売買はなし。

■8月
・ランサーズ 新規買い
コロナを機にクラウドソーシングへの移行が加速すると思ったから。

・ランサーズ 全売却 損益+36%
コロナを機に大手派遣会社がクラウドソーシング市場に続々と参入してきていることがわかったから。8/19日経

■7月
7月の売買はなし。

持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
クラウドサインは快走中だが、弁護士プラットフォーム事業の方は雲行きがあやしくなってきた。アクセス数の回復に相当手こずっているようで、昨年11月からアクセス数は減少の一途をたどっている。

以前、グーグルで「法律相談 ネット」と検索すると弁護士ドットコムが運営する「みんなの法律相談」がトップに表示されていたが、今では5番手に表示される。また「弁護士 大阪」と検索すると類似サイトのココナラよりも下に表示されてしまう。

弁護士ドットコムのサイト自体には優位性がありそうなので、なにか技術的な問題が発生しているのかもしれない。ただ、このままアクセス数の低下が止まらない場合は弁護士マーケティング事業に影響してくるので、今後アクセス数の回復を図るため「みんなの法律相談」を無料にする可能性もある。

おそらく今後立て直していけるとは思うが、この点が少し心配。
*現在「法律相談 ネット」で検索すると「みんなの法律相談」が2番手に表示される。SEO(検索エンジン最適化)対策が効き始めたのかもしれない。

会長が財務大臣政務官になり、兼職禁止の規定により退任してしまった。この会社の要所要所には精鋭が配置されており、事業の方は軌道に乗っているので業績の方は問題なさそうだが、株主として一抹の寂しさがある。とはいえ、これは「栄転」であり、この会社のおかげで資産が倍増したので、今後の会長の活動は陰ながら応援しようと思う。

・・しかしどうして会長は法務大臣やデジタル改革大臣の政務官ではなかったのだろうか。会長がデジタル庁の政務官になれば面白い展開になりそうなのだが・・。日本の大臣は専門外の人間が就くことが多いのでよくわからない。(日本では仕事だけでなく政治も「メンバーシップ型」なのかもしれない。この点については「ランサーズ」を参照)

今後3年の予想売上高成長率は年率30%程度。現在妥当だと思う時価総額は1500億円(株価7000円、PSR30倍)くらい。2030年の予想売上高は、売上高成長率が年率25%の場合は400億円、年率35%の場合は860億円。2030年の予想時価総額は4000~8000億円。

■ジモティー
基本シナリオ:最強の地元取引プラットフォームに
第2四半期決算は、アクセス数が増えて業績が下振れする、という予想通りの内容だった。株価は上下どちらに振れてもおかしくない状況だったが、長期目線の投資家の方が多かったようで、決算後に大きく上昇した。株価はこの調子で4800円くらいまではいきそう。

「ジモティー」の主要カテゴリーの件数を記録していく。
・売ります・あげます 7月中頃  893080件 → 10月 945116件
・メンバー募集 67116 →69364
・助け合い 25300 →26203
・不動産 466478 →511537
・アルバイト 43710 →44585
・正社員 13703 →14002

今後3年の予想売上高成長率は年率20%程度。現在の妥当だと思える時価総額は280億円(株価4800円、PSR20倍)くらい。2030年の予想利益は現在の10倍くらい。

■ペプチドリーム
基本シナリオ:最強のペプチド創薬プラットフォームに
コロナの影響で今期の臨床入りは2件くらいにとどまりそう。コロナが落ち着くまでは冴えない展開が続くのかもしれない。ただ、機関投資家注目の多発性骨髄腫の薬剤開発は順調に進んでいるもよう。

中村超硬を調べていたら、中村超硬がペプチスター(ペプチド製造工場)事業から撤退していたことがわかった。今回の撤退は超過債務の解消が主目的だが、他の新規事業(ナノゼオライト事業)の方は撤退してないので、ペプチド製造事業の見通しはあまり良くなかったのかもしれない。

今後3年の売上高成長率は年率20%程度。現在の妥当だと思える時価総額は5000億円(株価4000円、PER100倍)くらい。2030年の予想利益は、売上高成長率が年率20%なら300億円、年率30%なら700億円。2030年の予想時価総額は2兆~5兆円。

■ステムリム
基本シナリオ:再生誘導医薬が再生医療の主役に
再生誘導医薬と似た作用機序(仕組み)を持つミューズ細胞の存在が気になり始めた。当初、ミューズ細胞(薬剤)は他人の細胞を体外で培養するものなので、コストや安全性、効能の面で劣ると思っていた。しかし、第二相臨床試験の結果は良好のようなので、脅威になりうると思い始めた。9/4日経

ミューズ細胞について調べてみると潜在市場は2700億円以上あり(2019/11/26日経)、脳梗塞の第二相治験では梗塞を起こしてから4週間までなら効果があるようなので、もしここで再生誘導医薬が優位性を示せれば、テンバガーを狙えるのではないかと思った。
*現在ステムリムが行っている脳梗塞治験では「発症後4時間から24時間の患者」がターゲットになっている。おそらくこのターゲットではティムスのSMTP化合物には勝てない。

米セルジーンで臨床開発部長だった永松和朗氏が7月にステムリムの開発部長に就いた。この会社にも国際色が出てきた。
*米セルジーンは2019年に米ブリストル・マイヤーズスクイブに7兆円で買収されたバイオテクノロジー企業。

国(AMED)が実施するコロナ治療薬の開発にステムリムの薬剤が採択された。適応症は重症化したコロナ肺炎になるが、これは再生誘導医薬のコンセプトに合っているので、トントン拍子で開発が進むかも知れない。

ステムリムがまたストックオプションを発行した。この半年間で3回も発行している(10月に4回目を発行予定)。今後の業績によほど自信があるのかもしれないが、ストックオプションは発行する側にとっては無リスクなので、あまり参考にするのはやめようと思う。・・しかし、ストックオプションをこれほど連発した会社はこれまで見たことがない。ひょっとすると「大爆発」するのかもしれない。

動物実験施設の建設計画があったが、現在の施設を拡充する方向で動いているようなので、資金調達の必用はなさそうだとわかった。

今後3年の予想売上高成長率は年率0~10%程度。業績が急拡大するのは早くても3年後。現在の妥当だと思える時価総額は800億円(株価1400円)くらい。

■eBase
基本シナリオ:最強の商品情報管理プラットフォームに
コロナの影響で契約が遅延気味のようだが、コア事業(eBASE事業)の方はそこそこ順調な伸び。eBASEが提供するソフトウェアはクラウドサインのようにネットワーク効果付きなのでまだまだ成長しそう。

プラットフォームで集めたデータに付加価値を付けて販売するという新規事業の方も期待できる。一般に「観察できなかったものが観察できるようになると革命的な変化が起こる」と言われているが、データも顕微鏡や望遠鏡のようにこれまで観察できなかったものを観察できるようにしているので、eBASEもうまいことやれば小売業界に革命を起こせるかもしれない。現在、需要予測システムやPOSシステムを手がけるデータテクノロジー企業との提携を進めているようだが、こういった会社との提携を増やしていけばデータの付加価値を高めることができそう。

ただここで少し気になるのが、この会社の”おっさんくさい”ところになる。社員の口コミなどを見ると、この会社の組織文化は「統制的」「官僚的」な雰囲気があるように見えるが、データ利活用が活発な会社は「協調」や「創造」を重視する組織文化があるようなので、この点が今後少しネックになってきそうではある。

今後3年の予想売上高成長率は年率10%。現在の妥当だと思える時価総額は550億円(株価1200円、PSR25倍)くらい。2030年の予想利益は現在の3倍くらい。
*PSR算出で使う売上高は「eBASE事業」の売上高だけ。

■チームスピリット
基本シナリオ:最強の業務管理クラウドソフトに
コロナ下で、ラクスの「楽楽精算」は大きく伸びているが、「TeamSpirit」は伸びが若干鈍化している。「TeamSpirit」は単一ソフトと比べて大がかりなシステムのため導入が減っているとのことだが、「楽楽精算」を導入した企業が「TeamSpirit」を導入する可能性はほぼないので、この調子でいくとまずい状況になる。

チームスピリットは競争の激しい中小企業向けではなく、大企業向けに力を入れていくとは言っているが、大企業向けでも「コンカー」などがおり、競争は激しそう。

「TeamSpirit」が「楽楽精算」などの単一ソフトとAPI連携(ソフトウェア連携)をすれば状況は変わるかもしれないが、今のところそれをする気配はないので、今後成長スピードが落ちていくかもしれない。

勤怠管理や経費精算などを一体化した「TeamSpirit」のコンセプトは面白いと思うのだが、各々のソフトが弱いとろこに問題があると改めてわかった。

今後3年の予想売上高成長率は年率25%程度。今年の妥当だと思える時価総額は260億円(株価1600円、PSR10倍)くらい。2030年の予想利益は現在の3倍くらい。

■今後の計画
ポートフォリオの再構築はほぼ完了。今後しばらくはこの布陣でいこうと思う。

10倍株候補 ジモティー

■どんな会社か
地元取引掲示板「ジモティー」を運営する会社。「ジモティー」とは全国市区町村の情報を目的別に分類(クラシファイ)して掲載するクラシファイドサイトで、ユーザーは基本無料で「三行広告」を出すことができる。取引は直接会って行うのが原則。

収益の8割はサイトに表示される広告枠の販売から得ており、2割は提携サイトへの送客による成果報酬と、投稿有料オプション(投稿を目立たせる機能)からの収入になる。事業は国内のみで運営されており、完全な競合は存在しない。

広告枠の販売はページビューが増えるほど広告収入も増える仕組みで、ページビューはテレビCMや上場による知名度向上、コロナによる巣ごもりなどで順調に増えている。投稿が増えると自然検索でヒットする順位が上がり、広告宣伝費が軽くなるという仕組みでもあるので、ユーザーが増えるほど利益率が上昇するビジネスモデルになる。

業績は
2017年12月期が売上高6.6億円、営業損失-3.7億円
2018年12月期が売上高9.8億円、営業利益900万円
2019年12月期が売上高12.6億円、営業利益0.8億円
2020年12月期が予想売上高14.3億円、予想営業利益3億円
になる。2018年12月期から投資回収期に入っており、足下の業績も順調に拡大している。

利益は各四半期でばらつきが出るが、これは広告宣伝(テレビCM)の影響になる。大型家具・家電の処分が多くなる4月と12月の少し前にテレビCMを集中的に打つので、第1四半期と第4四半期の利益は下ブレやすくなる。

■成長ストーリー
「最強の地元取引プラットフォームに」が基本シナリオ。

ジモティーの基本ミッションは「粗大ゴミ削減」「貧困緩和」「ご近所付き合いの再構築」の3つになる。ジモティーはこれらのミッションをこなすことで、地域住民にとってなくてはならないプラットフォームになることを目指している。

現在、世界中で温暖化や環境破壊が続いているが、これらを食い止め、持続可能な状態にしていくにはリサイクルやシェアリングの発想が不可欠になる。リサイクルやシェアリングはネットとの相性がよく、ジモティーはこれらを円滑に行えるプラットフォームを提供することで地球への負荷を低減しようとしている。

ジモティーは各自治体との連携も強化し始めており、今年2月にはさいたま市、7月には北海道北見市との連携を発表している。各自治体では増え続ける粗大ゴミの処分が課題となっており、ジモティーと連携することで粗大ゴミの削減を目指している。

2つ目のミッションは「貧困緩和」になる。日本では世帯の貧困化が社会問題になりつつあるが、日本の世帯の平均所得は非正規雇用の増加などにより長期的に低下傾向で(*2014年以降は最低賃金引き上げ策などによりいったん反発)、今後もAIやロボットなど影響により、さらに低下していく可能性が高い。現在、平均所得が300万円以下の世帯は全世帯の約33%あり、このような状況で一定の生活水準を維持するには地域内での譲り合いが不可欠になる。ジモティーは不要品を譲り合えるプラットフォームを提供することで「貧困緩和」に貢献しようとしている。

3つ目のミッションは「ご近所付き合いの再構築」になる。日本では核家族化やインターネットなどの影響により地域住民同士の繋がりが希薄化しつつある。そのため、何か助けが必用になったときに近隣住民に協力を求めにくくなっている。ジモティーは個人が気軽に「三行広告」を出せるようなプラットフォームを提供することで近隣住民の繋がりを再構築しようとしている。

これらのミッションをこなして「ジモティー」が地域社会にとってなくてはならないプラットフォームに成長していくと、今度は「仕事」や「不動産」のカテゴリーの隆盛も期待できるようになる。もともとこれらのカテゴリーは「地元」との相性がよく、米国でクラシファイドサイトを運営するクレイグスリストの求人広告プラットフォームは全米最大規模にまで成長している。

日本でのクラシファイドサイトは始まったばかりで、ジモティーの売上高はまだ15億円にも満たない。先行する米中のクラシファイドサイト企業の売上高は2000億円を超えているので、ジモティーには少なくともあと10倍以上の成長余地がある。

■問題点
・ヤフーやメルカリが参入してくる可能性がある
クラシファイドサイトはフリマサイトとの相性が良さそうなので、ヤフーやメルカリが参入してくる可能性がある。両者とも知名度抜群で資金力(開発力)があるので、参入してきたら脅威になる。ただクラシファイドサイトが地域に定着するまで最低でも5年はかかるようなので(参照)、今からジモティーに追いつくのは難しそうでもある。

・買収される可能性がある
ジモティーは前途有望なクラシファイド広告市場を独占しているので買収される可能性がある。買収しそうな会社はZホールディングス(ヤフー・LINE連合)やメルカリあたりになるが、もし買収されたらテンバガーを達成できなくなる。

・広告枠の価値が低い
ジモティーのユーザーは基本的に金欠気味の人が多いので、広告枠を高い価格に設定できない。ただジモティーの広告枠は現状でかなり安い水準に設定されているようなので(参照)、今以上に下がることはなさそう。
*広告枠の価値が低いためか、「ジモティー」で表示される広告の中にはぞっとするような気持ちの悪いものもある。こういうのを見るとサイトを見る気が失せるので載せない方が良いのではないかと思う。

広告枠の価値が低いとドコモから提携を解消される可能性も出てくる。過去、ジモティーに出資していた三菱UFJキャピタル、KDDI、フジ・スタートアップ・ベンチャーズはすでにジモティーから撤退しているが、撤退したのはここらへんに理由がある可能性がある。ただドコモの真の狙いは国内最強のクラシファイドサイトを手に入れることだと思うので、この点はあまり心配しなくてもよいかもしれない。
参照:ジモティーIPOまでの資本政策。VCファンド主導型スタートアップの今後

・売り圧力が強い
この会社は昨年12月にベンチャーキャピタルのイグジット(保有株売却)を目的に上場されたが、ベンチャーキャピタルの保有株は少なくともあと25%は残っているので、売り圧力はまだまだ強そう。ただこれは本質的な問題ではないので、あまり気にしなくてもよさそう。

追記。8月にオプトが3%売却しているので、現在のVC保有比率は22%超まで低下している。

・株主目線の経営は期待できない
社長は自社株を8%保有する”オーナー経営者”ではあるが、創業者ではなく、株式上場後に「自社の戦略を説明する必用はない」として記者会見を行っていないので(3/4日経)、株主目線の経営は期待できそうにない。

ただ社長はリクルートのマネージャー時代のインタビューで「お客さんは熱い思いを持っている経営者が多い。とにかくお役に立ちたい。単なる金儲けには興味がありません」と語っており、2014年のインタビューでは「将来的に高収益事業になることを見据えて息の長いサイト運営を目指す」と言っているので、経営能力の方は特に問題なさそう。
*創業者はインフィニティ・ベンチャーズ・パートナーズの小野裕史氏になる。インフィニティ・ベンチャーズは主に海外で流行っている事業を国内に移植する事業を行うベンチャーキャピタルになる。
ーーーーー
<社長の経歴など>
・大学卒業後、リクルートで約10年間フロムエーやカーセンサーなどのB2Cプラットフォーム事業に携わる。2011年にヘッドハンターから声がかかり、CGM型プラットフォームにチャレンジしてみたいとのことで、2011年10月にジモティー社長に就任。
*B2C とは、Business to Customerの略で、企業と消費者の取引のこと。
*CGMとは「消費者生成メディア」の意で、一般ユーザーが参加してコンテンツができていくメディアのこと。口コミサイトやSNS、YouTubeなどがそう。CGM型は数千万人のユーザーが利用するので、B2C型を凌駕するコンテンツ生成力があるとされる。
ーーーーー

・創業者が株式を売っている
ジモティーはインフィニティ・ベンチャーズ・パートナーズが100%出資して作った会社だが、そのベンチャーキャピタルが持ち株をほとんど売り尽くしている(現在残っているとしても4%程度)。ベンチャーキャピタルは株式公開後に保有株式を売却してキャピタルゲインを得ることを目的にしている会社なので、株式上場後に株式を売却するのは当然なのだが、成長期待があるならもう少し持っていてもよいはず。内部事情をよく知るインサイダーが売っているので成長は頭打ちの可能性もある。ただインフィニティ代表の小野氏は2014年にジモティ-の取締役を退いているので、現在の内部事情にはそれほど通じてないのかもしれない。

・コロナで広告需要が減少している
ジモティーの収益の柱は広告収入になるが、コロナの影響で広告需要が大きく減少している。ただ、コロナは一過性のことであり、コロナが過ぎ去れば広告需要は元に戻るのでこれは本質的な問題ではない。コロナ下ではジモティーの利用率・知名度が向上するので、長期で考えるとコロナの影響はプラスに働きそうでもある。

・コロナでシェアリングが減るかもしれない
コロナの感染が拡大した場合は、感染リスクから対面取引や物品譲渡が敬遠される可能性がある。

・トラブルが頻発する可能性がある
「ジモティー」では対面取引が基本なのでトラブルが頻発する可能性がある。先行する米中では深刻な事件も発生しているもよう。ただジモティーはこの事業を10年近くやっており、米中のサイトも研究しているようなので、ここらへんのノウハウは蓄積されていそうでもある。ただ、それでもなにか大きな事件が起きた場合はユーザーが離れる可能性がある。

■チャート
過熱感はあるが、特に問題なさそう。
*現在のチャートは「ヤフー掲示板の影響力」を参照。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★★☆(4.3)
・参入障壁は高いか。★★★★☆。市場をほぼ独占しているのでかなり高い。
・ストック型ビジネスモデルか。★★★☆。人気のあるプラットフォームなのでストック型にはなるが、不況時は広告収入が落ち込む。
・時流にのっているか。★★★★★。地域に特化した取引サイトは社会に不可欠。

■まとめ
屁理屈をいろいろ書いてきたが、この会社は単純にビジネスモデルが強いので業績は順調に拡大していきそう。今後1,2年はコロナの影響で業績(広告収入)が伸び悩みそうだが、長期的な見通しは悪くない。株は長期で保有しようと思う。

ヤフー掲示板の影響力

6月の終わりにジモティー株を購入したが、その後株価が下落して損切りラインを一時割り込んでしまった。ジモティーを詳しく調べてみると良さそうな会社だとわかったので、損切りはしないことに決めたのだが、株価が損切りゾーンに入ると不愉快な気分になってしまった。

そこで試しにヤフーファイナンスにあるジモティー掲示板にカンフル剤になりそうな情報を書き込んでみた。そしたら翌営業日に株価が下げ止まり、そこから怒濤の反転攻勢が始まった。まさか、とは思ったが、他にこれといった情報もなかったので、この書き込みが影響した可能性もある。とりあえず今回の一連の流れを書いてみる。

■7月17日の半年チャート
ダブルトップとデッドクロスが完成。株価は累積売買高の「底」を下回る。機関投資家の空売りも増え始め、ダダ下がりモードに入り始めていた。


■7月18日(土)に書き込んだコメント
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米クレイグスリストの売上高 1000億円(2018年)
https://ja.wikipedia.org/wiki/Craigslist

米ebayのクラシファイド事業「Gumtree」「Kijiji」の売上高 1000億円
https://jp.reuters.com/article/ebay-classifieds-m-a-idJPKCN24I0BC

中国の58.comの売上高 2200億円
*SBIの外国株式サイトの業績予想を参照

ジモティーの売上高 15億円

ジモティーは20バガーくらいは目指せると思うけどなあ・・。

ただベンチャーキャピタルの売り玉(オプトと環境エネルギー投資の保有分25%)がはけるまでは上値が重そうだけどね。
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■現在の1年チャート

■まとめ
こう見てみると、やはり書き込みが影響した可能性も少しはありそう。ヤフー掲示板は投資家のアクセス数が最も多い掲示板なので、情報次第ではそれなりの影響力があるのかもしれない。今後また使えそうな情報があったら試してみようと思う。

・・ただ株価が予想以上に上がってしまった。これでクラシファイド広告市場が有望だとバレ、ヤフーやメルカリなどが参入してきたら大変なことになる。そう考えると、今回の書き込みは「余計なこと」だったのかもしれない。

ランサーズ

■調べようと思ったきっかけ
7/26ヴェリタスに「ランサーズの曽根秀晶取締役は「今回のコロナ禍は国内のクラウドソーシング市場の成長を10年早める」とあり、記事で紹介されていたファイバーインターナショナル(ナスダック上場)を調べてみたら株価が上昇していたから。

■どんな会社か
クラウドソーシング・プラットフォーム「ランサーズ」を運営する会社。事業規模は国内2位。

プラットフォーム事業は大別して「オンライン・スタッフィング・プラットフォーム」事業と「クラウドソーシング」事業の2つがある。

「オンライン・スタッフィング・プラットフォーム」事業とは、いわば派遣社員のオンライン版のようなもので、これまで社内で行っていたような事務、システム開発、デザインなどの業務をオンラインで完結させるものになる。業務を請け負うのは実名・写真登録をした、特定のスキルを持つ人材になる。依頼単価は相対的に高く、この事業がランサーズの売上の約9割を占める。

「クラウドソーシング」事業とは、匿名の個人がデータ入力や集計などスキルをそれほど必用としない業務を行うものになる。依頼単価は相対的に安く、ランサーズの売上に占める割合は1割程度で、年々減少傾向にある。

両事業とも企業がフリーランス人材に支払った金額の約20%をランサーズが手数料として受け取る。これがランサーズの収益源になる。

業績は
2019年3月期が売上高25億円、営業損失2億円
2020年3月期が売上高34億円、営業損失3億円
2021年3月期(予)が売上高40億円、予想営業利益0.4億円
になる。業績は順調に拡大しており、今期に黒字転換する予定。

■成長ストーリー
「ある意味、最強のクラウドソーシング・プラットフォームに」が基本シナリオ。

日本は1990年頃まで米欧に追いつけ追い越せで成長してきたが、いざ追いついてしまうと成長が止まってしまった。成長が止まった要因はいくつか挙げられるが、その中の1つに雇用形態の問題がある。

日本の主な雇用形態は終身雇用を前提に、会社の一員となった社員が様々な職責を負う「メンバーシップ型」になる。この雇用形態は職務を限定せず、様々な職務を経験させることで総合的な力を養うところに主眼を置いている。このような雇用形態は優れた製品を大量に作り、安価で世界に販売する工業時代には合っていた。しかしアイデア(ソフトウェア)が価値を生み出す情報時代には合わなくなってきた。

一方、米欧の主な雇用形態は職務内容があらかじめ明確に規定された「ジョブ型」になる。この雇用形態はスキルに応じて人材を配置し、成果によって評価するもので、個人の専門性を高めるところに主眼を置いている。成果を出せない場合や職務が消失した場合は雇用契約を解除されるという欠点はあるものの、適材適所に人材が配置され、専門性の高いプロフェッショナルを生み出すという利点がある。

創造性において競う場合、メンバーシップ型で育成されたゼネラリストは、ジョブ型で育成されたスペシャリストには勝てない。日本が今後「創造性」という土俵で世界と戦っていくためには雇用形態をジョブ型にシフトしていく必用がある。

政府はすでにこの点を認識しており、厚労省は2018年に個人の専門性を高めることを目的に、副業禁止の規定を「原則禁止」から「原則自由」に180度転換した。

企業の意識も変わりつつあり、副業を解禁する東証一部企業は2014年の15%から2019年には50%にまで増加している。

このような下地ができていたところで新型コロナが発生し、ジョブ型雇用への移行が一気に加速し始めた。新型コロナで急増したリモートワークは、職務内容を明確にし、その成果を評価するというジョブ型雇用そのものであり、リモートワークで増えている副業もジョブ型になる。

コロナが収束すれば元の勤務形態に戻る可能性もあるが、ランサーズの調査ではテレワーク経験者の9割が今後もテレワークを継続したいと回答しているので、この流れは継続する可能性が高い。会社側も今回の在宅勤務でリモートワークの利点を知り、会社にいない人材を使うことへの抵抗も薄れてきているので、リモートワークや副業が定着する可能性は高い。

コロナ発生後、ランサーズへの新規登録や企業からの問い合わせは倍増しており、上記を勘案すると、今後もこの勢いが続く可能性は高い。

国内の(広義の)フリーランス人口は現在、労働人口の5分の1(1100万人)程度になるが、米国では労働人口の3分の1(5700万人)程度がフリーランス人材で、それが2027年には2分の1超になるとも言われているので、日本でも今後フリーランス人口が急増していく可能性が高い。

■ランサーズの強み
国内で同業を営む会社は他にもあるが、ここではランサーズならではの強みについて考えていく。

・プラットフォームの質が高い
オンライン業務では職務の成果が如実に表れるので、質の高い人材の確保が不可欠になる。ランサーズでは登録する際に実名や写真登録はもちろん、簡易テストなどを実施して他社よりも”敷居の高い”登録制にしている。また職務完了後に顧客のフィードバックや業務態度などを「能力ランク」に反映していくので、人材の評価・ステータスが一目でわかるようになっている。

企業側の認証・ランク付けも行っており、ランサーズのプラットフォームは質の高い人材と質の高い企業をマッチングさせる仕組みになっている。

・フリーランス人材のサポートを強化している
登録する人材の生産性を高めるためには長く働いてもらうことが重要になるが、フリーランス人材は社会的な信用が一般の会社員よりも低く、十分な社会保障を受けにくいという問題があり、定着率はそれほど高くない。そこでランサーズはフリーランス人材に会社員と同じようなサポートを受けられるようなサービスを提供して、安心して長く働けるような環境作りをしている。

ランサーズでは外部企業と連携して各種サポートを行う「Freelance Basics」というサービスを提供しており、このサービスを使えば健康診断や契約書のレビューなど普通の会社で受けられるようなサポートを受けられる。また収入証明などを元に与信を得られ、家賃保証を受けられたり、クレジットカードを発行したりできる。各種スキルを高める講習も受けられる。

・適応力・開発力が高い
ランサーズはコロナ発生後に、企業の要望に応じて即座にオンラインのBPOセンターを立ち上げている。
*BPOとは、Business Process Outsourcingの略で、企業がコアビジネス以外の業務を外部企業に委託すること。

それ以外にも、大企業がランサーズに登録する人材を社内人材のように使える「Lancers Enterprise」というサービスの提供も始めている。このサービスを使えばクラウド上でチームを迅速に編成でき、数日で仕事を発注できるようになる。企業はオフィスなどの固定費を負担する必要がないというメリットもある。

■問題点
・参入障壁が低い
当初、クラウドソーシング市場は、クラウドワークス、未来ワークス、うるるなど数社の寡占体制になると思っていたが、コロナを機に大手派遣会社が続々と参入してきた(8/19日経)。おそらく中小の派遣会社もすでに参入していると思うので、クラウドシーシング市場はレッドオーシャン化しつつある。

・収益力が弱い
今期に黒字転換しそうだが、今期は広告宣伝費を丸々カットしているので、安定軌道に乗ったとは言いがたい。このような状態で競争激化の雰囲気が漂い始めたので、今後、再び赤字に転落する可能性もある。

・増資を頻発しそう
収益基盤が盤石ではなく、社長は「まだまだ資金が必要」と言っているので、今後増資を頻発する可能性がある。

■チャート
<8月7日のチャート>
移動平均線が収斂して力をため込んでいる状態。決算で上下どちらかに大きく振れそう。

<現在のチャート>
1000円台の「壁」を突破し青天井モードに入った模様。・・いやこれは三尊天井か?
*ランサーズ株は「壁」を突破した直後に売ってしまった。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★
・参入障壁は高いか。★☆。低い。派遣会社が続々と参入してきている。
・ストック型ビジネスか。★★☆。現時点では企業のリピート率が8割程度なのでストック型にはなるが、競争激化で下振れしていく可能性がある。
・時流に乗っているか。★★★★★。ジョブ型雇用やリモートワークはメガトレンド。

■まとめ
そこそこ有望な成長ストーリーが描けていたが、それも日経の記事で台無しにされてしまった(笑)。社長や社風が良さそうな会社だっただけに残念。

NexTone

■どんな会社か
音楽著作権を管理する会社。他に、管理する楽曲をプロモートする「キャスティング事業」も手がける。国内で音楽著作権を管理する会社はNexToneとJASRACのみ。

2020年3月期の売上高の内訳は著作権管理事業が87%、キャスティング事業が11%、その他が2%になる。

業績は
2019年3月期が売上高32億円、営業利益1.8億円
2020年3月期が売上高43億円、営業利益3億円
2021年3月期(予)が売上高56億円、営業利益3.8億円
になる。売上高は年約30%の勢いで伸びている。

■成長ストーリー
「打倒JASRAC」が基本シナリオ。

国内の音楽著作権管理ではJASRACが市場をほぼ独占(占有率約96%)しているが、このJASRACの牙城を切り崩していくのがNexToneの基本戦略になる。

切り崩すポイントは4つ。
1つ目が「著作権利者の権利拡張」になる。JASRACとの信託委譲契約では著作権をJASRACに移管するので、著作権者は使用料率を自由に変更できないという問題と、自作曲をコンサートなどで演奏するときに著作権料を支払わなければならないという問題がある。一方、NexToneとの管理委託契約では著作権が著作権者に残るのでこのような問題は発生しない。

2つ目が「デジタルに特化」になる。JASRACは著作権のデジタル管理が遅れているため、楽曲使用料の分配が不透明という問題がある。JASRACはライブハウスやスナックなどから床面積や客席数に応じて一律に楽曲使用料を徴収しているが、ライブハウスを経営するミュージシャンからは著作権料が全く支払われてない、などの訴えを起こされている。一方、NexToneはデジタル管理システムを完備しているので、透明性の高い楽曲使用料の分配ができる。加えて、配信された楽曲がどこで、どのくらい使われたのかを正確に把握することもできるので、権利者は楽曲利用データを創作活動やマーケティング活用に活かすこともできる。

3つ目が「管理手数料の安さ」になる。NexToneはデジタル管理のみなので、運営コストがほとんどかからない。すべての楽曲利用区分においてJASRACよりも安い手数料になっている。

4つ目が「楽曲のプロモーション」になる。NexToneでは管理している楽曲(やそのアーティスト)をプロモートする事業も行っているが、JASRACではこのような事業は行っていない。

日本の音楽著作権管理市場は1200億円くらいで頭打ちになっているが、NexToneが得意とするデジタル配信はその中で順調にシェアを拡大している。社長は現在3.7%の著作権管理シェアを早期に10%(徴収額300億円)まで高めると言っている。

■問題点
・市場を独占している非営利団体には勝てない
現在、JASRACは市場の約96%を占有しているが、プラットフォームはユーザーにとっては一つの方が利便性が高いので、一度市場が独占されたら後から参入するのは非常に困難になる。独占企業には価格支配力が高まるという問題が付随するが、JASRACは非営利団体の社団法人なので闇雲に手数料を引き上げるという展開は考えにくい。

JASRACの管理手数料はNexToneに比べて割高に設定されているが、これはアナログ管理も行っているためになる。足下ではデジタルシフトを着実に進めているので、その進捗に従い今後、管理手数料を下げてくる可能性が高い。そうなるとNexToneには付け入る隙がなくなる。

・著作権使用の監視、法的対処ができない
JASRACとの契約では、著作権(財産権)をJASRACに移管するので、JASRACは著作権使用の監視や法的対処の義務を負う。一方、NexToneでは著作権がNexToneに移動しないので、管理作品が第三者に無断で使用された場合は著作権者が法的措置をとらなければならない。音楽出版社(や一般人)が著作権使用の監視や法的対処をすることは非常に困難なので、NexToneに著作権を委ねる音楽出版社は限られるのではないかと思う。
*NexToneとの契約は音楽出版社しかできない。JASRACは個人でも契約が可能。

・CISAC(著作権協会国際連合)に加盟できない
海外での著作権管理では、各国の著作権管理団体と連携して使用料を徴収・分配する必用があるが、CISACには営利団体(NexTone)は加盟できない(JASRACは加盟)。NexToneは一部の国の管理団体と契約をしているが、それ以外の国で著作権管理をする場合は、都度、その国の管理事業社と提携していかなければならない。

・演奏権を管理してない
演奏権の管理事業は著作権管理市場の約20%(240億円)を占めているが、NexToneはまだ参入できていない。今後は参入していくようだが、扱う楽曲数が極小なので、カラオケを配信する会社などからは面倒くさがられそう。
*演奏権とはカラオケ、コンサート、BGM、音楽教室などで楽曲を使用する権利のこと。

・コロナの影響を受ける
中期的には巣ごもりなどの影響で音楽配信は伸びていきそうだが、コロナが長期で続いた場合は、アーティストの創作活動や興業活動が停滞し、音楽産業全体が停滞する可能性がある。

■チャート
典型的な上昇チャートにみえる。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★☆
・参入障壁は高いか。★☆。新規参入はなさそうだが、JASRACが築いた参入障壁が非常に高い。
・ストック型か。★★。基本的にはストック型だが、JASRACのデジタル化が進んだら管理手数料が落ちていきそう。
・時流に乗っているか。★★★★。著作権管理のデジタル化はメガトレンド。ただ国内音楽市場の成長は頭打ち。

■まとめ
JASRACの独占支配を切り崩そうとするNexToneには存在意義があるとは思うが、NexToneにもいろいろ問題があるので、大きく切り崩すのは難しそう。それ以前の問題として、頭打ちの市場でシェア争いをするという構図にいまいち興味が持てないので、この会社はパスしようと思う。

中村超硬

■調べようと思ったきっかけ
SBIがジモティーを大量保有したのがきっかけ。SBIの売買動向を見るとジモティーを買ってNexToneを売っていたので、このブログと考え方が近いと思った。そんなSBIが中村超硬を買い増していたので興味が湧いた。

■どんな会社か
去年までダイヤモンドワイヤーの製造・販売が主力だった会社(現在は採算悪化のためほぼ撤退)。現在は化学繊維用紡糸ノズル事業(マスクの不織布製造装置など)と特殊精密機器事業(5G関連機器など)が主力。新規事業のナノゼオライト事業を育成中。

業績は
20193月期が売上高48億円 営業損失42億円
20203月期が売上高28億円 営業損失5億円
20213月期(予)が売上高33億円 営業利益3億円
になる。業績は下げ止まった感じ。

■成長ストーリー
「ナノゼオライトでテンバガー達成」が基本シナリオ。

現在の業績の柱である2事業はマスク特需や5G特需の影響でしばらくは堅調に推移しそうだが、長期的な見通しはパッとしない。今後、この会社の成長ドライバーになりそうなのはナノゼオライト事業になる。

ナノゼオライトとは従来の工業用ゼオライトを100分の1くらいの大きさにしたもので、従来のゼオライトが持つ特徴(吸着、イオン好感、抗菌、触媒、消臭など)に、透明性、高分散、なめらかな感触、吸着量増加、吸着速度向上、沈降速度低下の機能が付加されたものになる。この新たな特性により、これまのゼオライトでは実現できなかった用途での活用が期待されている。

ナノサイズのゼオライトはこれまでも存在はしていたが、製造コストが高く、ほとんど普及してこなかった。こうした状況に対し、中村超硬は2012年から東大と共同研究を始め、2019年に低コストでのナノゼオライトの製造に成功した(特許取得済み)。

中村超硬は現在、約50社にサンプル出荷しており、様々な製品での開発が進められている。その中で最も開発が進んでいるのが高機能フィルムで、薬や食品、電子部品などの包材としての利用が期待されている。

潜在市場が最も大きのがリチウムイオン電池向けで、リチウムイオン電池にナノゼオライトを添加すると放電容量を低下させ、電池を高寿命化させることがわかっている。

他には、水と混ざると発熱する特徴を活かしたパック・クレンジング剤、半導体の封止材、二液型接着剤などへの活用が期待されている。

■問題点
・リチウムイオン電池市場はレッドオーシャン市場
リチウムイオン電池市場は巨大なので競合が多い。この市場ではまず素材同士の競争に勝たねばならない。多孔性金属錯体などナノゼオライトに似た物質は他にもあり、米テスラの160万キロ走行できるとされる次世代バッテリーには長寿命化のためにジフルオロリン酸ナトリウムが添加されている(9/5EVスマートブログ)。仮にここでの競争に勝ち抜いても、次はナノゼオライト市場に参入してくるであろう企業群と戦わなければならない。

・資金不足
ナノゼオライトはゼオライトを微細化したものにすぎないので、技術障壁はおそらくそれほど高くはない。競争優位性を保つには研究開発投資が必用になるが、中村超硬は4月に債務超過を解消したばかりなので投資できる資金がほとんどない。ナノサイズのゼオライトは旭化成なども製造しているので早々に追いつかれる可能性がある。

これらの点を考慮すると、中村超硬は今後、研究開発や工場建設のために増資をする可能性がある。

・リチウムイオン電池の「次」の電池でナノゼオライトが使われるかわからない
近い将来、リチウムイオン電池に代わる全固体電池や空気電池などが登場すると言われているが、そこでナノゼオライトが活躍できるかわからない。

・テンバガーストーリーを描きにくい
この会社がテンバガーを達成するには売上高を現在の10倍(300億円)程度まで増やす必用があるが、現在売上ゼロのナノゼオライトが売上100億円を突破するところを想像しにくい。ナノゼオライト事業の売上が立つのは早くて2022年になるが、売上が10億円を超すのは早くても2024年頃になりそう。

■チャート
<1年チャート>
底値を切り上げている
移動平均線が収斂
三角持ち合い
一目均衡表の雲は薄く、あと少しで抜けそう
ハイプサイクル的には期待相場が終わり、業績相場に入ったところ
ただし200日線が下向きに転じており、1000円台に分厚い「壁」があるので天井感がある。

<5年チャート>
「壁」が分厚い。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★☆
・参入障壁は高いか ★★★☆ ナノゼオライトはそこそこ高そう。
・ストック型か ★ 全事業がフロー型。
・時流に乗っているか ★★★☆ ナノゼオライトに関して言えば機能面でも環境面でも時流に乗りそうな感じがするが、それも成功したらの話。

■まとめ
ナノゼオライト事業には中村超硬の社運がかかっているので、なんとか軌道に乗せてきそうではある。ナノゼオライトを活用した製品が市場に出てくるあたりで、株価は1000円台の「壁」を突破するのではないかと思う。ただ、現時点では不透明要素が多いので、しばらく様子を見ようと思う。

WDBココ

■調べようと思ったきっかけ
・チャートが出来高をつけて“ブレイク”していたから。
・情報が少なく調べるのが簡単そうだったから。

<9月11日の1年チャート>
・このチャートではわかりにくいが、9月上昇時の出来高は平均出来高の5倍以上をつけている。
・3000円台にある「壁」を突破。
・ゴールデンクロスを形成。

■どんな会社か
医薬品の安全性情報管理業務を製薬会社から請け負う会社(CRO)。他に、ドキュメントサポート事業、開発サポート事業、臨床開発支援事業なども手がける。両事業ともほぼストック型収益事業で、売上の内訳は安全性情報管理事業が約75%、その他事業が約25%になる。
*安全性情報管理業務とは、主に医薬品の副作用情報を管理する業務。
*CRO(医薬品開発業務受託機関)とは臨床試験や安全性情報管理などの業務を製薬会社から受託・代行する機関。

業績は
2019年3月期が売上高17.8億円、経常利益3.3億円
2020年3月期が売上高22.8億円、経常利益4.6億円
2021年3月期(予)が24.1億円、経常利益4.7億円
になる。売上は順調に伸びており、経常利益率は20%程度で推移している。

■成長ストーリー
「最強の安全性情報管理プラットフォームに」が基本シナリオ。

近年、日本では少子高齢化に伴い社会保障費(医療費等)の抑制機運が高まっており、国は薬価引き下げやジェネリック薬の利用促進などを行っている。創薬においてはバイオ医薬品へのシフトや新技術の取り込み、大型薬の出尽くしなどにより製薬会社の投資負担は増している。加えて、医薬品の安全性情報(副作用情報)のガイドラインが強化され、製薬会社はその対応を迫られている。

製薬会社の収益環境は年々厳しくなってきており、製薬会社は低コスト体質と革新的な創薬を両立できる体制に向けて、創薬以外の業務をアウトソーシング(外部委託)する流れになってきている。外部委託される業務のなかで今最も伸びているのが医薬品の安全性情報管理業務で、この業務受託を主業とするWDBココはこの需要を確実に取り込んでいくことを基本戦略としている。

安全性情報管理市場は年約10%のペースで拡大しており、2019年には186億円の市場になっている。市場の拡大は今後も続く見込みで、2030年には400億円くらいまで成長する可能性がある。

<WDBココの強み>
安全性情報管理業務を請け負うCROは他にもあるが、ここではWDBココならではの強みについて考えていく。

・人材コストが低い
他のCROでは臨床試験のモニタリングや統計解析などを行う専門性の高い人材が安全性情報管理業務も行っているので人材コストが高くなるが、WDBココは専門性をそれほど必用としない安全性情報管理業務に特化しているので、未経験者を採用し、人材コストを低く抑えることができる。

・業務効率化のノウハウが豊富
WDBココはメディカル系人材派遣会社WDBホールディングスの子会社なので、業務効率化のノウハウが豊富にある。安全性情報管理においてもこのノウハウを活用して徹底的に合理化している。RPAなどの自動化テクノロジーの導入にも積極的で、人がやるべきでない業務は全て自動化する方向で動いている。
*RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの略で、ソフトウェア型のロボットが作業を代行する手法。

・人材の供給源がある
親会社はメディカル系人材派遣会社のトップ、WDBホールディングスなので、WDBココは機動的に人員を補充できる。

これらの強みにより、WDBココの安全性情報管理業務の請負料金は他社よりも10~30%安い。WDBココは顧客との取引期間中に継続的にコストを落としていく仕組みも導入しているので価格競争力は極めて高い。

■問題点
・市場がそれほど大きくなさそう
安全性情報管理市場は10年後に現在の2.5倍くらいの規模にとどまりそうなので、WDBココはそれほど成長できなさそう。他のCROから仕事を奪ってくれば市場拡大ペース以上に成長できそうだが、下記のエムスリーの問題などもあり、このシナリオにはやや不透明感がある。

社長は「事業領域を拡大していく」ともいっているが、WDBココはWDBホールディングスが抱えるCRO事業の一部門にすぎないので、他の部門との兼ね合いでWDBココだけが新たな事業領域を拡大していくのは難しいのではないかと思う。現時点では新規事業の具体性がないので、この点にも不透明感がある。

・最終的にはエムスリーのプラットフォームに集約される?
WDBココの安全性情報管理業務では、製薬会社のMR(医療情報担当者)が病院から回収した副作用情報を受け取って、それを処理しているが、このMRを介する一手間は無駄に見える。エムスリーのプラットフォームを使えばこの一手間を省くことができるので、最終的には安全情報管理はエムスリーのプラットフォームに集約される可能性がある。

エムスリーもCRO事業を手がけており、もしエムスリーが本腰を入れて安全性情報管理業務を始めたら脅威になる。しかし、現時点でその気配はなさそうなので、最終的にはWDBココがエムスリーのプラットフォームで副作用情報を収集し業務を行っていく、という流れになるのかもしれない。
*副作用の情報収集はMRの病院での聞き込みや調査が重要な可能性もある。もし情報収集にMRを外せないとしたらエムスリーの脅威は半減する(要調査)。

・離職率が高い?
社員の口コミをみると「単純労働」「給料が上がらない」などの口コミが目立つ。WDBココの安全性情報管理は未経験社員の生産性を高めてコストを落としていくところに強みがあるので、離職率が高くなるとコストを落とせなくなる。

・コロナの影響を受ける
社長は「コロナによる業績への大きな影響はない」とはいっているが、MRの医療機関への訪問自粛や通院患者の減少により副作用情報の入手量が減少しているようなので、委託業務量も減少している可能性が高い。また製薬会社との交渉が停滞している可能性もある。コロナは一過性の問題なので長期ではそれほど問題なさそうだが、コロナ下では業績が伸び悩みそうでもある。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★☆
・参入障壁は高いか ★★★☆ 地味でややこしい領域なので新規参入はなさそう。ただエムスリーが本格参入してきたらピンチになる。
・ストック型か ★★★★ 安全性情報管理業務は基本的に医薬品の販売が終了するまでの契約なのでストック型。
・時流に乗っているか ★★★★ 製薬会社のコア業務以外のアウトソーシングはメガトレンド。ただ市場の拡大余地は現在の3倍くらいしかなさそう。

■チャート
<1年チャート>
やや過熱感はあるが、青天井モードに入っているので上値は軽そう。

■まとめ
調べ始めてすぐに良さそうだとは思ったが、情報が少なく、過去の苦い記憶がフラッシュバックしたので、「妄想」を一週間ほど寝かせることにした。しかし、その間に株価は大きく上がってしまった(笑)。

この会社のビジネスモデルはそこそこ強いので、株価は5500円(PSR5倍、時価総額120億円)くらいまでは上がりそう。ただそれ以上は市場規模の問題やエムスリーの問題があるので難しいのではないかと思う。もう買うチャンスは来ないと思うが、もう少し様子を見ようと思う。

有望株チェック

よく調べないで買った株は失敗することが多いので、これからはネチネチと調べてから買うことにする。

■10倍株候補
<10倍株候補の条件は>
 ・上場4年以内の若い会社
 ・社長が若くやり手
 ・オーナー企業
 ・時価総額300億円以下の小型株
 ・長期的なテーマに合っている
 ・急成長している
 ・(IPOから時間が経過し、株価が右肩下がりになっているチャートが狙い目)

・ジモティー。ビジネスモデルが強く、潜在市場が大きいのでテンバガーを狙えそう。

■優良銘柄(株価が急落したときに買いたい銘柄)
<優良銘柄の条件は>
 ・参入障壁が高い
 ・ストック型ビジネスを手がける
 ・時流に乗っている
 →業績が落ちにくく、利益成長を続けやすいビジネスモデル

・エムスリー
基本シナリオ:医療分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
医療分野で独占的なプラットフォームを築いている。事業カテゴリーはMR事業、治験事業、人材紹介事業、複数の新規事業、海外事業の5つあり、それらすべてが順調に伸びている。国内のMR事業(医薬品情報サイト事業)だけでもあと5倍の成長余地があり、他の事業もまだまだこれからといった感じ。2030年の予想利益は現在の4~6倍くらいになりそう。チャート上の底値(買い場)は3500円くらいか。

コロナの影響について。人材紹介事業は負の影響を受けそうだが、それ以外はコロナで伸びが加速しそう。

・リクルート
基本シナリオ:多数の独占型プラットフォームで安定成長&株主還元
元祖プラットフォーマーのリクルートは、人材、住宅、飲食、美容分野などで多数の市場独占型(寡占型)プラットフォームを構築している。中でも最も勢いのあるのが人材マッチング・プラットフォームのインディードで、20年3月期の売上高成長率は30%に達する。この分野の市場規模は16兆円超あり、インディードの売上はまだ4000億円に過ぎない。リクルートは2030年までにこの分野で世界トップになることを目標にしている。ただ会社全体の売上高成長率は年率6%程度なので急成長企業とはいえない。人材関連事業が売上高の7割を占めるているので景気後退の影響を受けやすいという問題もある。2030年の予想利益は現在の3倍くらいになりそう。チャート上の底値は3000円くらいか。

コロナの影響について。ほぼ全ての事業が負の影響を受けそう。ただ長期の成長シナリオは不変。

<インディードの求人件数の推移>
5月 米国 2,417,960 日本 2,543,350
6月 米国   2,590,324 日本 2,501,261
7月 米国 2,891,732 日本 2,564,810
8月 米国 3,116,923 日本 2,393,177
9月 米国 3,214,984 日本 2,938,509
10月 米国 3,346,659 日本 3,110,078

・カカクコム
基本シナリオ:多数の独占型プラットフォームで安定成長&株主還元
価格比較の分野で独占的なポジションを築いている。「価格コム」の成長は頭打ちだが、「食べログ」や、新規メディア事業の「高速バス比較ナビ」「価格コム保険」「ガイエ(映画等のプロモーション事業)」などはまだまだ伸びそう。2030年の予想利益は現在の2~3倍くらいになりそう。チャート上の底値は2100円くらいか。

この会社もコロナの影響を多大に受けそう。ただ低コスト・高収益なビジネスモデルなので、黒字は維持できそう。

・GMOペイメントゲートウェイ
基本シナリオ:最強の電子決済代行プラットフォームに
電子決済代行で最も勢いのある会社。日本のEC化率はまだ7%程度なので、成長余地はまだまだある。2030年の予想利益は現在の3~4倍くらいになりそう。チャート上の底値は8500円くらいか。

コロナの影響について。この会社はコロナを追い風にして成長を続けそう。

・インフォマート
基本シナリオ:企業間取引の基幹プラットフォームに
現在インフォマートのプラットフォームを利用する会社は約47万社あり、その大半が請求書プラットフォームを利用している。請求書事業の売上高比率は全体の2割程度だが、この事業の成長余地はあと3倍はあり、そこで培ったネットワークやデータを活かした新規事業も期待できる。2030年の予想利益は現在の4倍くらいになりそう。チャート上の底値は600円くらいか。・・株価は一時600円まで下落していたようだが気づかなかった。現在は大きなWボトムを形成しているので、今後大きく上昇しそう。

コロナの影響について。主業である食材受発注事業はコロナの影響を多大に受けそうだが、請求書事業の方は伸びそう。

■観察中の銘柄
・パークシャテクノロジー
基本シナリオ:最強のAIベンダーに
第3四半期決算もぱっとしない内容だった。ただ人員は順調に増えているようで投資のほうは順調に進んでいるもよう。ここもエムスリーみたいにAIアルゴリズムプラットフォームを作れば面白くなるとは思うのだが・・。投資回収期は2023年頃からになるので、それまではしばらく様子見。

■気になっている銘柄
<2017年に上場した会社>
・マネーフォワード。家計簿アプリやクラウド会計ソフトを手がける会社。時価総額は1800億円と大きいが、経営者のスケール(器)が大きそうなので、事業をまだまだスケール(大きく)できそう。

・casa。デジタルを駆使した家賃保証サービスを手がける会社。ストック型っぽい収益構成が魅力。ただ競合は多そうで、売上高の伸びは年率10%以下にとどまる。10年後の予想利益は現在の2.5倍くらいになりそう。

・ビジョナリーホールディングス。2019年12月にエムスリーが30億円出資して筆頭株主になった会社。エムスリーと共同で次世代型のメガネ屋をつくるとのことなので期待できる。相乗効果が出てくるのは2022年頃になりそう。

<2018年に上場した会社>
・アクリート。ショートメッセージ配信代行サービスを手がける会社。具体的に何をしているのかよくわからないが、業績は堅調に伸びており、ストック型のような収益構成になっている。

・シノプス。自動発注システムを手がける会社。市場シェアは14%程度と市場占有率はあまり高くはない。競合が多いので、今後は差異化を図るためにeBASEなどとの提携がカギになりそう。10年後の予想利益は現在の3倍程度か。

<2019年に上場した会社>
・カオナビ。顔写真を使う人材マネジメントシステムを手がける会社。リクルート系で、競合がいなさそうなのがいい。10年後の予想利益は現在の5倍くらいか。

・トビラシステムズ。スマホ通話の課題をテクノロジーで解決する会社。オレオレ詐欺などの迷惑電話を自動的にカットする通信フィルターなどを提供している。法人向けのサービスも開始しており、開拓余地はまだまだありそう。10年後の予想利益は現在の4倍くらいか。

・ピー・ビーシステムズ。福証に上場するなんらかのクラウドシステムを提供する会社。業績の伸びや利益率が良く、社長が面白そうな感じ。10年後の予想利益は現在の3倍くらいか。

・HENNGE。各種クラウドサービス(SaaS)のIDを一元管理するクラウドサービスを提供する会社。解約率は0.2%以下と低く非常に強いストック型ビジネスモデルになる。ただ米オクタや米アマゾン(AWS)、野村総研が本格参入してきたので徐々に競争が激しくなりつつある。スケールメリットがあまりない(ネットワーク効果が働かない)のも問題。10年後の予想利益は現在の4倍くらいか。

<2020年に上場した会社>
・ビザスク。ランサーズを調べているときに良さそうだなと思ったクラウドシーシング会社(調べようと思ったが株価が上がり始めてしまったので調べる気が失せた)。この会社が提供するサービスは「スポットコンサル」なので、大手派遣会社のクラウドソーシング市場参入の影響は受けない。今後クラウドソーシング専業で生き残れる会社はこことココナラくらいかもしれない。

<その他>
・三菱地所。コロナの影響で都心部のオフィス需要が減少し、株価が下落基調にあるが、コロナが過ぎ去ればまた需要は戻ってきそう。株価1300円あたりが買い場か。

マクロ系金融資産チェック

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米長期金利 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:0%~1%の間で推移

長期金利に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・経済成長率+インフレ率↓
米長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になるが、今年はコロナの影響により経済成長率は-6.6%まで低下し、インフレ率は1%程度にとどまる。来年は経済成長率4.5%、インフレ率1.5%程度になる。
*数値はIMF予想。

・金融政策↓
FRBはコロナ対策で政策金利を下限(0~0.25%)まで下げており、長期金利も0%台に抑えようとしている。FRBはゼロ金利政策を少なくとも2023年末までは続ける方針。

・財政赤字の拡大↑
2018年から米国の財政赤字は年100兆円を超えはじめており、今年はコロナの影響でそこに400兆円程上乗せされる見込み(7/27日経)。*財政赤字が拡大すると通貨の信認が低下し、海外の投資家が米国債を買わなくなる。

・リスクオン、オフ↑
コロナはリスクオフ要因になるが、政府と中銀が大規模な経済対策をしているので、全体で見るとややリスクオン気味。

・利回り低下による米国債の人気低下↑
現在の米10年国債の利回りは0%台(実質長期金利はマイナス圏)なので海外からの購入は減っている。

・資金需要の低下↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要がそれほど多くないので金利が上がりにくい。少子高齢化の影響で住宅ローンなどの借り入れなども減少している。

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みで潜在成長率は長期的に低下している。

・トランプ大統領の介入↓
低金利好きのトランプ大統領はFRBへの口先介入のみならず、FRBへ緩和派の人間を送り込むなどして金融緩和圧力をかけ続けている。

・チャート
チャートは底抜け。しばらく停滞しそう。


■WTI原油 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:30ドル~45ドルの間で推移

原油価格に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・需要↓
原油の需要予測はIMFの世界経済成長率予想などを基につくられるが、2020年の世界経済成長率は-4.9%まで落ち込んでおり、今期の需要は日量1000~2000万バレル程減少している。来期の経済成長率は5.4%と持ち直す見込み。
*平時の世界の石油消費量は日量約1億バレル。

コロナ下では職場や学校のリモート化が進んでいるが、この変化は不可逆的なところもあるので、コロナが終息しても石油需要が元の水準に戻らない可能性が高い。英BPは世界人口増などを加味した「標準シナリオ」では2030年頃まで石油需要は増加を続けるとしているが、コロナや温暖化対策を考慮した「急速シナリオ」では「すでにピークを打った可能性がある」とも言っている。9/15日経

・産油国の採算ライン↑
サウジが財政均衡に必要な水準は1バレル83ドル、アラブ首長国連邦(UAE)は70ドル、イラクは60ドル、ロシアは42ドル、米企業の採算ラインは45ドルになる。3/10日経4/30 日経

・供給↓
OPECプラスは協調減産を実施しており、それ以外の産油国も油価低迷で産油量を減らしている。現在の油価は産油国の財政均衡ラインを下回るが、産油国の財政は原油収入に依存しているので今以上減産することはできない。

・トランプ大統領の介入↑
米石油産業は1000万人の雇用を生む巨大産業であり、WTI価格が40ドル程度で推移した場合はシェール企業の4割が2年以内に破綻するとも言われているので(6/30日経)、トランプ政権は原油価格を下支えする政策をとる可能性が高い。

・産油国で不測の事態が起こる↑
世界最大の石油埋蔵量を誇るベネズエラは米国の制裁や政治の混乱、投資不足などから産油量が著しく低下している。

イランも米国などから制裁を受けており、産油量が減っている。

リビアでは内戦が続いており、生産設備の被害や輸送の寸断で一気に生産量が落ちる可能性がある。

・リスクオン、オフ↓
コロナがぶり返してきたのでリスクオフ気味。
*原油は株式と同じリスク資産になる。

・為替↑
原油はドル建てのためドル高になると原油価格に低下圧力がかかるが、ドルは下落基調なので今後は原油価格に徐々に上昇圧力が加わってきそう。ドル安になると新興国の輸入が増えやすくなるのでこれもまた上昇圧力になる。
(WTI原油価格連動型上場投信においては、ドル安(円高)が進むと基準価額が下がる)

・船舶の燃料規制↑
2020年から船舶燃料油の硫黄分濃度規制がはじまっているが、硫黄分の少ないWTI原油や北海ブレントには5ドル程度の価格上昇圧力がかかる。

・チャート↓
チャートは底抜け。しばらく停滞しそう。


■ドル円 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:95円~108円の間で推移

為替に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・日米の金融政策↓(↓は円高方向)
ドル円レートの基準値は購買力平価になるが、現在は購買力平価(95円)から円安方向に振れている。円安方向に振れている最大の要因は日銀の金融緩和になるが、その緩和が限界に近づきつつある。一方で米国は金融緩和余地があり、足下のコロナでは最大限の緩和を始めている。

FRBの保有資産は2019年末には400兆円程度だったが、それが2020年末には1000兆円まで増える可能性がある。対して日銀の保有資産は2019年末には610兆円程度だったが、2020年末には650兆円と小幅な伸びに留まる見通し(5/1日経)。保有資産の拡大幅は米ドルの方が大きいので、その分、米ドルの減価率の方が高くなる。

・日米の長期金利差→
日米の長期金利差はドル円相場との相関が強いが、現在その金利差がほとんどなくなっている。為替相場に影響の大きいドル円のキャリー取引は大きく減少している。
*キャリー取引とは金利差を狙った取引で、市場環境が落ち着くと低利通貨を売り、高利通貨を買って、金利差で収益を得る取引が盛んになる。ただ足下では円以外のドルやユーロも低金利通貨になりつつあるので、キャリー取引は減少しつつある。

・日米の財政政策↓
米国の財政赤字は年100兆円を超え始めており、コロナショックにより今年はさらに400兆円程上乗せされそう。日本も米国と似たような状況だが、米ドルは基軸通貨なので米国は今後、より思い切った財政政策をとれる。

・日米の経済の強さの違い→
資金は経済の強い国へ流れ、その国の株式や不動産などが買われるが、デジタル革命を主導する米経済は相対的に強いのでドル資産が買われやすい。ただコロナショックにより米国のデジタル企業以外は多大なダメージを受けているので全体で見るとドル資産の売買は拮抗している。

・リスクオン、オフ↑
大規模な金融緩和でややリスクオン気味。
*リスクオフになった場合はキャリー取引の巻き戻し(円の買い戻し)が起こる。本格的なリスクオフまで発展すると対外資産の引き上げ(投資撤退)が起こる。日本が保有する対外純資産は世界最大の340兆円になるが、そのうち資産の引き上げが起こりやすい証券投資の割合は3割(100兆円)程度になる。

・ドル需給↓
コロナショックにより、一時期ドル需要が急激に高まったが、FRBがドルを大量供給して、現在では落ち着いている。過去のパターンでは需給が一巡した後に円高が起こっている。3/24日経5/7ダイヤモンド

・国内投資家の対外証券投資↑
これまで日本の債券投資家は国内の超低金利で運用難に陥っていたので、高い運用利回りが見込める海外債権などを買っていた。しかしコロナショックで外債の利回りも低下しているので、対外証券投資は減りつつある。とはいうものの、2020年は6月までに13兆円を買い越している。9/1日経*ここ数年は年10兆円程度の買い越しが続いている。
*日本の主要生命保険会社は、外債の金利が低下して日本国債の魅力が相対的に増したとして、今年度は日本国債への投資を増やすことに決めている(4/24日経)。一方、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、今後外債投資を強化するもよう。この強化により今後15~25兆円の対外証券投資需要が発生する。4/1日経
*為替ヘッジ付き米10年債利回りが4月末に約1年半ぶりにプラス圏に浮上し、日本勢は再び米国債を購入し始めている。7/21日経
*対外証券投資のうち外貨建て(円売り)は7割程度になる。
*国内勢が外債を買うときは、円を売って外貨を買い、その外貨で外債を買うわけだが、円を買う側の海外勢はその円で日本国債を買うことが多い。海外勢は2019年1月~8月までの間に12兆円の日本国債を買っている。現在はFRBのゼロ金利政策で日米金利差が縮小し、海外投資家が手持ちのドルを円に換えて投資する際に受け取れる上乗せ金利(ベーシススワップ)が減少しているので、日本国債への投資は減っている。

・日本企業の対外直接投資→
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業の対外直接投資は今後も増えていきそう。2019年の対外直接投資は22兆8千億円と過去最大を記録している。ただ、コロナ下では対外直接投資は停滞しつつある。2020年上期の日本企業による海外企業の合併・買収は前年同期比77%減となっている。7/4日経
*対外直接投資額のうち外貨建て(円売り)は半分程度になる。

・米経常赤字(貿易赤字)の拡大→
米国では財政赤字が大きくなっているが、民間部門の貯蓄が増えているので、経常収支の赤字額はあまり膨らんでない。8/14日経

・日本の経常収支→
まずは貿易収支について。
輸入額の4分の1を占める石油・天然ガスの価格は低下しており、これは貿易黒字要因になるが、日本には世界で稼げるデジタル企業が少なく、モノの生産の現地化が進んでおり、電子機器(スマホなど)や医薬品の輸入が増加しているので貿易黒字は年々減少しつつある。2019年の貿易黒字は約5000億円にとどまる。2020年はコロナの影響で自動車などの輸出が減少しているので、貿易赤字がさらに膨らむ可能性がある。

(貿易収支を含む)経常収支は20兆円程度の黒字を維持しているが、この黒字の大半は過去に行った投資のリターンである所得収支が占めている。所得収支の黒字は貿易黒字と違い、半分程度が円に換えず現地で再投資されるため円買いフローは半分(10兆円)程度しか発生しない。
*ただし景気後退期に入ると企業は手元資金を確保するため再投資を減らし本国に送金するので円高圧力が若干増す。過去の例ではだいたい3~4兆円の送金需要が生まれる。5/12ロイター

・日銀が保有するETFの簿価割れ→
日銀の自己資本は8兆円なのに対し、保有する日本株ETFは約30兆円超ある。日銀の保有するETFの損益分岐点は日経平均株価が19500円くらいで、ここを下回ると自己資本が目減りし通貨の信認に悪影響が出る。日経平均株価が13000円台まで下落すると債務超過に転落し、さらに通貨の信認が落ちる。3/9日経

・日米の公的債務→
日本と米国の公的債務は返済不可能な水準まで膨れ上がっており、コロナの影響でこれがさらに膨らむ見通し。この債務を解消するには、インフレしかなさそうなので、そう遠くない将来にドルショック、もしくは円ショックが起こる可能性がある。

・投機筋の持ち高↓(「円 投機的ネットポジション」で検索)
買い持ちが多い。投機筋は円高が進むとみている。
*円を買い持ちした場合はスワップポイント(金利収入)がマイナスになるので、買い持ちポジションが長く続くことは少ない。

購買力平価
物価が上がると(インフレが進むと)、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると(デフレが進むと)、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必用なくなるので購買力は上がる。この物価変動に着目して二国間の通貨価値をならしたものが購買力平価になる。

日本円を米ドルと比較した場合、米国の方が慢性的にインフレ率が高いので円の購買力平価は長期的な円高傾向にある。ただ米国のインフレ率は年々低下しており日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。為替相場は長期的にはこの購買力平価に収斂していくとされているので、円の下限は75円、上限は115円くらいになる。

・チャート↓
<5年チャート> 大きな三角持ち合いを形成し、それが下振れ始めている。

■日経平均 (保有資産:なし)
今後1年の予想レンジ:20000~27000円で推移

日経平均に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・金融政策↑
日本株はFRBの量的緩和(資産買い入れ)との相関が強いが、FRBは3月から過去最大規模の量的緩和を始めている。世界の主要中銀はこの数ヶ月で640兆円程の資産を買い入れている。6/26日経

・利回り↑
日本株式の益回りは約5%、配当利回りは2%超と、日本国債の利回り0%より高いので、株式に資金が流れやすくなっている。

・需給↑
日銀が株式を買いまくっているので日本株は下がりにくい。日銀の買越額は年間6~12兆円になるが、他の投資主体の売り玉はつきつつあるので(アベノミクス後の海外投資家の買越額は3兆円まで縮小)、残りの売り玉はすべて日銀が吸収してくれそう。

 <2020年の主な投資主体の予想売買動向と現状>
 日本銀行、(予)金融政策により6~12兆円の買い越し。現状は6兆3千億円の買い越し。
 事業法人、(予)自社株買いにより2~3兆円の買い越し。現状は1兆3千億円の買い越し。
 海外投資家、(予)景気後退懸念で2~4兆円の売り越し。現状は5兆円の売り越し。
 個人投資家、(予)逆張り投資で1~3兆円の買い越し。現状は1兆2千億円の買い越し。

*事業法人はコロナの影響で現金収入が減っているので、今後は自社株買いより手元資金の確保を優先する可能性が高い。
*3月に相場の「逆指標」とされる個人投資家が過去最大規模の買いを入れている(リーマンショック直後の10月とほぼ同規模の買い越し額)。一方で相場の先行指標とされる海外投資家は大きく売り越している。となると株価は今後大きく下げるのかもしれない。

・EPS(1株利益)↓
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益)× PER(人気度)で決まる。2019年のEPSは-8%、2020年は(予)-30~-15%になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因についても見ていく。
・為替↓
今後為替は中長期的に円高に振れていきそうなので、海外で6割を稼ぐ日本企業の利益は下振れしていきそう。

・海外景気↓
日本企業は海外で6割を稼いでいるので海外景気の影響を大きく受けるが、2020年はコロナショックで世界景気が停滞しそう。

・失業率↑
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益が圧迫され、また労働量力不足で成長が頭打ちになるが、現在の失業率はコロナの影響で上昇傾向にある。

・減価償却費や資源価格(原材料費)↑
景気拡大期の終盤は減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇して利益が圧迫されやすくなるが、コロナの影響で資源価格は低下している。

・金融政策→
景気拡大期の終盤は上昇した金利により企業の利益や資金調達環境は悪化するが、今回は金融緩和が続いているのでほとんど影響なさそう。
ーーーーー

・PER(人気度、リスク選好度)↓
日経平均のPERは基本的に11~16くらいの間で推移するが、現在のPERは22.68。金融緩和や来期の業績反発を考慮するとこのくらいが妥当なのかもしれない。

投機筋の持ち高
買い残は4400億円で、裁定売り残高は1兆8000億なので、投機筋は日本株が下がるとみている。
*裁定残高は通常、売り残高よりも買い残高の方が多い。一般に、裁定買い残高が3000~6000億円まで減少すると「売られすぎ」、3.5兆~4兆まで増加すると「買われすぎ」とされる。

・チャート↓
<日経平均の10年チャート>横ばい、もしくは微上昇が続きそうな感じ。
日銀の株式購入の影響で出来高が減少傾向にある。出来高は「市場のエネルギー」とも言われるので、この調子でいくと日本市場は「死」を迎えるのかもしれない。

<独DAXの10年チャート>日本と似たような産業構造のドイツの株式市場は日本市場と同じような値動きをしているが、出来高は減ってない。

市場環境チェック

株式市場への影響が大きい企業業績、金利、金融政策などをチェックしていく。

■ファンダメンタルズ
<EPS成長率>
・世界株式の2019年のEPS増加率は8%、2020年は-30~-10%
・米国株式の2019年のEPS増加率は3%、2020年は-30~-15%
・欧州株式の2019年のEPS増加率は3%、2020年は-30~-15%
・日本株式の2019年のEPS増加率は-8%、2020年は-30~-15%
*参照:8/11日経8/14日経9/16日経など
*2020年はコロナの影響で大幅な減益予想になるが、コロナ抜きで考えると、今は金利低下で企業の利払い費が減少しており、経済のデジタル化に伴い設備投資や人件費が減少しているので、企業の利益は増えやすい状況になっている。
→問題あり

<経済成長率>
・世界の2019年の成長率は2.9%、2020年は-4.9%、2021年は5.4%
・米国の2019年の成長率は2.4%、2020年は-6.6%、2021年は4.5%
・中国の2019年の成長率は6.1%、2020年は1.0%、2021年は8.2%
・ユーロ圏の2019年の成長率は1.3%、2020年は-10.2%、2021年は6.0%
・日本の2019年の成長率は0.9%、2020年は-5.8%、2021年は2.4%
*数値はIMF予想。6/25日経7/18日経
*IMFは「新型コロナウイルスによる感染第2波が発生すれば、2021年の世界経済成長率はゼロ成長にとどまる」と言っている。6/25日経
*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただしデジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほどには不況感が強まらない可能性もある。経済成長率を測る指標の一つであるGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されているサービスの大半は公共財に近い性質があるため、金銭的な数値には反映されにくい。今は若い人ほど幸福度が高いという調査結果が出ているが、これはデジタルサービスの恩恵を最も受けているためともいわれている。
*仏経済学者のジャン・フーラスティエは今から70年くらい前に「農耕社会、工業社会の後にはサービス社会へ移行するが、そこは経済成長のない世界になる」と言っている。11/27日経
→問題あり

<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2019年が1.8%、2020年は1.2%
・欧州の予想インフレ率は2019年が1.2%、2020年は0.4%
・日本の予想インフレ率は2019年が0.9%、2020年は0.3%
*参照:米PCE物価指数ユーロHICP日本CPI
*インフレ率が上がらないのもデジタル経済の影響が大きい。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば検索やSNSは無料だし、ネット上では価格比較を簡単にできるので売り手側は超過収益を得にくくなっている。またスマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。他にも複製コストゼロのデジタル商品やシェアリングサービスの普及などもあり、物価は上がりにくくなっている。『FREE』の著者クリス・アンダーソンは「モノ中心の経済はインフレ志向になるが、情報中心の経済はデフレ志向になる」と言っている。*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れてない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争により価格が限りなくゼロに近づきやすくなる。
*経済のデジタルシフトが進んでいるが、デジタルシフトは「人」の代替ともいえるものなので、人の賃金が上がりにくくなっている。所得の増えない経済では支出も増えず、インフレが起こりにくくなる。8/14日経
*原油など商品価格の停滞もインフレ率停滞の要因になる。かつての景気拡大局面では商品価格も大きく上昇していたが、今回の景気拡大局面では成長率が穏やかなため商品価格が上がりにくくなっている。経済のサービス化に伴い財への需要が弱くなっている面もある。環境保護や省資源化が求められていることもあり、今後も商品価格の停滞が続く可能性は高い。

*コロナの影響で解雇や賃下げが発生して購買余力が低下している。感染への恐れから消費も停滞している。企業収益は悪化しており、設備投資も減少している。全体的な需要不足でデフレ圧力がかかりはじめている。需要と供給力の差である需給ギャップは2025年まで年平均で4.5%悪化するとも言われている。8/20日経
*コロナの影響で企業倒産が相次いだ場合は、コロナ収束後に供給が追いつかず、インフレが発生する可能性がある。
*コロナ対策で世界中の中銀が通貨を大量に発行しているが、これは通貨価値の下落を引き起こすのでインフレ圧力になる。
*日本で円高が発生した場合は、輸入物価の下落を通じてデフレ圧力がかかる。

*中央銀行の最大の責務は「物価の安定」になるが、中央銀行は経済にとってベストなインフレ率を2%としており、その水準で物価を安定させることを目標にしている。中央銀行が行う金融政策はインフレ率2%を基準に決められており、それより低ければ金融緩和、高ければ金融引き締めを行うことになる。先進国のインフレ率は長期的に低下傾向で、足下では2%を下回りはじめているので、今後長期で金融緩和が続く可能性が高い。ただ、デジタル経済や商品価格の停滞、少子高齢化、グローバリゼーションなどを考慮すると、中銀のインフレ目標には無理があるようにも見える。
*ゼロインフレが続く環境では、中央銀行は物価安定策(インフレ抑制策)をする必用がなくなるので、中央銀行の主要責務は物価安定から金融安定にシフトする。6/30日経
*社会がデジタル化するとあらゆる動きがデータで把握できるようになる。そうなればデータに基づいた的確な政策を実施できるようになる。2025~2030年あたりにインフレに代わる新たな「経済の体温計」のようなものが生まれるかもしれない。
→問題なし

<金利>
・米国の2年金利は0.12%で10年金利は0.66%。
・日本の2年金利は-0.12%で10年金利は-0.01%。
*米国の実質長期金利(名目長期金利-インフレ率)は-0.6%くらいなので、資金は国債・預金から株式・金にシフトしている。
*実質金利は資金の行方を決める最大の材料とも言われるが、現在G20の約半分の国で実質金利がマイナスになっている。7/25日経
*FRBはゼロ金利政策を続けながら「平均2%インフレ目標政策」を導入するようなので、インフレ期待が高まれば実質金利は-2%あたりまで低下する可能性がある。8/8日経
*長期投資家は長期金利が0.5%近辺の状態では、金利が2%以上の状況に比べ、2.5倍高いバリュエーション(投資尺度)でも株式を選好するとも言われている。8/8日経
*過去150年の米国の株式益回りと長期金利の差(イールドスプレッド)は平均3%になる。イールドスプレッドが3%を割り込むと株価の割高さが嫌気され売られやすくなるが、7月のイールドスプレッドは3.9%と売り込まれる水準にはない。現在の米国のPERは過去平均よりも高い水準にあるが、金利を軸に見た場合は特に割高感があるわけではない。8/12日経9/12日経
*金利が下がると企業の資金調達が容易になり株式上場が減っていく。またM&AやLBOが増えるので上場企業数も減っていく。9/18ロイター
→問題なし

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向(2019年)。
・日本の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向(2019年)。
・中国の企業・家計債務残高はGDP比210%まで上昇しており、足下でも微増傾向。日本のバブル期のピークは220%になる(2019年)。
・新興国の民間債務残高はGDP比140%で現在も微増傾向(2019年)。
 *GDPは債務返済能力の代理変数になる。
・過去10年で各国政府は債務を大きく膨らませている。
・コロナショックで政府債務は急膨張している。IMFは「日米欧など先進国の公的債務は20年にGDP比141%まで上昇し、第二次世界大戦時(1945年)の116%を大幅に上回る」と予想している。6/25日経
*米企業の対GDP債務残高比率は10年移動平均線から3%超乖離しているが、これは直近3回の債務バブルのピーク時とほぼ同じ水準になる(2019/7/19ダイヤモンド)。債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回った状態が続くと、どこかで必ず逆回転が起こる。
*米企業はコロナによる経済低迷で借り入れを増やしており、2020年7月には負債総額が過去最高のGDP比83%まで上昇している。一方、企業の債務返済能力は歴史的水準まで低下しており、格付けを下げられる企業が急増している。格付けがジャンク債まで低下するとFRBの支援措置を受けられなくなり、破綻する可能性が高まる。7/4ヴェリタス7/6日経
*今のような低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では低金利が続きやすく、高債務の状態が維持されやすい。*貯蓄余剰になると、余ったお金で国債を買うか現金のまま持つようになるので金利は上がりにくくなる。
*先進国では超低金利が続いているので債務拡大はまだ続きそう。
*債務の質は劣化しており、2019年には米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割が格付けの最も低いトリプルBになっている。*日本には低格付け債市場がない。
*信用格付けの低い企業は米シェール企業などエネルギー企業に多いが、原油安によりそれらの企業の信用リスク(デフォルトリスク)が高まっている。米ムーディーズはWTI価格が40ドル程度で推移した場合、シェール企業の4割が2年以内にデフォルトすると予想している。6/30日経
*格付け会社のムーディーズやフィッチは「米国のジャンク債市場デフォルト率は1990年、2000年、2009年の景気後退時はいずれも10%前後であったが、今回はその水準を上回る可能性もある」と言っている。6/4ヴェリタス
 *米企業のデフォルトは2021年春~年央にかけてピークを迎える可能性が高い、とも言われている。7/4ヴェリタス
*米企業は過剰な自社株買いなどで財務体質が脆弱になっていたところにコロナが直撃したので、さらに財務が脆弱になっている。
*大型のデフォルトが複数起こり、信用収縮が起きた場合は、設備投資の縮小や資産価値の下落が起こる。
*今のように金利が経済成長率を下回っている状態が続くと企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にできるので債務が膨張しやすい。政府債務においては、今のように国債金利がGDP成長率を下回っている状態では、多少の財政赤字を続けても債務残高GDP比を一定の水準に維持できる。日本政府の場合は対GDP比で2.5%程度の赤字を続けても債務残高GDP比を一定に維持できる。2019/10/7日経
*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構図になっている(2019/11/10日経)。
 *政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りてない中で財政支出を減らすと、景気悪化を招き財政赤字はさらに膨らむ。
 *財政赤字が拡大すると公共サービスなどの政府機能が落ちていく。
*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業によるものなので、計画に沿って徐々に削減していけそう。
*中国は2016年に政府出資の資産管理会社(AMC)を設立し、不良債権の最終処理を進めている。*AMCとは銀行の不良債権を分離して買い取り、それを海外の投資銀行や資産運用会社などに売却する会社。
*中国の可処分所得に対する家計債務比率は日本のバブル期並の120%まで上昇しているので、中国は今後深刻な消費不振に陥る可能性が高い(2019/7/28日経)。
*中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費(政府債務)が膨らんでいく可能性が高い。1/18日経
*新興国や資源国の債務も膨張し始めている。このまま景気停滞が続いた場合はデフォルトリスクが高まる。7/23日経
*足下ではドル安が進んでいるが、ドル安は新興国のドル建て債務の返済負担を軽くするので、強力な金融緩和効果をもたらす。21~22年頃から新興国市場が盛り上がるとも言われている。7/2ダイヤモンド
→問題あり

<金融政策、財政政策>
・コロナショックで世界中の中銀が金融緩和に転じている。
・日米欧は金融緩和が限界に達しつつある。
*スウェーデン中銀は2020年1月にマイナス金利だと家計債務の膨張が止まらないなどの理由で政策金利を0%に引き上げている(2019/12/20日経)。金利緩和の限界が露呈しつつある。
*金融緩和を長期で続けていくと、従来ならインフレが過熱して、それが金融緩和の歯止めになっていたが今回はそれがない。金融緩和が長期化した場合のメリットは失業率の低下やデフレ阻止になるが、デメリットは債務の増加や産業の新陳代謝の低下になる。
*金融緩和が長期化すると産業の新陳代謝が進まず(ゾンビ企業が存続する)、潜在成長率が落ちていく。潜在成長率が落ちるとインフレがさらに起こりにくくなる。現在中銀がインフレを起こそうと行っている金融緩和は長期的にはインフレが起こりにくい経済構造を作っているという一面もある。
*日本はこのまま金融緩和を続けると、金融仲介機能を持つ銀行の収益が落ち、金融政策が円滑に機能しなくなる恐れがある。日銀の責務には「物価の安定」の他に「市場・金融システムの安定」があるが、長期の金融緩和により金融システムが不安定になりつつある。
*主要中銀の量的緩和(資産購入)は2019年は40兆円ほどだったが、今年はコロナショックにより800兆円くらいまで拡大するだろうといわれている。4/16日経
*日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
 *MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することはなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によれば、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的には国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないとのこと。2019/10/7の日経には財政出動をして、長期的な収益率が政府の借入金利を上回るようなものに投資すれば、短期的に需要を押し上げるだけでなく、長期的にも財政状態を改善できるとある。このような投資に該当するものには出生率向上策や気候変動への取り組みなどがあるという。ただし、完全雇用の状況では労働力不足でこのような需要喚起策は打てない。
 *MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレなどで負担しなければならない。
 *MMTで高インフレになった場合、中銀は金利を引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで利上げをしたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上がる、という悪循環に陥る。
  *MMTと日本の金融・財政政策は若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。
*日本や米国は慢性的な財政赤字体質なので、将来的にはMMTのような財政・金融政策に移行せざるを得ない。
*先進国の金融政策はほぼ限界にきているので、次の景気後退時の景気刺激策は財政政策しかない。
*今回のコロナショックを機に先進国はMMTのような政策に移行したように見える。
*現在行っているMMTのような政策はインフレが生じる前にコロナを制圧できるかが重要なポイントになる。それができない場合は深刻な景気後退が避けられなくなる。
*コロナショックで企業が破綻し生産基盤がなくなってしまうと、コロナが収束した後の景気回復が弱いものになってしまう。それを避けるには政府や中銀の大規模な支援策が不可欠になる。支援規模はGDPの落ち込みと同程度のものが必要になる。これを実行すると財政赤字は莫大なものになるが、もしこれをしなければ恒久的な経済的損害が生じ、より莫大な財政赤字が発生する確率が高まる。4/5日経ヴェリタス
→問題なし

<政治>
・日本の政治は比較的安定。安部さんの代わりに菅さんが首相についたが、管さんは安部さんの路線を継承するようなので特に変化はなさそう。・・と思っていたが、管さんは通信・デジタル領域に強そうなので、もしかすると「スガノミクス」で一気にデジタルシフトが加速するかもしれない。ただ、管さんはぱっと見、裏方タイプに見えるので、そこらへんに少し不透明感がある。
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。
 *米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込んでいく。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏とも言われている。
・中国では独裁体制や監視体制が強化されつつあるが、この調子でいくと小説『1984』の世界が現実のものとなるかもしれない。
・英国はEUから「合意ありの離脱」をしたが、これから始まるEUとの通商交渉は不透明感が強い。
・英国のEU離脱時のグダグダ感が効いてか、EU域内のEU離脱派・懐疑派の勢いは当初よりも弱まっている。ただ失業率・成長率の悪化や所得格差の拡大、価値観の分断を背景にしたポピュリズムは今後も長期にわたり続きそう。
・EUはコロナ下の財政政策で、北欧の財政健全国と南欧の重債務国が対立している。財務状態の異なる国々が単一の財政政策をすることにもともと無理があるので、今回のコロナを機にEU解体機運が高まるかもしれない。
*コロナ危機は、コロナ前からくすぶってきた格差問題をさらに悪化させる可能性が高い。今回のコロナショックは中小企業や非正規労働者などの「経済弱者」を直撃したが、一方で、大規模な金融緩和による資産価格上昇で株式や不動産を保有する「経済強者」は富を一段を拡大させている。このような格差拡大の高まりは政治や社会の不安定化をもたらすと言われる。今後、所得再分配策やベーシックインカム、資産課税などの議論が活発になっていくかもしれない。8/8ヴェリタス
→問題あり

<その他の景気後退シグナル>
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はコロナにより一時大きく落ち込んだが、足下では急回復している。
・世界景気の先行指標である世界新車販売台数は2018年、2019年と2年連続で減少している。*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数もコロナにより一時大きく落ち込んだが、その後、急回復している。(同指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増えると言われる)。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数もしかり。
米国の失業率はコロナショックで4月に戦後最悪レベルの14.7%まで上昇していたが、足下では8%まで改善している。
 *失業率には「理由不明の休職者」は含まれていない。この人口を加算すると失業率はさらに5%上昇する。5/11日経
*米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥ると言われている。
*失業率が最低水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。4/25日経
・米景気の先行指標になるダウ輸送株ラッセル2000は急回復している。
・景気拡大期の終盤は、金余りと鈍化した成長率を引き上げるため巨大M&Aが盛んになるが、2018年、2019年はまさにその状態だった。*高値で行われたM&Aは景気後退期にのれんで巨額の減損が発生しやすい。
・世界景気の先行指標である銅価格はやや高値圏で推移している。*今回の価格上昇はコロナによる供給減が主因。
・世界景気を半年先取りするOECD景気先行指数(4月発表)は98.8と節目の100を下回っている。4/8日経
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIも一時大きく落ち込んだが、現在は節目の50を超えて安定的に推移している。*PMIは生産や受注が前月と比べて増えたかどうかを調べるものなので、節目の50を超えたからといって必ずしも経済が全面的に回復したことを意味しない。
・マクロ経済の不透明感を表す経済政策不確実性指数は「世界」「米国」「中国」「英国」で過去最高水準まで高まっている。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りはコロナショックで一時大きく下落したが、FRBが低格付け債を買い入れているため持ち直している。*シェールガス企業などの投資不適格債(ジャンク債)はFRBの購入対象外になる。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれるが、今は「長短金利の逆転」だけ。*デフォルト率はジリジリと上昇しており、2021年の中頃までは上昇を続けそうなので、社債スプレッドは今後跳ね上がる可能性がある。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果がある言われる。5/29国際通貨研究所
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多いが、今は利上げ局面が終了し、利下げ局面に入っている。
→問題あり

■テクニカル
・チャート
マザーズ指数と上海総合指数は上昇トレンドに転じたように見える。
<マザーズの5年チャート> 長期線(赤線)を超えてきている。

<上海総合指数の5年チャート> 長期線(赤線)を出来高をつけて超えてきている。
→問題なし

・騰落レシオ
日経平均 109
NYダウ 97
ナスダック ?
→問題なし

・信用評価損益率
ー11 %
→問題なし

■まとめ
景気後退は避けられそうにないが、株式市場の方は金融・財政政策に支えられて堅調に推移しそう。インフレが過熱したときに危機を迎えそうだが、それも当分先になりそう。
*景気後退とはGDP成長率が2四半期連続でマイナス成長になること。

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1年以内に米国が景気後退に陥る確率:100%

1年以内に中国の債務バブルが破裂する確率:40%
中国はデフォルトモードに入っていたところで(11/29日経)コロナが直撃したのでデフォルトモードが加速しそう。社債の償還がピークを迎える2021年,2022年頃(12/27日経)に中国共産主義は危機を迎えるのかもしれない。ただ、中国の独裁体制は2000年以上続いているようなので(4/14日経)、そう簡単には終わらなさそうでもある。

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
今後はコロナにより景気後退に陥りそう。新型コロナは終息するまであと1~2年はかかりそうなので(4/2日経)、しばらくは厳しい状況が続くかもしれない。今回の景気後退では企業の債務が整理されず、逆に膨らむのでコロナ収束後の景気拡大は非常に穏やかなものになりそう。2019年のEPSを回復するのは2024年頃になるかもしれない。

景気の落ち込みを和らげる要因もいくつかある。それらを一通り書いていく。
・イノベーションは経済成長の最も基本的な原動力になるが、今は世界中でイノベーション(デジタル革命)が起きている。
・ネット社会では情報を集めやすく、人が繋がりやすいので、イノベーション(新結合)が起こりやすい。現在はそこにAIが加わっているのでイノベーション速度は加速している。*AIは一見無関係に見えるもの同士の関連性(新結合)を見つけるのが上手。
・バブルは借金をして資産を買いまくることにより生じるが、今回そのような現象はあまりみられない。*現在起きている「金融バブル」は中銀が通貨を発行して、それで資産を買いまくることにより生じているので破裂しにくい。
・社債市場はバブル気味だが、今のような低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では金利が上がりにくく、バブル(高債務)の状態が維持されやすい。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、先進国では金融危機が起こりにくい。コロナの影響でデフォルト連鎖が起きても金融機関は7%超の自己資本比率を維持できる見通し。6/27日経
・中国の不動産市場にはバブルの兆しがあるが、中国政府の需要抑制策により日本のバブル期ほどの過熱感はない。ただし、シャドーバンキング商品(銀行理財商品、委託融資、信託商品)への投資は過熱感が強く、2017年末の残高は1000兆円とGDP比8割の規模まで膨らんでいる。
・中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国有企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。
・中国政府には財政出動や金融緩和の余地がある。
・中国は独裁体制のため、不況に陥るとすべての批判が指導部にふりかかる構造になっている。そのため指導部はなんとしても不況を起こさないようにする。
・トランプ大統領の再選には株価の維持、上昇が不可欠なので、トランプ政権は株価の上がりやすい政策を採る。
・先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、現在のようなインフレが起こりにくい環境でインフレ2%を達成・維持するには株高のような資産価格の維持・上昇が不可欠になる。そのため中銀は市場に優しい政策をとらざるを得ない。

コロナ以外の景気後退シナリオもいくつかある。それらを一通り書いていく。
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景気後退シナリオ1:災害や紛争で景気後退?
日本ではいずれ必ず南海トラフ地震が起こるといわれており、中東では紛争などの地政学リスクが高まりつつある。こうした問題が実際に起こると景気には強い下押し圧力がかかり、過去のパターンでは株価が15~35%下落している(2/29日経)。しかし、このような状況になると必ず政府や中銀が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば経済はV字回復することが多い。一般に、災害や紛争は押し目買いのチャンスと言われている。
*今回のコロナのように問題が大きく、長引きそうな場合は、そのまま景気後退に突入することもある。
*今回のコロナで企業倒産が相次いだ場合は、コロナが収束した後で供給が追いつかなくなり、V字回復ができなくなる。
*日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は景気後退を通り越して財政破綻するとも言われている(2019/10/11日経)。もしそうなった場合は1000兆円超の損失が発生するようなので強烈な株安・円安が発生する可能性が高い。
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景気後退シナリオ2:中国の債務バブル崩壊で景気後退
中国の企業債務は積み上がっているが、その7割以上は実物投資ではなく、リスクの高い金融資産(シャドーバンキング商品)への投資に回っている。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起きれば急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。景気後退に陥ると独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性も出てくる。独裁体制は経済的に成熟した社会には適さないシステムとも言われているので、その意味でもこのタイミングで独裁体制が終わる可能性がある。これらの政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。

・・当初、中国政府には財政拡大・金融緩和の余地があるので危機は避けられると思っていたが、米中貿易戦争+コロナショックで、このシナリオの実現可能性も高まってきたようにみえる。
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景気後退シナリオ3:マイナス金利により金融機関が破綻し景気後退
先進国の金利はマイナス圏に突入しているので、利ザヤの縮小から金融機関が破綻していく可能性がある。金融機関が破綻すると信用収縮が起こり(金回りが悪くなり)、景気後退に陥りやすくなる。しかし現時点では中銀が民間金融機関に配慮しながら金融政策を行っているので、穏やかな統廃合で済みそう。
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景気後退シナリオ4:中銀のインフレ政策が限界に達して景気後退
先進国の中銀はこれまで金融緩和で市場を支えてきたが、その金融緩和が限界に達しつつある。今後市場は支えを失い、大崩れする可能性がある。ただ、中銀の通貨発行能力はまだまだ健在なので今後は財政政策主導の財政ファイナンスで市場を支えていけそうでもある。
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景気後退シナリオ5:米長期金利が上昇し景気後退
米国は財政が著しく悪化しているので、長期金利には上昇圧力がかかっている。長期金利が上昇すると株式や不動産が売られ、借り入れが減り、景気後退に陥りやすくなる。ただ、今はFRBが米国債を無制限に買う方針を示して長期金利をコントロールしているので長期金利は低位にとどまっている。
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景気後退シナリオ6:インフレが過熱し景気後退
景気循環の従来のパターンは金融緩和→失業率低下・債務拡大→景気拡大・インフレ過熱→金融引き締め→債務圧縮→景気後退になるが、今回はインフレが過熱しないので、景気後退に至りにくい。
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景気後退シナリオ7:バイデン氏が米大統領に選出され景気後退
バイデン氏は法人税率の引き上げなど4兆ドル規模の増税案を掲げているので、バイデン氏が大統領に選ばれた場合は景気後退に陥る可能性がある。ただ、コロナ下では増税しにくく、対コロナの経済対策規模が増税規模を上回りそうなので、景気後退には陥りにくそうでもある。9/26日経
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景気後退シナリオ8:上記の景気後退シナリオ複数が同時に起こる
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■今後の計画
コロナや米中貿易戦争などで景気後退は避けられそうにないが、低インフレ×金融緩和×イノベーションにより株価の上昇は続きそう。押し目がきたら淡々と買っていこうと思う。

円が95円くらいまで上昇したら、外国株を買っていく。おそらく今回の円高が最後の円高になる。

円高時に仕込みたい外国株
・UBS ETF スイス株 (MSCIスイス20/35) 。スイス株式で構成されたETF。”最強通貨”のスイスフラン建てなので円安・ドル安対策によさそう。組み込まれている銘柄はネスレやロシュなど優良グローバル企業なので安定成長も期待できる。
・(米)アルファベット、アマゾン、マイクロソフト。規制リスクはあるが、情報社会の根幹にある「データ」を抑えているので長期の成長が期待できる。
・(米)VISAや(米)マスターカード。両社はフィンテック企業のボス的存在で、電子マネーは結局ここらへんが中核になりそう。
・(米)フェイスブック、ツイッター。SNSで盤石な地位を確立しており、今後も年率10%超の成長は期待できる。
・(米)セールスフォース、ドキュサイン。日本企業を調べていて見つけた優良成長企業。社風が良さそうなのがいい。
・NASDAQ100ETF。第4次産業革命の中核ETF。国内市場で簡単に買えるのがいい。
・アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信(為替ヘッジなし)。腕利き米国人が運用する趣味の良さそうなファンド。
・米国株式長期厳選ファンド。奥野一成氏が運用するビジネスモデルが堅固な企業に投資する永久保有系ファンド。積み立てオンリーなのがやや難。
・インド株のETF。インドは2040年まで人口ボーナス期が続く。
・インドネシア株のETF。インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続く。
・銅。銅をたくさん使う電気自動車などにより銅の需要は長期的に右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などにより供給が追いつかなくなる可能性がある。現在の銅の採算ラインは1トン5500ドル程度。

■今後の株式市場について
日本や米国の公的債務は返済不可能な水準まで積み上がっているが、この巨額の債務を返済するには現実的にはインフレを起こすしかない(生活者に余裕のない状態で財政健全化策をやると逆効果になる)。

しかし、そのインフレもデジタル化やグローバル化などの影響で起こりにくくなっている。この状態でインフレを起こすには通貨を大量発行するしかない。現在、政府が大量発行した債権を中銀が買い取る形で通貨を大量発行しているが、この構図は今後もしばらく続く可能性が高い。

このような状態が続くと通貨の価値が下落していき、資産価格には上昇圧力がかかる。株式市場はこのような流れで長期で上昇を続けるのではないかと思う。

ただし、このような政策を永遠に続けることはできない。このような政策を続けていると、どこかで必ず通貨の信認喪失が起こる。そうなるとインフレが加速し、国内からお金が逃げ出し、株式市場は(外貨換算で)大暴落する。それが起こるタイミングはおそらく、日本の経常収支が赤字に転落したとき(国の借金が民間の貯蓄を上回ったとき)になる。危機は2030年頃に訪れるかもしれない。

ちなみに、今回の上昇相場で最も投資妙味がありそうなのはグロース株になる。ゼロ金利が続くような環境では、企業の将来の利益を現在価値に割り引く際の割引率が下がり、高いバリュエーションが許容されやすくなる。