2018年10月5日金曜日

株式の需給は良好

9月27日のロイターの記事「縮む世界の株式市場、「品薄感」が支える強気相場」によると、世界の株式市場はゆっくりと縮小しているという。

今年1-8月までに世界で増えた株式は14兆円程度で、今年100兆円を超えると予想される自社株買いにより株式は需要超過になる可能性が高いという。

この記事によると株式による資金調達が減っている理由は4つ。1) 金利が低いため、社債市場で低コストで資金調達ができる。現在金利は上昇しているが、米長期金利が4.5%まで上昇しないと株式による資金調達に優位性がでない。2) 金余りにより、プライベートエクイティファンドに100兆円以上集まっており、そこから低コストで資金調達できる。3) 事業資金をそれほど必要としないIT関連の会社が増えた。4) 上場のメリットを感じない会社が増えた。

この傾向は今後も続きそうであり、加えてM&Aや自社株買いにより、株式が今後極端に増えていく展開は考えにくい。一方で世界経済の成長に伴い市場に流通するマネーの量は増えているので、株式市場にとっては良好な需給環境が続く可能性が高い。

売買チェック

■売り
・弁護士ドットコムを一部売却 損益+485%
時価総額1000億円(株価4500円)を突破したから。
割高感、過熱感があったから。
持ち株はピーク時の4割になってしまったが残りは当面放置する予定。

■買い
・シンクロフード
業績に若干不透明感はあるが、下げ余地は限定的に見えたから。
弁護士ドットコムを売って現金比率が高まり過ぎたから。

・日進工具
10月2日の日経記事「2位 日進工具 在庫抱えスピード出荷」を読んで、成長しそうなニッチトップの感じがしたから。
チャートも良かった。三角保ち合いで、戻り売り圧力も少ない。
<1年チャート>

・アイスタイル
(詳細は次項に記載)

アイスタイル

ウォッチリストをチェックしていたら良さそうなチャートがあったので調べてみた。

<1年チャート>三角保ち合いで、移動平均線が収斂している。

■どんな会社か
化粧品の口コミサイト「@コスメ」や、化粧品の販売事業などを手がける。

各事業の2018年業績と2019年の業績予想は

・メディアプラットフォーム事業(@コスメ事業)
2018年:売上73億円 営業利益26億円 →2019年:売上93億円 営業利益31億円

・販売事業 
2018年:売上121億円 営業利益6億円 →2019年:売上148億円 営業利益6億円

・海外事業(メディアプラットフォームと販売事業)
2018年:売上76億円 営業利益-0.1億円 →2019年:売上104億円 営業利益0円

・その他(人材派遣や投資事業など) 
2018年:売上13億円 営業利益4億円 →2019年:売上16億円 営業利益1億円

になる。売上を拡大しているのは販売事業や海外事業になるが、収益の柱となっているのはメディアプラットフォーム事業になる。

■ビジネスモデル(長期的に利益成長する仕組み)の強度は?
ここでは今後3年の利益成長の牽引役になりそうなメディアプラットフォーム事業のみ見ていく。

<参入障壁は高いか> ★★★★★
化粧品口コミサイトではすでに市場を独占しているので参入障壁は非常に高い。

<ストック型収益か> ★★★☆
プラットフォーム事業なのでユーザーの人気を維持できる限りはストック型になる。
しかし@コスメを使ってみて感じたのは、検索精度が低い、重い、ステマ口コミがトップに表示される、低評価の口コミだけを見られない、などであまり良い印象を抱けなかった。しかもこれらの点はごく基本的なことなので、現時点でこれらの問題が残されているということは、市場独占にあぐらをかいている、もしくは経営陣やエンジニアのセンスに問題があるのではないかと思った。

<成長市場か> ★★★★
美容分野をITで変革するのは今のトレンド。今後は高級化粧品の販売や化粧品のマーケーティングもネットを通じて個人とダイレクトに行うようになっていきそう。ただアイスタイルが主力としている口コミ事業は頭打ちで、新事業も始めているがまだ手探りの段階。

これらを総合するとビジネスモデルの強度は★★★☆~★★★★になる。ただし他の事業も合わせたトータルの強度は★★★~★★★☆程度。

■成長ストーリー
化粧品の口コミサイト「@コスメ」の成長には頭打ち感があるが、アイスタイルは今後@コスメ内に各ブランドのオフィシャルサイトを誘致して、ブランドサイトが集積するプラットフォームを構築していくという。

今期に400ブランド、来期はさらに400ブランドを誘致する計画で、これは@コスメのブランドファンクラブに登録している600ブランドに働きかければ達成可能な数字だという。

ブランドオフィシャルサイトの掲載料は1ブランドにつき月50万円~となり、仮に800ブランドまで増えた場合、年間売上高は50億円、営業利益は15億円規模になる。

この事業が軌道に乗った場合、@コスメ経由で高級ブランドの販売ができるようになる可能性がでてくる。現時点では高級ブランドのネット販売はかなり限定さたものになっているが、それが@コスメのECサイトでできるようになれば、ZOZOTOWNのようなECプラットフォームに発展する可能性がある。

さらに同ビスネスモデルが成功すれば海外子会社(台湾、マレーシア、アメリカ)への水平展開も期待できる。
*ただし10億で買収したアメリカのMakeUpAlleyはこけそう。

■問題点
各ブランドが@コスメ内にブランドオフィシャルサイトを開設する最大のメリットは、サイトを訪れた@コスメメンバーの属性や興味の分析になるが、その分析をするにはメンバーのログインが必要になる。しかし現時点の月間ログイン数は全会員の10分の1、アクティブユーザーの4分の1の50万しかない。

アイスタイルは2020年までに月間ログイン数を300万まで増やす計画を立てており、ログイン数を増やすためにアプリへ誘導しようとしている(アプリを開くと自動的にログインする)。今後はアプリの改良やキャンペーンなどをしていくようだが、現時点でのアプリの評価は★3つと低いため、目標達成には不透明感がある。
*実際にアプリを使ってみたが予想以上にスピーディーで使いやすかった。改良が進んでいるのかもしれない。

それと、そもそもの話になるが、ECとリンクしてないブランドオフィシャルサイトにどれほどの“価値”があるのかも疑問。

■仕込み時はいつか
ブランドサイトの誘致やログイン数の増加には不透明感があるが、9月18日に出した業績連動型新株予約権の行使条件を見ると、会社は本腰を入れてこれらに取り組んでいることがわかる。加えてビューティーテック(美容×IT)は成長市場であり、マーケティングの肝となる口コミ市場はすでに押さえているので、中長期的な見通しは悪くない。ここでは仕込み時がいつかをチャートなどを見ながら考えていく。

冒頭にあげたチャートでは今が仕込みときのようにも見えるが、累積売買高を見ると現在の株価の上には“壁”ができている。
<1年チャート>

<2年チャート>

一方で、5年チャートや、一目均衡表(週足)をみると、ここから大きく下げるようにも見えない。
<5年チャート>

<2年チャート>

ファンダメンタルズ的には、今期減益予想であり、新規事業には不透明感があるので、短期的には上がる理由が見当たらない。

となると、株価はしばらく横ばい圏(1150~1450円)で推移する可能性が高い。とりあえず今日1250円で購入。1200あたりまでは買い下がっていく予定。

弁護士ドットコムの株価水準について

弁護士ドットコムの時価総額が1000億円を突破し割高感がでてきたが、どの程度割高なのかを類似企業と比較して探っていく。

■成長市場にある、中小型の、市場独占型、ITプラットフォーム企業
・弁護士ドットコム
今期の売上:31億、営業利益:5億、過去3年の営業利益率:20%、今後3年の売上高成長率:年率30%、時価総額:930億(売上高の30倍、営業利益の186倍)

・夢の街創造委員会
今期の売上:55億、営業利益:8億、過去3年の営業利益率:16%、今後3年の売上高成長率:年率20%、時価総額:1320億(売上高の24倍、営業利益の165倍)

・鎌倉新書
今期の売上:23億、営業利益:5億、過去3年の営業利益率:24%、今後3年の売上高成長率:年率25%、時価総額:530億(売上高の23倍、営業利益の106倍)

・インフォマート
今期の売上:80億、営業利益:25億、過去3年の営業利益率:26%、今後3年の売上高成長率:年率20%、時価総額:1770億(売上高の22倍、営業利益の70倍)

類似企業と比較した場合、弁護士ドットコムが極端に割高ではないことがわかった。現在調整中だが、もしかしたらそれほど下げないのかもしれない。

ついでに弁護士ドットコムの電子契約事業の競合であるドキュサインや、大型プラットフォーム企業も見ておく。

・(米)ドキュサイン
今期の売上:750億円、営業利益:-9億円、過去3年の営業利益率:-10%、今後3年の売上高成長率:年率25% 時価総額:7900億円(売上高の10倍)

クラウドサインの売上(4億程度?)と比較すると規模が150倍以上違う。クラウドサインの海外展開は厳しそうだと改めて思った。

・エムスリー
今期の売上予想:1140億、営業利益:320億、過去3年の営業利益率:28%、今後3年の売上高成長率:年率20%、時価総額:1兆5400億(売上高の13倍、営業利益の48倍)

・リクルート
今期の売上予想:2兆4000億、営業利益:2200億、過去3年の営業利益率:9%、今後3年の売上高成長率:年率10%、時価総額:6兆2600億(売上高の2.6倍、営業利益の28倍)

・カカクコム
今期の売上予想:520億、営業利益:250億、過去3年の営業利益率:46%、今後3年の売上高成長率:年率8%、時価総額:4500億(売上高の9倍、営業利益の18倍)

・(米)ALPHABET
今期の売上予想:15兆円、営業利益:3.4兆円、過去3年の営業利益率:25%、今後3年の売上高成長率:年率20%、時価総額:90兆円(売上高の6倍、営業利益の26倍)

・(米)Amazon
今期の売上予想:25兆円、営業利益:1兆円、過去3年の営業利益率:3%、今後3年の売上高成長率:年率25%、時価総額:102兆円(売上高の4倍、営業利益の100倍)

大型株を書いていて気づいたが、時価総額を売上倍率で見た場合、リクルートにはまだ割安感がある。もしかしたら近いうちに売上高の4倍程度の時価総額10兆円(株価6000円)を突破するかもしれない。

持ち株チェック

保有比率の高い順に見ていく。

■弁護士ドットコム
基本シナリオ:法律分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
電子契約事業のクラウドサインはクラウドソーシング最大手のランサーズと業務提携し順風満帆な様子。しかしチャートは最高値圏で十字線+首吊り線+連続陰線が出たのでいよいよ天井を打ったようにみえる。今後3年の売上高成長率は年率30%程度。今年の予想平均株価は不明。
<3ヶ月チャート>

■シンクロフード
基本シナリオ:飲食店の運営をITで変革・サポートし総合プラットフォーマーとして盤石な地位を築く
飲食店ドットコムへの登録人数は順調に増えており新規事業も立ち上げているようだが、収益の柱となる求人広告では地方の伸びが弱い。地方では価格優位性があまりないのかもしれない。競合のインディードはわずか1ヶ月で掲載数が10%以上伸びている。シンクロはやはり厳しいかもしれない。チャートは一目均衡表の雲の下にぴったりはりついているのが面白い。次の決算が順当なら日足の雲は抜けそう。今後3年の予想売上高成長率は年率30%程度。今年の予想平均株価は1000円(変動率±35%)。
業績に最もインパクトのある求人広告掲載数を記録していく。関東 2339(2239)  関西 685(611)  東海 307(337)  九州 107(111)  北海道・東北 144(183) 総計 3582(3480)
市場独占型の求人プラットフォーマー・インディードの掲載数も記録していく。東京都の飲食店 96498(75284) 大阪府の飲食店 33185(27758)
*( )内は先月の数
<1年チャート>

■ペプチドリーム
基本シナリオ:ペプチド創薬で最強のプラットフォーマーに
株主総会では取締役を退任した菅教授が登場し、「ペプドリを見捨てることは絶対にない」と言っていたようなので一安心。ただ業績のほうはしばらく横ばいが続きそうなので、株価はボックス圏で推移しそう。今後3年の売上高成長率は年率20%程度。今年の予想平均株価は4600円で、予想レンジは3400-5800円。

■アイスタイル
基本シナリオ:美容分野をITで変革し最強のプラットフォーマーに
新規事業の不透明感は強く、経営陣についても気になるところがあるが、全体的な事業環境はそれほど悪くない。今後3年の売上高成長率は20%。今年の予想平均株価は1300円(変動率±30%)。

■厳選ジャパン(投資信託)
基本シナリオ:ビッグチェンジ銘柄投資でテンバガー達成
基準価額は上げ相場に乗って上昇しはじめた。やはりプロはここらへんがうまい。今年の予想基準価額上昇率は30%程度で予想平均価額14000円(変動率±30%)。

■朝日ネット
基本シナリオ:ストックビジネスで地味に成長&株主還元
特に問題はないが、相変わらず地味。サプライズがない限りは500-550円のレンジで推移しそう。今後3年の予想売上高成長率は年率6%程度でEPS成長率は15%程度。今年の予想平均株価は550円(変動率±15%)。

■日経レバETF
基本シナリオ:ファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも中期的に上昇
上がるタイミングが思ったよりも少し早かったが、出来高を付けて23000円の“壁”を突破したので上値は軽そう。日経平均の今後1年の予想平均株価は25000円(変動率±15%)。

■日進工具
基本シナリオ:ニッチトップの極細ドリルで市場開拓
ここはニッチトップの医療用針で成功したマニーのようになることを期待。今後3年の売上高成長率は10%。今年の予想平均株価は3600円(変動率20%)。

■パーク24
基本シナリオ:最強のカーシェアプラットフォーマーに。海外駐車場事業の効率化で利益拡大。
海外事業の黒字化はしばらく先になりそうだが、それ以外は順調なので特に問題なし。今後3年の売上高成長率は5%で利益成長率は10%程度。今年の予想平均株価は3200円(変動率20%)。

■FXでドル買い(レバ10倍)
基本シナリオ:中期ではドル高、長期では円高
円高、ドル高の要因を列記し、各々の中期的なインパクトを★で表していく。
<円高要因>
・日本よりも米国のほうがインフレ率が慢性的に高いので購買力平価は円高傾向。★★★
・米国の保護貿易政策により米国のインフレが加速。
・日本の経常収支は黒字が続いている。★★
・日本企業による海外企業の巨額買収により経常黒字がさらに拡大する。★
・米国の財政赤字の拡大。★
・米国は完全雇用下における保護貿易政策により貿易赤字が拡大する。★★
 *完全雇用下では米国内で生産を増やすことができず、輸入するしかない。
・日本は対外純資産を世界で最も保有している。
・日銀の金融緩和が限界に近づきつつある。★
・海外で金融緩和が進む。
・トランプ大統領の口先介入。
・米国景気の減速と利上げの鈍化。
・世界が景気後退期に入る。
・貿易戦争や新興国不安によるリスクオフ。★
・金融危機や戦争、大災害によるリスクオフ。

<ドル高要因>
・日本より米国のほうが経済に勢いがある。★★★
・米国の金融政策は引き締め傾向で金利が高い。★★★
・米国のリパトリ減税により米国にドルが環流している。★★
・米国の保護主義により米国の貿易赤字が減少するという思惑が生じる。★
・日本企業による海外企業の巨額買収。★★
・原油高による日本の経常収支の悪化。★
・不透明感が払拭された後のリスクオン。★★
・月100兆円を超える米国債の発行にはドル高が有利。★
→円高要因の★が11個、ドル高要因の★が15個でドル高圧力が強そう。

■コンテック
基本シナリオ:ダイフクとファナック向けのエッジコンピューティング機器で業績拡大
半導体関連は下振れしそうだが、自動化関連は順調に拡大していきそう。今後3年の売上高成長率は5%で利益成長率は10%程度。今年の予想平均株価は2400円(変動率20%)。

■今後の戦略
割安感の出た優良株があれば買っていく。

市場環境チェック

株式市場への影響が大きい企業業績、金利、金融政策などをチェックしていく。

■ファンダメンタルズ
<EPS成長率>
・世界株式の2017年のEPS増加率は17%、2018年は15%、2019年は10%。
・米国株式の2017年のEPS増加率は11%、2018年は23%、2019年は10%。
 *ゴールドマンの2019年の予想は7%で、大幅な関税引き上げをした場合は0%。
・日本株式の2017年のEPS増加率は22%、2018年は5%、2019年は8%。
 *野村證券の2018年予想は10%で、2019年も10%。
*ベースの数値はJPモルガンの予想。参照:(2018/09/28日経)
→中期的には問題なし

<経済成長率>
・世界の2017年の成長率は3.7%、2018年は3.9%、2019年も3.9%。
・米国の2017年の成長率は2.3%、2018年は2.9%、2019年は2.7%。
・ユーロ圏の2017年の成長率は2.4%、2018年は2.2%、2019年は1.9%。
・日本の2017年の成長率は1.7%、2018年は1.0%、2019年は0.9%。
・新興国の2017年の成長率は4.7%、2018年は4.9%、2019年は5.1%。
・中国の2017年の成長率は6.9%、2018年は6.6%、2019年は6.4%。
*数値はIMFの予想。参照:(2018/10/05日経)
現在、世界同時成長が起きており、このような状態は通常2,3年続くという。ただしこのような世界同時成長は景気サイクルの終盤に見られる特徴的な現象とも言われている。
世界同時成長は海外で6割を稼ぐ日本企業には追い風になる。しかしその半面、海外の景気後退期は日本企業にとって強い向かい風になる。このような経済構造に円高効果が加わり、日本株は米国株の1.5倍くらい下落する。
*アメリカの財政支出の効果は2019年に切れるので20年以降に景気後退リスクがある。
→中期的には問題なし

<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2018年度が2.4%。
・欧州の予想インフレ率は2018年度が1.5%。
・日本の予想インフレ率は2018年度が0.9%。
→貿易戦争が激化すれば米国のインフレは加速する。
→中期的には問題なし

<金利>
・米国の短期金利は2.88%で長期金利は3.19%。
・日本の短期金利は-0.11%で長期金利は0.15%。
→貿易戦争が激化したらインフレの加速に伴い米国の政策金利は上昇する。
→米金利が上昇し、米株式に割高感がでてきた。
→日欧の長期金利は低いままなので、米長期金利は上がりにくくもあるが、一方で米国の国債発行額は月100兆円を超えはじめているので、需給の緩みから米長期金利は上昇していく可能性が高い。
→米国の短期金利が長期金利を上回ると景気後退に陥るといわれるが、長短金利差まだ0.31%あるので大丈夫そう。
→米国の実質長期金利(名目長期金利-インフレ率)が潜在成長率を上回ると景気後退に陥るといわれるが、足下の実質長期金利は0.79%で、潜在成長率は1.8%。
→中期的には問題なし

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・日本の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向。
・中国の民間債務残高はGDP比210%まで上昇しているが、足下では横ばい傾向。日本のバブル期のピークは220%になる。
・新興国の民間債務残高はGDP比140%で、現在も微増傾向。
・過去10年で各国政府は債務を大きく膨らませている。
→中国の債務は危険水準に達しているが、習政権は経済の筆頭課題に金融危機封じ込めを据えているので、それほど心配しなくてもよさそう。ただ貿易戦争などで経済成長が大きく下振れすれば一気に債務圧縮局面に入る可能性がある。
→新興国は米利上げや原油高などで通貨安・高インフレ・高金利になり、債務圧縮局面に入りそうだが比較的穏やかなものになりそう。
→中期的には問題なし

<金融政策>
・米国は引き締めに転じている。
・日本は金融緩和を継続しているが限界に近づきつつある。
・欧州は量的緩和を2018年12月に終了し、利上げは19年の夏以降になる。
・世界の量的緩和は2017年3月にピークをつけ、その後は減少傾向にある。2019年には明確なマイナスへと転じる。
→引き締め速度は穏やかだが全体的に引き締め傾向。これまでの経済拡大は金融緩和が原動力であったため、マイナス転換によりすべてが逆回転する可能性がある。
*米国はトランプ大統領の財政拡大策により次の景気後退期には金融政策しか残されていない。そのためFRBは粛々と金融引き締めを進めていくしかない。
*日本は次の景気後退期に、ヘリマネなどの禁じ手をのぞけば、金融面でも財政面でも打つ手がない。
→中期的にはやや問題あり

<政治>
・日本は安定。
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。
→中期的にはやや問題あり

<その他の景気後退シグナル>
・過去の景気後退期はすべて米国の需給ギャップがプラスに転じた後に始まっているが今は0%程度?。
・コモディティ、米国債、米国株、ドルの4資産の値動きで、年間収益が高い順位が、コモディティ、米国債の順番になるとその翌年に景気後退が起きると言われているが、今年は今のところコモディティ、米国株の順。
・景気拡大期の終盤は、金余りと鈍化した成長率を引き上げるため巨大M&Aが盛んになるといわれているが、今がまさにその状態。
・世界景気の先行指標である銅価格が、ピークアウトするかどうかの分岐点にあったが、いったん反発。
→中期的には問題なし

■テクニカル
・チャート
→問題なし

・ディストリビューションデー
日経平均 3日
NYダウ 2日
ナスダック 先月5日 今月5日
→ナスダックはやや問題あり

・騰落レシオ
日経平均 103
NYダウ 86
ナスダック ?
→問題なし

・信用評価損益率
ー8.92%
→問題なし

eワラントのトレーディングインディケーター
<サムモデル>「中立」
危険度:11月43% →12月62% →1月69% →2月74% →3月52% →4月52% →5月36% →6月43% →7月39% →8月44% →9月61% →10月18.7%

<オノダモデル>「中立」
2018/1/18に「売り」に転換。2018/2/20に「買い」に転換 。2018/5/18に「売り」に転換 。2018/7/17に「買い」に転換。2018/08/20に「売り」に転換。2018/09/18に「中立」に転換。
→問題なし

■株ログ・インディケーター
問題なし:10件、やや問題あり:3件、問題あり:0件、危険度:40%、投資判断:買い
中期的には特に問題なし。ただ米国株はPER的にも金利的にも天井を打ったように見える。

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

現時点の予想では2020年頃に景気後退期に入るとみている。ただ今回の景気拡大期は低成長・低金利の中で浅く長いものだったので、景気後退期も浅く長いものになりそう。

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景気後退のメインシナリオ:2020年ごろに中国の経済成長が下振れし中国は債務圧縮局面に入る。中国発の不況が世界に連鎖していく。

ただ今回は景気後退や株価暴落を抑えるいくつかの要因がある。
・中国には財政出動の余地がある。
・借金をして資産を買いまくることでバブルは生じるが、今回先進国ではそのような現象はあまり見られない。
・リーマンショックの記憶がまだ残っているため、皆慎重になっている。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なので、先進国では金融危機は起こりにくい。
・現在、第4次産業革命が進行中で、これは今後も長期にわたり続く。
・世界的に金利が低下しているので資金の逃げ場があまりない。株式以上に債券が割高なので、株式に優位性がでやすい。
・世界の株式量は減少しているが、その一方でマネー流通量は増加しているので株式には良好な需給環境が続く。
・日本株に限れば、日銀のサポートがある。サポートラインは多分2万円あたりになる。

以上を総合すると、景気後退や株価の下落はゆっくり進む可能性が高い。
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2019年の半ば頃になったら徐々に株式とドルを売って、米国債を買っていく。

ただしそれよりも前に
・日経平均が3万円
・1ドルが120円
・米長期金利が4%
このいずれかになった場合は、その時点でポートフォリオをシフトしていく。

景気後退期に入り円が80円くらいまで上昇したら、米国債を売って、米国株や日本株、ドルを買っていく。

次の景気の底で仕込みたい株式
・(米)ALPHABET。人工知能や自動運転の本命。
・NASDAQ100ETF。第4次産業革命のETF。
・インド株のETF。インドは2040年まで人口ボーナス期が続く。
・インドネシア株。インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続く。