2023年7月1日土曜日

4~6月の売買

■4月
・オキサイド 少し売却 損益-26%
決算予想が大きく外れたから。

事前予想は
2024年2月期の売上高91億円、営業利益9億円
<内訳>
半導体事業 売上高42億円(前期比+35%)
ヘルスケア事業 売上高22億円(前期比+15%)
光計測・新領域事業 売上高8.5億円(前期比+15%) 
ライコル社の事業 売上高18.5億円(前期比+15%)

だったが、会社予想は
売上高87.7億円、営業利益4.7億円
<内訳>
半導体事業 売上高49.7億円(+53.7%)
ヘルスケア事業 売上高17.2億円(-2.9%)
光計測・新領域事業 売上高5.9億円(-20%)  
ライコル社の事業 売上高20億円(+25%)
*ライコル社の業績が連結されるのは第2四半期からで、第2四半期以降の予想売上高は14.8億円になる。

だった。トータルの売上高はだいたい予想通りだったが、利益や各事業の売上予想は大きく外れた。予想が外れた要因は、買収費用を考慮できていなかったことと、フロー型ビジネスの業績のブレが大きかったことあたりになる。ここらへんのことは今回のケースから学んでいきたい。

会社予想は下半期偏重型で今の調子でいくと下振れる可能性もありそうだと思った。3月に買収したライコル社についてもまだ不明な点が多く、見通しがやや悪くなった。

ただ、5月に開かれた株主総会の資料を読むと、本決算資料を一部誤解していたことがわかり、長期ではそれほど問題なさそうなことがわかった。

■6月
・日経平均ベア上場投信 新規買い
チャートが天井を打ったと思ったから。マクロ系はややこしいので手を出さないようにしていたが、今回の状況では賭けてもリスクはそれほどなさそうだと思った。

<6月14日の日経平均株価の1年チャート>
天井圏で陽線が4本連続で出ており、窓もあいている。14日の東証プライム市場は4兆7千億円の大商いで、てっぺんに十字線らしきものも出ている。
移動平均線との乖離率は高く、過熱感は強い。*騰落レシオは109とそれほど過熱感なし。
日経平均株価のPERは15.30倍と今後の上方修正分も織り込んでいるように見えた。


・日経平均ベア上場投信 全売却 損益-1%
集めた情報を整理してみると、資本効率改善機運や中国株の代替投資などで、まだ上がりそうだと思った。(詳細は後述)

6月16日にグロース市場指数が急騰し、循環物色が始まったと思った。息の長い相場になりそうだと思った。

日経平均株価が気になり始めてしまった。うっとうしいと感じた。

この投信が日経平均株価と逆相関していないことに気づいた。投信から資金が徐々に抜けていっており、下げ圧力が強そうだと思った。

・Zホールディングス 新規買い
PBRが1倍を割っていることに気づいたから。東証がPBR1倍割れの是正を求める中で、成長志向の強いZホールディングスがこの現状を受け入れるとは思えなかった。現金が1.6兆円くらいあるので、株価が大きく下げたら自社株買いが入りそうだと思った。チャート的にも底値感があり、リスクはあまりなさそうだと思った。
*株式を買った後に有利子負債が1.9兆円あることに気づいた。この会社の決算書はわかりにくい。

決算資料を読むと電子マネーのPayPayが成長ドライバーになりそうだと思った。PayPayの2021年の売上高は1022億円、EBITDA-432億円、2022年の売上高は1676億円(前年比+64%)、EBITDA-119億円なので、もうじき黒字転換しそうなことがわかる。成長力も高い。2024年に予定通り「LINEヤフー」と連携すれば、信用スコアの精度が増して、中国アリペイのような一大経済圏ができるのではないかと思った。
*EBITDAとは営業利益+減価償却費

6/19日経MJに「PayPayは、東南アジアの4つのスマホ決済アプリで支払いができるようにした。コロナ禍から回復しつつあるインバウンド(訪日外国人)需要は富裕層による「爆買い」も期待できる」「PayPayはアリペイのほか、韓国のカカオペイも20年4月から利用が可能となった。カカオペイは開始時に新型コロナの感染症の流行が本格化したため、これまでは利用が広がっていなかったとされる」とあった。これらもPayPayの成長に寄与しそうだと思った。


・ジモティー 一部売却 損益-9%
メルカリやPayPayフリマで大型家具・家電を送料込みで安価に取引できることに気づいたから。メルカリでは現地取引もできると気づいたから。使い勝手は向こうの方が格段に上なので、ジモティーの存在価値が薄れたように感じた。

・ハルメクホールディングス 新規買い
6/22日経記事を読んで。経営者がしたたかで、女性シニア市場は未開拓で大きそうだと思ったから。(詳細は後述)

・ハルメクホールディングス 半分売却 損益+2%
6/26日経で、雑誌「ハルメク」の購読者数がまた減っていることがわかったから。今期の業績は下振れそうだと思った。


・Zホールディングス 半分売却 損益-2%
このブログを更新するために各種指標をチェックしていたら、米欧の指標が予想以上に悪く、景気後退は避けられないと思ったから。過剰流動性(金余り)は維持されそうなので株式市場はそれほど影響を受けないかもしれないが、念のため、現金ポジションを厚めにしておこうと思った。

保有株

保有比率の高い順に見ていく。

■ジモティー
基本シナリオ:最強の地元取引プラットフォームに

第1四半期決算の売上高は前年同期比-3.2%だったが、これは広告単価の減少によるもので、ページビュー数と投稿数は順調に増えているので特に問題なさそう。自治体との提携も順調に増えているので、全体としてはそこそこ順調そう。

ただ、メルカリも自治体との提携を急速に増やしている(6/21日経産業)。メルカリが行っているサービスはジモティーとは被らないと思っていたが、調べてみると現地取引もできるようなので、被っていることがわかった。利便性ではメルカリの方が圧倒的に上なのでジモティーは厳しい展開になりそう。

<「ジモティー」の主要カテゴリーの投稿件数>
・売ります・あげます 2022年4月 14860604 →7月 15540651(+680047) →10月 16507035(+966384)→2023年1月 17533994(+1026959) →4月 18503955(+969961) →19497382(+993427)
・アルバイト 1173013 →1029785(-143228) →1175078(+145293) →1165733(-9435)→1309112(+143379) →1121301(-187811)
・正社員 263384 →288632(+25248) →297837(+9205) →349910(+52073) →376806(+26896) →409435(+32629)
・中古車 891605 →880663(-10942) →899161(+18498) →1020510(+121349) →1015101(-5409) →1035883(+20782)
・不動産 4746672 →5066025(+319353) →2731414(-2334611) → 2734151(+2737) →987150(-1747001) →3286432(+3187717)
・メンバー募集 755081 →777596(+22515) →800154(+22585) →823552(+23397) →828769(+5217) →854588(+25819)
・助け合い 381023 →392329(+11306) →409002(+16673) →426671(+17669) →436281(+9547) →451330(+15049)
・イベント 285390 →298778(+13388) →314690(+15912) →330160(+15470)→343348(+13188) →360084(+16736)
・教室・スクール 186931 →190520(+3589) →195454(+4934) →199244(+3790) →201831(+2587) →205688(+3857)
・地元のお店 165633 →170234(+4601) →176953(+6719) →183685(+6732) →188465(+4780) →196881(+8416)
・里親募集 122899 →127698(+4799) →136674(+8976) →144211(+7537) →144188(-23) →149350(+5162)
*投稿件数は「取引終了分」も含めてカウントされているので、実際に取引可能な投稿件数は上記の14分の1くらいになる。

<第2四半期の売上高予想>
まずは前回の予想の振り返りから。「第1四半期の売上高を予想すると、ページビューと投稿数は微減、広告単価は横ばい、自動配信の一部が掲載課金型広告にシフトしているので、自動配信売上高は微減の3億1000千万円、マーケティング手数料はマーケティングの一部が掲載課金型広告にシフトしているので、7500万円、その他手数料(エスクロー決済手数料と掲載課金型広告)は7000万円になり、合計の売上高は4億5500万円になる」だった。

実際は、ページビューと投稿数は小幅増、広告単価は小幅減で、自動配信売上高は3億900万円、マーケティング手数料は8400万円、その他手数料(エスクロー決済手数料と掲載課金型広告)は5800万円で、合計の売上高は4億5100万円だった。上記の数値表では投稿数が減っていたので、実際の投稿数も減っていると思ったが、増えていたのは意外だった。上の表は参考程度にしかならなさそう。

以上を踏まえて、第2四半期決算の売上高を予想すると、ページビューと投稿数は横ばい、広告単価も横ばい、自動配信の一部が掲載課金型広告にシフトして、自動配信売上高は3億円、マーケティング手数料は横ばいの8400万円、その他手数料(エスクロー決済手数料と掲載課金型広告)は7000万円、合計の売上高は4億5400万円(累計売上高は9.05億円(前年同期比0%))になる。

決算資料には「自動配信の単価下落が継続しているが、自社広告の販売が好調でその穴埋めをする規模まで成長」「第2四半期以降は新商品が全体の成長率を押し上げる見込み」とあるので、売上高は予想より若干上振れる可能性がある。

ジモティーのチャートは短期、中期、長期とも”セットアップ”が完了している。ここで強い情報が出たら大きく跳ねそう。少しだけ期待したい。
ジモティーのチャートはグロース指数のチャートとほぼ連動している。グロース指数は上昇トレンドなので、ジモティー株を引き上げてくれそう。
<ジモティー株と東証グロース市場Coreの半年チャート)


今後3年の予想売上高成長率は年率-5~15%程度。現在の妥当だと思える時価総額は80~100億円(株価1350~1650円、PSR4~5倍)くらい。2030年の予想売上高・利益は現在の1~2倍くらい。


■イントラスト
基本シナリオ:家賃債務保証と医療費用保証で売上高150億円、営業利益30億円

前期の売上高は64.9億円(前期比+31%)、営業利益は16.2億円(+37.4%)と絶好調だった。今期業績予想も売上高85億円(+30%)、営業利益21億円(+24%)と好調な様子。

問題はその後になる。現在の業績の中心は家賃保証事業になるが、決算説明資料には「保証事業の場合は新規と更新があり、新規については前年比でどれくらい増えたかが売上に直結します。この影響は2024年3月期でいったん落ち着くと考えています」とあるので、成長速度は落ちていきそう。「一方で、更新は積み上がっていきますので、今期で大体10億円の増収となる見込みです。年間5万件ずつ切り替わっていくとすると、この影響があと3年くらい続くと見ています」とあるので、穏やかな成長は2026年3月期ごろまでは続けられそう。

今後の成長は医療費用保証の成長にかかってくる。この事業の現在の売上は5億円程度になる。この事業を年10億円、20億円と伸ばすには新規契約が年間250~500件くらい必要になりそうだが、足元のペースでは年50~70件くらいが限界になりそう。決算資料には「ベテラン営業社員の中途採用、社内の異動などにより営業体制の強化を図っています」とあるので、成長加速に期待したい。

先日出たIR資料に「2025年3月期までに東証プライム上場の上場維持基準に適合させる」とあった。現時点でその基準を満たしていない箇所は、流通株式比率と流通株式時価総額になる。プライム市場の流通株式比率の基準は35%で、イントラストは34.9%になる。あと0.1%なので、これは簡単にクリアできそう。ただ流通株式時価総額の基準を余裕をもってクリアするには、流通株式比率を45%くらいまでは高める必要があるので、大株主(親会社)のプレステージには10%くらい株を売ってもらう必要がありそう。いざ売るとなれば株価は大きく下げるかもしれないが、場合によってはそれがよい買い場になるので、注意して見ていきたい。

2027年までのイントラストの成長シナリオと業績予想をざっと書いておく。今後1年は家賃債務保証事業が業績を牽引し、24年3月期の売上高は85億円、営業利益は21億円になる。その後は家賃債務保証と医療費用保証が業績を牽引し、27年3月期の売上高は125億、営業利益は26億になる。この時点での医療費用保証の導入病院数は500になる。

今後3年の予想売上高成長率は年10~20%程度。現在の妥当だと思える時価総額は255億円(株価1140円、PSR3倍)。2030年の予想売上・利益は現在の2~3倍くらい。


■オキサイド
基本シナリオ:超高品質単結晶でグローバル・ニッチトップ10個

5/16日経産業6/21日経に、個人向けの半導体メモリー市場は成熟しつつあり、一方で各企業、各国政府が大型投資をしているので供給過剰になる可能性がある、みたいなことが書いてあった。オキサイドが販売する半導体検査装置はメモリー向けでも使われているので、近い将来この影響を受ける可能性がある。

ただオキサイドの検査装置はサムスンだけでなく、ロジック半導体を製造するTSMCやインテルでも使われているので、影響は限定的になりそう。また半導体検査装置の市場は2026年に20年比で3倍近い3兆6000億円規模に(5/9日経)、半導体市場は2030年に2024年の2倍くらいに拡大するとの予想もあるので(6/27日経)、たいした問題にはならなさそう。


ヘルスケア事業は前期の第4四半期に売上が第3四半期の6億円から2億円に急減した。これは取引先の在庫調整が原因だという。ペットCT装置の市場は年平均5%くらいの成長を続ける見込みなので、取引先の生産調整はじきに落ち着くとは思うが、オキサイドは今期、前年比-20%の減収を予想している。

一方、頭部用ペットCTについては、アルツハイマーの治療薬承認により、需要が盛り上がってきたもよう。オキサイドはこの装置で使われるシンチレーターの売上を含めると、ヘルスケア事業の売り上げは前期比で横ばいになると予想している。ヘルスケア事業も中長期では特に問題なさそう。

ただ6/14日経には「アルツハイマー病の新薬の実用化が迫り、検査技術の開発も活発になっている。米バイオ企業のC2Nダイアグノスティクスは、微量の血液からアルツハイマー病を診断できる技術を開発し、臨床研究を始める」「アルツハイマー病患者の脳内に蓄積する「アミロイドベータ」と呼ばれるたんぱく質を血液で調べる技術を開発した」「シスメックスや島津製作所も同様の技術を開発している」「現在の主流である脳脊髄液検査や陽電子放射断層撮影(PET)検査は、患者の身体的な負担が重かったり、検査場所が限られたりする課題がある」「患者負担の少ない血液による検査が注目を集めている」とある。頭部用ペットCTには課題があり、競合がいるとわかった。ただ、ペットCT検査は最も信頼性が高く確実な検査法なので、成長シナリオに著しい変化はなさそう。


決算資料からオキサイドは今後3年でライコル社の事業が5倍〜6倍に拡大すると予想している。しかし、ライコル社の強みがいまいち見えないので、そのような成長ストーリーはイメージしにくい。社長はよくライコル社について「交渉がタフ」と言っているが、製品のタフさについては詳しく語っていない。製造業では交渉力はもちろん重要になるが、それ以上に製品力が重要になるので、この点が少し気がかり。現時点では、ライコル社の製品の市場シェアや利益率を見る限り、圧倒的な競争力があるようには見えない。ここが今オキサイドで一番気になる点になる。


SiCウエハ市場はレッドオーシャンなので、オキサイドのSiCウエハ事業は採算が取れるのか疑問だったが、オキサイドしか作れない超高品質SiCウエハは、それに適した用途があるようなので問題なさそうだとわかった。SiCパワー半導体の市場規模は23年の2300億円から35年には約23倍の5兆3300億円に拡大するという予想もあるので(6/20日経)、この事業には期待したい。

ただ5月の株式総会で社長は「名古屋大学の宇治原徹教授が溶液法で作ったところ、格段に結晶の品質が上がりました。ただしそれは大学の研究であり、まだ量産技術になっていません。これからがんばれば、私たちも溶液法で大型結晶を作ることができると思います」と言っている。まだまだ開発に時間がかかりそうな雰囲気がある。


4/13日経産業にGaN半導体に関する記事が載っていた。GaNパワー半導体はスマホの超急速充電器からEVまで幅広く使われる次世代パワー半導体で、通常のシリコンウエハーのパワー半導体よりも小さな面積で同じ性能を保てるという。例えばiPhoneの現在のアダプターの出力は20Wだが、GaN半導体を使えば同じ大きさで出力を120Wまで増やすことができ、10分でフル充電できるようになるという。これは伸びそう。独インフィニオンはGaN半導体の市場が2027年までに年56%成長すると予想している。

オキサイドはGaNウエハの成長基盤である「SAM」をサンプル出荷している。需要は強そうだが、オキサイドからの情報提供はほとんどないので、あまりうまくいっていないのかもしれない。「SAM」はGaN半導体だけでなく、高出力青色LEDやマイクロLED、半導体レーザー用向けの用途でも使えるようなので、今後の展開に少し期待したい。


3月に米大学スタートアップ・HT Crystal Solution社と資本業務提携した。この会社は水熱合成法という単結晶育成技術を有しており、オキサイドと共同で宇宙・防衛や半導体事業で必要な結晶の開発を進めていくという。この提携は米国に開発拠点を置く意図もあるという。米国は市場が大きいので、ここを起点に米国事業を拡大してくれればと思う。


5月の株主総会で社長の人柄がわかるような質疑応答があった。質問は「人材採用の基準について」。社長は経営の勉強をしているときに、ある本で「会社の規模は社長の器で決まる」ということを知り非常にショックを受けたという。理由は自分の小さな器では会社を大きくできないと思ったため。そこで社長は「自分にはない優れた能力を持っている人」を採用し、会社を大きくすることを思いついたという。並の社長ならここで「自分の器を大きくする」と考え、「時価総額200兆円を目指す」などの大言を吐くが、社長は研究者らしくリアリストで独自の打開策を見いだすところがおもしろい。

採用した人たちには、毎月初めの昼礼で「自分自身の価値を上げて他社からスカウトされるような人材になってください」と伝えているという。実際に転職されてしまうと困るようだが、そのような意識が一人ひとりの価値を上げ、ひいては会社の価値を長期的に上げることにつながるという。社長は器が大きそうなので、会社も大きくなるかもしれない。


4/22日経ヴェリタスに「今年最大の地政学リスクは中東?」「イスラエル対イランの戦争リスクが懸念されている」とあった。オキサイドは3月に買収したイスラエルのライコル社が今後の成長ドライバーになると言っているが、戦争が始まるとそれどころではなくなるので、この点は注意しておきたい。

5/6日経に「米情報機関は中国による侵攻で台湾の半導体生産が停止すれば世界経済は最大で年間130兆円規模の打撃を受けるとの試算を示した」とあった。これも起きたらオキサイドに大きな影響がありそうなので注意しておきたい。起きないとは思うけど。


今後数年の利益は買収の影響でしばらく停滞しそう。ライコル社ののれん償却費は償却期間10年で、年額2.75億円を見込んでいるという。ライコル社連結にともなう追加費用はのれん償却費に加え、株式報酬費用、PMI費用、会計基準調整で、今期は4.7億円、来期は6.3億円、再来期は7.9億円を見込んでいるという。


株主総会で中期計画の予想業績を発表した。
2024年2月期 売上87.7億円、営業利益率5.4%
2025年2月期 売上113.1億円、営業利益率8.6%
2026年2月期 売上136.0億円、営業利益率11.6%

オキサイドは業績面での経営目標として、売上高成長率20%、営業利益率10%を掲げている。中期計画の数字はほぼそれに沿った数字になる。ライコル社の強みが見えないだけに、どこか数字ありきの計画に見えてしまう。


今後3年の予想売上高成長率は年率10~25%程度。現在の妥当だと思える時価総額は260~350億円(株価2600~3500円、PSR3~4倍)くらい。2030年の予想売上高・利益は現在の3~4倍くらい。


■ステムリム
基本シナリオ:再生誘導医薬で5バガー達成

急性期脳梗塞治験は、去年の12月ごろにグローバル第3相治験が始まる予定だったが、「容量設定を目的」としたグローバル第2相治験に衣替えし、それが4月に始まった。結果が出るのは1年半後くらいで、その後に第3相をやるので、すべて順調にいった場合でも上市は4年後くらいになりそう。。。

慢性肝疾患の第2相・医師主導治験の結果が出た。主要評価項目の安全性は問題なし。副次評価項目の有効性については、平均 8~12%の肝硬度の数値の改善が認められたとのこと。改善度が浅いので素人的には微妙な結果にみえる。

表皮水疱症の追加治験が3月に始まった。結果は2024年の中頃にわかりそう。

表皮水疱症の薬が厚労省から希少疾病用医薬品の指定を受けた。この指定はこの薬の有効性と開発計画の妥当性について、一定の評価を受けたことを意味するという。またこの指定を受けることによって助成金やPMDAからの助言、独占的な販売の長期化などの恩恵も得られるという。このように認めるなら、どうして前回の治験で条件付きの承認をしなかったのか疑問。切羽詰まった患者のことなど考えないのだろうか。

4/5日経に、「ムーア(Moore)の法則」を逆から読んだ「イールーム(Eroom)の法則」というものが紹介されていた。これは製薬業界で近年言われる現象を指す法則という。「ムーアの法則」は半導体の進化が「2年で2倍」になるのに対し、最先端の新薬開発ではコストが「9年で2倍」に増え、失敗確率も指数関数的に高まるという。

開発が難しくなっている要因は、認知症やガンなど難易度の高い領域が研究対象になっていることと、承認に必要な科学的根拠の水準が上がったこと。もうこのような状態になってしまうと素人が手を出しても徒労に終わりそう。製薬企業に対する投資はこれで最後にしようと改めて思う。


<今後のイベント一覧>
・表皮水疱症の第2相・追加治験の結果が2024年の中頃にわかりそう。
・脳梗塞(急性期)のグローバル後期第2相治験結果が2025年の後半あたりにわかりそう。
・肝疾患と膝関節症の第3相治験と、心筋症の第2相治験が2024年頃に始まりそう。

今後3年の予想売上高成長率は年率-20~20%程度。業績が急拡大するのは早くて3年後。現在の妥当だと思える時価総額は400億円(株価650円)くらい。2030年の予想利益は30~500億円くらい。


■Zホールディングス
基本シナリオ:PayPay経済圏拡大で業績2倍、株価3倍

PayPayの成長については先ほど触れたが、個人的にPayPayはほとんど使わない。スマホ決済で使うのはもっぱらSuica(もしくはiD)になる。PayPayはタッチ決済ができないのが致命的に感じる。PayPayはポイントが少し多めに付くらしいが、そのようなポイントにはあまり興味がないので、PayPayにはほとんど魅力を感じない。

ただヤフーショッピングでは使う。理由はPayPayで支払うと購入金額の10%くらいのポイントがつくから。そのポイント分を考慮するとネット最安で買えることが多い。ただPayPayへのチャージは銀行口座やクレジットカードから即時・無料でできるので(クレジットカードからは2025年1月まで。6/23日経)、これでPayPayは儲かるのかと心配になってしまう。とはいえ、このお得パターンに気づいてからはヤフーショッピングをよく利用するようになったので、トータルでみると多少儲かっているのかもしれない。

PayPayアプリのレビューを見ていると、”ポイントばらまきキャンペーン”が終焉しつつあることがわかった。”ばらまき”が終わったら、PayPay事業の伸びが鈍化する可能性がある。

「PayPay」のグーグルトレンド(期間5年)
わかりやすい上昇トレンドを描いているが、直近では「Wトップ」ができている。これは株式では天井を打った時の強いサインになる。その法則が他のチャートにも当てはまるとは思わないが、PayPayについては気がかりなところもあるので少し気になってしまう。当てはまるとしても、今回のWトップは小さいので特に影響なさそう。


PayPayフリマも今後の伸びが期待できる。PayPayフリマの手数料はメルカリの半分(5%)で、使い勝手はメルカリとほぼ一緒なので、競争力がありそう。リユース市場は巨大で、今後も拡大していくので、ここも成長ドライバーになれるのではないかと思う。

今後3年の予想売上高成長率は年10~15%。現在の妥当だと思う時価総額は3兆8千億円(株価5000円、PSR3倍)。2030年の予想売上高は現在の2.5倍、利益は現在の4倍。


■ハルメクホールディングス
基本シナリオ:シニア女性市場を開拓して業績5倍

今後3年の予想売上高成長率は年0~25%。現在の妥当だと思う時価総額は200億円(株価1850円、PSR0.7倍)。2030年の予想売上高・利益は現在の2~5倍。


■今後の計画
インフレが落ち着くまでは現在の現金ポジションを維持する。インフレが落ち着いて米政策金利が0%近くになったら株式を買っていく。次に構築するポートフォリオは半分ぐらいをドル建てにしたい。

ハルメクホールディングス

■どんな会社か
「シニア女性を幸せにする」を経営理念に、シニア女性向けの情報コンテンツ事業、物販事業、コミュニティ事業を手がける会社。

情報コンテンツ事業では、雑誌「ハルメク」やネット版「ハルメク365」でシニア女性に役立つ情報を提供している。

「ハルメク」の基本コンセプトは「50代からの暮らしを豊かにする生活実用誌」で、シニア女性の生活の中で出てくる様々なテーマをカバーしている。健康、美容、オシャレ、住まい、学び、レジャー、料理、お金、片付け、生き方、終活などの特集を組み、女性の悩みによりそう紙面で支持を広げている。

読者の平均年齢は65歳で、定期購読・直販のみで販売している。2023年4月の月間販売部数は46万部で、現在日本で一番売れている雑誌になる。

物販事業では、シニア女性の声を元に開発した中高価格帯のオリジナル商品などを自社カタログや自社サイト、自社店舗(百貨店のテナント)で販売している。商品は靴、下着類、コスメ、食品など多岐にわたる。販売方針は「ものは少なく、暮らしは豊かに」をモットーに、闇雲に売ろうとはせず、顧客利益を優先して販売している。

コミュニティ事業では、雑誌「ハルメク」と連動させたイベントを企画・開催している。イベントは講座や旅行などで、体験だけでなくシニア女性のつながりの場も提供している。コロナ禍ではイベントをオンラインに切り替えて多数開催し、顧客の満足度を高水準で維持することに成功している。

これらの事業はすべて連動している。例えば高齢女性に多い悩みである「尿漏れ」の場合、まずは雑誌やネットで尿漏れの原因や対策を紹介し、次に尿漏れ対策の正しい体操を覚えてもらうためにイベントを企画し実行する。と同時に尿漏れ対策ショーツを開発・販売する。このように事業が連動することで、顧客と接する機会が増え、「ハルメク」のファンは増えていく。現在「ハルメク」の読者は46万人いるが、3事業合わせた顧客数は約80万人になる。


■強み
すべての事業の基盤となっているのが2014年に設置した「生きかた上手研究所」というマーケティング部署になる。ここでは毎月送られてくる読者はがき約4000枚や、約4000人の読者モニターへの調査、各種アンケートやインタビュー、座談会、カスタマーセンターへの声、顧客宅訪問調査、試作品のモニターなどを調査・分析して、シニア女性がどんな人で、何を求めているかを調べている。「ハルメク」読者の忠誠心は高く、謝礼が出ないような調査でも「率直な意見を言える」「自身や生活を改めて見つめ直せる」「同年代の人と会える」「商品開発に関われる」などの理由で、積極的に調査に協力してくれることが多いという。

各事業はこの研究所でわかったシニア女性のリアルなニーズを満たすことを目的に運営されている。

雑誌はもともと特定の読者の疑問や悩みに先回りするメディアなので、このようなマーケティング部署は必須であるが、他の出版社でここまで専門的な部署を設けているところはない。このマーケティング部署がハルメクの最大の強みになる。

ハルメクが持つシニア女性のデータは膨大なので、他社からシニア女性ビジネスのコンサルを依頼されることも多い。また大手メガネチェーンや人気服飾ブランドと組んでシニア女性向け商品も開発している。

■業績
2021年3月期 売上高151億円 営業利益6億円
2022年3月期 売上高252億円 営業利益13億円
2023年3月期 売上高287億円 営業利益20億円
2024年3月期(予)  売上高320億円 営業利益22億円

2023年3月期の売上構成は、ハルメク事業76%、物販事業が24%、コミュニティ事業が1%以下になる。利益構成は情報コンテンツ事業が99%、物販事業とコミュニティ事業が合わせて1%程度になる。2024年3月期の業績構成も似たような感じ。

*当ブログの2024年3月期の業績予想は、売上高290億円、営業利益10億円になる。(理由は後述)

■成長ストーリー
基本シナリオ:シニア女性市場を開拓して業績5倍

上記の3つの事業を伸ばしていくのが基本戦略になる。総務省の統計では50代以上の女性は22年10月現在、約3300万人おり、今後もしばらくは穏やかに増加する見込み。この年代の女性は金融資産を豊富に持っているので、潜在市場は大きい。現在、シニア市場といえば、比較的年齢が高く健康状態があまりよくない「ケアシニア市場(介護や老人ホーム、葬式など)」になり、そこには数多くの大企業が参入しているが、ハルメクがターゲットとしているのは年齢が比較的若く、女性で、健康状態のよい人たちになる。現在この分野に進出している企業はほとんどおらず、ほぼ未開拓の市場なので、ハルメクの成長余地は非常に大きい。


コンテンツ事業では雑誌「ハルメク」の読者数を伸ばしていく。そしてネット版「ハルメク365」に大きく投資して大きく伸ばしていく。ネット事業は始めたばかりなので伸びしろは大きい。「ハルメク365」では、動画を中心に、ECやイベントなどを連携させ、加えて、外部の美容院やホテルのオンライン予約などのサービスも連携させて、シニア女性向けの一大プラットフォームを作っていく予定。

物販事業でも自社で商品を開発するだけでなく、他社と連携して様々な商品開発をしていく。競争力の高い自社商品(靴や下着類)は単独事業として立ち上げ、それも伸ばしていく。断捨離世代のシニア女性に向けて洋服のシェアなどのシェアリングサービス(リユース事業)も始める予定。

コミュニティ事業では顧客が顧客を呼んできてくれるような自己増殖する仕組みを用意し、サービス利用者を倍増させていく。現在各種イベントを年2万人が利用しているが、それを一桁増やすことを目指す。

4つ目の事業としてサービス事業も始める。自宅検査キットの販売などのヘルスケア分野のサービスや、住宅選びの相談など終活分野のサービスなどを提供していく。これらのサービスも外部の優良企業と連携して行っていく。

これまでの事業で得たノウハウを活用し、アジアなど海外に進出する計画もある。

株価対策としては「シニア女性が喜ぶ特徴ある株主優待」を検討している。「ハルメク」読者にはお金に余裕があり、「ハルメク」へのロイヤリティーが高い人が多いので、ハルメク株をたくさん買って安定株主になってくれる可能性がある。

■問題点
・ターゲットが狭い
ハルメクではシニア女性を7つのタイプに分類しており、そのうち2タイプ「アクティブで社交的な女性」「知的で品格重視な女性」を「ハルメク」のターゲットに設定している(残り5タイプの詳細は不明)。日本の50代以上の女性は約3300万人いるが、この2タイプに限定すると、おそらく全体の2割程度、660万人くらいになる。そのうち「ハルメク」の主要ターゲットとなる55~75歳に絞ると500万人くらいになりそう。

「ハルメク」の主な読者獲得手段は新聞広告になる。この500万人のうち新聞を購読している人はおそらくその5~7割くらいなので、正味のターゲット数は250~350万くらいになりそう。現在の「ハルメク」読者数は約46万なので、伸びしろは最大で7倍くらいになりそう。

・新聞広告だけでは厳しい
「ハルメク」の顧客獲得手段は主に新聞広告になるが、新聞の購読者は減少傾向で、その購読者も電子版に徐々に移行しているので、新聞広告だけで読者を増やしていくのは今後難しくなる。
*電子版をタブレットで読む場合、記事をすぐに拡大表示してしまうので下部の広告を見ることはない。

ただターゲットの属性は明確になっているので、ネット上の広告枠を探せば比較的簡単に最適な枠を見つけられそう。うまいことやれば新聞広告より多くの潜在顧客に接触できるかもしれない。

・現在の40代は将来「ハルメク」を読まない可能性がある
「ハルメク」では主に読者のニーズ(疑問や悩み)にピンポイントで答えるコンテンツを提供している。しかし、今の40代はわからないことがあればまずネットを検索し、そこで一定の答えを得てしまう。グーグルやチャットGPTはかなり優秀なので、「ハルメク」が提供する情報が不要になる可能性がある。

ただネットには情報があふれており、AIには真の共感力はないので、その道のプロがキュレートした情報には一定の需要が残りそう。またシニア世代の生き方や考え方などの「生きるヒント」を知りたいときは、直接取材した生の、今の、声が必要になるので、「ハルメク」のような雑誌の存在価値は残りそう。逆に情報が増えれば増えるほど、「ハルメク」のような質の高い雑誌の価値は高まる可能性がある。

・購読者数がピークアウトした可能性がある
「ハルメク」の購読者数推移は以下のようになる。

2019年1月 27万人
2020年1月 34万人
2021年1月 37万人
2022年1月 40万人
2022年6月 44万人
20229月 47万人
202212月 50万人
20233月 47万人
20234月 46万人

この数字を見ると、購読者数は2022年12月にピークアウトしたように見える。
なぜ減っているのか。思いついた理由は3つ。

1つ目は、2022年に購読を始めた読者の属性が「ハルメク」のターゲットとは合わなかったため。2022年に年間で10万人増えているが、増えた要因はおそらく「ハルメク」編集長が2022年1月にNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出たことと、6月にTBSの「日曜日の初耳学」に出演したことと、8月に「ハルメク365」をローンチしたことになる。これらをきっかけに流入した読者は、「ハルメク」がターゲットとする属性とはズレていた可能性がある。

2つ目は、「ハルメク」の質が落ちたため。「ハルメク」の敏腕編集長は2022年の半ば頃からウェブ版「ハルメク365」に本腰を入れ始めているので(文藝春秋9/11)、「ハルメク」の質が落ちた可能性がある。

3つ目は、「ハルメク」の内容に飽きたため。雑誌はどうしても同じような内容が繰り返されてしまうので、読者が飽きた可能性がある。

おそらく、購読者数が減った主因は1つ目の理由になる。そうだとすると、これは一過性の問題なので、長期ではあまり問題なさそう。ただ2つ目の理由が原因の場合は少し厄介になる。一般に、トップが抜けると2番手の力は急進するが、センス・洞察が問題になる場合は追いつくのが難しい。ただ敏腕編集長はまだ「ハルメク」の編集長なので、現時点ではこれはそれほど問題にはならなさそう。3つ目の理由は特に考える必要もなさそう。高齢者は同じような内容がそれほど嫌いではないから。

以上をまとめると、「ハルメク」の購読者数はピークアウトしたわけではなく、今後も年3~5万人くらいのペースで増えていきそう。2023年12月の購読者数は45~46万人程度になるのではないかと思う。

問題は業績になる。今期の業績予想は購読者の順調な増加を前提に立てているので、購読者が減った場合は大きな影響を受ける。今期は投資額を去年よりも積み増しているので、今の調子でいくと、今期業績は売上290億円、営業利益10億円くらいになるのではないかと思う。

・「ハルメク365」が軌道に乗るのはしばらく先
電子版「ハルメク365」を購読してみようと思い、概要を紹介するページを見ると、「ハルメク」の最新号が読めず、1年単位でしか購入ができないことがわかった。なぜこんなことをするのか。

編集長は「ハルメク365」を紙版と差別化するために動画版「ハルメク」を作ろうとしているという。しかし、この会社のコアコンテンツは間違いなく「ハルメク」になる。それ以外の散発的な動画にそれほど価値があるとは思えない。まずは「ハルメク」の最新刊をアップして、そこを起点に動画なりコンテンツなりを作っていくのが正攻法ではないかと思う。

年間契約については、編集長は「1年を通して関係を築くため」といっているが、月単位では関係を築けないのだろうか。いきなり年間で縛るのはかなり強引な印象を受ける。途中解約はできるが、その場合、なぜかコールセンターを通さないといけない。なぜネットで契約できて、ネットから解約できないのだろうか。これは今問題になっているダークパターンの一種ではないだろうか。ハルメクは顧客本位の運営をしているといっているが、少なくともこの点に関してはそうは見えない。

「ハルメク」では「片付け」や「断捨離」の特集が人気だという。「ハルメク」の読者が電子版の「ハルメク」に移行すれば片付けや断捨離の一助になる。また電子版では拡大表示をできるので視力の衰えたシニアは助かりそう。お金も節約できる。「ハルメク365」はまずは「ハルメク」の最新号をアップするところから始めた方がよさそう。

編集長はセンスのある人なので、いずれは軌道修正するとは思うが、「ハルメク365」を開始して約1年たってこの状態なので、少し先を見通しにくいところがある。

・・紙版「ハルメク」を読んでみたら動画を紹介するページがあった。「ハルメク」と動画は一応リンクしていることがわかった。それとハルメクは「ハルメク」と「ハルメク365」で二重に料金を取ろうとしていることもわかった。この方法では短中期的に利益が増えるかもしれないが、「ハルメク365」単体で新規客の獲得は見込めない。ネット時代に適応するのが目的なら新規客獲得に照準を定めた方がよいのではないだろうか。

・サイトに怪しい広告を載せている
「ハルメク」の電子版を購読してみようと思い、手続きを進めていくと、「実績利回り7.0%の投資」を紹介する広告が出てきた。

日本の長期金利が0%に貼り付いている需要不足のこの時代に、7%の利回りには無理があると感じ、この広告元の会社を調べてみると、危険度MAXの怪しい会社であることがわかった。「ハルメク」のようなキュレーションメディアは信頼性が肝になるが、このような広告を載せると信頼がなくなってしまうのではないだろうか。

「ハルメク365」の人気記事ランキングでは投資に関する記事がトップになっており、シニア女性が投資に高い関心を寄せていることがわかる。また記事のタイトルからは投資の素人であることもわかる。
これが普通のメディアに掲載されている場合はそれほど問題にはならないと思うが、「ハルメク365」の場合は事情が少し異なる。ハルメクではファンを増やすことに注力しており、「ハルメク365」にアクセスする人は「ハルメク」のファンである可能性が高い。「ハルメク」編集長はファンの定義について、「ハルメクをとても信頼してくださって、ハルメクで紹介されているものだから大丈夫と思ってくださるとか・・」(GLOBIS知見録)などと語っている。一部のファンは「ハルメク365」で広告している投資商品も大丈夫と思ってしまうのではないだろうか。

金融機関側からすると、お金を持っていて、金融リテラシーがなく、お金を増やしたいという欲のある、元気なシニアは最高のカモになるという。「ハルメク365」が怪しい投資会社の格好の猟場にならないことを祈る。

一応、この広告と「ハルメク365」の問題点はIRに指摘しておいた。

・・ハルメクを調べ始めた時は気持ちが高揚していたが、この広告元を調べているうちに熱が冷めてしまった。

・株式需給が悪い
上場間もない会社なので上場時の信用買いがまだたくさん残っている。日々の出来高は5万株程度なのに対し、信用買い残は55万株もある。3月の終わり頃に上場したので、これらが整理されるのは9月の終わり頃になる。そのころには大株主のロックアップも外れるので、買うのはその後にしたほうが無難そう。

・競合の存在
現在の競合誌は「クロワッサン」「暮らしの手帖」「婦人公論」「素敵なあの人」あたりになる。発行部数はそれぞれ5~8万部。シニア女性市場が有望とわかれば、他社はもっと力を入れてきそうだが、ハルメクが設置しているようなシンクタンクを設けない限りは、あまり脅威にはならなさそう。

・債務が多い
流動比率が100%をわずかに下回っている。ハルメクは前身の会社が経営危機の時にLBO(借り入れで資金を増やした買収)を繰り返したため、債務が多い。上場で得た資金の半分を債務返済に充てているが、それでもまだ債務はたくさん残っている。現在は財務体質の改善中で、余裕のある財務状態になるまではもう少しかかる。

・社長が高齢
社長が67歳とやや高齢。シニア向けビジネスでは当事者世代なので事業構想は描きやすそうだが、年齢的な不安がある。ただ社長は社内の仕組み作りに力を入れており、足元ではボトムアップ型の仕組みがうまく機能し始めているようなので、社長が抜けてもしばらくはなんとかなりそう。ただ長期の成長力が落ちるのは避けられなさそう。

■チャート
<半年チャート>
下げ止まって反発が始まった感じ。ただ出来高が少ないので勢いは弱そう。
一目均衡表では「ゴールデンクロス」を形成している。ただ先には厚い雲がある。



■成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★☆
参入障壁は高いか:★★★☆。情報コンテンツ事業はそこそこ高い。物販事業は低い。
ストック型収益か:★★★。情報コンテンツ事業はまあまあストック型。
潜在市場は大きいか:★★★★☆。アクティブシニア女性市場はほぼ未開拓で巨大。


■まとめ
ビジネスモデルやスタッフはおもしろそうで、「ハルメク365」が軌道に乗ったら株価は大爆発しそう。ただそれにはもう少し時間がかかりそうで、今期に関しては業績が下振れそうなので、株式を買うのは少し早そう。しばらく様子を見たい。

今後3年の予想売上高成長率は年0~25%、営業利益率は3~15%。10年後の予想売上高・利益は現在の2~5倍。現在の妥当だと思う時価総額は200億円(株価1850円、PSR0.7倍)。

有望株

よく調べないで買った株は失敗することが多いので、これからはネチネチと調べてから買うことにする。

<10倍株候補の条件>
 ・上場5年以内の会社
 ・社長が若い
 ・オーナー企業
 ・時価総額が300億円以下
 ・長期的なテーマに合っている
 ・急成長している
 ・(IPOから時間が経過し、株価が右肩下がりになっているチャートが狙い目)

<優良企業の条件>
 ・参入障壁が高い
 ・ストック型ビジネスを手がける
 ・時流に乗っている(潜在市場が大きい)
 →業績が落ちにくく、利益成長を続けやすいビジネスモデル
(例)エムスリーやリクルートなど

■よさそうな会社
・エムスリー、サイバーエージェント、リクルート
時価総額は大きいが長期で成長できそうな優良テック企業。仕込むタイミングさえ間違わなければ株価3倍は目指せそう。

・メック
電子基板の表面処理剤を製造する会社。CPUに使う半導体パッケージ基板用の高機能品は世界シェアほぼ100%。研究開発投資に積極的で価格競争力は強く、営業利益率は20%を超える。近年注力しているのが高周波の電気信号のロスを抑える技術。5Gや次世代自動車向けの需要拡大が期待できる。ヴェリタス

・ミライアル 
半導体のシリコンウエハーを輸送する際に使う特殊容器のニッチトップ企業。世界シェアは高い。2023年1月期の売上高は前期比22%増。売上のうち半導体向けが9割を占めるが、プラスチック形成技術を生かし、自動車や機械部品、医療などの領域にも進出する予定。ヴェリタス

・湖北工業
日経に「湖北工業は特殊な光ファイバーを使ったレーザー装置の開発で、イスラエルの企業、アリエル・フォトニクスとの業務提携契約を結んだ。湖北工業の光ファイバー製造技術とアリエル社の開発力を組み合わせ、医療用や産業用のレーザー装置を開発する。3年後に製品化し、5年後に100億円の売上をめざす」「湖北工業は光海底ケーブルに欠かせない「光アイソレータ」という部品で世界シェア50%以上を持つニッチトップ企業」とあった。オキサイドと似た雰囲気がある。2021年にスタンダード市場に上場したの会社なので勢いがありそう。

・パラマウントベッド
日本は2025年以降、団塊の世代が後期高齢者入りし始め、介護の需要爆発が起きるとされる。一方、少子化や共働き世帯の増加、厳しい労働条件、外国人労働者の減少などで介護人材の供給が追いつきそうにない。厚労省は2040年に医療や介護など福祉関連の人材が96万人不足すると推計している(日経)。人手不足の問題をやわらげる一つの策は介護のデータ化・デジタル化になる。例えば要介護者のベッドに睡眠・心拍・呼吸センサーを付けると、遠隔で患者の状態を確認できるようになり、夜会巡回が不要になる(日経)。またセンサーで呼吸数などを継続的に計測することにより発熱などを予測できるようになる。パラマウントベッドは数年前から介護施設に睡眠・心拍センサーを提供している。パラマウントベッドの医療・介護用ベッドの国内シェアは7割に達しており、センサーの普及は始まったばかりなので今後の需要拡大が期待できる。

・エス・エム・エス
介護・医療業界向けの人材紹介サービス最大手。介護事業者の経営支援も行っている。業績の柱である人材紹介サービスの成長は今後も期待できるが、それ以上におもしろそうなのが介護システム(SaaS)事業になる。このシステムは介護記録はもちろん、勤怠管理、従業員・利用者の健康管理、オンライン面会などができる。介護分野のDXはまだ始まったばかりなので、需要拡大が期待できる。

・SREホールディングス
「SREホールディングスは適正な不動産の売買価格をAIで素早く査定するシステムを手がける。不動産業界では正確な売却価格を査定するために現地に訪問して物件状況や周囲の生活環境を調査する。相場価格のほか、過去の類似物件の取引価格を手作業で調べて算出するため手間と時間がかかる。SREホールディングスは周辺の相場のほか、協力してくれる顧客企業から成約価格のデータをもらい、AIを使って10分程度で査定書を作成できる。AIによる査定価格と実際の成約価格を比べた誤差率は4%程度で、人が判断したときの誤差率は7~8%なので、AIの方が適正な価格を算出できることがわかる。契約社数は2500社と1年前から7割増。解約率は0.6%程度。このシステムは消費者側にも利点がある。不動産を売りたいときは情報が不足し、適正な価格の判断ができず、買い手側が優位な状況が多い。AI査定で作成した査定書には解析データが記載されているので消費者も客観的に適正価格を知ることができる。矢野経済研究所は不動産テック市場は25年度に20年の2倍に膨らむと予想している。SREホールディングスは培った技術を応用し、証券会社向けのAIシステムも開発。証券会社の顧客の住所から不動産価格を推定し、過去の証券取引データと組み合わせて潜在的な富裕層を見つけ、金融商品の提案につなげている。社長は「業界を超えて需要は高い」と語る」日経

・アサヒホールディングス
貴金属リサイクルの大手。貴金属の価格は高騰しており、貴金属のリサイクルはメガトレンドになっている。アサヒは全国に回収ルートを持つのが強みで、新工場稼働により業績の拡大が期待できる。ヴェリタス

・プラスアルファ・コンサルティング
タレント・マネジメント・システム「タレント・パレット」(SaaS)を開発・提供する。タレント・マネジメント・システム(人事管理システム)とは、従業員が持つ能力やスキル、他システムにある人材情報などを一元化し、人事問題を解消するシステム。これを使うと人材配置シミュレーションや人材評価の効率化、ハイパフォーマー分析、モチベーション分析、離職分析などができる。日本企業は人手不足感が強く、人材のミスマッチなどの課題も抱えているため、このようなシステムへの需要は強い。にもかかわらず2021年の導入済み企業はまだ約13%にすぎない。調査会社のITRは今後3~5年は年20~30%の市場拡大が続くと予想している。この分野の筆頭格がこの会社。人的資本の開示が23年3月期の有価証券報告書から義務づけられる。これもシステム導入の追い風になる。日経

マクロ系金融指標

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米10年金利
今後1年の予想レンジ:2.0%~3.8%の間で推移

米長期金利に与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・経済成長率+インフレ率↑
長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になる。2023年の米GDP成長率は+1.4%程度、米インフレ率は+4%程度になる。

・金融政策↓
FRBはインフレ対策として2022年3月から金融引き締めを始めており、2023年10月頃まで続ける予定。2023年末の政策金利は5.25~5.75%になる予定。
*政策金利が中立金利(2.4%)を超えると、景気(長期金利)には下押し圧力がかかる。

FRBは国債などの保有資産を年1.1兆ドル(約150兆円)のペースで売却している。今後2年間そのペースで資産を売却していくと、長期金利には1%程度の上昇圧力がかかる。日経日経

・リスクオン・リスクオフ↑
インフレ高止まりや金融引き締め、金融機関破綻などのリスクオフ要因もあるが、足元では利上げ停止期待や米経済のソフトランディング期待などによりリスクオン気味。

・米国債の人気上昇→
米長期金利は海外の主要先進国の長期金利よりも相対的に高いので、海外勢から買われやすい。2022年の買越額は約100兆円と過去最大になっている。日経

ただ、米金利上昇により為替ヘッジコストは上昇しており、日本では米国債利回りから為替ヘッジコストを差し引くと利回りがなくなってしまう。そのため日本の一部の金融機関は米国債から日本国債に資金をシフトしている。日経

海外勢の中で最も米国債を保有する中国は米中対立により米国債の保有を減らしている。日経

そもそも論になるが、海外の高利回り国債は購入しても最終的には為替で価値が調整されてしまうので、買ってもそれほど利益は出ない。ヴェリタス

・資金需要の低下、金余り↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要が少ない。少子高齢化の影響で借り入れ需要も減っている。

金余りで運用難に陥っている米金融機関や米企業は多く、そういうところがこぞって米国債を買っている。日経日経

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みなどで潜在成長率は低下傾向にある。

・財政赤字の拡大↑
米国の財政赤字は毎年100兆円を超えているので、米国債の供給増や通貨の信認低下により、長期金利には上昇圧力がかかっている。

・チャート↓
<10年チャート> 高値圏で変動が激しくなっているので(振れ幅が大きくなっているので)、いつ下落してもおかしくない。



■WTI原油
今後1年の予想レンジ:60ドル~100ドルの間で推移

原油価格に与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・需要→
原油の需要は世界経済成長率にほぼ連動する。2023年の予想世界GDP成長率は2.9%になる。ただ世界的な金利引き上げにより(6/30日経)、成長率が下振れする確率が高まっている。

長期では、再生可能エネルギーの増加や学校・職場のリモート化などにより石油需要が減少する可能性が高い。仏トタルや英BPは2030年頃に石油需要がピークアウトすると予想している(ヴェリタス日経)。

一方で、世界人口増や再生エネルギー開発の滞りなどが原因で石油需要が増えるという見方もある。米エネルギー情報局(EIA)は2050年の石油需要が2020年比で4割増になると予想している(日経)。

・供給→
OPECは1バレル90ドル前後の水準を維持することを目的に減産に動いている(日経日経6/6日経)。米国のシェールオイルは増産ペースが鈍い(日経)。

ロシアやイラン、ベネズエラは生産を増やしている。6/15日経

長期では、脱炭素の潮流を受けて油田開発投資が大きく減少しており(日経)、再生可能エネルギーの普及には時間がかかるので、供給不足に陥る可能性がある。

・産油国で不測の事態が起こる↑
中東では石油施設へのテロ攻撃が度々起きている。日経

*石油(エネルギー)は人間にとって食料と同じ生活必需品のため、わずかでも不足が生じると価格が跳ね上がりやすい。

・産油国、産油企業、再生可能エネルギーの採算ライン→
サウジアラビアとロシアで財政均衡に必要な原油価格の水準は1バレル80ドル、アラブ首長国連邦(UAE)とイラクは75ドル(日経)、米産油企業の採算ラインは45~70ドル、再生可能エネルギーは30~80ドルになる。原油価格はこの範囲内に収まりやすい。

・リスクオン、オフ↑
ややリスクオン気味。
*原油は株式と同じリスク資産なので、リスクオフ時には売られやすい。

・インフレ対策↑
原油などの商品はインフレヘッジ手段になる。足元ではインフレ対策としても買われている。

・為替↓
原油はドル建てのためドル高になると原油価格に下押し圧力がかかる。足元ではややドル高基調。

・チャート→
<10年チャート> 下げ止まりつつある。60ドルくらいが底になりそう。



■ドル円
今後1年の予想レンジ:115円~150円の間で推移

為替に与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・日米金利差↑ (↑は円安方向、↓は円高方向)
<短期金利>
日米の金融政策の違いから、日米の短期金利差(政策金利差)は5%くらい開いている。金利差の拡大は10月頃まで続く可能性がある。ただ日銀は円安の流れを止めるため、政策金利を引き上げる可能性もある。

金利差拡大によりキャリー取引が増えている。
*キャリー取引とは金利差を狙った取引。短期金利差が大きくなると低利通貨を売り、高利通貨を買って、金利差で収益を得る取引が盛んになる。市場が荒れ始めると金利収入以上の為替差損を抱えるリスクが増すので、手仕舞われやすくなる。

<長期金利>
米10年金利は高インフレと政策金利の引き上げにより3.8%まで上昇している。一方、日本の長期金利は金融緩和などの影響で0.4%程度で停滞している。ただ足元では日米のインフレ率が逆転しそうなので、長期金利差は徐々に縮まっていくかもしれない。6/17日経6/23日経

・日本の経常収支↓
円安や資源高、産業競争力の低下(5/12日経)などにより、22年度の貿易赤字は過去最大の約19兆円になった(経常収支は9兆円の黒字)。2023年は所得収支の黒字が増えて貿易赤字が減りそうなので、経常黒字は拡大しそう。5/31日経

・米国の経常収支↑
米国は経済が強いので経常収支は改善傾向にある。

・リスクオン、オフ↑
リスクオン気味。

・日米の経済の強さの違い↑
資金は経済の強い国へ流れ、その国の株式や債権、不動産などが買われる。デジタル革命を主導する米経済は相対的に強いのでドル資産が買われやすい。
*日本の個人投資家は2021年に海外株を8兆3千億円買い越しており、その9割程度は米国株になる。同年の日本株の買越額は280億円になる。日経日経

・日本企業の対外直接投資↑
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業は海外での直接投資を増やしている。ここ数年は年12~22兆円の買い越しが続いている。

・国内投資家の対外証券投資→
日本の機関投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、高い運用利回りが見込める海外債権や株式などを買っている。個人投資家は成長力の高い海外株を積極的に買っている。ここ数年は両者合わせて年10兆円超の買い越しが続いていた。ただ最近ではドル調達コストの上昇などにより機関投資家の海外証券投資は大幅に減っている。生保に限っては2022年に11兆円売り越している。日経日経

・海外投資家の国内証券投資↓
円調達時の上乗せ金利(ベーシススワップ)が低く、日本国債の金利は安定しているため、ここ数年、海外投資家は日本国債を年10兆円程度のペースで買い越している。日経日経

・FX投資家の持ち高 ー
FX投資家(個人投資家)の月あたりの取引規模は約1000兆円(うちドル円取引は約800兆円)に拡大しており、東京市場での取引の約半分を占めている(ヴェリタス日経)。2022年10月頃までは個人が大きく買い越しており、円安が進むとみていた。現在は不明。

・投機筋の持ち高↑(「円 投機的ネットポジション」で検索)
投機筋は円を大きく売り越している。円が下落するとみている。
*ドルを売り持ちした場合はスワップポイント(金利差分)を支払わなければならないので、ドル売りが長く続くことは少ない。
*スワップポイントはドル買い時よりもドル売り時の方が高く設定される傾向がある。例えば、日米短期金利差が約3%あった2022年9月にドルを1万ドル買った場合、1日の金利差収入は92円くらいになるが、ドル売った場合は金利差損失が1日159円くらいになる。日経

・ドル需給↑
FRBがドルを大量供給しているのでドルはだぶつき気味だったが、量的引き締めやウクライナ紛争などによりドルの需要が高まっている。

購買力平価
物価が上がると(インフレが進むと)、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると(デフレが進むと)、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必用なくなる(購買力は上がる)。この物価変動に着目して二国間の通貨価値をならしたものが購買力平価になる。

インフレ率は日本より米国の方が慢性的に高いので円の購買力平価は長期的な円高傾向にある。ただ米国のインフレ率は年々低下しており日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。

現在の購買力平価(企業物価)は90円になる。為替相場は長期的にはこの値に収斂していくので、円の下限は70円、上限は110円くらいになる。

・日銀が保有する日本国債の値下がり↑
日銀が1%程度の金利上昇を許容するような金融政策を行った場合、日銀は債務超過に陥る可能性が高い。日銀は国債について満期保有を前提とした会計処理を採用しており、債務超過になっても日銀は自ら通貨を発行できるので資金繰りに行き詰まることはないが、円に対する信用は落ちる。
*日本経済研究センターは日銀が長短金利操作を撤廃した場合、長期金利が1.0%程度まで上昇すると予想している。日経
*日銀は長期金利が1%に上昇した場合は日銀が保有する国債に28兆円、5%に上昇した場合は108兆円の含み損が生じると試算している。日経

・日銀が保有するETFの簿価割れ→
日銀の自己資本は約10兆円なのに対し、保有する日本株ETFは簿価で約35兆円ある。日銀の保有するETFの損益分岐点は日経平均株価21000円くらいであり、日経平均株価が15000円台まで下がると日銀は債務超過に転落する(日経)。ただ現時点でそこまで下がる可能性は低い。

・米制裁によるドル離れ↓
米国は対立する国に「ドル取引の制限や禁止」といった金融制裁を課すことがある。現時点で米国はロシアやイラン、トルコ、中国などに金融制裁を課しており、これらの国は米国債の保有を大きく減らしている。今のところドル離れは一部に留まっているが、今回のロシアへの制裁(ロシア中銀が保有するドル資産凍結)をきっかけに、ドル離れが加速する可能性がある。日経日経

・日本政府の過剰債務↑
日本政府の債務は返済不可能な水準まで膨れ上がっており、2030年頃には臨界点に達し円の暴落が起きる可能性がある。米国も返済不可能な水準まで債務は積み上がっているが経済が強く、ドルは基軸通貨なのでドルの暴落は起きにくい。

・キャピタルフライト↑
日本は財政問題や経済低迷などの問題を抱えているため、日本人は円資産を海外資産にシフトし始めている。国内の家計の預貯金は約1100兆円あり、その1%(11兆円)でも海外に向かえば円相場へのインパクトは大きくなる。

・為替介入→
2022年9月に政府・日銀が円安を食い止めるために為替介入を始めた。ただ規模が小さく、海外と連携した協調介入を行っているわけでもないので(日経)、影響はほとんどない。

・チャート
<10年チャート> 再び上昇基調に。Wトップになりそうな雰囲気。


<前回の予想が外れた原因>
前回の予想は「110円~135円の間で推移」だったが、現在1ドル144円と予想より大幅に円安に振れている。

外れた要因は、短期金利の影響を見落としていたことになりそう。これまで為替には長期金利のみが影響すると考えていたが、短期金利の影響も大きいとわかった。日本と海外の短期金利差はまだ広がりそうなので、円は150円くらいまで下落するかもしれない。



■日経平均
今後1年の予想レンジ:27000~36000円で推移

日経平均に与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・金融政策→
世界の中銀の総資産と世界の株価指数はほぼ連動している(日経)。現在中銀は資産を売却し始めているが、2022年の10月ごろからは日本、欧州、中国の中銀が資産を増やしている。日経

・金利↓
金利が上がると、株式から債権へ資金が流れやすくなる。現在、金利は高水準にある。

金利上昇により金融機関が保有する債券の含み損が膨らんでいる。一般に、金融機関の含み損率が高まると株式などのリスク資産投資が減少するとされる。日経日経日経

・為替↑
円安が進むと海外勢は日本株を買いやすくなる。現在、円の価値は過去最低水準にある。6/25日経6/17日経

・需給↑
海外勢の売り玉はなくなりつつあり(6/9トウシル)、日本企業の自社株買いは活発なので、日本株は下がりにくい。大きく下げたときは日銀が買い支えてくれる。

主な投資主体の売買動向
<2023年の予想と現状>
日本銀行:買い支えで1兆円の買い越し。現状は1400億円の買い越し。
事業法人:自社株買いで5兆円の買い越し。現状は1.6兆円の買い越し。

*東京証券取引所は日本株の魅力を高めようと、上場企業に資本効率を改善するように働きかけている。特にPBR1倍割れの企業には圧力をかけており、その状態が続くなら上場廃止もいとわないという姿勢を見せている。その甲斐あって、1倍割れの企業は自社株買いなどを実施し、資本効率を高めている(5/17日経)。今年の日本企業の自社株買い取得枠設定は過去最速ペースになる。6/9日経

海外投資家:日本企業の資本効率改善期待や中国株からのシフトなどにより4兆円の買い越し。現状は4.6兆円の買い越し。
個人投資家:逆張り投資で1兆円の売り越し。現状は3兆円の売り越し。

・EPS(1株利益)↑
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益)× PER(期待度・人気度)で決まる。2023年の予想EPSは0~10%になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因をみていく。
・為替→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので為替相場の影響が大きい。今は円安気味なので利益は増えやすそうではあるが、輸入価格が高騰しており、この分を価格転嫁できなければ利益はそれほど増えない。現在は物価上昇分を価格に転嫁しきれていないので、円安の恩恵をあまり受けられていない。

・海外景気→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので海外景気の影響を大きく受ける。足元の世界景気は比較的堅調だが、今後は徐々に停滞していきそう。

・失業率↓
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益を圧迫する。労働量力不足で成長が頭打ちになりやすい。現在の失業率は最低水準にある。

・減価償却費や資源価格↑
減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇すると利益が圧迫される。足元では減価償却費は横ばいで、資源価格は下落している。

・金融政策→
金融引き締めで金利が上昇すると企業の利益や資金調達環境は悪化する。今は世界中で金融引き締めをしているが、日本では緩和を続けている。
ーーーーー

・PER(期待度、リスク選好度)→
日経平均の過去のPERは11~17倍くらいだが、現在のPERは15.倍29と比較的高い水準にある。これは日本企業の上方修正を織り込んでいるため。

・リスクオン、リスクオフ ↑
リスクオン気味。

・株式利回り↑
東証プライムの益回りは約6.39%、配当利回りは約2.22%と、日本の10年国債の利回り0.39%より高いので、株式に資金が流れやすい。

投機筋の持ち高
買い残は1兆5100億円で、裁定売り残高は732億となっている。投機筋は日本株が上がるとみている。

・個人投資家の流入↑
日本の家計が抱える預金・現金は約1100兆円あり(日経)、コロナ禍の「巣ごもり」や「老後2000万円問題」などの影響で株式市場に個人投資家が流入している。

・パッシブ運用の膨張↑
パッシブ運用にはストック効果(積み上げ効果)があるので、この運用が増えると株価は下がりにくくなる。現在、投信やETFでパッシブ運用の比率が高まっており、世界では44%、日本では73%まで高まっている。日経日経

・チャート↑
<10年チャート> 出来高をつけて新高値を更新。力強い上昇トレンドにみえる。


<前回の予想が外れた原因>
前回の予想は「今後1年の予想レンジ:22000~28000円で推移」だったが、現在の株価は33200円。大きく外れた。外れた要因を考えていく。

1つ目は、もともとこの数値にはあまり興味がなかったため。数字をただコピペしていただけだった。上記のファンダメンタルズを考慮すれば、需給的に株価が下がりにくいことはわかった。ただそれを踏まえても、予想は25000~29000円くらいで、29000円を超えて大きく上昇するとは思わなかった。

2つ目は、東証の資本効率改善要求のインパクトの大きさに気づかなかったため。企業は資本効率を改善するために大規模な自社株買いや還元策を実施しており、それで株価が大きく上昇した。この資本効率改機運は今後もしばらく続く見込みで、もしもPBRが欧米並みの2倍近くまで高まれば日経平均は4万2000~4万8000円になるとも言われている。6/24ヴェリタス6/15日経

3つ目は、企業業績がこれほど改善するとは思わなかったため。しかし実際はコロナが収束して、インバウンドが復活し、個人消費や設備投資も大幅に回復した(6/23日経)。企業の値上げの成功や資源価格の下落なども企業の利益を押し上げた。5/17日経6/15日経6/24ヴェリタス

4つ目は、海外勢の爆買いを予想できなかったため。日本経済は海外経済と比べると比較的堅調で買いやすかったもよう。円の価値が過去最低水準まで落ちていたのも日本株の魅力を高めた。実質金利の低下についてもしかり(5/19日経)。企業の資本効率改善や経営改革への期待など、日本独自の材料もあった。6/9日経5/17日経6/17日経6/5日経

中国株の代わりとしても買われていた。中国では景気停滞リスクや地政学リスクなどがあり、日本株は比較的安全な代替投資先として選ばれていた。5/22日経6/21日経6/14日経6/18日経

5つ目は、リスクオンになったため。過剰流動性が維持されている状態で、米経済のソフトランディング期待が高まり、一気にリスクオンに傾いた。6/17日経6/17日経

今後はどうなるか。世界景気の鈍化により企業業績は伸び悩みそうだが、企業の資本効率改善や中国株の代替投資という構造要因は残るので、日経平均株価は比較的堅調に推移しそう。


■東証グロース指数(旧マザーズ指数)
今後1年の予想レンジ:900~1350の間で推移

東証グロース指数に与える要因を、影響の大きい順にみていく。
・金融政策→
東証グロース指数は中銀の総資産との相関が全市場の中で最も高いので、中銀の資産縮小時には真っ先に売られやすい。
グロース指数はすでに緩和前の水準まで売られているので底を打ったように見える。

金利の上昇も小型グロース株には逆風になる。金利が上昇すると将来の成長期待を買われている小型グロース株はバリュエーションが低下しやすくなる(詳細は後述)。また小型グロース企業には赤字企業が多く、金利上昇時には成長資金を調達しにくくなる。
日本では金利がほとんど上がっていないので、この影響はほとんどなさそう。

・需給↑
グロース市場は日銀の買い支えがなく、自社株買いもあまり期待できないので、相場下落時は下げ止まりにくい。ただ海外投資家は売り尽くした感があるので(ヴェリタス日経)、売り圧力はそれほどなさそう。足元では買いに回り始めたような雰囲気もある。個人投資家の含み損は解消されつつあるので(松井証券)、個人の買いも少し期待できる。

・EPS(1株利益)成長率 ー
不明。

<グロース市場の反転シグナル>
信用評価損益率の急激な悪化は一つの反転シグナルになる。信用評価損益率が急激に悪化して、追い証回避の投げ売りが殺到すると、信用取引での買い持ちが急減して需給が軽くなる。過去の例では、そのタイミングで海外投資家が買いに転じるパターンが多い。

2007~2009年の金融危機では、2007年12月に信用評価損益率が-30%を超え、そこから約1年5ヶ月にわたってマイナス幅が30を超えていた。この間にマザーズ指数は900台から300近くまで落ちている。当時も今も金融引き締めなど、似たような状況であり、このような前例を踏まえると、東証グロース指数の停滞はもうしばらく続くのかもしれない。ヴェリタス

<マザーズ指数の10年チャート> 上昇トレンドに転換したように見える。1000円くらいが天井になりそう。

市場環境

株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などを見ていく。

■EPS成長率
・世界株式の2023年の予想EPS成長率は-10~5%。
・米国株式の2023年の予想EPS成長率は-10~5%。
・欧州株式の2023年の予想EPS成長率は-10%~5%。
・日本株式の2023年の予想EPS成長率は0%~10%。


■経済成長率
・世界の2023年の予想GDP成長率は2.8%、2024年は3.0%。
・米国の2023年の予想GDP成長率は1.6%、2024年は1.1%。
・中国の2023年の予想GDP成長率は5.2%、2024年は4.5%。
・ユーロ圏の2023年の予想GDP成長率は0.8%、2024年は1.4%。
・日本の2023年の予想GDP成長率は1.3%、2024年は1.0%。
*数値はIMF予想。4/11日経

世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほど不況感は強まらない可能性もある。
*経済規模を示すGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。

*コロナの影響で2020年の日本のGDPは落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が向上していれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。日経


■インフレ
・米国の2023年の予想インフレ率は3.5~4.5%、2024年は2.0~3.0%。
・欧州の2023年の予想インフレ率は4.5~6.0%、2024年は2.0~4.0%。
・日本の2023年の予想インフレ率は2.0~3.0%、2024年は1.2~2.0%。
*米国のブレーク・イーブン・インフレ率(10年)は2.2%。ブレーク・イーブン・インフレ率とは債券市場の予想物価上昇率で、実質金利を算出するときなどに用いる。


世界中でインフレが高進している。インフレ要因とデフレ要因を一通りあげて、今後のインフレ動向を予想していく。

<インフレ要因>
★コロナ特有のもの
・供給基盤が破壊され供給不足が生じている。
・コロナで対面型サービスの人気が落ち、賃金が上昇している。
・コロナが落ち着いてきて需要が増している。
・政府から給付金が支給され需要が増している。
・金融緩和の影響で資産価格や商品価格が上昇している。
・量的緩和の影響で通貨価値が下落している。
→現在、これらの要因はほぼ解消されている。

★コロナ後も続くもの
・人手不足で賃金が上昇している。米国の4月の求人件数は1010万件で、失業者数は565万人になる。失業者1人に対して求人が約1.79件ある計算になる。6/1日経

米労働市場は逼迫しているが、金融引き締めなどの影響で求人件数がピークアウトしつつある。米国で求職サイト「Indeed」を運営するリクルートの社長は2月の決算説明で「(米国では)予算をかけてまで採用しようという意欲が、多くの業界で大幅に減退している」と語っており(日経)、Indeed社長は3月に「米国では今後2~3年で求人数がパンデミック(新型コロナウイルスの世界的な大流行)以前の水準である約750万人か、これを下回る可能性が高い」と言っている。日経

求人件数が700万件程度まで減ると賃金上昇率が3%程度まで落ち、FRBの2%物価目標と整合するとされる(日経)。今の調子でいくと労働市場のインフレ問題は徐々に解消されていきそう。

・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。脱炭素シフトにより2030年まで年0.7~1.0%程度の物価押し上げ効果が見込まれている。ヴェリタス日経
*脱炭素シフトが完了すれば再生可能エネルギーは強力なデフレ要因になる。

・異常気象や世界人口増、新興国の経済成長、バイオ燃料需要、肥料価格上昇などにより、食料価格が上昇傾向にある(日経ヴェリタス)。農作物・肥料価格の先行指標である農業ETFは高値圏で推移している。

・ロシアのウクライナ侵攻により食料・資源・エネルギー価格が上昇している。西側の制裁は今後も続く予定で、これらの価格にはしばらく上昇圧力がかかる。

・米住居費が上昇している。家賃上昇が2023年の米CPIを1.1ポイント押し上げると見込まれている。日経

・経済の脱グローバル化(グローバル化の再構築)で製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇している。日経

・世界の生産年齢人口が2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなくなる可能性がある。日経日経


<デフレ要因>
・世界中の中央銀行が強力な金融引き締めをしている。金融引き締めには需要を減らす効果がある。

・経済や社会のデジタルシフトが加速している。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。検索やSNSは無料で、ネット上では価格比較を簡単にできるため売り手は超過収益を得にくくなっている。スマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。複製コストゼロのデジタルソフトやシェアリングサービスの普及などもあり、価格は下がりやすくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争が起きると価格がゼロに近づく。

・イノベーション(新結合・技術革新)が加速している。今はインターネットやAIにより、情報・人・モノの「新結合」が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。

・産業の「自動化」により、生産コストが低下している。
・世界的に経済成長率が鈍化傾向にある。過去40年で米国の潜在成長率は3%前後から2%前後に低下している。日経
・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向(収入に占める支出の割合)は低い。
・世界的に少子高齢化が進んでいる。子どもが減って高齢者が増えると総需要が減る。
・人手不足で成長力が低下している。
・金融引き締めなどの影響で資産価格が下落している。

以上をまとめると、賃金(サービス)以外のインフレは落ち着きつつあるので、インフレは徐々に落ち着いていきそう。ただ過去の例では賃金インフレはしぶとく続くので、米国でインフレ率が2%になるのは2024年頃になりそう。日経ヴェリタス

インフレが落ち着いた後も、脱炭素シフトや人手不足、非グローバル化などの構造要因は残るので、しばらくは以前のような超低インフレには戻らない可能性が高い。

日本においては、今後人手不足がより悪化していきそうなので(5/16日経)、インフレ基調に転換する可能性が高い。

超長期では、エネルギー革命や材料革命、AI・ロボット革命により超デフレ(無料社会)になる可能性が高い。


■金利
・米国の政策金利は5.25%で、3ヶ月金利は5.37%、2年金利は4.89%、10年金利は3.84%、30年金利は3.89%になる。
・日本の2年金利は-0.07%、10年金利は0.39%、30年金利は1.25%になる。

*名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態では、国債を買ったり銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。逆に実質金利がプラスの状態では国債などの「無リスク資産」に資金が集まりやすくなる。現在、米国の実質金利はプラス圏に浮上しており、「無リスク資産」に資金が流れやすくなっている。日本の実質金利はいまだマイナス圏にある。

*現在の債券は魅力的な水準まで高まっている。たとえばリスクのほとんどない米2年債は利回りが4.8%もある。その他の質の高い債権にも魅力的な利回りのものが多くなっている。今後利回りがさらに上がる可能性もあるが、急上昇期はすでに終わった可能性が高いので、株式などのリスク資産より、債券に資金が流れやすくなっている。日経日経

*投資家は企業が将来生み出すであろう利益から金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益は減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分は多くなり、理論価値が下がりやすくなる。

*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.4%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。

*米10年金利が米2年金利を下回ると、その1年~1年半後に景気後退に陥ることが多い。米国では2022年7月から10年金利が2年金利を下回っており、現在もその状態が続いている。ヴェリタス
*米10年金利が米3ヶ月金利を下回ると、その後、比較的すぐに景気後退する傾向がある。2022年10月からこの逆イールドが発生している。

*景気拡大期の「良い長期金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場へのネガティブな影響が大きい。ヴェリタス

*景気拡大期終盤に金利が上昇すると、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こる。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。

*利上げ局面で中銀が利上げを停止すると市場は急速に利下げを織り込み始め、株高が続くことが多い。警戒が必要なのはその後になる。金利が高い中での株高は危うい株高となり、なにかのきっかけでショックが起こることが多い。過去を振り返っても、利上げ終了後は1年ほど株が上がり、「サブプライムローン」の破綻などがショックの引き金を引くことが多かった。日経

・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は4の段階になる。


■債務
・世界の債務はコロナ下で急拡大し過去最高水準のGDP比343%に達している(日経)。ただ、対コロナの経済対策により、家計や企業、金融機関の財務状態はコロナ前よりも健全になっているためデフォルトが急に増える状況ではない(日経ヴェリタス)。
米国においては2023年半ば~後半頃にコロナ貯蓄がゼロになる可能性が高い。日経日経

・債務の質は劣化しており、米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割超が格付けの最も低いトリプルBになっている。

・米国の企業負債のGDP比率は12年には65%前後だったが、足元では80%に迫る水準まで上昇している。借り手の返済能力は落ちており、今後の金利上昇局面では返済に行き詰まる企業が続出する可能性がある。ヴェリタス

*金利が経済成長率を下回っている状態では、企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にすることができるので債務が膨らみやすくなる。政府も多少の財政赤字を続けていても債務残高のGDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。

*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構造になっている(日経)。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りていない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。

*債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くと、どこかで必ず資金の逆回転が起こる。債務拡大ペースはここ10年以上、毎年GDPの成長速度を上回っている。

・中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる(日経)。2023年は過去最大の財政赤字(約74兆円、GDP比3%)を計上する。日経
・国際決済銀行(BIS)によると、22年6月の中国の非金融部門の債務残高はGDP比295%に達し、98年3月末の日本の296%と肩を並べている。日経

・新興国のドル建て債務の増加も著しく、10年前の約2倍(約500兆円)まで増えている。足元ではドル高が続いており実質的な返済負担が増している。一部の国ではデフォルト懸念が高まっており、デフォルトがいったん起きればドル高が一段と進み、デフォルトが連鎖しやすくなる。日経日経

・国際金融協会(IIF)によると、新興国の債務残高は22年3月に1京3000兆円とリーマン危機直後の4倍まで増えている(日経)。債務破綻の危機に直面する新興国が増えている。

・世界で過剰債務企業が増えている。本業の利益が借金の利払いより少ない”ゾンビ”企業が全上場企業(2万4500社)に占める比率は2021年度に16%になっている。直近ではこうした企業が破綻に追い込まれる事例が相次いでおり、仏アリアンツは23年に世界の企業の倒産が21年比で26%増えると予想している。日経

・米ムーディーズは今後の世界の社債について、最も悲観的なシナリオだとデフォルト率が14.5%になると予想している。これは1933年の世界大恐慌の最中の15.8%以来の水準になる。リーマン・ショック時のデフォルト率は12.1%になる。日経

<バブルについて>
バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより生じる現象。現在バブルは発生しているが、その投資主体は民間から政府(中央銀行)にシフトしているので(日経)、バブルは破裂しにくい。政府が資産を売却すればバブルは破裂するが、政府債務は実質的に返済不要なので資産を大きく売却する可能性は低い。中銀は足元でインフレ対策として資産の売却を始めてはいるが、インフレが落ち着けば売却をやめるので、バブルが完全崩壊する可能性は低い。


■金融政策、財政政策
・世界中の中銀がインフレ対策で金融引き締めを行っている。ただ日本や中国など一部の中銀は金融緩和を続けている。

・日銀が金融引き締めをしないのは、日本のインフレ率が2%程度と低く、コストプッシュ型の悪いインフレのため。日銀は現在のような需要不足の状態(日経6/6日経)で引き締めをすると景気後退に陥ると考えている。

・日銀総裁に植田和男氏が就任した。植田氏はマクロ経済学(金融政策)のスーパースターだが、日銀は身動きの取れない状態に陥っているので、できることはあまりなさそう。とはいえ一番マシな選択肢を選んでくれるのではないかと思う。

スーパースター・吉川洋氏が日銀に加わった(5/13日経)。吉川氏は金融緩和に否定的なので、金融政策は徐々に引き締めにシフトしていきそう。

*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利をあまり引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀は政策金利を1%まで上げると2年程度で債務超過に陥るとされる(日経日経)。FRBは政策金利を3.0~3.8%まで上げると金利収支が「逆ざや」に転じるとされる(日経ヴェリタス)。ECBも金利引き上げにより財務状態が危機に陥る可能性が高い。ヴェリタス
*MMTは日本が行っている金融・財政政策とは若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。


■政治
・日本の政治は比較的安定。ただ、日銀の財政ファイナンスにより財政のタガが緩んでいる。この調子でいくと近い将来財政破綻する。
・海外は不安定。ウクライナ紛争により、ロシアと西側の関係は当分冷え込みそう。
・米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に長期にわたり続きそう。
*米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制を強化しているので、民間の活力がそがれそう。日経日経
・EU域内では財務格差が広がりつつあるが、コロナ危機やウクライナ紛争などの危機でEU加盟国の結束は強まっており、比較的安定している。


■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はピークアウトはしているが依然高水準にある。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米個人消費の先行指標である6月の消費者信頼感指数は109.7と比較的堅調な水準にある。しかし基調としては下降トレンドになっている。同指数が80を下回ると景気後退のリスクが高まる。4/16日経
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は低下傾向で46.9と7ヶ月連続で中立水準を下回っている。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数は50.3と中立水準をかろうじて上回ってはいるものの、下降トレンドになっている。50を下回るのも時間の問題になりそう。
*ISM指数やPMI指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増える。
ユーロ圏のPMIは43.6。好不況の分かれ目である50を12カ月連続で下回っている。きれいな下降トレンドを描いている。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは48.8と中立水準を下回っている。基調としては横ばい傾向。
・世界景気の先行指標である銅価格はピークアウトしている。ただ上昇トレンドは保っている。
・世界景気の先行指標である半導体指数(SOX指数)は2022年10月頃に底を打ち、大きく反発している。ただ現在の上昇は景気回復を予兆するものではなく、単なるAIブームの可能性がある。
米国の失業率は減少傾向で現在は3.7%。ほぼ「完全雇用」の水準(3.5%)にある。
*米国では失業率が前年同月と比べて0.25%上がると景気後退に陥るとされる。
*米失業率が「完全雇用」の水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。日経
・米景気の先行指標であるダウ輸送株ラッセル2000は高値圏で推移している。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りは高止まりしている。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るとされる。現在は3つ起きている。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照


■その他の株式シグナル
米個人投資家の心理は株価の先行指標になる。個人投資家の心理は株式市場の「逆指標」になるとされ、「悲観」の場合は大底、「楽観」の場合は天井を示唆することが多い。この指標が「異常な弱気」を付けた後の6~12ヶ月は平均以上の株価上昇になりやすい(日経)。現在は「やや強気」の水準。

ブルベア指数も米個人投資家の心理を示し、株価の先行指標になる。現在は14%と「やや強気」の水準にある。

投資家の強欲と恐怖指数も株価の先行指標になる。この指標が「Extreme Fear(極度の恐怖)」となっている場合は、すでに株価にほぼすべての悪材料が織り込まれていることが多く、株価は好材料に反発しやすくなる(東洋経済)。現在は80で「Extreme Greed(極度の貪欲)」の状態。

・1871年以降の米国の平均的な景気後退期間は16.7ヶ月になる。株式は景気に6ヶ月先行するので、景気後退が始まって10ヶ月くらいたった頃が仕込み時になる。日経

・景気後退入りすると最初の数ヶ月間に株価が大きく下落する傾向がある。景気後退入りして最初の4ヶ月間のどこかで株式を買った場合、その後6ヶ月間のリターンはマイナスに終わる可能性が高い。景気後退入りから5~14ヶ月の間に株式を買った場合は、その後6ヶ月の投資リターンはプラスになりやすい。ヴェリタス


■その他の指標
・日経平均の騰落レシオは113とやや過熱の水準。
・日本株の信用評価損益率は-8.65%とやや買われすぎの水準。
・チャートは中国とロシア以外は上昇トレンド。日本株と欧州株は新高値を突破しており、基調は強い。

長期計画

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」といわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
インフレ高止まりにより景気後退に陥る確率が高まってきた。民間・政府ともに債務山積みの状態で中銀が金利を引き上げているので、景気には強い下押しの圧力がかかっている(6/30日経)。ただ家計や企業、金融機関の財務状態は比較的良好なので深刻な景気後退に陥る確率は低い(日経日経日経)。今回のインフレは長引きそうなので、しばらく金融緩和や財政政策による景気刺激は期待しにくい。景気後退は浅く長いものになるのではないかと思う。景気の底は2023年12月~2024年4月あたりになりそう。

*景気循環(債務循環)の基本的なパターンは、不景気 →金融緩和 →景気拡大(債務拡大)・失業率低下 →景気過熱・インフレ過熱 →金融引き締め →景気後退(債務圧縮)の流れになる。

■他の景気後退シナリオ
景気後退シナリオ1:中国のバブル崩壊で景気後退
中国の民間債務は積み上がっており、GDP比220%に達している(日経日経)。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。バブルが崩壊すれば独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性もある。そうなれば政治的混乱も相まって不況が深刻化する。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただ中国政府には財政・金融政策をする余地があるのでバブルが崩壊する可能性は低い。

景気後退シナリオ2:中国が武力で台湾を併合し、米中戦争が激化して景気後退
中国が2024年頃までに武力で台湾を併合するとの予想がある(日経日経日経日経)。実際にそれが起きれば米中戦争が激化し、世界景気には強い下押し圧力がかかる(日経日経日経)。ただ中国は西側から制裁を受けると食糧危機に陥るリスクが高いので、中国が台湾に侵攻する可能性は低い。戦争を仕掛けるとしたら米国側からになる。日経日経

景気後退シナリオ3:「脱成長」経済システムに転換して景気後退
COP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は「産業革命以前から21世紀末までの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指して、努力を追求することを決意」することで合意したが、現在その実現は絶望的な状況にある。各国の2030年時点での目標がすべて達成されても21世紀末までの気温上昇は2.4度になるとされる。そうなれば海面上昇で沈む島国が出て、山火事や巨大台風などの自然災害が多発し、水不足、食糧危機、感染症のリスクなどが増大する。このような未来が科学的に予測されている現状で対策を取らないという選択肢はない。問題の根幹は現在の「成長型」経済システムにあるので、「脱成長」の経済システムに転換する必要がある(日経ロイター)。ただ、現在の状況で「脱成長」の経済システムに転換すれば景気後退は避けられなくなる。

深刻な景気後退に陥ると、財政問題や福祉問題など目先の深刻な問題が噴出するようになり、それらの問題に対処せざるを得なくなる。そのため経済システムの転換はしばらく先になりそう。環境危機が目先の大問題に発展したときに初めて転換の機運が生まれそう。

2022年は世界各地で記録的な熱波や干ばつが発生した(日経産業ヴェリタス日経日経)。英保険仲介大手のエーオンによると22年の気象災害の損失は2990億ドル(約40兆円)に達するという。IPCCは3月に「産業革命前に比べた世界の気温上昇は2030年代初めにも抑制目標の1.5度に達する」と予測している(日経)。経済システム転換の機運は早々に訪れるのかもしれない。

もしくはAI・ロボット社会が温暖化問題の打開策になる可能性もある。温暖化の最大の要因は「人の活動」になるが、AIやロボットが進化・普及すれば、数十億人の「無用者階級」が生まれるともいわれているので(『21 Lessons』)、人が減っていく可能性がある。そうなれば環境負荷の低い社会が実現する。

国連が2022年7月に発表した世界人口推計では「2086年に104億人で人口はピークを迎える」と予測しているが、この数値は2019年の予測「2100年に109億人でピークを迎える」からピーク時期が前倒しされている(日経日経)。AIやロボット、教育(日経)などの影響を考えると、今後もピーク時期の前倒しが続く可能性が高い。

景気後退シナリオ4:災害や紛争で景気後退?
大災害や戦争が起こると景気には強い下押し圧力がかかる。しかし、こうしたことが起こると必ず政府が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば景気はV字回復することが多い。一般に、災害や紛争は押し目買いのチャンスといわれている。今回のような新型コロナウイルスのパンデミックも株式市場には追い風で、社会・経済構造の転換や金融緩和などにより、株高が発生しやすくなる。ロイター

ただし、日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は1000兆円規模の損失が発生するようなので(日経)、景気後退もしくは財政破綻する可能性がある。


■今後の計画
円が110円くらいまで上昇したら、3倍以上の値上がりが見込める海外資産を買っていく。

・米市場に上場している「銅ETF」
「グリーン革命」で銅需要は右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などで供給不足に陥りそう(日経日経)。仕込むタイミングは2024年の半ば頃にくるかもしれない(日経)。

リチウムも銅と同じような理由で供給不足に陥ると考えていたが、リチウムイオン電池の代わりとなるナトリウムイオン電池やフッ化物イオン電池が普及しそうなので、供給不足に陥らない可能性が出てきた。4/4日経4/18日経6/15日経産業

・ファーストトラスト・クラウド・コンピューティングETF
この「クラウドETF」は、マイクロソフトやアマゾンなどクラウド基盤を提供する銘柄と、クラウド経由でソフトウェアを提供するSaaS銘柄で構成されている。現在は大きく売り込まれているが、ビジネスモデルや長期的な見通しは悪くない。日経

・米市場に上場している「半導体ETF」「サイバー・セキュリティETF」
AI・ロボット社会では半導体企業とサイバー・セキュリティ企業の力強い成長が期待できる。半導体株は「シリコンサイクル」的に2023年後半あたりが仕込み時になりそう(日経)。ただ米国の対中輸出規制や過剰投資には気をつけたい。日経日経日経

・メルカドリブレ
ナスダックに上場している南米最大のeコマース企業。ビジネスモデルはAmazonのマーケットプレイスに近い。もう一つの事業がフィンテック事業。南米は欧米などと異なり、銀行口座やクレジットカードを保有してない利用者も多い。ラテンアメリカ市場ではオンラインで販売した際に支払処理をどのように行うかが大きな問題となっている。メルカドリブレはそれぞれの国情に併せてQRコードなどを活用した様々な決済サービスを提供している。ラテンアメリカはインターネットの普及自体が遅れているため先進国と比べて出遅れ感があり、その分成長余地が残されている。問題はカントリーリスクになる。サービスを提供している18カ国のうち、アルゼンチン、ベネズエラ、ニカラグアのリスク評価は最低ランクで、最大の売上を稼ぐブラジルも下から3番目の評価になる。ビジネス自体は順調であっても為替レートが大幅に低下すればドル建ての業績は悪化してしまう。週刊エコノミスト

・アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、アップル、セールスフォース
これらの大型株はまだまだ成長しそう。ただ大きくなりすぎて規制リスクが高まっているのが問題(日経日経など)。この中で規制の影響をあまり受けなさそうなのはセールスフォースあたりになる。

パワフルなAIを作れる企業の条件は、「巨大なデータセットを持っている」「莫大な資金がある」「超優秀な頭脳がある」の3つになる。これらの条件をすべて満たせるのは西側では米巨大テックしかないので、上記の企業はAI時代にも伸びそう。