市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。
■米長期金利 (米国国債4倍ベア7)
基本シナリオ:2019年は2.5%~3.3%の間で推移
長期金利に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・経済成長率+インフレ率↓
米長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になるが、今後は両者とも低下傾向になる。米国の2018年の経済成長率は2.9%、2019年は(予)2.5%、2020年は(予)1.8%で、インフレ率は2018年が2.4%、2019年は(予)2.1%、2020年は(予)2.3%になる。
・金融政策↓
景気後退懸念や金融市場の混乱などから、FRBは金融引き締めをいったん終了することに決めた。
・財政赤字の拡大↑
米政府は財政支出を拡大しており、今後も年金や医療、福祉などの社会保証費は増大していくので、長期的に財政赤字は拡大を続ける。2018年の米国の財政赤字は100兆円を超えており、この水準は当面続く見込み。
・リスクオン、オフ→
少し前まで世界的に景気後退懸念が強まっていたので、”安全資産”である米国債に資金が集まりやすかったが、足下では景気後退懸念や米中貿易摩擦は落ち着きつつあるので、リスクオンに向かいつつある。
・米国債の人気低下↑
米10年国債の利回りは先進国の中では相対的に高いので海外から買われやすいが、足下では為替ヘッジコスト(2.9%)が米長期金利(2.5%)を上回っているので、海外からの米国債の購入は減少している。また貿易赤字や財政赤字の拡大も人気低下の要因になる。
・投機筋の持ち高
売り越しは1月を底にして、そこからほぼ横ばい。短期筋はそれほど金利は上昇しないと見みている。
・チャート↑
短期のWトップが完成していったん天井を打ったように見えるが、長期のWボトムも完成しているので長期的な上昇圧力は強い。・・と思っていたが、長期のWボトムはまだ完成していないのかもしれない。移動平均線的には足下の金利水準(2.5%)はほぼ底で短期的にいったん反発しそう。
■WTI原油 (WTI原油価格連動型上場投信)
基本シナリオ:45ドルから70ドルの間で推移
原油価格に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・産油国の採算ライン↑
サウジが財政均衡に必要な水準は1バレル80ドル、アラブ首長国連邦は60ドル、ロシアは40ドル、米企業の採算ラインは45ドルになる。
・トランプ大統領の介入↓
トランプ大統領は低インフレ(低金利)と株高を切望しているので、原油価格の上がりにくい政策を採る。
・供給↓
OPECやロシアは、米国がイラン産原油を禁輸することを想定して増産に動いていたが、それが直前で解除されたため、在庫がだぶつき気味。
ただ新規の油田開発は、原油価格の停滞や脱化石燃料への投資家圧力などにより停滞気味なので、将来の供給不安は残る。
・需要↑
景気後退懸念や温暖化対策(クリーンエネルギーへのシフト)など需要を抑制する要因もあるが、大局的には人口増や世界経済の成長に伴い原油消費量は増加傾向にある。石油需要は2040年まで拡大を続ける見込み。
・リスクオン、オフ→
原油は株式と同じリスク資産なので、リスクオフ時に売られやすいが、今はリスクが後退しつつある。
・産油国で不測の事態が起こる↑
1月に米国がベネズエラ国営石油会社への制裁を決定した。
イランへの禁輸制裁が5月に復活する予定。
・投機筋の持ち高
買い越しは1月を底に増加傾向にある。短期筋はまだ上がるとみている。
・為替→
原油はドル建て取引なので、ドル高になると新興国の需要が鈍る。
(WTI原油価格連動型上場投信においては、円高が進むと基準価額が下がる)
・チャート→
一目均衡表(月足)の雲の下に入っていて上値が重そうだが、移動平均線的にはいったん底打ちし上昇トレンドが始まっている。
■ドル円 (FXでドル買い)
基本シナリオ:2019年は102円から112円の間で推移
為替に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・日米の金融政策↓(↓は円高方向)
円レートの基準値は購買力平価になるが、今は購買力平価(96円)から円安方向に振れている。円安方向に振れている最大の要因は日銀の金融緩和になるが、その緩和が限界に近づきつつある。一方で米国は金融引き締めから緩和に移行しつつあるので、徐々に円高圧力が高まりそう。
・日米の経済成長力↑
景気が強いと株式などの資産価格が上昇し、金利も高まるので、資金はより景気が強い国へ流れるが、現在は日本より米国の景気のほうが勢いがある。
・貿易収支→
日本は短期的には2018年の原油安により貿易収支が改善し円高圧力が生まれそうだが、長期的にはスマホや医薬品などの輸入が増加傾向で、生産の海外移転などにより輸出の伸びが鈍化しつつあるので貿易収支は悪化していきそう。2018年の貿易黒字額は1兆円程度になる。
*日本の(貿易収支を含む)経常収支は20兆円程度の黒字を維持しているが、この黒字の大半は過去に行った投資のリターンである所得収支が占めている。所得収支は貿易黒字と違い、半分程度が円に換えず現地で再投資されるので、円買いフローは10兆円程度しか生まれない。
米国は景気刺激策や高関税政策などにより2018年の貿易赤字額が100兆円程度まで増えているが、第4次産業革命の牽引役でもあるので長期的な貿易黒字圧力は強い。またシェールオイル増産により海外からのエネルギー調達が大幅に減っているので、これも貿易黒字圧力になる。
*足下では貿易赤字が拡大しているので、保護主義傾向がさらに強まりそう。
・日本企業の対外直接投資→
国内需要はほぼ頭打ちなので、今後も対外直接投資は増えていきそう。
2018年の対外直接投資は15兆円程度と高水準だったが、日本企業の海外M&Aに1年半先行する世界PMI(購買担当者景気指数)はすでにピークアウトしているので、日本企業による海外M&Aもいったんピークアウトしそう。
*対外直接投資額のうち外貨建て(円売り)は半分程度。
・日本の投資家の対外証券投資↑
日本の対外債権・株式投資は年によってばらつきがあるが、平均すると年10兆円程度の買い越しが続いている。
*対外証券投資のうち外貨建て(円売り)は7割程度。
・リスクオン、オフ↑
景気後退懸念や海外の政治情勢が落ち着きつつあるので、徐々にリスクオンになりそう。
市場環境が落ち着けば、金利差を狙って円を売り外貨を買うキャリー取引が復活する。
・投機筋の持ち高↑
円売りポジションは1月を底に積み上がりつつある。短期筋はまだ円安が続くとみている。
・購買力平価↓
ドル円の購買力平価は96円程度なので、円の下限は75円、上限は120円程度になりそう。
米国の方が慢性的にインフレ率が高いので、購買力平価は長期的な円高傾向にある。
・米財政赤字の拡大↓
米国の財政赤字は年100兆円を超え始めており、それが50兆円規模の経常赤字と相まってドル離れが進みそう。近い将来、米国債を消化するために大量のドルが発行される可能性もある。
・チャート→
どっちつかずの三角持ち合い。ゆくゆくは円高方向に大きく振れそう。
■日経平均 (日経レバETF)
基本シナリオ:2019年は19000から24000のボックス圏で推移
日経平均に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・EPS(1株利益)→
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益)× PER(人気度)で決まるが、予想EPSは2018年度が5%程度、2019年も5%程度、2020年は0%程度なので、日経平均はしばらく横ばいで推移しそう。
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EPSに影響を与える外部要因についても見ていく。
・為替↓
今後為替は中長期的に円高に振れていきそうなので、海外で6割を稼ぐ日本企業の利益は下振れしていきそう。
・海外景気↓
日本企業は海外で6割を稼ぐわけだが、海外景気が景気後退に陥りそうなので、日本企業の業績も下振れしていきそう。
・失業率↓
失業率が最低水準まで低下すると賃金が上昇して企業収益が圧迫され、労働量力不足で成長も頭打ちになるが、日本の失業率は最低水準にある。
・減価償却費や資源価格↓
景気拡大期の終盤は減価償却費が大きくなり収益を圧迫する。資源価格の上昇も収益を圧迫するが、足下ではすでにピークアウトしているようなので、この影響はさほど大きくなさそう。
・金融政策→
先進国の金融緩和は最終局面にあるので、上昇した金利により企業の利益や資金調達環境は悪化する。ただ日本の金利は万年0%なのでほとんど影響なさそう。
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・PER(人気度、リスク選好度)→
米中貿易戦争や景気後退懸念によりリスクオフで株式は売られていたが、今後はこれらの問題が落ち着きそうなので徐々にリスクオンに向かいそう。
・投機筋の持ち高→
売り越しは1月をピークにしてやや減っている。短期筋は日本株が下がるとみている。
・利回り↑
日本株式の益回りは8%と日本国債の利回り0%より高いので、株式に資金が流れやすい。
・チャート→
24000円でダブルトップを形成しており、19000円で累積売買高のピークが来ているので、当面この範囲内で動きそう。
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