保有比率の高い順に見ていく。
■プラスアルファ・コンサルティング
基本シナリオ:「HR事業を軸に2028年9月期に営業利益100億円」もしくは「競争激化で悪戦苦闘」
基本シナリオ:「HR事業を軸に2028年9月期に営業利益100億円」もしくは「競争激化で悪戦苦闘」
本決算と今期業績予想はほぼ予想通りの数値だった。しかし、利益がコンセンサスを大幅に下回っていたためか、株価はストップ安まで下げてしまった(笑)。
今回の決算で問題に感じたのは2点。1つは「タレントパレット」の競争力が落ちていること。マーケティングコストが上昇しており、「導入後3ヶ月無償」などの値引きキャンペーンが始まったようで、参入障壁が崩れつつあるように見える。
競争が激化しているのは、HRBrainやHRMOSなどの国内勢が勢いを増しているだけでなく(12/13日経)、米ワークデイなどの外資大手が参入してきた影響も大きそう(参照)。米ワークデイや独SAPが提供するタレントマネジメントシステムは先進的なシステムというだけでなく、ERP(統合基幹業務システム)経由でシステムを提供するので、「タレントパレット」のように「重い、見づらい、入力しづらいの3点セット」(9/20ITreview)のような問題が起こりにくい。
現時点では、外資大手に対して、日本語対応やサポート体制、各種コンサルで優位性がありそうだが、外資大手も今後そのあたりを強化してくるはずなので、中長期的な見通しはあまりよくない。11月のカオナビの決算説明資料には、「機能自体の差別化はなくなってきている」ともあるので、今後は厳しい展開になりそう。前期の「タレントパレット」導入企業数は目標を22社下回っており、今期も目標を下回る可能性がある。
もう1つの問題は、これと関連したことになるが、「タレントパレット」の今期の目標導入企業数などのKPI(重要業績評価指標)が決算説明資料からカットされていること。これまでは決算説明資料に「業績見通しの前提」として、HR事業の予想売上高や営業利益、解約率、ARPUなどのKPIが掲載されていた。しかし、今回の資料からは丸々カットされている。重要な情報をカットするということは、なにか不都合が事情があるようにみえる。なにが不都合なのかはよくわからないが、これがないことで業績見通しの不透明感は増した。今期の業績予想は数字ありきで、内容を伴っていないものなのかもしれない。
また今回の業績予想は会社の業績や株価がいまいちのときに出しているので、予測の精度は高そうでもある(*一般に、ネガティブな状態のときに出す予想は精度が高い)。現在のPAC株のPERは20.8倍で、業績予想と比較すると割安に見える。SBI証券のアナリストを含め(11/28SBIレポート)、大半の投資家は今期業績もまた下振れると予想しているように見えるが、個人的には上振れを予想する。営業利益は6億円くらい上振れるのではないか思う。
決算ではポジティブな要素も4つほどあった。
1つは、HR事業の予想ARPU(1ユーザーあたりの平均的な売上)が横ばい、もしくは微増になりそうなこと。今期は顧客単価の低い中小企業や学校の導入が増えそうなので、ARPUは下がると予想していたが、会社説明によると、既存の導入企業への追加オプションの拡販などにより、横ばいもしくは微増を想定しているという。
2つ目は、前期のマーケティング・ソリューション事業の売上高と利益がともに上振れたこと。競争が激化している市場で、高い利益率を維持したまま成長しているので、競争力がありそうなことがわかった。この領域でこれだけ奮闘しているので、HR事業でも善戦できるのではないかと思った。
3つ目は、学校版「タレントパレット」の「ヨリソル」が好調なこと。前期は50校程度に導入されたようで、現在トータルで70校程度に導入されている。前回のブログでは、「学校領域は攻め込みにくそう」と書いているが、今のところは順調なもよう。足元の受注は会社の想定を上回っているようで、今期は積極的な人材採用とマーケティング費用の投入を行うという。なお、この事業の成長イメージは、今期売上4億・営業損失2億、来期売上8億・収支均衡、再来期売上14億くらい?・利益貢献、になるという。
4つ目は、「タレントパレット」のエンタープライズ向けのオプションプランが拡大していること。これまではタレントマネジメントシステムのSaaSを販売するのが主だったが、今後は未来志向のコンサルティングや生成AI活用支援コンサルティング、システム運用をトータルでサポートするBPO的なサービスの提供も行っていくという。
生成AIは現在、マーケティング分野での活用が増えているが、人事分野でも評価者の「無意識バイアス」などが問題になっているので、徐々に活用が広がっていきそう。12/23日経
自社株買いをする可能性も出てきた。決算説明会の質疑応答では「配当性向20パーセントを維持しつつ、それ以外の還元についても検討」とある。常識的に考えると「それ以外の還元」は自社株買いになりそう。
11月29日に自社株買いを発表した。規模は上限30億円、発行済株式総数に対する割合は5.5%となかなかのもの。これで株価は下げ止まったが、お金の使い道がないことがわかってしまった。ただM&Aは難易度が高いので、焦ってM&Aするよりはよさそう。
少し気になったのは、自社株買いをする前にストックオプションを発行するなど、自社株を社員に配らなかったこと。従業員に自社の「オーナー」になってもらい、経営参画意識を高めるというタレントマネジメントの発想は浮かばなかったのだろうか。本気で「利益の最大化を目指す」(11/22ログミーファイナンス)のであれば、まずは社員への手厚い対応を優先すべきではないかと思った。今回の経営判断から、経営陣は社員のモチベーションよりも株主(外部評価)を気にしているように見えた。
なお、前回のブログには、社員がストックオプションなどで長者になると離職率が上がったり、モチベーションが下がったりする、みたいなことを書いたような気がするが、PACのような知識集約型企業では離職率が上がるのはあながち悪いことでもなさそう。9/5日経には、知識集約型の企業では、最新で斬新なアイデアを持つ、勤続年数の短い労働者が会社を支えており、長期勤続は負の影響をもたらす、とある。
12/21日経で、自社株買いで取得した株式を従業員に株式報酬で割り当てる制度があると知った。これなら今からでもできそう。PACも従業員に自社株を配って、従業員の経営参画意識を高めてくれればと思う。
「タレントパレット」は11月に社員のメンタル不調の解決を支援するカウンセリングサービスの提供を始めた(11/1IR)。このサービスは外部企業と連携して行うという。「タレントパレット」の外部連携は着実に進んでいるもよう。
これまで株式投資では、中長期的な見通しを立てて投資をしてきたが、IT業界は長期的な見通しを立てにくいことがわかった。この業界はもともと変化が激しく、AIの登場により、その変化がさらに激しくなっている。そのため、3年後や5年後の状況を見通しにくい。
一説では、2027年頃にAGI(汎用人工知能)が登場するとも言われている(8/11日経、10/1日経、10/1日経、10/29日経)。もしもAGIが登場したら、A Iの進化が急加速し、短期間でASI(人工超知能)が誕生する可能性が高い。ASIは人間の1万倍以上の知能を持つとされ、そのような存在が現れれば、人間はASIの管理下に置かれ、「タレントパレット」のようなツールが不要になる可能性がある。
そこまでいかないとしても、現在、”AIエージェント”やヒト型ロボットが続々と登場している(12/30日経、11/3日経、12/11日経、11/8日経、11/9日経、12/18日経、12/27日経)。このような状況下では、IT業界や労働環境が大きく変化していかざるを得ない。こうした激変の時代だからこそ、精度の高いタレントマネジメントの重要性は増していくと思うが、一方で、AIやロボットによる人間の代替が進むことで、「タレントパレット」のユーザーが減っていく可能性もある。また、AIの進化によりアプリケーション開発が容易になり、ソフトウェア自体の付加価値が低下していくことも予想される。このように、先を見通すのが非常に難しい状況になっている。
とりあえず、現在の状況を基点にして、PACの今後を考えてみる。日本では今後、人手不足が深刻化していく可能性が高いので、人的資本を重視する経営の方向性が変わることはなさそう。また、AIやロボットの導入により、労働環境が大きく変わっていくので、社員のリスキリングや精度の高い人材配置の重要性がこれまで以上に高まりそう。現状、国内企業のDX投資は旺盛で、今後も引き続き拡大していく可能性が高い。
タレントマネジメントシステム市場では、競争がより激化する可能性もあるが、市場そのものは拡大傾向にある。そのため、たとえ「タレントパレット」の成長速度が鈍化したとしても、中長期的に成長が続く可能性は高い。「タレントパレット」は差異化を図れているようにも見えるので、PACは今後もそこそこ力強い成長をしていけるのではないかと思う。
12/24日経に「中期経営計画は必要か」という記事があった。記事によると、中期経営計画に対する反対論は多いらしい。その主な理由は、予見性の低い時代に数年先の業績を見通すことは不可能、というもの。しかし一方で「無数の選択を乗り越える過程でブレークスルー思考が生まれ、異なる価値観をまとめ上げる工程に意味がある」「事業や競争環境を見渡し、自らが目指す高みに到達する道筋を考えることで、企業の地力に差が出る」とのメリットも指摘されている。また投資家サイドからしても、中期的な方向性が示されていたほうがイメージがわきやすい。中期経営計画の予想が大きく外れ、経営陣への信頼度が落ちることはあるかもしれないが、やはりないよりはあったほうがよさそう。
チャートは大底を打ったように見える。決算を無難に通過していければ、今期は上昇トレンドに入りそう。期待したい。
1Q決算の予想売上高は39億円。スポット売上高次第でやや未達になることもありそうだが、前期4Qの売上高40.4億円から−2億円くらいまでなら許容範囲になりそう。そこを下回ってきたら、また上昇トレンド入りは失敗しそう。ただPERは下限近くに見えるので、下値余地は限られているように思う。
〈5年チャート〉Wボトムになりそう。2300円を超えてWボトムが完成したら、上昇トレンドが始まりそう。
PACの現在の妥当な株価はどのくらいか。当ブログの今期の業績予想は会社予想(売上高177億円、営業利益56億円、純利益39億円)より営業利益が6億円、純利益が5億円上振れ(売上高は±5億円)。今後3年の予想売上高成長率は年15~28%、予想利益成長率は年18~28%。妥当なPERを20~30倍とすると、時価総額は880~1320億円、株価は2050〜3100円になる。
■イントラスト
基本シナリオ:家賃債務保証と医療費用保証で2027年3月期に売上高150億円、営業利益30億円
前回のブログに「未収金リスクが表面化してきた」みたいなことを書いているが、誤解だった。1Q決算で営業利益が下振れたのは、一時的に貸倒引当金を多めに積んだため。未収金が増えたわけではなかった。
医療費用保証事業では「スマホス」の導入ペースが上がってきた。営業活動は病院団体などを通じて行う”アソシエーション型”がメインになりつつあるようで、今後契約数の増大が期待できる。
事業用家賃保証事業を手がけるラクーンレントの買収が11月に完了した。この市場は大きそうなので、うまいことやれば業績の新たな柱になりそう。
今年もストックオプションを発行した。注目すべきはその規模。過去最大の5500万円になる。他の企業と比べると小ぶりになるが、イントラストにおいては大規模。イントラストは今後の株価上昇に自信があるように見える。
12/29日経にまた、単身高齢者が家を借りられないという記事が載っていた。資産1億円以上ある高齢者でも、緊急連絡先がないと賃貸住宅を借りられないという。65歳の単身世帯は現在約670万超あり、これが2030年には約800万世帯になるという。一方で、現在、賃貸向けの空き家は全国に約450万あり、増加傾向にある。これらを仲介する身元保証サービスは今後拡大していきそう。イントラストが参入したら競争力のあるサービスを提供できそう。少し期待したい。
イントラスト株の注意点は2つ。1つは未収金問題。この会社のビジネスモデルは一応ストック型にはなるが、景気後退の煽りを受けやすい。不景気になれば保証商品の回収率が下がり、業績も下振れやすくなる。現在、景気後退は始まっていないが、倒産件数は増えているようなので(10/9日経、10/10日経)、この点は注意して見ていきたい。
もう一つは大株主の問題。親会社のプレステージがイントラスト株を55%保有しているため、今後株式を放出し、株価が大幅に下落する可能性がある。ただこれは業績と関係のないことなので、それで株価が暴落した場合は買い増しの好機と捉えたい。
今後3年の予想売上高成長率と利益成長率は共に年10~15%程度。現在の妥当だと思う時価総額は230億円(株価1000円、PER18倍、PSR2.7倍)。2030年の予想売上・利益は現在の2倍くらい。
■今後の計画
投資スタンスは「基本静観、チャンスがきたら動く」のまま。現在、株価は高値圏にあるので、近いうちにチャンスがくる可能性は低い。今年も観察がメインになりそう。ただし、現在のポートフォリオには偏りがあるので、折を見て修正していく。
市場が荒れて米VIXが40超、日経平均の騰落レシオが65以下になったら株式などを買っていく。ドル建てやスイスフラン建て資産を優先的に買っていきたい。米景気が後退局面に入った場合は、後退開始から5〜10ヶ月後を目処に株式などを買っていく。
■去年の運用成績と今年の予想運用成績
1年前に予想した2024年の運用成績は「-10%~25%」で、その根拠は「地合いに問題があれば若干のマイナス、問題がなければそこそこなプラス。持ち株や投資スタンスにはそれほどリスクはなさそうなので、地合い次第の展開になりそう」だった。しかし実際には、地合いにはあまり問題はなく、持ち株や投資スタンスに大きなリスクがあった。運用成績は-22%だった。去年は多くの教訓を得た、悲しい年になってしまった。
保有株の年間騰落率
プラスアルファ・コンサルティング 2785円 → 1909円(-31%)
プラスアルファ・コンサルティング 2785円 → 1909円(-31%)
イントラスト 801円 → 817円(+2%)
今年の予想運用成績は「-5%~30%」。保有株の業績は順調に伸びる見込みで、グロース株・小型株市場は停滞もしくは上昇を予想している。今年は学びの少ない、楽しい年にしたい。
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