2025年1月1日水曜日

長期計画

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」といわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
景気循環的にそろそろ景気後退に陥りそう。ただ家計や企業、金融機関の財務状態は比較的良好なため深刻な景気後退に陥る可能性は低い。

*景気循環(債務循環)の基本的なパターンは、不景気 →金融緩和 →景気拡大(債務拡大) →景気過熱・インフレ過熱 →金融引き締め →景気後退(債務圧縮) →不景気 の流れになる。

9月にバンク・オブ・アメリカが実施した機関投資家調査では世界経済がソフトランディングするとみる割合は79%に上昇しており、解答者の52%が今後1年半で米経済が景気後退に陥らないと予想している。本当にそんなことが可能なのか。景気後退要因と景気浮揚要因を列記して考えてみる。


<景気後退要因>
・企業債務はGDP比で過去最高水準まで高まっており、金利も2008年の金融危機前と同水準まで高まっている。いつ資金の逆回転が起きてもおかしくない。
・米欧などの先進国中銀はこの2年で政策金利を急激に引き上げている。金利高の影響は1年くらいの時差をもって経済に反映される。2025年はその影響が表れる年になる。
・過去のパターンでは米利上げ停止後1年くらいに「○○ショック」が起こり景気後退に陥っている。今回FRBは2023年9月頃から利上げを停止しているので、もうそろそろ「○○ショック」が起こってもおかしくない。
・過去のパターンでは逆イールド発生後、1~2年くらいたったころに景気後退が起きている。米国では2022年7月に逆イールドが発生しており、現在2年半が経過している。
・逆イールドが発生している影響で、銀行の融資が減っている。銀行の融資態度は景気との相関が強く、過去、融資基準の厳格化が進んだ時期には景気後退が発生している。
・米家計のコロナ貯蓄はほぼゼロになっている。2023年10月からは学生ローンの返済が再開されている。クレジットカード債務や自動車ローンの延滞率は足元で13年ぶりの高さになっている。
・米経済の牽引役である個人消費は長引くインフレや金利高で節約志向が高まっており、低調気味になっている。
・今後米国の失業率が上昇していく可能性がある。米最大の求人プラットフォームを運営する米Indeedは5月に「米国の景気と求人数が悪化し続けるのは確実。底打ちまでに18~24カ月ほどかかる」と言っている。
・株式市場の牽引役になっている「生成AIブーム」が”幻滅期”に入り、いったんしぼむ可能性がある。現在、生成AIのインフラ投資は活発だが、生成AIの利用企業数はピーク時の半分以下になっている。株式市場が停滞すると逆資産効果が生じる。
・2008年に起きた金融危機では、中国の大型投資により世界経済は救われたが、今回はそのような支え手がいない。
・過去の例では、日銀の政策金利の引き上げは米景気後退の直前に開始されることが多い。過去のパターン通りいくとしたら、あと6ヶ月くらいで景気後退に突入する。


<景気浮揚要因>
・失業率が低い。米GDPの約7割は個人消費が占めるが、失業率が低水準の状態で維持されると、所得が維持され、消費が落ち込みにくくなる。1960年代以降に8回あった景気後退局面では、失業率が平均で3%強上昇しているが、今後想定される失業率の上昇幅はその半分にも満たない。
・移民が流入している。移民流入により労働供給が増え、成長の原動力になっている。一方で、移民は「弱い雇用」に就くので、賃金の伸び鈍化にも役立っている。
・米国では移民の流入やテクノロジーの普及、サプライチェーンの強靱化などにより潜在成長率が2%台に上昇している。
・米国の生産性は上昇している。生産性は2023年に年率で4%程伸びている。生産性が上がった主因は雇用流動性の高さになる。米国ではコロナ過の初期に2200万人超の一時解雇が発生したが、その後、労働者はより成長力のある企業に転職した。最も雇用が増えたのはIT関連になり、起業数はコロナ過前の2倍になった。これらが米国の技術革新を加速させている。
・デジタル化が米国経済を強靱化している。デジタルエコノミーの伸び率は平均年7%超あり、それが米経済を下支えしている。
・現在はサービス業が経済成長を主導しているので、景気が落ち込みにくい。サービス業は投資資金を製造業ほど必要とせず、イノベーションが起こりやすいので、成長力が落ちにくい。
・AIが普及期に入りつつある。英調査会社はその普及率に応じて2027年の米GDPを0.7~2.5%、2032年時点で1.8~4.0%押し上げると予想している。
・現在世界的なAIブームが起きている。このブームはまだまだ続きそう。
・米国では家計債務の約7割を住宅ローンが占めるが、コロナ過の低金利時代に多くの世帯が住宅ローンを借り換えているので、債務返済コストが低くなっている。住宅価格は高騰しており、その含み益を借り換えで現金化する手法も活発になっており、約60兆円の余剰資産が生じたという試算もある。
・米家計は金融資産の5割を株式や投資信託などで運用しているので、株高により、家計は潤っている。この20年の株価上昇の結果、家計の金融資産の増加は個人所得の増加の6倍になっている。住宅価格は3倍に上昇している。2024年第1四半期の米家計資産は過去最高の160兆ドル(2京5000兆円)に達している。家計純資産は過去10年間で約2倍になっている。
・景気サイクルの終盤にもかかわらず、米家計のバランスシートは良好で、家計の可処分所得に占める元利払いの返済負担比率は低下している。
・クレジットカード支払いの延滞率が上昇しているという指摘は多いが、延滞が生じているのは低所得者層で、全体に占める割合は10~15%程度になる。金利水準は高いが、米国では固定金利で住宅ローンを組む人が全体の8割と多く、22年以降の金利上昇の影響は限定的になっている。
・現在、過去のリセッション局面の前段階で必ず見られていた「民間債務の急速な拡大」は起きていない。
・米長期金利は高止まりしているが企業の金利耐性は上がっている。2022年以降の米企業部門の受取利息の伸びは支払利息よりも大きい。大企業は低金利時に固定金利で資金を調達している一方、米アップルのように手元資金が潤沢な企業は高利回りの運用資産を保有している。
・インフレが鈍化している。コロナ禍で深刻になっていた移民減少や半導体不足などの供給制約が解消されている。インフレ指数の約3割を占める賃料も落ち着き始めている。
・インフレ要因となっていた、ウクライナ戦争の供給ショックが落ち着きつつある。
・インフレが落ち着いてきており、主要中銀は政策金利を引き下げ始めている。
・米国では半導体産業や環境産業(EVなど)、インフラ産業などの巨大産業を政府が支援しているので、景気が落ち込みにくい。
・世界的に積極的な財政政策が採られているので、当面の間、力強い経済成長が続く可能性が高い。
・インドなどの新興国経済が好調。中国はいろいろと問題を指摘されているが、それでも4%超の成長をできる見通し。
・過剰流動性(金余り)が維持されている。コロナ禍で政府がばらまいた資金が市場にまだ高水準で残っている。マネーストック(民間に流通しているお金の総量)は長期的に右肩上がりで増え続けている。世界のドルの流通量を示す「ワールドダラー」は2024年4月にリーマン・ショック前の約4倍にあたる8兆7300億ドル(1360兆円)に拡大している。
・FRBなどの主要中銀は過去の金融危機の経験を踏まえ、制度変更や規制に加え、バックストップ(安全策)機能を整備している。
・長期の米景気を俯瞰すると、現在の景気は拡大局面が長く、後退局面が短くなっている。その要因は、製造業からサービス業への重心移動、生産・在庫管理の進化、機動的な金融・財政政策などになる。


<まとめ>
こう見ていくと、景気浮揚要因の方が多く、強そうなので、堅調な景気を保ちそう。景気後退に陥るとしても軽いもので済みそう。


■他の景気後退シナリオ
景気後退シナリオ1:中国のバブル崩壊で景気後退
中国の民間債務は積み上がっており、GDP比220%に達している。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。バブルが崩壊すれば独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性もある。そうなれば政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただ中国政府には財政・金融政策をする余地があるのでバブルが崩壊する可能性は低い。

・・中国政府がとれる政策が限られてきた。政府や民間企業の債務残高の合計はGDP比で約300%に膨らんでおり、大規模な財政支出はしにくい。一方で、人民元安が進んでおり、中国中銀は大幅な利下げをしにくくなっている。


景気後退シナリオ2:中国が武力で台湾を併合し、米中戦争が激化して景気後退
中国が武力で台湾を併合するとの見方がある。実際にそれが起これば米中戦争が激化し、世界景気には強い下押し圧力がかかる。ただ中国は西側から制裁を受けると食糧危機に陥るリスクが高いので、中国が台湾に侵攻する可能性は低い。戦争を仕掛けるとしたら米国側からになる。

とはいえ、中国は米国債を売り続けており、「安全資産」である金の保有を増やしているので、台湾に侵攻する可能性も少しはありそう。

中国が2024年5月23~24日に実施した台湾を包囲する形での軍事演習について、米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官は「(侵攻に向けた)リハーサルのようだった」と話している。


景気後退シナリオ3:「脱成長」経済システムに転換して景気後退
COP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は「産業革命以前から21世紀末までの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指して、努力を追求することを決意」することで合意したが、現在その実現は絶望的な状況にある。各国の2030年時点での目標がすべて達成されても21世紀末までの気温上昇は2.4度になるとされる。そうなれば海面上昇で沈む島国が出て、山火事や巨大台風などの自然災害が多発し、水不足、食糧危機、感染症のリスクなどが増大する。このような未来が科学的に予測されている現状で対策を取らないという選択肢はない。問題の根幹は現在の「成長型」経済システムにあるので、「脱成長」の経済システムに転換する必要がある。ただ、現在の状況で「脱成長」の経済システムに転換すれば景気後退は避けられない。

深刻な景気後退に陥ると、財政問題や福祉問題など目先の深刻な問題が噴出するようになり、それらの問題に対処せざるを得なくなる。そのため経済システムの転換はしばらく先になりそう。環境危機が目先の大問題に発展したときに初めて転換の機運が生まれるのかもしれない。

2022年、2023年、2024年は世界各地で記録的な熱波や干ばつが発生した。英保険仲介大手のエーオンによると22年の気象災害の損失は2990億ドル(約40兆円)に達するという。IPCCは「産業革命前に比べた世界の気温上昇は2030年代初めにも抑制目標の1.5度に達する」と予測している。2024年の平均気温は+1.5度になった可能性がある(11/18日経)。経済システム転換の機運は早々に訪れるのかもしれない。

もしくはAI・ロボット社会が温暖化問題の打開策になる可能性もある。温暖化の最大の要因は「人の活動」になるが、AIやロボットが進化・普及すれば、数十億人の「無用者階級」が生まれるともいわれているので、人が減っていく可能性がある。そうなれば環境負荷の低い社会が実現する。

国連が2022年7月に発表した世界人口推計では「2086年に104億人で人口はピークを迎える」と予測しているが、この数値は2019年の予測「2100年に109億人でピークを迎える」からピーク時期が前倒しされている。AIやロボット、教育などの影響を考えると、今後もピーク時期の前倒しが続く可能性が高い。


景気後退シナリオ4:災害や紛争で景気後退?
大災害や戦争が起こると景気には強い下押し圧力がかかる。しかし、こうしたことが起こると必ず政府が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば景気はV字回復することが多い。一般に、災害や戦争は押し目買いのチャンスといわれている。今回のような新型コロナウイルスのパンデミックも株式市場には追い風で、社会・経済構造の転換や金融緩和などにより、株高が発生しやすくなる。

ただし、日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は1000兆円規模の損失が発生するようなので、景気後退もしくは財政破綻する可能性がある。

南海トラフ地震が単独で起きた場合は、200兆円程度の損失が発生すると試算されている。このような災害の発生時には、大規模な財政支出が必要になるが、すでに国債金利は上がり始めているため、これまでのように日銀頼みの国債発行をできない可能性が高い。仮に国債を大量増発した場合、財政破綻もしくはハイパーインフレが起こる可能性がある。10/17日経


■今後の計画
景気が停滞し、円が130~135円くらいまで上昇したら、3倍以上の値上がりが見込める海外資産を買っていく。

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