2019年3月1日金曜日

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

現時点の予想では2020年頃に景気後退期に入るとみている。ただ今回の景気拡大期は低成長・低金利の中で浅く長いものだったので、景気後退期も浅く長いものになりそう。

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過去の景気後退に共通するパターン:米国の長短金利が逆転した後(もしくは利上げ停止後)、1,2年してから日本株が50%超下落。

2018年12月に5年債と2年債の金利が11年ぶりに逆転したが、FRBが利上げを終えそうな雰囲気になってきたので、今回は10年債と2年債が逆転せずに景気後退に陥る可能性が出てきた。ただ今回の利上げ停止ポイントは過去の水準(5%超)と比べてだいぶ低く(2.5%)なりそうなので、景気後退は比較的穏やかなものになりそう。

これ以外にも景気後退や株価下落を穏やかにするいくつかの要因がある。
・リーマンショックの記憶がまだ残っているため、皆慎重になっている。
・バブルは借金をして資産を買いまくることによって生じるが、先進国では今回そのような現象はあまり見られない。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、先進国では金融危機(信用収縮)は起こりにくい。
 *金融危機(信用収縮)、つまりクレジットの消失が起こらなければ、金余りの状態が続く。*クレジットとは世の中に流通する大半のお金のこと(参照)。
 *中国の不動産にはバブルの兆候がある。ただし中国政府の需要抑制策により、日本のバブル期ほどの過熱感はない。
 *中国で最も大きなバブルはシャドーバンキング商品(銀行理財商品、委託融資、信託商品)への投資になる。これらの投資は過熱感が強く、2017年末の残高は1000兆円とGDP比8割の規模になる。
 *バブル崩壊の仕組み。景気後退や金利上昇などにより株式や不動産などが売られはじめると、資産価格が上昇することを前提として資産を買っているバブル系投資家が資産の投げ売りを始め、資金の逆回転が起こる。

・中国政府には財政出動や金融緩和の余地がある。
・中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。
・中国は独裁体制のため、不況に陥るとすべての批判が指導部に降りかかる構造になっている。そのため指導部はなんとしても不況を起こさないようにする。
・FRBは次の景気後退期に財政政策や金融政策で打つ手がほとんど残ってないことがわかっているので、金融引き締めは慎重に進める。
・各国中銀が量的緩和をして国債などの資産をたくさん買っているので資産価格は下がりにくい。中銀が資産売却を進めれば資産価格は下がるが、今のところそれを積極的に進めようとする気配はない。
・金融緩和により金余りが過剰な状態が続いている。米メリルリンチによると2019年2月はじめの機関投資家の現金保有比率は2009年1月以降で最も高い水準になる。
・各国中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、現在のようなインフレが起こりにくい環境でインフレ2%を達成・維持するには株高のような資産価格の上昇が不可欠になる。そのため中銀は株式市場に優しい政策をとらざるを得ない。
・現在、第4次産業革命が進行中で、これは今後も長期にわたり続く。
・先進国では株式以上に債券が割高なので、株式に優位性がでやすい。
・日本株に限れば、日銀のバックアップがあるので下がりにくい。
 *ただし日銀のバックアップがあるからこそ海外勢が売ってくる可能性もある。1995年に為替が1ドル80円を突破したとき、日銀が「もうこれ以上無理だ」とドル買い介入をやめたら底打ちしたという。市場参加者はドルを売る相手がいなくなり、買い戻しを始めたらしい。2018年に日銀は日本株を6兆円買い越しているが、海外勢は5兆7千億円売り越している。

以上を総合すると、次の景気後退や株価の下落は比較的穏やかに進む可能性が高い。

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景気後退シナリオ2:株価上昇の原動力であった金融緩和と債務のサイクルがピークアウトし、景気後退に陥る
おそらく昨年末の株価下落はこれが主因になる。ただ今回の金融引き締めは穏やかなものになりそうなので、景気後退も穏やかなものになりそう。
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景気後退シナリオ3:上がり続ける米長期金利による景気後退
今後、米長期金利は需給要因により長期的に上昇していく可能性がある。米長期金利が上昇すると株式や不動産が売られ、借り入れが減り景気後退に陥る。景気後退に陥ると通常なら長期金利も低下するが、今回は需給要因により長期金利は下がりにくい。新興国では米金利上昇とそれに伴うドル高により、通貨安、インフレ、金利高が起こり景気後退に陥る。中国ではこれらに加え、過剰債務や貿易戦争、労働人口のピークアウトなどにより景気後退に陥る。日本や欧州は、これらの国々のあおりを受けて、景気後退に陥る。
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景気後退シナリオ4:中国のバブル崩壊による景気後退
中国の企業債務は積み上がっているが、その7割以上は実物投資ではなく、リスクの高い金融資産(シャドーバンキング商品)への投資に回っている。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して、連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。そうなると企業は債務返済で手一杯になり、新たな投資ができなくなる。不況に陥ると独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性も出てくる。そもそも独裁体制は経済的に成熟した社会には適さないシステムとも言われているので、その意味でもこのタイミングで独裁体制が終わる可能性がある。これらの政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。
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景気後退シナリオ5:景気後退シナリオ2,3,4が同時に起こる
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景気後退シナリオ6:各国中銀がインフレ政策をやめる
先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、経済成長率が2%を下回り、インフレが起こりにくい社会構造でそのような政策を続けるのはもともと無理がある。日本においてはインフレ目標達成のために、日本銀行が日本株を最も買っているが、これはあまりにも不自然。そのためどこかでインフレ政策を転換する必要が出てくる。インフレ政策を転換すれば資産価格は下落するが、今のところインフレ政策よりもマシな政策はなさそうなので、インフレ政策が限界にくるまで(おそらく10年以内)この政策は続きそう。
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このようになるが、基本的には景気後退は比較的穏やかに進むと思うので、ビジネスモデル(利益成長を続ける仕組み)の強い企業は当面ホールドしていこうと思う。ただし景気後退シナリオ4または5が起きた場合はすみやかに手仕舞いしていく。

それ以外のパターンとして
・1ドルが115円
・米長期金利が3.5%
になった場合は、その時点でドルを売っていく。
*米国の政府・民間債務は膨張しているので、長期金利が3.5%あたりまで上昇したら、FRBは債務危機を防ぐため、国債購入を再開して(ドルを大量発行して)日銀のように長期金利をコントロールしていく可能性が高い。

景気後退期に入り円が80円くらいまで上昇したら、外国株や日本株、ドルを買っていく。

次の円高時に仕込みたい外国株
・(米)ALPHABET。自動運転や人工知能、データ覇権の本命。
 *ALPHABETのビジネスの中核は個人情報の活用になるが、今後進んでいくであろうデータ規制によっては収益基盤が破壊される恐れがある。
 *世界的なデジタルプラットフォーマーへの課税ルールが変わり税負担が重くなっていきそうなのも問題。
 *人工知能の進展には大量にデータを集めてそれを自由に使うことが必要だが、西側ではプライバシー保護規制が厳しくなりつつあるので進展が鈍化する可能性がある。AI覇権はプライバシー保護規制のない中国にとられる可能性がある。
 *ALPHABETがデータ覇権を握ると、それは世界最強の諜報機関という意味合いも出てくるので、ブランドイメージが悪化する恐れもある。ALPHABETが社是から「邪悪になるな」を削除したのも気がかり。

・NASDAQ100ETF。第4次産業革命の中核ETF。
・米国株式長期厳選ファンド。奥野一成氏が運用するビジネスモデルが堅固な企業に投資する永久保有系ファンド。大型株メインなのがやや難点。
・インド株のETF。インドは2040年まで人口ボーナス期が続く。
・インドネシア株のETF。インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続く。
・経済危機に陥った国の資産。危機後に投資すると数年後に大きな見返りを期待できる。
・銅の先物もしくはETF。銅をたくさん使う電気自動車などにより銅の需要は長期的に右肩上がりだが、供給は環境規制などの制約により追いつかなくなる可能性がある。


次の景気拡大期は、中銀に金融緩和をする力があまり残されてなさそうなので、今回のような資産インフレはあまり期待できないかもしれない。

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