2022年7月1日金曜日

マクロ系金融指標チェック

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米10年金利
今後1年の予想レンジ:2.0%~3.8%の間で推移

米長期金利に与える影響が大きい要因順にみていく。
・経済成長率+インフレ率↑
長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になる。2022年の経済成長率は+2.8~4.0%、インフレ率は+4.0~6.5%になる見込み。
*数値はFRB予想やIMF予想などを参照

・金融政策↑
FRBはインフレ対策として量的引き締めを22年5月に開始し、政策金利を22年末に3.4%、23年末に3.8%まで引き上げる予定(その後は利下げに転じる予定)。6/17日経
*FRBが保有資産を3割売却した場合、長期金利は約1%押し上げられるとされる。4/8日経

*政策金利引き上げると長期金利に上昇圧力がかかるが、金利引き上げは需要を抑制するので長期金利には下押しの圧力もかかる。政策金利を中立金利(2.4%)を超える水準まで引き上げると、下押し圧力の方が強くなる。

*FRBは政策金利を2.5%超に引き上げ、保有する債権を3割(300兆円)売却すると、長期金利の上昇などによりFRBの保有する債券に含み損が生じ(ドルの信用に懸念が生じ)、長期金利がさらに上がりやすくなる。2/20日経3/18日経
*3月末時点で、FRBは米国債と住宅ローン担保証券に約45兆円の含み損を抱えている。5/28ロイター

*金利が上がると政府債務の金利負担が大きくなるので、政府は予算規模を縮小せざるを得なくなる。それは長期金利(景気)を下押しする。

・リスクオン、オフ↓
今はインフレが高進しているのでリスクオフ気味。コロナ収束や金余りはリスクオン要因になる。リスクオフ時は国債が買われやすくなる。

・米国債の人気上昇→
米長期金利は海外の主要先進国の長期金利よりも相対的に高いので、海外勢から買われやすい。米長期金利が2%を超えると巨額の買い需要が発生するともいわれる。

ただ米金利上昇により為替ヘッジコストが上昇しており、現状では米長期債の利回りからヘッジコストを差し引くと利回りがほとんどなくなってしまう。日本の一部金融機関は米国債から日本国債に資金をシフトしている。6/3日経

・資金需要の低下、金余り↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になる。デジタル企業は設備投資のための資金需要が少ない。少子高齢化の影響で借り入れなども減っている。

金余りで運用難に陥っている金融機関や企業は多く、そういうところがこぞって米国債を買っている。日経日経

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みなどで潜在成長率は低下傾向にある。

・財政赤字の拡大↑
米国の財政赤字は毎年100兆円を超えているので、米国債の供給増や通貨の信認低下により、長期金利には上昇圧力がかかる。ただ、他国の財政状況も似たようなものなので、相対的にたいした影響はない。

投機筋は米10年債先物を大きく売り越している。投機筋は今後金利が上がるとみている。

・チャート↑
<10年チャート> 長期線を力強く越えてきたので、上昇トレンドに転換しそう。

<前回の予想「今後1年の予想レンジ:1.5%~2.7%の間で推移」が外れた要因>
・FRBは資金収支の問題から大幅な利上げはできないと予想していたが、あまり影響なかったもよう。
・ウクライナ危機の影響などでインフレが予想以上に長引いている。
・今回のような利上げと量的引き締めがセットになった二重の引き締めは過去に例がない。不透明感が強まると買い手不在になりオーバーシュートしやすくなると思った。


■WTI原油
今後1年の予想レンジ:80ドル~150ドルの間で推移

原油価格に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・需要↑
原油の需要は世界経済成長率にほぼ連動する。2022年の世界経済成長率は+3.0~4.4%程度になる。

長期では、温暖化対策や職場・学校のリモート化などにより石油需要は減る可能性がある。仏トタルや英BPは2030年頃に石油需要がピークアウトすると予想している(11/6ヴェリタス日経)。一方、世界人口は今後も増えていくので石油需要は増える可能性もある。米エネルギー情報局(EIA)は2050年の石油需要は2020年比で4割増になると予想している(10/8日経)。

今回のロシアのウクライナ侵攻で原油・ガスの供給途絶リスクが表面化したので、脱炭素シフトが前倒しされ、需要のピークアウトが早まる可能性が出てきた。4/23ヴェリタス

・供給↑
OPECや米国の増産ペースは鈍いが(6/2日経)、22年の需給はほぼ均衡する見通し。23年はやや供給不足に陥る見通し。6/16日経

長期では、脱炭素の潮流を受けて油田開発投資が大きく減っており、また再生可能エネルギーの普及には時間がかかるので、大幅な供給不足に陥る可能性がある。原油の先物市場では、将来の需要切迫を見越して価格が上昇傾向にある。4/26日経

・産油国で不測の事態が起こる↑
ロシアがウクライナに侵攻したため、西側はロシアからの原油調達を絞りつつある。一方、中国やインドはロシアからの原油輸入を増やしている。
ベネズエラやイランは米国から制裁を受けており、産油量が減っている。ただ米政権は2国への制裁を緩和するようなので、いずれ供給は増えそう。
中東では石油施設へのテロ攻撃が度々起きている。3/26日経
*石油(エネルギー)は人間にとって食料と同じ生活必需品のため、わずかでも不足が生じると価格が跳ね上がりやすくなる。

・産油国や産油企業、再生可能エネルギーの採算ライン→
サウジアラビアが財政均衡に必要な水準は1バレル83ドル、アラブ首長国連邦(UAE)は70ドル、イラクは60ドル、ロシアは42ドル、米企業の採算ラインは45~70ドル、再生可能エネルギーは30~80ドルになる。基本的に原油価格はこの範囲内に収まりやすい。

・リスクオン、オフ↓
リスクオフ気味。原油は株式と同じリスク資産になるので、リスクオフ時は売られやすい。

・インフレ対策↑
原油などの商品は最良のインフレヘッジ手段になる。足元ではインフレ対策としても買われている。

・為替↓
原油はドル建てのためドル高になると原油価格に下押し圧力がかかる。足元ではドル高が進んでいる。

・チャート
<10年チャート> ゴールデンクロスを形成。力強い上昇トレンドに。ただ出来高が減りつつあるので、上昇の勢いは弱まりそう。


■ドル円
今後1年の予想レンジ:115円~145円の間で推移

為替に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・日米の長期金利差↑(↓は円高方向)
FRBは3月に金融引き締めに転じ、米長期金利が大きく上昇している。一方、日銀は金融緩和を続け、無制限の国債買い入れにより10年金利を0.25%に抑えようとしている。
*国債買い入れによる通貨供給も円安要因になる。

金利差拡大によりキャリー取引が増えている。
*キャリー取引とは金利差を狙った取引。金利差が大きくなると低利通貨を売り、高利通貨を買って、金利差で収益を得る取引が盛んになる。現在のような状況では低利通貨の円は売られやすく、高利通貨のドルは買われやすくなる。

・日本の経常収支↑
輸出主導の経済構造が変わり、円安・資源高の影響で、日本の貿易収支は赤字に転落しつつある。日本はこれまで年20兆円程度の経常黒字を維持してきたが、今年は4兆円程度になりそう。5/13日経
*海外からの旅行や留学が元の水準に戻れば、3兆円程度の経常収支押し上げ効果があるとされる。5/8日経5/14ヴェリタス6/10日経
*日本の製造業の海外生産比率は1998年に10%だったが、2020年には22%になっている。6/14日経

・日米の経済の強さの違い↑
資金は経済の強い国へ流れ、その国の株式や不動産などが買われる。デジタル革命を主導する米経済は相対的に強いのでドル資産が買われやすい。
*日本の個人投資家は2021年に海外株を8兆3千億円買い越しており、その9割程度は米国株になる。日本株の買越額は280億円になる。6/6日経

・ドル需給↑
FRBがドルを大量供給しているのでドルはだぶつき気味だったが、ウクライナ危機により基軸通貨ドルの需要が高まっている。

・リスクオン、オフ→
インフレ高進やウクライナ危機によりリスクオフ気味。日本は世界一の対外純資産国なのでリスクオフ時に円は買われやすいが、上記要因により円が買われにくくなっている。

・日本企業の対外直接投資↑
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業は海外での直接投資を増やしている。ここ数年は年12~22兆円の買い越しが続いている。対外純資産に占める対外直接投資の比率は増加傾向で、2020年には47%まで上昇している。一方、対外証券投資の比率は28%まで低下している。11/17日経

・国内投資家の対外証券投資↑
日本の機関投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、高い運用利回りが見込める海外債権や株式などを買っている。個人投資家は成長力の高い海外株を積極的に買っている。ここ数年は両者合わせて年10兆円超の買い越しが続いている。

・海外投資家の国内証券投資↓
円調達時の上乗せ金利(ベーシススワップ)が低く、日本国債の金利は安定しているため、海外投資家は日本国債を年10兆円程度のペースで買い越している(3/16日経)。ただ足元では国債価格下落を見越して売りに回っている。6/24日経

・投機筋の持ち高↓(「円 投機的ネットポジション」で検索)
投機筋は売りを継続している。投機筋は円安が進むとみている。
*円を買い持ちした場合はスワップポイント(金利収入)がマイナスになるので、買いポジションが長く続くことは少ない。

購買力平価
物価が上がると(インフレが進むと)、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると(デフレが進むと)、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必用なくなる(購買力は上がる)。この物価変動に着目して二国間の通貨価値をならしたものが購買力平価になる。

日本より米国の方が慢性的にインフレ率が高いので円の購買力平価は長期的な円高傾向にある。ただ米国のインフレ率は年々低下しており日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。為替相場は長期的にはこの購買力平価に収斂していくとされているので、円の下限は75円、上限は115円くらいになる。

*コロナ禍で日米のインフレ格差が広がっている。この状態が続くと円には強い上昇圧力がかかる。

・日銀が保有する日本国債の値下がり↑
日銀は日本国債を515兆円保有しており(6/28日経)、10年債の利回りが0.65%に達した場合、国債の含み損が日銀の自己資本11兆円を上回り、実質的な債務超過と見なされるリスクがある(6/28日経)。そうなれば通貨の信認が低下する。

・日銀が保有するETFの簿価割れ→
日銀の自己資本は約10兆円なのに対し、保有する日本株ETFは簿価で約35兆円ある。日銀の保有するETFの損益分岐点は日経平均株価21000円くらいであり、ここを下回ると自己資本が目減りし通貨の信認が低下する。日経平均株価が15000円台まで下がると日銀は債務超過に転落し、さらに通貨の信認が低下する(日経)。ただ現時点ではそこまで下がる可能性は低い。

・米制裁によるドル離れ↓
米国は対立する国に「ドル取引の制限や禁止」といった金融制裁を課すことがある。現時点で米国はロシアやイラン、トルコ、中国などに金融制裁を課しており、これらの国々は米国債の保有を大きく減らしている。今のところドル離れは一部に留まっているが、今回のロシア制裁(ロシア中銀が保有するドル資産凍結)をきっかけに、ドル離れが加速する可能性がある。3/17日経

・日米政府の過剰債務↑
日本政府の債務は返済不可能な水準まで膨れ上がっているので、2030年頃に円の大暴落が起きる可能性がある。米国も似たような状況だが、基軸通貨なので大暴落は起きにくい。

・キャピタルフライト↑
日本は財政問題や少子高齢化、経済の低成長などの問題を抱えているため、日本人が円資産を海外資産にシフトする可能性がある。国内の家計の預貯金は約1000兆円あり、その1%(10兆円)でも外に向かうと円相場へのインパクトは大きくなる。

・チャート
<10年チャート>
「4月に24ヶ月移動平均線が60ヶ月移動平均線を上抜いており、これによって、下から順に60ヶ月、24ヶ月、12ヶ月が並んだ。いずれも右肩上がりとなり、最も上に現値が位置する状態を維持。強い上昇トレンドを示唆するパーフェクトオーダーを示現している。前回のパーフェクトオーダー完成は13年11月で、その後15年6月に125円まで上昇した。今回もここから1年前後は上昇トレンドが続く可能性が高い。1998年の高値の147円を更新する可能性もある」6/11ヴェリタス
*下のチャートの移動平均線は12ヶ月、24ヶ月、60ヶ月のものではない。

<前回の予想「今後1年の予想レンジ:105円~130円の間で推移」が外れた要因>
・米長期金利が予想以上に上昇したから(FRBが予想以上に政策金利を引き上げようとしたから)。
・インフレ高進が予想以上に長引いているから。


■日経平均
今後1年の予想レンジ:23000~31000円で推移

日経平均に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・金融政策↓
世界の中銀の総資産と世界の株価指数はほぼ連動している(日経)。コロナ禍では世界の主要中銀は市場に1300兆円を供給し株価は大きく上昇したが、現在はその資金の吸収に動いているので株価は大きく下落している。中銀の資金吸収は今後1年で約260兆円になる見込み。6/1日経

*現時点で中銀はまだ資産をほとんど売却していないのにもかかわらず、株式市場は大きく下落している。機関投資家の現金保有比率は2020年春のコロナ危機下の水準(5.9%)に近い5.6%まで高まっており(6/16日経)、個人投資家の現金保有比率もコロナ発生直後の水準(19.1%)まで高まっているので(6/28日経)、やや売られすぎの感がある。

・米長期金利↓
長期金利が上昇すると株式から債権へ資金が流れやすくなる。

*米長期金利上昇により、米大手銀の債券含み損は約5兆5000億円(自己資本の4%程度)まで膨らんでいる。この状態ではリスク資産投資ができなくなる。過去の例では含み損率が3%を超すと株価の大幅調整が起きている。週刊エコノミスト 2022年4月19日号(最終ページ)

・為替↑
円安が進むと海外勢は日本株を買いやすくなる。実際、1ドル130円を超える円安局面では海外勢は日本株を買い越している。

・利回り↑
日本株式の益回りは約7.33%、配当利回りは約2.45%と、日本の10年国債の利回り0.22%より高いので、株式に資金が流れやすい。

・需給↑
海外勢の売り玉はなくなりつつあり、大きく下げたときは日銀や企業が買い支えるので日本株は下がりにくい。

主な投資主体の売買動向を予想
<2022年の予想と現状>
 日本銀行:予想は日本株の買い支えで1兆円の買い越し。現状は5千億円の買い越し。
 事業法人:予想は自社株買いで4兆円の買い越し。現状は2兆円の買い越し。*現時点で企業が発表している2022年度の自社株の買い入れ枠は約4.2兆円。5/25日経6/3日経
 海外投資家:予想は景気後退を懸念して1兆円の売り越し。現状は1兆8千億円の売り越し。
 個人投資家+投資信託:予想は逆張り投資で1兆円の買い越し。現状は9千億円の買い越し。

・EPS(1株利益)↑
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益)× PER(期待度・人気度)で決まる。2022年の予想EPSは0~10%程度になる。
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EPSに影響を与える外部要因についても見ていく。
・為替→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので為替相場の影響が大きい。今後は円安で推移しそうなので利益は増えそうではある。しかし輸入価格が高騰しており(3/10日経)、この分を価格転嫁できなければ利益はそれほど増えない。大和証券は1ドル130円程度の場合、円安による輸出金額の押し上げ効果よりも、輸入価格の上昇によるマイナス影響の方が大きく、GDPは0.05%ほど押し下げられると試算している。6/10日経

・海外景気→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので海外景気の影響を大きく受ける。2022年はコロナが収束し世界景気が正常化しそうではあるが、インフレ高進(金融引き締め)などにより景気には強い下押し圧力がかかっている(インフレは消費者の購買力を奪い、消費主導の不況を起こす)。

・失業率↑
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益が圧迫され、労働量力不足で成長が頭打ちになりやすい。現在の失業率はコロナ前よりもやや高い水準にある。

・減価償却費や資源価格↓
減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇すると利益が圧迫される。足元では減価償却費は横ばいだが、資源価格は上昇している。

・金融政策↓
金融引き締めで金利が上昇すると企業の利益や資金調達環境は悪化する。日本は金融緩和を続けているが、世界全体で見れば金融引き締め環境にある。
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・PER(期待度、リスク選好度)↑
日経平均の過去のPERは11~17くらいだが、現在のPERは12.92倍とやや低位の水準にある。今後EPSが下がる可能性もあるので、妥当な水準に見える。

投機筋の持ち高
買い残は7500億円で、裁定売り残高は2700億なので、投機筋は日本株が少し上がるとみている。
*一般に、裁定買い残高が3000~6000億円まで減少すると「売られすぎ」、3.5兆~4兆まで増加すると「買われすぎ」とされる。

・個人投資家の流入↑
コロナ禍の「巣ごもり」や「老後2000万円問題」などの影響で株式市場に個人投資家が流入している。米株式市場においては個人の売買シェアがコロナ前の10%から(一時)25%まで高まっている。日経

2021年末の米国の家計(個人)の現預金は2000兆円とコロナ前より500兆円増えている。ゴールドマン・サックスは22年の個人による株式の買い越しが20兆円になると予想している(4/5日経)。ただ、足元で米個人投資家の心理が「異常な弱気」に傾いているので、そこまで買われない可能性もある。ちなみに、この指標が「異常な弱気」を付けた後の6~12ヶ月は平均以上の株価上昇になりやすいとされる。6/1日経

*投資家の強欲と恐怖指数(Greed and Fear Index)は現在「Extreme Fear(極度の恐怖)」となっている。このように市場心理が悲観過ぎるときは、すでに株価にほぼすべての悪材料が織り込まれているので、意外な好材料に株価が反発しやすくなる。6/6東洋経済

・パッシブ運用の膨張↑
パッシブ運用にはストック効果(積み上げ効果)があるので、この運用が増えれば株価は下がりにくくなる。現在、投信やETFでパッシブ運用の比率が高まっており、世界では44%、日本では73%まで高まっている。ただパッシブ運用が増えると流動性が低下し、値動きが激しくなりやすいという問題がある。日経日経

・チャート↑
<10年チャート> 調整気味ではあるが、まだ上昇トレンドを保っている。


■東証グロース指数(旧マザーズ指数)
今後1年の予想レンジ:800~1150の間で推移

東証グロース指数に与える影響が大きい要因順に見ていく。
・金融政策↓
東証グロース指数は中銀総資産との相関が全市場の中で最も高いので、中銀の資産縮小時には真っ先に売られやすい。とはいえ、先にも触れたように中銀が資産を売り始める前に、マザーズ指数はコロナ前の水準まで下げているので、やや売られすぎの感がある。

金利の上昇も小型グロース株には逆風になる。金利が上昇すると将来の成長期待を買われている小型グロース株ほどバリュエーションが低下しやすくなる(詳細は後述)。また小型グロース企業には赤字企業が多く、金利上昇により成長資金を調達しにくくなる。

・需給↓
グロース市場は日銀の買い支えがなく、自社株買いもあまり期待できないため、相場下落時は下げ止まりにくい。

東京グロース市場での海外投資家の売買シェアは約50%を占め、海外投資家は昨年の11月からほぼ一貫して売り越している(ヴェリタス3/53/19日経)。ただそろそろ売り玉が突きそうなので下げ止まりそうでもある。

個人投資家は多数が含み損を抱えているので大きな買いはあまり期待できない。

・EPS(1株利益)成長率
不明。グロース指数を構成する企業群の連結損益合計はおそらくマイナス。今後の見通しも不明(要調査)。

<反転シグナル>
信用評価損益率の急激な悪化は一つの反転シグナルになる。信用評価損益率が急激に悪化して、追い証回避の投げ売りが殺到すると、信用での買い持ちが急減して需給が軽くなる。過去の例では、そのタイミングで海外投資家が買いに転じるパターンが多い。

現在の信用評価損益率は-28%と平均よりかなり低いが、下落の仕方が緩やかなのでセリングクライマックスのような投げ売りはまだ見られない。

2007~2009年の金融危機では、2007年12月に信用評価損益率が-30%を超え、そこから約1年5ヶ月にわたってマイナス幅が30を超えている。この間にマザーズ指数は900台から300近くまで落ちている。当時も今も金融引き締めなど似たような局面であり、このような前例をふまえると、東証グロース指数はあと1年くらい調整が続くかもしれない。ヴェリタス3/5

<マザーズ指数の10年チャート> 緩やかな下降トレンド。底は600くらいになりそう。

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