2024年4月1日月曜日

市場環境

 株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などをみていく。

■EPS成長率
・世界株式の2024年の予想EPS成長率は-5~10%。
・米国株式の2024年の予想EPS成長率は-3~15%。
・中国株式の2024年の予想EPS成長率は0~10%。
・欧州株式の2024年の予想EPS成長率は-5~8%。
・日本株式の2024年の予想EPS成長率は-5~10%。


■経済成長率
・世界の2024年の予想GDP成長率は2.6~3.1%、2025年は3.0~3.2%。
・米国の2024年の予想GDP成長率は1.3~2.1%、2025年は1.7%。
・中国の2024年の予想GDP成長率は4.2~4.7%、2025年は4.1~4.2%。
・ユーロ圏の2024年の予想GDP成長率は0.6~1.3%、2025年は1.3~1.7%。
・日本の2024年の予想GDP成長率は0.9~1.0%、2025年は0.8~1.0%。
・インドの2024年の予想GDP成長率は4.5~6.5、2025年は6.5%。
*数値はIMFとOECDと世界銀行の予想。1/9日経1/30日経2/6日経

世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほど不況感は強まらない可能性もある。
*経済規模を示すGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。

*コロナの影響で2020年の日本のGDPは落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が向上していれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。


■インフレ
・米国の2024年の予想インフレ率は2.2~3.2%。
・欧州の2024年の予想インフレ率は2.2~3.5%。
・日本の2024年の予想インフレ率は1.5~2.5%。
*参照:1/23日経など
*米国のブレーク・イーブン・インフレ率(10年)は2.32%。ブレーク・イーブン・インフレ率とは債券市場の予想物価上昇率で、実質金利を算出するときなどに用いる。

世界中でインフレ率が下がりにくくなっている。インフレ要因とデフレ要因を一通りあげて、今後のインフレ動向を考えていく。

<インフレ要因>
★コロナ特有のもの
・供給基盤が破壊され供給不足が生じている。
・コロナで対面型サービスの人気が落ち、賃金が上昇している。
・コロナが落ち着いてきて需要が増している。
・政府から給付金が支給され需要が増している。
・金融緩和の影響で資産価格や商品価格が上昇している。
・量的緩和の影響で通貨価値が下落している。
→現在、これらの要因はほぼ解消されている。

★コロナ後も続くもの
・人手不足で賃金が上昇している。米国においては求人件数が700万件程度まで減ると賃金上昇率が3%程度まで落ち、FRBの2%物価目標と整合するとされるが、1月の求人件数は886万件とまだ少し多い(3/7日経)。求人件数は下げ渋り始めているので、700万件程度まで減るにはあと1年はくらいかかりそう。

・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。脱炭素シフトにより2030年まで年0.7~1.0%程度の物価押し上げ効果が見込まれている。
*脱炭素シフトが完了すれば再生可能エネルギーは強力なデフレ圧力になる。

・ウクライナや中東地域の戦争によってエネルギーコストが上昇している。

・異常気象や世界人口増、新興国の経済成長、バイオ燃料需要、肥料価格上昇、ウクライナ戦争などにより、食料価格が上昇傾向にある。農作物・肥料価格の先行指標である農業ETFは高値圏で推移している。

・経済の脱グローバル化(グローバル化の再構築)で製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇している。

・世界の生産年齢人口が2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなくなる可能性がある。

・米欧でインフレやAIへの不安などからストライキが頻発している。1/5日経1/5日経


<デフレ要因>
・世界中の中央銀行が強力な金融引き締めをしている。金融引き締めには需要を減らす効果がある。

・経済のデジタルシフトが加速している。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。検索やSNSは無料で、ネット上では価格比較を簡単にできるため売り手は超過収益を得にくくなっている。スマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。複製コストゼロのデジタルソフトやシェアリングサービスの普及などもあり、価格は下がりやすくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がゼロに近いので、競争が起きると価格がゼロに近づく。

・イノベーション(新結合・技術革新)が加速している。今はインターネットやAIにより、情報や人やモノの「新結合」が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。

・産業の「自動化」により、生産コストが低下している。
・世界的に経済成長率が鈍化傾向にある。過去40年で米国の潜在成長率は3%前後から2%前後に低下している。
・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向(収入に占める支出の割合)は低い。
・世界的に少子高齢化が進んでいる。子どもが減って高齢者が増えると総需要が減る。
・人手不足で成長力が低下している。
・金融引き締めなどの影響で資産価格が下落している。

以上をまとめると、賃金(サービス)以外のインフレは落ち着きつつあるので、インフレは徐々に落ち着いていきそう。ただ過去の例では賃金インフレはしぶとく続いているので、米国でインフレ率が2%になるのは2025年頃になりそう。

インフレが落ち着いた後も、脱炭素シフトや人手不足、脱グローバル化などの構造要因は残るので、しばらくは以前のような超低インフレに戻らない可能性が高い。

日本においては、人手不足が悪化していきそうなため、デフレからインフレに転換する可能性がある。加えて、円安や産業構造の変化、訪日外国人の急増、緩和的な金融政策などもあり、インフレが進みやすい環境になっている。インフレが高進した場合、キャピタルフライトが発生し、インフレ・円安スパイラルが止まらなくなる可能性もある。ただ、日本は人口が減っており、少子高齢化社会なので、需要の基調は弱い。インフレが起こるとしても穏やかなものになりそう。

超長期では、エネルギー革命や材料革命、AI・ロボット革命により超デフレ(無料社会)になる可能性がある。


■金利
・米国の政策金利は5.50%で、3ヶ月金利は5.38%、2年金利は4.62%、10年金利は4.20%、30年金利は4.34%になる。
・日本の政策金利は0.30%、2年金利は-0.17%、10年金利は0.72%、30年金利は1.47%になる。

*名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態では、国債を買ったり銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。逆に実質金利がプラスの状態では国債などの「無リスク資産」に資金が集まりやすくなる。現在、米国の実質金利はプラス圏にあり、「無リスク資産」に資金が流れやすくなっている。日本や豪州の実質金利はいまだマイナス圏にある。

*現在の債券は魅力的な水準まで利回りが高まっている。たとえばリスクのほとんどない米2年債は利回りが4.62%もある。その他の質の高い債権にも魅力的な利回りのものが多くなっている。今後利回りがさらに上がる可能性もあるが、急上昇期はすでに終わった可能性が高いので、株式などのリスク資産より、債券に資金が流れやすくなっている。

*投資家は企業が将来生み出すであろう利益から金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益は減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分は多くなり、理論価値が下がりやすくなる。

*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.6%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。

*米10年金利が米2年金利を下回ると、その1年~1年半後に景気後退に陥ることが多い。米国では2022年7月から10年金利が2年金利を下回っており、現在もその状態が続いている。
*米10年金利が米3ヶ月金利を下回ると、その後、比較的すぐに景気後退する傾向がある。2022年10月からこの逆イールドが発生している。
*銀行は短期金利で資金を調達して、長期金利で企業などに貸し出して利ザヤを得る。しかし長短金利が逆転すると逆ザヤになるので融資が減る。その結果、企業の投資も減り景気が後退しやすくなる。

*景気拡大期の「良い長期金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場へのネガティブな影響が大きい。

*景気拡大期終盤に金利が上昇すると、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こる。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。

*利上げ局面で中銀が利上げを停止すると市場は急速に利下げを織り込み始め、株高が続くことが多い。警戒が必要なのはその後になる。金利が高い中での株高は危うい株高となり、なにかのきっかけでショックが起こることが多い。過去を振り返っても、利上げ終了後は1年ほど株が上がり、「サブプライムローン」の破綻などがショックの引き金を引くことが多かった。過去の例では、「○○ショック」は懸念された箇所からではなく、疑いもしなかったところから起こっていることが多い。

・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は4の段階になる。


■債務
・世界の債務はコロナ下で急拡大し過去最高水準のGDP比336%に達している。ただ、コロナ過の経済対策により、家計や企業、金融機関の財務状態はコロナ前よりも健全になっているためデフォルトが急に増える状況ではない。

・銀行の財務状態は比較的良好だが、銀行に比べて規制・監督体制の緩い「シャドーバンク(ノンバンク)」の債務は急拡大している。世界のファンドや年金基金、保険会社などノンバンクの金融資産は21年に239兆ドル(3京6000兆円)と07年比で2.4倍に増え、銀行を大きく上回っている。ノンバンクは信用力の低い企業へ融資することが多く、英調査会社プレキンの予測では、ノンバンクによる企業向け融資(プライベートクレジット)の世界全体の運用資産は2027年末に2兆3000億ドル(345兆円)と年平均10.8%で拡大していく見通し。プライベートクレジットは金融規制の対象外にあるためデフォルトリスクを把握しづらい。金利が高止まりし景気後退に陥ればデフォルト率が7%くらいまで上昇する可能性がある。
*プライベートクレジット事業者は2008年の金融危機後に設立されたところが多いため、デフォルトの影響は未知な部分が多い。

・米金融市場では商業用不動産が大きな”爆弾”になっている。商業用不動産の10年間の価格上昇率は日本が20%なのに対し、米国は50%になっている。米国の商業用不動産向け貸出額は2010年から2023年まで約2倍に膨らんでいる(日本は同期間に3割増)。リモートワークの浸透や金融引き締めによるオフィス需要の低下によりオフィスの空室率は20%に迫っている。金利上昇により商業用不動産向けの融資基準は厳格になるなか、2024年に80兆円規模の償還期限が到来する。そこで借り換えができない場合、物件は市場で売却されるため、市場価格の調整圧力はかなり大きくなる。米欧ではGDPに占める商業用不動産の割合が1~2割に高まっているため、不動産バブルが崩壊すれば米経済は大きく下押しされる。米不動産ファンドは世界中に分散投資しているため、ファンドのリバランスで世界中の商用不動産に売りの連鎖が波及する恐れがある。2/7日経

・金利引き上げの影響は企業が借金を借り換えるタイミングで最も大きくなる。2022年3月のゼロ金利解除から1年4ヶ月で5%超に及んだ今回の急速利上げで2024年は企業の利払い負担が一気に増す。そのタイミングでデフォルトが続出する可能性がある。

・債務の質は劣化しており、米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割超が格付けの最も低いトリプルBになっている。欧州においては高リスク社債への懸念が高まっている。トリプルC以下の国債に対するスプレッド(上乗せ金利)は17%まで高まっている。これは2012年の欧州危機の水準になる。1/16日経

・米国の企業負債のGDP比率は12年には65%前後だったが、足元では80%に迫る水準まで上昇している。借り手の返済能力は落ちており、現在の金利高止まり局面では返済に行き詰まる企業が続出する可能性がある。

・米政府の公的債務のGDP比率は07年の35%から22年には97%まで高まっており、53年には181%まで上昇する見込み。

*金利が経済成長率を下回っている状態では、企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にすることができるので債務が膨らみやすくなる。政府も多少の財政赤字を続けていても債務残高のGDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。

*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構造になっている。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りていない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。財政刺激をしてインフレ率を2%まで上昇させることができれば、実質的な政府債務を年2%減らすことできるので、財政支出はそれほど問題ならなくなる。1/11日経。ただし金利が同程度上がったら問題になる。

*債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くと、どこかで必ず資金の逆回転が起こる。債務拡大ペースはここ10年以上、毎年GDPの成長速度を上回っている。

・中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる。2023年は過去最大の財政赤字(約74兆円、GDP比3%)を計上する見通し。
・国際決済銀行(BIS)によると、22年6月の中国の非金融部門の債務残高はGDP比295%に達し、98年3月末の日本の296%と肩を並べている。

・中国は前例のない投資主導経済を20年にわたって続けている。過去40年間に消費のGDP比は53%から38%へ低下し、消費が投資を下回り続けたことも異例。この投資主導経済の実態はコスト先送りによる需要創造になる。多くの資産が健全資産とはいえず、不良資産が積み上がっている。(一方、米国では労働者に購買力を与え、生活水準を向上させることで需要を創造してきた。過去40年間に米国の消費のGDP比は60%から68%に上昇している。)

・新興国のドル建て債務の増加も著しく、10年前の約2倍(約500兆円)まで増えている。足元ではドル高が続いており実質的な返済負担が増している。一部の国ではデフォルト懸念が高まっており、デフォルトがいったん起きればドル高が一段と進み、デフォルトが連鎖しやすくなる。

・国際金融協会(IIF)によると、新興国の債務残高は22年3月に1京3000兆円とリーマン危機直後の4倍まで増えている。債務破綻の危機に直面する新興国が増えている。

・世界で過剰債務企業が増えている。本業の利益が借金の利払いより少ない”ゾンビ”企業が全上場企業(2万4500社)に占める比率は2021年度に16%になっている。直近ではこうした企業が破綻に追い込まれる事例が相次いでおり、仏アリアンツは23年に世界の企業の倒産が21年比で26%増えると予想している。

・米ムーディーズは今後の世界の社債について、最も悲観的なシナリオだとデフォルト率が14.5%になると予想している。これは1933年の世界大恐慌の最中の15.8%以来の水準になる。リーマン・ショック時のデフォルト率は12.1%になる。

<バブルについて>
バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより生じる現象。現在バブルは発生しているが、その投資主体は民間から政府(中央銀行)にシフトしているので、バブルは破裂しにくい。政府が資産を売却すればバブルは破裂するが、政府債務は実質的に返済不要なので資産を大きく売却する可能性は低い。足元で一部中銀はインフレ対策として資産の売却を始めてはいるが、インフレが落ち着けば売却をやめるので、”中銀バブル”が完全崩壊する可能性は低い。


■金融政策、財政政策
・2023年は世界中の中銀がインフレ対策で金融引き締めを行っていたが、2024年は金融緩和に転じるもよう。米バンク・オブ・アメリカは2024年に世界の中央銀行が年間で152回の利下げに踏み切ると予想している。

・日銀が金融引き締めをしないのは、日本のインフレ率が2%程度と低く、コストプッシュ型の悪いインフレのため。日銀は現在のような需要不足の状態で引き締めをすると景気後退に陥ると考えている。ただ、2023年4~6月期は需要超過に転じている。この状態が続けば金融引き締めに転じる可能性がある。ただ需要超過は大きく進みそうにはないので、引き締めに転じるとしても穏やかなものになりそう。

*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利をあまり引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀は政策金利を1%まで上げると2年程度で債務超過に陥るとされる。FRBは政策金利を3.0~3.8%まで上げると金利収支が「逆ざや」に転じるとされる。ECBも金利引き上げにより財務状態が危機的な水準に陥る可能性が高い。
*MMTは日本が行っている金融・財政政策とは若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。


■政治
・日本の政治は比較的安定しているが、ちぐはぐな政策や政治資金問題で内閣支持率は20%台まで低下している。財政支出も相変わらずの大盤振る舞いで、この調子でいくと近い将来、日本は財政破綻する。
・海外は不安定。ウクライナ戦争により、ロシアと西側の関係は当分冷え込みそう。
・パレスチナではイスラエルの計画通り?戦争が始まった。中東地域はしばらく不安定な状態が続きそう。
・米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に長期にわたり続きそう。
*米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・米国では資本主義の帰結として、格差拡大が続いており、民主主義が機能不全に陥りつつある(2023/10/28日経1/8日経ひふみアカデミー2024年1月)。近々政治的な大混乱(分断)が起こる可能性がある。

・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制を強化しているので、民間の活力がそがれつつある。国外からの投資も、その不透明感から著しく減っている。この調子でいくと中長期でも経済成長が減速していく可能性が高い。中国共産党が一党支配を最優先する限りこの傾向は続き、中国は最終的にロシアのような国になる可能性がある。
・23年の対中国直接投資額は21年の51兆円の1割程度まで落ち込んでいる。2/19日経
・中国経済がかつての日本のようなデフレに陥りつつあるという見方が強まっている。日本は1990年代から不良債権、雇用、設備の3つの過剰に悩まされた。中国も今同じ3つの過剰に悩まされている。当時の日本は欧米市場へのアクセスが確保され、海外に活路を求められた。しかし今の中国は米国と対立し、欧州でも中国製EVを締め出す動きが広がっている。米欧の半導体輸出規制により先端半導体の調達にも支障をきたしており、技術的にも追い詰められつつある。3/7日経産業

・EUは域内で財務格差が広がりつつあるが、コロナ危機やウクライナ戦争などの危機でEU加盟国の結束は強まっており、政治は比較的安定している。
・2024年の米大統領選でトランプ氏が返り咲いた場合、米国外の先進諸国は経済面と政治面で厳しい状態に陥る可能性がある。世界は権威主義的な超大国に支配されるようになり、そこでの最大の敗者は欧州で、不法移民に圧倒され、ロシアに脅かされ、中国の挑戦を受け、経済的にも軍事的にも弱く、政治的にも分裂し、経済的、地政学的な衰退に直面する可能性がある。1/27ヴェリタス


■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はピークアウトはしているが依然高水準にある。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米個人消費の先行指標である12月の消費者信頼感指数は104とそれほど悪くない水準にある。同指数が80を下回ると景気後退のリスクが高まる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は低下傾向で47.8と16ヶ月連続で中立水準を下回っている。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数は52.6と中立水準を上回っている。下降トレンドではあるが下げ止まりつつある。
*ISM指数やPMI指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増えやすくなる。
ユーロ圏のPMIは45.7。好不況の分かれ目である50を21カ月連続で下回っている。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは49.1とほぼ中立な水準。基調としては横ばい傾向。
・世界景気の先行指標である銅価格はピークアウトしているが、高値圏を維持している。
・世界景気の先行指標である半導体指数(SOX指数)は2022年10月頃に底を打ち、大きく反発している。現在、最高値を更新している。
米国の失業率は低位で推移しており現在3.9%。ほぼ「完全雇用」の水準(3.5%)にある。
*米国では失業率が前年同月と比べて0.25%上がると景気後退に陥りやすくなる。
*失業率の3カ月平均が、過去12カ月の最低値から0.5ポイント上昇した時に景気後退が始まりやすい。2023年の失業率の最低値は3.4%で2023年の後半に3ヶ月平均が一時3.9%に近づいている。
*米失業率が「完全雇用」の水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。
・米景気の先行指標であるダウ輸送株ラッセル2000はそこそこ高値圏で推移している。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りはピークアウトしつつあるようにみえる。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るとされる。現在は3つ起きている。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照


■その他の株式シグナル
米個人投資家の心理は株価の先行指標になる。個人投資家の心理は株式市場の「逆指標」になるとされ、「悲観」の場合は大底、「楽観」の場合は天井を示唆することが多い。この指標が「異常な弱気」を付けた後の6~12ヶ月は平均以上の株価上昇になりやすい。現在は「楽観(強気)」の水準。

ブルベア指数も米個人投資家の心理を示し、株価の先行指標になる。現在は+27%と「強気」の水準。

投資家の強欲と恐怖指数も株価の先行指標になる。この指標が「Extreme Fear(極度の恐怖)」となっている場合は、すでに株価にほぼすべての悪材料が織り込まれていることが多く、株価は好材料に反発しやすい(東洋経済)。現在は71で「Greed(貪欲)」の水準。

・米機関投資家の株式持ち高比率を示すNAAIM Exposure Indexも先行指標になる。この値が80を超えると過度の楽観、20を下回ると過度の悲観になる。現在は103と過度の楽観になる。

米VIX指数(変動率指数、別名「恐怖指数」)も株価の先行指標になる。この指標が低位にある場合は「楽観」を意味し、株価が上昇しやすくなる。しかし、低位の状態が続くと投機的売買が盛んになり、その後株価が急落することが多い。現在のVIX指数は13.1と低位な水準にある。

・1871年以降の米国の平均的な景気後退期間は16.7ヶ月になる。株式は景気に6ヶ月先行するので、景気後退が始まって10ヶ月くらいたった頃が仕込み時になる。

・景気後退入りすると最初の数ヶ月間に株価が大きく下落する傾向がある。景気後退入りして最初の4ヶ月間のどこかで株式を買った場合、その後6ヶ月間のリターンはマイナスに終わることが多い。景気後退入りから5~14ヶ月の間に株式を買った場合は、その後6ヶ月の投資リターンはプラスになりやすい。


■その他の指標
・日経平均の騰落レシオは125と過熱の水準。
・日本株の信用評価損益率は-2.55%と“天井”に近い水準。
・先進国の株価チャートでは、軒並み最高値を突破しており、基調は強い。新興国でもインドSENSEXやブラジルボベスパが最高値を更新している。

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