2024年7月1日月曜日

4月~6月の売買

 ■6月
・プラスアルファ・コンサルティング 買い増し
売られすぎと思ったから。来期、再来期の業績を考慮すると現在のPER24倍には割安感があった。PAC社にはM&Aの失敗など問題点がいくつかあるが、成長市場であるタレントマネジメント市場の分析領域では競合らしい競合が見当たらない感じで、高水準の利益率を保てそうだと思った。

今回の株価の下落はファンダメンタルズより、センチメント(心理(地合い))で売られているように見えた。もしそうだとしたらその局面は買い場になる。

チャートが底打ちしそうだったから。週足チャートでは底値圏で横並びのミニ十字線が5本出ている。MACDはゴールデンクロスを形成。月足チャートでも十字線が出ている(6月21日時点)。ボリンジャーバンドでは-2σを2ヶ月連続で下回っているので、売られすぎの感がある。6月の出来高は減少しており、値幅が狭くなっているので、売り枯れ感もある。
*ボリンジャーバンドの±2σ内には株価の95%がおさまるとされる。このバンドの外に出た場合は「行き過ぎ」とされ、反動が出やすくなる。
*短期チャートよりも長期チャートの方が信頼性が高くなる。

<3年チャート(週足)>

<10年チャート(月足)>

保有株

保有比率の高い順に見ていく。

■プラスアルファ・コンサルティング
基本シナリオ:「タレントパレット」事業を軸に2030年に利益2.5~4.5倍

2Q決算は予想よりだいぶよかった。少し安堵した。しかし株価は上場来安値を更新してしまった(笑)。下落の主因はグロース市場の地合いの悪化になりそうだが、M&A失敗の影響もありそう。PAC社の株価は1Q決算あたりまではグロース指数を上回っていたが、1Q決算でM&Aの失敗が露呈し始めたあたりからグロース指数を下回っている。
*PAC社はプライム市場に上場しているが、株価はグロース指数と連動している。

<PAC社株価とグロース指数の比較チャート>


前回のブログで、M&Aをしたグローアップ社の今期業績は「経営戦略の問題によりゼロ成長を予想する」と書いているが、今期の売上高は微増で、利益は大幅なマイナス成長に陥りそう。2Q単体では利益がもうほとんど出ていない。この調子でいくと近い将来減損になる可能性もある。

経営戦略のどこに問題があったのか。それは前回指摘したとおり、タレントマネジメントの失敗になりそう。決算説明でPAC社は今回の敗因を「2025年卒の採用プランの出だしで遅れてしまったことと、リード(見込み顧客)獲得の手法で、あまり有効でない、確度の低いリードを集めてしまったこと」としており、見当違いなターゲットを攻めていることがわかる。

5/28日経によると、学生向けダイレクトリクルーティング市場で確度の高いリードは「知名度の低い優良中小企業」になりそうだが、PAC社は「学生から社会人までのデータプラットフォーム構想」に沿って、大企業中心の「タレントパレット」の顧客に集中的に営業をかけたのかもしれない。

もしそうだとしたら、これはこれで悪くはないと思う。自社のハイパフォーマーと似た属性を持つ学生をスカウトするという新たな需要を掘り起こせるかもしれないから。しかしうまくいかなかった(多分)。もし創業社長がいたら、こういった発想も取り入れた精度の高い経営戦略を立てられたのではないかと思う。そう思うと残念。

PAC社は今回の失敗を糧にして、今後は質の高いM&Aを手がけていくとは思うが、「経営者(後継者)の選定」という最も重要なタレントマネジメントを失敗しているので、経営陣への信頼はだいぶ低下してしまった。


PAC社は6月に1件M&Aをした。この会社は元同僚が設立した会社であり、すでに人事戦略系のシンクタンクで協業しているので、問題なく順調に運営していけそう。今回のような知見を強化するM&Aは、高度なコンサルティングや戦略的なシステム構築につながるので、好感を持てる。


ヤフー掲示板のPAC社スレッドに「タレントマネジメント市場で競争が激化している」とあった。確かにこの市場にはスマートHRやビジョナルなどが参入してきて、それらの会社の勢力が急拡大しているが、それらの会社が提供するツールは人事DXを主としているので、分析機能に強みのある「タレントパレット」とは棲み分けができそう。「タレントパレット」は4月以降、値上げに動いているが、これはここらへんへの自信の表れではないかと思う。

*前回のブログで「タレントパレット」の値上げは「便乗値上げ」というニュアンスで書いているが、PAC社の値上げ戦略を見ると、各ツールによって値上げ幅、もしくは値下げ幅を調整している感じで、付加価値に見合ったプライシングをしているもよう。懸念していた値上げによる競争力低下という問題は生じなさそう。

とはいえ、PAC社は今期から小規模な事業者向けに機能を絞った簡易版「タレントパレット」の提供を始める。この領域はレッドオーシャン化しているので、やや厳しい展開になりそう。

大企業向けの「タレントパレット」導入ペースが若干落ちているのも気になる。ただこれも原因は競争激化というより、「人的資本経営ブーム」がいったん落ち着いたことによる影響が大きそう。「人的資本経営」は息の長いテーマになりそうなので、今後はぼちぼちなペースで導入が進んでいくのではないかと思う。

6/27日経に「「人的資本経営」企業に保険料5%割引」という記事があった。一部の大手保険会社は人的資本経営に関する国際認証「ISO30414」を取得した会社に対し、契約した業務災害補償保険の保険料を5%割り引くという。対象になるのは主に中小企業になるようだが、「人的資本経営」は業務以外でもメリットが出てきたので、普及は着実に進んでいきそう。


ここまでいくつか問題点を挙げてきたが、2Q決算を全体的に見ると、わりかし順調に見える。「タレントパレット」の新機能の開発も順調に進んでいるようで、この開発サイクルが高速で回転している限りは優位性を保てそう。今期は上方修正の見込みはほぼなくなってしまったが、大幅な下方修正も避けられるのではないかと思う。


学生版「タレントパレット」の「ヨリソル」事業で新規導入が増えてきた。2Qは14件の増加になる。

2019年に始まった「GIGAスクール構想」は、2024年から「セカンドGIGA」に移り、本格的な教育DXが始まりそうな気配になってきた(4/22日経4/17日経)。すでに全公立校に導入予定の教育基盤プラットフォーム「校務支援システム」の試験導入が始まっており、「ヨリソル」もその普及に合わせて普及していきそう。4月には「ヨリソル」が経産省が公募している「働き方改革支援補助金2024」の対象事業に認定されたようなので(4月22日IR)、教師向けのタレントマネジメントでも伸びていきそう。

今年、デジタル教育の拠点となる高校「DXハイスクール」が全国に1000校(公立が7割超)誕生する(4/16日経)。DX人材を育成するには、まず生徒自らがデータドリブン(データ駆動)の有用性を実感する必要もありそうなので、このようなところでも「ヨリソル」の導入が進みそう。

5/7日経に「教室に同年齢の生徒を集めて同じ内容を教える。工業化と近代化を進めるにはこのような画一的な人材を育てる教育モデルが都合よかった。しかし、技術革新が経済成長を左右するデジタル社会では、多様な人びとの個性と力を引き出す教育が求められる。一斉型から個別最適型への教育の転換が必須」とあった。これは確かにその通りで、個別最適型の教育には「ヨリソル」のようなシステムが必須になるので、その意味でも「ヨリソル」は普及していきそう。英国の一部の学校ではすでに「ヨリソル」のようなシステムを導入していて、データを基に個別最適型の指導をして、顕著な成果を上げているという。「ヨリソル」が時代の波に乗ることを期待したい。

5/6日経に「市場調査会社グローバルインフォメーションは教育関連の世界市場が2030年に4千億ドル(約61兆円)と2022年の3.2倍になるとみる」とある。5/9日経には「デジタル教科書は世界で急速に広がっており、デジタル教育出版市場が35年には22年比で6.6倍の885億ドル(約13兆円)になると予想されている」とある。これらを総合すると、教育DX市場は今後10年で5倍くらい成長しそう。「ヨリソル」が今後10年でどこまで成長できるか注目していきたい。


6/5日経に「生成AIの登場でコンサル業界の存在意義が問われ始めている」「2030年の国内市場は約2兆1000億円と2022年から1割の増加にとどまる」とあった。PAC社はコンサル会社でもあるので、この点を少し心配したが、PAC社がコンサルするのはDXやデータドリブンに関するところであり、これらの領域では高成長が続きそうなので、この点はあまり問題なさそう。


チャートは微妙な感じ。「4~6月の売買」のところで触れたように、底打ちの兆しはある。しかし上場来安値を更新しているので需給は悪い。市場で株式を買った株主はほぼ全員含み損を抱えているので、これらがすべてが戻り売り圧力になるといっても過言ではない。加えて、信用買い残が過去最高水準まで積み上がっているので、上値は相当重くなりそう。

PAC社株はグロース指数と連動しているので、グロース指数の値動きも重要になる。グロース指数も底打ちの兆しはあるが、最安値を更新しているので需給は悪い。中期では下降トレンドになっている。グロース指数の変動要因はまだよくわかっていないが、EPSと金利が主要因だとしたら、下降トレンドから抜け出すのは難しいかもしれない。

グロース企業は内需ビジネスが多いので、円安&インフレはコストアップ要因になり、業績はダメージを受ける。金利に関しては、グロース株は金利と逆相関の関係になりやすいので、上昇基調にある日本金利はネックになる。ただ米金利の方が日本金利よりも強い逆相関関係がある場合は、米金利は下落基調なのでグロース指数にはプラスに作用する。今後グロース指数がどのようなトレンドをたどるのかよくわからないが、今後の観察でその変動要因を見極めていきたい。・・もしかするとグロース指数の値動きの主要因はセンチメントかもしれない。(詳細は「マクロ系金融指標」で)


現在の妥当な株価はどのくらいか。この会社の決算期は9月なので、もうそろそろ来期の業績を織り込み始めてもよさそう。来期の会社予想業績は売上高167億円(前期比+21%)、営業利益64.5億円(+35%)、純利益43億円(+33%)になる。若干下ブレしそうだが、とりあえず、この数値をベースに計算してみる。
*純利益額は当ブログの推測

今回のM&Aのミスにより、経営陣への信頼が落ちて、株主資本コスト(5/11日経)が上昇したので、その分、予想PERは5倍くらい下がる。予想PERを30~35倍として計算すると、妥当な時価総額は1290~1505億円、株価は3000~3550円くらいになる。このときのPSRは7.7~9倍になる。

今後3年の予想売上高成長率は年13~23%程度、予想利益成長率は年20~30%程度。2030年の予想売上高は現在の2~2.5倍くらい、予想純利益は現在の2.5~4.5倍くらい。



■イントラスト
基本シナリオ:家賃債務保証と医療費用保証で2027年3月期に売上高150億円、営業利益30億円

予想より若干上振れした良好な本決算だった。
今期の予想売上高は102億円(前期比+14%)、営業利益は23億円(+12%)、純利益は13億円(+11%)、営業利益率は22%になる。勢いは鈍化しているが悪くない数字。

中期計画第3弾が出た。2027年3月期の売上予想は150億円、営業利益30億円、営業利益率は20%になる。これはブログで予想していた数字と一緒。配当性向は現在の30~40%から40~60%に上昇する予定。成熟感は出てきたが、会社の成長志向は健在で、新規事業やM&Aなども着実に手がけていきそうなので悪い印象はない。

なお、2027年3月期の売上高の内訳は、家賃保証が131.5億円、医療費用保障・介護費用補償が13億円、養育費事業・その他新規事業が5.5億円になる。医療費用保証事業の売上が少し物足りなくも感じるが、足元で投資を拡大させており、社長は「今期は契約数が大幅に増加しそう」と言っているので、予想をいくらか超えてくることもありそう。期待したい。

2023年に親会社から買い取った(買い取らされた?)家賃保証会社のプレミアライフは下期に黒字転換したもよう。予想通りの展開。社長ならたやすいだろうなと思った。

6月に家賃保証や事業用物件の保証事業を手がけるラクーンレントを買収する協議に入った(IR)。ラクーンレントは家賃保証で独自性のある商材を開発しており、事業用物件の保証事業は10年以上やっている。イントラストは事業用保証事業への本格参入を模索しており、今回の買収をその足がかりにするもよう。ラクーンレントの買収額はまだ決まっていないようだが、過去3年の平均売上高4.4億円、平均営業利益-1千万円、成長率0%、資産・負債は不明、今後の相乗効果などから見積もると、だいたい3〜4億円くらいになるのではないかと思う。


前回のブログで、単身高齢者向けの家賃債務保証にイントラストが参入したらおもしろくなりそうだと書いていたが、すでに参入していたことがわかった。イントラストは地銀が運営する家賃債務保証のシステム構築支援やノウハウの提供などを行っているという(4/8IR4/10日経)。これはさすがという感じ。単身高齢者は、この事業においてはリスクの高い顧客になる。システム支援という裏方に回ることでそのリスクを回避できる。インストラストは今回培ったノウハウを『家賃保証システム 地銀モデル』として全国の地方銀行に販売していく予定という。

6/11日経に「今後単身高齢者が急増していく」とあった。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の単身高齢者数は2050年に1084万人と、20年時点の約1.5倍になるという。病院や介護施設に入る際には身元保証人が求められる。死去したあとは遺体の引き取りや家財処分などの死後対応が必要になる。身寄りがなければこのようなサービスにアクセスできないリスクが高まる。

すでに身元保証をビジネスとする民間の身元保証事業者が全国に400くらい誕生しているという。しかしそこには信頼性が乏しいという問題がある。例えば、本人死亡後に契約履行についてチェックする人がいないという問題がある。また契約内容が複雑で料金が高額になることもあるという。ここにイントラストが参入する余地がある。イントラストなら簡潔明瞭で、信頼性の高いサービスを提供できるのではないかと思う。この分野への参入も少し期待したい。


養育費の不払いを防ぐ仕組みなどを取り入れた民法改正が5月に成立した。この法改正により、離婚時の取り決めがなくても親権の有無にかかわらず最低限の養育費を請求できるようになるという(5/17日経)。イントラストの養育費事業に追い風が吹いてきた。ただ、この「法定養育費制度」の創設は2025~26年頃になりそう(6/15日経)。追い風が吹くまでもう少し時間がかかりそう。

6月発行のイントラスト株主通信に「養育費保証については、保険会社との協業によって募集と加入に関する課題を解消。収益性に乏しかった従来の商品から大きくバージョンアップした商品をお届けできる見通しが立ちました」とある。進捗は順調なもよう。

今年の株主通信から紙版がなくなりウェブ版だけになった。「地球環境等に配慮する観点」からそのようにしたという。しかしその「お知らせ」が入っていた封書にクオカードも一緒に入っていた。これも「地球環境に配慮」してやめたらいいのに、その分を配当に回したらいいのに、と思った。


今後3年の予想売上高成長率と利益成長率は共に年10~15%程度。現在の妥当だと思う時価総額は230億円(株価1000円、PER18倍、PSR2.7倍)。2030年の予想売上・利益は現在の2倍くらい。


■今後の計画
しばらく静観する予定だったが、チャンスが来たと思ったので動いてしまった。でもこういう感じも悪くなさそう。というか、こういうスタンスこそが長期投資にはベストではないかと思った。今後もしばらく「基本静観、チャンスが来たら動く」というスタンスでいこうと思う。

現在、米VIX指数が最低水準で推移しているので、そろそろ市場が大荒れしそう。市場が荒れて米VIXが40超、日経平均の騰落レシオが65以下になったら株式などを買っていく。できればドル建て資産を買っていきたい。米景気が後退局面に入った場合は、後退突入後、5〜10ヶ月くらいたったころに買っていく。

有望株

よく調べないで買った株は失敗することが多いので、これからはネチネチと調べてから買うことにする。

<10倍株候補の条件>
 ・上場5年以内の会社
 ・社長が若い
 ・オーナー企業
 ・時価総額が300億円以下
 ・長期的なテーマに合っている
 ・急成長している
 ・(IPOから時間が経過し、株価が右肩下がりになっているチャートが狙い目)

<優良企業の条件>
 ・参入障壁が高い
 ・ストック型ビジネスを手がける
 ・時流に乗っている(潜在市場が大きい)
 →業績が落ちにくく、利益成長を続けやすいビジネスモデル
(例)エムスリーやリクルートなど


■有望株
*今後は円安が進みそうなので、円安耐性があるところを優先的に見ていく。

・米市場に上場している「銅ETF」「銀ETF」「ウランETF」
これらは株ではないが、銅、銀、ウランは有望。価格の変動がほぼ需給だけで決まるので、わかりやすいのもいい。銅、銀、ウランは「グリーン革命」で需要は右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などで供給不足に陥りつつある。


・米アルファベット
アルファベットは巨大なため規制リスクは高いが、AIやAI半導体(5/15ロイター)、データ、広告、創薬(5/9日経)、自動運転などの分野でトップクラスにいるので、今後も大きな成長が期待できる。

AI分野では競争が激化しているが、質の高いAIを作るには、高度人材や膨大なデータ、潤沢な資金が必要になる。グーグルはそれらをすべて持っている。AI用の半導体を自社開発できるのも強み。グーグルは最高性能のAIで半導体を設計しているので、エヌヴィディアの半導体を超えるものを作れる可能性がある。

「クッキー規制」もグーグルの追い風になる。世界のデジタル広告市場は今後も拡大していく見込みで、グーグル自体は「クッキー規制」の悪影響をほとんど受けないので、利益の取り分が上がる可能性がある。6/15ヴェリタス6/15日経


・米アマゾン
ECやAI、クラウドだけでなく、革新的な店舗運営システムや物流システム、デジタルコンテンツ販売でもまだまだ成長しそう。身近な存在でわかりやすいのもいい。


・独SAP
大企業向けのERPを提供する会社。生成AI導入により、クラウドERP事業の成長はもちろんのこと、ビジネス系ソフトウェアのシェア拡大も期待できる。


・瑞Spotify
音楽配信市場はレッドオーシャンで差異化を図りづらそうにみえるが、音楽配信ソフトをいろいろ使ってみると、Spotifyは差異化ができていて、一強になりそうだと思った。音楽・音声配信市場は巨大なのでまだまだ成長しそう。


・メルカドリブレ
ナスダックに上場している南米最大のeコマース企業。ビジネスモデルはAmazonのマーケットプレイスに近い。もう一つ手がける事業がフィンテック事業。南米は欧米などと異なり、銀行口座やクレジットカードを保有してない利用者が多い。ラテンアメリカ市場ではオンラインで販売した際に支払処理をどのように行うかが大きな問題となっている。メルカドリブレはそれぞれの国情に併せてQRコードなどを活用した様々な決済サービスを提供している。ラテンアメリカはインターネットの普及自体が遅れているため先進国と比べて出遅れ感があり、その分成長余地が残されている。問題はカントリーリスクになる。サービスを提供している18カ国のうち、アルゼンチン、ベネズエラ、ニカラグアのリスク評価は最低ランクで、最大の売上を稼ぐブラジルも下から3番目の評価になる。ビジネス自体は順調であっても為替レートが大幅に低下すればドル建ての業績は悪化してしまう。


・SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンド 手数料0.23%
 三菱UFJ-eMAXIS Slim 全世界株式 手数料0.05%
 三菱UFJ-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)手数料0.09%
つみたてNISAで使えそうな投信。インベスコQQQは手数料が他よりも少し高いが、成長力を加味すれば大した問題ではなさそう。つみたてNISAは米株が暴落したときに始める予定。


・マニーやナカニシ
医療機器で世界的に高い競争力がある。海外売上高比率が8割を超えているので円安耐性がある。


・リクルート
子会社米Indeedの成長期待が高い。ビジネスモデルが強く、これも円安耐性がある。

・エムスリー
医療DXの潜在市場は大きい。海外売上高比率が近い将来50%以上になる計画。

・エス・エム・エス
介護DXの潜在市場も大きい。ただ稼ぎ頭の医療系求人プラットフォーム事業では競争激化の兆しがある。

・国内のエネルギー関連株
日本はエネルギー自給率が13%程度であり、今後は円安基調になるので、エネルギーの自給率を上げる必要がある。今後は化石燃料を使わない国内のエネルギー産業が急成長していく可能性がある。国の大規模なバックアップも期待できる。


・メック
電子基板の表面処理剤を製造する会社。CPUに使う半導体パッケージ基板用の高機能品は世界シェアほぼ100%。研究開発投資に積極的で価格競争力は強く、営業利益率は20%を超える。近年注力しているのが高周波の電気信号のロスを抑える技術。5Gや次世代自動車向けの需要拡大が期待できる。


・大阪有機化学工業
半導体の回路を描くための「フォトレジスト(感光材)」向け材料の世界大手。高機能フォトレジスト用のアクリル酸エステルで世界首位。試作段階で1キログラムから請け負うほど多品種少量の生産体制を敷く。近年、開発にリソースを投じるのがEUV(極端紫外線)露光装置向け。回路線幅2ナノ用の半導体製造に使われるため高い技術力が必要になる。今期の減益予想は市況回復を見越した積極的な設備投資に伴い、減価償却の負担が重くなっているため。24年後半には半導体市況は復調し、中長期では市場拡大が続く見込みで、生産体制を整備して旺盛な需要を取り込んでいく方針。6/1ヴェリタス


・アサヒホールディングス
貴金属リサイクルの大手。貴金属の価格は高騰しており、貴金属のリサイクルはメガトレンドになっている。アサヒは全国に回収ルートを持つのが強みで、新工場稼働により業績の拡大が期待できる。インフレ耐性があり、配当が4%を超えるのもいい。

マクロ系金融指標

市場の仕組みを理解しやすい順番でみていく。

■米10年金利
今後1年の予想レンジ:2.5%~4.5%の間で推移

米長期金利に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。

・経済成長率+インフレ率→
長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になる。2024年の予想米GDP成長率は+1.3~2.1%%、予想インフレ率は+2.2~3.2%になる。


・金融政策↓
FRBはインフレが落ち着いてきたとして政策金利の引き上げをやめた。2024年に1回の利下げを実施する予定で、それを実施した場合、2024年末の政策金利は5.0~5.25%になる。2025年は利下げを3~4回実施する予定。

*政策金利が中立金利(2.6%)を超えると、景気(長期金利)には下押し圧力がかかる。

FRBは国債などの保有資産を年間7200億ドル(約108兆円)のペースで売却している。そのペースで資産を売却していくと、長期金利には年0.5%程度の上昇圧力がかかる。ただ金利引き下げとは矛盾した政策になるので、FRBは量的引き締めを減速していく方針。


・財政悪化による国債増発↑
米政府の財政はコロナ禍以降、大きく悪化しており、今後も悪化し続ける可能性が高いため(6/2日経)、米財務省は米国債の発行を段階的に増やすとしている。金利が高止まりした状態では公的債務の利払い費も増加し、財政はさらに悪化しやすくなる。米国債市場の需給は悪循環に陥り始めている。


・米国債の人気上昇↑
米長期金利は海外の主要先進国の長期金利よりも高いので、海外勢から買われやすい。2022年の買越額は約100兆円と過去最大になっている。しかし足元では米国外の先進国の金利も上がっているので、海外勢は米国債の購入を減らし、自国債を買い始めている。

米国債を世界で最も保有しているのは日本になるが、米国債利回りから為替ヘッジコストを差し引くと利回りがなくなってしまうので、一部の金融機関は米国債の購入をやめ、日本国債を買い始めている。

米国債を日本の次に多く保有する中国は、米国との対立や人民元安阻止のために米国債を着々と売却している(6/2日経)。米国と緊張関係にあるロシアなども米国債を売却している。5/17日経


・米企業の社債発行増↑
米企業の社債発行が急増している。米国債より投資妙味の大きい高格付け社債の発行増加により、長期金利に上昇圧力がかかっている。


・資金需要の低下、金余り↓
第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要がそれほど多くない。少子高齢化の影響で借り入れ需要も減っている。

金余りで運用難に陥っている米金融機関や米企業は多く、そういうところがこぞって米国債を買っている。バフェットさんも買っている。


・リスクオン・リスクオフ↑
米景気は比較的堅調で、もうじき金利引き下げをする予定なので、リスクオン気味。


・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みなどで潜在成長率は低下傾向にある。


・チャート→
<10年チャート> 天井を打ったように見えるが、長期線同士がゴールデンクロスを形成しそうなので、大きくは下がりにくそう。

・まとめ
米長期金利は景気鈍化により、いったん下がりそうだが、需給が著しく悪いので大きくは下がりにくそう。米景気がよっぽど悪化しない限りは3%以上の水準を保ちそう。



■WTI原油
今後1年の予想レンジ:60ドル~110ドルの間で推移

原油価格に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。

・需要↑
原油の需要は世界経済成長率にほぼ連動する。2024年の予想世界GDP成長率は2.8%になる。

長期では、再生可能エネルギーの増加や技術革新、学校・職場のリモート化などにより石油需要が減少していく可能性がある。仏トタルや英BP、国際エネルギー機関(IEA)は2030年頃に石油需要がピークアウトすると予想している。6/13日経4/11日経

一方で、世界人口増やAIの電力消費、再生エネルギー開発の滞りなどにより、石油需要が増えるという見方もある。米エネルギー情報局(EIA)は2050年の石油需要が2020年比で4割増になると予想している。英シェブロンは2023年から45年にかけて石油需要は約15%増加すると予想している。


・供給↓
OPECプラスは1バレル90ドル前後の水準を維持することを目的に減産に動いていたが、10月から減産を段階的に縮小すると決めた。米国、ブラジル、ガイアナは2023年に年間産油量記録を更新しており、今年も更新する見込み。

脱炭素の潮流を受けて油田開発投資は大きく落ち込んでいたが、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにエネルギー不足の懸念が生じ、化石燃料の開発投資が急増している。長期の供給も問題なさそう。


・産油国で不測の事態が起こる↑
中東では石油施設へのテロ攻撃が度々起きており、パレスチナでは紛争が始まっている。供給網の混乱などにより今後供給が減る可能性がある。ゴールドマンサックスは「ホルムズ海峡で石油の流れが遮断された場合、原油価格は1カ月で20%上昇する」と予想している(4/20日経)。ただパレスチナでは停戦の兆しが見え始めている。

*石油(エネルギー)は人間にとって食料と同じ生活必需品のため、わずかでも不足が生じると価格が跳ね上がりやすい。


・産油国、産油企業、再生可能エネルギーの採算ライン→
サウジアラビアで財政均衡に必要な原油価格の水準は1バレル85ドル、ロシアでは80ドル、アラブ首長国連邦(UAE)は75ドル、米産油企業の採算ラインは50~80ドル、再生可能エネルギーは30~80ドルになる。原油価格はこの範囲内に収まりやすい。


・リスクオン、オフ↑
リスクオン気味。
*原油は株式と同じリスク資産なので、リスクオフ時には売られやすい。


・インフレ対策↑
原油などの商品はインフレヘッジ手段になる。足元ではインフレ対策としても買われている。


・為替↓
原油はドル建てのため、ドル高になると割高感が出て、原油価格に下押し圧力がかかる。足元ではドル高基調。


・チャート→
<10年チャート> チャート的には落ち着いた感じ。60ドルを底にボックス圏で推移しそう。

・まとめ
やや供給過剰気味。当面は65~85ドルの間で推移しそう。



■ドル円
今後1年の予想レンジ:135円~170円の間で推移

為替に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。

・日米金利差↑ (↑は円安方向、↓は円高方向)
<短期金利>
日米の短期金利は現在約5%開いている。3月に日銀は利上げに動いたが、利上げ幅はわずか0.1%ため、金利差はほとんど縮まっていない。日本は状況的に金利を大きく上げづらく、米景気は比較的堅調なため、今後もしばらく金利差が大きく縮まる見込みはない。

金利差拡大によりキャリー取引が増えている。
*キャリー取引とは金利差を狙った取引。短期金利差が大きくなると低利通貨を売り、高利通貨を買って、金利差で収益を得る取引が盛んになる。
*世界で金利が最も低い水準にある日本の円は、キャリー取引の調達通貨として選ばれやすい。対ドル以外でも売られやすくなっている。
*市場が荒れ始めると金利収入以上の為替差損を抱えるリスクが増すので、手仕舞われやすくなる。

<長期金利>
現在、米長期金利と日本の長期金利の差は3%くらいある。長期金利差もしばらくこのくらいの水準が続きそう。


・国内投資家の対外証券投資↑
日本の機関投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているので、高い運用利回りが見込める海外債権や株式などを買っている。個人投資家は成長力の高い海外株を買っている。ここ数年は両者合わせて年10兆円超の買い越しが続いている。

新NISAが始まり、今年はこの新NISA分だけで13兆円程度の買い越しになりそう。個人の金融資産は約2200兆円あり(6/27日経)、新NISAでは毎月定額を投資するケースが多いので、個人投資家の大規模な海外株買いは当面続く可能性が高い。6/18日経6/26日経

*キャピタルフライト
日本は財政問題や経済低迷、インフレなどの問題を抱えているため、日本人は円資産を海外資産にシフトし始めている。国内の家計の預貯金は約1100兆円あり、その1%(11兆円)でも海外に向かえば円相場へのインパクトは大きくなる。2024年に始まった新NISAでキャピタルフライトが加速しつつある。


・日米の経済の強さの違い↑
資金は経済の強い国へ流れ、その国の株式や債権、不動産などが買われる。デジタル革命を主導する米経済は相対的に強いのでドル資産が買われやすい。

*日本の潜在成長率は0.5%程度、米国の潜在成長率は2%程度になる。6/15日経


・日本の貿易収支↑
円安や資源高、生産の海外移転、産業競争力の低下などにより、貿易収支は悪化傾向にある。(貿易収支を含む)経常収支は年20兆円程度の黒字の水準にはあるが、そのうち半分くらいは海外での再投資や内部保留などにあてられるので、稼いだ外貨の半分くらいしか日本に戻らなくなっている。5/11日経

*訪日客の増加でサービス収支の旅行収支は黒字になっているが、海外テック企業が提供するクラウドサービスなどへの支払いによる「デジタル赤字」がそれを帳消しにしている。「デジタル赤字」は今後も右肩上がりで増えていくもよう。


・米国の貿易収支↑
米国は経済が強いので貿易収支は改善傾向にある。



・日銀の財務状態の悪化↑
日本の長期金利が1%まで上昇した場合、日銀は債務超過に陥る。日銀は国債について満期保有を前提とした会計処理を採用しており、債務超過になっても日銀は自ら通貨を発行できるので資金繰りに行き詰まることはないが、円に対する信用は落ちる。現在、日本の長期金利は1%近くまで上昇しており、今後さらに上昇する可能性が高い。
*日銀は長期金利が1%に上昇した場合、日銀が保有する国債に28兆円の含み損が生じ、5%に上昇した場合は108兆円の含み損が生じると試算している。
*ゴールドマン・サックスは「2027年に政策金利が1.25~1.5%に到達するまで利上げサイクルが長期間続き、長期金利が26年末に2%に達する」と予想している。5/23日経
*日銀は民間金融機関が日銀に預けている当座預金への利息を支払っている。利上げが進めば利息負担がかさみ、その負担が日銀が保有する債券の収益を上回ると、赤字に転じる可能性が出てくる。試算によると政策金利が0.6%まで引き上げられると経常赤字に転じる。2.8%まで上がれば債務超過に陥る可能性がある。5/30日経


・日本政府の過剰債務↑
日本政府の債務は返済不可能な水準まで膨れ上がっており、2030年頃には臨界点に達し円の暴落が起きる可能性がある。日本は自然災害が多く、突然の大地震が起こったときに多額の国債発行が必要になり、臨界点が早まる可能性もある。米国政府の債務も返済不可能な水準まで積み上がっているが経済が強く、ドルは基軸通貨なのでドルの暴落は起きにくい。


・リスクオン、オフ↑
リスクオン気味。


・日本企業の対外直接投資↑
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業は海外での直接投資を増やしている。ここ数年は年12~22兆円の買い越しが続いている。


・海外投資家の国内証券投資↓
円調達時の上乗せ金利(ベーシススワップ)が低く、日本国債の金利は安定しているため、ここ数年、海外投資家は日本国債を年10兆円程度のペースで買い越している。

*海外勢は2023年半ば頃から日本株を大きく買い越しているが、これは先物の円売りを合わせて投資していることが多いので、円高要因にはなりにくい。


・投機筋の持ち高↑(「円 投機的ネットポジション」で検索)
投機筋は円を大きく売り越している。円が下落するとみている。
*ドルを売り持ちした場合はスワップポイント(金利差分)を支払わなければならないので、ドル売りが長く続くことは少ない。
*スワップポイントはドル買い時よりもドル売り時の方が高く設定される傾向がある。例えば、日米短期金利差が約3%あった2022年9月にドルを1万ドル買った場合、1日の金利差収入は92円くらいになるが、ドル売った場合は金利差損失が1日159円くらいになる。

*投機筋の円売りポジションは過去最高水準まで積み上がっている。なんらかのショックが起こり、すべての円売り持ち高が解消された場合、138円まで円高がすすむ可能性がある。6/21日経


・個人投資家の売買動向
日本の個人投資家によるFX取引が為替市場の約2割を占めており、相場を動かす原動力になりつつある。しかし足元の売買動向は不明。


・ドル需給↑
FRBがドルを大量供給しているのでドルはだぶつき気味だったが、米長期金利の上昇や、ロシアやアルゼンチンの通貨不安、中国経済の先行き懸念などにより、ドルの需要が高まっている。


・米制裁によるドル離れ↓
米国は対立する国に「ドル取引の制限や禁止」といった金融制裁を課すことがある。現時点で米国はロシアやイラン、トルコ、中国などに金融制裁を課しており、これらの国は米国債の保有を大きく減らしている。今のところドル離れは一部に留まっているが、今回のロシアへの制裁(ロシア中銀が保有するドル資産凍結)をきっかけに、ドル離れが加速する可能性がある。


購買力平価
物価が上がると(インフレが進むと)、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると(デフレが進むと)、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必用なくなる(購買力は上がる)。この物価変動に着目して二国間の通貨価値を計算したものが購買力平価になる。

インフレ率は日本より米国の方が慢性的に高いので円の購買力平価は長期的な円高傾向にある。ただ米国のインフレ率は年々低下しており日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。

現在の購買力平価(企業物価)は90円になる。為替相場は長期的にはこの値に収斂していくとされるが、近年では投機取引の拡大や資本の自由化などから購買力平価の影響力は弱まっている。

*購買力平価仮説が成り立つ前提は、貿易における実需取引が為替レートを決める主因であるというもの。日本の製造業は海外に拠点を移し、輸出が増えなくなっているため、購買力平価と市場レートは開きやすくなっている。また現実の為替市場では金融取引が圧倒的なボリュームを占めているため、貿易の実需取引の影響力は小さくなっている。


・日銀が保有するETFの簿価割れ→
日銀の自己資本は約10兆円なのに対し、保有する日本株ETFは簿価で約35兆円ある。日銀の保有するETFの損益分岐点は日経平均株価21000円くらいであり、日経平均株価が15000円台まで下がると日銀は債務超過に転落する。しかし現時点でそこまで下がる可能性は低い。


・為替介入→
今後、円安を止めるために政府・日銀が為替介入する可能性がある。ただ売り玉(保有する米国債)は限られており(5/2日経)、また単独介入のため、為替市場への影響はほとんどない。


・リパトリ減税
経産省内で「リパトリ減税」を推進する構想がある。リパトリ減税とは海外内部保留を円に交換する「リパトリエーション」を実施する企業に対する税制優遇のことであり、この政策を実行することにより、いくらかの円安効果を期待できる。5/11日経


・チャート
三角持ち合いを上抜けたので、上昇基調は強い。


・まとめ
上記を見ていくと、円安要因ばかりで円高要因がほとんどない。日本円は構造的に「円安型」になっているもよう。今後大きな円高要因になりえるのは、米景気後退による米金利の低下くらい。米景気が後退した場合は円が135円くらいまで上昇し、その後は長期で円安が進むのではないかと思う。



■日経平均
今後1年の予想レンジ:30000~43500円で推移

日経平均に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。

・金融政策→
世界の中銀の総資産と世界の株価指数はほぼ連動している。2023年まで各国の中銀は金融引き締めをしていたが総資産はほとんど減っていない。2024年は金融引き締めをゆるめそうなので、中銀の総資産は高水準で維持されそう。


・金利→
金利が上がると、株式から債権へ資金が流れやすくなる。足元で金利はピークアウトしつつある。
*日本だけは上昇基調にある。


・為替↑
円安が進むと海外勢から見た日本株は割安感が出る。現在、円の価値は過去最低水準にある。


・需給↑
海外勢は2023年の半ば頃から日本株を買い始めている。国内企業は自社株を大量に買っている。2024年からは新NISAが始まり、個人投資家も買い始めている。日銀の買い支え策は終了したが、日本株の需要は比較的堅調。

主な投資主体の売買動向
<2024年の予想>
日本銀行:政策保有株の売却で3000億円の売り越し。 現状は1500億円くらいの売り越し。
事業法人:自社株買いで15兆円の買い越し(6/12日経)。 現状は2.4兆円の買い越し。
海外投資家:日本企業への期待と世界経済のソフトランディング期待から3.2兆円の買い越し。 現状は4.2兆円の買い越し。
信託銀行:リバランスで?3兆円の売り越し。 現状は4.8兆円の売り越し。
金融機関:政策保有株の売却で?4兆円の売り越し。 現状は6.1兆円の売り越し。
個人投資家:新NISAや順張り投資で1兆円の買い越し。 現状は2000億円の買い越し。


・EPS(1株利益)↓
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益) × PER(期待度・人気度)で決まる。2024年の予想EPSは-10~+5%くらいになる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因をみていく。
・為替↑
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので為替相場の影響を大きく受ける。今は円安気味なので利益は増えている。

・海外景気↑
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので海外景気の影響を大きく受ける。足元の世界景気は比較的堅調。

・自社株買い↑
自己株式はEPSを計算する際に分母の株式数から除かれるため、自社株買いにはEPSを押し上げる効果がある。日本企業は自社株買いに積極的で、2023年の自社株の取得実績は約8兆2000億円になる。2024年はそれを上回る規模になる見込み。
日経には「自社株買いをしても、その分株数も減り、時価総額も同じ割合で減るので理論的には自社株買いをしても株価は不変」とあるが、自社株買いにより需給が改善したり、ROEが上がったり、企業の「自社株は安い」というアナウンスメント効果があったりするので、株価は上がりやすくなる。

・失業率↓
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益を圧迫する。労働量力不足で成長が頭打ちになりやすい。現在の失業率は最低水準にある。

・減価償却費や資源価格↓
減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇すると利益が圧迫される。足元では減価償却費は横ばい傾向で、資源価格は円安により上昇傾向にある。

・金融政策→
金融引き締めで金利が上昇すると企業の利益や資金調達環境は悪化する。日本では金利が上昇基調にあるが、そのペースは非常に穏やか。
ーーーーー


・PER(期待度、リスク選好度)→
日経平均の過去のPERは11~17倍くらいで、現在のPERは16.7倍と上限に近い。今期の業績予想は前期比微減の見込みなので、現在の株価水準は天井に近いのかもしれない。ただ日本企業の業績予想は保守的な傾向があるので、今後上振れる可能性もある。


・リスクオン、リスクオフ↑
リスクオン気味。


・株式利回り↑
東証プライムの益回りは約6.1%、配当利回りは約2.25%と、日本の10年国債の利回り1.06%より高いので、株式に資金が流れやすい。


・中国株からのシフト↑
中国の景気停滞リスクや地政学リスクから、中国投資離れが拡大している。その代替投資先の1つとして日本株が選ばれている。


投機筋の持ち高
買い残は2兆1000億円で、裁定売り残高は4000億となっている。投機筋は日本株が上がるとみている。


・個人投資家の流入↑
日本の家計が抱える預金・現金は約1100兆円あり、コロナ禍の「巣ごもり」や「老後2000万円問題」などの影響で株式市場に個人投資家が流入している。2024年に始まった新NISAでさらなる流入も期待できる。ただその大半は海外株に流れている。


・パッシブ運用の膨張↑
パッシブ運用にはストック効果(積み上げ効果)があるので、この運用が増えると株価は下がりにくくなる。現在、投信やETFでパッシブ運用の比率が高まっており、世界では44%、日本では73%まで高まっている。


・チャート↑
<10年チャート> 出来高を増やして新高値を突破しているので基調は強い。底は3万円くらいになりそう。


・まとめ
株式需給と全体的な市場環境はそれほど悪くない。あとは企業のEPS次第という感じになりそう。ここが期初予想より上振れてきたら、日経平均株価は43000円くらいまで上昇しそう。



■東証グロース250指数
今後1年の予想レンジ:600~900の間で推移

東証グロース指数に影響を与える要因を、影響の大きい順にみていく。

・金融政策↑
東証グロース指数は中銀の総資産残高の影響を全市場の中で最も受けるので、中銀の資産縮小時には真っ先に売られやすい。ただ、グロース指数はすでに金融緩和前の水準まで売られているので底に近いように見える。

金利の上昇も小型グロース株には逆風になる。金利が上昇すると将来の成長期待で買われている小型グロース株はバリュエーションが低下しやすくなる(詳細は後述)。また小型グロース企業には赤字企業が多く、金利上昇時には成長資金を調達しにくくなる。借金の金利負担も重くなり、財務状態も悪化する。2024年は世界の中銀は金融引き締めを緩めていく見込みなので、グロース株にはプラスの相場環境になるかもしれない。ただし、日本だけは金融引き締めを強化していく見込み。


・需給↑
グロース市場は日銀の買い支えがなく、自社株買いもあまり期待できないため、相場下落時は下げ止まりにくい。ただ海外投資家は売り尽くした感があるので、売り圧力はそれほど強くなさそう。個人投資家の含み損は減少傾向にあるので、そろそろ個人が動き出してもよさそう。


・EPS(1株利益)成長率
不明。赤字基調っぽい。5/29日経


・センチメント(市場心理)
株価は基本的にはEPS×PERで決まる。しかしグロース市場全体のEPSはおそらく赤字。そうなるとEPSがマイナスになってしまうので、そこにPERを掛けても株価を算出できない。このようなときに株価を決めるものはなにか。もしかするとセンチメントかもしれない。だからグロース指数の値動きは理解しにくいのかもしれない。

そのセンチメントにも変動要因がありそうだが、今のところそれがよくわからない。


<グロース市場の反転シグナル>
信用評価損益率の急激な悪化は一つの反転シグナルになる。信用評価損益率が急激に悪化して、追い証回避の投げ売りが殺到すると、信用取引での買い持ちが急減して需給が軽くなる。過去の例では、そのタイミングで海外投資家が買いに転じるパターンが多い。

2007~2009年の金融危機では、2007年12月に信用評価損益率が-30%を超え、そこから約1年5ヶ月にわたってマイナス幅が30を超えている。この間にマザーズ指数は900台から300近くまで落ちている。当時も今も金融引き締めなど、似たような状況であり、このような前例を踏まえると、2年の停滞が続いた東証グロース指数は今後反発するのかもしれない。

<グロース250の10年チャート> 底値感はあるが基調は弱い。

・まとめ
グロース市場は予想EPSがよくわからないので、予想がしにくい。金利の影響は米金利の方が強いのか日本金利の方が強いのか、それもわからない。今後の観察で変動要因を見極めていきたい。

市場環境

株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などをみていく。

■EPS成長率
・世界株式の2024年の予想EPS成長率は-5~10%。
・米国株式の2024年の予想EPS成長率は-3~15%。
・中国株式の2024年の予想EPS成長率は0~10%。
・欧州株式の2024年の予想EPS成長率は-5~8%。
・日本株式の2024年の予想EPS成長率は-10~5%。


■経済成長率
・世界の2024年の予想GDP成長率は2.6~3.2%、2025年は3.0~3.2%。
・米国の2024年の予想GDP成長率は1.3~2.7%、2025年は1.7~1.8%。
・中国の2024年の予想GDP成長率は4.2~5.0%、2025年は4.1~4.5%。
・ユーロ圏の2024年の予想GDP成長率は0.6~1.3%、2025年は1.3~1.7%。
・日本の2024年の予想GDP成長率は0.5~1.0%、2025年は0.8~1.1%。
・インドの2024年の予想GDP成長率は4.5~6.8、2025年は6.5%。
*数値はIMFとOECDと世界銀行の予想。4/17日経5/3日経5/30日経

世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほど不況感は強まらない可能性もある。
*経済規模を示すGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。

*コロナの影響で2020年の日本のGDPは落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が向上していれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。


■インフレ
・米国の2024年の予想インフレ率は2.2~3.2%。
・欧州の2024年の予想インフレ率は2.2~3.5%。
・日本の2024年の予想インフレ率は1.5~2.5%。
*参照:1/23日経など
*ブレーク・イーブン・インフレ率とは市場参加者のインフレ予想を反映する代表的な指標。通常の国債と物価連動国債の利回り差から算出する。物価連動債はコアCPIの変動に応じて想定元本が変わり、それに利率を掛け合わせることで利払い額が増減し、償還額も変わる。つまり物価が上がると元本と利息が増える。インフレ予想が高まると物価連動債の需要が増えて、この利回りは低下する。その結果、通常国債との利回り差が拡大し、ブレーク・イーブン・インフレ率は上昇する(6/11日経)。ブレーク・イーブン・インフレ率は実質金利を算出するときなどにも使われる。


世界中でインフレ率が下がりにくくなっている。インフレ要因とデフレ要因を一通りあげて、今後のインフレ動向を考えていく。

<インフレ要因>
★コロナ特有のもの
・供給基盤が破壊され供給不足が生じている。
・コロナで対面型サービスの人気が落ち、賃金が上昇している。
・コロナが落ち着いて需要が増している。
・政府から給付金が支給され需要が増している。
・金融緩和の影響で資産価格や商品価格が上昇している。
・量的緩和の影響で通貨価値が下落している。
→現在、これらの要因はほぼ解消されている。

★コロナ後も続くもの
・人手不足で賃金が上昇している。米国においては求人件数が700万件程度まで減ると賃金上昇率が3%程度まで落ち、FRBの2%物価目標と整合するとされるが、4月の求人件数は805万件とまだ少し多い。6/6日経

*米最大の求人プラットフォームを運営する米Indeedは5月に「米国の景気と求人数が悪化し続けるのは確実。底打ちまでに18~24カ月ほどかかる」と言っている。5/16日経

*米国ではフルタイム労働者が減少しており、パートタイム労働者が増加している。過去のケースではこのようにフルタイムが減り、パートタイムが増えた場合は、時間をおいて、雇用者全体の伸びが急減速している。5/4日経

*米国では移民が急増しており、企業の求人を埋めている。移民は「弱い雇用」と呼ばれるパートタイムの割合が高いとされる。こうのようなケースでは、雇用が増えても賃金はあまり上がらない。ただ、大量の移民は家賃の上昇圧力にはなる。5/7日経4/7日経6/1ヴェリタス

・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。脱炭素シフトにより2030年まで年0.7~1.0%程度の物価押し上げ効果が見込まれている。
*脱炭素シフトが完了すれば再生可能エネルギーは強力なデフレ圧力になる。

・財政拡張が物価を押し上げている。米国では積極財政が生んだ累積的な「財政ショック」が2023年の米インフレ率を0.5%押し上げたとも言われている。財政要因は直近の数四半期でも0.6~0.7%の押し上げ寄与があると推計されている。5/5日経
*世界的に選挙が相次ぐ2024年は財政拡張が進みやすくなる。
*11月の米大統領選でトランプ大統領が再選した場合は財政がさらに悪化するとも言われている。保護主義や不法移民の取り締まり強化策も訴えており、それらが実現すれば強いインフレ圧力が発生する。6/27日経

・債務増加が通貨の価値低下につながっている。米国、ユーロ圏、日本の世界の3大基軸通貨すべてで債務が過剰な状態にある。通貨の購買力が落ちている。

・ウクライナや中東地域の戦争によってエネルギーコストが上昇している。

・異常気象や世界人口増、新興国の経済成長、バイオ燃料需要、肥料価格上昇、ウクライナ戦争などにより、食料価格が上昇傾向にある。農作物・肥料価格の先行指標である農業ETFは高値圏で推移している。

・経済の脱グローバル化(グローバル化の再構築)で製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇している。5/15日経

・世界の生産年齢人口が2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなくなる可能性がある。

・米欧でインフレやAIへの不安などからストライキが頻発している。

・株高による資産効果で消費が落ちにくい。


<デフレ要因>
・世界中の中央銀行が強力な金融引き締めをしている。金融引き締めには需要を減らす効果がある。

・経済のデジタルシフトが加速している。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。検索やSNSは無料で、ネット上では価格比較を簡単にできるため売り手は超過収益を得にくくなっている。スマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、1億曲超をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。複製コストゼロのデジタルソフトやシェアリングサービスの普及などもあり、価格は下がりやすくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産コスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がゼロに近いので、競争が起きると価格がゼロに近づく。

・イノベーション(新結合・技術革新)が加速している。今はインターネットやAIにより、情報や人やモノの「新結合」が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。

・産業の「自動化」により、生産コストが低下している。
・世界的に経済成長率が鈍化傾向にある。過去40年で米国の潜在成長率は3%前後から2%前後に低下している。
・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向(収入に占める支出の割合)は低い。
・世界的に少子高齢化が進んでいる。子どもが減って高齢者が増えると総需要が減る。
・人手不足で成長力が低下している。


以上をまとめると、インフレは落ち着きつつあるが、人手不足や保護主義、環境規制、紛争、財政ショックなどの構造要因は残るので、インフレはしぶとく続きそう。米国でインフレ率が2%くらいになるのは2025年頃になりそう。

日本においては、今後人手不足が深刻化していきそうであり、円安も止まりそうにないので、デフレからインフレに転換する可能性が高い。インフレが高進した場合はキャピタルフライトが発生し、さらに円安・インフレが進む可能性もある。日本は人口が減っており、少子高齢化社会なので需要の基調は弱いが、コストプッシュ型のインフレは今後続きそう。


超長期では、エネルギー革命や材料革命、AI・ロボット革命により超デフレ(無料社会)になる可能性がある。


■金利
・米国の政策金利は5.50%で、3ヶ月金利は5.41%、2年金利は4.72%、10年金利は4.31%、30年金利は4.43%になる。
・日本の政策金利は0.30%、2年金利は-0.35%、10年金利は1.05%、30年金利は2.17%になる。

*名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態では、国債を買ったり銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。逆に実質金利がプラスの状態では国債などの「無リスク資産」に資金が集まりやすくなる。現在、米国の実質金利はプラス圏にあり、「無リスク資産」に資金が流れやすくなっている。日本や豪州の実質金利はいまだマイナス圏にある。

*現在の債券は魅力的な水準まで利回りが高まっている。たとえばリスクのほとんどない米2年債は利回りが4.72%もある。その他の質の高い債権にも魅力的な利回りのものが多くなっている。今後利回りがさらに上がる可能性もあるが、急上昇期はすでに終わった可能性が高いので、株式などのリスク資産より、債券に資金が流れやすくなっている。

*投資家は企業が将来生み出すであろう利益から金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益は減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分は多くなり、理論価値が下がりやすくなる。

*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.6%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。しかし今回は付けていない。

*米10年金利が米2年金利を下回ると、その1年~1年半後に景気後退に陥ることが多い。米国では2022年7月から10年金利が2年金利を下回っており、2年経った現在もその状態が続いている。現在、景気後退は起きていない。

*米10年金利が米3ヶ月金利を下回ると、その後、比較的すぐに景気後退する傾向がある。2022年10月からこの逆イールドが発生している。
*銀行は短期金利で資金を調達して、長期金利で企業などに貸し出して利ザヤを得る。しかし長短金利が逆転すると逆ザヤになるので融資が減る。その結果、企業の投資も減り景気が後退しやすくなる。

*景気拡大期の「良い長期金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場へのネガティブな影響が大きい。

*景気拡大期終盤に金利が上昇すると、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こる。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。

*利上げ局面で中銀が利上げを停止すると市場は急速に利下げを織り込み始め、株高が続くことが多い。警戒が必要なのはその後になる。金利が高い中での株高は危うい株高となり、なにかのきっかけでショックが起こることが多い。過去を振り返っても、利上げ終了後は1年ほど株が上がり、「サブプライムローン」の破綻などがショックの引き金を引くことが多かった。過去の例では、「○○ショック」は懸念された箇所からではなく、疑いもしなかったところから起こっていることが多い。今回米中銀は2023年9月頃から利上げを停止している。

・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は4の段階になる。


■債務
・世界の債務はコロナ過で急拡大し過去最高水準のGDP比336%に達している。ただ、コロナ過の経済対策により、家計や企業、金融機関の財務状態はコロナ前よりも健全になっているためデフォルトが急に増える状況ではない。

・銀行の財務状態は比較的良好だが、銀行に比べて規制・監督体制の緩い「シャドーバンク(ノンバンク)」の債務は急拡大している。世界のファンドや年金基金、保険会社などノンバンクの金融資産は21年に239兆ドル(3京6000兆円)と07年比で2.4倍に増え、銀行を大きく上回っている。ノンバンクは信用力の低い企業へ融資することが多く、英調査会社プレキンの予測では、ノンバンクによる企業向け融資(プライベートクレジット)の世界全体の運用資産は2027年末に2兆3000億ドル(345兆円)と年平均10.8%で拡大していく見通し。プライベートクレジットは金融規制の対象外にあるためデフォルトリスクを把握しづらい。金利が高止まりし景気後退に陥ればデフォルト率が7%くらいまで上昇する可能性がある。
*プライベートクレジット事業者は2008年の金融危機後に設立されたところが多いため、デフォルトの影響は未知な部分が多い。

*米国の金利の高止まりは、ノンバンク業界を直撃する。ノンバンクは通常、リスクの高い借り手に高い金利で貸し付ける。金利高止まりの影響で借り手の返済能力が落ち不良債権が増える一方で、貸し手の資金調達コストも上がってくる。ノンバンクでは時価会計を行っていない運用会社が多いため、問題があっても資金繰りが苦しくなるまでそれが表面化しないことが多い。商業用不動産市場では価格が半分になったものも珍しくない。高金利の下で経済に内在する不安定要素は増している。

・プライベートエクイティ(未公開株)ファンドでは投資回収が難しくなっている。PEファンドが抱える未売却企業は約2万8000社、3兆2000億ドル(約500兆円)相当に及ぶ。解消が進まない限り新たな資金調達や投資は行いにくくなる。5/21日経6/12日経

・米金融市場では商業用不動産が大きな”爆弾”になっている。商業用不動産の10年間の価格上昇率は日本が20%なのに対し、米国は50%になっている。米国の商業用不動産向け貸出額は2010年から2023年まで約2倍に膨らんでいる(日本は同期間に3割増)。リモートワークの浸透や金融引き締めによるオフィス需要の低下によりオフィスの空室率は20%に迫っている。金利上昇により商業用不動産向けの融資基準は厳格になるなか、2024年に80兆円規模の償還期限が到来する。そこで借り換えができない場合、物件は市場で売却されるため、市場価格の調整圧力はかなり大きくなる。米欧ではGDPに占める商業用不動産の割合が1~2割に高まっているため、不動産バブルが崩壊すれば米経済は大きく下押しされる。米不動産ファンドは世界中に分散投資しているため、ファンドのリバランスで世界中の商用不動産に売りの連鎖が波及する恐れがある。

住宅用不動産も”爆弾”になりつつある。金利の上昇に加え、保険料など維持費も上昇しており、空室率は高止まりしている。マンション向け融資残高は23年末に約2兆2000億ドル(約345兆円)と、焦げ付きが顕在化しつつある商業用不動産向け融資の6割に達している。マンション向け融資の延滞率は1月に0.44%となり、リーマン危機の水準を上回り過去最高を更新した。リーマン危機の際には、延滞がピークに達してから貸し手の損失がピークに達するまでに約2年を要している。24年と25年には5000億ドルの融資が返済期限を迎える。借り換えに失敗すれば割安な価格で不動産を手放さざるを得ず、価格下落に拍車がかかる恐れがある。6/1日経

・金利引き上げの影響は企業が借金を借り換えるタイミングで最も大きくなる。2022年3月のゼロ金利解除から1年4ヶ月で5%超に及んだ今回の急速利上げで2024年は企業の利払い負担が一気に増す。そのタイミングでデフォルトが続出する可能性がある。

*米国では低格付け債(ハイイールド債)の借り換えが進んでいる。社債はコロナ過の低金利環境を生かして大量発行された経緯があり、24年に償還が多い「償還の山」が迫ると警戒されていたが、企業は借り換えで満期が先の資金を確保し、財務の安定性が増している。現状では償還が増えるのは26年以降になる。長期的に米経済が強さを保つとの期待から、貸し手がリファイナンス(資金の借り換え)に応じるケースが増加し、償還の先送りにつながっている。6/1日経

・債務の質は劣化しており、米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割超が格付けの最も低いトリプルBになっている。欧州においては高リスク社債への懸念が高まっている。トリプルC以下の国債に対するスプレッド(上乗せ金利)は17%まで高まっている。これは2012年の欧州危機の水準になる。

・米政府の公的債務のGDP比率は07年の35%から22年には97%まで高まっており、53年には181%まで上昇する見込み。

*金利が経済成長率を下回っている状態では、企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にすることができるので債務が膨らみやすくなる。政府も多少の財政赤字を続けていても債務残高のGDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。

*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構造になっている。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りていない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。財政刺激をしてインフレ率を2%まで上昇させることができれば、実質的な政府債務を年2%減らすことできるので、財政支出はそれほど問題ならなくなる。ただし金利が同程度上がった場合は問題になる。通常はインフレと金利は連動する。

*債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くと、どこかで必ず資金の逆回転が起こる。債務拡大ペースはここ10年以上、毎年GDPの成長速度を上回っている。

・中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる。2023年は過去最大の財政赤字(約74兆円、GDP比3%)を計上する見通し。
・22年6月の中国の非金融部門の債務残高はGDP比295%に達し、98年3月末の日本の296%と肩を並べている。

・中国は前例のない投資主導経済を20年にわたって続けている。過去40年間に消費のGDP比は53%から38%へ低下し、消費が投資を下回り続けている。この投資主導経済の実態はコスト先送りによる需要創造になる。多くの資産が健全資産とはいえず、不良資産が積み上がっている。(一方、米国では労働者に購買力を与え、生活水準を向上させることで需要を創造してきた。過去40年間に米国の消費のGDP比は60%から68%に上昇している。)

・新興国のドル建て債務の増加も著しく、10年前の約2倍(約500兆円)まで増えている。足元ではドル高が続いており実質的な返済負担が増している。一部の国ではデフォルト懸念が高まっており、デフォルトがいったん起きればドル高が一段と進み、デフォルトが連鎖しやすくなる。

・新興国の債務残高は22年3月に1京3000兆円とリーマン危機直後の4倍まで増えている。債務破綻の危機に直面する新興国が増えている。

・世界で過剰債務企業が増えている。本業の利益が借金の利払いより少ない”ゾンビ”企業が全上場企業(2万4500社)に占める比率は2021年度に16%になっている。直近ではこうした企業が破綻に追い込まれる事例が相次いでおり、仏アリアンツは23年に世界の企業の倒産が21年比で26%増えると予想している。 *実際のところは不明。

・米ムーディーズは今後の世界の社債について、最も悲観的なシナリオだとデフォルト率が14.5%になると予想している。これは1933年の世界大恐慌の最中の15.8%以来の水準になる。リーマン・ショック時のデフォルト率は12.1%になる。

<バブルについて>
バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより生じる現象。現在バブルは発生しているが、その投資主体は民間から政府(中央銀行)にシフトしているので、バブルは破裂しにくい。政府が資産を売却すればバブルは破裂するが、政府債務は実質的に返済不要なので資産を大きく売却する可能性は低い。足元で一部中銀はインフレ対策として資産の売却を進めてはいるが、インフレが落ち着けば売却をやめるので、”中銀バブル”が完全崩壊する可能性は低い。


■金融政策、財政政策
・2023年は世界中の中銀がインフレ対策で金融引き締めを行っていたが、2024年は金融緩和に転じるもよう。米バンク・オブ・アメリカは2024年に世界の中央銀行が年間で152回の利下げに踏み切ると予想している。

・日銀の金融引き締めペースが穏やかなのは、日本のインフレ率が2%程度と低く、コストプッシュ型の悪いインフレのため。日銀は現在のような需要不足の状態で引き締めをすると景気後退に陥ると考えている。

日銀が金融引き締めに消極的なのは、日銀のバランスシートが膨らみすぎていて、政府債務も膨大になっているためでもある。このような状態で金利を大きく引き上げると日本は財政破綻に一気に近づく。

日本は現在、金融引き締めも金融緩和もほとんどできない手詰まりの状態にある。金融政策の”幅”を増やすにはまず財政収支を黒字化する必要があるが、歳入70兆円、歳出110兆円という現状では不可能に近い。

*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利をあまり引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀は政策金利を1%まで上げると2年程度で債務超過に陥るとされる。FRBは政策金利を3.0~3.8%まで上げると金利収支が「逆ざや」に転じるとされる。ECBも金利引き上げにより財務状態が危機的な水準に陥る可能性が高い。
*MMTは日本が行っている金融・財政政策とは若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。


■政治
・日本の政治は比較的安定しているが、ちぐはぐな政策や政治資金問題で内閣支持率は20%台まで落ちている。財政支出も相変わらずの大盤振る舞いで、この調子でいくと近い将来、日本は財政破綻する。

・海外は不安定。ウクライナ戦争により、ロシアと西側の関係は当分冷え込みそう。
・パレスチナではイスラエル(ネタニヤフ首相)の計画通り戦争が始まった。中東地域はしばらく不安定な状態が続きそう。

・米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に長期にわたり続きそう。
*米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・米国では資本主義と自己責任社会の帰結として、格差拡大が続いており(6/18日経)、民主主義が機能不全に陥りつつある。近い将来、政治的な大混乱(分断)が起こる可能性がある。
・米国は典型的な衰退期に入ったという見方もある。国家のサイクルは「新たな秩序が始まって政府の官僚制が整うステージ」「平和と繁栄を迎え支出と債務が過剰になるステージ」「財政状況が悪化し内戦、革命に向かうステージ」の3つのステージに分類できるとされ、現在の米国は衰退期に属するステージの典型例になる。貧富の差や価値観の違いが拡大し、左派と右派が争うポピュリズムが台頭している。大国間の紛争や過剰債務、大きな技術革新、破壊的な自然現象などによって国際秩序が脅かされることも衰退期の特徴。この調子でいくと、やがて内戦や革命が起こる。米国は現在、大混乱に陥る瀬戸際にいる。米国で起こりうる最も可能性の高い内戦は、州政府や地方自治体が連邦政府の指示に従わず、機能不全に陥るようなものになる。5/26日経

・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制を強化しているので、民間の活力がそがれつつある。国外からの投資も、その不透明感から著しく減っている。この調子でいくと中長期でも経済成長が減速していく可能性が高い。中国共産党が一党支配を最優先する限り、この傾向は続き、中国は最終的にロシアのような国になる可能性がある。
・23年の対中国直接投資額は21年の51兆円の1割程度まで落ち込んでいる。
・中国経済がかつての日本のようなデフレに陥りつつあるという見方が強まっている。日本は1990年代から不良債権、雇用、設備の3つの過剰に悩まされた。中国も今同じ3つの過剰に悩まされている。当時の日本は欧米市場へのアクセスが確保され、海外に活路を求められた。しかし今の中国は米国と対立し、欧州でも中国製EVを締め出す動きが広がっている。米欧の半導体輸出規制により先端半導体の調達にも支障をきたしており、技術的にも追い詰められつつある。
・マクロ分析の専門家であるレイ・ダリオ氏は「中国は今後100年間続く嵐に突入しつつある。バブルが崩壊し、試練が続くだろう」と言っている。5/26日経

・EUは域内で財務格差が広がりつつあるが、コロナ危機やウクライナ戦争などの危機でEU加盟国の結束は強まっており、政治は比較的安定している。
・2024年の米大統領選でトランプ氏が返り咲いた場合、米国外の先進諸国は経済面と政治面で厳しい状態に陥る可能性がある。世界は権威主義的な超大国に支配されるようになり、そこでの最大の敗者は欧州で、不法移民に圧倒され、ロシアに脅かされ、中国の挑戦を受け、経済的にも軍事的にも弱く、政治的にも分裂し、経済的、地政学的な衰退に直面する可能性がある。


■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はピークアウトはしているが依然高水準にある。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米個人消費の先行指標である6月の消費者信頼感指数は100と中立的な水準にある。同指数が80を下回ると景気後退のリスクが高まる。
*米GDPの約7割は個人消費が占める。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は低下傾向で48.7と中立よりやや低い水準。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数は53.8と堅調な水準。ただ穏やかな下降トレンドにはなっている。
*ISM指数やPMI指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増えやすくなる。
ユーロ圏のPMIは45.6。好不況の分かれ目である50を2年間下回っている。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは49.5とほぼ中立な水準。基調としては横ばい傾向。
・世界景気の先行指標である銅価格は5月に最高値を更新している。その後はピークアウト気味。
・世界景気の先行指標である半導体指数(SOX指数)は6月に最高値を更新している。
米国の失業率は低位で推移しており現在4.0%。ほぼ「完全雇用」の水準(3.5%)にある。
*米国では失業率が前年同月と比べて0.25%上がると景気後退に陥りやすくなる。5月の失業率は前年同月を0.3%上回っている。
*米失業率が「完全雇用」の水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。
・米景気の先行指標であるダウ輸送株ラッセル2000は高値圏で推移している。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りはピークアウトしつつある。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るとされる。現在は3つ起きている。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照


■その他の株式シグナル
米個人投資家の心理は株価の先行指標になる。個人投資家の心理は株式市場の「逆指標」になるとされ、「悲観」の場合は大底、「楽観」の場合は天井を示唆することが多い。この指標が「異常な弱気」を付けた後の6~12ヶ月は平均以上の株価上昇になりやすい。現在は「楽観(強気)」の水準。

ブルベア指数も米個人投資家の心理を示し、株価の先行指標になる。現在は+16%と「強気」の水準。

投資家の強欲と恐怖指数も株価の先行指標になる。この指標が「Extreme Fear(極度の恐怖)」となっている場合は、すでに株価にほぼすべての悪材料が織り込まれていることが多く、株価は好材料に反発しやすい(東洋経済)。現在は46で「Neutral(中立)」の水準。

・米機関投資家の株式持ち高比率を示すNAAIM Exposure Indexも先行指標になる。この値が80を超えると過度の楽観、20を下回ると過度の悲観になる。現在は85と過度の楽観になる。

・世界の機関投資家の株式配分比率も株価の先行指標になる。この指標が高い水準を付けると、投資余力が減り、天井を付けやすくなる。5月の株式配分比率は2022年1月以降で最も高い水準に達している。6/1ヴェリタス

米VIX指数(変動率指数、別名「恐怖指数」)も株価の先行指標になる。この指標が低位にある場合は「楽観」を意味し、株価が上昇しやすくなる。しかし、低位の状態が続くと投機的売買が盛んになり、その後なんらかのショックで株価が急落することが多い。現在のVIX指数は12.3と低位な水準にある。

・1871年以降の米国の平均的な景気後退期間は16.7ヶ月になる。株式は景気に6ヶ月先行するので、景気後退が始まって10ヶ月くらいたった頃が仕込み時になる。

・景気後退入りすると最初の数ヶ月間に株価が大きく下落する傾向がある。景気後退入りして最初の4ヶ月間のどこかで株式を買った場合、その後6ヶ月間のリターンはマイナスに終わることが多い。景気後退入りから5~14ヶ月の間に株式を買った場合は、その後6ヶ月の投資リターンはプラスになりやすい。


■その他の指標
・日経平均の騰落レシオは115と過熱の水準。
・日本株の信用評価損益率は-6.79%とやや“天井”に近い水準。
・先進国の株価チャートは、軒並み最高値を突破しており基調は強い。

長期計画

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」といわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
景気循環的にそろそろ景気後退に陥りそう。ただ家計や企業、金融機関の財務状態は比較的良好なため深刻な景気後退に陥る可能性は低い。

*景気循環(債務循環)の基本的なパターンは、不景気 →金融緩和 →景気拡大(債務拡大) →景気過熱・インフレ過熱 →金融引き締め →景気後退(債務圧縮) →不景気 の流れになる。


現在、プロの間では「景気後退には陥らない」という意見が多数派を占めている。本当にそんなことが可能なのか。景気後退要因と景気浮揚要因を列記して考えてみる。

<景気後退要因>
・企業債務はGDP比で過去最高水準まで高まっており、金利も2008年の金融危機前と同水準まで高まっている。いつ資金の逆回転が起きてもおかしくない。
・米欧などの先進国中銀はこの2年で政策金利を急激に引き上げている。金利高の影響は1年くらいの時差をもって経済に反映される。2024年はその影響が表れる年になる。
・過去のパターンでは米利上げ停止後1年くらいに「○○ショック」が起こり景気後退に陥っている。今回FRBは2023年9月頃から利上げを停止しているので、今年の9月頃に「○○ショック」が起こる可能性がある。
・過去のパターンでは逆イールド発生後、1~2年くらいたったころに景気後退が起きている。米国では2022年7月に逆イールドが発生しており、現在2年が経過している。
・逆イールドが発生している影響で、融資・投資が減っている。銀行の融資態度は景気との相関が強く、過去、融資基準の厳格化が進んだ時期には景気後退が発生している。
・米家計のコロナ貯蓄はほぼゼロになっている。2023年10月からは学生ローンの返済が再開されている。クレジットカード債務や自動車ローンの延滞率は足元で13年ぶりの高さになっている。
・米経済の牽引役である個人消費は長引くインフレや金利高で節約志向が高まっており、低調気味。5/31日経
・今後米国の失業率が上昇していく可能性が高い。米最大の求人プラットフォームを運営する米Indeedは5月に「米国の景気と求人数が悪化し続けるのは確実。底打ちまでに18~24カ月ほどかかる」と言っている。5/16日経
・株式市場の牽引役になっている「生成AIブーム」が”幻滅期”に入り、いったんしぼむ可能性がある。現在、生成AIのインフラ投資は活発だが、生成AIの利用企業数はピーク時の半分以下になっている。5/25ヴェリタス
・2008年に起きた金融危機では、中国の大型投資により世界経済は救われたが、今回はそのような支え手がいない。


<景気浮揚要因>
・失業率が低い。米GDPの約7割は個人消費が占めるが、失業率が低水準の状態で維持されると、所得が維持され、消費が落ち込みにくくなる。1960年代以降に8回あった景気後退局面では、失業率が平均で3%強上昇しているが、今後想定される失業率の上昇幅はその半分にも満たない。
・移民が流入している。移民流入により労働供給が増え、成長の原動力になっている。一方で、移民は「弱い雇用」に就くので、賃金の伸び鈍化にも役立っている。6/1ヴェリタス
・米国では移民の流入やテクノロジーの普及、サプライチェーンの強靱化などにより潜在成長率が2%台に上昇している。6/15日経
・米国の生産性は上昇している。生産性は2023年に年率で4%程度伸びている。生産性が上がった主因は雇用流動性の高さになる。米国ではコロナ過の初期に2200万人超の一時解雇が発生したが、その後、労働者はより成長力のある企業に転職した。最も雇用が増えたのはIT関連になり、起業数はコロナ過前の2倍になった。これらが米国の技術革新を加速させた。4/26日経5/10日経
・デジタル化が米国経済を強靱化している。デジタルエコノミーの伸び率は平均年7%超あり、それが米経済を下支えしている。
・現在はサービス業が経済成長を主導しているので、景気が落ち込みにくい。サービス業は投資資金を製造業ほど必要とせず、イノベーションが起こりやすいので、成長力が落ちにくい。
・AIが本格的な普及期に入りつつある。英調査会社はその普及率に応じて2027年の米GDPを0.7~2.5%、2032年時点で1.8~4.0%押し上げると予想している。5/10日経
・米国では家計債務の約7割を住宅ローンが占めるが、コロナ過の低金利時代に多くの世帯が住宅ローンを借り換えているので、債務返済コストが低くなっている。住宅価格は高騰しており、その含み益を借り換えで現金化する手法も活発になっており、約60兆円の余剰資産が生じたという試算もある。
・米家計は金融資産の5割を株式や投資信託などで運用しているので、株高により、家計は潤っている。この20年の株価上昇の結果、家計の金融資産の増加は個人所得の増加の6倍になっている。住宅価格は3倍に上昇している。2024年第1四半期の米家計資産は過去最高の160兆ドル(2京5000兆円)に達している。家計純資産は過去10年間でほぼ2倍になっている。6/8ロイター
・景気サイクルの終盤にもかかわらず、米家計のバランスシートは健全。家計の可処分所得に占める元利払いの返済負担比率は低下している。
・米長期金利は高止まりしているが企業の金利耐性は上がっている。2022年以降の米企業部門の受取利息の伸びは支払利息よりも大きい。大企業は低金利時に固定金利で資金を調達している一方、米アップルのように手元資金が潤沢な企業は高利回りの運用資産を保有している。6/14日経
・インフレが鈍化している。コロナ禍で深刻になっていた移民減少や半導体不足などの供給制約が解消されている。インフレ指数の約3割を占める賃料も落ち着き始めている。
・インフレ要因となっていた、ウクライナ戦争の供給ショックが落ち着きつつある。
・インフレが落ち着いてきており、主要中銀は政策金利の引き下げを探る局面に入っている。
・米国では半導体産業や環境産業(EVなど)、インフラ産業などの巨大産業を政府が支援しているので、景気が落ち込みにくい。
・インドなどの新興国経済が好調。中国はいろいろと問題を指摘されているが、それでも4%超の成長をできる見通し。
・過剰流動性(金余り)が維持されている。コロナ禍で政府がばらまいた資金が市場にまだ高水準で残っている。マネーストック(民間に流通しているお金の総量)は長期的に右肩上がりで増え続けている。世界のドルの流通量を示す「ワールドダラー」は2024年4月にリーマン・ショック前の約4倍にあたる8兆7300億ドル(1360兆円)に拡大している。6/1ヴェリタス
・FRBなどの主要中銀は過去の金融危機の経験を踏まえ、制度変更や規制に加え、バックストップ(安全策)機能を整備している。5/10日経
・長期の米景気を俯瞰すると、現在の景気は拡大局面が長く、後退局面が短くなっている。その要因は、製造業からサービス業への重心移動、生産・在庫管理の進化、機動的な金融・財政政策などになる。5/10日経


<まとめ>
こう見ていくと、景気浮揚要因が多いので、景気後退に陥るとしても軽いもので済みそう。ただ景気循環は避けられそうにないので、ある程度の景気後退も避けられなさそう。



■他の景気後退シナリオ
景気後退シナリオ1:中国のバブル崩壊で景気後退
中国の民間債務は積み上がっており、GDP比220%に達している。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こりやすくなる。バブルが崩壊すれば独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性もある。そうなれば政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただ中国政府には財政・金融政策をする余地があるのでバブルが崩壊する可能性は低い。

・・中国政府がとれる政策が限られてきた。政府や民間企業の債務残高の合計はGDP比で約300%に膨らんでおり、大規模な財政支出はしにくい。一方、人民元安が進んでおり、中国人民銀行(中央銀行)は大幅な利下げをしにくくなっている。


景気後退シナリオ2:中国が武力で台湾を併合し、米中戦争が激化して景気後退
中国が2024年頃に武力で台湾を併合するとの予想がある。実際にそれが起これば米中戦争が激化し、世界景気には強い下押し圧力がかかる。ただ中国は西側から制裁を受けると食糧危機に陥るリスクが高いので、中国が台湾に侵攻する可能性は低い。戦争を仕掛けるとしたら米国側からになる。

とはいえ、中国は米国債を売り続けており、「安全資産」である金の保有は増やしている。台湾に侵攻する可能性も少しはあるのかもしれない。

中国が5月23~24日に実施した台湾を包囲する形での軍事演習について、米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官は「(侵攻に向けた)リハーサルのようだった」と話している。5/29日経


景気後退シナリオ3:「脱成長」経済システムに転換して景気後退
COP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は「産業革命以前から21世紀末までの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指して、努力を追求することを決意」することで合意したが、現在その実現は絶望的な状況にある。各国の2030年時点での目標がすべて達成されても21世紀末までの気温上昇は2.4度になるとされる。そうなれば海面上昇で沈む島国が出て、山火事や巨大台風などの自然災害が多発し、水不足、食糧危機、感染症のリスクなどが増大する。このような未来が科学的に予測されている現状で対策を取らないという選択肢はない。問題の根幹は現在の「成長型」経済システムにあるので、「脱成長」の経済システムに転換する必要がある。ただ、現在の状況で「脱成長」の経済システムに転換すれば景気後退は避けられなくなる。

深刻な景気後退に陥ると、財政問題や福祉問題など目先の深刻な問題が噴出するようになり、それらの問題に対処せざるを得なくなる。そのため経済システムの転換はしばらく先になりそう。環境危機が目先の大問題に発展したときに初めて転換の機運が生まれるのではないかと思う。

2022年、2023年は世界各地で記録的な熱波や干ばつが発生した。英保険仲介大手のエーオンによると22年の気象災害の損失は2990億ドル(約40兆円)に達するという。IPCCは「産業革命前に比べた世界の気温上昇は2030年代初めにも抑制目標の1.5度に達する」と予測している。経済システム転換の機運は早々に訪れるのかもしれない。

もしくはAI・ロボット社会が温暖化問題の打開策になる可能性もある。温暖化の最大の要因は「人の活動」になるが、AIやロボットが進化・普及すれば、数十億人の「無用者階級」が生まれるともいわれているので、人が減っていく可能性がある。そうなれば環境負荷の低い社会が実現する。

国連が2022年7月に発表した世界人口推計では「2086年に104億人で人口はピークを迎える」と予測しているが、この数値は2019年の予測「2100年に109億人でピークを迎える」からピーク時期が前倒しされている。AIやロボット、教育などの影響を考えると、今後もピーク時期の前倒しが続く可能性が高い。


景気後退シナリオ4:災害や紛争で景気後退?
大災害や戦争が起こると景気には強い下押し圧力がかかる。しかし、こうしたことが起こると必ず政府が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば景気はV字回復することが多い。一般に、災害や戦争は押し目買いのチャンスといわれている。今回のような新型コロナウイルスのパンデミックも株式市場には追い風で、社会・経済構造の転換や金融緩和などにより、株高が発生しやすくなる。

ただし、日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は1000兆円規模の損失が発生するようなので、景気後退もしくは財政破綻する可能性がある。


■今後の計画
景気後退に陥り、円が135円くらいまで上昇したら、3倍以上の値上がりが見込める海外資産を買っていく。景気後退に陥らなさそうな場合は、そのときまた考える。

禅と経営

 5/21日経で、買収巧者の前田工繊の社長が「毎朝の座禅が欠かせない」みたいなことを言っていた。社長によると座禅で頭を空っぽにすると、新しい情報が入ってきたり、いいアイデアが浮かんだり、日々リフレッシュできたり、物事を正しく理解できたりするという。そして最後には「禅の思考は私にとっての天命である」とまで言っている。

禅は株式投資とはあまり関係なさそうだとは思ったが、禅にはもともと興味があり、経営との関連も多少ありそうなので、ここで禅について調べたことを簡単にまとめていくことにする。

私は7,8年前に『サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』を読んでから、マインドフルネスをちょくちょくするようになった。そして3年くらい前に『21LESSONS 21世紀の人類のための21の思考』を読んで、著者のハラリ氏がヴィパッサナー瞑想をやっていると知り、それに影響されて(笑)、去年、その瞑想を体得する10日間の合宿に参加してきた。以来、ヴィパッサナー瞑想を毎朝やっている。

ヴィパッサナー瞑想とは、自分のあるがまま(ヴィパッサナー)を受け入れて、自己の感覚や思考を観察し、自己の反応パターンを知って、自己をコントロールしていくという瞑想法になる。「無常」や「反応癖(執着癖)」について学び、瞑想でそれらを体感することによって、ストレスを減らしたり、集中力を高めたりする効果があるとされる。

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*反応癖について
ストレスには元のストレスとそれに反応して出る二次的なストレスがある。この二次的なストレスが脳を疲労させる。瞑想で自分を観察していると、ストレスへの執着や反応が新たなストレスを生んでいることがわかる。瞑想をして無常を実感すると、自然にこの執着や反応は消えていく。

*無常について
宇宙にあるすべてのものは生まれては消える。もちろんそれは人の心についてもいえる。それなのに人は過ぎ去った過去の出来事や未来に起こりうることに思いを巡らし、喜んだり悲しんだりする。生まれては消えるものに執着することに意味がないことを瞑想を通じて理解する。
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現在、ヴィパッサナー瞑想を1年以上続けており、「集中力を高める」という当初の目的はほぼ達成できたように思う。しかし、どうもしっくりこないところがある。

ヴィパッサナー瞑想では肉体と精神は表裏一体で、精神に変化があれば感覚も同時に変化すると考えられている。そのため感覚の微細な変化を感じるとることによって精神の微細な変化を感じ取り、自己を深く理解できると考える。感覚の微細な変化は全身のどこにでも表れる可能性があるので、瞑想では全身の感覚をくまなく体系的に観察していく。

ヴィパッサナー瞑想では自分の呼吸や体(主に体表)の感覚をひたすら観察する。雑念が浮かんだときはそれも、反応せずに、ありのままを観察する。しかし、実際にやってみると精神に変化があっても微細な感覚は内臓(胃のあたり)や脳にしか表れない。合宿では、なにかしらのしつこい心の執着(反応癖)を抱えている場合は「粗雑な感覚」というものが体表のどこかに表れるとも言われるが、そのような感覚も味わったことがない。

瞑想をしていて、このような感覚を感じることができないので、体表観察のモチベーションがあまりわかない。聡明なハラリ氏がこの瞑想法にはまっているので、手応えを感じられないのはこちらの単なる理解不足が原因とは思うが、資料もなく、対策も思い浮かばないので、手詰まり感がある。合宿中に指導者の老白人にこの点を質問しても腑に落ちるような回答は得られなかった。現在ある科学的な方法でこの微細な感覚や粗雑な感覚はおそらく測定できないので、それもモチベーション低下の一因になっている。

それでも、呼吸や雑念などの観察には意義を感じており、メンタルのリセット効果もあるので瞑想は続けている。だがなにかが欠けているという感じは常にあった。
*雑念タイムにはアイデアが浮かびやすくなる(考えがまとまりやすくなる)。

そんなときに、記事の中にある「座禅は捨てる作業です」という言葉が目に留まった。ヴィパッサナー瞑想で最も重要な目的は「無常」を体感して、「反応癖(執着)」をなくすことになるが、この「無常」を体感することや「反応癖」をなくす作業は「捨てる作業」に近い。ヴィパッサナー瞑想では意識を特定の方向に誘導することはよしとしないが、あらかじめ「捨てる」という方向付けがあったほうが瞑想に身が入りやすくなる。実際、このような方向付けをすると「無」に近づきやすくなる。

禅では知識や経験、肩書きなどを捨てていく作業をする。子どものころの純粋な状態に戻ろうとする。そのようにして「空っぽ」の状態になると新しいものが入ってきたり、目の前にあるものの価値に気づけたりするようになるという。

この思想法を試してまだ1ヶ月くらいだが、前田工繊の社長が言っていることがなんとなくわかってきた。確かにこだわりなどを捨てると、それを補うためか新しいアイデアが入ってきやすくなる。これまで知識や経験は蓄積していくものとばかり思っていたので、ややとまどってはいるが、こういう方法もよさそうだと思い始めている。今後もしばらく続けて様子を見ていきたい。

前田工繊の社長が師事する平井住職が書いた『囚われない練習 ~人生を変える禅の教え』を買ってみたら、その帯に安倍首相が「求めない。だから手に入る。平井住職との交わりをきっかけに私は私の道を行く心を決めました」と書いていた。禅をやっているとこのような展開になることもありそう。安倍首相には鈍感力や行動力があったが、禅の思想がそれらのベースになっていたのかもしれない。

書いていて思い出したが、米経営者で瞑想をしている人は多い。アップルのスティーブ・ジョブズなんかはまさに禅をやっていて、あらゆる製品にシンプルさを求めたのは禅の影響もあったのかもしれない。他にも瞑想をやっている米経営者といえば、セールスフォースのマーク・ベニオフ、メタのマーク・ザッカーバーグ、マイクロソフトのビル・ゲイツ、ブリッジ・ウォーターのレイ・ダリオなどが思い浮かぶ。グーグルには会社の中に本格的な瞑想教室まである。

禅(瞑想)と株式投資には関係がありそうなので、書いて正解だった。今回、平井住職の著作を読んで禅の考え方がおもしろかったので、東京に行った時は平井住職の寺で座禅を組んでみたい。