2024年7月1日月曜日

禅と経営

 5/21日経で、買収巧者の前田工繊の社長が「毎朝の座禅が欠かせない」みたいなことを言っていた。社長によると座禅で頭を空っぽにすると、新しい情報が入ってきたり、いいアイデアが浮かんだり、日々リフレッシュできたり、物事を正しく理解できたりするという。そして最後には「禅の思考は私にとっての天命である」とまで言っている。

禅は株式投資とはあまり関係なさそうだとは思ったが、禅にはもともと興味があり、経営との関連も多少ありそうなので、ここで禅について調べたことを簡単にまとめていくことにする。

私は7,8年前に『サーチ・インサイド・ユアセルフ ― 仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法』を読んでから、マインドフルネスをちょくちょくするようになった。そして3年くらい前に『21LESSONS 21世紀の人類のための21の思考』を読んで、著者のハラリ氏がヴィパッサナー瞑想をやっていると知り、それに影響されて(笑)、去年、その瞑想を体得する10日間の合宿に参加してきた。以来、ヴィパッサナー瞑想を毎朝やっている。

ヴィパッサナー瞑想とは、自分のあるがまま(ヴィパッサナー)を受け入れて、自己の感覚や思考を観察し、自己の反応パターンを知って、自己をコントロールしていくという瞑想法になる。「無常」や「反応癖(執着癖)」について学び、瞑想でそれらを体感することによって、ストレスを減らしたり、集中力を高めたりする効果があるとされる。

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*反応癖について
ストレスには元のストレスとそれに反応して出る二次的なストレスがある。この二次的なストレスが脳を疲労させる。瞑想で自分を観察していると、ストレスへの執着や反応が新たなストレスを生んでいることがわかる。瞑想をして無常を実感すると、自然にこの執着や反応は消えていく。

*無常について
宇宙にあるすべてのものは生まれては消える。もちろんそれは人の心についてもいえる。それなのに人は過ぎ去った過去の出来事や未来に起こりうることに思いを巡らし、喜んだり悲しんだりする。生まれては消えるものに執着することに意味がないことを瞑想を通じて理解する。
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現在、ヴィパッサナー瞑想を1年以上続けており、「集中力を高める」という当初の目的はほぼ達成できたように思う。しかし、どうもしっくりこないところがある。

ヴィパッサナー瞑想では肉体と精神は表裏一体で、精神に変化があれば感覚も同時に変化すると考えられている。そのため感覚の微細な変化を感じるとることによって精神の微細な変化を感じ取り、自己を深く理解できると考える。感覚の微細な変化は全身のどこにでも表れる可能性があるので、瞑想では全身の感覚をくまなく体系的に観察していく。

ヴィパッサナー瞑想では自分の呼吸や体(主に体表)の感覚をひたすら観察する。雑念が浮かんだときはそれも、反応せずに、ありのままを観察する。しかし、実際にやってみると精神に変化があっても微細な感覚は内臓(胃のあたり)や脳にしか表れない。合宿では、なにかしらのしつこい心の執着(反応癖)を抱えている場合は「粗雑な感覚」というものが体表のどこかに表れるとも言われるが、そのような感覚も味わったことがない。

瞑想をしていて、このような感覚を感じることができないので、体表観察のモチベーションがあまりわかない。聡明なハラリ氏がこの瞑想法にはまっているので、手応えを感じられないのはこちらの単なる理解不足が原因とは思うが、資料もなく、対策も思い浮かばないので、手詰まり感がある。合宿中に指導者の老白人にこの点を質問しても腑に落ちるような回答は得られなかった。現在ある科学的な方法でこの微細な感覚や粗雑な感覚はおそらく測定できないので、それもモチベーション低下の一因になっている。

それでも、呼吸や雑念などの観察には意義を感じており、メンタルのリセット効果もあるので瞑想は続けている。だがなにかが欠けているという感じは常にあった。
*雑念タイムにはアイデアが浮かびやすくなる(考えがまとまりやすくなる)。

そんなときに、記事の中にある「座禅は捨てる作業です」という言葉が目に留まった。ヴィパッサナー瞑想で最も重要な目的は「無常」を体感して、「反応癖(執着)」をなくすことになるが、この「無常」を体感することや「反応癖」をなくす作業は「捨てる作業」に近い。ヴィパッサナー瞑想では意識を特定の方向に誘導することはよしとしないが、あらかじめ「捨てる」という方向付けがあったほうが瞑想に身が入りやすくなる。実際、このような方向付けをすると「無」に近づきやすくなる。

禅では知識や経験、肩書きなどを捨てていく作業をする。子どものころの純粋な状態に戻ろうとする。そのようにして「空っぽ」の状態になると新しいものが入ってきたり、目の前にあるものの価値に気づけたりするようになるという。

この思想法を試してまだ1ヶ月くらいだが、前田工繊の社長が言っていることがなんとなくわかってきた。確かにこだわりなどを捨てると、それを補うためか新しいアイデアが入ってきやすくなる。これまで知識や経験は蓄積していくものとばかり思っていたので、ややとまどってはいるが、こういう方法もよさそうだと思い始めている。今後もしばらく続けて様子を見ていきたい。

前田工繊の社長が師事する平井住職が書いた『囚われない練習 ~人生を変える禅の教え』を買ってみたら、その帯に安倍首相が「求めない。だから手に入る。平井住職との交わりをきっかけに私は私の道を行く心を決めました」と書いていた。禅をやっているとこのような展開になることもありそう。安倍首相には鈍感力や行動力があったが、禅の思想がそれらのベースになっていたのかもしれない。

書いていて思い出したが、米経営者で瞑想をしている人は多い。アップルのスティーブ・ジョブズなんかはまさに禅をやっていて、あらゆる製品にシンプルさを求めたのは禅の影響もあったのかもしれない。他にも瞑想をやっている米経営者といえば、セールスフォースのマーク・ベニオフ、メタのマーク・ザッカーバーグ、マイクロソフトのビル・ゲイツ、ブリッジ・ウォーターのレイ・ダリオなどが思い浮かぶ。グーグルには会社の中に本格的な瞑想教室まである。

禅(瞑想)と株式投資には関係がありそうなので、書いて正解だった。今回、平井住職の著作を読んで禅の考え方がおもしろかったので、東京に行った時は平井住職の寺で座禅を組んでみたい。

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