2024年7月1日月曜日

保有株

保有比率の高い順に見ていく。

■プラスアルファ・コンサルティング
基本シナリオ:「タレントパレット」事業を軸に2030年に利益2.5~4.5倍

2Q決算は予想よりだいぶよかった。少し安堵した。しかし株価は上場来安値を更新してしまった(笑)。下落の主因はグロース市場の地合いの悪化になりそうだが、M&A失敗の影響もありそう。PAC社の株価は1Q決算あたりまではグロース指数を上回っていたが、1Q決算でM&Aの失敗が露呈し始めたあたりからグロース指数を下回っている。
*PAC社はプライム市場に上場しているが、株価はグロース指数と連動している。

<PAC社株価とグロース指数の比較チャート>


前回のブログで、M&Aをしたグローアップ社の今期業績は「経営戦略の問題によりゼロ成長を予想する」と書いているが、今期の売上高は微増で、利益は大幅なマイナス成長に陥りそう。2Q単体では利益がもうほとんど出ていない。この調子でいくと近い将来減損になる可能性もある。

経営戦略のどこに問題があったのか。それは前回指摘したとおり、タレントマネジメントの失敗になりそう。決算説明でPAC社は今回の敗因を「2025年卒の採用プランの出だしで遅れてしまったことと、リード(見込み顧客)獲得の手法で、あまり有効でない、確度の低いリードを集めてしまったこと」としており、見当違いなターゲットを攻めていることがわかる。

5/28日経によると、学生向けダイレクトリクルーティング市場で確度の高いリードは「知名度の低い優良中小企業」になりそうだが、PAC社は「学生から社会人までのデータプラットフォーム構想」に沿って、大企業中心の「タレントパレット」の顧客に集中的に営業をかけたのかもしれない。

もしそうだとしたら、これはこれで悪くはないと思う。自社のハイパフォーマーと似た属性を持つ学生をスカウトするという新たな需要を掘り起こせるかもしれないから。しかしうまくいかなかった(多分)。もし創業社長がいたら、こういった発想も取り入れた精度の高い経営戦略を立てられたのではないかと思う。そう思うと残念。

PAC社は今回の失敗を糧にして、今後は質の高いM&Aを手がけていくとは思うが、「経営者(後継者)の選定」という最も重要なタレントマネジメントを失敗しているので、経営陣への信頼はだいぶ低下してしまった。


PAC社は6月に1件M&Aをした。この会社は元同僚が設立した会社であり、すでに人事戦略系のシンクタンクで協業しているので、問題なく順調に運営していけそう。今回のような知見を強化するM&Aは、高度なコンサルティングや戦略的なシステム構築につながるので、好感を持てる。


ヤフー掲示板のPAC社スレッドに「タレントマネジメント市場で競争が激化している」とあった。確かにこの市場にはスマートHRやビジョナルなどが参入してきて、それらの会社の勢力が急拡大しているが、それらの会社が提供するツールは人事DXを主としているので、分析機能に強みのある「タレントパレット」とは棲み分けができそう。「タレントパレット」は4月以降、値上げに動いているが、これはここらへんへの自信の表れではないかと思う。

*前回のブログで「タレントパレット」の値上げは「便乗値上げ」というニュアンスで書いているが、PAC社の値上げ戦略を見ると、各ツールによって値上げ幅、もしくは値下げ幅を調整している感じで、付加価値に見合ったプライシングをしているもよう。懸念していた値上げによる競争力低下という問題は生じなさそう。

とはいえ、PAC社は今期から小規模な事業者向けに機能を絞った簡易版「タレントパレット」の提供を始める。この領域はレッドオーシャン化しているので、やや厳しい展開になりそう。

大企業向けの「タレントパレット」導入ペースが若干落ちているのも気になる。ただこれも原因は競争激化というより、「人的資本経営ブーム」がいったん落ち着いたことによる影響が大きそう。「人的資本経営」は息の長いテーマになりそうなので、今後はぼちぼちなペースで導入が進んでいくのではないかと思う。

6/27日経に「「人的資本経営」企業に保険料5%割引」という記事があった。一部の大手保険会社は人的資本経営に関する国際認証「ISO30414」を取得した会社に対し、契約した業務災害補償保険の保険料を5%割り引くという。対象になるのは主に中小企業になるようだが、「人的資本経営」は業務以外でもメリットが出てきたので、普及は着実に進んでいきそう。


ここまでいくつか問題点を挙げてきたが、2Q決算を全体的に見ると、わりかし順調に見える。「タレントパレット」の新機能の開発も順調に進んでいるようで、この開発サイクルが高速で回転している限りは優位性を保てそう。今期は上方修正の見込みはほぼなくなってしまったが、大幅な下方修正も避けられるのではないかと思う。


学生版「タレントパレット」の「ヨリソル」事業で新規導入が増えてきた。2Qは14件の増加になる。

2019年に始まった「GIGAスクール構想」は、2024年から「セカンドGIGA」に移り、本格的な教育DXが始まりそうな気配になってきた(4/22日経4/17日経)。すでに全公立校に導入予定の教育基盤プラットフォーム「校務支援システム」の試験導入が始まっており、「ヨリソル」もその普及に合わせて普及していきそう。4月には「ヨリソル」が経産省が公募している「働き方改革支援補助金2024」の対象事業に認定されたようなので(4月22日IR)、教師向けのタレントマネジメントでも伸びていきそう。

今年、デジタル教育の拠点となる高校「DXハイスクール」が全国に1000校(公立が7割超)誕生する(4/16日経)。DX人材を育成するには、まず生徒自らがデータドリブン(データ駆動)の有用性を実感する必要もありそうなので、このようなところでも「ヨリソル」の導入が進みそう。

5/7日経に「教室に同年齢の生徒を集めて同じ内容を教える。工業化と近代化を進めるにはこのような画一的な人材を育てる教育モデルが都合よかった。しかし、技術革新が経済成長を左右するデジタル社会では、多様な人びとの個性と力を引き出す教育が求められる。一斉型から個別最適型への教育の転換が必須」とあった。これは確かにその通りで、個別最適型の教育には「ヨリソル」のようなシステムが必須になるので、その意味でも「ヨリソル」は普及していきそう。英国の一部の学校ではすでに「ヨリソル」のようなシステムを導入していて、データを基に個別最適型の指導をして、顕著な成果を上げているという。「ヨリソル」が時代の波に乗ることを期待したい。

5/6日経に「市場調査会社グローバルインフォメーションは教育関連の世界市場が2030年に4千億ドル(約61兆円)と2022年の3.2倍になるとみる」とある。5/9日経には「デジタル教科書は世界で急速に広がっており、デジタル教育出版市場が35年には22年比で6.6倍の885億ドル(約13兆円)になると予想されている」とある。これらを総合すると、教育DX市場は今後10年で5倍くらい成長しそう。「ヨリソル」が今後10年でどこまで成長できるか注目していきたい。


6/5日経に「生成AIの登場でコンサル業界の存在意義が問われ始めている」「2030年の国内市場は約2兆1000億円と2022年から1割の増加にとどまる」とあった。PAC社はコンサル会社でもあるので、この点を少し心配したが、PAC社がコンサルするのはDXやデータドリブンに関するところであり、これらの領域では高成長が続きそうなので、この点はあまり問題なさそう。


チャートは微妙な感じ。「4~6月の売買」のところで触れたように、底打ちの兆しはある。しかし上場来安値を更新しているので需給は悪い。市場で株式を買った株主はほぼ全員含み損を抱えているので、これらがすべてが戻り売り圧力になるといっても過言ではない。加えて、信用買い残が過去最高水準まで積み上がっているので、上値は相当重くなりそう。

PAC社株はグロース指数と連動しているので、グロース指数の値動きも重要になる。グロース指数も底打ちの兆しはあるが、最安値を更新しているので需給は悪い。中期では下降トレンドになっている。グロース指数の変動要因はまだよくわかっていないが、EPSと金利が主要因だとしたら、下降トレンドから抜け出すのは難しいかもしれない。

グロース企業は内需ビジネスが多いので、円安&インフレはコストアップ要因になり、業績はダメージを受ける。金利に関しては、グロース株は金利と逆相関の関係になりやすいので、上昇基調にある日本金利はネックになる。ただ米金利の方が日本金利よりも強い逆相関関係がある場合は、米金利は下落基調なのでグロース指数にはプラスに作用する。今後グロース指数がどのようなトレンドをたどるのかよくわからないが、今後の観察でその変動要因を見極めていきたい。・・もしかするとグロース指数の値動きの主要因はセンチメントかもしれない。(詳細は「マクロ系金融指標」で)


現在の妥当な株価はどのくらいか。この会社の決算期は9月なので、もうそろそろ来期の業績を織り込み始めてもよさそう。来期の会社予想業績は売上高167億円(前期比+21%)、営業利益64.5億円(+35%)、純利益43億円(+33%)になる。若干下ブレしそうだが、とりあえず、この数値をベースに計算してみる。
*純利益額は当ブログの推測

今回のM&Aのミスにより、経営陣への信頼が落ちて、株主資本コスト(5/11日経)が上昇したので、その分、予想PERは5倍くらい下がる。予想PERを30~35倍として計算すると、妥当な時価総額は1290~1505億円、株価は3000~3550円くらいになる。このときのPSRは7.7~9倍になる。

今後3年の予想売上高成長率は年13~23%程度、予想利益成長率は年20~30%程度。2030年の予想売上高は現在の2~2.5倍くらい、予想純利益は現在の2.5~4.5倍くらい。



■イントラスト
基本シナリオ:家賃債務保証と医療費用保証で2027年3月期に売上高150億円、営業利益30億円

予想より若干上振れした良好な本決算だった。
今期の予想売上高は102億円(前期比+14%)、営業利益は23億円(+12%)、純利益は13億円(+11%)、営業利益率は22%になる。勢いは鈍化しているが悪くない数字。

中期計画第3弾が出た。2027年3月期の売上予想は150億円、営業利益30億円、営業利益率は20%になる。これはブログで予想していた数字と一緒。配当性向は現在の30~40%から40~60%に上昇する予定。成熟感は出てきたが、会社の成長志向は健在で、新規事業やM&Aなども着実に手がけていきそうなので悪い印象はない。

なお、2027年3月期の売上高の内訳は、家賃保証が131.5億円、医療費用保障・介護費用補償が13億円、養育費事業・その他新規事業が5.5億円になる。医療費用保証事業の売上が少し物足りなくも感じるが、足元で投資を拡大させており、社長は「今期は契約数が大幅に増加しそう」と言っているので、予想をいくらか超えてくることもありそう。期待したい。

2023年に親会社から買い取った(買い取らされた?)家賃保証会社のプレミアライフは下期に黒字転換したもよう。予想通りの展開。社長ならたやすいだろうなと思った。

6月に家賃保証や事業用物件の保証事業を手がけるラクーンレントを買収する協議に入った(IR)。ラクーンレントは家賃保証で独自性のある商材を開発しており、事業用物件の保証事業は10年以上やっている。イントラストは事業用保証事業への本格参入を模索しており、今回の買収をその足がかりにするもよう。ラクーンレントの買収額はまだ決まっていないようだが、過去3年の平均売上高4.4億円、平均営業利益-1千万円、成長率0%、資産・負債は不明、今後の相乗効果などから見積もると、だいたい3〜4億円くらいになるのではないかと思う。


前回のブログで、単身高齢者向けの家賃債務保証にイントラストが参入したらおもしろくなりそうだと書いていたが、すでに参入していたことがわかった。イントラストは地銀が運営する家賃債務保証のシステム構築支援やノウハウの提供などを行っているという(4/8IR4/10日経)。これはさすがという感じ。単身高齢者は、この事業においてはリスクの高い顧客になる。システム支援という裏方に回ることでそのリスクを回避できる。インストラストは今回培ったノウハウを『家賃保証システム 地銀モデル』として全国の地方銀行に販売していく予定という。

6/11日経に「今後単身高齢者が急増していく」とあった。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上の単身高齢者数は2050年に1084万人と、20年時点の約1.5倍になるという。病院や介護施設に入る際には身元保証人が求められる。死去したあとは遺体の引き取りや家財処分などの死後対応が必要になる。身寄りがなければこのようなサービスにアクセスできないリスクが高まる。

すでに身元保証をビジネスとする民間の身元保証事業者が全国に400くらい誕生しているという。しかしそこには信頼性が乏しいという問題がある。例えば、本人死亡後に契約履行についてチェックする人がいないという問題がある。また契約内容が複雑で料金が高額になることもあるという。ここにイントラストが参入する余地がある。イントラストなら簡潔明瞭で、信頼性の高いサービスを提供できるのではないかと思う。この分野への参入も少し期待したい。


養育費の不払いを防ぐ仕組みなどを取り入れた民法改正が5月に成立した。この法改正により、離婚時の取り決めがなくても親権の有無にかかわらず最低限の養育費を請求できるようになるという(5/17日経)。イントラストの養育費事業に追い風が吹いてきた。ただ、この「法定養育費制度」の創設は2025~26年頃になりそう(6/15日経)。追い風が吹くまでもう少し時間がかかりそう。

6月発行のイントラスト株主通信に「養育費保証については、保険会社との協業によって募集と加入に関する課題を解消。収益性に乏しかった従来の商品から大きくバージョンアップした商品をお届けできる見通しが立ちました」とある。進捗は順調なもよう。

今年の株主通信から紙版がなくなりウェブ版だけになった。「地球環境等に配慮する観点」からそのようにしたという。しかしその「お知らせ」が入っていた封書にクオカードも一緒に入っていた。これも「地球環境に配慮」してやめたらいいのに、その分を配当に回したらいいのに、と思った。


今後3年の予想売上高成長率と利益成長率は共に年10~15%程度。現在の妥当だと思う時価総額は230億円(株価1000円、PER18倍、PSR2.7倍)。2030年の予想売上・利益は現在の2倍くらい。


■今後の計画
しばらく静観する予定だったが、チャンスが来たと思ったので動いてしまった。でもこういう感じも悪くなさそう。というか、こういうスタンスこそが長期投資にはベストではないかと思った。今後もしばらく「基本静観、チャンスが来たら動く」というスタンスでいこうと思う。

現在、米VIX指数が最低水準で推移しているので、そろそろ市場が大荒れしそう。市場が荒れて米VIXが40超、日経平均の騰落レシオが65以下になったら株式などを買っていく。できればドル建て資産を買っていきたい。米景気が後退局面に入った場合は、後退突入後、5〜10ヶ月くらいたったころに買っていく。

0 件のコメント:

コメントを投稿