2025年4月1日火曜日

1月~3月の売買

■2月
プラスアルファ・コンサルティング 半分売却(*NISA以外) 損益-42%

成長力がなくなったと思ったから。HR事業の1Qの導入企業数は+58と、これまでの四半期平均+100から大幅にダウンした。前期3Qと4Qにマーケティング投資を増やしていたにもかかわらず、この数字は厳しいと思った。なお、同期間に競合のカオナビは順調に導入を増やしている。マーケティング・ソリューション事業は-30とこちらも厳しいと思った。

経営陣への信頼がなくなったから。本決算で会社は「保守的」かつ「必達」な業績予想を出しているが、1Qでいきなり大幅な下振れを予感させる数字を出してきた。3Qあたりで「達成は難しい」というのならまだしも、1Qでこれはないと思った。1Qの決算資料を読むと、前回の本決算の時点で、すでに会社は業績下振れに気づいていた節がある(後述)。なんにせよ、経営陣が言っていることは、もはやノイズとしか感じられなくなってしまった。

■3月
プラスアルファ・コンサルティング 半分売却 損益-47%
                 旧NISAも半分売却 損益-50%

上記理由が決算後の第一印象で、その後詳しく調べてみても印象はあまり変わらなかった。業績は今期がピークになり、来期以降は減益になる可能性も少なからずありそうだと思った。

PERは15倍を切っており、反発の芽もありそうだとは思ったが、信用買いが決算後に倍増して150万株近くになっていたので(現在は164万株)、上値は重くなりそうだと思った。

旧NISA分は損失が-50%に達しない限りしばらく保有するつもりだったが、3月にあっさり達してしまったので(笑)、売却した。

保有株

保有比率の高い順に見ていく。

■イントラスト
基本シナリオ:「賃貸保証会社」から「多角的な保証プラットフォーマー」へ

イントラストの株価が伸び悩んでいるのは、家賃債務保証事業の次の成長ドライバーが見当たらないためだとやっとわかった。現在は家賃債務保証事業が業績の牽引役だが、この事業の成長はあと1、2年で止まる。医療債務保証は伸びてきてはいるが、まだ業績の牽引役というほどでもない。次の柱が見つかるまでは株価は低位にとどまりそう。

足元の業績は順調。今期は売上が100億円を超え、営業利益は23億円を超えそうなので、申し分ない。

決算説明で社長は売上を最低でも500億円にしたいと言っていた。社長の経営力とM&Aや新保証商品の開発でなんとかその目標を達成してくれたらと思う。

2/15日経に「病院が消える?経営厳しく」という記事があった。病院の数は減少傾向で直近10年で約400カ所減少しているという。原因は人口減、コスト高、人手不足あたりらしい。ただ現在の病院数は約8000で、スマホスの導入企業数はまだ200以下なので、伸びしろはまだまだありそう。

今後3年の予想売上高成長率と利益成長率は共に年10~15%程度。現在の妥当だと思う時価総額は230億円(株価1000円、PER15倍*来期の予想EPSで計算)。2030年の予想売上・利益は現在の2倍くらい。


■プラスアルファ・コンサルティング
基本シナリオ:競争激化で悪戦苦闘

1Q決算は楽観していただけに、あまりにネガティブな内容にびっくりした(笑)。IRページのトップに「2025 年 9 月期 第 1 四半期決算について想定されるご質問に対する回答」という”言い訳”めいたIRがありイヤな予感がしたが、蓋を開けてみると案の定、非常に悪い決算だった。

ネガティブサプライズは2つ。1つは、主要2事業で導入企業数が頭打ちになりつつあること。ソフトウェア市場は拡大基調にあるので(2/1日経)、PACのソフトウェアの販売が伸び悩んでいるのは競争力低下が原因になる。競争力低下の原因は競争激化とそのタイミングでの値上げになりそう。

2/26SBIレポートには、「「タレントパレット」の導入数が伸び悩んだのは、競争が激化している中小企業向け市場から実質ほぼ撤退したためで、大企業向けでは特に問題ないもよう」みたいなことが書いてある。1Qに導入した企業がすべて大企業ならまだなんとかなりそうだが、決算資料にはそこらへんの内訳が全く書かれていないので、実際のところはよくわからない(スポット売上でなんとなくはわかるが、売上を計上するタイミングがズレる)。また「タレントパレット」の導入か「ヨリソル」の導入かもわからない。

*マーケティング・ソリューション事業では解約が増え導入減となっているが、解約が増えているのは主に「見える化エンジン」になる。SBIレポートには「見える化エンジン」について、「既に成熟期を迎えた中、ここ数年はやや価格を下げMID・SMB 層の新規顧客獲得に努めてきた」とあるのですでに導入は頭打ちのように見える。ここで少し気になるのは2024年5月の決算説明資料に「「見える化エンジン」の価格を4月以降、順次約20%値上げ」とあること。「見える化エンジン」を値下げしたのか、値上げしたのか、実際のところどちらなのかよくわからない。

「タレントパレット」の解約も増えているようで、決算資料には、長期契約企業の離脱が増えている、みたいなことが書いてある。去年4月からの値上げにより、ある程度の解約は予想していたが、長期契約企業の解約は予想外。長く使っている人事システムはよほどのことがない限り変えないので、よほど不満がたまっていたのかもしれない。PACは決算でわざわざ解約について詳しく触れているので、足元でも解約が増えている可能性がある。

*「タレントパレット」の顧客はクラウドERP(統合基幹業務システム)に流れている可能性がある。クラウドERPはコストやスピードなどの面で優位性があり、それらを提供する外資大手はそこにAIエージェントを搭載し始めているので競争力は高そう。生成AIにより言語の壁も消失しつつあるので、今後はこちらがスタンダードになっていくのかもしれない。

*大企業ではシステムの内製化が進んでいる可能性もある。現在、ノーコード・ツールやコードを書けるAIにより、ソフトウェアを容易に作れるようになりつつあり、多くのSEを抱える大企業ではソフトウェアを自前で作り始めている(2/27日経クロステック3/11日経1/5日経)。3/14日経には「テルモは世界中の拠点で働く社員の最適なポストの配置をAIが導き出す人材マッチングシステムを開発」とあり、人事系の先端システムも自前で作り始めている。

HR事業では1Qにマーケティング投資を多めに行ったため、2Q以降はやや抑えるという。そうなると導入数がさらに伸び悩みそう。

AIのDeep research機能で、PACのレポートを書かせると「(主要2事業の)大企業市場はいずれ飽和に近づくため、新市場開拓(中堅企業や海外)が求められます」という一文が出てきた。タレントマネジメントシステムの国内市場は大企業が約4500社で、「タレントパレット」の導入企業数約730、「カオナビ」の導入企業数約670を合わせると、現在両社で約3割を押さえていることになる。当初は、あと2.5倍くらいの成長余地があると思っていたが、クラウドERPに付帯されているタレントマネジメント・システムや競合システム、自社製システムなどを考慮すると、もう開拓余地はそれほど残されていないのかもしれない。なお、マーケティング・ソリューションの大企業市場はすでに飽和している。

以上、競争激化、値上げ、「タレントパレット」の中小企業向けほぼ撤退、解約増、投資減、開拓余地縮小の影響を考慮すると、今後は両事業とも導入企業数が伸び悩む可能性が高い。

前回のブログに「「タレントパレット」の今期予想KPIがカットされている。なにか不都合な事情があるようにみえるが、その理由がよくわからない」と書いているが、そのカットした理由は、この導入企業数の減少になりそう。前期の導入企業数は+418(「ヨリソル」含む)だが、今期はその半分くらいになりそうなので、それで悪印象を避けるためカットしたのかもしれない。

都合の悪いKPIを隠すのはこれまで他の会社でよく見てきたことなので特段の驚きはないが、このような状況下での経営者の強気発言は初めて。PACは今期業績予想について「保守的」「必達」と言っている。インサイダーが発する強い言葉には影響力があるので、このような情報を発信すると、投資家をミスリードしてしまう。

前回のブログには「「タレントパレット」の参入障壁が崩れつつあるように見える」「今期の業績予想は数字ありきで、内容を伴っていないものなのかもしれない」と書いているが、会社が発した「保守的」「必達」という力強い言葉に惑わされ、今期は順調に成長するものと判断してしまった。

1Q決算のもう1つのネガティブサプライズである「キミスカ」事業の大幅な下振れについても、昨年10月のブログには「競争の激しい市場で、業界無知のツートップが片手間で経営しているので、勝ち残れる可能性はほぼない」「減損の可能性もある」と書いているが、会社の強気発言により、なにか打開策を見つけたと解釈してしまった。

11月に発表した自社株買いでは、その後の買い方をみると、業績下振れを予想していたようにも見える。通常、株価が低迷していて今後の業績に自信がある場合、自社株買いの予定枠を早々に使い切る。しかし、今回のケースではそのようにはせず、株価下支えのような買い方を1Q決算後までしていた。

解せないのは、業績下振れが1Qで表面化する確率が高いとわかっていながら、なぜこのような強気発言をしたのかということ。経営者は現実を直視しない理想主義者なのだろうか、単なる自信過剰なのだろうか、それとも適当にごまかせると思ったのだろうか・・。このあたりのことはよくわからないが、この会社の経営者は信頼しにくいと思った。

2/27日経には「大企業では取締役会やアナリストの前では「誤り」を認めるのが禁句になっている」「株主をだまし始めると、自分のデタラメを信じ込んで、自分自身もだまされてしまう」とある。これがPACにどこまで当てはまるのかはよくわからないが、現実と発言の間に大きなズレがあることは確か。ただ記事には「うまくいかない戦略であれば認めて転換し、本来の強みに集中することで復活ができる」ともあるので、PACも誤りを認めて転換すれば、復活の道もあるのかもしれない。

今期の「キミスカ」事業は大幅に下振れそう。期初の予想では売上高12億円(前期比+16%)、営業利益1.75億円(前期比±0%)となっているが、1Qの売上高は1.3億円(前期比-30%)で営業損失は1億円(7千万円の赤字拡大)になる。決算資料には「受注が弱い状況は短期間で改善することは厳しい状況」とあるので、今期の売上高はうまくいっても8億円くらいになりそう。利益に関しては「2Q 以降は費用面を圧縮し、通期では黒字を目指していく」とはあるが、投資を抑えると売上がさらに減少しやすくなるので、黒字にできない可能性もある。

以上を総合して、今期業績はどうなるか。「キミスカ」事業は当初計画から売上4~5億円下振れし、利益は2~3億円下振れしそう。赤字で着地した場合は事業継続が困難と判断し、期末に6~7億円減損する可能性もある。「タレントパレット」事業は値上げの影響で数字的には若干の下振れですみそうだが、導入企業数の伸び悩みにより、売上は4~5億円、利益は2~3億円下振れする可能性がある。マーケティング・ソリューション事業は導入企業数が伸び悩みそうだが、値上げ効果で売上、利益は1億円程度の下振れですみそう。これらを総合すると、売上はだいたい167億円、営業利益は50億円くらいになる。

来期業績はどうなるか。来期は「タレントパレット」事業の導入企業数がマーケティング・ソリューション事業のように減る可能性もある。もしそうなれば業績は頭打ちになる。導入企業数を増やすために大幅な値下げをしても業績は伸び悩む。つまり、現時点ではどちらに転んでも業績が頭打ちになる可能性がある。

もちろん業績がそこまで悪化せず、今後盛り返す可能性もあるが、今の流れでいくとそうなる確率はそれほど高くはないのではないかと思う。

今期業績が下振れし、来期以降の業績が減益基調になる可能性を考慮すると、株価1500円、PER16倍は決して高い水準ではない。今後、HR事業が力強い成長力を取り戻さない限り、株価は低空飛行を続けると予想する。


<2月21日(金)の3年チャート(週足)>
決算直後に過去最大(*上場時除く)の出来高を付けて上場来安値を更新。出来高の大きさから、ネガティブサプライズの大きさが見てとれる。

出来高急増 × 上場来安値更新 は強力な弱気シグナルになるので、今後も下げトレンドが続きそう。



今回の投資は失敗。どこに問題があったのかを考えてみる。

まずは、どうして買ったのか。

買った理由は主に6点。

・潜在市場の大きいタレントマネジメント・システム市場で「タレントパレット」は快走している。利益率の高さから高い参入障壁を築けていそう。マーケティング・ソリューション事業で培ったマーケティング技術を取り入れているところに強みがありそう。

・PACはデータの「見える化」に強みがあり、データ・ドリブン・エコノミー(データ駆動型経済)の時流に乗っている。

・主力サービスの解約率が1%以下なので、強固なストック型ビジネスを構築している。今後利益の着実な積み上げが期待できる。

・マーケティング・ソリューションシステムを提供しているので、マーケティング(商売)が上手そう。

・タレントマネジメント・システムを提供しているので、社員のモチベーションが高そう。

・会社は社名にある「プラスアルファ(付加価値)」を重視しているので、付加価値を重視する株式市場と相性がよさそう。

・経営者がスマートで誠実そう。

これらの要素により、ビジネスモデルが最強だと思った。株式市場でこれ以上の会社はないと思った。


どこに問題があったのか。

敗因は主に5点。

・参入が相次ぎ、競争が激化した。

・「タレントパレット」に高い参入障壁がなかった。というか、技術が陳腐化し、参入障壁がなくなってしまった。

・事業環境の変化が速すぎた。「タレントパレット」では値上げ直後に値引きキャンペーンをするなど、急変する事業環境に翻弄されていた。

・経営者に並外れたセンスとパワーがなかった。このような苛烈な環境で生き残るには、超人的な能力が必要になる。

・傑出したマーケティング力もなかった。値上げに失敗したのはその証左。顧客調査がしっかりできていれば、もっと精度の高いプライシングができたはず。

・「プラスアルファ(付加価値・利益)」を求める方向がややズレていた。経営者はプラスアルファを生み出すにはチャレンジ、つまり新機能の開発が重要と考えていた節があるが、そこに注力しすぎて基本的な機能の改善を怠ったように見える。昨年10月に「タレントパレットのインターフェースを改良し操作性・見やすさを向上」というIRを出しているが、今さらという感じ。そもそもこのような基本的なことはIRで報告するまでもなさそう。顧客にとってはマニアックな新機能よりも、UI/UXやスピードなど基本機能の充実の方により高い「付加価値」があったのではないかと思う。

今回の値上げの失敗は自社の「プラスアルファ(利益)」を優先したことが原因ではないかと思う。顧客にとっての「利益」を優先することに徹していれば、もう少し慎重に動けたのではないかと思う。


今回得た教訓は3つ。

1つ目は分散投資は必須ということ。100%確実な未来予想や会社理解はなく、今回のように大外れすることもあるので極端な集中投資は避ける。時間的な分散も必要で、買うときは少しずつ買っていく。

2つ目は、”冷めたら”売ること。昨年2月の決算で「キミスカ」事業が下振れし、その原因を探ると、「キミスカ」を運営するグローアップ社の経営陣のすげ替えに行き着いた。あまりにもとんちんかんなタレントマネジメントに会社への熱が一気に冷めた。しかし、ビジネスモデルが魅力的だったため保持してしまった。過去の例では冷めたときにすべて売却しており、(それで儲け損なったこともあるが、)基本的にはうまくいっていた。

3つ目は、会社がKPIを隠し始めたら売ること。決算資料から重要な情報がカットされたら危険信号。早めに売るようにする。経営者が表に姿を見せなくなるのも危険信号と捉える。



1/7IRに、人事の未来を考えるシンクタンク「HR 未来共創研究所」を開設したとあった。サイトをチラッと見てみると「未来年表」に「2041年 人事部門のオペレーションが完全に自動化され、人は主に戦略的な業務や仕組み作りに時間を費やすようになる」「2045年 人型ロボットの能力が人間を凌駕し、労働力としての時給が0.10ドル以下に低下。ほぼすべての人間の労働を代替可能になる」とあった。決算説明でも、このように自社にとって一見不都合なことも記載してくれれば頼もしさが増したのにと思った。なお、上記の予想が当たるとしたら、「タレントパレット」の寿命もあと15年くらいで尽きることになる。

1/24日経に「AIエージェントがIT業界のビジネスモデルを大きく変える可能性がある」とあった。「IT企業はこれまでCRMや生産管理、人事管理といった業務プロセスごとにソフトウェアを提供し、顧客は目的に応じて使い分けてきた。しかし、ソフトを横断的に連携させるAIエージェントは、この構造を揺さぶる。例えば顧客から問い合わせがあると、CRMで管理する顧客データ、ERPで管理する在庫情報、電話オペレーターの対応履歴などを参照し、最適な回答を生成する。これが実現すれば、従来の業務ソフトはデータをAIエージェントに提供するだけの裏方になりかねない」。PACが長期で生き残るにはAIエージェントを作るしかなさそう。


前回のブログで「AIやロボットによる人間の代替が進むことで、「タレントパレット」のユーザーが減っていく可能性もある」と書いているが、これは主にホワイトカラーに限定された話になりそう。法律相談や会計処理、カスタマーセンターの対応など、ルールベースで動く仕事はAIに置き換わるが、介護や看護、建設現場、物流や卸売り・小売り、ホテルなどで働くローカルワーカーやエッセンシャルワーカーは不足するらしい。現在、日本のホワイトカラーは勤労者の3~4割くらいのようなので、仮にホワイトカラーが半分いなくなってもトータルで見ればそれほど問題なさそう。ただ「タレントパレット」の導入企業はホワイトカラー企業が多そうなので、その点ではそこそこ大きな影響を受けそう。1/19日経2/1日経、『ホワイトカラー消滅』

ダイレクトリクルーティング・プラットフォーム最大手のビズリーチが、社内での人材登用を支援する「社内版ビズリーチbyHRMOS」を始めた。今後3年で大手や中堅企業など1000社への導入と年間30億円の売り上げを目指すという(1/28日経)。この領域ではPACの手強い競合になりそう。

2月にカオナビが米カーライルグループに500億円で買収された。カオナビの今期売上予想は95億円、純利益2.5億円になる。競争激化とソフトウェア陳腐化の流れの中で、500億円を回収できるのかやや疑問。

PACの2Q決算予想
2Q決算は、1Qのマーケティング投資やITレビューの口コミ対策、例年の傾向から、「タレントパレット」の導入はそこそこ伸びそう。売上高は42.5億円(累計81.5億円)、HR事業の導入企業数は+75と予想。ここを超えてきたらまだなんとかなりそう。

PACの現在の妥当な株価はどのくらいか。今期業績が会社予想より下振れし、来期以降の業績が減益基調になる可能性を考慮すると、株価1500円、PER16倍くらいが妥当な株価になりそう。


■今後の計画
今後の投資スタンスは 「基本静観、チャンスが来たら動く」 のまま。現在、景気循環的に好景気の最終局面にあるのでチャンスがくるのはしばらく先になりそう。調査・観察を続けて次のチャンスに備えたい。PAC株は適宜売却していく。

市場が荒れて米VIXが40超、日経平均の騰落レシオが65以下になったら株式などを買っていく。ドル建てやスイスフラン建て資産を優先的に買っていく。米景気が後退局面に入った場合は、後退開始から5〜10ヶ月後を目処に株式などを買っていく。

<ナスダックチャートの10年チャート> MACD的にしばらく調整局面に入りそう。パターン通りにいけば、2026年3月頃に買い場が訪れそう。


プラスアルファ株で過去最大の”マイナスアルファ”を出してしまった(笑)。今はとてもやるせない気持ち。このブログもいよいよギャグ的な色彩が濃くなってきてしまった。ただ今回のケースでは、長期間の葛藤の末に、楽観から悲観への落差の大きなオチがあるので、なかなか良質なコメディに仕上がったのではないかと思う。

それはともかくとして、認知科学的には「予想が外れてその原因を考えるときに、学習が最も深くなる」ようなので、今回のケースではそれなりに深い学習ができたように思う。今回の失敗を次につなげていきたい。

『メタトレンド投資』

 3月初旬、PACの損切りで打ちひしがれているときに、Googleニュースの「おすすめ」欄に「「次のエヌビディア」を見つける方法はこれしかない…「100倍になる株」を次々と掘り当てた投資家の絶対ルール」(3/3プレジデント)という記事が入ってきた。読んでみると、今まさに必要なことが書かれていたので、そこで紹介されていた本を読んでみることにした。参考になる点が多かったのでここで簡単にまとめておく。

■メタトレンド投資とは
メタトレンドとはメタ(高次の)とトレンド(流れ)を組み合わせた造語で、メタトレンド投資とは、時代の巨大なうねりを早い段階で捉え、しかるべき企業に投資し、その長期的な成長を狙う、という投資法。メガトレンド(巨大な流れ)投資とほぼ同義。

メガトレンド投資自体は目新しいものではないが、著者は20年以上この手法を実践し、そこで築き上げた独自のノウハウがとても参考になった。

■メタトレンド投資を実践するポイント

1,焦る必要はない
メタトレンドは10年、20年単位で社会やライフスタイルを変える大きな流れなので、多少出遅れても全く問題はない。多くの人が「これは来る」と思い始めた段階で投資をしても十分間に合う。例えばエヌビディアの株価は、ChatGPTが登場した後に10倍以上上昇した。

また、トレンドが本当に起きるかどうかを様子見できるため、リスクを抑えることもできる。

2,いきなり大きく賭けない
株式で先行利益を得るためには早い段階で有望株に一気に資金を投じるべきと考える人は多いが、確実に予測できる未来はないので、いきなり大金を投じるのはリスクが高い。有望企業はメタトレンドという大きな流れに乗って飛躍的に成長していくので、小額の投資から始めても大きなリターンを得るチャンスは十分にある。

3,「推し」の視点を活用する
メタトレンド市場では競争が激化するため企業選定が難しい。そんなときは「推し」の視点が役立つ。「これがないと生活できない」と思えるほど支持している商品・サービスを提供している企業や、心から応援したい会社があればそれが重要な選別ポイントになる。ファンならではの知識と熱量が投資判断のアドバンテージとなる。

4,薄く広くベットする
今後急成長していく企業を初期の段階でピンポイントで当てるのは不可能に近い。メタトレンドに乗りそうな企業をまずは複数抑えておくのが無難。気になった会社をウォッチリストに入れるか小額投資をして、半年から1年程度様子見する。そこで思ったほど業績が伸びない、あるいはこの企業には確信が持てないと思えばカットする。まずは小さな関わりから始めることが大事。

5,取捨選択を繰り返す
銘柄の「次のきっかけ」を見極めながら、継続的に取捨選択していく。経営者の発言や業績動向を観察し、取捨選択を繰り返していくと、最終的に確信を持てる本命だけが生き残る。有望企業を10社見つけても最終的に残るのは1か2社。さんざん調べた揚げ句、投資を見送ることも多い。しかしその試行錯誤があるからこそ、これはと確信を持てる企業に出会える。

6,確信が持てたら投資を増やす
企業の成長を確信したら投資額を増やす。ただし、ここでもいきなりフルベットはしない。ベストな買い時を見極めるのは難しいのでドルコスト平均法を活用する。ドルコスト平均法とは最終的に○○万円投じると決めたら、複数回に分けて毎月一定額を投資する方法。平均購入単価がならされるため高値づかみのリスクを下げられる。ただし、市場が大きく下げたときはバーゲンセールなので、資金を多めに投じてもよい。

7,推せなくなったら売る
多くの企業では、魅力が薄れ、推せないと感じる瞬間がくる。そのようなときはさっさと売る。推せなくなった株を未練がましくもっていてもストレスがたまるだけ。株価が下がれば金銭的なダメージも大きくなる。仮にその後、株価が上昇したとしても、推していたころのような高揚感は戻ってこない。推せなくなったら売る、というスタンスが長期にわたって精神的に健全な状態で投資を続けていくための秘訣。


これらのポイントを押さえた売買をすれば、多少のマイナスこそあれ、大損はしにくくなる。


■その他のポイント

・経営者が大事
企業を見極める上で最も重要なのは経営者の資質。経営者のビジョン、人間性、経営哲学を理解せずに投資することはあり得ない。最終的に企業が成功するかどうかは経営者の根性にかかっている。経営では計画通りにいくことはあり得ない。不測のトラブルが起こるのは日常茶飯事で、そうした苦境に直面したとき、最後までやり抜く胆力と粘り強さを持っているかどうかが重要。経営者が諦めた瞬間に全てが終わる。

経営者に期待しすぎて痛い目に遭うこともあるが、それでも信頼できる経営者という条件は必須。

・2つの指標を確認する
<手元資金>
赤字企業の場合は手元資金で3年もつかどうかを見る。3年の猶予があれば、その間に資金調達や黒字転換できる可能性も十分ある。3年もたないようならスルーする。

<PER20倍>
PER20倍ということは、現在の利益の20年分が株価に織り込まれているということ。これは逆数(1/20)を取ると1年あたり5%となり、毎年5%の利益成長が少なくとも20年続くと市場が予想していると解釈できる。成長余地が少ないのにPERが20倍を超える企業は注意が必要。逆にPER20倍を大きく下回っていて割安に見えても、価値の下落が続くバリュートラップになる可能性もある。重要なのはPERとその企業の成長率とのバランス。

この2つを確認するだけでも、倒産リスクや割高企業をある程度避けられる。

・競合との比較はざっくりする
競合の動向はさほど重視しないが、ざっくりとは比較する。その目的は、自分の推し企業への情熱は思い込みではないか、冷静な判断力を失っていないかを確認するため。

・情報源はポッドキャストや一部メディア
もっとも重宝しているのがインタビュー系のポッドキャスト。1つのテーマがじっくりと深掘りされているので経営者の人となりがわかる。メディアはニューヨークタイムズ、ブルームバーグ、the informationなどが参考になる。

・情報収集には生成AIを活用する
生成AIは優秀な情報収集アシスタントになる。例えば、英語の記事や難解な論文をスピーディーに翻訳、整理してくれる。そこに質問をぶつけて、掘り下げることも可能。質問攻めをすることで見落としがほぼなくなる。ふわっとした質問でも、情報のとっかかりにはなる。まずは生成AIに情報をざっくりまとめさせると時間を大幅に節約できる。


■問題点
・「推し」企業は売りづらい
投資の世界では情に流されるべきではないと言われるが、推し企業は推しすぎるゆえに客観性を失い、シビアな判断をしづらくなることがある。そのため下落局面では損切りしづらい。しかし裏を返せば、長期保有しやすいともいえる。結果として、復活を待ち、報われることもある。

・「メタトレンド投資」には時間と熱意が必要になる
メタトレンド市場の個別企業をピックアップして、調べて、長期で観察、取捨選択していくには、一定の時間と熱量が必要になる。

・企業の見極めには専門知識がいる
著者は「10倍株」「100倍株」を多数引き当てているが、それらの株はすべてテック株になる。著者はWindows95やInternet Explorer のチーフ・アーキテクト(システム設計者)を務めたほどのテックマニアなので、それで精度の高い判別ができたともいえる。素人には真似がしにくい。

■これから来るメタトレンド
・AI:汎用人工知能(AGI)、超人工知能(ASI)の開発。

・ロボット・自動運転:アルファベット、エヌビディア、テスラ。

・AR/VR:余暇時間の増加に伴う需要拡大。

・EV・再生エネルギー・核融合:温暖化対策、エネルギー転換。

・量子コンピューター:スパコンの1億倍の計算能力と低消費電力。

・光半導体(IWON):NTT主導で開発中。超低消費電力。2032年頃完成予定。

ウォッチリスト

今後は円安が進みそうなので、円安に強そうなところを優先的に見ていく。

・米国市場に上場している「銅ETF」「銀ETF」「ウランETF」
銅、銀、ウランは「グリーン革命」で需要は右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などで供給不足に陥りつつある。価格の変動がほぼ需給だけで決まるので、わかりやすいのもいい。

・米アルファベット
AI覇権を握りそうな会社。AI覇権を握ればあらゆる事業領域でトップに立てる。

・蘭ASML
最強の半導体露光装置メーカー。成長市場にあって、参入障壁が極めて高く、実質的に競合がいないところがいい。

・米アマゾン
ECやAI、クラウドだけでなく、革新的な店舗運営システムや物流システム、デジタルコンテンツ販売でもまだまだ伸びそう。「グローバルサウス」での成長も期待できる。身近な存在でわかりやすいのもいい。

・独SAP
大企業向けのERPを提供する会社。生成AI導入により、クラウドERP事業の力強い伸びが期待できる。

・米セールスフォース
企業向けソフトウェア世界2位。CRM(顧客管理システム)へのAIエージェント搭載により今後も順調に伸びていきそう。

・瑞Spotify
音楽配信市場はレッドオーシャンで差別化を図りづらそうにみえるが、実際に複数のサービスを使ってみると、Spotifyは差別化ができているように感じた。音楽・音声配信の世界市場は巨大なので、成長余地は大きい。

・メルカドリブレ
ナスダックに上場している南米最大のEC企業。Amazon型のマーケットプレイスに加え、フィンテック事業も展開。南米は銀行口座やクレジットカードを保有していない利用者が多く、銀行口座やクレジットカードを持たない層向けに独自の決済サービスを提供している。ラテンアメリカ市場の出遅れ感から成長余地は大きい。ただし、カントリーリスクには注意が必要。

・仏エアバス
競合の米ボーイングが”墜落”しそう。ボーイングの受注残は高水準にはあるが、機体自体の問題が多く、原因の特定や当局からの承認には時間がかかるため、この問題は簡単には解決しそうにない。そのような状況で、大規模なストが起きており、財務の悪化が続いている。ボーイング社が消えることはなさそうだが、いったんは破綻しそう。

・UBS ETF スイス株 (MSCIスイス20/35)
スイスフラン建てのETF。日本と米国は政府債務拡大で今後通貨が弱くなっていく可能性が高いが、スイスの財政は健全なので通貨の価値が相対的に高くなっていきそう。このETFはネスレやロシュなど優良グローバル企業で構成されているので、世界市場の成長も取り込める。

・SBI・インベスコQQQ・NASDAQ100インデックス・ファンド 手数料0.23%
三菱UFJ-eMAXIS Slim 全世界株式 手数料0.05%
三菱UFJ-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)手数料0.09%
つみたてNISAで使えそうな投信。QQQは他と比べて手数料がやや高いものの、成長力を考慮すれば許容範囲内。つみたてNISAは米株が暴落したときに始める予定。

🔼マニーやナカニシ
医療機器で世界的に高い競争力がある。海外売上高比率が8割を超えているので円安耐性がある。ただ、マニーの1月の決算では円安効果があるにも関わらず下振れた。中国事業が苦戦しているようで、コモディティ化が進んでいる可能性がある。

・リクルート
子会社米Indeedの成長期待が高い。世界一の採用プラットフォームとしての地位を強化しており、近い将来、日本企業として最大の価値を持つ会社になる可能性がある。

・エムスリー
医療DXの潜在市場は大きい。海外売上高比率が近い将来50%以上になる計画。ただ一部事業領域では競争が激化している。

🔼エス・エム・エス
介護DXの潜在市場も大きい。ただ稼ぎ頭の医療系求人プラットフォーム事業では競争激化しており、参入障壁は崩壊した可能性がある。株価は失墜している。

・オービック
クラウドERPの中堅・中小企業向けで国内トップ。最近は大企業からの引き合いも増えている。日本ではシステム老朽化に伴う損失が懸念される「2025年の崖」問題があり、社長は「『25年の崖』は少なくとも30年頃まで続くだろう」と言っているので、安定成長はまだ続きそう。開発を内製しており利益率は50%を超える。3/1ヴェリタス3/1ヴェリタス

・メック
電子基板の表面処理剤を製造する会社。CPUに使う半導体パッケージ基板用の高機能品は世界シェアほぼ100%。研究開発投資に積極的で価格競争力は強く、営業利益率は20%を超える。近年注力しているのが高周波の電気信号のロスを抑える技術。5Gや次世代自動車向けの需要拡大が期待できる。

・大阪有機化学工業
半導体の回路を描くための「フォトレジスト(感光材)」向け材料の世界大手。高機能フォトレジスト用のアクリル酸エステルで世界首位。試作段階で1キログラムから請け負うほど多品種少量の生産体制を敷く。近年、開発にリソースを投じるのがEUV(極端紫外線)露光装置向け。回路線幅2ナノ用の半導体製造に使われるため高い技術力が必要になる。今期の減益予想は市況回復を見越した積極的な設備投資に伴い、減価償却の負担が重くなっているため。24年後半には半導体市況は復調し、中長期では市場拡大が続く見込みで、生産体制を整備して旺盛な需要を取り込んでいく方針。

・AREホールディングス
貴金属リサイクルの大手。貴金属の価格は高騰しているため、貴金属のリサイクルはメガトレンドになっている。AREは全国に回収ルートを持つのが強みで、新工場稼働により業績の拡大が期待できる。インフレ耐性があり、配当が4%を超えるのもいい。

・前田工繊
経営哲学に「禅」を取り入れ、業績を順調に拡大させている。この会社の行動指針は「五徳」で、行動指針は「真美善」になるが、1/18日経で五常・アンド・カンパニーの社長が全く同じような経営哲学を語っていた。この会社の経営哲学はかなりしっかりしているようなので、持っていても安心感がありそう。

業績も順調そう。日本は自然災害が多く、設備の老朽化も進んでいるので、前田工繊のようなインフラ系の会社は伸びそう。社長は2月の決算説明で「公共工事向けは5年先までの案件も大体見えている」と言っている(3/1ヴェリタス)。問題は、この会社は個人投資家に対して無関心なこと。機関投資家向けの決算説明は丁寧にしているようだが、その情報をホームページでは公開していない。機関投資家との情報格差が大きい。

・REIT(不動産投資信託)
現在、REITのバリュエーションは歴史的な低水準にあり、「REITの黄金期が始まる」との見方が増えている。今後の経済ショックで大きな投資チャンスが訪れる可能性がある。

マクロ系金融指標

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米10年金利
今後1年の予想レンジ:3.0%~4.5%の間で推移

米長期金利に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・経済成長率+インフレ率→
長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になる。2025年の予想米GDP成長率は1.7~2.2%、2025年の予想インフレ率は1.8~2.6%になる。

・金融政策↓
FRBはインフレが落ち着いてきたとして利下げを開始した。2024年は1%利下げをし、2025年は0.5%利下げをする予定。2027年に3%にする予定。

*政策金利が中立金利(3.5~4.0%)を超えると、景気(長期金利)には下押し圧力がかかる。現在の政策金利は4.25~4.5%になる。

・財政悪化による国債増発↑
米政府の財政はコロナ禍以降、大きく悪化しており、今後も悪化を続ける可能性が高い(1/18日経)。金利が高止まりした状態では公的債務の利払い費も増加し、財政はさらに悪化しやすくなる。

・金余り、資金需要の低下↓
金余りで運用難に陥っている米国の金融機関や保険会社、年金、企業は多く、そういうところがこぞって米国債を買っている。

第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要がそれほど多くない。

少子高齢化の影響で借り入れ需要も減っている。

・米国債の人気→
米長期金利は海外の主要先進国の長期金利よりも高いので、海外勢から買われやすい。

米国債保有世界2位の中国は、米国との対立や人民元安阻止のために米国債を淡々と売却している。米国と緊張関係にあるロシアなども米国債を売却している。

・米企業の社債発行増↑
米企業の社債発行が急増している。米国債よりも投資妙味の大きい高格付け社債の発行増加により、米国債の需要が減少している。

・リスクオン・リスクオフ→
米景気は比較的堅調だが、”トランプ政策”などの影響で、ややリスクオフ気味。

・潜在成長率の低下↓
生産性の伸び悩みなどで潜在成長率は低下傾向にある。

・チャート→
<10年チャート> 横ばいトレンド。しばらく4%あたりのボックス圏で推移しそう。



■WTI原油
今後1年の予想レンジ:40ドル~85ドルの間で推移

原油価格に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・需要→
原油の需要は世界経済成長率にほぼ連動する。2025年の予想世界GDP成長率は3.0~3.3%になる。ただ世界2位の原油需要国・中国の原油需要はピークアウトした可能性がある。12/29日経1/11日経

長期では、再生可能エネルギーの増加や技術革新、学校・職場のリモート化などにより石油需要が減少していく可能性がある。仏トタルや英BP、国際エネルギー機関(IEA)は2030年頃に石油需要がピークアウトすると予想している。

一方、世界人口増やAIの電力消費、再生エネルギー開発の滞りなどにより、石油需要が増えるという見方もある。米エネルギー情報局(EIA)は2050年の石油需要が2020年比で4割増になると予想している。英シェブロンは2023年から45年にかけて石油需要は約15%増加すると予想している。

・供給↓
OPECプラスは原油価格を維持するために減産に動いていたが、足元では減産の縮小に動いている(3/5日経)。米国やカナダ、ブラジル、ガイアナなどは生産を増やしている。1/29日経

・AIによるコスト削減↓
AIの活用により生産効率が高まっている。米ゴールドマンサックスは中長期の生産コストが1バレルあたり5ドル下がると予想している。

・産油国で不測の事態が起こる↑
中東では石油施設へのテロ攻撃が度々起きており、パレスチナでは紛争が起きている。供給網の混乱などにより今後供給が減る可能性がある。米ゴールドマンサックスは「ホルムズ海峡で石油の流れが遮断された場合、原油価格は1カ月で20%上昇する」と予想している。

足元では中東やロシア地域の紛争は落ち着きつつある。

*石油(エネルギー)は人間にとって食料と同じ生活必需品のため、わずかでも不足が生じると価格が跳ね上がりやすい。

・産油国、産油企業、再生可能エネルギーの採算ライン→
サウジアラビアで財政均衡に必要な原油価格の水準は1バレル85ドル、ロシアでは80ドル、アラブ首長国連邦(UAE)は75ドル、米産油企業の採算ラインは40~80ドル、再生可能エネルギーは30~80ドルになる。原油価格はこの範囲内に収まりやすい。

・リスクオン、オフ→
*原油は株式と同じリスク資産なので、リスクオフ時には売られやすい。

・インフレ対策→
原油などの商品はインフレヘッジ手段になる。足元でインフレは落ち着きつつある。

・為替↓
原油はドル建てのため、ドル高になると割高感が出て、原油価格に下押し圧力がかかる。足元ではややドル高基調。

・チャート→
<10年チャート> 下落タイプの三角持ち合い(上値は切り下がり、下値は横ばいの三角持ち合い)を形成。下抜けたら40ドルぐらいまで下がりそう。



■ドル円
今後1年の予想レンジ:130円~165円の間で推移

為替に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・日米金利差↓(↑は円安方向、↓は円高方向)
<短期金利>
日米の短期金利差は現在約4%ある。日本は利上げ傾向、米国は利下げ傾向にあるため、今後金利差はさらに縮まっていく可能性が高い。ただし、日本は国内需要が停滞しているため金利を上げづらく、米国は景気が比較的堅調なため利下げは穏やかなペースになりそうなため、金利差縮小のペースも穏やかになりそう。

これまで金利差拡大によりキャリー取引が増えていたが、日米の金融政策の転換により、徐々に減少している。
*キャリー取引とは金利差を狙った取引。短期金利差が大きくなると低利通貨を売り、高利通貨を買って、金利差で収益を得る取引が盛んになる。
*世界で金利が最も低い水準にある日本の円は、キャリー取引の調達通貨として選ばれやすい。対ドル以外でも売られやすくなっている。ただ現在は円の代わりにスイスフランが調達金利として選ばれ始めている。キャリー取引のフランシフトが進めば、円への売り圧力は和らぐ。
*市場が荒れ始めると金利収入以上の為替差損を抱えるリスクが増すので、手仕舞われやすくなる。

<長期金利>
現在、米長期金利と日本の長期金利の差は3%くらいある。今後長期金利差も縮まっていきそうだが、そのペースは短期金利と同様、穏やかなものになりそう。

*2月に日本の長期金利と中国の長期金利がほぼ同じになった。今後中国金利が日本金利を下回るようになれば、世界のマネーフローが変化し、日本の国債が買われる可能性がある。2/25日経
*日本の機関投資家は海外債券を売って国内債券を買い始めている。2/7日経

・国内投資家の対外証券投資↑
日本の機関投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているため、高い運用利回りが見込める海外債券や株式などを買っている。個人投資家は成長力の高い海外株を買っている。ここ数年は両者合わせて年10~20兆円の買い越しが続いている。1/29日経3/1日経

*キャピタルフライト
日本は財政問題や経済低迷、インフレなどの問題を抱えているため、日本人は円資産を海外資産に転換し始めている。国内の家計の預貯金は約1100兆円あり、その1%(11兆円)でも海外に向かえば円相場へのインパクトは大きくなる。2024年に始まった新NISAでキャピタルフライトが加速しつつある。

・日本企業の対外直接投資↑
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業は海外での直接投資を増やしている。ここ数年は年12~22兆円の買い越しが続いている。2024年は過去最高になる可能性がある。

対して、海外企業の対日直接投資額は1兆円程度になる。

・日本の貿易収支→
円安や資源高、生産の海外移転、産業競争力の低下などにより、貿易収支は悪化傾向にある。(貿易収支を含む)経常収支は年20兆円程度の黒字ではあるが、そのうち半分くらいは海外での再投資や内部留保などにあてられるので、稼いだ外貨の半分くらいしか円転されない。
*2024年の経常収支は29兆円の黒字。2/10日経

*訪日客の増加でサービス収支の旅行収支は3兆円程度の黒字になっているが、海外テック企業が提供するクラウドサービスなどへの支払いによる「デジタル赤字」は約6兆円で、それを帳消しにしている。「デジタル赤字」は今後も旅行収支の黒字の伸びを上回って増えていく見込み。

・米国の貿易収支↓
米国の貿易赤字は拡大の一途をたどっており、2024年は貿易赤字は過去最大の185兆円になる。1/9日経2/6日経
*「米国では国内総生産(GDP)の7割を個人消費が占めるため、消費財の輸入規模が大きい。基軸通貨として米ドルの信用力が高いことから通貨高になる傾向があり、貿易赤字に拍車をかけている面もある。米国内での生産コスト上昇に伴う製造業の競争力低下で、モノの輸出が減っているとの見方もある。トランプ米大統領は貿易赤字の原因が相手国にあると主張して、輸入品に関税をかけることで赤字解消を狙っている」2/20日経

・日銀の財務状態の悪化↑
日本の長期金利が1%まで上昇した場合、日銀は債務超過に陥る。日銀は国債について満期保有を前提とした会計処理を採用しており、債務超過になっても日銀は自ら通貨を発行できるため資金繰りに行き詰まることはないが、円に対する信用は落ちる。現在、日本の長期金利は1.57%まで上昇しており、今後さらに上昇する可能性がある。

*日銀は、長期金利が1%に上昇した場合、日銀が保有する国債に28兆円の含み損が生じ、5%に上昇した場合は108兆円の含み損が生じると試算している。

*米ゴールドマン・サックスは「2027年に政策金利が1.25~1.5%に到達するまで利上げサイクルが長期間続き、長期金利が26年末に2%に達する」と予想している。
*日銀は民間金融機関が日銀に預けている当座預金への利息を支払っている。利上げが進めば利息負担がかさみ、その負担が日銀が保有する債券の収益を上回ると、赤字に転じる可能性がある。ある試算によると政策金利が0.6%まで引き上げられると経常赤字に転じる。2.8%まで上がれば債務超過に陥る可能性がある。

・日本政府の過剰債務↑
日本政府の債務は返済不可能な水準まで膨れ上がっており、2030年頃には臨界点に達し円の暴落が起きる可能性がある。日本は自然災害が多く、突然の大地震が起こったときに多額の国債発行が必要になるので、大規模な自然災害が起きれば臨界点が早まる可能性もある。米国政府の債務も返済不可能な水準まで積み上がっているが経済が強く、ドルは基軸通貨なのでドルの暴落は起きにくい。

・リスクオン、オフ→

・海外投資家の国内証券投資↓
円調達時の上乗せ金利(ベーシススワップ)は低く、日本国債の金利は比較的安定しているため、ここ数年、海外投資家は日本国債を年10兆円程度のペースで買い越している。

・投機筋の持ち高↓(「円 投機的ネットポジション」で検索)
投機筋は円を大きく買い越している。円高が進むとみている。
*ドルを売り持ちした場合はスワップポイント(金利差分)を支払わなければならないので、ドル売りが長く続くことは少ない。
*スワップポイントはドル買い時よりもドル売り時の方が高く設定される傾向がある。例えば、日米短期金利差が約3%あった2022年9月にドルを1万ドル買った場合、1日の金利差収入は92円くらいになるが、ドル売った場合は金利差損失が1日159円くらいになる。

・個人投資家の売買動向 ー
日本の個人投資家によるFX取引が為替市場の約2割を占めており、相場を動かす原動力になりつつある。ただ足元の売買動向は不明。

・ドル需給↑
FRBがドルを大量供給しているのでドルはだぶつき気味だったが、米長期金利の上昇や、ロシアやアルゼンチンの通貨不安、中国経済の先行き懸念などにより、ドルの需要が高まっている。

・米制裁によるドル離れ↓
米国は対立する国に「ドル取引の制限や禁止」といった金融制裁を課すことがある。現時点で米国はロシアやイラン、トルコ、中国などに金融制裁を課しており、これらの国は米国債の保有を大きく減らしている。今のところドル離れは一部に留まっているが、今回のロシアへの制裁(ロシア中銀が保有するドル資産凍結)をきっかけに、ドル離れが加速する可能性がある。

購買力平価
物価が上がると(インフレが進むと)、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると(デフレが進むと)、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必用なくなる(購買力は上がる)。この物価変動に着目して二国間の通貨価値をならしたものが購買力平価になる。

インフレ率は日本より米国の方が慢性的に高いので円の購買力平価は長期的な円高傾向にある。ただ米国のインフレ率は年々低下しており日本のインフレ率との差が縮まってきているので、購買力平価の下降曲線はなだらかになってきている。

現在の購買力平価(消費者物価)は108円になる。為替相場は長期的にはこの値に収斂していくとされるが、近年では投機取引の拡大や資本の自由化などから購買力平価の影響力は弱まっている。

*購買力平価仮説が成り立つ前提は、貿易における実需取引が為替レートを決める主因であるというもの。日本の製造業は海外に拠点を移し、輸出が増えなくなっているため、購買力平価と市場レートは開きやすくなっている。また現実の為替市場では金融取引が圧倒的なボリュームを占めているため、貿易の実需取引の影響は小さくなっている。

*購買力平価とは、世界のどこでも同じモノは同じ価格という条件が成り立つ為替レートを意味する。米国で1ドルの商品が日本で150円なら購買力平価は1ドル=150円とする考え方。現在の購買力平価(消費者物価)は108円で、実勢為替レートは1ドル150円なので、この基準で照らせば、円は将来上昇すると考えられる。ただし、貿易可能な「財」とそれ以外の「サービス」に分けて購買力平価を算出すると、財の購買力平価は1ドル155円で、サービスの購買力平価は1ドル87円になる。財の購買力平価と円の実勢レートはほぼ一致している。これは国内の生産拠点が減り、安くものを作ることが難しくなったため。3/1日経

・為替介入→
政府が保有する外貨準備は日本の外国為替取引額の3営業日分くらいしかないのでたいした影響はない。

・日銀が保有するETFの簿価割れ→
日銀の自己資本は約10兆円なのに対し、保有する日本株ETFは簿価で約35兆円ある。日銀の保有するETFの損益分岐点は日経平均株価21000円くらいであり、日経平均株価が15000円台まで下がると日銀は債務超過に転落する。しかし現時点でそこまで下がる可能性は低い。

・<10年チャート> 米長期金利と似たようなチャート。横ばいトレンドになりそう。



■日経平均
今後1年の予想レンジ:30000~45000円で推移

日経平均に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・金融政策↑
世界の中銀の総資産と世界の株価指数はほぼ連動している。2025年は世界的に金融緩和の年になりそうなので、中銀の総資産は増加しそう。

・金利→
金利が上がると、株式から債券へ資金が流れやすくなる。大多数の国の金利はピークアウトしている。ただし日本は例外で穏やかな上昇基調にある。

・為替→
円安が進むと海外勢から見た日本株は割安感が出る。現在は若干円高傾向にある。
*ドル高・円安が1%進むと東証株価指数(TOPIX)は0.5%上昇するという試算もある。

・需給→
主な投資主体の売買動向
2024年は、事業法人が8兆円くらいの株式を買い越して、それ以外の投資主体がすべて売り越すという構図だった。2025年も似たような構図になりそう。

・EPS(1株利益)↑
日経平均株価は基本的にはEPS(1株利益) × PER(期待度・人気度)で決まる。2025年の予想EPSは+6~10%くらいになる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因を見ていく。
・為替→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので為替相場の影響を大きく受ける。今はやや円高傾向なので利益が下振れやすくなる。

・海外景気→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので海外景気の影響を大きく受ける。足元の世界景気はまだら模様。

・自社株買い↑
自己株式はEPSを計算する際に分母の株式数から除かれるため、自社株買いにはEPSを押し上げる効果がある。日本企業は自社株買いに積極的で、2024年の自社株の取得実績は約8兆超になる。
日経には「自社株買いをしても、その分株数も減り、時価総額も同じ割合で減るので理論的には自社株買いをしても株価は不変」とあるが、自社株買いにより需給が改善したり、ROEが上がったり、企業の「自社株は安い」というアナウンスメント効果があったりするので、株価は上がりやすくなる。

・失業率↓
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益を圧迫する。労働量力不足で成長が頭打ちになりやすい。現在の失業率は最低水準にある。

・減価償却費や資源価格↓
減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇すると利益が圧迫される。足元では減価償却費は横ばい傾向で、資源価格は円安により上昇傾向にある。

・金融政策→
金融引き締めで金利が上昇すると企業の利益や資金調達環境は悪化する。日本では金利が上昇基調にあるが、そのペースは非常に穏やか。
ーーーーー

・PER(期待度、リスク選好度)↑
日経平均の過去のPERは11~17倍くらいで、現在のPERは15.4倍とやや高い位置にいる。今期のEPSは+6~10%で、来期は+5%くらいになりそうなので、現在の株価水準は妥当な水準にみえる。

・リスクオン、リスクオフ→

・株式利回り↑
東証プライムの益回りは約6.5%、配当利回りは約2.56%と、日本の10年国債の利回り1.57%より高いので、株式に資金が流れやすい。

・中国株からのシフト↑
中国の景気停滞リスクや地政学リスクから、中国投資離れが拡大している。その代替投資先の1つとして日本株が選ばれている。

投機筋の持ち高
買い残は約2兆円で、売り残は約1400億となっている。投機筋は日本株が上がるとみている。

・個人投資家の流入↑
日本の家計が抱える預金・現金は約1100兆円あり、コロナ禍の「巣ごもり」や「老後2000万円問題」などの影響で株式市場に個人投資家が流入している。2024年に始まった新NISAで2024年上半期に約3兆円が日本の個別株に流入している。

・パッシブ運用の膨張↑
パッシブ運用にはストック効果(積み上げ効果)があるので、この運用が増えると株価は下がりにくくなる。現在、投信やETFでパッシブ運用の比率が高まっており、世界では44%、日本では73%まで高まっている。1/28日経

・チャート↑
<10年チャート> 出来高を増やして新高値を突破しているので基調は強い。ただ長期MACDは天井を打っている。しばらくは上がりにくそう。


■東証グロース250指数
今後1年の予想レンジ:600~900の間で推移

東証グロース指数に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・金融政策↑
東証グロース指数は米金利の影響を強く受けるので、米国の利上げ時は真っ先に売られやすい。現在は利下げ基調なので、買われやすくなっている。

*小型グロース企業には赤字で借り入れ依存度が高いところが多い。金利上昇時には借金の金利負担が重くなり財務状態が悪化する。また成長資金を調達しにくくなる。
*金利上昇時は将来の成長期対で買われている小型グロース株はバリュエーションが低下しやすくなる(詳細は後述)。
*金利が上昇すると国内需要が弱含み、国内事業が中心の小型グロース企業は業績が伸び悩みやすくなる。
*米金利が上昇すると、円安が進み、円安の恩恵を受ける国内の大型株が選好されやすくなる。

・需給↑
グロース市場は日銀の買い支えがなく、自社株買いもあまり期待できないため、相場下落時は下げ止まりにくい。ただ海外投資家は売り尽くした感があるので、売り圧力はそれほど強くなさそう。個人投資家の含み損は減少傾向にあるので、そろそろ個人が動き出してもよさそう。
*東証グロース市場の海外投資家の売買シェアは約4割になる。

・EPS(1株利益)成長率 ー
不明。
*株価は基本的にEPS × PERで決まる。グロース市場全体のEPSがマイナスの場合、そこにPERをかけても株価を算出できない。株価を決定する代表的な指標である純利益が赤字の場合は、株価が市場のセンチメントに左右されやすくなる。

<グロース市場の反転シグナル>
信用評価損益率の急激な悪化は一つの反転シグナルになる。信用評価損益率が急激に悪化して、追い証回避の投げ売りが殺到すると、信用取引での買い持ちが急減して需給が軽くなる。過去の例では、そのタイミングで海外投資家が買いに転じるパターンが多い。

2007~2009年の金融危機では、2007年12月に信用評価損益率が-30%を超え、そこから約1年5ヶ月にわたってマイナス幅が30を超えている。この間にマザーズ指数は900台から300近くまで落ちている。当時も今も金融引き締めなど、似たような状況であり、このような前例を踏まえると、2年の停滞が続いた東証グロース指数は今後反発する可能性がある。

<グロース250の10年チャート> 底値感はあるが基調は弱い。

市場環境

株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などを見ていく。

■EPS成長率
・世界株式の2025年の予想EPS成長率は-5~10%。
・米国株式の2025年の予想EPS成長率は7~15%、2026年は7%。
・中国株式の2025年の予想EPS成長率は0~10%。
・欧州株式の2025年の予想EPS成長率は-10~5%。
・日本株式の2025年の予想EPS成長率は6~10%。


■経済成長率
・世界の2025年の予想GDP成長率は3.0~3.3%、2026年は3.0~3.3%。
・米国の2025年の予想GDP成長率は1.7~2.7%、2026年は1.6~2.1%。
・中国の2025年の予想GDP成長率は4.1~4.8%、2026年は4.4~4.5%。
・ユーロ圏の2025年の予想GDP成長率は1.0~1.7%、2026年は1.2~1.4%。
・日本の2025年の予想GDP成長率は0.8~1.1%、2026年は0.2~0.8%。
・インドの2025年の予想GDP成長率は6.5%、2026年も6.5%。
*数値はIMFとOECDと世界銀行の予想。1/17日経3/18日経など

*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほど不況感は強まらない可能性もある。
*経済規模を示すGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。

*コロナの影響で2020年の日本のGDPは落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が向上していれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。

*GDPの算出でデータが生み出す価値を捉える取り組みが始まる。現在は、デジタルを使ったサービスや取引が広がっているにもかかわらず、データが生み出す価値を十分に補足できていない。今後はデータやデータベースの整備が設備投資として計上される。これまでこれらはコストとして処理されてきた。新基準を導入すれば日本の名目GDPは1~2%押し上げられるという試算がある。1/9日経


■インフレ
・米国の2025年の予想インフレ率は1.8~2.6%。
・欧州の2025年の予想インフレ率は1.8~2.6%。
・日本の2025年の予想インフレ率は1.5~2.5%。
*ブレーク・イーブン・インフレ率とは市場参加者のインフレ予想を反映する代表的な指標。通常の国債と物価連動国債の利回り差から算出する。ブレーク・イーブン・インフレ率は実質金利を算出するときなどに使われる。


今後のインフレ動向を、インフレ要因とデフレ要因を一通りあげて考えていく。

<インフレ要因>
・人手不足で賃金が上昇している。米国においては求人件数が700万件程度まで減ると賃金上昇率が3%程度まで落ち、FRBの2%物価目標と整合するとされる。1月の求人件数は774万件とまだ少し多い。3/12日経

*米最大の求人プラットフォームを運営する米Indeedは2024年5月に米国の求人件数について「ここから18カ月、あるいは24カ月程度減少を続けた後で底を打つ可能性が高い」(出木場久征社長)と言っており、2025年2月の決算時でも荒井執行役員が「少なくとも当期はこれまでの見方から変わらない」と言っている。2/13日経

*米国ではフルタイム労働者が減少しており、パートタイム労働者が増加している。過去のケースではこのようにフルタイムが減り、パートタイムが増えた場合は、時間をおいて、雇用者全体の伸びが急減速している。

*米国では移民が急増しており、企業の求人を埋めている。移民は「弱い雇用」と呼ばれるパートタイムの割合が高いとされる。このようなケースでは、雇用が増えても賃金はあまり上がらない。ただし、大量の移民は家賃の上昇圧力にはなる。

・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。脱炭素シフトにより2030年まで年0.7~1.0%程度の物価押し上げ効果が見込まれている。
*脱炭素シフトが完了すれば再生可能エネルギーは強力なデフレ圧力になる。

・財政拡張が物価を押し上げている。米国では積極財政が生んだ累積的な「財政ショック」が2023年の米インフレ率を0.5%押し上げたと推計されている。財政要因は直近の数四半期でも0.6~0.7%の押し上げ寄与があると推計されている。
*世界的に選挙が相次ぐ2024年は財政拡張が進みやすくなる。
*政府債務の増加が通貨の価値低下につながっている。米国、ユーロ圏、日本の世界3大基軸通貨国すべてで政府債務が過剰な状態にある。通貨の購買力が落ちている。

・トランプ大統領の関税引き上げ政策もインフレ圧力になる可能性がある。トランプ大統領は中国、カナダ、メキシコに対して関税を大幅に引き上げると公言している。これらが実施されればインフレ率を0.5~1ポイント程度押し上げると試算されている。ただし現実にはこれらの引き上げは一部にとどまる可能性が高い。前トランプ政権時の18年に、米国は中国、欧州連合に対し、関税を引き上げたが、米国のインフレ率は低位で安定していた。今回も関税引き上げ政策は単なる交渉材料になる可能性が高い。
*関税は消費税と同じで、消費者の購買意欲を落とす側面もある。景気抑制的な政策なので、インフレ効果はない可能性もある。

・ウクライナや中東地域の戦争によってエネルギーコストが上昇しているが、足元では落ち着きつつある。

・異常気象や世界人口増、新興国の経済成長、バイオ燃料需要、肥料価格上昇、ウクライナ戦争などにより、食料価格が上昇傾向にある。農作物・肥料価格の先行指標である農業ETFは高値圏で推移している。

・経済の脱グローバル化(グローバル化の再構築)で製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇している。

・世界の生産年齢人口が2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなくなる可能性がある。

・米欧でインフレやAIへの不安などからストライキが頻発している。

・株高による資産効果で消費が落ちにくくなっている。


<デフレ要因>
・これまで世界中の中央銀行が強力な金融引き締めをしていたので、金利は平時と比べまだ高い水準にある。金利高は需要を減らす効果がある。

・経済のデジタルシフトが加速している。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば、検索やSNSは無料で、ネット上では価格比較を簡単にできるため売り手は超過収益を得にくくなっている。スマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、1億曲超をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。複製コストゼロのデジタルソフトやシェアリングサービスの普及などもあり、価格は下がりやすくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産コスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がゼロに近いので、競争が起きると価格がゼロに近づく。

・イノベーション(新結合・技術革新)が加速している。今はインターネットやAIにより、情報や人やモノの「新結合」が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。

・AIやロボットを活用した産業の「自動化」により、生産コストが低下している。

・世界的に経済成長率が鈍化傾向にある。過去40年で米国の潜在成長率は3%前後から2%前後に低下している。

・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向(収入に占める支出の割合)は低い。

・世界的に少子高齢化が進んでいる。子どもが減って高齢者が増えると総需要が減る。

・人手不足で成長力が低下している。

・米国やOPECの原油増産により、エネルギー価格が下がり始めている。


以上をまとめると、インフレは落ち着きつつあるが、人手不足や保護主義、環境規制、紛争、財政ショックなど影響で、以前のような超低インフレに戻る可能性は低い。米国のインフレ率は2025年に2.4%くらいになり、その後は1.8~2.8%あたりで推移しそう。

日本においては、国力の低下から円安は止まりそうになく、円安の影響で2%程度のインフレが持続する可能性が高い。インフレが高進した場合はキャピタルフライトが加速し、さらに円安・インフレが進む可能性もある。とはいえ、日本は少子高齢化社会なので、需要の基調は弱い。インフレが進むとしても比較的穏やかなものになりそう。

超長期で考えると、世界ではエネルギー革命や材料革命、AI・ロボット革命が進み、超デフレ(無料社会)になる可能性がある。


■金利
・米国の政策金利は4.25%で、3ヶ月金利は4.29%、2年金利は4.01%、10年金利は4.33%、30年金利は4.68%になる。
・日本の政策金利は0.50%、2年金利は0.87%、10年金利は1.57%、30年金利は2.56%になる。

*名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態では、国債を買ったり銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。逆に実質金利がプラスの状態では国債などの「無リスク資産」に資金が集まりやすくなる。現在、米国の実質金利はプラス圏にあり、「無リスク資産」に資金が流れやすくなっている。日本の実質金利はいまだマイナス圏にある。

*現在の債券は魅力的な水準まで利回りが高まっている。たとえばリスクのほとんどない米2年債は利回りが4.01%もある。その他の質の高い債権にも魅力的な利回りのものが多くなっている。今後利回りがさらに上がる可能性もあるが、急上昇期はすでに終わった可能性が高いので、株式などのリスク資産より、債券に資金が流れやすくなっている。

*投資家は企業が将来生み出すであろう利益から金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益は減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分は多くなり、理論価値が下がりやすくなる。

*銀行は短期金利で資金を調達して、長期金利で企業などに貸し出して利ザヤを得る。しかし長短金利が逆転すると逆ザヤになるので融資が減る。その結果、企業の投資も減り景気が後退しやすくなる。

*景気拡大期の「良い長期金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場へのネガティブな影響が大きい。

*景気拡大期終盤に金利が上昇すると、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こる。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。

*利上げ局面で中銀が利上げを停止すると市場は急速に利下げを織り込み始め、株高が続くことが多い。警戒が必要なのはその後になる。金利が高い中での株高は危うい株高となり、なにかのきっかけでショックが起こることが多い。過去を振り返っても、利上げ終了後は1年ほど株が上がり、「サブプライムローン」の破綻などがショックの引き金を引くことが多かった。過去の例では、「○○ショック」は懸念された箇所からではなく、疑いもしなかったところから起きていることが多い。今回米中銀は2023年9月頃から利上げを停止している。

・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は4の状態に近い。


■債務
・世界の債務はコロナ禍で急拡大し過去最高水準のGDP比336%に達している。ただし、コロナ禍の経済対策により、家計や企業、金融機関の財務状態はコロナ前よりも健全になっているためデフォルトが急に増える状況ではない。

・銀行の財務状態は比較的良好だが、銀行に比べて規制・監督体制の緩い「シャドーバンク(ノンバンク)」の債務は急拡大している。世界のファンドや年金基金、保険会社などノンバンクの金融資産は21年に239兆ドル(3京6000兆円)と07年比で2.4倍に増え、銀行を大きく上回っている。ノンバンクは信用力の低い企業へ融資することが多く、今後も融資は拡大していく見通し。ノンバンクによる企業向け融資(プライベートクレジット)は金融規制の対象外にあるためデフォルトリスクを把握しづらい。金利が高止まりし景気後退に陥ればデフォルト率が7%くらいまで上昇する可能性がある。
*プライベートクレジット事業者は2008年の金融危機後に設立されたところが多いため、デフォルトの影響は未知な部分が多い。
*銀行は預金者のお金を貸し出しているため、その資本は損失に備えて厳しい監視下に置かれている。一方、プライベート資産を運用するプライベート・デッド・ファンド(以下PD)は機関投資家から調達した資本そのものを貸し出しているので、規制は銀行に比べて緩い。銀行が破綻すれば預金者は保護されるが、PDが破綻しても機関投資家は保護されない。

*米国の金利の高止まりは、ノンバンク業界を直撃する。ノンバンクは通常、リスクの高い借り手に高い金利で貸し付ける。金利高止まりの影響で借り手の返済能力は落ち不良債権が増えている一方で、貸し手の資金調達コストは上がっている。ノンバンクでは時価会計を行っていない運用会社が多いため、問題があっても資金繰りが苦しくなるまでそれが表面化しないことが多い。商業用不動産市場では価格が半分になったものも珍しくない。高金利の下で経済に内在する不安定要素は増している。

・プライベートエクイティ(未公開株)ファンドでは投資回収が難しくなっている。PEファンドが抱える未売却企業は約2万8000社、3兆2000億ドル(約500兆円)相当に及ぶ。

・米金融市場では商業用不動産が大きな”爆弾”になっている。商業用不動産の10年間の価格上昇率は日本が20%なのに対し、米国は50%になっている。米国の商業用不動産向け貸出額は2010年から2023年まで約2倍に膨らんでいる(日本は同期間に3割増)。一方で、リモートワークの浸透や金融引き締めによるオフィス需要の低下によりオフィスの空室率は20%に迫っている。金利上昇により商業用不動産向けの融資基準は厳格になるなか、2024年に80兆円規模の償還期限が到来する。そこで借り換えができない場合、物件は市場で売却されるため、市場価格の調整圧力はかなり大きくなる。米欧ではGDPに占める商業用不動産の割合が1~2割に高まっているため、不動産バブルが崩壊すれば米経済は大きく下押しされる。米不動産ファンドは世界中に分散投資しているため、ファンドのリバランスで世界中の商用不動産に売りの連鎖が波及する恐れがある。
*2024年はそつなく借り換えが進んだもよう。次の山場は2026年以降になる。

足元で米商業用不動産を取り巻く環境はじわじわと悪化している。商業用不動産の中でもとりわけ深刻なのはオフィスビル。23年後半から融資のリスクが急激に顕在化し、30日以上返済延滞している案件の割合は過去10年で最悪となっている。商業用物件の取引数は、過去最低レベルで低空飛行中であり、今年後半以降に増加するローンの満期に耐えられるかどうか懸念されている。ただ、商業用不動産の貸し手は比較的小規模な銀行が多く、銀行の健全性は以前より格段に高まっているため、デフォルト率がある程度高まっても、銀行システム全体の危機に発展する可能性は低い。

住宅用不動産も”爆弾”になりつつある。金利の上昇に加え、保険料など維持費も上昇しており、空室率は高止まりしている。マンション向け融資残高は23年末に約2兆2000億ドル(約345兆円)と、焦げ付きが顕在化しつつある商業用不動産向け融資の6割に達している。マンション向け融資の延滞率は2024年1月に0.44%となり、リーマン危機の水準を上回り過去最高を更新している。リーマン危機の際には、延滞がピークに達してから貸し手の損失がピークに達するまでに約2年を要している。24年と25年には5000億ドル(71兆円)の融資が返済期限を迎える。借り換えに失敗すれば割安な価格で不動産を手放さざるを得ず、価格下落に拍車がかかる恐れがある。

・米政府の公的債務のGDP比率は07年の35%から22年には97%まで高まっており、53年には181%まで上昇する見込み。

*金利が経済成長率を下回っている状態では、企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にすることができるので債務が膨らみやすくなる。政府も多少の財政赤字を続けていても債務残高のGDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。

*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構造になっている。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りていない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。

*債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くと、どこかで必ず資金の逆回転が起こる。債務拡大ペースはここ10年以上、毎年GDPの成長速度を上回っている。

・中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる。2023年は過去最大の財政赤字(約74兆円、GDP比3%)を計上する見通し。
・22年6月の中国の非金融部門の債務残高はGDP比295%に達し、98年3月末の日本の296%と肩を並べている。

・中国は前例のない投資主導経済を20年にわたって続けている。過去40年間に消費のGDP比は53%から38%へ低下し、消費が投資を下回り続けている。この投資主導経済の実態はコスト先送りによる需要創造になる。多くの資産が健全資産とはいえず、不良資産が積み上がっている。
*一方、米国では労働者に購買力を与え、生活水準を向上させることで需要を創造してきた。過去40年間に米国の消費のGDP比は60%から68%に上昇している。

・新興国のドル建て債務の増加も著しく、10年前の約2倍(約500兆円)まで増えている。足元ではドル高が続いており実質的な返済負担が増している。一部の国ではデフォルト懸念が高まっており、デフォルトがいったん起きればドル高が一段と進み、デフォルトが連鎖しやすくなる。

・新興国の債務残高は22年3月に1京3000兆円とリーマン危機直後の4倍まで増えている。債務破綻の危機に直面する新興国が増えている。


<バブルについて>
バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより起こる現象。現在バブルは発生しているが、その投資主体は民間から政府(中央銀行)にシフトしているので(2/26日経)、バブルは破裂しにくい。政府が資産を売却すればバブルは破裂するが、政府債務は実質的に返済不要なので資産を大きく売却する可能性は低い。足元で一部中銀はインフレ対策として資産の売却を進めてはいるが、インフレが落ち着けば売却をやめるので、”中銀バブル”が完全崩壊する可能性は低い。
*”究極の安全資産”とされる米国債は、米政府の債務膨張によりその安全性が下がっている。今は高格付け企業の社債のほうが安全性が高いと評価されている。2/14日経


■金融政策、財政政策
・世界の大部分の中央銀行は金融緩和に転じている。

*米ゴールドマン・サックスは、景気後退を予防する目的の利下げや、インフレが落ち着いた後に行う利下げでは株高が発生し、景気後退を伴う利下げでは株安が発生すると分析している。今回の利下げは前者のタイプなので株高が発生しやすい利下げになる。米JPモルガンも似たようなことを言っている。

・日本の中央銀行は世界の大多数の中央銀行とは対照的にインフレ対策として金融引き締めをしている。ただ国内需要は弱く、世界中の中銀は金融緩和に動いているので、金融引き締めは非常に穏やか。日銀のバランスシート膨張や政府債務の拡大も金融引き締めをしにくくしている。

*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金ができる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利をあまり引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀は政策金利を1%まで上げると2年程度で債務超過に陥るとされる。FRBは政策金利を3.0~3.8%まで上げると金利収支が「逆ざや」に転じるとされる。ECBも金利引き上げにより財務状態が危機的な水準に陥る可能性が高い。
*MMTは日本が行っている金融・財政政策とは若干異なる。MMTは財政再建を重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。


■政治
・日本の政治は比較的安定しているが、財政収支は悪化の一途なので、長期の見通しは悪い。
・海外の政治は不安定。ただウクライナや中東地域の紛争は次第に落ち着いていきそう。ただトランプ大統領はロシア寄りで、欧州との亀裂が広がっている。3/8ヴェリタス
・米国はトランプ大統領の”ディール”外交やマスク氏の政府リストラなどでやや混乱気味。事業環境の不透明感から投資が落ち込む可能性がある。ただ、短期決戦で終わらせるようなことも言っているので、じきに不透明感はなくなるのかもしれない。
・米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に長期にわたり続きそう。
・米国では資本主義と自己責任社会の帰結として、格差拡大が続いており、民主主義が機能不全に陥りつつある。近い将来、大規模な政治的分断が起こる可能性が高い。
・米国は典型的な衰退期に入ったという見方もある。マクロ分析の専門家であるレイ・ダリオ氏は、国家のサイクルは「新たな秩序が始まって政府の官僚制が整うステージ」「平和と繁栄を迎え支出と債務が過剰になるステージ」「財政状況が悪化し内戦、革命に向かうステージ」の3つのステージに分けられ、現在の米国は衰退期に属する3つ目のステージに入ったと言っている。

・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制を強化しているので、民間の活力がそがれつつある。国外からの投資も、各種規制やスパイ法などの影響で著しく減っている。この調子でいくと中長期でも経済成長が減速していく可能性が高い。中国共産党が一党支配を最優先する限り、この傾向は続き、最終的に中国はロシアのような国になる可能性がある。
*23年の海外勢の対中直接投資額は21年の51兆円の1割程度まで落ち込んでいる。
*中国共産党の一党体制はますます強化されている。

・中国経済がかつての日本のようなデフレに陥りつつあるという見方が強まっている。日本は1990年代から不良債権、雇用、設備の3つの過剰に悩まされた。中国も今同じ3つの過剰に悩まされている。当時の日本は欧米市場へのアクセスが確保され、海外に活路を求められた。しかし今の中国は米国と対立し、欧州でも中国製EVを締め出す動きが広がっている。米欧の半導体輸出規制により先端半導体の調達にも支障をきたしており、技術的にも追い詰められつつある。
・レイ・ダリオ氏は「中国は今後100年間続く嵐に突入しつつある。バブルが崩壊し、試練が続くだろう」と言っている。

・EUは域内で財務格差が広がりつつあるが、コロナ危機やウクライナ戦争などの危機でEU加盟国の結束は強まっており、政治は比較的安定している。


■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はピークアウトしているが依然高水準にある。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米個人消費の先行指標である9月の消費者信頼感指数は92とまあまあ堅調な水準にある。同指数が80を下回ると景気後退のリスクが高まる。
*米GDPの約7割は個人消費が占める。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は低下傾向で50とほぼ中立の水準。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数は53と堅調な水準。
*ISM指数やPMI指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増えやすくなる。
ユーロ圏のPMIは47。好不況の分かれ目である50を2年以上下回っている。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは50とほぼ中立な水準。基調としては横ばい傾向。
・世界景気の先行指標である銅価格は足元で最高値を突破している。
・世界景気の先行指標である半導体指数(SOX指数)はピークアウトしたように見える。
米国の失業率は低位で推移しており現在4.1%。ほぼ「完全雇用」の水準(3.5%)にある。
*米国では失業率が前年同月と比べて0.25%上がると景気後退に陥りやすくなる。2月の失業率は前年同月を0.2%上回っている。
*米国では直近3ヶ月の平均失業率が過去1年の最低値を0.5ポイント上回ると景気後退に陥りやすくなる。現在は0.3ポイント上回っている。
*米失業率が「完全雇用」の水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。
・米景気の先行指標であるダウ輸送株ラッセル2000は高値圏で推移している。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りは底打ちして持ち直しつつある。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るとされる。つい最近まで3つ起きていた。現在は2つ。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。


■その他の株式シグナル
米個人投資家の心理は株価の先行指標になる。個人投資家の心理は株式市場の「逆指標」になるとされ、「悲観」の場合は大底、「楽観」の場合は天井を示唆することが多い。この指標が「異常な弱気」を付けた後の6~12ヶ月は平均以上の株価上昇になりやすい。現在は「弱気」の水準。

ブルベア指数も米個人投資家の心理を示し、株価の先行指標になる。現在は-24%と「弱気」の水準。

投資家の強欲と恐怖指数も株価の先行指標になる。この指標が「Extreme Fear(極度の恐怖)」となっている場合は、すでに株価にほぼすべての悪材料が織り込まれていることが多く、株価は好材料に反発しやすい。現在は21で「Extreme Fear(恐怖)」の水準。

・米機関投資家の株式持ち高比率を示すNAAIM Exposure Indexも先行指標になる。この値が80を超えると過度の楽観、20を下回ると過度の悲観になる。現在は57と中立水準になる。

・機関投資家の運用資産に占める現金比率も株価の先行指標になる。この比率が4%を下回ると「株売りシグナル」になる。2月の現金比率は3.5%になる。2/19日経

米VIX指数(変動率指数、別名「恐怖指数」)も株価の先行指標になる。この指標が低位にある場合は「楽観」を意味し、株価が上昇しやすくなる。しかし、低位の状態が続くと投機的売買が盛んになり、その後なんらかのショックで株価が急落することが多い。現在のVIX指数は22とやや高い水準にある。

スキュー指数も株価の先行指標になる。この指数は、S&P500種株価指数のオプション市場で、株価の上昇を見込むコール(買う権利)に対して下落に備えるプット(売る権利)の需要が高まると上昇する。これは市場で将来の大きな価格変動に備える取引が増えていることを意味する。2月18日には183と過去最高値を付けた。2021年のパターンでは、半年ほど後にS&P500指数は下落に転じ、1年半ほど調整している(1/7日経)。現在のスキュー指数は148とやや高い水準。

・1871年以降の米国の平均的な景気後退期間は16.7ヶ月になる。株式は景気に6ヶ月先行するので、景気後退が始まって10ヶ月くらいたった頃が仕込み時になる。

・景気後退入りすると最初の数ヶ月間に株価が大きく下落する傾向がある。景気後退入りして最初の4ヶ月間のどこかで株式を買った場合、その後6ヶ月間のリターンはマイナスに終わることが多い。景気後退入りから5~14ヶ月の間に株式を買った場合は、その後6ヶ月の投資リターンはプラスになりやすい。


■その他の指標
・日経平均の騰落レシオは110と中立の水準。
・日本株の信用評価損益率は-5.46%と過熱の水準。
・先進国の株価チャートは、軒並み最高値を突破しており基調は強いが、米株はMACD的にピークアウトしそうな気配。
<S&P500の10年チャート>

長期計画

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」といわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
景気循環的にそろそろ景気後退に陥りそう。ただ家計や企業、金融機関の財務状態は比較的良好なので深刻な景気後退に陥る可能性は低い。

*景気循環(債務循環)の基本的なパターンは、不景気 →金融緩和 →景気拡大(債務拡大) →景気過熱・インフレ過熱 →金融引き締め →景気後退(債務圧縮) →不景気 の流れになる。

米バンク・オブ・アメリカ(BofA)が2月に公表した2月の機関投資家調査(7〜13日実施)によると、今後12カ月の世界経済の見通しについて、52%が世界経済はソフトランディング(軟着陸)になると予想し、36%は景気後退を経験しない「ノーランディング」になると予想している。2/19日経

本当にそんなことが可能なのか。景気後退要因と景気浮揚要因を列記して考えてみる。

<景気後退要因>
・企業債務はGDP比で過去最高水準まで高まっており、金利も2008年の金融危機前と同水準まで高まっている。いつ資金の逆回転が起きてもおかしくない。
・米欧などの先進国中銀はこの2年で政策金利を急激に引き上げている。金利高の影響は1年くらいの時差をもって経済に反映される。2025年はその影響が表れる年になる。
・過去のパターンでは米利上げ停止後1年くらいに「○○ショック」が起こり景気後退に陥っている。今回FRBは2023年9月頃から利上げを停止しているので、もうそろそろ「○○ショック」が起こってもおかしくない。
・逆イールドが発生している影響で、銀行の融資が減っている。銀行の融資態度は景気との相関が強く、過去、融資基準の厳格化が進んだ時期には景気後退が発生している。
・米家計のコロナ貯蓄はほぼゼロになっている。2023年10月からは学生ローンの返済が再開されている。クレジットカード債務や自動車ローンの延滞率は足元で13年ぶりの高さになっている。
・米経済の牽引役である個人消費は長引くインフレや金利高で節約志向が高まっており、低調気味になっている。
・今後米国の失業率が上昇していく可能性がある。米最大の求人プラットフォームを運営する米Indeedは2024年5月に「米国の景気と求人数が悪化し続けるのは確実。底打ちまでに18~24カ月ほどかかる」と言っており、2025年2月の決算でもこの見方に変わりはないと言っている。
・株式市場の牽引役になっている「生成AIブーム」が”幻滅期”に入り、いったんしぼむ可能性がある。現在、生成AIのインフラ投資は活発だが、生成AIの利用企業数はピーク時の半分以下になっている。株式市場が停滞すると逆資産効果が生じる。
・2008年に起きた金融危機では、中国の大型投資により世界経済は救われたが、今回はそのような支え手がいない。
・過去の例では、日銀の政策金利の引き上げは米景気後退の直前に開始されることが多い。過去のパターン通りいくとしたら、あと3ヶ月くらいで景気後退に突入する。
・3月の調査では米CFOの6割が今年後半に景気後退が起きると言っている。3/30日経


<景気浮揚要因>
・失業率が低い。米GDPの約7割は個人消費が占めるが、失業率が低水準の状態で維持されると、所得が維持され、消費が落ち込みにくくなる。1960年代以降に8回あった景気後退局面では、失業率が平均で3%強上昇しているが、今後想定される失業率の上昇幅はその半分にも満たない。
・移民が流入している。移民流入により労働供給が増え、成長の原動力になっている。一方で、移民は「弱い雇用」に就くので、賃金の伸び鈍化にも役立っている。
・米国では移民の流入やテクノロジーの普及、サプライチェーンの強靱化などにより潜在成長率が2%台に上昇している。
・米国の生産性は上昇している。生産性は2023年に年率で4%程伸びている。生産性が上がった主因は雇用流動性の高さになる。米国ではコロナ禍の初期に2200万人超の一時解雇が発生したが、その後、労働者はより成長力のある企業に転職した。最も雇用が増えたのはIT関連になり、起業数はコロナ禍前の2倍になった。これらが米国の技術革新を加速させている。
・デジタル化が米国経済を強靱化している。デジタルエコノミーの伸び率は平均年7%超あり、それが米経済を下支えしている。
・現在はサービス業が経済成長を主導しているので、景気が落ち込みにくい。サービス業は投資資金を製造業ほど必要とせず、イノベーションが起こりやすいので、成長力が落ちにくい。
・AIが普及期に入りつつある。英調査会社はその普及率に応じて2027年の米GDPを0.7~2.5%、2032年時点で1.8~4.0%押し上げると予想している。
・現在世界的なAIブームが起きている。AIの成長は加速しているので、このブームはまだまだ終わりそうにない。
・米国では家計債務の約7割を住宅ローンが占めるが、コロナ禍の低金利時代に多くの世帯が住宅ローンを借り換えを行ったため、現在の債務返済コストは抑えられている。住宅価格は高騰しており、その含み益を借り換えで現金化する手法も活発になっており、約60兆円の余剰資産が生じたという試算もある。
・米家計は金融資産の5割を株式や投資信託などで運用しているので、株高により、家計は潤っている。この20年の株価上昇の結果、家計の金融資産の増加は個人所得の増加の6倍になっている。住宅価格は3倍に上昇している。2024年第1四半期の米家計資産は過去最高の160兆ドル(2京5000兆円)に達している。家計純資産は過去10年間で約2倍になっている。
・景気サイクルの終盤にもかかわらず、米家計のバランスシートは良好で、家計の可処分所得に占める元利払いの返済負担比率は低下している。
・クレジットカード支払いの延滞率が上昇しているとの指摘は多いが、延滞が生じているのは低所得者層であり、全体に占める割合は10~15%程度にとどまる。金利水準は高いが、米国では固定金利で住宅ローンを組む人が全体の8割と多く、22年以降の金利上昇の影響は限定的になっている。
・現在、過去のリセッション局面の前段階で必ず見られていた「民間債務の急速な拡大」は起きていない。
・米長期金利は高止まりしているが、企業の金利耐性は向上している。2022年以降の米企業部門の受取利息の伸びは支払利息よりも大きい。大企業は低金利時に固定金利で資金を調達している一方、米アップルのように手元資金が潤沢な企業は高利回りの運用資産を保有している。
・インフレが鈍化している。コロナ禍で深刻になっていた移民減少や半導体不足などの供給制約が解消されている。インフレ指数の約3割を占める賃料も落ち着き始めている。
・インフレ要因となっていた、ウクライナ戦争の供給ショックが落ち着きつつある。
・インフレが落ち着いてきており、主要中銀は政策金利を引き下げ始めている。
・米国では半導体産業や環境産業(EVなど)、インフラ産業などの巨大産業を政府が支援しているので、景気が落ち込みにくい。
・世界的に積極的な財政政策が採られているので、当面の間、力強い経済成長が続く可能性が高い。
・インドなどの新興国経済が好調。中国はいろいろと問題を指摘されているが、それでも4%超の成長をできる見通し。
・過剰流動性(金余り)が維持されている。コロナ禍で政府がばらまいた資金が市場にまだ高水準で残っている。マネーストック(民間に流通しているお金の総量)は長期的に右肩上がりで増え続けている。世界のドルの流通量を示す「ワールドダラー」は2024年4月にリーマン・ショック前の約4倍にあたる8兆7300億ドル(1360兆円)に拡大している。
・FRBなどの主要中銀は過去の金融危機の経験を踏まえ、制度変更や規制に加え、バックストップ(安全策)機能を整備している。
・長期の米景気を俯瞰すると、現在の景気は拡大局面が長く、後退局面が短くなっている。その要因は、製造業からサービス業への重心移動、生産・在庫管理の進化、機動的な金融・財政政策などになる。
・米トランプ大統領は2024年12月に「投資家の皆さんにはこれから素晴らしい日々が待っている」「常々言ってきたことだが私にとって株式市場はすべてだ」と言っているので(1/24日経)、なんだかんだで最終的には景気が浮揚するような政策をとる可能性が高い。


<まとめ>
こう見ていくと、景気を押し上げる要素の方が多く、堅調な景気を保ちそう。景気後退に陥るとしても軽いもので済みそう。


■他の景気後退シナリオ
景気後退シナリオ1:中国のバブル崩壊で景気後退
中国の民間債務は積み上がっており、GDP比220%に達している。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。バブルが崩壊すれば独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性もある。そうなれば政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただ中国政府には財政・金融政策をする余地があるのでバブルが崩壊する可能性は低い。

・・中国政府がとれる政策が限られてきた。政府や民間企業の債務残高の合計はGDP比で約300%に膨らんでおり、大規模な財政支出はしにくい。一方で、人民元安が進んでおり、中国中銀は大幅な利下げをしにくくなっている。


景気後退シナリオ2:中国が武力で台湾を併合し、米中戦争が激化して景気後退
中国が武力で台湾を併合するとの見方がある。実際にそれが起これば米中戦争が激化し、世界景気には強い下押し圧力がかかる。ただ中国は西側から制裁を受けると食糧危機に陥るリスクが高いので、中国が台湾に侵攻する可能性は低い。

とはいえ、中国は米国債を売り続けており、「安全資産」である金の保有を増やしているので、台湾に侵攻する可能性も少しはありそう。

中国が2024年5月23~24日に実施した台湾を包囲する形での軍事演習について、米インド太平洋軍のサミュエル・パパロ司令官は「(侵攻に向けた)リハーサルのようだった」と話している。


景気後退シナリオ3:「脱成長」経済システムに転換して景気後退
COP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は「産業革命以前から21世紀末までの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指して、努力を追求することを決意」することで合意したが、現在その実現は絶望的な状況にある。各国の2030年時点での目標がすべて達成されても21世紀末までの気温上昇は2.4度になるとされる。そうなれば海面上昇で沈む島国が出て、山火事や巨大台風などの自然災害が多発し、水不足、食糧危機、感染症のリスクなどが増大する。このような未来が科学的に予測されている現状で対策を取らないという選択肢はない。問題の根幹は現在の「成長型」経済システムにあるので、「脱成長」の経済システムに転換する必要がある。ただ、現在の状況で「脱成長」の経済システムに転換すれば景気後退は避けられない。

深刻な景気後退に陥ると、財政問題や福祉問題など目先の深刻な問題が噴出するようになり、それらの問題に対処せざるを得なくなる。そのため経済システムの転換はしばらく先になりそう。環境危機が目先の大問題に発展したときに初めて転換の機運が生まれるのかもしれない。

2022年、2023年、2024年は世界各地で記録的な熱波や干ばつが発生した。英保険仲介大手のエーオンによると22年の気象災害の損失は2990億ドル(約40兆円)に達するという。IPCCは「産業革命前に比べた世界の気温上昇は2030年代初めにも抑制目標の1.5度に達する」と予測している。2024年の平均気温は+1.6度になった。IPCCの数値目標が守られているかは、1年間の値だけではなく複数年の平均で判断するので、気温の上昇幅が単年で1.5度を超えてもただちに目標未達とはならないが、地球温暖化の深刻さは増している。1/11日経

もしくはAI・ロボット社会が温暖化問題の打開策になる可能性もある。温暖化の最大の要因は「人の活動」になるが、AIやロボットが進化・普及すれば、数十億人の「無用者階級」が生まれるともいわれているので、長期的には出生率の低下により人が減っていく可能性がある。そうなれば環境負荷の低い社会が実現する。

国連が2022年7月に発表した世界人口推計では「2086年に104億人で人口はピークを迎える」と予測しているが、この数値は2019年の予測「2100年に109億人でピークを迎える」からピーク時期が前倒しされている。AIやロボット、教育などの影響を考えると、今後もピーク時期の前倒しが続く可能性が高い。


景気後退シナリオ4:災害や紛争で景気後退?
大災害や戦争が起こると景気には強い下押し圧力がかかる。しかし、こうしたことが起こると必ず政府が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば景気はV字回復することが多い。一般に、災害や戦争は押し目買いのチャンスといわれている。今回のような新型コロナウイルスのパンデミックも株式市場には追い風で、社会・経済構造の転換や金融緩和などにより、株高が発生しやすくなる。

ただし、日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は1000兆円規模の損失が発生するようなので、景気後退もしくは財政破綻する可能性がある。

南海トラフ地震が単独で起きた場合は、200兆円程度の損失が発生すると試算されている。このような災害の発生時には、大規模な財政支出が必要になるが、すでに国債金利は上がり始めているため、これまでのように日銀頼みの国債発行をできない可能性が高い。仮に国債を大量増発した場合、財政破綻もしくはハイパーインフレが起こる可能性がある。


■今後の計画
景気が停滞し、円が130~135円くらいまで上昇したら、2倍以上の値上がりが見込める海外資産を買っていく。

AIアナリスト Deep Research

2月にOpenAIなどの生成AI企業が高度なリサーチ機能を搭載した「Deep Research」の提供を開始した。これを使うとネット調査が非常に楽になりそうなので、どのようなものか調べてみた。

■Deep Researchとは
AIの「論理思考モデル(推論モデル)」にウェブ検索機能をつけたモデル。ネット調査に特化した、いわばネット調査エージェント。

従来の「大規模言語モデル」は、事前に学習した内容から機械的に即答するタイプなので、複雑な思考(計算)を伴うような課題はうまくこなせなかったが、「論理思考モデル」は人間のように順序を踏んで考えてから結論を導き出すので、複雑な課題をこなすことができる。現時点では東大入試(数学)を突破するくらいの思考力がある(3/11日経)。この「論理思考モデル」にウェブ検索機能をつけたDeep Researchは、ネット上の膨大な情報源から必要な情報を収集・分析し、統合して包括的なレポートを作成することができる。

Deep Researchは、引用元や参照サイトのURLを明示し、レポート作成にかかる時間は3~20分程度、文字数は3000~12000字(文書作成ソフトで2~10ページ相当)になる。現在は公開情報のみにアクセス可能だが、将来的には企業や個人が保有する非公開データにも対応する予定。OpenAIのサム・アルトマンCEOは「博士号を持つ人より優れたAIを目指す」としており、近い将来、あらゆる分野で人間を超える調査レポートを作成できるようになる可能性がある。

■どのようなときに使うか
Deep Researchは科学研究、事業調査、観光スポットや食べ物の情報収集、病気や健康関連の調査、製品比較、時事問題の分析など、幅広い分野の調査で使える。未知の分野でも、適切な指示を与えれば、わかりやすいレポートを作成してくれる。

■使い方

1,Deep Researchモードを起動し、調査課題を与える。

2,AIが追加の質問をしてくるので、それに答える。

3,AIがリサーチを開始し、レポートを作成。

4,レポートを批判的に読みつつ、気になる点があれば質問して掘り下げる。

AIへの指示は具体性があるほど回答の精度が上がるので、詳細な条件設定や指示を行うことが重要。事前にChatGPT-4oなどを使ってプロンプトを精査し、Deep Researchに適した指示を作成してもらうのも有効。

*『メタトレンド投資』の著者であり、テックマニアでもある中島聡さんはメルマガ3/18で「日本語でプロンプトを書くと日本語でウェブ検索を行い、日本語の情報ソースを使ってしまうので、英語圏の調査をする場合は一旦プロンプトを英語に翻訳した方が質の高いレポートをつくってくれる」と言っている。実際に試してみると、確かにPerplexityではそんな感じだった。しかしOpenAIやGoogleのDeep Researchでは日本語で質問しても、状況に応じて英語の情報ソースを使ってくれるように感じた。

■Deep Research比較
Deep Researchは複数の企業が提供しており、それぞれ異なる特徴を持つ。今回は、それぞれに自分がよく知るプラスアルファ・コンサルティングに関するアナリストレポートを作成させ、比較をしてみた。

・Perplexity:調査は4分とスピーディで、内容も3ページくらいで簡潔にまとまっていた。1日5回までの使用なら無料で使える点もいい。しかし、レポートは情報をつぎはぎしただけのような感じで、誤った情報が多く生成された。情報としては使えそうになかった。

・Grok:Perplexityと似たような感じ。文章はより簡潔になっていたが、簡潔すぎて意味が読み取れないところもいくつかあった。

・Gemini:これはDeep Research機能が使えるようになった直後の2月16日頃と、3月の半ば頃に2回同じ指示を出してみた。1回目の調査では誤情報が多く含まれていたが、2回目の調査では精度が著しく向上しており、誤情報は見つからなかった。ただし、会社の問題点の指摘はあいまいで、結論が楽観的すぎるように感じた。

・OpenAI:これが最も優秀に感じた。調査時間は10分くらいかかり、文字数は1万文字くらいあって、読むのは少し大変だったが、内容は詳細・正確で文章もわかりやすかった。ただこの調査でも問題点の認識は甘く、結論も楽観的で、自分の所感とはだいぶ異なっていた。

今回の調査ではこのようになったが、AIは進化が速く、プロンプト次第でアウトプットの質が大きく変わるので、これが結論というわけではない。今後もいろいろ試して、それぞれの特徴や使い方を探っていく必要がありそう。

*テックマニアの中島さんはメルマガ3/4で、「現時点では、Perplexityが、最も便利だと感じて、私は毎日のように使っています。漠然としたイメージですが、OpenAIのDeep Researchは、博士号を持った人を雇ってレポートを書かせるイメージで、PerplexityのDeep Researchは、コンサルタント会社の人を雇ってレポートを書かせるイメージです。通常のビジネス用途であれば、Perplexityのもので十分だと思います」と言っている。

■問題点
・誤情報のリスク
Deep Researchは従来モデルよりハルシネーション(幻影・誤情報)が抑えられているようだが、まったくないわけではない。利用時は引用元の確認が必須になる。

・情報アクセスの制限
Deep Researchはオープンソースの情報しかアクセスできず、有料情報や非公開情報、ログインが必要な情報にはアクセスできない。そしておそらくだが動画情報にはアクセスしていない。これらの情報にアクセスできないと、分析が浅くなる。現時点では、この部分はユーザーが補う必要がありそう。

・高い計算コスト
生成AIは普通の検索の10倍の計算量を必要とするとされ、Deep Researchはその100倍の計算量を必要とするともいわれるので(2/27日経)、その分、利用料金が高くなる。環境負荷も高い。

・人間の分析力の低下
AIが調査や分析をすべてやってくれるので、人間の調査力、分析力、思考力が退化する可能性が高い。そうなると、AIが書いたレポートを読んでも、適切な意志決定ができなくなる。

・人間のアルゴリズム化
AIは自ら決定を下すことのできる史上初のテクノロジーになる。AIの意志決定が人間よりすぐれている場合、人間はAIに依存するようになり、自分では意志決定をしなくなる可能性が高い。今後は仕事や結婚相手など、人生における重要な判断もAIに委ねるようになる可能性がある。そうなると人間は実質的にAIアルゴリズムの一部になる。

・社会的混乱の可能性
「論理思考モデル」のAIは知能そのものをコモディティ化する。そうなると教育や職業のあり方が大きく変わり、社会が大混乱する可能性がある。

■まとめ
現時点でDeep Researchは完璧なAIアナリストとはいえないが、急速に進化しており、完璧になるのは時間の問題になりそう。それまでは、人間がAIのできない部分を補っていく必要がありそう。

Deep Researchの進化が進めば、このブログで行っているような株式投資のリサーチは一瞬で完了し、「株式投資エージェント」がすべてをこなしてくれる未来が訪れるかもしれない。とはいえ、それはもう少し先の話なので、それまではDeep Research機能を使って株式投資を楽しんでいこうと思う。

■後記
ChatGPTが登場してすぐくらいのときに、ブログで「チャットGPTと株式投資」という記事を書いた。そこには『AI 2041』という本を参考に、「2041年にはAIアナリストがあっという間に人間を超える調査レポートを書く」みたいなことを書いたような気がする。

今はまだ2025年。ChatGPTが登場してからまだ2年くらいしか経っていない。現時点ですでにAIアナリストが人間のアナリストを凌駕しつつある。AIの進化が驚くほど速い。速すぎる(笑)。今後さらに進化が加速して人知を超える状況になっていきそう。そうなったとき株式市場はどうなっているのかまったく見当もつかないが、当面はAIを活用しながら適応していくしかなさそう。


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この文章をOpenAIのDeep Reserchに校閲してもらった。プロンプトは「次のレポートの事実確認・論理性チェック・追加情報の提案をしてください。」
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誤りや曖昧な表現の指摘と理由:


全文修正案:

以下、オリジナルのブログ記事「AIアナリスト Deep Research」の文章に対し、専門的な観点から修正提案を埋め込んでいます。



AIアナリスト「Deep Research」が拓く新時代

昨今、AIの発展には目を見張るものがあります。特に注目すべきは、人間のアナリスト並み、あるいはそれ以上の調査力を持つとされる新機能「Deep Research」の登場です 。これは一度の指示でAI自らがインターネット上の情報収集から分析・レポート作成までを行うもので、ビジネスインテリジェンスの在り方を変える可能性があります。

論理思考モデルの搭載で飛躍的進化

最新のAIでは、より高度な論理思考モデルが搭載され、複雑な問題にも一貫した推論ができるようになっています。例えば、このモデルにより難解な数学問題や科学的課題への対応力が向上し、AIが東大数学レベルの問題にも取り組めるようになりました。2025年度東大入試の数学では、ChatGPT(o3モデル搭載版)が150分の試験を12分で解き、上位1%相当の得点を記録したとの報告があります 。つまり、AIが高度な数理的推論や論証を行える土台が整いつつあるのです。

さらに、これらのAIは情報収集と統合の能力も備えています。インターネット上に公開された膨大なテキスト・データを横断的に検索し、関連情報を取捨選択して統合的な知見を引き出すことが可能です。ただし取得できるのは公開情報のみで、ペイウォール付き記事などは参照できません。これにより、AI自らがエビデンスに基づいたレポートをまとめ、人間はその結果をレビューするだけで済む未来が現実味を帯びています。

主要サービスのDeep Research機能比較

現在、「Deep Research」機能は複数のAIサービスで提供され始めています。代表的なChatGPT(OpenAI), Gemini(Google), Perplexity, **Grok(xAI)**の4つについて、その特徴を見てみましょう。

  • ChatGPT (OpenAI) – OpenAIが提供するChatGPTでは、2025年2月にDeep Research機能が追加されました。これは月額有料プラン(Plus)のユーザーが利用でき、AIエージェントが数十件以上のウェブ検索を自動で行い、詳細なレポートを返してくれます。背後には高度な推論モデル「o3」が使われており、論理的一貫性と問題解決能力に優れた回答が得られる点が売りです。一方で、内容が冗長になりすぎて読みにくいとの指摘もあります。「○○ページ程度で」と指示するなどの工夫が必要でしょう。処理時間は課題で、1回のDeep Research完了まで5~30分程度かかる場合があります。これは人間の分析に匹敵するプロセスを踏んでいるためで、計算コストの高さを物語っています。

  • Gemini (Google) – Googleが開発中の大規模言語モデルGeminiにもDeep Research相当の機能が搭載されています。GeminiはGoogleの強力な検索インフラと直結しており、学術論文やニュース記事など信頼性の高い情報源も積極的に参照できるとされています。他方、一部に曖昧な情報が混じるケースが確認されています。例えば最新テストでは、生成された表に誤った形式の部分がありました。

  • Perplexity – 新興のAI検索サービスPerplexityも、Deep Research機能で頭角を現しています。ユーザーの質問に対し、関連するキーワードで自動的に何百もの検索を実行し、見つかった複数の情報源を読み込んで統合した回答を提示します。特徴は、その回答に出典(参考リンク)を明示してくれる点で、ユーザー自身が元情報を検証しやすい設計になっていることです。実際、ある比較調査では用途に応じたおすすめ提案まで含められており「1つの読み物として楽しめる、勉強になる」と評されました。フォーマット面でも、美しい表組みで各項目を比較するなど視覚的にわかりやすい回答を生成しました。ただ、テスト時には文章中になぜか中国語らしき文字が紛れ込む、小売価格の表示が実勢とかけ離れて低すぎるなど細かな誤りも散見されました。元ネタを省略しすぎて背景知識がないと理解しづらい部分もあったとの指摘もあります。全体的には非常に有用ですが、提示された情報の検証や不足部分の補完はユーザー側で行う必要があります。

  • Grok (XAI) – 2023年末にイーロン・マスク氏が立ち上げたxAIが提供するGrokも、Deep Researchに類似した「Deep Search」機能を持っています。リアルタイムのトレンド分析やSNS上の声を調査レポートに取り込める可能性があります。一方で、現時点のGrokの回答精度には課題があります。さらに一部には事実と異なる架空のジョークのような記述も見られ、情報の信ぴょう性にやや欠ける結果となりました。価格や重量の表示も米国式(ポンド・ドル表記)で日本人には馴染みにくい面があるなど、ローカライズや精度の改善が望まれます。とはいえ、今後のアップデートでモデル自体の性能向上が図られれば、他に追随できるポテンシャルを秘めています。現在は無料でも試用可能なため、限定的な用途であれば試してみる価値はあるでしょう。

Deep Research活用における課題とリスク

強力なAIリサーチャーとも言えるDeep Research機能ですが、その活用にあたって留意すべき課題やリスクも指摘されています。

  • 誤情報(ハルシネーション)のリスク: どれほど高性能なモデルでも、事実と異なる回答をそれらしく生成してしまうリスクはゼロではありません。例えば、ChatGPTはありもしない学術論文の内容や架空の法律判例をでっち上げて回答してしまうことがあります。実際に2023年には、ニューヨークの弁護士がChatGPTの提示した架空の判例を本物と信じて裁判所に提出してしまい、罰金を科される事件が起きています。このケースでは、AIの回答がもっともらしかったために人間が検証を怠り、結果として重大なミスとなりました。

  • 情報アクセスの制限: Deep Researchは「インターネット上のあらゆる情報」にアクセスできるように思えますが、現実にはアクセス可能な範囲に限りがあります。まず、前述の通り有料記事や非公開データには基本的にアクセスできません。たとえ論文がオープンアクセスで公開されていても、AIがそれを正しく認識できずアクセスを断念してしまう例も報告されています。また、サービス利用上の制約として、一度に取得できる情報量や実行回数にも上限があります。先述したようにChatGPTやGeminiは利用回数に制限があり、Perplexity無料版も1日5回までと定められています。このような技術的・利用規約的な制限が存在する点にも留意が必要です。

  • 計算コストの高さ: AIが人間顔負けの深掘り調査を行う裏側では、莫大な計算リソースが消費されています。、これは裏を返せばその間GPUサーバがフル稼働していることを意味します。提供企業にとっても計算コスト=サーバ費用が非常に高く、だからこそ高度な調査機能は有料プランで提供される場合が多いのです。実際、ChatGPT EnterpriseではDeep Researchを月100回利用するのに月200ドル程の料金設定となっています。ユーザーとしては、一見無料や定額で使えてもその裏の計算資源には限りがあることを理解し、本当に必要な場面で賢く使うことが求められます。

  • 人間の分析力低下: 手軽に高度な分析結果が得られる一方で、人間側の分析・思考力が低下する懸念も指摘されています。AIに頼りきりになると、自分で情報を調べ咀嚼する機会が減り、長期的には批判的思考力や問題解決力が錆び付いてしまう恐れがあります 。特にAIの回答を無批判に信頼する人ほど、「考える労力が省けた」と感じやすい一方で、自分の専門知識に自信がある人ほどAI回答の検証に時間を割いていました。これは、AIを使うほど効率は上がるが確認作業に時間を割かなければ誤情報を掴むリスクがあることも意味します。したがって、AI活用と人間の思考力維持とのバランスを取ることが今後ますます重要になるでしょう。教育現場でも「AI時代に人間が鍛えるべきはどのような力か」という議論が始まっています。

  • AI依存のリスク: 上記とも関連しますが、AIへの過度な依存そのものがリスクです。個人レベルでは、AI無しでは調査・分析ができなくなったり、自分の判断に自信を持てなくなったりする可能性があります。組織レベルでも、AIシステムに依存しすぎると、もしそのAIサービスが停止した場合に業務が滞るリスクや、AI特有のバイアスに気付かず意思決定を誤るリスクがあります。実際、「AIがそう言うから」という理由で人間の専門家の判断を覆した結果、問題が生じた例も報告されています。このように、人間の「最終チェック」を省いてしまうことがAI依存の最大のリスクと言えます。したがって、「AIアナリスト」はあくまで優秀な補佐役と位置付け、人間は最終的な判断者であり続ける姿勢が求められます。

おわりに:AI時代のリサーチとの向き合い方

AIのDeep Research機能は、適切に使えば信頼できる情報に瞬時にアクセスし、分析業務を飛躍的に効率化する力強いパートナーとなります。一方で、その能力を過信すれば思わぬ落とし穴に陥る可能性もあることを私たちは知っておかねばなりません。誤情報のチェック、ツールの制約の理解、人間の思考力の維持――これらを怠らずにAIアナリストと協働していくことで、初めて真価を発揮できるでしょう。

私たち人間の役割は、AIがもたらす知見を批判的に検討し創造的に活用することです。Deep Researchが普及する今こそ、「何をAIに任せ、何を自分で考えるか」を見極める力が問われています。AIと人間、それぞれの強みを生かした新しいリサーチの在り方を模索し、未来の知的生産性を高めていきましょう。