保有比率の高い順に見ていく。
■イントラスト
基本シナリオ:「賃貸保証会社」から「多角的な保証プラットフォーマー」へ
イントラストの株価が伸び悩んでいるのは、家賃債務保証事業の次の成長ドライバーが見当たらないためだとやっとわかった。現在は家賃債務保証事業が業績の牽引役だが、この事業の成長はあと1、2年で止まる。医療債務保証は伸びてきてはいるが、まだ業績の牽引役というほどでもない。次の柱が見つかるまでは株価は低位にとどまりそう。
足元の業績は順調。今期は売上が100億円を超え、営業利益は23億円を超えそうなので、申し分ない。
決算説明で社長は売上を最低でも500億円にしたいと言っていた。社長の経営力とM&Aや新保証商品の開発でなんとかその目標を達成してくれたらと思う。
2/15日経に「病院が消える?経営厳しく」という記事があった。病院の数は減少傾向で直近10年で約400カ所減少しているという。原因は人口減、コスト高、人手不足あたりらしい。ただ現在の病院数は約8000で、スマホスの導入企業数はまだ200以下なので、伸びしろはまだまだありそう。
今後3年の予想売上高成長率と利益成長率は共に年10~15%程度。現在の妥当だと思う時価総額は230億円(株価1000円、PER15倍*来期の予想EPSで計算)。2030年の予想売上・利益は現在の2倍くらい。
■プラスアルファ・コンサルティング
基本シナリオ:競争激化で悪戦苦闘
1Q決算は楽観していただけに、あまりにネガティブな内容にびっくりした(笑)。IRページのトップに「2025 年 9 月期 第 1 四半期決算について想定されるご質問に対する回答」という”言い訳”めいたIRがありイヤな予感がしたが、蓋を開けてみると案の定、非常に悪い決算だった。
ネガティブサプライズは2つ。1つは、主要2事業で導入企業数が頭打ちになりつつあること。ソフトウェア市場は拡大基調にあるので(
2/1日経)、PACのソフトウェアの販売が伸び悩んでいるのは競争力低下が原因になる。競争力低下の原因は競争激化とそのタイミングでの値上げになりそう。
*
2/26SBIレポートには、「「タレントパレット」の導入数が伸び悩んだのは、競争が激化している中小企業向け市場から実質ほぼ撤退したためで、大企業向けでは特に問題ないもよう」みたいなことが書いてある。1Qに導入した企業がすべて大企業ならまだなんとかなりそうだが、決算資料にはそこらへんの内訳が全く書かれていないので、実際のところはよくわからない(スポット売上でなんとなくはわかるが、売上を計上するタイミングがズレる)。また「タレントパレット」の導入か「ヨリソル」の導入かもわからない。
*マーケティング・ソリューション事業では解約が増え導入減となっているが、解約が増えているのは主に「見える化エンジン」になる。SBIレポートには「見える化エンジン」について、「既に成熟期を迎えた中、ここ数年はやや価格を下げMID・SMB 層の新規顧客獲得に努めてきた」とあるのですでに導入は頭打ちのように見える。ここで少し気になるのは
2024年5月の決算説明資料に「「見える化エンジン」の価格を4月以降、順次約20%値上げ」とあること。「見える化エンジン」を値下げしたのか、値上げしたのか、実際のところどちらなのかよくわからない。
「タレントパレット」の解約も増えているようで、決算資料には、長期契約企業の離脱が増えている、みたいなことが書いてある。去年4月からの値上げにより、ある程度の解約は予想していたが、長期契約企業の解約は予想外。長く使っている人事システムはよほどのことがない限り変えないので、よほど不満がたまっていたのかもしれない。PACは決算でわざわざ解約について詳しく触れているので、足元でも解約が増えている可能性がある。
*「タレントパレット」の顧客はクラウドERP(統合基幹業務システム)に流れている可能性がある。クラウドERPはコストやスピードなどの面で優位性があり、それらを提供する外資大手はそこにAIエージェントを搭載し始めているので競争力は高そう。生成AIにより言語の壁も消失しつつあるので、今後はこちらがスタンダードになっていくのかもしれない。
*大企業ではシステムの内製化が進んでいる可能性もある。現在、ノーコード・ツールやコードを書けるAIにより、ソフトウェアを容易に作れるようになりつつあり、多くのSEを抱える大企業ではソフトウェアを自前で作り始めている(
2/27日経クロステック、
3/11日経、
1/5日経)。
3/14日経には「テルモは世界中の拠点で働く社員の最適なポストの配置をAIが導き出す人材マッチングシステムを開発」とあり、人事系の先端システムも自前で作り始めている。
HR事業では1Qにマーケティング投資を多めに行ったため、2Q以降はやや抑えるという。そうなると導入数がさらに伸び悩みそう。
AIのDeep research機能で、PACのレポートを書かせると「(主要2事業の)大企業市場はいずれ飽和に近づくため、新市場開拓(中堅企業や海外)が求められます」という一文が出てきた。タレントマネジメントシステムの国内市場は大企業が約4500社で、「タレントパレット」の導入企業数約730、「カオナビ」の導入企業数約670を合わせると、現在両社で約3割を押さえていることになる。当初は、あと2.5倍くらいの成長余地があると思っていたが、クラウドERPに付帯されているタレントマネジメント・システムや競合システム、自社製システムなどを考慮すると、もう開拓余地はそれほど残されていないのかもしれない。なお、マーケティング・ソリューションの大企業市場はすでに飽和している。
以上、競争激化、値上げ、「タレントパレット」の中小企業向けほぼ撤退、解約増、投資減、開拓余地縮小の影響を考慮すると、今後は両事業とも導入企業数が伸び悩む可能性が高い。
前回のブログに「「タレントパレット」の今期予想KPIがカットされている。なにか不都合な事情があるようにみえるが、その理由がよくわからない」と書いているが、そのカットした理由は、この導入企業数の減少になりそう。前期の導入企業数は+418(「ヨリソル」含む)だが、今期はその半分くらいになりそうなので、それで悪印象を避けるためカットしたのかもしれない。
都合の悪いKPIを隠すのはこれまで他の会社でよく見てきたことなので特段の驚きはないが、このような状況下での経営者の強気発言は初めて。PACは今期業績予想について「保守的」「必達」と言っている。インサイダーが発する強い言葉には影響力があるので、このような情報を発信すると、投資家をミスリードしてしまう。
前回のブログには「「タレントパレット」の参入障壁が崩れつつあるように見える」「今期の業績予想は数字ありきで、内容を伴っていないものなのかもしれない」と書いているが、会社が発した「保守的」「必達」という力強い言葉に惑わされ、今期は順調に成長するものと判断してしまった。
1Q決算のもう1つのネガティブサプライズである「キミスカ」事業の大幅な下振れについても、昨年10月のブログには「競争の激しい市場で、業界無知のツートップが片手間で経営しているので、勝ち残れる可能性はほぼない」「減損の可能性もある」と書いているが、会社の強気発言により、なにか打開策を見つけたと解釈してしまった。
11月に発表した自社株買いでは、その後の買い方をみると、業績下振れを予想していたようにも見える。通常、株価が低迷していて今後の業績に自信がある場合、自社株買いの予定枠を早々に使い切る。しかし、今回のケースではそのようにはせず、株価下支えのような買い方を1Q決算後までしていた。
解せないのは、業績下振れが1Qで表面化する確率が高いとわかっていながら、なぜこのような強気発言をしたのかということ。経営者は現実を直視しない理想主義者なのだろうか、単なる自信過剰なのだろうか、それとも適当にごまかせると思ったのだろうか・・。このあたりのことはよくわからないが、この会社の経営者は信頼しにくいと思った。
2/27日経には「大企業では取締役会やアナリストの前では「誤り」を認めるのが禁句になっている」「株主をだまし始めると、自分のデタラメを信じ込んで、自分自身もだまされてしまう」とある。これがPACにどこまで当てはまるのかはよくわからないが、現実と発言の間に大きなズレがあることは確か。ただ記事には「うまくいかない戦略であれば認めて転換し、本来の強みに集中することで復活ができる」ともあるので、PACも誤りを認めて転換すれば、復活の道もあるのかもしれない。
今期の「キミスカ」事業は大幅に下振れそう。期初の予想では売上高12億円(前期比+16%)、営業利益1.75億円(前期比±0%)となっているが、1Qの売上高は1.3億円(前期比-30%)で営業損失は1億円(7千万円の赤字拡大)になる。決算資料には「受注が弱い状況は短期間で改善することは厳しい状況」とあるので、今期の売上高はうまくいっても8億円くらいになりそう。利益に関しては「2Q 以降は費用面を圧縮し、通期では黒字を目指していく」とはあるが、投資を抑えると売上がさらに減少しやすくなるので、黒字にできない可能性もある。
以上を総合して、今期業績はどうなるか。「キミスカ」事業は当初計画から売上4~5億円下振れし、利益は2~3億円下振れしそう。赤字で着地した場合は事業継続が困難と判断し、期末に6~7億円減損する可能性もある。「タレントパレット」事業は値上げの影響で数字的には若干の下振れですみそうだが、導入企業数の伸び悩みにより、売上は4~5億円、利益は2~3億円下振れする可能性がある。マーケティング・ソリューション事業は導入企業数が伸び悩みそうだが、値上げ効果で売上、利益は1億円程度の下振れですみそう。これらを総合すると、売上はだいたい167億円、営業利益は50億円くらいになる。
来期業績はどうなるか。来期は「タレントパレット」事業の導入企業数がマーケティング・ソリューション事業のように減る可能性もある。もしそうなれば業績は頭打ちになる。導入企業数を増やすために大幅な値下げをしても業績は伸び悩む。つまり、現時点ではどちらに転んでも業績が頭打ちになる可能性がある。
もちろん業績がそこまで悪化せず、今後盛り返す可能性もあるが、今の流れでいくとそうなる確率はそれほど高くはないのではないかと思う。
今期業績が下振れし、来期以降の業績が減益基調になる可能性を考慮すると、株価1500円、PER16倍は決して高い水準ではない。今後、HR事業が力強い成長力を取り戻さない限り、株価は低空飛行を続けると予想する。
<2月21日(金)の3年チャート(週足)>
決算直後に過去最大(*上場時除く)の出来高を付けて上場来安値を更新。出来高の大きさから、ネガティブサプライズの大きさが見てとれる。
出来高急増 × 上場来安値更新 は強力な弱気シグナルになるので、今後も下げトレンドが続きそう。
今回の投資は失敗。どこに問題があったのかを考えてみる。
まずは、どうして買ったのか。
買った理由は主に6点。
・潜在市場の大きいタレントマネジメント・システム市場で「タレントパレット」は快走している。利益率の高さから高い参入障壁を築けていそう。マーケティング・ソリューション事業で培ったマーケティング技術を取り入れているところに強みがありそう。
・PACはデータの「見える化」に強みがあり、データ・ドリブン・エコノミー(データ駆動型経済)の時流に乗っている。
・主力サービスの解約率が1%以下なので、強固なストック型ビジネスを構築している。今後利益の着実な積み上げが期待できる。
・マーケティング・ソリューションシステムを提供しているので、マーケティング(商売)が上手そう。
・タレントマネジメント・システムを提供しているので、社員のモチベーションが高そう。
・会社は社名にある「プラスアルファ(付加価値)」を重視しているので、付加価値を重視する株式市場と相性がよさそう。
・経営者がスマートで誠実そう。
これらの要素により、ビジネスモデルが最強だと思った。株式市場でこれ以上の会社はないと思った。
どこに問題があったのか。
敗因は主に5点。
・参入が相次ぎ、競争が激化した。
・「タレントパレット」に高い参入障壁がなかった。というか、技術が陳腐化し、参入障壁がなくなってしまった。
・事業環境の変化が速すぎた。「タレントパレット」では値上げ直後に値引きキャンペーンをするなど、急変する事業環境に翻弄されていた。
・経営者に並外れたセンスとパワーがなかった。このような苛烈な環境で生き残るには、超人的な能力が必要になる。
・傑出したマーケティング力もなかった。値上げに失敗したのはその証左。顧客調査がしっかりできていれば、もっと精度の高いプライシングができたはず。
・「プラスアルファ(付加価値・利益)」を求める方向がややズレていた。経営者はプラスアルファを生み出すにはチャレンジ、つまり新機能の開発が重要と考えていた節があるが、そこに注力しすぎて基本的な機能の改善を怠ったように見える。昨年10月に「タレントパレットのインターフェースを改良し操作性・見やすさを向上」という
IRを出しているが、今さらという感じ。そもそもこのような基本的なことはIRで報告するまでもなさそう。顧客にとってはマニアックな新機能よりも、UI/UXやスピードなど基本機能の充実の方により高い「付加価値」があったのではないかと思う。
今回の値上げの失敗は自社の「プラスアルファ(利益)」を優先したことが原因ではないかと思う。顧客にとっての「利益」を優先することに徹していれば、もう少し慎重に動けたのではないかと思う。
今回得た教訓は3つ。
1つ目は分散投資は必須ということ。100%確実な未来予想や会社理解はなく、今回のように大外れすることもあるので極端な集中投資は避ける。時間的な分散も必要で、買うときは少しずつ買っていく。
2つ目は、”冷めたら”売ること。昨年2月の決算で「キミスカ」事業が下振れし、その原因を探ると、「キミスカ」を運営するグローアップ社の経営陣のすげ替えに行き着いた。あまりにもとんちんかんなタレントマネジメントに会社への熱が一気に冷めた。しかし、ビジネスモデルが魅力的だったため保持してしまった。過去の例では冷めたときにすべて売却しており、(それで儲け損なったこともあるが、)基本的にはうまくいっていた。
3つ目は、会社がKPIを隠し始めたら売ること。決算資料から重要な情報がカットされたら危険信号。早めに売るようにする。経営者が表に姿を見せなくなるのも危険信号と捉える。
1/7IRに、人事の未来を考えるシンクタンク「HR 未来共創研究所」を開設したとあった。サイトをチラッと見てみると「未来年表」に「2041年 人事部門のオペレーションが完全に自動化され、人は主に戦略的な業務や仕組み作りに時間を費やすようになる」「2045年 人型ロボットの能力が人間を凌駕し、労働力としての時給が0.10ドル以下に低下。ほぼすべての人間の労働を代替可能になる」とあった。決算説明でも、このように自社にとって一見不都合なことも記載してくれれば頼もしさが増したのにと思った。なお、上記の予想が当たるとしたら、「タレントパレット」の寿命もあと15年くらいで尽きることになる。
1/24日経に「AIエージェントがIT業界のビジネスモデルを大きく変える可能性がある」とあった。「IT企業はこれまでCRMや生産管理、人事管理といった業務プロセスごとにソフトウェアを提供し、顧客は目的に応じて使い分けてきた。しかし、ソフトを横断的に連携させるAIエージェントは、この構造を揺さぶる。例えば顧客から問い合わせがあると、CRMで管理する顧客データ、ERPで管理する在庫情報、電話オペレーターの対応履歴などを参照し、最適な回答を生成する。これが実現すれば、従来の業務ソフトはデータをAIエージェントに提供するだけの裏方になりかねない」。PACが長期で生き残るにはAIエージェントを作るしかなさそう。
前回のブログで「AIやロボットによる人間の代替が進むことで、「タレントパレット」のユーザーが減っていく可能性もある」と書いているが、これは主にホワイトカラーに限定された話になりそう。法律相談や会計処理、カスタマーセンターの対応など、ルールベースで動く仕事はAIに置き換わるが、介護や看護、建設現場、物流や卸売り・小売り、ホテルなどで働くローカルワーカーやエッセンシャルワーカーは不足するらしい。現在、日本のホワイトカラーは勤労者の3~4割くらいのようなので、仮にホワイトカラーが半分いなくなってもトータルで見ればそれほど問題なさそう。ただ「タレントパレット」の導入企業はホワイトカラー企業が多そうなので、その点ではそこそこ大きな影響を受けそう。
1/19日経、
2/1日経、『ホワイトカラー消滅』
ダイレクトリクルーティング・プラットフォーム最大手のビズリーチが、社内での人材登用を支援する「社内版ビズリーチbyHRMOS」を始めた。今後3年で大手や中堅企業など1000社への導入と年間30億円の売り上げを目指すという(
1/28日経)。この領域ではPACの手強い競合になりそう。
2月にカオナビが米カーライルグループに500億円で買収された。カオナビの今期売上予想は95億円、純利益2.5億円になる。競争激化とソフトウェア陳腐化の流れの中で、500億円を回収できるのかやや疑問。
PACの2Q決算予想
2Q決算は、1Qのマーケティング投資やITレビューの口コミ対策、例年の傾向から、「タレントパレット」の導入はそこそこ伸びそう。売上高は42.5億円(累計81.5億円)、HR事業の導入企業数は+75と予想。ここを超えてきたらまだなんとかなりそう。
PACの現在の妥当な株価はどのくらいか。今期業績が会社予想より下振れし、来期以降の業績が減益基調になる可能性を考慮すると、株価1500円、PER16倍くらいが妥当な株価になりそう。
■今後の計画
今後の投資スタンスは 「基本静観、チャンスが来たら動く」 のまま。現在、景気循環的に好景気の最終局面にあるのでチャンスがくるのはしばらく先になりそう。調査・観察を続けて次のチャンスに備えたい。PAC株は適宜売却していく。
市場が荒れて米VIXが40超、日経平均の騰落レシオが65以下になったら株式などを買っていく。ドル建てやスイスフラン建て資産を優先的に買っていく。米景気が後退局面に入った場合は、後退開始から5〜10ヶ月後を目処に株式などを買っていく。
<ナスダックチャートの10年チャート> MACD的にしばらく調整局面に入りそう。パターン通りにいけば、2026年3月頃に買い場が訪れそう。
プラスアルファ株で過去最大の”マイナスアルファ”を出してしまった(笑)。今はとてもやるせない気持ち。このブログもいよいよギャグ的な色彩が濃くなってきてしまった。ただ今回のケースでは、長期間の葛藤の末に、楽観から悲観への落差の大きなオチがあるので、なかなか良質なコメディに仕上がったのではないかと思う。
それはともかくとして、認知科学的には「予想が外れてその原因を考えるときに、学習が最も深くなる」ようなので、今回のケースではそれなりに深い学習ができたように思う。今回の失敗を次につなげていきたい。