2019年8月2日金曜日

長期計画チェック

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

現時点の予想では2021年頃に景気後退期に入るとみている。ただ今回の景気拡大期は低成長・低金利の中で浅く長いものだったので、景気後退期も浅く長いものになりそう。・・もしくは、今後はデジタル革命と低金利が続きそうなので、浅い景気後退期の後に穏やかな景気拡大期が長期で続く、という展開になるかもしれない。

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過去の景気後退に共通するパターン:米国の長短金利が逆転した後、もしくは利上げ停止後、1,2年してから日本株が50%超下落。

2018年12月に長短金利が逆転し、利上げも停止されたので、今後1,2年以内に景気後退に陥る可能性が高まってきた。ただ今回の利上げ停止ポイントは過去の水準(5%超)と比べてだいぶ低く(2.5%)なりそうなので、景気後退は比較的穏やかなものになるかもしれない。
*政策金利2.5%とは、景気をふかしも冷やしもしない中立金利(2.75%)よりも低く、実質政策金利(名目政策金利-インフレ率)も0.5%と低いため、かなり緩和的な水準になる。
*今回の長短金利の逆転は従来のものとは成立パターンが異なる。過去のパターンは高インフレによって押し上げられた短期金利が長期金利を上抜いているが、今回は低インフレ下でFRBの利上げ停止によって下がった長期金利が短期金利を下抜いている。

以下、景気後退や株価下落を穏やかにする要因を列記していく。
・リーマンショックの記憶がまだ残っているため、皆慎重になっている。
・バブルは借金をして資産を買いまくることによって生じるが、先進国では今回そのような現象はあまり見られない・・と言われていたが実際は超低金利が長期にわたり続いているので、順調にバブルは醸成されていたもよう。ただこのバブルは主に債券市場で起きており、金利上昇や景気後退が起こらない限りは破裂しにくい。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、先進国では金融危機(信用収縮)は起こりにくい。
 *金融危機(信用収縮)、つまりクレジットの消失が起こらなければ、金余りの状態が続く。*クレジットとは世の中に流通する大半のお金のこと(参照)。
 *中国の不動産にはバブルの兆候がある。ただし中国政府の需要抑制策により、日本のバブル期ほどの過熱感はない。
 *中国で最も大きなバブルはシャドーバンキング商品(銀行理財商品、委託融資、信託商品)への投資になる。これらの投資は過熱感が強く、2017年末の残高は1000兆円とGDP比8割の規模になる。
 *バブル崩壊の仕組み。景気後退や金利上昇などにより株式や不動産などが売られはじめると、資産価格が上昇することを前提として資産を買っているバブル系投資家が資産の投げ売りを始め、資金の逆回転が起こる。
・中国政府には財政出動や金融緩和の余地がある。
・中国は独裁体制のため、不況に陥るとすべての批判が指導部に降りかかる構造になっている。そのため指導部はなんとしても不況を起こさないようにする。
・中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。
・トランプ政権は2020年の大統領選に向けて景気刺激策を打ってきそう。株価の維持は再選への最低条件になる。
・先進国のインフレ率は2%を下回りつつあるので、今後長期で金融緩和が続きそう。
・先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、現在のようなインフレが起こりにくい環境でインフレ2%を達成・維持するには株高のような資産価格の維持・上昇が不可欠になる。そのため中銀は株式市場に優しい政策をとらざるを得ない。
・中銀が量的緩和をして国債などの資産を大量に買っているので資産価格は下がりにくい(金利は上がりにくい)。中銀が資産売却を進めれば資産価格は下がるが、今のところそれを進める気配はない。足下では資産購入を再開しそうな雰囲気になりつつある。
・金融緩和により過剰な金余りが続いている。米メリルリンチによると2019年2月の機関投資家の現金保有比率は2009年1月以降で最も高い水準になる。
・現在、第4次産業革命が進行中で、これは今後も長期にわたり続く。
・先進国では株式以上に債券が割高なので、株式に優位性がでやすい。
・日本株に限れば、日銀のバックアップがあるので下がりにくい。
 *ただし日銀のバックアップがあるからこそ投資家が売ってくる可能性もある。1995年に為替が1ドル80円を突破したとき、日銀が「もうこれ以上無理だ」とドル買い介入をやめたら底打ちしたという。市場参加者はドルを売る相手がいなくなり、買い戻しを始めたらしい。2016年の半ばから日銀は日本株を年間6兆円ベースで買い始めているが、2016年に個人と海外が6兆9千億円、2017年に5兆1千億円、2018年に6兆円、2019年に入りすでに3兆5千億円を売り越している。ちなみにこの期間の日銀以外の主な買い手は事業法人と信託銀行になる。16年は6兆円、17年は2兆円、18年は4兆8千億円、19年は2兆3千億円を買い越している。
・日本株の売り玉が少なくなっている。海外勢はアベノミクスが始まった2012年から日本株を買い始めており、累積買越額が一時20兆円くらいまで膨らんだが、足下では7兆円くらいまで縮小している。個人投資家はこの間一貫して売り越しており、その額は約30兆円に上る。反対にアベノミクス以降に一貫して買い越しているのは日銀と事業法人になり、その累計額は40兆超になる。この両者は景気後退期には売り圧力になりにくい。

以上を総合すると、次の景気後退や株価の下落は比較的穏やかに進む可能性が高い。

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景気後退シナリオ2:インフレが過熱し景気後退に陥る
景気後退に至るのお馴染みのパターンは金融緩和→失業率低下・債務拡大→インフレ過熱→金融引き締め→債務圧縮→景気後退になるが、今回は失業率が低下してもインフレが過熱しないので、なかなか景気後退に陥りにくい。
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景気後退シナリオ3:米長期金利上昇による景気後退
今後、米長期金利は需給要因(財政悪化など)により長期的に上昇していく可能性がある。長期金利が上昇すると株式や不動産が売られ、借り入れが減り景気後退に陥る。景気後退に陥ると通常なら長期金利も低下するが、今回は需給要因により長期金利は下がりにくい。新興国では米金利上昇とそれに伴うドル高により、通貨安、インフレ、金利高が起こり景気後退に陥る。中国ではこれらに加え、過剰債務や貿易戦争、労働人口のピークアウトなどにより景気後退に陥る。日本や欧州は、これらの国々のあおりを受けて、景気後退に陥る。
*FRBが長期金利のコントロールについて触れ出したので、このシナリオはなくなりそう。ただ米国の長期国債は規模が大きく、また国内投資家が9割を保有する日本国債と違って国内投資家が6割しか保有していないので、日本のように長期金利をうまくコントロールできないかもしれない。
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景気後退シナリオ4:中国のバブル崩壊による景気後退
中国の企業債務は積み上がっているが、その7割以上は実物投資ではなく、リスクの高い金融資産(シャドーバンキング商品)への投資に回っている。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して、連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。そうなると企業は債務返済で手一杯になり、新たな投資ができなくなる。そのようにして不況に陥ると独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性も出てくる。そもそも独裁体制は経済的に成熟した社会には適さないシステムとも言われているので、その意味でもこのタイミングで独裁体制が終わる可能性がある。これらの政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。
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景気後退シナリオ5:景気後退シナリオ2,3,4が同時に起こる
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景気後退シナリオ6:各国中銀がインフレ政策をやめる
先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、経済成長率が2%を下回り、インフレが起こりにくい社会構造でそのような政策を続けるのはもともと無理がある。日本においてはインフレ目標達成のために、日本銀行が日本株を最も買っているが、これはあまりにも不自然。そのためどこかでインフレ政策を転換する必要が出てくる。インフレ政策を転換すれば資産価格は下落するが、今のところインフレ政策よりもマシな政策はなさそうなので、インフレ政策が限界にくるまで(おそらく10年以内)この政策は続きそう。足下ではFRBが平均インフレ目標政策などを検討するなど、インフレ政策を強化する方向で動いている。
*平均インフレ目標政策とはインフレ目標を下回る期間が長引けば、その後上回ることを許容し平均で目標達成を図る手法。
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上記から、株式市場の下落は比較的穏やかなものになりそうなので、基本的には持ち株ホールドの方向で行く。ただし米国や中国で極端なバブル崩壊(信用収縮)が起きそうになってきたら、弱気型のETFなどに資金をシフトしていく。

それ以外のパターンとして1ドル(1スイスフラン)が115円、もしくは米長期金利が3.0%になった場合は、その時点でドル(スイスフラン)を売っていく。
*米国の長期金利が3.0%あたりまで上昇したら、FRBはデフレ退治のために国債購入を再開して(ドルを大量発行して)、日銀のように長期金利をコントロールしていく可能性が高い。
*スイスフランは日本円と同じ逃避通貨になるが、過去の金融危機時には金融政策の違いなどからスイスフランよりも日本円の方が大きく買われている(参照)。スイスフランには売りに回るとスワップポイント(金利差収入)が入るというメリットもある。ただファンダメンタルズ最強の通貨を売るのはやはり問題のようにも思う。

景気後退期に入り円が90円くらいまで上昇したら、もしくは日経平均が17000円台になったら、米欧通貨や外国株、日本株を買っていく。おそらく今回が最後の円高局面になると思うので、海外資産の比重を高めにしていく。
*日経平均が18000円以下になると日銀が保有するETFが簿価割れを起こし、円の信認が揺らぎ始める(円安圧力がかかり始める)。*日銀のETF保有額は現時点で自己資本の3倍になる。

次の円高時に仕込みたい外国株
・(米)VISAや(米)マスターカード。両社はフィンテック企業のボス的存在で、電子マネーは結局ここらへんが中核になりそう。
・(米)P&G。経営体制は盤石で、”奇跡の化粧水”SK-IIが世界的にヒットしそう。
*(米)ドキュサインはやっぱりなし。電子契約のようなややこしいものはローカライズ(現地化)が必要になってくるので、英語圏制覇は難しいと思った。
・(米)ウーバー。そこら中でウーバー・イーツが走り回っているが、仕組み作りが別格だと思った。
・NASDAQ100ETF。第4次産業革命の中核ETF。
・アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信(為替ヘッジなし)。腕利き米国人が運用する趣味の良さそうなファンド。
・米国株式長期厳選ファンド。奥野一成氏が運用するビジネスモデルが堅固な企業に投資する永久保有系ファンド。積み立てオンリーなのがやや難。
・インド株のETF。インドは2040年まで人口ボーナス期が続く。
・インドネシア株のETF。インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続く。
・銅。銅をたくさん使う電気自動車などにより銅の需要は長期的に右肩上がりだが、供給は優良鉱山の減少や環境規制などにより追いつかなくなる可能性がある。現在の銅採掘の採算ラインは1トン6000ドル程度になる。
・原油。原油価格が40ドル以下になると産油国、もしくは企業が採算割れを起こすので、40ドル以下になったら買い。新規の油田開発も停滞気味のようなので長期的な供給不安もある。

■次回の上げ相場について
次の景気拡大期は、中銀に金融緩和をする力があまり残されてなさそうなので、今回のような資産インフレはあまり期待できそうにない。とはいえ中銀が2%のインフレ目標にこだわり続ける限りは資産インフレがどうしても必要になってくるので、また新たな金融緩和策を考案して資産市場を盛り上げてくれるのではないかとも思っている。おそらく次の金融政策は現在日銀が行っているような財政ファイナンス、もしくはMMTのような財政主導の緩和策が主流になるのではないかと思う。

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