この会社が電子書籍取次の中核プラットフォームであるならば面白いと思ったので調べてみた。
■この会社を知ったきっかけ
”もう一人”のテンバガー・ファンドマネージャー古賀直樹氏が運用する「アクティブ元年・日本株ファンド」の上位10銘柄に入っていた。
■どんな会社か
電子書籍取次プラットフォームなどを手がける。電子書籍取次では国内最大手で、2018年の流通総額における市場シェアは37%になる。
*電子書籍取次とは、出版社から預かった電子書籍コンテンツを電子書店に配信するサービス。電子書籍の卸のようなもの。
*電子書籍取次プラットフォームを持つのはメディアドゥの他には大日本印刷系と凸版印刷系のみ。
メディアドゥの売上の98%を電子書籍流通事業が占めており、2018年の売上高は499億円と前期比で38%伸びている。営業利益は15億円と利益率はそれほど高くないが、営業利益は前期比で67%伸びており、利益率は上昇傾向にある。
*電子書籍流通事業には、電子書籍取次事業、電子書籍配信システムを提供する事業、自社電子書店サイト事業があるが、メディアドゥの売上の大半は電子書籍取次事業になる。
■成長ストーリー
「最強の電子書籍取次プラットフォーマーに」というのが基本シナリオ。
メディアドゥはコミックや雑誌などの電子書籍取次に強かったが、2017年に文芸書や学術書分野で最強の電子書籍取次プラットフォームを持つ出版デジタル機構を買収した。現時点では、ほぼ全ての出版社や主要電子書店との取引があり、電子書籍取次最強への道を着実に歩んでいる。競合の大日本印刷や凸版印刷はイノベーションのジレンマ(新製品(電子書籍)と旧製品(紙書籍)の共食い)に直面しており、電子書籍普及に積極的になりにくいというのも追い風になる。
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<出版デジタル機構とは>
2012年に電子書籍を普及させるために官民ファンドの産業革新機構と主要出版社20社が出資して設立した会社。同機構は資金やノウハウが不足している出版社を支援し、出版物の電子化を代行したり、電子書籍販売サイトへの配信業務を支援したりしている。現在ではほぼ全ての出版社との取引があり、Amazonにも同機構を通じて作品を提供している。2018年2月期の売上高は206億円、経常利益は10億円になり、業績は年率10%超の勢いで伸びている。
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書籍全体の市場は年々縮小しているが、書籍全体に占める電子書籍の割合は年々増加しており、あと20年くらいしたらほぼ全てが電子書籍に置き換わる可能性がある。現時点での電子書籍の比率は紙書籍の6分の1くらいだが、もしすべてが電子化されるとしたら、電子書籍にはあと5倍の成長余地があることになる。メディアドゥの基本戦略は電子書籍の市場拡大に合わせて業績を拡大させていく、というものになる。
今後中期的に業績の牽引役になりそうなのがLINEマンガになる。メディアドゥは2014年のLINEマンガ立ち上げ時からコミックや配信システムを独占提供しているが、LINEマンガは足下で急成長が続いており、2018年の国内マンガアプリの売上では断トツトップになっている(参照)。無料マンガではAmazonと差別化を図れているようで、他のマンガアプリとも資金力や知名度の点で優位性がありそうなので、今後もまだまだ伸びそうな雰囲気がある。
長期的にはブロックチェーン技術を活用した新しい書籍流通プラットフォームも期待できる。この新たな仕組みは電子書籍が抱える問題点(売却や貸し出しができない、利用している電子書店がなくなれば購入した電子書籍を保持できなくなる、など)を克服できるようなので、成功すれば面白い展開になりそう。
*メディアドゥでは他にビジネス書などを要約して提供する事業「フライヤー」など、順調に伸びている事業もあるが、業績の比重が軽いのでここではスルーする。
■問題点
・電子書籍の販売プラットフォームが最終的にはAmazon1強になりそうなこと。消費者目線で考えた場合、一人でいくつもの電子書店を利用することは考えにくいので、電子書店は今後、淘汰・集約されていく可能性が高い。電子書籍取次は、様々な電子書店に電子書籍を卸すことで商売が成立するが、卸す電子書店がAmazonのみ、またはその他2,3店にまで集約されてしまうと、出版社は手数料のかかる取次を通さずに電子書店と直接取引する可能性が高く、電子書籍取次の存在意義がなくなる可能性がある。
・出版形式のデフォルトが電子書籍になりつつあること。メディアドゥが買収した出版デジタル機構は出版社の電子書籍作成・配信を支援しているが、各出版社が”自立”してしまうと、卸を通さず直取引を始める可能性がある。今後は大口とは直取引をして、それ以外は取次に任せるという流れになるかもしれない。
・メディアドゥはAmazonにも電子書籍を卸しているが、それがどの程度なのか不明なこと(要調査)。Amazonは紙媒体の書籍においては卸を通さない直取引に切り替えつつある。
・電子書籍取次を通さない直取引が現時点でどの程度あり、それが増加傾向なのか減少傾向なのかわからないこと。(要調査)
・増資のニオイがすること。投資回収期に入っており、資金調達する必要はそれほどなさそうだが、自己資本比率が14%と低く、社長が積極型で、株価も高値圏で推移しているので、増資をする可能性も多少ある。
■ビジネスモデルの強度 ★★★☆
・参入障壁は高いか。市場寡占型プラットフォームなのでそこそこ高い。★★★★☆
・ストック型ビジネスか。人気のプラットフォームなのでストック型。ただし長期的にはやや不透明。★★★
・時流に乗っているか。時流に乗っているが長期的にはやや不透明。★★★☆
■チャート
累積売買高のピークを抜けているので上がりやすそう。
<10年チャート>
<1年チャート> トレンドラインは75日線か
■まとめ
中期的には特に問題がなさそうなので、LINEマンガを牽引役に業績は力強く伸びていきそう。ただ長期的には電子書籍取次の存在意義に疑問符がつきそうなので、やや不透明感がある。10年後の予想利益は計測不能。今後3,4年の見通しはそれほど悪くなさそうなので、大きく下げることがあれば少し仕込んでみたい。
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