保有投信「厳選ジャパン」の上位10銘柄にあった。
少し調べてみると、フランチャイズ店舗が急増しており、なにか大きな変化が起きているのではないかと思った。ストック型ビジネスに移行しているのもよいと思った。
■どんな会社か
仲介や賃貸などの従来の不動産サービスに加えて、新規の不動産サービスを多数手がける会社。
具体的に手がける事業は、売上が伸びている順に、ハウス・リースバック事業、フランチャイズ事業、不動産金融事業、不動産売買事業、不動産賃貸事業、リフォーム事業になる。上位3事業はストック型収益事業で年率10%超の成長が続いており、下位3事業はフロー型収益事業で成長率は横ばいとなっている。上記以外にも事業継承(M&A)や海外フランチャイズ事業など新規事業を次々と立ち上げている。
2019年6月期の売上高は315億円、営業利益は31億円になり、今後3年の会社計画は、売上、利益ともに年率10%超の成長になる。利益構成はストック型事業が7割を占め、その比率は増加傾向にある。
■成長ストーリー
「国内最大の不動産サービス・プラットフォームで課題解決」が基本シナリオ。
日本では人口減や高齢化が進んでおり、空き家率は増加トレンドなので、今後の不動産市場のテーマは「つくる」から「活用、処分」に変わる。ハウスドゥはこのシフトが円滑に進むようなサービスを開発し、高齢社の資金不足や空き家の増加などの課題を解決していくことを基本戦略としている。
これらのサービスを普及させる土台となるのがフランチャイズ店舗になる。ハウスドゥは顧客のあらゆる不動産ニーズにワンストップで応えられるフランチャイズ店舗を全国に展開しており、現在618店ある。2025年までに国内1000店にすることを目標としており、手厚いサポート体勢や定額制(10万円)のフランチャイズ料金などにより、足下でも順調に加盟店が増えている。
ハウスドゥが手がけるサービスの中で今最も勢いがあるのがハウス・リースバック事業になる。2013年にハウスドゥが開発したこのサービスは、持ち家を不動産会社に売り、同時にその不動産会社と賃貸契約を結んで住み続ける方法で、売主は生活環境を変えずにまとまった資金を得られるという特徴がある。このサービスには自宅を資金化して相続問題を緩和したり、不動産ストックを流動化して空き家を増えにくくするというメリットもある。2019年6月期の業績は売上、利益ともに前期比150%程度の伸びで、営業利益は20億円と業績の柱に育っている。
この事業の収益構造は、物件買い取り時に事務手数料(仕入れ額の3%)が入り、毎月仕入れ額の8%程度の家賃収入を得る。また期末には物件を一部売却して仕入れ額の15%程度のキャピタルゲインが入る。リースバック事業の基本的なビジネスモデルは、買い取った物件を保有して継続的に賃料を得ることになるが、買い取り件数が増えていくと銀行からの借り入れが増え、自己資本が低下するという問題が発生する。銀行には自己資本の低い会社には融資できないという自主ルールがあるので、ここでリースバック事業の成長は頭打ちになってしまう。ハウスドゥはこの問題に対処するために増資をしたり(2018年に60億円を調達)、買い取った物件を自らが組成するファンドで売却したりしている。なおファンドの物件管理はハウスドゥが担っており、ここでも1%程度の物件管理手数料を得ている。ファンドの利回りは年4~5%程度あり、今のところは機関投資家などに順調に売れているという。
リースバック事業には、査定、販売、金融サービスなどのノウハウが必要になるが、それらをすべて備えている不動産業者は少なく、競合は生まれにくい。ただこの事業には、後に触れるような問題などもあり、今後は様子を見ながら無理のない範囲で成長させていくという。2019年6月期の仕入れ件数は550件になるが、今後の目標は2020年が820件、2021年が960件、2020年が1080件になる。
ハウスドゥが今最も力を入れているのが不動産金融事業になる。今行っている主な金融事業は不動産担保ローンやリバースモーゲージ保証事業になる。不動産担保ローンは従来からあるお馴染みのサービスになるが、ハウスドゥはセカンドハウスの購入など金融機関が手がけにくく、毀損の確率の低いもののみに融資しているという。2016年からこの事業を始め、現在の累計融資額は81億円になる。2022年の目標は190億円になる。
リバースモーゲージ保証事業は2017年に開始。リバースモーゲージとは、自宅に住みながら自宅を担保に金融機関から融資を受けられるサービスで、毎月の返済は金利のみになる。元金の返済は借入人の死亡時に持ち家を売却して返済に充てる。このサービスには住宅の資産価値を生前に使い切れるというメリットがあり、空き家解消の一助にもなる。ただこれまで金融機関は物件の査定や処分を不動産業者に委託し、その際25%程度のマージンを取られており、これがこのサービスの普及を阻んできた。
そこでハウスドゥは物件の査定、管理、処分を引き受ける(保証する)リバースモーゲージ保証事業を開発。この事業では従来のマージンが発生しないので、足下でリバースモーゲージは急速に普及しつつある。この事業の収益構造は契約時に事務手数料、調査料が入り、その後は利用者が金融機関に支払う利息の一部を保証料として継続的に受け取る。この事業は銀行からの借り入れを必用としないので自己資本が痛むこともない(ただし担保割れが起きた場合は自己資本がダメージを受ける)。
ハウスドゥは現在金融機関10社と提携している。実績が積み上がれば提携が加速度的に進むとみており、今期末の累計保証残高は前期比2.6倍の68億円を見込んでいる。2021年は156億円、2022年は306億円の累計保証残高を目標としている。
*金融機関にとって不動産融資は重要な融資先の一つになるが、2018年にスルガ銀行やTATERUの不正融資が発覚し融資案件の審査が厳格化され、融資先が減っている。リバースモーゲージはその穴を埋める新たな融資先になりそうなので、このサービスが普及する素地は整いつつある。
そこでハウスドゥは物件の査定、管理、処分を引き受ける(保証する)リバースモーゲージ保証事業を開発。この事業では従来のマージンが発生しないので、足下でリバースモーゲージは急速に普及しつつある。この事業の収益構造は契約時に事務手数料、調査料が入り、その後は利用者が金融機関に支払う利息の一部を保証料として継続的に受け取る。この事業は銀行からの借り入れを必用としないので自己資本が痛むこともない(ただし担保割れが起きた場合は自己資本がダメージを受ける)。
ハウスドゥは現在金融機関10社と提携している。実績が積み上がれば提携が加速度的に進むとみており、今期末の累計保証残高は前期比2.6倍の68億円を見込んでいる。2021年は156億円、2022年は306億円の累計保証残高を目標としている。
*金融機関にとって不動産融資は重要な融資先の一つになるが、2018年にスルガ銀行やTATERUの不正融資が発覚し融資案件の審査が厳格化され、融資先が減っている。リバースモーゲージはその穴を埋める新たな融資先になりそうなので、このサービスが普及する素地は整いつつある。
金融事業では他に「ハウスドゥ!バンク構想」というものもある。これはハウスドゥのスマホアプリから、不動産査定を簡単に行えるサービスで、ハウスドゥがその物件の担保保証を行い、銀行や一般投資家が金利や融資額を入札する仕組みになっている。これは近々始める予定だという。将来的には金融事業単体で上場させる計画もあるという。
上記以外にも新規事業が次々と立ち上がっている。2018年には空き家、空き室をレンタルするサービス「タイムルームクラウド」がスタート。今後は米エアビーアンドビーなどと提携して、ハウスドゥが管理する物件を民泊としても利用できるようするという。また、これとは別の形でレオパレスのようなマンスリー型の賃貸サービスも始める予定だという。
事業継承(M&A)も2018年に開始。全国に後継者がいない不動産事業者は多く、ハウスドゥは自社との親和性の高い企業を買収していく計画。2018年には埼玉の小山建設グループを27億円で買収。今後も全国の優良企業を積極的に引き継いでいくという。
2019年には海外のフランチャイズ展開に着手。まずはタイで現地企業との合弁会社を設立。アジア圏にはハウスドゥのようなワンストップ型の不動産会社がほとんどないので、伸びしろは大きいという。長期的な目標として海外5万店を掲げている。
■問題点
・フランチャイズ店舗が急速に増えているが、この調子でいくと人材の育成が追いつかず、なんらかのひずみが出る恐れがある。ビジネスモデル的にはスルガ銀行やTATERUのような不正融資は起こりにくそうだが、フランチャイズ店の7割が異業種出身の素人なので、予期せぬ問題が生じる可能性がある。ただ加盟店に対しては各種研修(物件管理、顧客管理、IT戦略、モチベーションアッププログラムなど)やITシステムを提供し、売上よりも顧客重視を徹底しているようなので、今のところは特に問題なさそう。
・ハウス・リースバック事業は売る側にとってあまりお得感がない。住みながら家を売るというコンセプトはよいと思うが、自宅を資金化する方法には他に売却、賃貸、リバースモーゲージがあり、これらと比べると金銭面のメリットが少ない。10/20の日経ヴェリタスでこれらの方法が比較されていたが、同一条件の場合、金融資産の寿命は売却で22年、賃貸で16年、リバースモーゲージで15年、リースバックで10年だった。ちなみに自宅を資金化しない場合は8年と、リースバックとほとんど変わらなかった。そもそもリースバックは市場価格の7割で買い取られ、年間賃料は買い取り価格の8%程度なので、その時点でお得感がない。このサービスは80歳以上の高齢社やすぐに越す予定のある人にしか向かないのではないだろうか。長期的に見るとこのサービスは廃れていく可能性がある。
ただ現在の問い合わせ件数は急増しており、2019年6月期は13000件と前期比50%超伸びている。ハウスドゥによると今期も同程度の伸びが期待できるとのこと。
*問い合わせ件数に対するハウスドゥの成約率は5%程度で、圧倒的な買い手市場となっている。ただハウスドゥが購入している物件は都市部の優良物件のみとなっており、空き家解消にはほとんど役立ってないという問題もある。
・欧米のようにリバースモーゲージが普及しにくい。先進国でリバースモーゲージが普及してないのは日本だけになるが(市場規模は米国の1%以下)、それは先ほどの担保保証の問題だけでなく、中古住宅市場の大きさの問題もある。日本の住宅市場に占める中古住宅のシェアは15%と米国の80%と比べてかなり低い。日本で中古住宅市場が活性化しないのは、木造住宅の法定耐用年数が22年に設定されており、築20年を超えると“無価値”になってしまうため。ここらへんが変わらない限りは中古住宅市場が活性化されず、ひいてはリバースモーゲージが普及しにくい。
・リバースモーゲージの最大のリスクは担保価値の下落になるが、深刻な不況に陥った場合や、借入人の長命化が進んだ場合は、担保割れが起こる可能性がある。極端な例になるが、米国では2008年にサブプライムローンバブルが破裂した後、ウェルズファーゴやバンカメなどの民間業者が提供していたリバースモーゲージが市場から姿を消している。ハウスドゥはもちろんここらへんのリスクを考慮して担保保証をしているとは思うが、一応テールリスクとして書いておく。
*米国では現在、ほぼ全てのリバースモーゲージの担保保証を公的機関がしているが、日本でも2017年から公的機関(住宅金融支援機構)が同様の保証を提供しはじめている。おそらくここがハウスドゥの競合になる。(ハウスドゥはここから着想を得てリバースモーゲージ保証事業を開発したのかもしれない)。両者を比較した場合、全国に販売網を持っているハウスドゥの方が融資額を高めに設定できそうなので、ハウスドゥの方が若干優位かもしれない。
・社長の力が大きすぎる。ハウスドゥの成長は社長の洞察力、先見性、経営手腕によるところが大きいと思うが、その分、なんらかの理由で社長が抜けた場合、会社が傾く恐れがある。
・決算が第4四半期に集中する。業績へのインパクトが大きいリースバックの物件売却は、賃料収入をできる限り得るために末期に集中させているが、末期集中型の決算の場合、業績未達リスクが懸念され株価が不安定になりやすい。
■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★★
・参入障壁は高いか。★★★★。ハウスドゥが提供するサービスは必ずしも真似ができないというわけではないが、総合力の点でハウスドゥに分がありそう。
・ストック型ビジネスか。★★★★。利益の7割超がストック型で、今後もその割合は増えていく。
・時流に乗っているか。★★★★。国内不動産市場は成熟しているが、ハウスドゥは不動産市場が現在抱える課題に対処することを主業にしているので、その意味では時流には乗っている。
■チャート
上昇トレンドで特に問題は見当たらない。
<5年チャート>
■まとめ
このご時世に不動産フランチャイズ店舗が増えていることに違和感があったが、やはり裏では大きな変化が起きていた。ハウスドゥが展開する新規の不動産サービスは時流に乗っており、競合もそれほど多くはなさそうなので、今後も順調に成長していきそう。株価は2015年の上場からすでに6倍程度上昇しているが、時価総額的にあと6倍くらいは成長できるのではないかと思う。まだわからないことも多いので、しばらくは様子を見ようと思うが、時価総額300億(株価1550円)くらいまで落ちることがあれば少し買っておきたい。
・フランチャイズ店舗が急速に増えているが、この調子でいくと人材の育成が追いつかず、なんらかのひずみが出る恐れがある。ビジネスモデル的にはスルガ銀行やTATERUのような不正融資は起こりにくそうだが、フランチャイズ店の7割が異業種出身の素人なので、予期せぬ問題が生じる可能性がある。ただ加盟店に対しては各種研修(物件管理、顧客管理、IT戦略、モチベーションアッププログラムなど)やITシステムを提供し、売上よりも顧客重視を徹底しているようなので、今のところは特に問題なさそう。
・ハウス・リースバック事業は売る側にとってあまりお得感がない。住みながら家を売るというコンセプトはよいと思うが、自宅を資金化する方法には他に売却、賃貸、リバースモーゲージがあり、これらと比べると金銭面のメリットが少ない。10/20の日経ヴェリタスでこれらの方法が比較されていたが、同一条件の場合、金融資産の寿命は売却で22年、賃貸で16年、リバースモーゲージで15年、リースバックで10年だった。ちなみに自宅を資金化しない場合は8年と、リースバックとほとんど変わらなかった。そもそもリースバックは市場価格の7割で買い取られ、年間賃料は買い取り価格の8%程度なので、その時点でお得感がない。このサービスは80歳以上の高齢社やすぐに越す予定のある人にしか向かないのではないだろうか。長期的に見るとこのサービスは廃れていく可能性がある。
ただ現在の問い合わせ件数は急増しており、2019年6月期は13000件と前期比50%超伸びている。ハウスドゥによると今期も同程度の伸びが期待できるとのこと。
*問い合わせ件数に対するハウスドゥの成約率は5%程度で、圧倒的な買い手市場となっている。ただハウスドゥが購入している物件は都市部の優良物件のみとなっており、空き家解消にはほとんど役立ってないという問題もある。
・欧米のようにリバースモーゲージが普及しにくい。先進国でリバースモーゲージが普及してないのは日本だけになるが(市場規模は米国の1%以下)、それは先ほどの担保保証の問題だけでなく、中古住宅市場の大きさの問題もある。日本の住宅市場に占める中古住宅のシェアは15%と米国の80%と比べてかなり低い。日本で中古住宅市場が活性化しないのは、木造住宅の法定耐用年数が22年に設定されており、築20年を超えると“無価値”になってしまうため。ここらへんが変わらない限りは中古住宅市場が活性化されず、ひいてはリバースモーゲージが普及しにくい。
・リバースモーゲージの最大のリスクは担保価値の下落になるが、深刻な不況に陥った場合や、借入人の長命化が進んだ場合は、担保割れが起こる可能性がある。極端な例になるが、米国では2008年にサブプライムローンバブルが破裂した後、ウェルズファーゴやバンカメなどの民間業者が提供していたリバースモーゲージが市場から姿を消している。ハウスドゥはもちろんここらへんのリスクを考慮して担保保証をしているとは思うが、一応テールリスクとして書いておく。
*米国では現在、ほぼ全てのリバースモーゲージの担保保証を公的機関がしているが、日本でも2017年から公的機関(住宅金融支援機構)が同様の保証を提供しはじめている。おそらくここがハウスドゥの競合になる。(ハウスドゥはここから着想を得てリバースモーゲージ保証事業を開発したのかもしれない)。両者を比較した場合、全国に販売網を持っているハウスドゥの方が融資額を高めに設定できそうなので、ハウスドゥの方が若干優位かもしれない。
・社長の力が大きすぎる。ハウスドゥの成長は社長の洞察力、先見性、経営手腕によるところが大きいと思うが、その分、なんらかの理由で社長が抜けた場合、会社が傾く恐れがある。
・決算が第4四半期に集中する。業績へのインパクトが大きいリースバックの物件売却は、賃料収入をできる限り得るために末期に集中させているが、末期集中型の決算の場合、業績未達リスクが懸念され株価が不安定になりやすい。
■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★★
・参入障壁は高いか。★★★★。ハウスドゥが提供するサービスは必ずしも真似ができないというわけではないが、総合力の点でハウスドゥに分がありそう。
・ストック型ビジネスか。★★★★。利益の7割超がストック型で、今後もその割合は増えていく。
・時流に乗っているか。★★★★。国内不動産市場は成熟しているが、ハウスドゥは不動産市場が現在抱える課題に対処することを主業にしているので、その意味では時流には乗っている。
■チャート
上昇トレンドで特に問題は見当たらない。
<5年チャート>
■まとめ
このご時世に不動産フランチャイズ店舗が増えていることに違和感があったが、やはり裏では大きな変化が起きていた。ハウスドゥが展開する新規の不動産サービスは時流に乗っており、競合もそれほど多くはなさそうなので、今後も順調に成長していきそう。株価は2015年の上場からすでに6倍程度上昇しているが、時価総額的にあと6倍くらいは成長できるのではないかと思う。まだわからないことも多いので、しばらくは様子を見ようと思うが、時価総額300億(株価1550円)くらいまで落ちることがあれば少し買っておきたい。
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