2021年10月1日金曜日

市場環境チェック

株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などを見ていく。

■EPS成長率
・世界株式の2020年のEPS増減率は-30~-10%、2021年は35%。
・米国株式の2020年のEPS増減率は-30~-15%、2021年は36%。2022年は12%。
・欧州株式の2020年のEPS増減率は-30~-15%、2021年は35%。
・日本株式の2020年のEPS増減率は-8%、2021年は35%、2022年は13%。
*参照:3/12日経5/29日経7/26日経など
*今は金利低下で企業の利払い費が減少しており、経済のデジタル化で設備投資や人件費も減少しているので、利益が増えやすくなっている。

■経済成長率
・世界の2020年の成長率は-3.5%、2021年は6.0%。
・米国の2020年の成長率は-3.4%、2021年は6.4%。
・中国の2020年の成長率は2.3%、2021年は8.4%。
・ユーロ圏の2020年の成長率は-7.2%、2021年は4.4%。
・日本の2020年の成長率は-5.1%、2021年は3.3%。
*数値はIMF予想。1/27日経4/7日経

*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほどには不況感が強まらない可能性もある。経済成長率を測る指標のGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。

*コロナ禍ではGDPが大幅に落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えたとの試算もある。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が上がっていれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。5/8日経

*経済の持続的な成長には健全なリスクテイクが必要になるが、今回のコロナのようなテールリスク(確率は低いが起きれば影響が大きいリスク)が実際に起きてしまうと、人々は恐怖を植え付けられ、リスクを取らなくなってしまう。そのため今後の経済は伸び悩む可能性がある(1/5日経)。ただ足元ではコロナ前を上回るほどに起業が増えているようなので、リスクを取らなくなるのはコロナで被害を受けた一部の業種にとどまるのかもしれない。6/27日経

■インフレ
・米国の予想インフレ率は2020年が1.3%、2021年は3.5~4.5%、2022年が2.2~3.2%。
・欧州の予想インフレ率は2020年が0.3%、2021年は1.5~2.5%、2022年が1.5~2.5%。
・日本の予想インフレ率は2020年が0.2%、2021年は0.5%、20222年が0~1.0%。
米10年物価連動債利回りから算出される現在の米国の予想インフレ率は約2.3%になる。

*インフレ率が上がらないのもデジタル経済の影響が大きい。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば検索やSNSは無料だし、ネット上では価格比較を簡単にできるので売り手側は超過収益を得にくくなっている。またスマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。他にも複製コストゼロのデジタル商品やシェアリングサービスの普及などもあり、物価は上がりにくくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争が起こると価格がゼロに近づく。
*コロナ禍ではデジタルサービスの普及が加速しているので、ますますインフレが起こりにくい土壌ができつつある。
*イノベーションの恩恵はアイデアや資本の出し手に集中するため、所得配分は富裕層に偏りやすい。富裕層は消費性向が少ないため、総需要は供給量に比べて少なくなる。
*経済のデジタルシフトは「人」の代替ともいえるものなので、デジタルシフトが起こると人の賃金が上がりにくくなる。所得の増えない経済では支出が増えず、インフレが起こりにくくなる。

*ただし、コロナ禍では米国で賃金が大きく上昇している。8月の賃金の伸び率は前年同期比4.3%になる(9/4ロイター)。米国の7月の求人件数は1090万人で、失業者数は870万人と求人件数よりも少ないので、賃金には当面、上昇圧力がかかりそう。9/9日経
*とはいえ、現在のように失業率が5%超の高い水準では、総需要が盛り上がりにくいのでインフレが起こりにくくなる。
*インフレは需要が供給を上回るときに起こるが、需要はコロナ前から全体的に停滞気味。今後失業率が低下しても需要は停滞する可能性が高い。
*先進国では高齢化が進んでいるが、高齢者は支出が少ないので、インフレが起こりにくくなる。

*コロナでは人手不足や建材価格高騰などの影響で米国の住宅価格が大きく上昇している。建材や建設作業員の供給不足の解消には時間がかかりそうなので、住宅価格は今後も高水準で推移する可能性が高い。住宅価格や家賃はCPI全品目のうち3割強の寄与度があるので、指数への影響が大きくなる。
*米国ではインフレが高水準で推移しているが、これはバイデン政権による200兆円の現金給付の影響も大きい。ただしこれは一時的な援助金なので、一過性のものになる。
*コロナで供給基盤が破壊されているので、それが元に戻るまではインフレが発生しやすくなる。
*金融緩和により原油などの商品価格は押し上げられており、これもインフレ圧力になる。

*中央銀行の最大の責務は「物価の安定」になる。中央銀行は経済にとってベストなインフレ率を2%としており、その水準で物価を安定させることを目標にしている。中央銀行が行う金融政策はインフレ率2%を基準に決められており、それより低ければ金融緩和、高ければ金融引き締めを行う。先進国のインフレ率は長期的に低下傾向で、2%を下回りはじめているので(今は別)、今後長期で金融緩和が続く可能性は高い。ただ、今はデジタル経済や商品価格の停滞、少子高齢化、グローバリゼーションなどで構造的にインフレが起こりにくくなっているので、中銀のインフレ目標には無理があるようにも見える。
*FRBはインフレ政策を強化しているが、その副作用で金融バブルが醸成されつつある。今後、金融バブルが崩壊した場合は金融システムや経済が大きなダメージを受け、それがインフレ低下につながる恐れもある。
*コロナ対策で世界中の中銀が通貨を大量に供給しているが、これは通貨価値を下落させるのでインフレ圧力になる。
*社会がデジタル化するとあらゆる動きがデータで把握できるようになり、データに基づいた的確な政策を実施できるようになる。2025~2030年頃にはインフレに代わる新たな”経済の体温計”が生まれそう。

■金利
・米国の2年金利は0.29%で10年金利は1.51%。30年金利は2.07%。
・日本の2年金利は-0.12%で10年金利は0.07%。

*実質長期金利(名目長期金利-インフレ率)は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスになると銀行などに資金を預けても実質的に目減りするため、株式や商品、不動産などに資金が流れやすくなる。現在、G20の約半分の国で実質長期金利がマイナスになっている。

*投資家は企業が将来生み出すであろうキャッシュフロー(現金収支)を割り引いて企業価値を算出する。金利が上昇すると割り引く分が多くなり、将来のキャッシュフローの創出期待が大きいグロース企業の理論価値は下がりやすくなる。
*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.5%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。
*景気拡大期の「良い金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では株式市場への影響は長期金利上昇よりも政策金利引き上げの影響の方が大きい。1/16ヴェリタス
*景気拡大期終盤の金利上昇では、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こりやすい。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。
*低金利が続く環境では企業の資金調達が容易になるので株式上場は減っていく。またM&AやLBOが増えるので上場企業も減っていく。ロイター

■債務
・米国の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向(2019年)。
・日本の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向(2019年)。
・中国の企業・家計債務残高はGDP比220%で上昇傾向(2021)。これは日本のバブル期(218%)を上回る。9/27日経
・新興国の民間債務残高はGDP比140%で微増傾向(2019年)。
 *GDPは債務返済能力の代理変数になる。
・過去10年で各国政府は債務を大きく膨らませている。
・コロナ禍で政府債務は急膨張している。IMFは「21年の先進国の政府債務はGDP比125%と過去最大になる。新興国の政府債務も21年にはGDP比で65%と過去最大になる。国別では日本が突出し、19年の238%から21年には264%になる」と言っている。参照参照
・米政府が抱える債務残高は22年度末の32兆ドル強から31年度末には44兆ドル強に膨らみ、対GDP比率は130~140%になる見通し。6/5ヴェリタス

*2019年の米企業の対GDP債務残高比率は10年移動平均線から3%超乖離しているが、これは直近3回の債務バブルのピーク時とほぼ同じ水準になる(2019/7/19ダイヤモンド)。債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回った状態が続くと、どこかで必ず逆回転が起こる。
*米企業はコロナ禍で借り入れを増やしており、2020年7月には負債総額が過去最高のGDP比83%まで上昇している。一方、企業の債務返済能力は歴史的水準まで低下しており、格付けを下げられる企業が急増している。格付けがジャンク債まで低下するとFRBの支援措置を受けられなくなり、破綻する可能性が高まる。参照参照
*債務の質は劣化しており、2019年には米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割が格付けの最も低いトリプルBになっている。*日本には低格付け債市場がない。
*2020年、20221年は低格付け債(ジャンク債)の発行が過去最高ペースになっている。2/21日経4/11日経
*米欧の低格付け企業向けの融資「レバレッジドローン」の融資実行額が過去最高水準で推移している。借り手の返済能力は落ちており、今後の金利上昇局面では返済に行き詰まる企業が続出する可能性がある。5/10日経
*今のような低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では低金利が続きやすく、高債務の状態が維持されやすい(貯蓄余剰になると、余ったお金で国債を買うか現金のまま持つようになるので金利が上がりにくくなる)。
*先進国では超低金利が続いているので債務拡大はまだ続きそう。

*今のように金利が経済成長率を下回っている状態が続くと企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にできるので債務が膨らみやすくなる。政府債務においても、今のように国債金利がGDP成長率を下回っている状態では、多少の財政赤字を続けても債務残高GDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。日本政府の場合は対GDP比で2.5%程度の赤字を続けても債務残高GDP比を一定に維持できる(参照)。
*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構図になっている(参照)。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りてない中で財政支出を減らすと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。
*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業によるものなので、計画に沿って徐々に削減していけそう。
*中国の可処分所得に対する家計債務比率は日本のバブル期並の120%まで高まっている。中国は今後深刻な消費不振に陥る可能性がある。参照
*中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費(政府債務)が膨らみ、政府債務が急速に膨張する可能性が高い。9/28日経
*新興国や資源国の債務も膨張している。このまま景気停滞が続いた場合はデフォルトリスクが高まる(参照)。足元で進んでいるドル高はドル建て債務の返済負担を重くするので、それもまたデフォルトリスクを高める。

■金融政策、財政政策
・コロナ対策で先進国の中銀は金融緩和を続けているが、メキシコやブラジル、ロシアなどの新興国はインフレ対策で金融引き締めに動いている。
・カナダや英国、ノルウェー、ニュージーランド、アイスランドの中銀は景気回復により緩和縮小・利上げに動き始めている。しかし、”世界の中央銀行”である米中銀(FRB)に歩調を合わせないと自国通貨高になるので、縮小ペースは穏やかなものになりそう。5/31日経6/16日経
・米国も金融緩和の縮小に動き始めている。しかし緩和終了までの道のりは長いと言われている。9/14日経

*金融緩和を長期で続けていくと、従来ならインフレが過熱して、それが金融緩和の歯止めになっていたが今はそれが起こりにくい。金融緩和が長期化した場合のメリットは失業率の低下やデフレ阻止、資産価格の上昇になるが、デメリットは債務の増加や産業の新陳代謝の低下、資産価格の過度な膨張になる。
*金融緩和が長期化すると産業の新陳代謝が進まず(ゾンビ企業が存続する)、潜在成長率が落ちていく。潜在成長率が落ちるとインフレ率も落ちていく。現在中銀がインフレを起こそうと行っている金融緩和は長期的にはインフレが起こりにくい土壌を作っていることになる。
*金融緩和が長引くほどリスク投資は膨らみ、金融正常化の際に市場の混乱が大きくなる。
*日本はこのまま金融緩和を続けると、金融仲介機能を持つ銀行の収益力が落ち、金融政策が円滑に機能しなくなる恐れがある。日銀の責務には「物価の安定」の他に「市場・金融システムの安定」があるが、長期の金融緩和により金融システムが不安定になりつつある。

*日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
 *MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によれば、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。日経には財政出動をして、長期的な収益率が政府の借入金利を上回るようなものに投資すれば、短期的に需要を押し上げられるだけでなく、長期的にも財政状態を改善できる、とある。このような投資に該当するものは出生率向上策や気候変動への取り組みなどになるという。
 *MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
 *MMTで高インフレになった場合、中銀は金利を引き上げることができない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上がる、という悪循環に陥ってしまう。
  *MMTと日本が行っている金融・財政政策は若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。
*日本や米国は慢性的な財政赤字なので、将来的にはMMTのような財政・金融政策に移行せざるを得ない。
*今回のコロナを機に先進国はMMTのような政策に移行したように見える。
*現在行っているMMTのような政策はインフレが生じる前にコロナを制圧できるかが重要になる。それができない場合は深刻な景気後退が避けられなくなる。
*コロナの影響で企業が破綻し生産基盤がなくなってしまうと、コロナが収束した後の景気回復が弱いものになってしまう。それを避けるには政府や中銀が大規模な支援をすることが必要になる。支援規模はGDPの落ち込みと同程度のものが必要で、これを実行すると財政赤字は莫大なものになる。しかし、これをしなければ恒久的な経済的損害が生じ、より莫大な財政赤字が発生する確率が高まる。参照

■政治
・日本の政治は比較的安定。ワクチン接種は順調に進んでおり、選挙も順調に終わりそうなので、12月頃には政治も落ち着きそう。・・と思っていたら岸田さんが首相になってしまった。岸田さんはパッと見は悪くないが、キャラが薄い印象があるので、首相としてはどうなのかなと思う。拙速な財政健全化に動きそうな雰囲気があり、金融所得課税(株式譲渡益や配当金などへの課税)を引き上げる方針のようなので、株式市場にはネガティブな存在になりそう。
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。
 *米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・中国では独裁体制や監視体制が強化されつつある。この調子でいくと小説『1984』の世界が現実のものとなるかもしれない。
・英国はEUから「合意ありの離脱」をしたが、EUとの通商交渉は不透明感が強い。
・英国のEU離脱時のグダグダ感が効いてか、EU域内のEU離脱派・懐疑派の勢いは弱まっている。ただ失業率・成長率の悪化や所得格差の拡大、価値観の分断を背景にしたポピュリズムは今後も長期にわたり続きそう。
*コロナ危機は、コロナ前からくすぶってきた格差問題をさらに悪化させている。今回のコロナショックは中小企業や非正規労働者などの「経済弱者」を直撃し、一方で、大規模な金融緩和により「経済強者」の富を一段と拡大させている。格差問題が深刻化すると、社会的結束が損なわれ、政治が二極化し、社会が不安定化しやすくなる。
*富裕層の支出性向は低く、富が循環しないため、格差が拡がると経済成長が鈍化しやすくなる。
*現在、政府や家計の債務は富裕層の貯蓄で手当されている。その債務は膨らみ続けており、それに伴い富裕層の貯蓄も膨らみ続けている。格差の拡大はこのような経路でも起きている。この流れを止める唯一の方法は、政府が富裕層から巨額の税金を徴収して、それを一般市民に再分配することになる。日経

■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数は高水準で推移している。
・世界景気の先行指標である世界新車販売台数は2018年、2019年と2年連続で減少していたが、足元ではやや回復しているもよう。*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は高水準で推移している。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数もしかり。(同指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増える)。
米国の失業率はコロナショックで4月に戦後最悪レベルの14.7%まで上昇していたが、足下では5.4%まで改善している。ただこの失業率には「理由不明の休職者」は含まれていない。それを含めた失業率は約8%になるともいわれる。3/4ダイヤモンド6/15日経8/28ヴェリタス
*米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥るといわれる。
*失業率が最低水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。日経
・米景気の先行指標になるダウ輸送株ラッセル2000は高値圏で推移している。
・景気拡大期の終盤は、金余りと鈍化した成長率を引き上げるため巨大M&Aが盛んに行われるが、2018年、2019年はまさにその状態だった。*高値で行われたM&Aは景気後退期にのれんで巨額の減損が発生しやすい。
・世界景気の先行指標である銅価格は高値圏で推移している。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは9月に節目の50を割りこんでいる。*PMIは生産や受注が前月と比べて増えたかどうかを調べるものなので、節目の50を超えたからといって必ずしも経済が全面的に回復したということを意味しない。
・マクロ経済の不透明感を表す経済政策不確実性指数は低位で落ち着いている。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りはコロナショックで一時大きく上昇したが、FRBが低格付け債を買い入れることを決めてから持ち直している。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれる。現在は「物価上昇」のみ。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照
・米株式市場の証拠金債務(信用取引の買い残高)は米GDP比4%(90兆円超)と過去最高水準にある。過去1年では7割増加している。1930年以降は増加率が6割を超えたところから株式相場が調整することが多かった。今後、金利上昇を起点に逆回転が始まる可能性がある。5/1日経
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は1の段階。

■その他指標
・日米の騰落レシオは122、95と問題のない水準。
・日本株の信用評価損益率は-7.68%と問題のない水準。
・チャートは全体的に上昇チャート。

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