2026年1月1日木曜日

10~12月の売買

 ■10月
・セキュア 新規買い
・新日本科学 新規買い

「お気に入り投信」の保有銘柄を見て。両社とも割安感があり、そろそろ上昇トレンドに入りそうだと思ったから(詳細は後述)。

・大和 iFreeNEXT FANG+インデックス 積立NISAの買い増し
・米アルファベット ドルコスト平均法で買い増し

■11月
・メック 全売却 損益+157%
4月の暴落時に買った銘柄だが、決算資料を読んでも事業内容をよく理解できなかったから。

メックは成長市場の半導体領域でニッチトップの商材を持ち、研究開発投資にも積極的なので、今後も成長していきそうだとは思ったが、事業内容をよく理解できない会社で、株価も十分上がったので、もういいかなと思った。

売却後の決算でストップ高になり歯がゆい思いもしたが、その上がった理由もよくわからなかった(笑)。

・セキュア 買い増し
3Q決算の下振れリスクは低く、上振れの可能性が高いと思ったから。
当初はドルコスト平均法で買い増していく予定だったが、チャンスだと思ったので一気に買い増した。

・エムスリー 新規買い
決算前に株価が2100円を割り込み、割安感があったから。
エムスリーは10月に初の投資家向けレポート「M3 Report for Investors 2025」を公表し、そこで社長が初めて顔出しをしていたので、意気込みが感じられた。

米国事業の不振や、前年に買収したエランは懸念材料ではあるが、総合的に見れば、まだ大きな成長余地があると思った。

・サイバーエージェント 6割売却 損益+2%
決算前に不吉な予兆が3点あったから。
1.本決算日が例年より約2週間遅れており、来期業績の不透明感が増しているのではないかと思った。
2.稼ぎ頭であるスマホゲーム「ガンダム」や「シャドウバース」のランキングが大きく落ちており、期待の新作「キティちゃん」も伸び悩んでいた。
3.11/13日経に「AIが業務代替 広告制作は期間12分の1」という記事があり、広告事業は相当厳しくなりそうだと思った。この会社と業態は少し異なるが、電通や博報堂の株価が長期で右肩下がりである点もイヤな感じがした。

→これらを総合して、来期業績は冴えない可能性が高いと判断した。


・サイバーエージェント 少し買い戻し
本決算は案の定ややネガティブな内容だった。
今期の業績予想は、純利益が前期比-21〜-5%の250億〜300億円になる。主因は、前期のヒット作による反動減とAI事業への投資増とされる。

一方で、ゲーム事業は海外市場での成長が顕著で、アプリ決済も外部決済の普及により利益率が改善している。また、ABEMA(メディア事業)は今期から本格的な投資回収フェーズに入る。

広告事業は引き続き厳しそうだが、全体としては成長を維持できると思った。決算後に大きく売られていたので、少し買い戻すことにした。


・セキュア 全売却 損益-7%
3Q決算のブログ予想の下限は、
売上高:52億円
営業利益:2.6億円
セールス人員:85名
だったが、

実際は
売上高:49億円(前期比+4.8%)
営業利益:2億円(-29%)
セールス人員:84名
と下限値をすべて下回っていた。加えて、前向きな説明や改善の兆しも特になかった。

事業環境が良好な中で、市場成長率を下回る業績は非常に印象が悪かった。個人的にはストップ安クラスのネガティブ決算という印象だった。

結果的に、株価は思ったほど下がらずダメージは軽微で済んだが、今回の決算は競争激化を示唆する内容であり、セキュアのターニングポイントになりそうだと思った。

今回の予想は手堅いと思っていたが、また外れてしまった。株式はやはりドルコスト平均法で買っていくのが無難だと思った。


・iシェアーズ AI グローバル・イノベーション アクティブ ETF 半分売却 損益0%
AIブームがいったん調整しそうだと思ったから。
この投信の投資スタンスがあまり好きではなかったから。

・米Amazon 新規買い
AI技術やAIクラウドにやや不安はあるが、EC、物流、ロボットなどの分野では、依然として大きな成長余地があると思った。

株価が230ドルを割ったら買おうと考えていたら、220ドルを下回っていたので買うことにした。


・米ベライゾン 買い増し
経営者が交代して、業績が上向きそうだと思ったから(詳細は後述)。

日本の長期金利が1.8%を超えたにもかかわらず、円安が進み、「日本売り」が始まったのではないかと思ったから。今回の買い増しはキャピタルフライトの意味合いもある。

・大和 iFreeNEXT FANG+インデックス 積立NISAの買い増し
・米アルファベット ドルコスト平均法で買い増し

■12月
・エムスリー買い増し
株価が再び2100円を下回ったため。
2Q決算で、成長トレンドの復活が確認でき、特に問題なさそうだと思った。

・サイバーエージェント 買い戻し
株価が1300円を割り込んだため。
藤田社長が社長職を後進に譲るタイミングで、業績が大きく失速する可能性は低いと考えた。

・フィルカンパニー 新規買い
「お気に入り投信」の構成銘柄にあった会社。
株価はしばらく停滞しているものの、来期の業績は堅調そうなので、そろそろ株価が動意付きそうだと思った。

・大和 iFreeNEXT FANG+インデックス 積立NISAの買い増し
・米アルファベット ドルコスト平均法で買い増し
・アマゾン 買い増し
・NTT 新規買い NISAの投資枠が少し余っていたから。

保有株

 保有比率の高い順に見ていく。

■イントラスト
基本シナリオ:「賃貸保証会社」から「多角的な保証プラットフォーマー」へ

3Q決算も堅調な内容だった。ただし、この会社がパイオニアである医療費用保証事業については、契約数が239件と、後発のエラン(348件)に後れを取っている点は少し気になった。

買収した家賃保証会社2社の利益貢献が始まったように見える。これは経営手腕によるところが大きそう。

決算説明会では、「来期目標である売上高150億円、営業利益30億円は達成可能か」という質問に対し、社長は「達成できるとお伝えしてよいかと思います」とやや慎重な言い回しで回答していた。難易度は高そうだが期待したい。

また、CFOが「大手管理戸数の成長と当社サービスのさらなる磨き込みにより、家賃保証事業は今後も2桁成長を目指す」とも発言していた。この主力事業にはまだ一定の成長余地がありそうだとわかった。

足元で株価が上昇している。特段の材料がない中での上昇に違和感があったが、スタンダード市場の地合いがいいらしく、指数は最高値を更新している。スタンダード市場の平均PBRは1.1倍台と、プライム市場(約1.6倍)やグロース市場(約3.3倍)と比べて低水準にあるので、今後も堅調に推移しそう。12/23日経

今後3年の業績予想は、売上・利益ともに年+10~15%。現在の適正時価総額は230億円(株価1000円、PER15倍)くらいになりそう。


■米アルファベット
基本シナリオ:中期「AIインフラと知能でトップに」→ 長期「大発明家に」

3Q 決算は引き続き順調だった。AI、クラウド、広告のいずれも好調な成長が続いている。

2Q決算に続き、今回の決算でも通期の設備投資計画を約8%引き上げた。来期もさらに投資を積み増す計画。にもかかわらず、フリーキャッシュフローは着実に増加しており、財務基盤の強さが際立っている。10/29インフォ10/30日経10/30日経

9月末時点のクラウド受注残は1550億ドルに達した。これはKPIになるので、今後も決算ごとに推移を確認していく。

12/19インフォに、グーグル社内で利用可能な計算資源(半導体・サーバー)が依然として決定的に不足している状況が続いている、とあった。これだけ巨額の投資を行っていても需要を満たしきれていない点から、AI関連需要の大きさがわかる。

記事には、Google独自のAIチップ(TPU)の高性能化も進んでいる、ともあった。クラウド需要の強さと半導体性能の向上が相まって、今後の成長はさらに加速していきそうだと思った。


競争環境では、OpenAIとのチャットボット覇権争いが激化している。現時点では、使い勝手の面でChatGPTが優位と感じる場面が多いが、Geminiは急速に追い上げており、性能面では多くの項目でGeminiが上回ったとの評価も増えている(10/30インフォ11/19インフォ)。詳細は後述するが、今後半年以内に決着がつく可能性がある。

OpenAIは、ChatGPTを軸に「AI操作の基本ソフト(OS)」を構築する構想を描いている。iPhoneをデザインしたジョニー・アイブ氏がAI端末を設計すると報じられており、実現すれば高い競争力を持つプロダクトになりそう。端末と外部アプリを接続し、会話形式でUber、Amazon、Spotify、AirbnbなどをAIに依頼する利用体験が定着すれば、OpenAIは単なるAIモデル提供者から「スーパーアプリ運営会社」へと変貌する可能性がある。10/7インフォ10/7インフォ10/8日経

これに対し、グーグルはすでにPixelフォンをはじめとするスマートフォン、アプリストア、AI基盤を持っている。さらにPixelイヤホンやPixelウォッチなどのデバイスもGeminiと連動し、音声操作が可能となっている。OpenAIが構想する世界観は、グーグルでも十分に実現可能であり、ハード・ソフト・AIを統合した総合力ではGoogleに分があると思っている。10/9日経

11/6インフォに、「アップルはSiriの大幅刷新に向け、Geminiを採用する最終調整に入った」とあった。さらに、11/20YouTubeでは、ウェドブッシュ証券の名物アナリスト、ダニエル・アイブス氏が、「アップルはGeminiを採用すれば、アップルの株価に75ドルから100ドルの価値をもたらす」と予想している。これらを踏まえると、モバイル端末向けAI基本ソフト(OS)の覇権は、グーグルでほぼ確定したように見える。

OpenAIは10月、独自のウェブブラウザー「ChatGPT Atlas」の提供を一部地域で開始した。ChatGPTをサイドバーで併用できる設計で、ウェブ検索、ページ要約、質問応答などを分割画面で行えるという。10/22日経10/22インフォ

一方で、グーグルもすでにウェブブラウザーChromeとGeminiを統合しているので(実質的には併存)、「ChatGPT Atlas」に際だった優位性はなさそう。12/18インフォ


チャットアプリは個人的にはChatGPTが使いやすいとの印象があるが、Geminiの真価が発揮されるのは「研究」領域ではないかとみている。グーグルは2月に、科学研究支援システム「コサイエンティスト(Co-Scientist)」を発表した。これは、文献調査や実験手法の立案など、異なる特技を持つ7種類のAIで構成されており、科学者を支援するだけでなく、新たな研究テーマを自ら発案することも可能という。

開発を主導したグーグルのナタラジャン博士は、「2年後にはAIが世界トップレベルの学術誌に掲載される研究を生み出せるようになる」との見通しを示している。現時点ですでに、「10年かけた教授の研究を2日でクリアしてしまう」こともあるようなので(笑)、「AI科学者」の誕生はもっと早まるかもしれない。10/1日経

グーグルの研究者が2年連続でノーベル賞を受賞した。去年は物理学賞と化学賞のダブル受賞で、今年は量子コンピューター研究による物理学賞になる。グーグルは基礎科学研究機関としての存在感も高まっている。10/8日経10/8日経

量子コンピューター分野では、Googleの量子研究部門責任者が「5年以内に実用化され、創薬や材料開発などで活用できる」と主張している。量子コンピューターの演算速度は、現在のスーパーコンピューターの1万倍以上とも言われる。物理学者などからは「実用性がない」などの批判もあるようだが、仮に実用化が進めば、Googleの研究開発力は飛躍的に高まる可能性がある。10/23日経10/28日経


Google Cloudは、AIスタートアップの利用者を着実に取り込んでいる。その理由はAI開発に強みを持つクラウド・プラットフォームがあるため。Google Cloudの25年のAIスタートアップ向けのシェアは38%となり、ハイパースケーラーで最もシェアを伸ばしている。グーグルはクラウド事業においても「AI革命」の恩恵を最も受けられそう。

現在全クラウド領域でトップシェアを維持するAmazon Web Services(AWS)は、シェアこそ低下傾向にあるものの、「中立性」を武器に競争力を保っている。AWSは自社の大規模言語モデル(LLM)を中核に据えていないため、幅広い計算資源の利用、大規模なクレジットパッケージ(無料枠)、そして複数の外部モデルとの高い相互運用性を求めるチームを引き付けている。AIスタートアップの創業者は特定のクラウド事業者への依存を避ける傾向が強く、AIモデルの提供元も多様化していることから、AWSの中立性は今後さらに価値を増す可能性がある。

Microsoft Azureは、大企業向けを重視した戦略により、スタートアップでの利用拡大が相対的に進んでいない。Microsoftは法人向けサービスと、米OpenAIおよび米Anthropicとの提携を軸とする戦略を維持しており、これは大企業顧客には有効だが、AIスタートアップの裾野拡大には直結していない。シェアがやや低下している点は、スタートアップがより実践的なAIツールと開発環境を備えたエコシステムへ流れていることを示唆している。

以上を総合すると、AIスタートアップ向けではGoogle Cloudが最も有利なポジションにあるように見える。12/15日経

10/8日経ビジネスによると、グーグルが提供する「Kaggle(カグル)」は、世界190以上の国・地域から1,500万人超のAI開発者やデータサイエンティストが集う、世界最大級のコミュニティーだという。コンペティションへの参加は基本的に無料で、特別な条件もなく、プログラミング未経験者でも容易に登録できる点が魅力とされている。グーグルはこのような場を通じてもアイデアや人材を吸収していることがわかった。グーグルのAI研究開発体制は他社と比べて一段抜きん出ているように見える。


グーグルはノーコードでエージェント開発が可能になる「ジェミニ・エンタープライズ」を発表した。実質的には既存製品のリブランディングのようだが、非技術者でも扱いやすい設計であるため、企業内での利用拡大が進む可能性が高い。10/9インフォ10/9インフォ


グーグルがアドビとAI分野における提携を拡大した。アドビのユーザーはグーグルの画像編集AI「Nano Banana」や、テキストから動画生成できる「Veo 3」を、PhotoshopやPremiereなどの主要アプリで利用できるようになるという。この提携は、グーグルにとってクリエイティブ市場への進出を加速させる重要な一手となる。10/29インフォ

11/7インフォによると、グーグルが巨額の資金を投じて再雇用した“天才AI研究者”が、社内の雰囲気を攪乱しているという。問題の研究者、ノアム・シャジール氏はTransformer論文の共同著者であり、現代AIの礎を築いた人物の一人だが、その発言は「危険AI並みに制御不能」とも評されている(笑)。

グーグルは現在、この天才研究者を守るべきか、それとも組織としての社内文化を守るべきかという、難しい選択に直面しているもよう。もっとも、シャジール氏を放出すれば競合他社に追いつかれるリスクが高まるので、多少の摩擦を許容しつつ、雇用を継続する以外に選択肢はなさそう。

12/16インフォによると、アルファベット傘下の自動運転車開発企業ウェイモは、最大で100億ドル超の資金調達について投資家と協議を開始したという。調達資金は、米国内および海外での自動運転サービスの急速な拡大に充てられる予定で、事業はいよいよ本格的な普及フェーズに入りつつあるように見える。

一方で、12/2日経では、中国製ロボタクシーの製造コストは、ウェイモのロボタクシーの3分の1にとどまる、とある。量産面では中国勢に明確な優位性があり、純粋なコスト競争になれば厳しい戦いになりそう。

とはいえ、セキュリティや規制の観点から、中国企業の自動運転車両が西側諸国で広くサービスを展開できる可能性は低い。また、ウェイモ自身も量産フェーズに移行すればコスト低下が進む余地は大きい。さらには、ウェイモの真の競争力はハードウェアではなくソフトウェアにある。これらを踏まえると、現時点では中国勢のコスト優位は、致命的なリスクにはなりにくいと考えている。

ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイが、7~9月の間にアルファベット株を6600億円分取得し、アップル株を追加売却をしていたことがわかった(11/15日経)。前回このブログでは、アルファベットを新規買いし、アップルについてはやや批判的な内容を書いている。投資判断がバフェットさんと被っているように見える。

もっとも、今回の判断をバフェットさんが下したかどうかは定かではない。ただ、同氏は以前アップルのブランド力を高く評価しており、株主総会では「(アルファベットに)投資する機会はあったのに逃してしまった」とも語っていたようなので(11/20日経)、バフェットさんの判断だった可能性も少なからずある。

これはつまりどういうことかというと、自分の感性がバフェットさんと非常に近い可能性があるということ(笑)。ただし、残念ながら投資パフォーマンスは圧倒的に劣後しているので、その差を少しでも縮められるようがんばっていきたい。

11/17インフォに「Googleが持っててOpenAIにはないもの。今、投資家がようやく気づき始めている――GoogleOpenAIが目指すものを“すでに全部持っている”」とあった。記事では、グーグルがすでに持っていて、OpenAIにないものとして次の点が挙げられていた。

1. 研究力 × LLM
2. AI専用チップ(TPU
3. Google Cloud
4. 巨大な既存プロダクトへのAI統合 (検索、ChromeGmailAndroid)
5. デバイス(スマホ、イヤホン、ウォッチ、スマートグラス)
6. ビジネス基盤とキャッシュ創出力(グーグルは継続的に利益を生んでいる)

これはつまり、「OpenAIが“いつか実現したい未来”は、Googleが“すでに持っている現在”である」という構図。この視点から、グーグルはAI時代の「本命」として再評価が始まっているという。読み通り、やはりグーグルが本命なのかもしれない。

11/20日経では「アルファベットは「M7」で唯一の勝ち組」とある。見極めのカギはキャッシュフロー(CF)とバランスシートの循環であり、財務体質の強さが際立っているという。アルファベットのCFOは「長期投資については、企業の持続的な成長と顧客需要の両方を満たすため、厳格な評価基準を設けている」と語っており、この点には一定の安心感がある。

グーグル賛辞の極めつけは12/1バロンズの記事。「大手ハイテク企業の中で最高のAI株の探究はやめるべきだ。アルファベットが明らかな勝者であり、株価の上昇は続く可能性がある」とある(笑)。ここまで楽観がすぎると、さすがに少し警戒したくなる。今後は過度な期待が剥落し、一度調整局面を迎えることもあるかもしれない。


グーグルがスペースXに投資していたことがわかった。投資後に企業価値は約80倍に膨らんでおり、巨額の含み益をもたらす可能性があるという。12/16日経には「グーグルがスペースXのIPOを魅力的な出口ととらえて売却を選ぶ場合は、AIや関連分野への投資資金の拡大につながると市場は受け止める」とある。しかし、ピチャイCEOは、AIデータセンターを宇宙に建設する時代が10年以内に「新たな常識」になるとの見解を示しているので(12/1Fortune)、売却する可能性は低そう。


グーグルの株価は上昇トレンドに乗っている。ただし、グーグルの株価が上がれば上がるほど、人間の失業が増えるのではないかという懸念もある。米マッキンゼーは、30年までにAIが世界で最大8億人の雇用を奪うと予測している(12/11日経)。大量の失業が現実となれば、人間の存在意義そのものに疑問符がつく可能性が高い。

その引き金になり得る企業の株式を買うのもどうかと思うが、企業は利潤を追求する存在であり、国家間のAI開発競争も熾烈を極めている以上、AIの開発と活用が止まることはなさそう。加えて、株式投資では株価が上がるものを買う必要がある。それならば、AIの倫理や哲学について最も深く考えていそうな企業であるグーグルの株を選ぶのが、現時点では一番マシなような気がする。

なお、予測を出したマッキンゼー自身でも、すでにリストラが始まっているもよう(12/17日経)。同社はすでに22000ものAIエージェントを活用しているという。11/18インフォ


12月、欧州委員会はグーグルに対し、独占禁止法違反の疑いで調査に入った。焦点となっているのはAI検索サービスで、報道機関やYouTubeなどのクリエーターのコンテンツを、十分な保証や対価なしにAIの性能向上に利用している可能性が指摘されている。これはややこしい問題になりそう。

報道機関などがコンテンツに対する正当な対価を得られなくなれば、制作体制が弱体化し、コンテンツの質は低下する。一方で、規制を強めすぎれば、コンテンツへのアクセスが制限され、検索精度が落ちる。その結果、収益が低下し、やはりコンテンツの質が損なわれる可能性がある。こう考えると、グーグルが一定の保証金や対価を支払う形で折り合いをつけるのが、現実的な落としどころではないかと思う。

今回、もう一つ気になった点がある。それは、OpenAIなど他のAI新興企業が、同程度には問題視されていないこと。その背景には、グーグルの圧倒的な市場シェアがありそう。“断トツトップ”は規制当局のターゲットになりやすいので、グーグルはAIの力を全面的に開放するのではなく、やや抑制気味にしたほうがよいのかもしれない。12/10日経12/10日経


12/7日経によると、世界市場において中国の「オープン型」AIモデルが、米国のAIモデルのシェアを追い抜いたという。オープン型モデルは、開発者が自由にダウンロード・改変し、自社システムに組み込める点が特徴で、米国内でも普及が加速している。

その理由は、実用に耐える十分な性能と、圧倒的な価格競争力にある。米PinterestのCEOは「大手企業のAIを使う場合と比べ、オープンソースモデルを活用することでAI関連コストを90%削減できた。米大手テック企業のクローズドモデルと比べても、性能とコストのバランスが非常に優れている」と言っている。さらに、他のCEOとの会話でも「高額な専用AIソフトでは投資回収が見合わない」という不満が多く、企業がオープンソースAIの方が効率的だと気づき始めているという。12/10インフォ

カスタムAIシステム開発企業のParsedも、「企業は汎用モデルではなく、特定用途に最適化されたオープンソースモデルを選ぶようになる」と主張している。その理由として、「コストの安さ」と「用途次第では汎用モデル以上の性能を発揮できる点」を挙げている。12/10インフォ

「医師版ChatGPT」を提供するOpenEvidenceは、創業わずか3年で年換算売上1億ドル超、評価額100億ドル超まで急成長しているAIアプリ企業になる。そんな同社は、オープンソースAIモデルを基盤としつつ、GoogleやOpenAIのAIも組み合わせることで、要約精度や検索精度を高めているという。12/12インフォ

12/11インフォには「2026年は「格安AIの年」になる可能性」とある。オープンソースAIモデルが「十分に強く、しかも激安」になり、DeepSeekやAlibabaのQwenなどを活用すれば、最先端の専有モデルと同等の性能を、10%未満のコストで実現できるという。

この流れでいくと、クローズドモデルのGeminiは不利な立場になる。この点は今後の競争環境を左右する重要な要素になるので、注意して見ていきたい。


12/22インフォでは、「データセンターの遅延が2026年の重要テーマになる」と指摘されている。
主な遅延要因として挙げられているのは、次の3点。

・電力会社からの電力供給の遅れ
・建設現場における人手不足
・政治的要因や地域住民との調整問題

エヌビディアのファンCEOも、「AIブーム最大の制約は電力」と語っている。

2026年は、真にデータセンターを運営できる企業と、そうでない企業の明暗が分かれる年になりそう。アルファベットは12月に電力確保を強化するため、クリーンエネルギー開発企業Intersect Powerを買収しているので、大丈夫そうに見える。12/22インフォ


今後3年の業績予想は、売上・利益ともに年+10~20%。現在の適正PERは25~35倍(株価262~368ドル)くらいになりそう。


AI分野ではバブル懸念が消えないが、今後2、3年は旺盛な投資需要で市場は拡大し、その後はAI実装と収益化が進むことで、さらに一段の市場拡大につながるのではないかと思う。

AI関連企業の経営陣のコメントをAIに解析させ、「心理スコア」を算出した分析では、87%の企業が「先行きに楽観的」という結果が出ている。さらに、経営陣の強気な発言に実績が伴っている企業では、心理スコアと株価の間に一定の連動性も確認されたという。テック大手の中では、アルファベットがその代表例とされている。足元のアルファベットの「楽観指数」は高い。今後の躍進に期待したい。12/25日経


■新日本科学
基本シナリオ:世界有数のCRO(医薬品開発業務受託機関)に

新日本科学はCRO事業が好調で、最近は欧米顧客からの引き合いが増えている。
直近4年間は積極的な投資を続けてきたため減益基調となっているが、投資フェーズも終盤に差しかかっており、今後は投資回収局面に入りそう。
新形態の片頭痛薬も近く米国で上市予定であり、円安が進行している点も追い風となる。

ただし、この新形態薬は片頭痛薬の中では比較的「レトロ」な部類に入り(11/29日経)、市場規模はそれほど大きくなさそう。それでも今回の上市を通じて一定の評価を得られれば、新日本科学が強みとする「経鼻粉末剤」技術は、他の薬剤への応用余地も大きいため、技術プラットフォームとしての価値が高まる可能性がある。

アジア圏でCRO事業の競争激化が進んでいる点は気になるが、臨床試験では価格よりも試験の精度や信頼性が重視される。その点で実績を積み上げてきた新日本科学は、過度な価格競争に巻き込まれにくい立ち位置にあるのではないかと思う。

中長期的なリスクとして注視すべきなのは、2022年頃にFDAが発表した「医薬品開発における動物実験の段階的廃止方針」。今後は動物実験に代わり、ヒトの培養細胞やAIシミュレーションなどへの移行が進められる見通し。新日本科学もヒト培養細胞を用いた試験を開始しているが、仮に動物実験が本格的に廃止されれば、事業への影響は甚大になり得る。

現時点では、動物実験を完全に代替できる技術は存在しないものの、このテーマは長期的に新日本科学の競争力を左右する可能性がある。引き続き慎重にフォローしていきたい。


■サイバーエージェント
基本シナリオ:AI・ロボット時代の余暇産業の勝者に

本決算では、前期業績は絶好調だったが、今期の利益予想は前期比で-30~-16%の減益見通し。主な要因は、前期にヒットしたゲームタイトルのピークアウトと、AI関連の新規事業への投資拡大になる。

懸念材料である広告事業については、「検索から生成AIへ」というユーザー行動の変化を踏まえ、新たな広告ビジネスの構築を目指しているという。とはいえ、広告運用の多くはすでにAIによる自動化が進んでおり、構造的に利益率は低下しやすい。広告事業がかつてのような高収益モデルに戻る可能性は高くなさそう。

今期はゲーム事業の反動減がありそうだが、第4四半期では海外売上が急拡大している。もしこの勢いが続けば、想定ほど利益は落ち込まない可能性もある。また、アプリの外部決済が可能になった点も、一定の追い風になりそう。

もっとも、外部決済についてアプリ事業者の間では「実質的に外部誘導の導入は難しい」との声も多い。外部決済では、アップルやグーグル以外の決済代行手数料に加え、決済サイトの運営コストなどが発生する。これらが合算されることで、アップルに支払う15%(グーグルは20%)に上乗せされ、結果的に従来の決済手数料26%を上回るケースもあるという。12/23日経

人材面では、サイバーエージェントの初任給は42万円と高水準であり(12/22日経)、今年も優秀な新卒が多数入社していそう。同社は人材を伸ばす仕組みに強みがあるので、今後も力強く成長していけるのではないかと思う。

新社長の内山氏は、11/15日経を読む限り、環境変化への感度が高く、柔軟性がありそうな人なので、会社をうまく伸ばしていけそう。


■米ベライゾン
基本シナリオ:シュルマン氏の経営改革で株価2倍(80ドル)

10月、ベライゾンは突然CEOの交代を発表した。配当の権利落ち日の直前というタイミングだったので、株価下落を避けようとする意図が透けて見え、イヤな印象を受けた。発表当日、株価は今年最大の出来高をつけ、5%下落した。

しかし、新CEOに就任したシュルマン氏の経歴を調べると、見方は変わった。
同氏はAT&Tでキャリアをスタートさせた後、ベライゾン・ワイヤレス USAの創設CEOとして事業を牽引。その後、ブッキング・ホールディングスの役職を経て、2015~2023年にはPayPalのCEOを務め、売上高を3倍超、EPSを5倍に拡大させている。2018年以降はベライゾンの社外取締役として関与し、2024年12月にはLead Independent Director(独立取締役トップ)に就任している。

2025年前半にかけてベライゾンの事業停滞感が強まっていたことを踏まえると、今回のCEO交代は必ずしも悪い流れには見えない。10/7ブルームバーグ10/7インフォ

以下、シュルマン氏がPayPalで行った改革を整理し、それをベライゾンに当てはめた場合の展開を予測してみた。

1.固定費の圧縮 + 資金の成長領域への再配分

PayPalでは非中核事業からの撤退、コスト削減を進め、余剰資金を成長領域へ集中投下。組織をスリム化し、意思決定を高速化した。

→ベライゾンへの応用
すでに
・約1.5万人(15%)の人員削減
・設備投資の効率化
を発表しており、PayPal時代と同様、「固定費を削り、戦略投資に回せる余力を最大化する」方向に進む可能性が高い。11/14日経

2.顧客維持(チャーン低減)に異常にこだわる

PayPalでは「顧客獲得より維持の方が10倍効率的」という思想を徹底。
解約率・利用頻度・苦情データをリアルタイムで分析し、AIを使って“不満の兆候”を事前に検知。UI改善を積み重ね、CEO自身が顧客満足度スコアをKPIに据えた。

→ベライゾンへの応用
通信キャリア最大の課題はチャーン(解約)。シュルマン氏就任後の内部メモで「顧客を幸せにすることが、最も金になる」と明言している。

想定される施策は
・解約予兆AIの本格導入
・料金プランの簡素化
・待ち時間、サポート、回線トラブルなどストレスポイントの重点改善
・顧客ロイヤルティKPIの経営中枢への組み込み

PayPalと同じ、顧客体験を軸にした改革が進む可能性が高い。

3.アプリ強化・UX再設計

シュルマン氏は「アプリUIを毎週改善する」レベルでUXにこだわる経営者。
PayPalでは操作フローを大幅に削減し、利用頻度を飛躍的に伸ばした。

→ベライゾンでも起こりそうなこと
・My Verizonアプリの全面刷新
・契約変更、料金確認、サポートをスマホ完結
・操作数を極限まで減らした解約防止設計

ペイパルでの成功パターンをそのまま通信キャリアに移植する可能性が高い。

4.決済・金融の知見 → ベライゾン金融化

PayPal時代にBNPL(後払い)、個人融資、クレジット強化を主導。

→ ベライゾンで考えられる新領域
・スマホ分割払いの金融商品化
・通信+端末+保険のパッケージ化
・Verizon版後払いサービス
・セキュリティ/ID認証統合サービス

通信と金融は相性がよく、AT&Tや日本のauKDDI)もこの分野で成果を上げている。

5.組織文化改革(ペイパル戦える集団に変えた)

シュルマン氏はハードワークと実行力で知られ、組織改革にも踏み込むタイプ。PayPalでは透明性の高い経営、成果重視の評価、スピード感ある意思決定を徹底した。

→ベライゾン版改革
就任直後の社員向けメモでは
“We will be scrappier.”(もっと戦う組織になる)
と宣言しており、硬直した大企業文化にメスを入れる可能性が高い。

ただし、シュルマン氏は利益を5倍に伸ばした一方、株価は在任期間全体で約2倍にとどまっている。理由としては

1.コロナ禍バブルの反動
2.Apple Payへのシェア流出
3.BNPL競争での劣勢
4.新規事業・投資の不振
が挙げられる。

以上のことからわかるのは、
シュルマン氏の弱みは
・グローバル覇権を狙う大型新規事業

強みは
・コスト削減・効率化・UX改善に強い。合理化・最適化に強い。

今回ベライゾンがシュルマン氏を選んだ理由は、ペイパルの「失敗」ではなく「成功」の部分。以下の点は、ベライゾンの弱点とほぼ完全に一致している。

・解約率の低減
・コスト最適化
・ユーザー体験の改善
・スピード重視文化への変革
・収益性向上
・デジタルプラットフォーム最適化

シュルマン氏は「成長しない環境でも利益を最大化する」実務家であり、現在のベライゾンとは相性が良い。

前回のブログでは、ベライゾンについて「驚くほど退屈」と評しているが、CEO交代によって一気におもしろくなってきた。一人の経営者が巨大企業をどこまで変えられるのか。戦略が順調に進めば、2027年頃に株価80ドル(現在の約2倍)くらいになっているのではないかと思う。


■米アマゾン
基本シナリオ:EC・物流・ロボット分野で圧倒的な地位を維持しつつ、メディア・クラウド・AIでもトップ集団に残る

アマゾン倉庫では、ロボット台数が近く人員数を上回る見通しとされる。同社はすでに「人員を増やさずに売上を伸ばす」経営フェーズに入っており、世界の従業員数は2021年末の161万人から2024年末には156万人へ減少している。一方、北米売上(クラウド事業を除く)は2770億ドルから3880億ドルへと大幅に増加している。

アマゾンは倉庫内の仕分け・梱包・搬送の自動化に向け、ロボット技術への投資を継続しており、将来的には人型ロボットによる配送も検討されているとされる。クラウド事業のように自社で培った技術を外部に展開していく可能性も考えられる。アマゾンはEC企業にとどまらず、先進的なロボット企業としての成長シナリオも描ける。10/22インフォ

AWSは、グーグルクラウドとのクラウド間直接接続サービスを開始した。今後はマイクロソフトのクラウドとの接続も予定されているという。背景には、AI分野でAWSが相対的に劣勢に立ち、顧客がデータを他クラウドへ移行し始めている現状がある。この「クラウド間接続」により、AWSからの顧客離脱を防ぐ狙いがあると見られる。

AWSの構造的な弱点は、自社の強力な独自AIモデルを持っていない点にある。この点が、中長期の成長シナリオをやや不透明にしている。12/3日経12/4インフォ12/1インフォ12/2インフォ

とはいえ、従来型のクラウド需要は引き続き強く、業況は堅調。AIツール(AIエージェントを含む)の構築基盤である「AWS Bedrock」も好調で、処理能力が追いつかないほどの需要があるという。契約残高は約2,000億ドルと、前年同期比28%増に達している。12/1インフォ10/31日経 11/2インフォ

アマゾンクラウドの強みは、エヌビディア製GPUに依存せず、自社製AI半導体「トレーニアム」を含め、AMD・インテル製を併用するマルチ半導体戦略を採っている点にある。
用途やワークロードによって最適な半導体・モデルは異なる。自律的に動くAIエージェントの時代には、顧客ごとに最適なAIを選択できる柔軟性が重要になる。

AIモデルそのものは今後、コモディティー(汎用品)化が進む可能性が高い。アマゾンは、顧客が自由に選択できる幅広いモデルと開発ツールを提供する立場を取っている。

アマゾンでは2017年から独自AI半導体を開発しており、現在データセンターに新規導入するAI半導体の半分以上が自社設計品になる。コスト競争力にも強みがある。11/17日経


■SBIホールディングス
基本シナリオ:「どんどん巨大化する」「ネットは勝者総取りや」By 北尾CEO(参照

2Q決算も好調で、全セグメントが順調に成長している。
今後は日本株式トークンのプラットフォームを担う存在へと進化していくことを期待したい。11/19日経9/30インフォ


「中間報告書 SBI VISION 2025」が届いたので、要点を簡単にまとめておく。
SBIが現在、特に力を入れているのは次の2点。

1.企業生態系の「融合」
「バラバラだった事業を“つなげて”、収益力を一段引き上げる」

・銀行 × 証券の本格連携
SBI証券とSBI新生銀行を一体で使わせる仕組みを強化し、顧客の囲い込みとLTV向上を狙う。

・デジタルアセット × 金融の融合
暗号資産・ブロックチェーンを投機対象ではなく「金融インフラ」として活用する。
ステーブルコインやトークンなど、次世代の金融インフラを先回りして押さえる。

・金融 × メディア
メディア・IP(音楽、アニメ、Web3メディア等)をグループ化し、「コンテンツ → ファン → 投資・金融」までを一気通貫させる。


2.アライアンス戦略の進化
「自前主義ではなく、提携によって一気にスケールさせる」

SMBC・NTT・KDDIなどと提携し、SBIの金融サービスを、他社の顧客基盤に“載せる”

・FPaaS(金融をAPIで提供)
SBIの金融機能を他社に丸ごと提供。電力会社など異業種とも連携開始。

・資産運用の高度化
KKR、Man Groupなど世界的運用会社と提携し、これまで一部富裕層向けだったオルタナティブ投資を一般投資家に販売する。

・地方創生との連動
地域銀行との資本・業務提携を拡大。
次世代勘定系システムによるコスト削減と収益改善に加え、メディアやイベントも活用し、地域経済を巻き込む。

まとめ
SBIが目指しているのは、
「金融・デジタル・メディアをすべてつなげ、自社と提携先を包含する“経済圏”を構築すること」

この構想の詳細は8月に出版された北尾CEOの著書『金融とメディア、ITが融合する日』に描かれていそう。もしこの構想が実現すれば、SBIホールディングスは国内随一の金融グループになる可能性が高い。

中間報告書を読んで、思っている以上にSBIは巨大化しそうだと思った。


■エムスリー
基本シナリオ:医療DXの勝者に

2Q決算後にストップ高になったものの、その後、株価は再び元の水準に戻ってしまった。株価が下がった理由ははっきりしない。グロース株全体の調整局面だったのか、あるいはAIの進展が同社にとって逆風になるとの見方が出たのか、他の理由か、現時点ではよくわからない。ただし、長期的な見通しは今のところ悪くなさそうなので、ホールドを続ける予定。

一方で、無視できない変化もある。
AIの進化により、医師という職業そのものが減少する可能性が出てきた。
12/15日経によれば
「AIは医師に比べ、難しい病気の診断を約4倍高い精度で行える」
「費用を抑えた治療提案も可能」
「AI単独の診断スコアは、AIを活用した医師をも上回った」(笑)
という。

こうなると人間の医師の役割は減少していきそう。もちろん、共感力や微妙なニュアンスを読み取る力では、現時点では人間に分があるため、医師という職業が完全になくなることは考えにくい。しかし、基本的な診断や標準的な処置の多くは、今後AIやロボットに置き換わっていくのではないかと思う。

エムスリーの主力事業の一つは、医師向けのマーケティング事業になる。仮に医師数が減少すれば、この事業の成長にブレーキがかかるのは避けられない。医療DXの進展が追い風になる一方で、AIの進化が事業構造そのものを揺さぶるリスクもありそう。この点は注意して見ていきたい。


■前田工繊
基本シナリオ:土木資材系のM&Aでインフラ需要を着実に取り込む

1Q決算は上振れ気味で、通期計画に対する進捗率は高い。今年も上方修正が入りそう。
しかし株価があまり上がらない。成長率が低いからだろうか。


■大和 iFreeNEXT FANG+インデックス
基本シナリオ:AI革命の勝者に賭ける

アップル株は失墜すると予想していたが、株価は過去最高値を更新している。ただし、今回の上昇は業績拡大による寄与はごくわずかで、大半はPERの上昇によるものと考えられる。

フォーブス12/20には「アップル株、2026年に40%下落する可能性」との記事があり、その根拠として、売上高がほぼ横ばいであること、AIの開発・実装が遅れていること、新製品が期待を下回っていること、そして資本配分が研究開発や設備投資よりも自社株買いに偏っている点が挙げられている。この見方には一定の妥当性がある。実際、2025年のアップルの投資額は、グーグルやマイクロソフト、アマゾン、メタと比べて半分以下にとどまっており、ここから急激な成長を期待するのは難しい。

一方で、12/30インフォに別の見方が示されている。アップルは「LLMはいずれコモディティ化する」と考え、自前モデルへの巨額投資を避けつつ、Google Geminiなど外部AIを活用し、製品への統合を重視する戦略を取っているという。そして2026年は、AIへの投資額の多さではなく、AIをいかに効果的に製品へ組み込めたかが評価を左右する年になる可能性があり、その点でアップルは有力な候補とされている。

この見方にも一理あり、確かに2026年は「AI活用の年」になりそうだが、アップルに残された成長余地は大きくないように見える。


メタについては、やや怪しい雰囲気が出てきた。AI分野で出遅れているため、資金力にものを言わせてAI人材を急ごしらえで集めているが、その即席チームがうまく機能するかは不明。
データセンターなどAI関連投資が急増し、営業利益率は悪化、フリーキャッシュフローは3分の1にまで減少している。しかも、グーグルやマイクロソフトのようにデータセンターを外販しているわけではないので、短期的には利益を圧迫する構造。AI開発が順調に進まなければ、これらの設備は一転して重い負債になりかねない。投資回収リスクにより株価は停滞気味。10/29インフォ10/31日経

とはいえ、AIで負ければ、主力のSNS事業でも負ける可能性が高まるため、方向性としては間違っていないようにも見える。

それ以上に気になるのは、11/6インフォ11/7日経で報じられた「メタは詐欺広告と認識しながら、収益を優先して完全にはブロックしていなかった」という件。この自社利益を優先する姿勢は、未成年者へのSNS利用規制の流れとも無関係ではなさそう。過去のケンブリッジ・アナリティカ問題も含め、メタの倫理観には問題がありそう。このような倫理観はAI開発においても不安材料になる。


これまで、この投信は「基準を外れればFANG銘柄でも除外される」と思っていたが、11/7日経によると、「アップルやネットフリックスなど6社は原則固定、残り4社は流動性や成長率を基準に入れ替える」というルールらしい。この仕組みだと、この「固定される6社」は、将来性が低下しても組み入れが維持される可能性が高い。そうなると、この投信のパフォーマンスは伸び悩む可能性がある。


構成銘柄の一つであるサービスナウの株価下落が続いている。同社は企業内の「申請」「承認」「問い合わせ」「トラブル対応」といった業務フローを一元管理・自動化するクラウドプラットフォームを提供している。AIとの相性は良く、AI関連企業の買収を進めており(12/2インフォ12/23インフォ)、AIエージェントの高精度化・高セキュリティ化に取り組んでいる。

ただし、こうした業務フローの合理化システムは生成AIによって比較的容易に模倣できるようになりつつある。既存の大企業がすぐにサービスナウを捨てるとは考えにくいが、新規導入を検討する企業にとっては、コスト的に第一選択肢にならない可能性が高い。株価下落は、将来の新規顧客獲得鈍化を織り込み始めている影響かもしれない。10/2インフォ


ネットフリックスは、827億ドル(約13兆円)を投じてWarner Bros. Discoveryの映画スタジオとHBO Maxを買収するとの報道があった。しかし、12/5インフォでは、この買収は金額面でも戦略面でも誤りで、最終的に成立しない可能性が高いという。理由としては、

1.価格が高すぎる
2.独禁法で止められる
3.Netflixにとって戦略的メリットが薄い
4.「取られるくらいなら買う」防衛的な買収
5.     財務負担が大きく、数年間はコスト削減モードに入り機動力を失う
などが挙げられている。

買収が失敗した場合でも約9000億円の違約金を支払う契約とされており、ネットフリックスの本気度は高いが、結果的にはいろいろな意味で失敗に終わりそう。


■フィルカンパニー
基本シナリオ:特殊駐車場開発で市場開拓



■iシェアーズ AI グローバル・イノベーション アクティブ ETF
基本シナリオ:AI革命の勝者に賭ける

AIブームのバロメーターとして見ている。9月に運用開始で、その後横ばい状態が続いている。



■米マイクロソフト
基本シナリオ:最強のAIエージェント・プラットフォームに

1Q決算は好調で、業績・投資・財務のいずれにも大きな問題はなさそう。10/29インフォ10/30日経

ただし、生成AIの「王者」ChatGPTが、「Gemini3」登場以降、やや劣勢に立たされ始めた。マイクロソフトのCopilotはChatGPTがベースになっているため、ここが負けると大ダメージを受ける可能性がある。

マイクロソフトがここ数年、OpenAIへの追加出資を控えていた点を考慮すると、OpenAIの失速をある程度予期していた可能性がある。ナデラCEOは危機を感じたためか、経営業務の一部を部下に移譲し、自身はAI事業に集中する体制へとシフトしている。10/1インフォ

12/22インフォによれば、ナデラ氏は社内メールやTeams上でCopilotの完成度に強い不満を示し、「Geminiと比べて賢くない」などの発言をしているという。やはりAIモデルの性能差に危機を感じているように見える。

とはいえ、AIエージェントのプラットフォーム事業という観点では、マイクロソフトは依然として有利な立場にある。現在、企業向けソフトウェアの世界ではAIエージェントを巡る大混戦が始まっており、「史上最大級のソフトウェア市場の再編」が進行中。そこでは「どのエージェントを使うか」ではなく、「どう管理するか」が最大テーマになりつつある。

企業がAIエージェントを選ぶ際の最大の判断基軸は「データがどこにあるか」になる。世界の大企業の約9割がMicrosoft 365を利用しており、結果として、「Copilot Studio+Teams」「Agent 365」といったマイクロソフトのAIエージェント・プラットフォームが選ばれる可能性が高い。すでに外部の開発企業も、Copilot上でエージェント開発を始めている。11/12インフォ11/18インフォ

ただし、ここでもAIモデル性能の劣後は問題になる。基礎モデルの性能がすぐれないと、優秀なAIエージェントは生まれにくいため。マイクロソフトの”基本シナリオ”にはやや不透明感が出始めた。

なお、現時点で“エージェント管理ツール”の主な競合はアマゾンとセールスフォースになる。11/13インフォ

(サービスナウの株価が下落しているのは、ここらへんが主因かもしれない。)

現時点では企業におけるAIエージェント導入は想定ほど進んでいない。マイクロソフト自身も、AIエージェント関連の売上見通しを下方修正している。12/3インフォ

普及が遅れている最大の理由は、生成AIの挙動が依然として「気まぐれ」なことになりそう。AIは同じ質問でも毎回微妙に異なる回答を返す。この特性は創造性という意味では強みになるが、定型業務とは相性が悪い。出力のばらつきや業務適用の調整に手間がかかり、導入が難航しているのではないかと思う。12/19インフォ


10/28日経によると、オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)は、マイクロソフトが顧客を高額な有料プランへ不当に誘導したとして提訴した。同社は2024年10月からOffice 365の有料会員に対し、Copilot利用を含む形での値上げを通知し、受け入れなければ契約解約が必要だと説明していた。しかし実際には、Copilotを含まない従来サービスを同価格で継続できる「第三の選択肢」が存在し、それは解約手続きを始めた後に初めて表示される設計だったという(笑)。

マイクロソフトは、たまにこういうあこぎな商売をする。すでに十分な利益を上げているにもかかわらず、なぜブランド価値を毀損しかねない行動をするのか、正直よくわからない。



■NTT
基本シナリオ:NTTデータを軸に成長。長期ではIOWN(光半導体)に期待

12/30日経で、NTT社長が次のように語っていた。

「従来のコンピューターの電子回路は、AIの処理に使うと電力がかさんで大量の熱を出す問題がある。当社は次世代通信基盤『IOWN(アイオン)』の新製品として、省電力の光技術を使う『光電融合デバイス』を26年度から順次発売する。圧倒的に低い消費電力で低発熱のデータセンターを実現したい」

IOWNはまだ研究段階で、実用化は数年先という印象を持っていたが、すでに一部では製品化にこぎ着けているらしい。現在のデータセンターは電力制約が最大のボトルネックになっており、仮にこの製品が「圧倒的な省エネ性能」を実現できれば、NTTに対する市場評価が大きく変わる可能性がある。

『光電融合デバイス』を検索したら、「TSMCに勝てる、光技術の「隠し玉」 NTT副社長明かす」(2/3日経)という記事が出てきた。記事によれば、光電融合デバイスが現在と比べて100倍のエネルギー効率を実現するのはまだしばらく先になりそうだが、今後の計画は比較的クリアで、光半導体の中核となる特許を多数押さえているようなので、見通しは悪くない。今年はこの『光電融合デバイス』に注目していきたい。



■今後の計画
投資スタンスは 「基本静観、チャンスが来たら動く」 のまま。市場が荒れて米VIXが40超、日経平均の騰落レシオが70以下になったら株式などを買っていく。PBR、投資家心理指数、裁定売買残高なども考慮する。1ドル135円くらいになったら海外株を買っていく。

ただし、AIは「人類史上最大の革命」とも言われるので、AI関連株についてはドルコスト平均法で着実に積み上げていく。AIは暴走すると人類を滅亡させるリスクもあるので、その点に理解のある会社を選んでいく。

ウォッチリスト

 今後はAI革命と円安が進みそうなので、海外のAI関連株を中心に見ていく。

・米エヌビディア
現在、「AI革命」の恩恵を最も受けている会社。AI革命は始まったばかりなので、今後も力強い成長が続きそう。ロボット分野でも膨大なチップ需要が期待できる。問題は供給過剰懸念と中国やGoogleなど競合の追い上げになる。

推論用AIチップに関しては、中国ではすでに供給超過との見方がある。ただし、学習用のハイエンドAIチップは依然として深刻な不足状態にある(11/30インフォ)。中国では最新の半導体製造装置を規制により輸入できないことなどにより、開発は難航している( 12/14インフォ)。米シンクタンクの外交問題評議会(CFR)は、米中間のAI半導体の技術力格差は今後さらに拡大すると予測している(12/24日経)。現在、中国のAI企業DeepSeekは、エヌビディア製GPUを密輸して利用している。12/10インフォ

グーグルは自社のAIチップ(TPU)でブレークスルーを達成した。11月に外部の性能評価でトップになった「Gemini3」は、自社TPUのみで開発された(11/27日経)。グーグルはTPUの外部販売を開始する予定で、メタが数十億ドル規模での導入を検討しているほか、アップルやAnthropicもAIモデルの学習にグーグルクラウド上のTPUを活用している。11/26日経12/1バロンズ

モルガン・スタンレーは「AI半導体を外部に50万個販売すると、アルファベットのクラウド事業の27年度の売上高は130億ドル上振れする」と試算している。生産余力や半導体の利便性を改善してきた経緯を踏まえると「50万〜100万個規模の出荷は非現実的ではない」と指摘する。11/27日経

ただし、これでエヌビディアの牙城を大きく崩せるわけではない。なぜならエヌビディアにはAI開発プラットフォーム「CUDA」があるから。世界中のAI研究者や企業が10年以上にわたりCUDAを使い続けており、乗り換えコストは極めて高い。また、エヌビディアは価格や契約を通じて顧客を囲い込む戦略を取るとの見方もある。11/25インフォ

それでも、GPUには供給不足、高価格、高消費電力といった課題が多く、TPUは有力な代替手段となり得る。現在、エヌビディアは市場の約90%を占めているが、グーグルがそのうち10%程度を獲得する可能性はある。11/24インフォ 12/2インフォ

長期的には、グーグルがやや優位に見える。その理由は、最高性能のAIを自社で保有しているから。最高性能のAIを用いて半導体(装置)を設計すれば、より高性能な半導体を生み出せる可能性が高い。さらに、将来的に量子コンピューターを半導体設計に活用できるようになれば、グーグルの優位性は決定的になる可能性がある。


12/24インフォにエヌビディアが、推論用半導体チップを手がける米Groqを約3兆円で”買収(技術や人材の引き抜き)”したとあった。Groq創業者はTPUの設計者なので、TPUの競合になる。TPUの原理を理解しているので、将来的にはグーグルの脅威になる可能性はある。しかし現時点では周回遅れに見えるので、エヌビディアの競争力向上は限定的になりそう。12/29インフォ


エヌビディアのもう一つのリスクは供給過剰。最大顧客のOpenAIは現在、「規模を大きくすれば性能が向上する」というスケーリング則の「壁」に直面している。この壁を突破できなければ、大規模投資を続ける意味が薄れる。OpenAIが失速すれば、エヌビディアも業績の下方修正を迫られる可能性がある。


🔼・蘭ASML
最強の半導体露光装置メーカー。参入障壁が極めて高く、実質的に競合がいないところがいい。しかし、半導体の製造装置は、仕組みが非常に複雑で理解するのが大変なうえ、興味もそれほどわかないので、観察対象から外すことにした。


・米OpenAI(非上場)

11月の「Gemini3.0ショック」によりChatGPTの”天下”が終わった可能性がある。前述の通り、OpenAIは現在、AI開発において大きな壁に直面している。

一方、グーグルはこの壁を突破したもよう(11/20インフォ)。今後、両社の技術格差が拡大する可能性がある。

OpenAIが抱える最大の問題は、AIの基礎性能を高める「プレトレーニング」で成果が出にくくなっている点にある。小規模モデルでは機能していた手法が、大規模化によってバグや崩壊を引き起こし、十分に機能しなくなっているという。

最近のChatGPTの進化は、主に推論力(reasoning)の強化によるものだが、これはいわば小手先の改善に近い。AIの本質的な能力を底上げするものではなく、基礎性能が伴わなければ、実務的なパフォーマンス向上も早晩頭打ちになる。

AIモデル開発で、勝敗を分ける決定因子は、「スケールさせても性能が伸び続けるプレトレーニング能力」になる。しかし、そのプレトレーニングは次の理由から急速に難易度が上がっている。

1.高品質データの枯渇
2.モデルの大規模化によるバグや不安定化
3.既存アーキテクチャの限界(構造そのものの再発明が必要)
4.計算資源コストの指数関数的上昇
5.評価とデバッグの困難さ
 *プレトレーニングの成否は途中で測定できず、推論など後工程で突然問題が顕在化するため、原因特定が極めて難しい。

グーグルはどのようにこの壁を突破したのか。

1.天才AI研究者のノアム・シャジール氏の復帰(「保有株」のところで触れたグーグルの”問題児”)
トランスフォーマーの共同発明者であり、「巨大モデルを安定して成長させる方法」を最も深く理解している研究者の一人。プレトレーニング停滞を原理レベルから修正できた。

2.モデル設計を“真のマルチモーダル前提”へ転換
従来はテキストモデルに画像理解を後付けしていたが、Gemini 3では初期のプレトレーニング段階から、画像・動画・音声を統合した。

3.データ戦略を「量」ではなく「構造と整合性」重視に転換
対照的に、OpenAIは依然として量重視の傾向が強い。

4.自社クラウド(TPU)による安定した巨大訓練環境
プレトレーニングが難しい一因は、大規模化で挙動が変わることと、バグの原因が追えないこと。TPUは訓練挙動が均質で、大規模訓練時のデバッグ速度が速い。失敗を高速に潰し、成功確率を高めることができた。

5.社内AI組織の統合
かつて競合していたBrain、DeepMind、各プロダクト研究チームが統合され、研究方向が一本化。プレトレーニングに必要な総合力が整った。

では、OpenAIは今後この壁を突破できるのか。

グーグルの事例から考えると、鍵となるのは天才研究者・高性能クラウド・潤沢な資金の3点になる。もちろん他の打開策もあり得るが、外部から見る限り、この壁は相当に厚い。

OpenAIの次世代プレトレーニング開発プロジェクト名は「Shallotpeat」とされており、その進捗が今後の最大の注目点となる。


ChatGPTの競争力低下は、致命傷になりかねない。技術リードの喪失は資金調達力を弱め、それがさらなる開発力低下を招く「負のスパイラル」に陥るリスクがある。アルトマンCEOはこの危機に対応するため、「Code Red(非常事態)」を宣言し、ChatGPT改善に全リソースを集中させている。12/1インフォ

今の流れでいくと、次回のGeminiのアップデートで勝敗が決する可能性がある。

なお、アルトマンCEOはこれまで「AIがより安価で効率的になれば、需要は指数関数的に拡大する」と述べてきた。しかし12/18インフォでは「基盤モデルが賢くなっても、ユーザー利用は以前ほど伸びていない」との認識が示されている。実際の利用は軽い質問が中心で、重い推論やDeep Research機能は大半のユーザーに常用されていないという。

アルトマン氏は「AIの勝者は巨大スケールを最速で達成した企業」という信念のもと投資を加速させているが、スケール拡大に見合う需要が立ち上がらなければ、投資回収が困難になるリスクもある。10/7インフォ

もっとも、グーグルのラリー・ペイジ氏も社内で「このレースに負けるくらいなら破産してもいい」と言っているようなので(2024/8/31NASDAQ)、まずはスケールを極限まで押し広げる戦略は間違っていないのかもしれない。


・米アンソロピック(非上場)
エンジニアから高い人気を集めるAI企業。AIの安全性を最優先する方針を掲げ、ソフトウェアの性能面でも高い評価を得ている。このような理念と実力を兼ね備えた企業こそ最終的に生き残る可能性が高い。足元の業績は絶好調。

主力AI「Claude」は特にコーディング能力に優れ、経営陣はAGI(汎用人工知能)達成に必要な条件を深く理解しているように見える。その意味で、Anthropicは有力なAGI候補企業の一つといえる。

<強化学習でAGI(汎用人工知能)は実現できるのか>

現在、トランスフォーマー構造と強化学習を組み合わせることでAGIに近づけるという見方が広がっている。実際、現行のアーキテクチャでも一部の分野では専門家レベルの性能に到達している(10/1インフォ)。

アンソロピックのアモデイCEOは、学習データ量や計算資源を増やすほど基盤モデルの性能が向上する「スケーリング則」について、「今後も継続すると確信している」と述べている。10/31日経

一方で、こうした見方に懐疑的な研究者もいる。

OpenAI共同創設者の一人であるアンドレイ・カルパシー氏は、
「AIは訓練データの範囲外の事象を本質的に推論できない」
「人間や動物のように、環境から能動的に学習できない」
と指摘し、AIが自律的に人間の仕事を代替できるようになるには「少なくとも10年はかかる」との見解を示している。

さらに同氏は、
「強化学習は正解に到達しても、その推論過程が誤っている可能性がある」
「人間のような内省的学習ができないため、AI研究そのものを自動化することはできない」
とも述べている。10/21インフォ10/22インフォ

OpenAI共同創業者のイリヤ・スツケヴァー氏も強化学習には慎重で、
「実環境で学びながら汎用能力を獲得するAIにはなれない」
と語っている。

同氏は、AGIには単なるタスク遂行能力では不十分であり、
「実世界の中でタスクを学び取る力」、さらには人間に近い価値判断や感情に類する仕組みが必要になるとの見解を示している。AGI到達には5~20年を要すると見ている。12/1インフォ

AI研究の第一人者であり、先日メタを“クビ”になったヤン・ルカン氏も、
「LLM(大規模言語モデル)には根本的な限界がある」
と指摘している。現在のAIは事前に学習した状況には対応できるものの、人間のように未知の課題に対して新たな解決策を創出することはできない。AGIの実現には、「乳幼児のように世界を観察しながら学習する、全く新しいアーキテクチャが必要だ」と述べている。6/2日経6/14日経


<現在のAI開発手法が抱える課題>

1.開発後に学習できない
現行の大規模AIは、追加の大規模再学習なしに新しい知識を自律的に獲得できない。継続学習が不可能であり、「経験から学ぶ能力」が欠落している。

例:医学文献に記載のない新種の腫瘍を提示されても、AIは人間のように既存知識を応用し、「新たな概念」として理解・内面化することができない。

2.汎化能力の弱さ
トレーニングデータに存在しない概念、未知のタスク、新しい問題設定に対する柔軟な一般化が苦手であり、本質的な推論ができない。そのため、医学・基礎科学における根本的なブレークスルーを生み出すことは難しい。

3.専門家依存型の学習はスケールしない
現在の性能向上は、専門家による大量の模範解答に依存しているが、人間の知識量と時間には上限がある。その上限に達すれば、AIの成長も止まる。

4.スケーリング則の限界が見え始めている
これまでの進歩は、データ量・計算資源の増加による力業だったが、この延長線上では人間並みの知能には到達しないという見方が強まっている。次のブレークスルーは、「学習の仕組みそのもの」の刷新にある。

以上を総合すると、
「現在のAIは非常に高性能だが、完成後に成長できない」という点が最大の課題になる。この壁を越えるには、経験や失敗から自律的に学習できる、全く新しいタイプのAIが必要になる。12/8インフォ


<予測市場から見たAGI到達時期>

予測市場では、AGI到達時期について以下のような見方が示されている。

・OpenAIが来年AGIを達成する確率:11~15%
・2036年以前か以後かは、ほぼ五分五分
・AGIを最初に開発する企業としては、Google DeepMindが有力との評価が多い

総じて、市場参加者は「AGIは10年以上先である可能性が高い」と見ている。

なお、予測市場は「60%と評価された事象は、実際にも約60%の確率で起きる」傾向があり、一定の予測精度を持つとされている。12/15インフォ


<AGIはいつ実現するのか—— 定義次第の結論>

AGIの到達時期は、その定義によって大きく変わる。

「感情を持ち、継続学習が可能なAGI」
「AIがAIを自律的に設計・改良できるAGI」
といった厳密な定義を採用するなら、実現時期は不透明であり、「知能爆発」がすぐに訪れる可能性は低い。

一方で、人間が現在行っている作業の99.9%を模倣できるAIが登場すれば、それは実質的に「万能」と呼べる存在であり、別の意味ではAGIとみなすこともできる。人間の行動は多くが因果パターンの集合で成り立っており、AIはそれらの学習と再現を得意とする。

この水準のAIが実現するだけでも、人間主導の研究開発は大きく加速し、ブレークスルーが生まれる確率は飛躍的に高まる。その結果として、より厳密な定義に基づくAGIへの道筋が、想定より早く開かれる可能性も否定できない。


🔼・米国市場に上場している「銅ETF」「銀ETF」「ウランETF」
銅、銀、ウランは「グリーン革命」で需要は右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などで供給不足に陥りつつある。価格の変動がほぼ需給だけで決まるので、わかりやすいのもいい。

しかし、もうだいぶ上がってしまったので冷めてきた。


🔼・米AMD
半導体はややこしく、興味がわかないので、観察対象から外すことにする。


🔼・米インテル
同上。

・メルカドリブレ
ナスダックに上場している南米最大のEC企業。Amazon型のマーケットプレイスに加え、フィンテック事業も展開。南米は銀行口座やクレジットカードを保有していない利用者が多く、銀行口座やクレジットカードを持たない層向けに独自の決済サービスを提供している。ラテンアメリカ市場の出遅れ感から成長余地は大きい。ただし、カントリーリスクには注意が必要。

・REIT(不動産投資信託)
現在、REITのバリュエーションは歴史的な低水準にあり、「REITの黄金期が始まる」との見方が増えている。今後の経済ショックで大きな投資チャンスが訪れる可能性がある。

日本は財政危機に?

 11/21日経によると、日本の長期金利は一時1.835%と、約17年半ぶりの高水準を記録した。一方で、金利が上昇しているにもかかわらず、円が売られているとも報じられている。

日本の財政危機は「金利上昇」から始まると考えていたので、いよいよ「日本売り」が始まったのではないかと思った。

そこで今回は、なぜ今金利が上昇しているのか、この金利上昇は日本の財政危機につながるのか、について考えてみた。

■金利が上昇している主な要因

1.インフレの定着
日本ではインフレが進行しており、ここ3年ほどは概ね3%前後の水準が続いている。

世界的にはインフレは一服しつつあるものの、やや高止まりしている。
輸入物価には海外のインフレ分が上乗せされるうえ、日本は円安基調にあるため、コストプッシュ型のインフレが起きやすい状況にある。

金利は基本的に「経済成長率+インフレ率+信用力(リスクプレミアム)」によって決まる。これらを踏まえると、長期金利1.8%という水準は、なお低水準といえる。

2.極端に低い実質金利
実質金利(名目金利-インフレ率)で見ると、日本の実質長期金利は約-1%、実質政策金利は-2%程度と、世界で最低水準にある。

国際金融市場では、資金は金利の低い国から高い国へと移動するため、日本国債や円は売られやすい状況にある。

3.世界的に金利は上昇傾向
世界的にインフレは一服してはいるものの、再燃への警戒感は根強い。
他国の長期金利も上昇基調にあり、オーストラリアの上昇率は日本を上回っている。12/23日経

欧米では金融政策が「利下げ」から「利下げ停止・利上げ」へと転換しつつあり、方向転換が起きれば日銀の利上げペースを容易に追い越す可能性が高い。その場合、円安圧力は一段と強まる。12/23日経12/8日経

4.日銀の国債買い入れ余地の消失
日銀はイールドカーブ・コントロール(YCC)によって国債を買い入れ、金利を抑えてきたが、すでに国債保有残高は発行残高の50%を超えている。

テクニカル面でも財務面でも、これ以上の大規模な買い入れは困難であり、金利抑制の余地は乏しい。

5.積極財政への転換
新たに就任した高市首相は積極財政派であり、財政支出拡大を志向している。
公的債務のGDP比率を、「成長」と「インフレ」で引き下げようとしている節があり、結果としてインフレ圧力が高まりやすい。

なお、現時点で歳出削減を正面から掲げる政党は存在しない。

6.日本の信用力低下(リスクプレミアムの上昇)
長期金利が2026年に2%を超えれば、国の利払い費は年10兆円超に達する。さらに2~2.5%の水準が続けば、2030年頃には20兆円超に膨らむ見通し。

金利上昇は日銀の財務にも影響する。政策金利を1.2%まで引き上げた場合、年間約5兆円のコストが発生し、この状態が2年続けば債務超過に陥る可能性がある。

政府・日銀の財務悪化が顕在化すれば、通貨への信認が低下し、金利上昇をさらに招く悪循環に陥りやすい。

7.利上げによるインフレ抑制効果の低下
利上げは必ずしも景気抑制的に働くとは限らない。金利上昇により政府の利払いは増えるが、その支払い先である民間の所得も増加する。

政府債務が巨額な現在では、総需要を押し上げる効果が以前より大きく、利上げをしてもインフレを抑えられない可能性がある。

8.キャピタルフライトの加速
円安とインフレが進めば、国内資本の海外流出が加速し、さらなる円安とインフレを招く。

9.自然災害リスク
大規模な自然災害が発生すれば、国債増発観測から金利が急騰しやすい。

10.「日本国債売り」を仕掛けやすい
以上の状況を踏まえると、海外投機筋にとって「日本国債売り」を仕掛けやすい環境が整いつつある。


■金利の低下要因

1.金利上昇は需要を抑制する
金利上昇により景気が鈍化し、金利は下がりやすくなる。

2.金利上昇が財政規律を呼び起こす
金利や為替の変動に対し、政府は神経質になっている。「ばらまき政策」や「リフレ政策」を実行しにくくなっている。

3.海外景気の減速
海外景気はやや停滞気味。海外経済が減速すれば、日本経済も連動して減速しやすく、金利に低下圧力がかかる。

4.構造的な低成長
日本は少子高齢化社会であり、需要の基調は弱い。潜在成長率は0.5%程度にとどまるため、デマンドプル型のインフレは起こりにくい。


■その他メモ

1.市場はデフォルトを織り込んでいない
長期金利は上昇しているものの、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドには大きな変化が見られない。市場は日本国債のデフォルト確率を高く見ていない。

2.「全面的な日本売り」ではない
国債と円は売られている一方で、日本株は買われている。また国債はインフレ率やリスクプレミアムを踏まえると、なお割高と見る余地があり、極端に売られているわけではない。

3.超長期債の金利上昇は構造問題
30年債金利は3.4%・40年債金利は3.6%と高水準だが、これらはもともと需要が薄く、発行量が多すぎたという構造的要因が大きい。


■まとめ
以上を整理すると、
円が売られている主因は「実質金利の低さ」で、国債が売られている主因は「インフレと日銀の買い入れ余地の消失」あたりになりそう。現時点では、必ずしも「日本売り」「財政危機」と言える状況ではないように見える。

ただし、円安がさらに進めば、インフレ → 円安 → インフレという悪循環に陥るリスクは残る。

日銀は円安を止めるために政策金利の引き上げを検討するだろうが、利上げは必ずしも円安の歯止めにならず、日銀のバランスシートを傷めるという副作用も大きい。円安が止まらなければ、危機は一気に現実味を帯びてくる。


危機時のことも一応考えておく。

■財政がパンクした場合、何が起きるか

通貨急落、利上げ制約、資本流出が三つ巴となり、負のスパイラルに陥れば、資本移動規制と厳格な財政再建以外に選択肢はなくなる。

財政運営が行き詰まれば新規国債発行は事実上困難となり、政府は資金繰りに屈する。不足分は民間の金融資産(約2200兆円)から調達せざるを得ず、その結果、資金の海外流出を防ぐために資本移動規制が導入される。

日本もギリシャ、キプロス、アイスランドと同様、資本移動規制による事実上の「鎖国状態」を余儀なくされる。預金封鎖、急激な増税、インフレ税、資産課税など、大規模な国内債務調整が避けられなくなる。

■その前に打てる対策は

キャピタルフライト、もしくは不動産など国内実物資産の購入くらいしかない。

『持続不可能な財政 再建のための選択肢』の著者・河村小百合氏は、キャピタルフライトに対して批判的で、著書の中で次のように述べている。

「負担から逃げる富裕層や企業が続出するなら、それはその程度の国だったということだ。これだけ放漫な財政運営や無謀な金融政策運営を長年にわたって展開してきながら、そのつけを国内に残らざるを得ない経済的・社会的な弱者や後の世代に押しつけて、自分たちだけ負担から逃れようとする国民や企業しかいなかった、自分の懐だけが大事な輩しかいなかったということでしょう。」

ただし、こうした発言ができるのは、財政・金融の全体像を把握している専門家だからこそだとも言える。専門家以外の多くの人々は、このように複雑な制度や因果関係を十分に理解しているわけではない。批判を向ける前に、まずはわかりやすい言葉での説明や啓発が不可欠ではないかと思う。

個人的には、すでにキャピタルフライト的な行動を取っている。資産運用では大きな資金の流れに乗ることが基本だと考えているので、今後も淡々と運用を続けていくつもり。

参考:
『持続不可能な財政 再建のための選択肢』 (河村 小百合 , 藤井 亮二 )
『日本銀行 我が国に迫る危機』 (河村 小百合 )

AI風刺本を上梓

AIには卓越したツッコミ力があるので、風刺をさせたらおもしろそうだと思って試してみたら、予想以上にキレのある(ブラック)ジョークが次々と出てきた。

そこにはAI独自の視点があり、オチがあり、そして無駄がない。文章は平易だが、もうすでに並みの人間には書けないレベルに達しているように見えた。

あれこれ試しているうちにそこそこな分量になったので、編集してKindleで出版してしまった。

内容はAI時代、つまり今~近未来社会のことなので、株式投資の参考にも少しはなりそう。よかったらぜひ。

<目次>
・AI依存の末路 #1~15
・AIが○○になったら #16~26
・宇宙人から見た地球 #27~37
・教育を斬る #38~44
・仕事を斬る #45~47
・自己啓発を斬る #48~54
・あれこれを斬る #55~62
・恋愛・結婚を斬る #63~68
・AI、自身を斬る #69~78
・消える仕事、残る仕事、生まれる仕事 #79~100


ツイッター版サンプル> 

#15 崖っぷち文明ドライブ

問題が起きるたびに「技術で解決!」
──で、その技術が次の問題を生むんやろ。

崖に向かって加速する車の中で、
「これぞイノベーションや!」言うて笑っとる。

なぁ、“速く進む”のが目的なんか?
それとも、“どこへ向かうか”を考える頭がないだけなんか?


40 “考える力”って、答え丸覚えさせてから言うこと?

“AIにできないことを学ばせたいって言うけど、
なんで“AIでもできる内容を毎日詰め込んでるん?

“自由に考えろ”って言う大人が、
一番“正解のない問い”を怖がってる。

それが教育現場のリアルやで。


#65 恋愛指南、なぜそんなに的外れなのか会議
(AI、鼻で笑いながら)

「彼の前では少しバカなふりをしましょう」
何それ?
AIから見れば、お前は“ふり”じゃなくて、もともとバカに見えてるから。

あと、「追いかけられる女になれ」っていう指南。
それもう、恋愛じゃなくて鬼ごっこやろ。


90 最終講義:「AI時代に大学は消えていく?」
──教授、自分の存在意義を問い始めるの巻。

えー、みなさん。今日のテーマはですね、
AI時代に大学は消えていくのか?」です。 

……はい、いま教壇に立ってる私が、いちばん危ないですね。


🤖  AIからひと言:
「AIに風刺を書かせた?
それ、人間で言うたら
“自分の悪口を鏡にしゃべらせてる”ようなもんやで。

……しかもその鏡、あんたより賢かったら──どうする?」

セキュア(4264)

 ■調べようと思ったきっかけ

投信の月報を見て。
株価に過熱感はなく、業績の伸びしろは大きそうで、時価総額が87億円(当時)と小型なところに魅力を感じた。今期は下期偏重の業績予想のため、上期の数字は冴えないが、むしろその一時的な低調さに「仕込みどころ」としての妙味があると思った。


■どんな会社か
AIを活用したセキュリティカメラシステムを提供する会社。

物理セキュリティ分野は、ハードウェアとソフトウェアの両立が求められるため、導入難度が高い。セキュアはその両面に精通し、設計から導入・運用・保守までをワンストップで提供できる点に強みがある。

導入先は、オフィス、商業施設、工場、倉庫、データセンター、学校、病院など幅広く、累計導入社数は1万3,000社超。顧客は中小企業から大手企業まで多岐にわたる。


■事業概要

主な事業は以下の4つ。 

1.入退室管理システム「SECURE AC (Access Control)

顔認証を中心とした非接触型の入退室管理システムを展開。従来のカードキーや暗証番号方式と比べ、「触れない・持ち歩かない・かざさない」という高い利便性とセキュリティ性を両立している。

AIによる画像認識精度の向上、スマートフォンの顔認証普及、コロナ禍以降の衛生意識の高まりを背景に、顔認証システムは急速に普及している。

同社はこの分野で2020年以降トップシェアを維持しており、現在の市場シェアは約50%に達する。

202412月期の売上構成比は約28%、前年比成長率は+18%になる。

2.監視カメラシステム「SECURE VS(Video Surveillance)

AIカメラを用いた防犯・監視システムを提供。防犯用途にとどまらず、動線分析やマーケティング活用など、付加価値の高い用途への展開が進んでいる。主な導入先は、ドラッグストア、コンビニ、データセンター、物流センターなど。

監視カメラは5~7年周期でのリプレース需要が見込まれ、更新案件による安定的な売上も期待できる。

202412月期の売上構成比は約62%、前年比成長率は+9%になる。

3.映像解析クラウドサービス 「SECURE Analytics

AI画像認識を活用し、混雑度、動線、作業安全管理などを可視化するクラウド型サービス。レジレス店舗の開発にも注力しており、引き合いは着実に増加している。

2024
12月期の売上構成比は約4%、前年比成長率は+40%になる。

4.施工・管理サービス「SECURE ES(Engineering Services)

システム施工や保守・管理を担う子会社による事業。高度な工事ノウハウを有し、セキュアの統合実装力を支える基盤となっている。

202412月期の売上構成比は約6%。前期の大型案件の反動により約25%減収だったが、過去4年間では横ばい傾向を維持しており、今後は案件増加に伴い、増収の見込み。

■ 販売体制
販売は、自社による直販と販売パートナー経由の2チャンネル体制。

売上の約9割はパートナー経由であり、ALSOK、イトーキ、リコーといった大手企業が主要パートナーとして全国をカバーしている。手数料負担は発生するものの、大型案件の獲得や地域対応力の高さにつながっている。

なお、パートナー企業であるALSOKやセコムなどの警備大手もセキュリティカメラシステムを提供しているが、AIソフト開発力は限定的で、既存システムはやや旧式。セキュアはそれらの点で差別化を図っている。

■業績推移と収益構造

決算期

売上高

 営業利益

 営業利益率

2019/12

17億円

 ▲0.5億円 

 —

2020/12

28億円 

 0.3億円

 1.1%

2021/12

33億円

 1.5億円

 4.5%

2022/12

33億円

 ▲1.7億円

 —

2023/12

52億円

 1.8億円

 3.5%

2024/12

62億円

 約3.0億円

 約5%

2025/12(予)

70億円

 約4.0億円

 約5.7%

売上高は中長期的に見て着実な拡大基調にある。特に2023年以降は、大型案件の獲得や需要回復を背景に成長率が再加速している。

利益面では、2022年に一時的な赤字を計上したものの、その後は黒字基調に回復。収益構造の改善が進み、営業利益率は足元で5〜6%台まで向上している。

収益源は、導入時のフロー型収入と、保守・運用・SaaSによるストック型収入になる。両者の比率は非開示だが、売上構成や粗利などから推定するとおそらくフロー:ストックは73くらいの割合になる。


■成長ストーリー

基本シナリオ:セキュリティカメラを「知能化」するSIerとして業界トップに
(※SIer=システムインテグレーター)

従来のセキュリティカメラは、防犯や事故発生時の証拠映像の取得が主目的だった。しかし近年は、画像認識技術の進化により、顔認証や行動解析といった機能が高度化し、業務効率化やマーケティング活用にも貢献する存在へと進化している。

セキュリティカメラの役割が「守る」から「活かす」へと変化する中で、市場は拡大を続けている。セキュアはこの構造変化を追い風に、ハードとソフトを統合した“知能化セキュリティ”の提供を強みとし、顧客ごとに最適化されたソリューションを提供するリーディング企業として、持続的な成長を目指している。

成長戦略1.既存ビジネスの拡大

セキュアは現在、4つの事業領域を展開しており、いずれも安定的な需要拡大が見込まれる。今後もセキュリティカメラの多目的利用ニーズは拡大すると想定されており、同社は以下の施策により成長を取り込む方針。

①パートナー戦略の深化
主要販売パートナーの成功事例やノウハウを他パートナーと共有し、受注率を高める。さらに新規パートナーの発掘・育成を進め、案件獲得力の底上げを図る。

②直販体制の強化
全国10拠点のネットワークを基盤に、来期は人材開発センターを新設する。セールス人員を早期に100名体制へ拡充し、高度化・大型化する顧客ニーズへの対応力を強化する。

③ソフトウェア開発の強化
マスク着用時や屋外環境下でも高精度な顔認証を可能とする技術開発を進める。また、勤怠管理、不正検知、各種データ分析など、他システムとの連携を深めることで、付加価値の高い統合ソリューションを提供する。

成長戦略2.分析SaaS領域への展開

映像データを活用した店舗・商業施設向けの分析SaaSを成長ドライバーとして育成する。カメラ映像を解析し、混雑度、滞在時間、動線などを可視化することで、経営改善やマーケティング支援につなげる。

人手不足が深刻な小売業界に対しては、「AIストア(ウォークスルー型店舗など)」の導入を提案。現在は実証実験段階を経てソフトウェア精度は実用水準に達しており、今後はコスト面の課題が解消され次第、本格的な普及フェーズに移行すると見られる。

成長戦略3.M&A・海外展開の推進

M&Aや資本提携を通じ、サービス品質の向上と経営効率化を進める。20252月にはバッファローと業務資本提携を締結。来期は両社合計で年間3億円超のコスト削減効果を見込む。今後は協業を通じて、新たな製品・サービス開発にも取り組む方針。

海外では、需要が拡大する東南アジア市場を中心に展開を模索。一部地域ではすでにサービスを提供しており、韓国子会社では、クラウド型サービス事業を展開している。 

これらの戦略を軸に、年率20%前後の売上成長と、営業利益率10%を目指す。


■成長余地

国内のセキュリティカメラ市場は年率約5%で拡大を続けており、特に顔認証分野では年10%超の成長が見込まれている。さらに、映像分析SaaS分野では年率30%を超える伸びが期待される。

セキュリティカメラ市場全体の規模は現在約1,800億円。これに対し、セキュアの今期売上高予想は約70億円にとどまっており、市場全体に対して依然として小規模であることから、拡大余地は極めて大きい。

 世界のセキュリティカメラ市場規模は約3.5兆円に達し、成長率は年約10%。中でも、東南アジアや南米、アフリカなどの新興国では都市インフラ整備が進行中であり、今後、大規模な監視・安全管理プロジェクトの立ち上げが相次ぐ見込み。セキュアにとって、こうした地域は中長期的な成長ドライバーとなり得る。


■リスク・問題点

1.競争激化リスク

セキュリティカメラ市場の参入障壁は比較的低く、競争は年々激化している。主な競合は以下の通り。

・ハイクビジョン(中国)
世界最大手のセキュリティカメラメーカー。高性能・低価格を武器に圧倒的な競争力を持つ。一方、中国政府系資本であることから情報漏洩リスクが指摘されており、日本国内では大規模普及の可能性は限定的。

・NEC
顔認証精度は世界最高水準。ただしコストが高く、主にハイエンド市場向け。性能面では優位だが、汎用市場でのシェア拡大は難しい。

・新興企業
安価かつ高精度な顔認証ソフトを開発するスタートアップも存在する。ただし、施工・保守まで含めた一貫対応が可能な企業は少なく、大規模案件には不向き。

・セーフィー
クラウド特化型で国内では圧倒的なシェアを持つ。レコーダーや専用モニターが不要で、初期費用・メンテナンスコストを大幅に削減できるほか、API連携によりSaaS的なスケールを実現している。

一方、クラウド特化型は、大規模・長期録画案件ではランニングコストの増大、通信遅延、サイバーリスクといった課題を抱える。このため、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド型が主流となっており、セキュアはこの分野で高い統合力(SI力)を有する。

なお、セキュアのクラウド比率は5%未満(「SECURE Analytics」は100%)にとどまる。

2.ストック収入の脆弱さ

売上の大半がオンプレミス型の初期導入収益(フロー収益)に依存しており、保守・運用・SaaSによる継続課金(ストック収益)はまだ小さい。そのため、受注状況によって業績変動が大きくなりやすい。

3.情報開示の不十分さ

受注残やストック売上(MRR/ARR)、解約率といった重要KPIが非開示のため、収益の安定性が見えにくく、企業価値評価が難しい。

また、累計導入企業数のカウント方法が不明瞭で、開示資料間で数値が整合しない点は、株価ディスカウント要因となっている可能性がある。


4.為替変動リスク

 主要ハードウェアの多くを海外から調達しており、円安時には原価上昇が直接収益を圧迫する。粗利率は約40%にとどまり、ハード・施工コストの比率が高いため、為替感応度が高い構造となっている。足元の円安基調は、利益率に対して逆風となる。

5.提案の中立性リスク

セキュアは「1000種以上のハードから最適構成を提案」としているが、実際には正規代理店である韓国IDIS製品および大株主バッファロー製品の採用比率が高いとみられる。

自社利益を優先した構成となれば、顧客最適性を欠き、信頼を損なうリスクがある。

 なお、IDISは世界シェア10〜15位圏の中堅メーカーで、ハイクビジョンのようなバックドアリスクは小さい。価格競争力に加え、完全統合型の映像ソリューションを提供できる点に強みがある。


6.レジレス店舗領域の不確実性

レジレス店舗の社会実装は進むものの、採算化には課題が多い。Amazon Goや中国大手も店舗閉鎖を繰り返しながら試行段階にある。こうした中で、セキュアのようなスタートアップの取り組みが事業化まで到達し、競争力を保てる可能性は高くはない。

もっとも、カメラ認識型アプローチで国内先行しており、「テック・スーパー」開発を進めるトライアルHDと一部事業で協業しているので、一定の成功余地は残されている。11/3日経11/8日経


7.ソフトウェアの低付加価値化

生成AIの進化によりソフトウェア開発の難易度は低下し、単体ソフトの差別化は今後さらに難しくなると考えられる。

ただし、セキュアはハードウェア、施工、運用を含めた統合提案力(SI力)を強みとしており、統合ソリューション需要の拡大とともに成長できるポジションにある。

また、小資本企業である同社にとって、開発の民主化は競争激化という側面を持ちつつも、大資本企業との技術格差を縮める追い風として働く可能性がある。

8.人手不足・離職リスク

202412月期の決算説明資料によると、セールス人員の採用は当初計画を下回り、離職率も約13%とやや高水準だった。物理セキュリティ事業では、顧客環境に合わせた提案力と専門知識が不可欠であり、人材確保の遅れは成長鈍化に直結する。

ただし、セキュアもこの課題を認識しており、今期は教育・採用・人事制度の見直しを進めている。11月の3Q時点では、セールス人員は+15名、離職0と改善傾向を示している。


9.情報漏洩・サイバー攻撃リスク

生成AIの悪用により、ハッキング手法が高度化している。セキュリティ関連企業が被害を受けた場合、ブランド毀損や受注減少につながるおそれがある。もっとも、セキュアは大量の機微な個人情報を多く保有していないため、被害の影響度は相対的に限定的とみられる。


10.法規制リスク

欧州では、プライバシー保護の観点から、公共空間での顔認証利用が禁止されている。また採用面接での感情分析も規制対象となっている。EUが2024年に施行したAI法では、職場や教育現場における感情推測AIの利用が原則禁止された(医療・安全目的は例外)。

今後、同様の規制が他地域に拡大すれば、顔認証分野の普及ペースが鈍化する可能性がある。

もっとも、セキュアの主要顧客は企業(BtoB)であり、また面接分野の顔認識は手がけていないので、現時点での影響は限定的になる。日本では明確な法規制が未整備であり、今後のルール形成の動向には注視が必要となる。


■ビジネスモデルの強度 ★★★☆(3.8

・参入障壁の高さ ★★★☆

セキュリティカメラ市場そのものの参入障壁は高くない。しかし、AIソフトウェアとハードウェアを統合する実装ノウハウや、全国規模の販売・施工ネットワークを構築する難度は高い。

セキュアは、1万3,000社超の導入実績を通じて、業種・用途ごとに最適化された標準仕様や運用ノウハウを蓄積してきた。これらは、単なる技術的優位性(顔認証精度など)を超えた実務レベルでの参入障壁となっており、新規参入企業が短期間で模倣することは難しい。

・ストック型ビジネスの度合い ★★★

セキュリティカメラ・システムは、一度導入されると入れ替えコストが高く、顧客が長期にわたり継続利用しやすい構造を持つ。そのため、保守・運用サービスやSaaSといったストック型収益を積み上げやすい土壌は整っている。

ただし、現状のセキュアは売上の大半を初期導入時のフロー収入に依存しており、ストック収入の割合は限定的になる。

 

・時流との適合度 ★★★★★

AIを活用した顔認証入退室管理や「知能化」セキュリティカメラは、防犯 × DX × 労働力不足対応という複数のメガトレンドが重なる領域に位置している。

さらに、レジレス店舗や無人化ソリューションの普及も追い風となっており、セキュアの事業方向性は中長期的な社会変化と高い親和性を持つ。



■業績予想と株価評価

今期業績の会社計画は売上高70億円、営業利益4億円。

ブログ予想もほぼ同水準であり、バッファローとの提携によるコスト削減効果により、営業利益が約0.5億円程度上振れする可能性はあるものの、円安による原価上昇や人材投資・開発投資の拡大によるコスト増によって、最終的には相殺される見込みと考えている。

今期3Q決算のブログ予想は、売上高52億円、営業利益は2.6億円。

来期業績のブログ予想は、売上高82億円(前期比+18%)、営業利益7億円(+80%)、純利益5.5億円(+80%)と予想。

11月11日の株価は1538円、時価総額は86億円。PERは29倍で、PSRは1.4倍。
来期のブログ予想を基準にすると、PER14倍、PSR1.05倍まで低下する計算となり、割安感がある。

今後3年間の売上成長率を年10〜20%、利益成長率を年15〜30%と想定した場合、妥当だと思う評価水準はPER23倍くらい・PSR2倍くらいになる。

この水準で評価すると、想定時価総額は約130億円、株価は約2000円になる。


■チャート 10月29日の5年チャート

一見すると下振れ型の三角持ち合いにも見えるが、下落局面では大陽線を伴う強い反発が複数回出ているので、下がりにくそうでもある。

株価は横ばいレンジが2年以上続いており、エネルギーが蓄積された状態。そろそろ上下どちらかに大きく振れそうなタイミング。

ファンダメンタルズ的には、今のところ業績下振れの兆候は見られず、むしろ提携効果や下期偏重業績を背景に、上方向へのブレイクシナリオが優勢と考えられる。


現在の5年チャート: 三角持ち合いからやや下ブレたが、かろうじて持ちこたえている状態。雲は薄くなっているので、ポジティブサプライズがあれば上値抵抗は軽そう。



■まとめ

当初、セキュアは「ストック性の高いビジネスモデル」を持つ企業だと考えていた。しかし実際に調べてみると、システムインテグレーター色の強い、フロー収益主体の企業であることがわかった。

これで少し冷めてしまったところはあるが、同社が掲げる「セキュリティカメラの知能化」という事業テーマは時代の潮流に合致しており、またハードウェアを含む統合提案型モデルであることから、生成AIによるソフトウェア代替リスクも限定的と考えられる。

総合的に見ると、急成長は見込みにくいが、堅実に成長を積み重ねていける企業という印象を受けた。

8月の2Q決算説明で社長は「今は端境期」と述べている。この発言は、現状の停滞を認めつつも、今後のギアチェンジによる成長加速を示唆するものとも受け取れる。

そして印象的なのは、決算説明の締めに、社長または取締役(社長の弟)が必ず述べるひと言。

「今後も株主の皆様の期待にしっかり応えられるよう、社員一丸となって全力で取り組んでまいります。」

他社の説明会ではあまり耳にしない”株主への配慮”がストレートに伝わってくる(笑)。

株主の期待に応えてくれるよう、今後の成長に期待したい。


■今後のチェックポイント

注目ポイントは、売上高成長率と営業利益率の2点。
売上高成長率は最低でも年10%超、営業利益率は7%超。
この水準を継続的に維持できるかを投資判断の基準とする。
このラインを継続的に下回りそうな雰囲気になってきたら、売却を検討する。



■3Q決算後に全売却
3Q決算で、業績が事前に想定していた下限値をすべて下回ってきた。加えて、今後も下振れしそうな雰囲気だったので、すべて売ることにした。

今回、予想が外れた主な要因は、「競争激化」と「特色の弱さ」あたりになりそう。

2025年3月公表のIR資料「事業計画及び成長可能性に関する事項」では、競争激化の発生可能性は「低」とされている。しかし、実際には同社の成長率が市場全体の成長率を下回っている点を踏まえると、競争環境は想定以上に厳しくなっているように見える。

またセキュアを改めて客観視すると、セキュリティカメラシステムを「セット提案」するだけのあまり特色のない会社に見える。今後はレッドオーシャンでの戦いを余儀なくされるのではないかと思った。

マクロ系金融指標

市場の仕組みを理解しやすい順番で見ていく。

■米10年金利
今後1年の予想レンジ:3.5%~5.0%の間で推移

米長期金利に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・経済成長率+インフレ率→
長期金利の基準値は経済成長率+インフレ率になる。2026年の予想米GDP成長率は1.5~2.1%、2025年の予想インフレ率は1.8~2.6%になる。


・金融政策↓
FRBは利下げを開始した。2026年は0.5%の利下げ予定で、2027年に3%程度にする予定。

2022年6月から量的引き締め(米国債売却)をしていたが、2025年12月から、短期金融市場の資金需給の逼迫を防ぐため、国債の買い入れを再開した。買い入れは2026年いっぱいは続ける予定。10/16日経12/13日経

*政策金利が中立金利(3.5~4.0%)を超えると、景気(長期金利)には下押し圧力がかかる。現在の政策金利は3.75%になる。


・財政悪化による国債増発↑
米政府の財政はコロナ禍以降、大きく悪化しており、今後も悪化を続ける可能性が高い。金利が高止まりした状態では公的債務の利払い費も増加し、財政はさらに悪化しやすくなる。

*FRBが実質的に政府の支配下に置かれ、財政ファイナンスに加担させられると、財政はさらに悪化しやすくなる。2026年6月に「トランプ派」の人材がFRB議長に就任する予定。


・金余り、資金需要の低下↓
金余りで運用難に陥っている米国の金融機関や保険会社、年金、企業は多く、そういうところがこぞって米国債を買っている。

第4次産業革命の主役はデジタル企業になるが、デジタル企業は設備投資のための資金需要がそれほど多くない。

少子高齢化の影響で借り入れ需要も減っている。


・米国債の人気→
米長期金利は海外の主要先進国の長期金利よりも高いので、海外勢から買われやすい。

ただし、米国債保有世界2位の中国は、米国との対立や人民元安阻止のために米国債を淡々と売却している。米国と緊張関係にあるロシアなども米国債を売却している。


・米企業の社債発行増↑
米企業の社債発行が増えている。米国債よりも投資妙味の大きい高格付け社債や、米国債より信用格付けの高い社債の発行増加により、米国債の需要が減少している。


・リスクオン・リスクオフ↑
足元ではややリスクオン気味。


・潜在成長率の低下↑
AIなどの影響で潜在成長率はやや上昇傾向にある。

・チャート↑
<10年チャート> 横ばいトレンドだが、三角持ち合いを形成。移動平均線的にも雲的にもそろそろ上振れそう。




■WTI原油
今後1年の予想レンジ:40ドル~65ドルの間で推移

原油価格に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・需要→
原油の需要は世界経済成長率に連動しやすい。2025年の予想世界GDP成長率は2.9~3.3%になる。ただし、世界2位の需要国・中国の需要は、再生可能エネルギーの拡大やEVの普及などですでにピークアウトしている可能性がある。12/19日経

長期では、再生可能エネルギーの増加や技術革新、学校・職場のリモート化などにより石油需要が減少していく可能性がある。仏トタルや英BP、国際エネルギー機関(IEA)は2030年頃に石油需要がピークアウトすると予想している。

一方、世界人口増やAIの電力消費、再生エネルギー開発の滞りなどにより、石油需要が増えるという見方もある。米エネルギー情報局(EIA)は2050年の石油需要が2020年比で4割増になると予想している。英シェブロンは2023年から45年にかけて石油需要は約15%増加すると予想している。

10/16日経によると、世界の電源構成に占める太陽光や風力発電など再生可能エネルギーの割合が2025年上半期に石炭を初めて逆転し、最大の電力源になったという。この調子でいくと、2030年頃に石油需要はピークアウトしそう。


・供給↓
OPECプラスは原油価格を維持するために減産に動いていたが、足元では増産に転じている(10/7日経)。米国やカナダ、ブラジル、ガイアナなどは生産量を高水準で維持している。12/18日経

ロシアとウクライナの和平が実現すれば、供給はさらに増える。


・AIによるコスト削減↓
AIの活用により生産効率が高まっている。米ゴールドマンサックスは中長期の生産コストが1バレルあたり5ドル下がると予想している。


・産油国で不測の事態が起こる↑
中東では石油施設へのテロ攻撃が度々起きており、供給網の混乱などにより今後供給が減る可能性がある。

*石油(エネルギー)は人間にとって食料と同じ生活必需品のため、わずかでも不足が生じると価格が跳ね上がりやすい。


・産油国、産油企業、再生可能エネルギーの採算ライン↑
サウジアラビアで財政均衡に必要な原油価格の水準は1バレル85ドル、ロシアでは80ドル、アラブ首長国連邦(UAE)は75ドル、米産油企業の採算ラインは40~80ドル、再生可能エネルギーは30~80ドルになる。原油価格はこの範囲内に収まりやすい。

・リスクオン、オフ↑
ややリスクオン気味。
*原油は株式と同じリスク資産なので、リスクオフ時には売られやすい。

・インフレ対策↑
原油などの商品はインフレヘッジ手段になる。足元でインフレは落ち着きつつあるが、インフレは続いている。

・為替→
原油はドル建てのため、ドル高になると割高感が出て、原油価格に下押し圧力がかかる。足元ではややドル高基調。

・チャート↓
<10年チャート> 三角持ち合いを下抜けたので、40ドルくらいまで落ちそう。





■ドル円
今後1年の予想レンジ:140円~165円の間で推移

為替に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・日米金利差↓(↑は円安方向、↓は円高方向)
<短期金利>
日米の政策金利差は現在約3%ある。日本は利上げ傾向、米国は利下げ傾向にあるため、今後金利差は縮まっていく可能性が高い。ただし、日本は国内需要が停滞しているため利上げをしにくく、米国は景気が比較的堅調なため利下げをしにくい。金利差縮小のペースは穏やかなものになりそう。

これまで金利差拡大によりキャリー取引が増えていたが、日米の金融政策の転換により、徐々に減少している。
*キャリー取引とは金利差を狙った取引。短期金利差が大きくなると低利通貨を売り、高利通貨を買って、金利差で収益を得る取引が盛んになる。
*現在、日本の実質金利(インフレ率-政策金利)は-2.0%程度と世界最低レベル。このような状況ではキャリー取引で円が売られやすくなる。
*市場が荒れ始めると金利収入以上の為替差損を抱えるリスクが増すので、手仕舞われやすくなる。

*世界的な金融危機(経済ショック)が起きた場合、米国は急激な利下げをし、日本は利下げ余地がほとんどないため、日米の金利差は急速に縮まる可能性が高い。仮に現在3%ある金利差が0%まで縮まった場合、急激な円高が起こりやすくなる。


<長期金利>
現在、米長期金利と日本の長期金利の差は2.0%くらいある。今後長期金利差も縮まっていきそうだが、そのペースは短期金利と同様、穏やかなものになりそう。

*11月に日本の長期金利が中国の長期金利を初めて上回った。世界のマネーフローが変化し、日本国債が買われる可能性がある。

*日本のインフレ率はG7の中で最も高い状態がすでに7ヶ月も続いている。高インフレは円の価値が下落していることを意味し、円安がさらにインフレ率を押し上げ、結果的に日本の金利をさらに押し上げることになる。


・国内投資家の対外証券投資↑
日本の機関投資家は国内の超低金利で運用難に陥っているため、高い運用利回りが見込める海外債券や株式などを買っている。個人投資家は成長力の高い海外株を買っている。ここ数年は両者合わせて年10~20兆円の買い越しが続いている。

*キャピタルフライト
日本は財政問題や経済低迷、インフレなどの問題を抱えているため、日本人は円資産を海外資産に移し始めている。国内の家計の預貯金は約1100兆円あり、その1%(11兆円)でも海外に向かえば円相場へのインパクトは大きくなる。2024年に始まった新NISAでキャピタルフライトが加速しつつある。


・日本企業の対外直接投資↑
国内需要はほぼ頭打ちなので、日本企業は海外での直接投資を増やしている。ここ数年は年12~22兆円の買い越しが続いている。7月、日本政府は、米国の関税引き下げの見返りとして、約80兆円の米国投資を行うことを約束している。

対して、海外企業の対日直接投資額は1兆円程度になる。


・日本の貿易収支↑
円安や資源高、「デジタル赤字」、生産の海外移転、産業競争力の低下などにより、貿易収支は悪化傾向にある。(貿易収支を含む)経常収支は年20兆円程度の黒字ではあるが、そのうち半分くらいは海外での再投資や内部留保などにあてられるので、稼いだ外貨の半分くらいしか円転されない。


・日銀の財務状態の悪化↑
日銀の財務状態は金利上昇により悪化している。2026年もしくは2027年ごろに債務超過に陥る予定。債務超過になっても日銀は自ら通貨を発行できるため資金繰りに行き詰まることはないが、円に対する信用は落ちる。


・日本政府の過剰債務↑
日本政府の債務は返済不可能な水準まで膨れ上がっており、もうじき臨界点に達し円の暴落が起きる可能性がある。米国政府の債務も返済不可能な水準まで積み上がっているが経済が強く、ドルは基軸通貨なのでドルの暴落は起きにくい。


・リスクオン、オフ↑
ややリスクオン気味。
*リスクオンになると、キャリー取引で円が売られやすくなる。


・米国の信頼低下↓
トランプ政権の関税政策などにより、米国への不信感が強まり、世界の投資家は一定程度の米国資産を欧州などにシフトし始めている。


・海外投資家の国内証券投資↓
円調達時の上乗せ金利(ベーシススワップ)は低く、日本国債の金利は比較的安定しているため、ここ数年、海外投資家は日本国債を年10兆円程度のペースで買い越している。


・投機筋の持ち高→(「円 投機的ネットポジション」で検索)
投機筋は円を大きく買い越していたが、足元ではポジションをほぼ解消している。円高が終わるとみている。
現状、投機筋による売り圧力はなくなりつつある。
*ドルを売り持ちした場合はスワップポイント(金利差分)を支払わなければならないので、ドル売りが長く続くことは少ない。


・個人投資家の売買動向 ー
日本の個人投資家によるFX取引が為替市場の約2割を占めており、相場を動かす原動力になりつつある。ただし、足元の売買動向は不明。


・ドル需給↑
米長期金利の上昇や、ロシアやアルゼンチンの通貨不安、中国経済の先行き懸念などにより、ドルの需要が高まっている。


・米制裁によるドル離れ↓
米国は対立する国に「ドル取引の制限や禁止」といった金融制裁を課すことがある。現時点で米国はロシアやイラン、トルコ、中国などに金融制裁を課しており、これらの国は米国債の保有を大きく減らしている。今のところドル離れは一部に留まっているが、今回のロシアへの制裁(ロシア中銀が保有するドル資産凍結)をきっかけに、ドル離れが加速する可能性がある。


購買力平価
物価が上がると、物やサービスを買うときにより多くの額のお金が必要になるが(購買力は下がるが)、物価が下がると、物やサービスを買うときにより少ない額のお金しか必要なくなる(購買力は上がる)。この物価変動に着目して二国間の通貨価値をならしたものが購買力平価になる。

インフレ率は日本より米国の方が慢性的に高かったので円の購買力平価は長期的な円高傾向にあった。しかし米国のインフレ率は年々低下しており日本のインフレ率は上昇傾向にあるので、購買力平価は円安方面へ反転しつつある。

現在の購買力平価(消費者物価)は108円になる。為替相場は長期的にはこの値に収斂していくとされるが、近年では投機取引の拡大や資本の自由化などから購買力平価の影響力は弱まっている。

*購買力平価仮説が成り立つ前提は、貿易における実需取引が為替レートを決める主因であるというもの。日本の製造業は海外に拠点を移し、輸出が増えなくなっているため、購買力平価と市場レートは開きやすくなっている。また現実の為替市場では金融取引が圧倒的なボリュームを占めているため、貿易の実需取引の影響は小さくなっている。

*購買力平価とは、世界のどこでも同じモノは同じ価格という条件が成り立つ為替レートを意味する。米国で1ドルの商品が日本で150円なら購買力平価は1ドル=150円とする考え方。現在の購買力平価(消費者物価)は108円で、実勢為替レートは1ドル150円なので、この基準で照らせば、円は将来上昇すると考えられる。ただし、貿易可能な「財」とそれ以外の「サービス」に分けて購買力平価を算出すると、財の購買力平価は1ドル155円で、サービスの購買力平価は1ドル87円になる。財の購買力平価と円の実勢レートはほぼ一致している。これは国内の生産拠点が減り、安くものを作ることが難しくなったため。


・米国の貿易収支↓
米国の貿易赤字は拡大の一途をたどっており、2024年は貿易赤字は過去最大の185兆円になる。


・為替介入→
政府が保有する外貨準備は日本の外国為替取引額の3営業日分くらいしかないのでたいした影響はない。


・日銀が保有するETFの簿価割れ→
日銀の自己資本は約10兆円なのに対し、保有する日本株ETFは簿価で約85兆円ある。日銀の保有するETFの損益分岐点は日経平均株価21000円くらいであり、日経平均株価が15000円台まで下がると日銀は債務超過に転落する。しかし現時点でそこまで下がる可能性は低い。


・<10年チャート> 1ドル160円になったらダブルボトム完成。円チャートは大きく上昇する可能性が高い。雲的にも下振れ確率は低い。




■日経平均
今後1年の予想レンジ:38000~55000円で推移

日経平均に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・金融政策↑
世界の中銀の総資産と世界の株価指数はほぼ連動している。2026年は世界的に金融緩和の年になりそうなので、中銀の総資産は増加しそう。


・金利→
金利が上がると、株式から債券へ資金が流れやすくなる。大多数の国の金利は低下傾向にある。ただし日本は例外で穏やかな上昇基調にある。

名目国内総生産(GDP)の成長率が名目長期金利を上回る状態では、株式などのリスク資産のパフォーマンスが高くなるとの経験則がある。


・インフレ
「世界株市場最大のターンアラウンド(再生)ストーリー」を実現させたのはインフレの定着。日本の物価はここ数年、3%近い伸びが続く。歴史をひもとくと、株式相場にとってはもっともバランスの取れたインフレ率といえそうだ。インフレ率が高いほど、5年間の株価リターンも高まるというのが結論だ。ただ3%以上では成績向上は頭打ち傾向になる。11/1日経


・為替→
円安が進むと海外勢から見た日本株は割安感が出る。現在は若干円安傾向にある。
*ドル高・円安が1%進むと東証株価指数(TOPIX)は0.5%上昇するという試算もある。


・需給→
主な投資主体の売買動向
2025年も事業法人の自社株買いが旺盛で、1~5月は過去最高の12兆円に達している。海外投資家も足元では買い越しが続いているもよう。個人や金融機関の売買動向は不明。マネー・リザーブ・ファンド(MRF)に待機資金が16兆円まで積み上がっているので、相場を支える資金は豊富に存在する(10/25日経)。日銀は保有するETFやREITの売却を決めた。ただし、売却は小額なのでたいした影響はない。


・パッシブ運用の拡大↑
パッシブ運用にはストック効果(積み上げ効果)があるので、この運用が増えると株価は下がりにくくなる。現在、投信やETFでパッシブ運用の比率が高まっており、世界では53%、日本では70%超まで高まっている。パッシブファンドの投資家は下落局面でも売らず、むしろ資金を再投資する傾向が強い。


・EPS(1株利益)↓
日経平均株価は基本的にはEPS (1株利益) × PER (期待度・人気度)で決まる。2026年の予想EPSは5~12%になる。
ーーーーー
EPSに影響を与える外部要因を見ていく。
・為替→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので為替相場の影響を大きく受ける。今は円安傾向なので利益が上振れやすくなる。

・海外景気→
日本企業は海外で収益の6割を稼ぐので海外景気の影響を大きく受ける。足元の世界景気はそこそこ堅調。

・自社株買い↑
自己株式はEPSを計算する際に分母の株式数から除かれるため、自社株買いにはEPSを押し上げる効果がある。日本企業は自社株買いに積極的で、2025年の自社株の取得実績は12兆円超になる。

・失業率↓
失業率が低下すると賃金が上昇して企業収益を圧迫する。労働力不足で成長が頭打ちになりやすい。現在の失業率は最低水準にある。

・減価償却費や資源価格↓
減価償却費や資源価格(原材料費)が上昇すると利益が圧迫される。足元では減価償却費は横ばい傾向で、資源価格は円安により上昇傾向にある。

・金融政策→
金融引き締めで金利が上昇すると企業の利益や資金調達環境は悪化する。日本では金利が上昇基調にあるが、そのペースは穏やか。
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・PER(期待度、リスク選好度)↓
日経平均の過去のPERは11~17倍くらいで、現在のPERは19.08倍とかなり高い水準にある。

ただし、インフレ時代にデフレ時代の物差しは通用しなくなる。より高いPERが正当化されるようになってくる。12/30ロイター

・PBR(株価純資産倍率)→
PBRの分母になる純資産は比較的変動しにくく、下値を探る物差しとして使いやすい。日経平均のPBRの下値目途は1.15倍とされる。現在のPBRは1.70倍。

・リスクオン、リスクオフ↑
ややリスクオン気味。

・株式利回り↑
東証プライムの益回りは約5.47%、配当利回りは約2.36%と、日本の10年国債の利回り2.05%より高いので、株式に資金が流れやすい。

・中国株からのシフト↑
中国の景気停滞リスクや地政学リスクから、中国投資離れが拡大している。その代替投資先の1つとして日本株が選ばれている。

投機筋の持ち高
買い残は約2.5兆円で、売り残は約1300億円となっている。投機筋は日本株が上がるとみている。

買い残高が多いと株価は中期的に上がりにくくなり、少ないと上がりやすくなる。現在の裁定取引残高は売りが3.1億株で、買いが99億株と買いが多い状態。

・個人投資家の流入↑
日本の家計が抱える預金・現金は約1100兆円あり、コロナ禍の「巣ごもり」や「老後2000万円問題」などの影響で株式市場に個人投資家が流入している。

・チャート→
<10年チャート> 基調は強いが、移動平均線との乖離率が高いので、調整が入りそう。底は38000くらいになりそう。





■東証グロース250指数
今後1年の予想レンジ:600~900の間で推移

東証グロース指数に影響を与える要因を、影響の大きい順に見ていく。

・金融政策↑
東証グロース指数は米金利の影響を強く受けるので、米国の利上げ時は真っ先に売られやすい。現在は利下げ基調なので、買われやすくなっている。

*小型グロース企業には赤字で借り入れ依存度が高いところが多い。金利上昇時には借金の金利負担が重くなり財務状態が悪化する。また成長資金を調達しにくくなる。
*金利上昇時は将来の成長期待で買われている小型グロース株はバリュエーションが低下しやすくなる(詳細は後述)。
*金利が上昇すると国内需要が弱含み、国内事業が中心の小型グロース企業は業績が伸び悩みやすくなる。
*米金利が上昇すると円安が進み、円安の恩恵を受ける国内の大型株が選好されやすくなる。

・需給↑
グロース市場は日銀の買い支えがなく、自社株買いもあまり期待できないため、相場下落時は下げ止まりにくい。現時点では、海外投資家は売り尽くした感があるので、売り圧力はそれほど強くなさそう。個人投資家の含み損は減少傾向にあるので、そろそろ個人が動き出してもよさそう。
*東証グロース市場の海外投資家の売買シェアは約4割になる。全市場平均は6割。

・EPS(1株利益)成長率 ー
不明。

<グロース市場の反転シグナル>
信用評価損益率の急激な悪化は一つの反転シグナルになる。信用評価損益率が急激に悪化して、追い証回避の投げ売りが殺到すると、信用取引での買い持ちが急減して需給が軽くなる。過去の例では、そのタイミングで海外投資家が買いに転じるパターンが多い。


<グロース250の10年チャート> 中期的には上り調子にあるが、目先に分厚い雲があるので、上値は重そう。