2019年1月4日金曜日

所得格差の拡大は止まるか

先月ブログを書いていて所得格差が開くと国民の不満が高まり、その不満に応える形でポピュリズム(大衆迎合主義)が生まれることがわかったが、確かに現在起きている米中貿易戦争、英国のEU離脱、イタリア情勢、フランスのデモなどはすべて所得格差が背景にある。

レイ・ダリオ氏曰く、所得格差が開くのは大規模な金融緩和によるとのことだが、これ以外にもグローバル化や技術革新もその要因となるらしい。

では今後、所得格差はどうなっていくのか。

まず金融緩和についてだが、これはすでにほぼ打ち止めの状態なので、今後金融緩和による格差拡大は起こりにくい。

次にグローバル化についてだが、現在は先進国企業の生産拠点の海外シフトが一巡しており、またポピュリズムによるアンチグローバル化も進んでいるので、これによっても格差拡大は起こりにくい。

では技術革新についてはどうか。BNPパリバ証券のエコノミスト・河野氏によると、今後はこれが格差拡大の主因になるという。

「ポピュリズムが生まれる前から、実はアンチグローバリズムの流れは始まっていた。2010年代に入り、ロボティクスや人工知能などの新たな技術革新が起こり、先進国や消費地での生産地シフトが始まった。ただそこでの加工、組み立てなどの生産工程はマシンに代替され、労働力そのものが不要になってきている。技術革新により新興国に優位性がなくなり、今後は母国や消費地で無人の工場を建設するのがトレンドになる。

この変化は既存工場のサンクコストもあるため今までは緩やかに進んでいた。しかしそこにトランプ大統領が現れ貿易戦争を開始したことで、この動きが加速する可能性が出てきた。今後トランプ大統領の期待通りに米国で工場が増える可能性は高い。しかしそれは無人の工場であって、トランプ大統領が望む多くの国民に良質な賃金を提供する仕事ではない。

今後先進国での生産が増えても中間層の復活はならず、所得が増えるのは資本の出し手やアイデアの出し手になり、高い賃金の仕事と、低い賃金の仕事への二極化は止まらない。」

この理屈は正しそうなので、今後も所得格差は開いていきそうである。そうなるとポピュリストがますます台頭していきそうな気もするが、過去の例からいくと、ポピュリストは国民の期待に長期的に応えることができず、早晩失速していくという。

となると、ゆくゆくは所得格差を解消するためにベーシックインカムのような所得再配分制度が導入されていくのかもしれない。

参考:「貿易戦争が招く二つの所得格差」(日経ヴェリタス 2018/11/25)
     「世界経済覆うリスクの共通点」(日経ヴェリタス 2018/12/9)

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