2021年1月1日金曜日

長期計画チェック

 「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」いわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
今後はコロナにより景気後退に陥りそう。新型コロナは終息するまであと1~2年はかかりそうなので(4/2日経)、しばらくは厳しい状況が続くかもしれない。今回の景気後退では企業の債務が整理されず、逆に膨らむのでコロナ収束後の景気拡大は非常に穏やかなものになりそう。2019年のEPSを回復するのは2024年頃になるかもしれない。

景気の落ち込みを和らげる要因もいくつかある。それらを一通り書いていく。
・イノベーションは経済成長の最も基本的な原動力になるが、今は世界中でイノベーション(デジタル革命)が起きている。
・ネット社会では情報を集めやすく、人が繋がりやすいので、イノベーション(新結合)が起こりやすい。現在はそこにAIが加わってイノベーション速度は加速している。*AIは一見、無関係に見えるもの同士の関連性(新結合)を見つけるのが得意。
・バブルは借金をして資産を買いまくることにより生じるが、今回そのような現象はあまりみられない。現在起きている「金融バブル」は中銀が通貨を発行して、それで資産を買いまくることにより生じているので破裂しにくい。日米欧の中銀の総資産は2100兆円を突破し、リーマンショック前の4倍以上に膨らんでいる(11/13日経)。ただマネックス証券の社長が「人生で初めてお金を借りて(株式に)投資している」と語っているように、足下では従来のバブルも起こっている模様。10/17アエラ
・社債市場はバブル気味だが、今のような低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では金利が上がりにくく、バブル(高債務)の状態が維持されやすい。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、先進国では金融危機が起こりにくい。コロナの影響でデフォルト連鎖が起きても金融機関は7%超の自己資本比率を維持できる見通し。6/27日経
・中国の不動産市場にはバブルの兆しがあるが、中国政府の需要抑制策により日本のバブル期ほどの過熱感はない。ただし、シャドーバンキング商品(銀行理財商品、委託融資、信託商品)への投資は過熱感が強く、2017年末の残高は1000兆円とGDP比8割の規模まで膨らんでいる。
・中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国有企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。
・中国政府には財政出動や金融緩和の余地がある。
・中国は独裁体制のため、不況に陥るとすべての批判が指導部にふりかかる構造になっている。そのため指導部はなんとしても不況を起こさないようにする。
・先進国の中銀はインフレターゲットを2%に設定しているが、現在のようなインフレが起こりにくい環境でインフレ2%を達成・維持するには株高のような資産価格の維持・上昇が不可欠になる。そのため中銀は市場に優しい政策をとらざるを得ない。

コロナ以外の景気後退シナリオもいくつかある。それらを一通り書いていく。
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景気後退シナリオ1:災害や紛争で景気後退?
日本ではいずれ必ず南海トラフ地震が起こるといわれており、中東では紛争などの地政学リスクが高まっている。こうした問題が実際に起こると景気には強い下押し圧力がかかり、過去のパターンでは株価が15~35%下落している(2/29日経)。しかし、このような状況になると必ず政府や中銀が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば経済はV字回復することが多い。一般に、災害や紛争は押し目買いのチャンスと言われている。
*今回のコロナのように問題が大きく、長引きそうな場合は、そのまま景気後退に突入することもある。ただ株式市場の方は金融緩和や財政拡大により上昇しやすくなる。歴史的にみるとパンデミック(世界的な感染大流行)後の株式市場では、金融緩和や社会・経済構造の転換などにより、長期にわたる株高が発生している。12/15ロイター
*今回のコロナで企業倒産が相次いだ場合は、コロナが収束した後で供給が追いつかなくなり、V字回復ができなくなる。
*日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は景気後退を通り越して財政破綻するとも言われている(2019/10/11日経)。もしそうなった場合は1000兆円超の損失が発生するようなので強烈な株安・円安が発生する可能性が高い。
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景気後退シナリオ2:中国の債務バブル崩壊で景気後退
中国の企業債務は積み上がっているが、その7割以上は実物投資ではなく、リスクの高い金融資産(シャドーバンキング商品)への投資に回っている。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起きれば急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。景気後退に陥ると独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性も出てくる。独裁体制は経済的に成熟した社会には適さないシステムとも言われているので、その意味でもこのタイミングで独裁体制が終わる可能性もある。これらの政治的混乱も相まって不況が深刻化していく。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。
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景気後退シナリオ3:マイナス金利により金融機関が破綻し景気後退
先進国の金利はマイナス圏に突入しているので、利ザヤの縮小から金融機関が破綻していく可能性がある。金融機関が破綻すると信用収縮が起こり(金回りが悪くなり)、景気後退に陥りやすくなる。しかし現時点では中銀が民間金融機関に配慮しながら金融政策を行っているので、穏やかな統廃合で済みそう。
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景気後退シナリオ4:中銀のインフレ政策が限界に達して景気後退
先進国の中銀はこれまで金融緩和で市場を支えてきたが、その金融緩和が限界に達しつつある。今後市場は支えを失い、大崩れする可能性がある。ただ、中銀の通貨発行能力は健在なので今後は財政政策主導の財政ファイナンスで市場を支えていけそうでもある。
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景気後退シナリオ5:米長期金利が上昇し景気後退
米国は財政が著しく悪化しているので、長期金利には上昇圧力がかかっている。長期金利が上昇すると株式や不動産が売られ、借り入れが減り、景気後退に陥りやすくなる。ただ、今はFRBが米国債を無制限に買う方針を示して長期金利をコントロールしているので長期金利は低位に抑えられそうでもある。
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景気後退シナリオ6:インフレが過熱し景気後退
景気循環の従来のパターンは金融緩和→失業率低下・債務拡大→景気拡大→インフレ過熱→金融引き締め→債務圧縮→景気後退になるが、今回はインフレが過熱しないので、景気後退に陥りにくい。
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景気後退シナリオ7(株価下落シナリオ):上院で民主党が50議席を取り株価下落
1月5日に米国ジョージア州で上院2議席を決める投票が行われるが、そこで民主党が2議席をとると大統領・上下院ともに民主党になり、民主党の政策が通りやすくなる。民主党の政策は大規模な財政出動や大幅増税、ハイテク企業や石油企業への規制強化になるので、株式市場(特にハイテク株)には下落圧力がかかる。ただ、コロナ下では増税しにくく、対コロナの経済対策規模が大きいので、株式市場への影響は(当面は)限定的になりそうでもある。
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景気後退シナリオ8:上記の景気後退シナリオ複数が同時に起こる。
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■今後の計画
コロナや米中貿易戦争などで景気後退は避けられそうにないが、低インフレ×金融緩和×イノベーションにより株価の上昇は続きそう。押し目がきたら淡々と買っていこうと思う。

円が95円くらいまで上昇したら、外国株を買っていく。おそらく今回の円高が最後の円高になる。

円高時に仕込みたい外国株
・UBS ETF スイス株 (MSCIスイス20/35) 。スイス株式で構成されたETF。”最強通貨”のスイスフラン建てなので円安・ドル安対策によさそう。組み込まれている銘柄はネスレやロシュなど優良グローバル企業なので安定成長も期待できる。
・(米)アルファベット、アマゾン、マイクロソフト。規制リスクはあるが、情報社会の根幹にある「データ」を抑えているので長期の成長が期待できる。
・(米)VISAや(米)マスターカードはやっぱりなし。今は手数料が安く、利便性の高いフィンテック企業が多数出現しているので、手数料の高いVISAやマスターカードはやや劣勢に立たされる可能性がある。
・(米)フェイスブック、ツイッター。SNSで盤石な地位を確立しており、今後も年率10%超の成長は期待できる。
・(米)セールスフォース、ドキュサイン。日本企業を調べていて見つけた優良成長企業。社風が良さそうなのがいい。
・NASDAQ100ETF。第4次産業革命の中核ETF。日本市場で簡単に買えるのがいい。
・アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信(為替ヘッジなし)。腕利き米国人が運用する趣味の良さそうなファンド。
・米国株式長期厳選ファンド。奥野一成氏が運用するビジネスモデルが堅固な企業に投資する永久保有系ファンド。積み立てオンリーなのがやや難。
・インド株のETF。インドは2040年まで人口ボーナス期が続く。2060年までの成長速度は主要国でトップになりそう。10/16日経
・東京海上・インド・オーナーズ株式オープン。インドのオーナー企業に投資するファンド。
・インドネシア株のETF。インドネシアは2030年まで人口ボーナス期が続く。
・銅。銅をたくさん使う電気自動車などにより銅の需要は長期的に右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などにより供給が追いつかなくなる可能性がある。現在の銅の採算ラインは1トン5500ドル程度。

■今後の株式市場について
日本や米国の公的債務は返済不可能な水準まで積み上がっており、この巨額の債務を返済するには財政を健全化するか、インフレを起こすしかない。ただ、生活者に余裕のない状態で財政健全化をすると逆効果になるので、現実的にはインフレを起こすしかない。

しかし、そのインフレもデジタル化やグローバル化などの影響で起こりにくくなっている。この状態でインフレを起こすには通貨を大量発行するしかない。現在、政府が大量発行した債権を中銀が買い取る形で通貨を大量発行しているが、この構図は今後もしばらく続く可能性が高い。

このような状態が続くと通貨の価値が下落していき、資産価格には上昇圧力がかかる。株式市場はこのような流れで今後、長期で上昇を続けるのではないかと思う。

ただし、このような政策を永遠に続けることはできない。このような政策を続けていると、どこかで必ず通貨の信認喪失が起こる。そうなるとインフレが加速し、国内からお金が逃げ出し、株式市場は(外貨換算で)大暴落する。それが起こるタイミングはおそらく、日本の経常収支が赤字に転落したとき(国の借金が民間の貯蓄を上回ったとき)になる。危機は2030年頃に訪れるかもしれない。

ちなみに、ゼロ金利が続くような環境では、利回りゼロの国債に投資しても意味がないので、株式全般が上昇しやすくなる。中でもグロース株への投資が優位になる。ゼロ金利が続くような環境では、企業の将来の利益を現在価値に割り引く際の割引率(金利)が下がり、高いバリュエーション(株価指標)が許容されやすくなる(成長性が評価されやすくなる)。

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