2021年1月1日金曜日

市場環境チェック

 株式市場への影響が大きい企業業績、金利、金融政策などをチェックしていく。

■ファンダメンタルズ
<EPS成長率>
・世界株式の2019年のEPS増加率は8%、2020年は-30~-10%
・米国株式の2019年のEPS増加率は3%、2020年は-30~-15%
・欧州株式の2019年のEPS増加率は3%、2020年は-30~-15%
・日本株式の2019年のEPS増加率は-8%、2020年は-30~-15%
*参照:8/11日経8/14日経9/16日経など
*2020年はコロナの影響で大幅な減益予想になるが、コロナ抜きで考えると、今は金利低下で企業の利払い費が減少しており、経済のデジタル化に伴い設備投資や人件費が減少しているので、企業の利益は増えやすい状況になっている。
→問題あり

<経済成長率>
・世界の2019年の成長率は2.9%、2020年は-4.4%、2021年は5.2%
・米国の2019年の成長率は2.4%、2020年は-4.3%、2021年は3.1%
・中国の2019年の成長率は6.1%、2020年は1.9%、2021年は8.2%
・ユーロ圏の2019年の成長率は1.3%、2020年は-8.3%、2021年は5.2%
・日本の2019年の成長率は0.9%、2020年は-5.3%、2021年は2.3%
*数値はIMF予想。10/14日経
*IMFは「新型コロナウイルスによる感染第2波が発生すれば、2021年の世界経済成長率はゼロ成長にとどまる」と言っている。6/25日経
*IMFは「先行きは巨額の公的・民間債務が経済成長を抑えるため回復力は鈍化する。25年までの6年間で経済損失は3000兆円に達する」と言っている。10/14日経
*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただしデジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほどには不況感が強まらない可能性もある。経済成長率を測る指標の一つであるGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されているサービスの大半は公共財に近い性質があるため、金銭的な数値には反映されにくい。今は若い人ほど幸福度が高いという調査結果が出ているが、これはデジタルサービスの恩恵を最も受けているためとも言われている。
*仏経済学者のジャン・フーラスティエは今から70年くらい前に「農耕社会、工業社会の後にはサービス社会へ移行するが、そこは経済成長のない世界になる」と言っている。11/27日経
→問題あり

<インフレ>
・米国の予想インフレ率は2019年が1.8%、2020年は1.3%
・欧州の予想インフレ率は2019年が1.2%、2020年は0.3%
・日本の予想インフレ率は2019年が0.9%、2020年は0.2%
*参照:米PCEユーロHICP日本CPI。*中央銀行は基本的にはこの指標を基に金融政策を策定するが、12/11日経には、米10年物価連動債利回りから算出される予想物価上昇率で政策を決めるみたいなことが書かれているので、こちらの物価も重要なのかもしれない。この予想物価上昇率は現在、1.97%になる。
*インフレ率が上がらないのもデジタル経済の影響が大きい。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば検索やSNSは無料だし、ネット上では価格比較を簡単にできるので売り手側は超過収益を得にくくなっている。またスマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。他にも複製コストゼロのデジタル商品やシェアリングサービスの普及などもあり、物価は上がりにくくなっている。『FREE』の著者クリス・アンダーソンは「モノ中心の経済はインフレ志向になるが、情報中心の経済はデフレ志向になる」と言っている。*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争により価格が限りなくゼロに近づきやすい。
*コロナ禍ではデジタルサービスの普及が加速しているので、インフレが起こりにくい土壌ができつつある。
*ITにより少ない人数で多くの富を生めるようにはなったが、富はIT企業に集中し、社会全体に分配されにくくなっている。低中所得層の所得が伸びないと、需要も伸びず、物価も上がりにくくなる。
*経済のデジタルシフトが進んでいるが、デジタルシフトは「人」の代替ともいえるものなので、人の賃金が上がりにくくなっている。所得の増えない経済では支出も増えず、インフレが起こりにくくなる。8/14日経
*インフレとは需要が供給を上回るときに起こるが、需要は停滞気味で、世界的に供給基盤は安定しているので、需要が供給を上回りにくくなっている。
*原油など商品価格の停滞もインフレ停滞の要因になる。かつての景気拡大局面では商品価格も大きく上昇していたが、今回の景気拡大局面では成長率が穏やかなため商品価格が上がりにくくなっている。経済のサービス化に伴い財への需要が弱くなっている面もある。環境保護や省資源化が求められていることもあり、今後も商品価格の停滞が続く可能性は高い。

*コロナの影響で解雇や賃下げが発生して購買余力が低下している。また感染への恐れから消費も停滞している。企業収益は悪化しており、設備投資も減少している。全体的な需要不足でデフレ圧力がかかりはじめている。需要と供給力の差である需給ギャップは2025年まで年平均で4.5%悪化するとも言われている。8/20日経
*コロナ後の世界ではデジタル化が進み、サービス業などで働く比較的賃金の低い労働者らが失業の脅威にさらされるリスクがある。11/13日経
*コロナの影響で企業倒産が相次いだ場合は、コロナ収束後に供給が追いつかず、インフレが発生する可能性がある。
*コロナ対策で世界中の中銀が通貨を大量に発行しているが、これは通貨価値の下落を引き起こすのでインフレ圧力になる。
*日本では足下で円高が進行しつつあるが、これは輸入物価の下落を通じてデフレ圧力がかかる。

*中央銀行の最大の責務は「物価の安定」になる。中央銀行は経済にとってベストなインフレ率を2%としており、その水準で物価を安定させることを目標にしている。中央銀行が行う金融政策はインフレ率2%を基準に決められており、それより低ければ金融緩和、高ければ金融引き締めを行う。先進国のインフレ率は長期的に低下傾向で、足下では2%を下回りはじめているので、今後長期で金融緩和が続く可能性は高い。ただ、デジタル経済や商品価格の停滞、少子高齢化、グローバリゼーションなどを考慮すると、中銀のインフレ目標には無理があるようにも見える。
*FRBはインフレ目標政策を強化しているが、その副作用で金融バブルが醸成されつつある。今後、金融バブルが崩壊した場合、金融システムや経済は多大なダメージを受け、それがインフレ低下につながる可能性もある。中銀がインフレ目標にこだわりすぎることで、逆にそれが目標達成を遠ざけてしまう可能性がある。
*ゼロインフレが続く環境では、中央銀行は物価安定策(インフレ抑制策)をする必用がない。そのため今後、中央銀行の主要責務は物価安定から金融安定にシフトしていく可能性が高い。6/30日経
*社会がデジタル化するとあらゆる動きがデータで把握できるようになる。そうなればデータに基づいた的確な政策を実施できるようになる。2025~2030年あたりにインフレに代わる新たな「経済の体温計」のようなものが生まれるかもしれない。
→問題なし

<金利>
・米国の2年金利は0.12%で10年金利は0.92%。30年金利は1.66%。
・日本の2年金利は-0.12%で10年金利は-0.03%。
*実質金利(名目金利-インフレ率)は資金の行方を決める最大の材料とも言われるが、現在G20の約半分の国で実質金利がマイナスになっている。7/25日経
*米国の実質長期金利は-0.9%くらいなので、資金は国債・預金から株式・商品(金など)にシフトしている。
*FRBはゼロ金利政策を続けながら「平均2%インフレ目標政策」を導入するようなので、インフレ期待が高まれば実質金利は-2%あたりまで低下する可能性がある。8/8日経
*長期投資家は長期金利が0.5%近辺の状態では、金利が2%以上の状況に比べ、2.5倍高いバリュエーション(投資尺度)でも株式を選好すると言われている。8/8日経
*過去150年の米国の株式益回りと長期金利の差(イールドスプレッド)は平均3%になる。イールドスプレッドが3%を割り込むと株価の割高さが嫌気され売られやすくなるが、7月のイールドスプレッドは3.9%と売り込まれる水準にはない。現在の米国株のPERは過去の平均よりも高い水準にあるが、金利を軸に見た場合は特に割高感があるわけではない。8/12日経9/12日経 *足下ではイールドスプレッドが3%を割り込んでいる。
*金利が下がると企業の資金調達が容易になるので株式上場は減っていく。またM&AやLBOが増えるので上場企業数も減っていく。9/18ロイター
*足下では長期金利がジリジリと上昇している。金利低下局面では、将来の利益を現在価値に割り戻す際の割引率(金利)が下がり、高いバリュエーション(株価指標)が容認されるので、グロース株が買われやすいが、現在のような金利上昇局面ではその逆の理屈が成り立つので、グロース株が売られ、バリュー株が買われやすくなる。
→問題なし

<債務>
・米国の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向(2019年)。
・日本の民間債務残高はGDP比150%で横ばい傾向(2019年)。
・中国の企業・家計債務残高はGDP比210%まで上昇しており、足下でも微増傾向。日本のバブル期のピークは220%になる(2019年)。
・新興国の民間債務残高はGDP比140%で現在も微増傾向(2019年)。
 *GDPは債務返済能力の代理変数になる。
・過去10年で各国政府は債務を大きく膨らませている。
・コロナにより政府債務は急膨張している。IMFは「21年の先進国の政府債務はGDP比125%と過去最大になる。新興国の政府債務も21年にはGDP比で65%と過去最大になる。国別では日本が突出し、19年の238%から21年には264%になる」と言っている。10/15日経10/15日経
*米企業の対GDP債務残高比率は10年移動平均線から3%超乖離しているが、これは直近3回の債務バブルのピーク時とほぼ同じ水準になる(2019/7/19ダイヤモンド)。債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回った状態が続くと、どこかで必ず逆回転が起こる。
*米企業はコロナによる経済低迷で借り入れを増やしており、2020年7月には負債総額が過去最高のGDP比83%まで上昇している。一方、企業の債務返済能力は歴史的水準まで低下しており、格付けを下げられる企業が急増している。格付けがジャンク債まで低下するとFRBの支援措置を受けられなくなり、破綻する可能性が高まる。7/4ヴェリタス7/6日経
*今のような低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では低金利が続きやすく、高債務の状態が維持されやすい(貯蓄余剰になると、余ったお金で国債を買うか現金のまま持つようになるので金利が上がりにくくなる)。*IMFによると世界の貯蓄額は2004年から投資額を上回っている。10/28日経
*先進国では超低金利が続いているので債務拡大はまだ続きそう。
*債務の質は劣化しており、2019年には米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割が格付けの最も低いトリプルBになっている。*日本には低格付け債市場はない。
*信用格付けの低い企業は米シェール企業などエネルギー企業に多いが、原油安によりそれらの企業の信用リスク(デフォルトリスク)が高まっている。米ムーディーズはWTI価格が40ドル程度で推移した場合、シェール企業の4割が2年以内にデフォルトすると予想している。6/30日経
*格付け会社のムーディーズやフィッチは「米国のジャンク債市場のデフォルト率は1990年、2000年、2009年の景気後退時はいずれも10%前後であったが、今回はその水準を上回る可能性もある」と言っている。6/4ヴェリタス
 *米企業のデフォルトは2021年春~年央にかけてピークを迎える可能性が高い、とも言われている。7/4ヴェリタス
*米企業は過剰な自社株買いなどで財務体質が脆弱になっていたところにコロナが直撃したので、さらに財務が脆弱になっている。
*大型のデフォルトが複数起こり、信用収縮が起きた場合は、設備投資の縮小や資産価値の下落が起こる。
*今のように金利が経済成長率を下回っている状態が続くと企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にできるので債務が膨張しやすい。政府債務においては、今のように国債金利がGDP成長率を下回っている状態では、多少の財政赤字を続けても債務残高GDP比を一定の水準に維持できる。日本政府の場合は対GDP比で2.5%程度の赤字を続けても債務残高GDP比を一定に維持できる。2019/10/7日経
*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構図になっている。2019/11/10日経
 *政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りてない中で財政支出を減らすと、景気悪化を招き財政赤字はさらに膨らみやすくなる。
 *財政赤字が拡大すると公共サービスなどの政府機能が落ちていく。
*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業によるものなので、計画に沿って徐々に削減していけそう。
*中国は2016年に政府出資の資産管理会社(AMC)を設立し、不良債権の最終処理を進めている。*AMCとは銀行の不良債権を分離して買い取り、それを海外の投資銀行や資産運用会社などに売却する会社。
*中国の可処分所得に対する家計債務比率は日本のバブル期並の120%まで上昇しているので、中国は今後深刻な消費不振に陥る可能性が高い(2019/7/28日経)。
*中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費(政府債務)が膨らんでいく可能性が高い。1/18日経
*新興国や資源国の債務も膨張し始めている。このまま景気停滞が続いた場合はデフォルトリスクが高まる。7/23日経
*足下ではドル安が進んでいるが、ドル安は新興国のドル建て債務の返済負担を軽くするので、新興国に強力な金融緩和効果をもたらす。21~22年頃から新興国市場が盛り上がるとも言われている。7/2ダイヤモンド
→問題あり

<金融政策、財政政策>
・コロナショックで世界中の中銀が金融緩和をしている。
・日米欧は金融緩和が限界に達しつつある。
*スウェーデン中銀は2020年1月にマイナス金利だと家計債務の膨張が止まらないなどの理由で政策金利を0%に引き上げている(2019/12/20日経)。金利緩和の限界が露呈しつつある。
*金融緩和を長期で続けていくと、従来ならインフレが過熱して、それが金融緩和の歯止めになっていたが今回はそれがない。金融緩和が長期化した場合のメリットは失業率の低下やデフレ阻止、資産価格の上昇になるが、デメリットは債務の増加や産業の新陳代謝の低下になる。
*金融緩和が長期化すると産業の新陳代謝が進まず(ゾンビ企業が存続する)、潜在成長率が落ちていく。潜在成長率が落ちるとインフレがさらに起こりにくくなる。現在中銀がインフレを起こそうと行っている金融緩和は長期的にはインフレが起こりにくい経済構造を作っているという一面もある。
*日本はこのまま金融緩和を続けると、金融仲介機能を持つ銀行の収益が落ち、金融政策が円滑に機能しなくなる恐れがある。日銀の責務には「物価の安定」の他に「市場・金融システムの安定」があるが、長期の金融緩和により金融システムが不安定になりつつある。
*主要中銀の量的緩和(資産購入)は2019年は40兆円ほどだったが、2020年はコロナショックにより1000兆円まで拡大している(12/31日経)。大規模な資産購入は2021年も続く見込み。
*日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
 *MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することはなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によれば、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的には国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないとのこと。2019/10/7の日経には財政出動をして、長期的な収益率が政府の借入金利を上回るようなものに投資すれば、短期的に需要を押し上げるだけでなく、長期的にも財政状態を改善できるとある。このような投資に該当するものには出生率向上策や気候変動への取り組みなどがあるという。ただし、完全雇用の状況では労働力不足でこのような需要喚起策は打てない。
 *MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレなどで負担しなければならない。
 *MMTで高インフレになった場合、中銀は金利を引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで利上げをしたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上がる、という悪循環に陥ってしまう。
  *MMTと日本の金融・財政政策は若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。
*日本や米国は慢性的な財政赤字体質なので、将来的にはMMTのような財政・金融政策に移行せざるを得ない。
*先進国の金融政策はほぼ限界にきているので、次の景気後退時の景気刺激策は財政政策しかない。
*今回のコロナを機に先進国はMMTのような政策に移行したように見える。
*現在行っているMMTのような政策はインフレが生じる前にコロナを制圧できるかが重要なポイントになる。それができない場合は深刻な景気後退が避けられなくなる。
*コロナの影響で企業が破綻し生産基盤がなくなってしまうと、コロナが収束した後の景気回復が弱いものになってしまう。それを避けるには政府や中銀が大規模な支援策をすることが重要になる。支援規模はGDPの落ち込みと同程度のものが必要で、これを実行すると財政赤字は莫大なものになるが、もしこれをしなければ恒久的な経済的損害が生じ、より莫大な財政赤字が発生する確率が高まる。4/5日経ヴェリタス
→問題なし

<政治>
・日本の政治は比較的安定。ただ管首相のリーダーシップの弱さが露呈し始めた感じで、内閣支持率は9月の74%から足下48%まで低下している(12/29日経)。第一印象通り、管首相は表舞台には不向きな人だったのかもしれない。経済政策が良さそうなだけに少し残念。
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。
 *米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込んでいく。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏とも言われている。
・中国では独裁体制や監視体制が強化されつつあるが、この調子でいくと小説『1984』の世界が現実のものとなるかもしれない。
・英国はEUから「合意ありの離脱」をしたが、これから始まるEUとの通商交渉は不透明感が強い。
・英国のEU離脱時のグダグダ感が効いてか、EU域内のEU離脱派・懐疑派の勢いは当初よりも弱まっている。ただ失業率・成長率の悪化や所得格差の拡大、価値観の分断を背景にしたポピュリズムは今後も長期にわたり続きそう。
・EUの対コロナの財政政策では、北欧の財政健全国と南欧の重債務国が対立している。財務状態の異なる国々が単一の財政政策をすることにもともと無理があるので、今回のコロナを機にEU解体機運が高まるかもしれない。
*コロナ危機は、コロナ前からくすぶってきた格差問題をさらに悪化させる可能性が高い。今回のコロナショックは中小企業や非正規労働者などの「経済弱者」を直撃しているが、一方で、大規模な金融緩和による資産価格の上昇で株式や不動産を保有する「経済強者」は富を一段と拡大させている。経済格差と政治の分断(社会の不安定化)には明確な因果関係があると言われており、今後、所得再分配策やベーシックインカム、資産課税などの議論が活発になっていきそう。8/8ヴェリタス12/09日経
*富裕層の支出性向は低く、富が循環しないため、格差が拡大すると経済の潜在成長率が押し下げられる。また格差拡大で中間層が消失すると、金融緩和、財政拡張、イノベーションが続いても、経済は上向かず物価も上がらなくなる。
*現在、政府や家計の債務は富裕層の貯蓄で手当されている。そしてその債務は膨らみ続けており、それに伴い富裕層の貯蓄も膨らみ続けている。格差の拡大はこのような経路でも起きている。この流れを止める唯一の方法は、政府が富裕層から巨額の税金を徴収して、それを一般市民に再分配することになる。10/14日経
→問題あり

<その他の景気後退シグナル>
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はコロナにより一時大きく落ち込んだが、足下では急回復している。
・世界景気の先行指標である世界新車販売台数は2018年、2019年と2年連続で減少している。*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数もコロナにより一時大きく落ち込んだが、その後、急回復している。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数もしかり。(同指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増えると言われる)。
米国の失業率はコロナショックで4月に戦後最悪レベルの14.7%まで上昇していたが、足下では6.7%まで改善している。
 *失業率には「理由不明の休職者」は含まれていない。この人口を加算すると失業率はさらに5%上昇する。5/11日経
*米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥ると言われる。
*失業率が最低水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。4/25日経
・米景気の先行指標になるダウ輸送株ラッセル2000は急回復している。
・景気拡大期の終盤は、金余りと鈍化した成長率を引き上げるため巨大M&Aが盛んになるが、2018年、2019年はまさにその状態だった。*高値で行われたM&Aは景気後退期にのれんで巨額の減損が発生しやすい。
・世界景気の先行指標である銅価格は高値圏で推移している。ただこれはEVブームとコロナによる産出地の供給減の影響が大きそう。
・世界景気を半年先取りするOECD景気先行指数(4月発表)は98.8と節目の100を下回っている。4/8日経
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIも一時大きく落ち込んだが、現在は節目の50を超えて安定的に推移している。*PMIは生産や受注が前月と比べて増えたかどうかを調べるものなので、節目の50を超えたからといって必ずしも経済が全面的に回復したということを意味しない。
・マクロ経済の不透明感を表す経済政策不確実性指数は「世界」「米国」「中国」で高水準で推移している。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りはコロナショックで一時大きく下落したが、FRBが低格付け債を買い入れることを決めてから持ち直している。*シェールガス企業などの投資不適格債(ジャンク債)はFRBの購入対象外になる。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれるが、今は「長短金利の逆転」だけ。*デフォルト率はジリジリと上昇しており、2021年の中頃までは上昇を続けそうなので、社債スプレッドは今後跳ね上がる可能性がある。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果がある言われる。5/29国際通貨研究所
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多いが、今は利上げ局面が終了し、利下げ局面に入っている。
→問題あり

■テクニカル
・チャート
グロース株(割高株)と逆相関の関係にある米10年金利が上昇基調にある。このまま金利が上昇を続けると、グロース株には下落圧力がかかる。ただ、長期チャートを見ると金利は今の水準がほぼ天井にも見えるので、グロース株への影響は限定的なものになるかもしれない。

<1年チャート> 底打ちして上昇トレンドに入っている。

<2年チャート> 分厚い雲(抵抗帯)にぶつかっている。テクニカル指標は短期より長期の方が信頼性が高いので、金利は今が天井の可能性がある。
→問題なし

・騰落レシオ
日経平均 100
NYダウ 125
ナスダック ?
→問題なし

・信用評価損益率
ー13.76 %
→問題なし

■まとめ
現在、米VIX指数は低下しており、投資家の現金比率は4%程度まで低下しているので(12/16ブルームバーグ)、市場はやや楽観気味。一方で市場の波乱を織り込むスキュー指数は143と高水準で推移しているので、今後、株価はいったん大きく下げることもあるかもしれない。ただその後はお馴染みの金融緩和と財政拡大で再び上がっていきそう。ただインフレ過熱だけはバブル崩壊のトリガーになるので、そこだけは注意しときたい。

ーーーーー
1年以内に米国が景気後退に陥る確率:100%。
*景気後退とはGDP成長率が2四半期連続でマイナス成長になること。

1年以内に中国の債務バブルが破裂する確率:30%
中国はデフォルトモードに入っていたところに(2019/11/29日経)コロナが直撃したのでデフォルトモードが加速している(11/23日経)。社債の償還がピークを迎える2021年,2022年頃(2019/12/27日経)に中国共産主義は危機を迎えるのかもしれない。ただ、中国の独裁体制は2000年以上続いているようなので(4/14日経)、そう簡単には終わらなさそうでもある。

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