2023年1月1日日曜日

長期計画

 「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」といわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
インフレ高進により景気後退に陥る確率が高まってきた。民間・政府ともに債務山積みの状態で中銀が金利を引き上げているので、景気には強い下押し圧力がかかっている。ただ家計や企業、金融機関の財務状態は良好なので深刻な景気後退に陥る確率は低い(日経日経日経)。今回のインフレは長引きそうなので、しばらく金融緩和や財政政策による景気刺激は期待しにくい。景気後退は浅く長いものになるのではないかと思う。景気の底は2023年の終わり頃から2024年の始めあたりになると予想する。

<補足>
景気循環(債務循環)の基本的なパターンは、不景気 →金融緩和 →景気拡大(債務拡大)・失業率低下 →景気過熱・インフレ過熱 →金融引き締め →景気後退(債務圧縮)の流れになる。

■他の景気後退シナリオ
景気後退シナリオ1:中国のバブル崩壊で景気後退
中国の民間債務残高は積み上がっており、GDP比220%に達している(日経12/7日経)。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。バブルが崩壊すれば独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性もある。そうなれば政治的混乱も相まって不況が深刻化する。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただ中国政府には財政・金融政策をする余地があるのでバブルが崩壊する可能性は低い。

中国は「ゼロコロナ」政策の余波や、米国の対中輸出規制強化などで成長率が下振れしている。労働力人口の減少やIT規制強化、最高指導部にマクロ経済の専門家がいないことなども成長の足枷になる。GDPの約3割を占める不動産市場の調子も悪い。台湾有事の懸念により海外企業の中国離れも増えつつある(10/29日経10/29日経12/14日経12/15日経12/16日経)。

中国は「ゼロコロナ」政策を緩和してから、コロナ感染者が急増し、12月だけで新規感染者が2億4千万、1日あたりの死者が5千人を超えたとの報道もある(12/24日経)。この流れでいくとバブルが崩壊する可能性もあるのかもしれない。

中国の若年者(16~24歳)の失業率は過去最高水準で推移している(日経12/1日経)。この年代は革命分子になりやすいので、バブルが崩壊したら政権が崩壊する可能性もある。

景気後退シナリオ2:中国が武力で台湾を併合し、米中戦争が激化して景気後退
中国が2024年頃までに武力で台湾を併合するとの憶測が流れている(日経日経日経日経)。実際にそれが起これば米中戦争が激化し、世界景気には強い下押し圧力がかかる(日経10/18日経11/23日経)。ただ中国は西側から制裁を受けると食糧危機に陥るリスクが高いので、中国が台湾に武力侵攻する可能性は低い。戦争を仕掛けるとしたら米国側からになる。日経日経

景気後退シナリオ3:「脱成長」経済システムに転換して景気後退
COP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は「産業革命以前から21世紀末までの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指して、努力を追求することを決意」することで合意したが、現在その実現は絶望的な状況にある。各国の2030年時点での目標がすべて達成されても21世紀末までの気温上昇は2.4度になるとされる。そうなれば海面上昇で沈む島国が出て、山火事や巨大台風などの自然災害が多発し、水不足、食糧危機、感染症のリスクなどが増大する。このような未来が科学的に予測されている現状で対策を取らないという選択肢はない。問題の根幹は現在の「成長型」経済システムにあるので、「脱成長」の経済システムに転換する必要がある(日経ロイター)。ただ、現在の状況で「脱成長」の経済システムに転換すれば景気後退は避けられなくなる。

深刻な景気後退に陥ると、財政問題や福祉問題など目先の深刻な問題が噴出するようになり、それらの問題に対処せざるを得なくなる。そのため経済システムの転換は当分先になりそう。環境危機が目先の大問題に発展したときに初めて転換の機運が生まれるのかもしれない。

今夏は世界各地で記録的な熱波・干ばつが発生している(日経産業ヴェリタス日経日経)。転換の機運は早々に訪れるのかもしれない。

もしくはAI・ロボット社会が温暖化問題の打開策になる可能性もある。温暖化の最大の要因は「人の活動」になるが、AIやロボットが進化・普及すれば、数十億人の「無用者階級」が生まれるともいわれているので(『21 Lessons』)、人が減っていく可能性が高い。そうなれば環境負荷の低い社会が実現する。

国連が7月11日に発表した世界人口推計では「2086年に104億人で人口はピークを迎える」と予測しているが、この数値は2019年の予測「2100年に109億人でピークを迎える」からピーク時期が前倒しされている(日経日経)。AIやロボット、教育(日経)などの影響を考えると、今後もピークアウトの前倒しは続くのではないかと思う。

景気後退シナリオ4:災害や紛争で景気後退?
大災害や戦争が起こると景気には強い下押し圧力がかかる。しかし、こうしたことが起こると必ず政府が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば景気はV字回復することが多い。一般に、災害や紛争は押し目買いのチャンスといわれる。今回のようなパンデミックも株式市場には追い風で、社会・経済構造の転換や金融緩和などにより、長期にわたる株高が発生しやすくなる。ロイター

ただし、日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は1000兆円規模の損失が発生するようなので(日経)、景気後退を通り越して財政破綻する可能性がある。

■今後の計画
円が105円くらいまで上昇したら、3倍以上の値上がりが見込める海外資産を買っていく。

・米市場に上場している「銅ETF」「リチウムETF」
「グリーン革命」で銅需要は右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などで供給不足に陥りそう(日経日経)。仕込むタイミングは2024年の半ば頃にくるかもしれない(日経)。それまでに1トン5000ドルを切るようなことがあれば買っていきたい。

リチウムも同じような理由で供給不足に陥る可能性が高い。12/13日経12/13日経

・ファーストトラスト・クラウド・コンピューティングETF
この「クラウドETF」は、マイクロソフトやアマゾンなどクラウド基盤を提供する銘柄と、クラウド経由でソフトウェアを提供するSaaS銘柄で構成されている。現在は大きく売り込まれているが、ビジネスモデルは強く、長期的な見通しはよい。11/30日経

・米市場に上場している「半導体ETF」「サイバー・セキュリティETF」
AI・ロボット社会では半導体企業とサイバー・セキュリティ企業の力強い成長が期待できる。基準価額が大きく下げているときに買えば3倍は狙えそう。

半導体株は「シリコンサイクル」的に2023年後半あたりが仕込み時になりそう(10/29日経)。ただ米国が中国に対し半導体の輸出規制を強化しており(10/8日経)、その影響で米半導体企業に数兆円のマイナスインパクトをもたらす可能性がある(10/13日経)。また各国が半導体分野に官民あげて巨額の投資をしているので(11/30日経)しばらく供給過剰が続く可能性もある。そこらへんには注意したい。

CPUやDPU(データ処理装置)を手がけるAMD(11/5ヴェリタス)や、「総合サイバーセキュリティー」を手がけるパロアルトネットワークス(11/21産業)などの個別株もいいかもしれない。

・メリカドリブレ
ナスダックに上場している南米最大のeコマース企業。当初はオークションサイトとしてスタートしたが現在のビジネスモデルはAmazonのマーケットプレイスに近い。小売り事業者にウェブサイト上の場所を貸し出し、手数料を徴収する。出店者の代わりに配送業務を行う事業や、サイトの作成・管理を代行するサービスも提供している。もう一つの事業がフィンテック事業。南米は欧米などと異なり、銀行口座やクレジットカードを保有してない利用者も多い。ラテンアメリカ市場ではオンラインで販売した際に支払処理をどのように行うかが大きな問題となっている。メルカドリブレはそれぞれの国情に併せてQRコードなどを活用した様々な決済サービスを提供している。ラテンアメリカはインターネットの普及自体が遅れているため先進国と比べて出遅れ感があり、その分成長余地が残されている。ラテンアメリカに住む6億5千万人の人びとの中でネット通販を頻繁に利用する人はまだ8千万人程度とされる。問題はカントリーリスクになる。サービスを提供している18カ国のうち、アルゼンチン、ベネズエラ、ニカラグアのリスク評価は最低ランクで、最大の売上を稼ぐブラジルも下から3番目の評価になる。ビジネス自体は順調であっても為替レートが大幅に低下すればドル建ての業績は悪化してしまう。ライバルのShopee(シンガポール)はこのような問題から、ラテンアメリカ事業を縮小すると報道されている。週刊エコノミスト11月8日 

・アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、アップル、セールスフォース
これらの大型株はまだまだ成長しそう(日経日経11/21日経11/21産業など)。ただ大きくなりすぎて規制リスクが高まっている(日経12/10日経など)。この中で規制の影響をあまり受けなさそうなのはセールスフォースあたりになる。

・日本円と米ドルが暴落しそうになったら、スイスフラン建てのETF(UBS ETF スイス株 (MSCIスイス20/35))を買っていく。

■今後の株式市場について
日本や米国の公的債務は返済不可能な水準まで積み上がっており、この巨額の債務を返済するには財政を健全化するか、インフレを起こすしかない。ただ生活者に余裕のない状態で財政を健全化しようとすると逆効果になるので、現実的にはインフレを起こすしかない。

しかし、そのインフレもデジタル化やグローバル化などの影響で起こりにくくなっている。この状態でインフレを起こすには中銀が通貨を大量供給するしかない。現在、政府が大量発行した国債を中銀が買い取る形で通貨を大量供給しているが、この構図は今後もしばらく続く可能性が高い。

このような状態が続くと通貨の価値(信認)が落ちていき、資産価格には上昇圧力がかかる。株式市場はこのような流れで今後、長期で上昇を続けるのではないかと思う。

ただし、このような政策を永遠に続けることはできない。このような政策を続けていると、どこかで必ず通貨の信認喪失が起こる。そうなると通貨安・インフレが加速し、国内からお金が逃げ出す。ただ実物資産である株式は上昇する(週刊エコノミスト11月8日 )。ハイパーインフレが起きた場合は株式は大暴騰する。つまり株式は長期で上昇し続けることになる。ただし、高インフレが発生すると事業環境が悪化するので外貨換算の企業価値は減少する。

通貨の信認喪失が起こるタイミングはおそらく、日本の経常収支が赤字に転落したとき(国の借金が民間の貯蓄を上回ったとき)になる。危機は2030年頃に訪れるかもしれない。
日経によると2031年に日本が財政破綻する確率は50%になる。
*ハイパーインフレが起これば公的債務は完済されやすくなる。

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