2023年1月1日日曜日

市場環境

 株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などを見ていく。

■EPS成長率
・世界株式の2022年の予想EPS成長率は10%、2023年は-10~5%。
・米国株式の2022年の予想EPS成長率は5%、2023年は-10~10%。
・欧州株式の2022年の予想EPS成長率は0~10%、2023年は-15%~0%。
・日本株式の2022年の予想EPS成長率は0~10%、2023年は-10%~5%。

■経済成長率
・世界の2022年の予想GDP成長率は3.2%、2023年は2.7%。
・米国の2022年の予想GDP成長率は1.6%、2023年は1.0%。
・中国の2022年の予想GDP成長率は3.2%、2023年は4.4%。
・ユーロ圏の2022年の予想GDP成長率は3.1%、2023年は0.5%。
・日本の2022年の予想GDP成長率は1.7%。2023年は1.6%。
*数値はIMF予想。10/12日経
*成長率はさらに下振れするリスクがある。IMFは23年の世界成長率が2%を割り込む確率を25%程度とみている。

世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほど不況感は強まらない可能性もある。
*経済規模を示すGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。

*コロナの影響で2020年の日本のGDPは落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が向上していれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。日経

■インフレ
・米国の予想インフレ率は2022年が4.0~6.5%、2023年が3.0~5.0%。
・欧州の予想インフレ率は2022年が5.0~7.6%、2023年が3.5~5.5%。
・日本の予想インフレ率は2022年が1.5~2.5%、2023年が0.5~2.0%。
*参照:10/28日経など
*参照:米PCE(個人消費支出物価指数)、米CPI(消費者物価指数)ユーロHICP日本CPI。各国中銀は主にこれらの指標を使って政策決定する。
*米国の今後10年の予想インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレ率10年)は2.30%。ブレーク・イーブン・インフレ率とは債券市場の予想物価上昇率で、実質金利を算出するときなどに用いる。

世界中でインフレが高進している。インフレ要因とデフレ要因を一通りあげて、今後のインフレ動向を考えていく。

<インフレ要因>
★コロナ特有のもの
・供給基盤が破壊され供給不足が生じている。→解消されつつある。
・コロナが収束せず供給不足が長引いている。→解消されつつある。日経
・コロナで対面型サービスの人気が落ち、賃金が上昇している。
・コロナが落ち着いてきて需要が増している。
・政府から給付金が支給され需要が増している。
・金融緩和の影響で資産価格や商品価格が上昇している。
・量的緩和の影響で通貨価値が下落している。
 
★コロナ後も続くもの
・人手不足で賃金が上昇している。米国では求人件数が1000万件を超えているが、完全失業者は600万人に留まっている(日経12/1日経)。仮に失業者全員が求人に応じたとしても400万件程度の求人が充足されない計算になる。コロナ前の景気拡大局面のピークでも未充足数は150万件程度だったので人手不足感は強い。

労働者が減ったのは(労働参加率が低下したのは)、コロナの後遺症など(50万人、日経)、株高などによる早期退職(160万人)、給付金による過剰貯蓄、雇用条件に対する不満、移民の伸び悩み、高齢化の進展、”アンチワーク”など構造的な要因も絡んでいるので早期解決は難しい。

現在、賃金の上昇率が5%台で高止まりしている。3%程度まで減速しないとFRBの2%物価目標と整合しない。賃金の上昇率を3%程度に抑えるには求人件数を700万件程度まで減らす必要がある。日経

・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。脱炭素シフトにより2030年まで年0.7%程度の物価押し上げ効果が見込まれる(日経ヴェリタスヴェリタス)。主要中銀が加盟する「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS)」はパリ協定の達成に向けた脱炭素化によって、20年代後半の日米欧のインフレ率は1%近く上昇するとしている(日経)。2050年までに脱炭素社会への移行が円滑に進む場合、日本でさえインフレ率が3%程度に達すると予想している。日経
*脱炭素シフトが完了すれば再生可能エネルギーはデフレ要因になる。

・異常気象や世界人口増、新興国の経済成長、バイオ燃料需要、肥料価格上昇などにより、食料価格が上昇傾向にある(日経日経ヴェリタス)。農作物・肥料価格の先行指標である「農業ETF」は高値圏で推移している。

・ロシアのウクライナ侵攻により食料・資源・エネルギー価格が上昇している。西側の制裁は長引きそうなので、これらの価格は高止まりしそう。ただ、過去50年間の戦時の商品価格の高騰を分析すると、開戦5ヶ月後に5割程度まで高騰してピークを付けた後、下落に転じている(日経)。今回も天然ガス以外は過去と同様の展開になっている。日経

・米住居費が上昇している。家賃上昇が2022年と23年の米CPIを1.1ポイント押し上げるとされる。日経

・経済の脱グローバル化(グローバル化の再構築)で、製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇している。日経

・世界の生産年齢人口比率が2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなくなる可能性がある。日経日経

<デフレ要因>
・世界中の中央銀行が金融引き締めをして需要を減らそうとしている。

・経済や社会のデジタルシフトが加速している。
*経済や社会のデジタルシフトは強力なデフレ圧力になる。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば検索やSNSは無料だし、ネット上では価格比較を簡単にできるので売り手は超過収益を得にくくなっている。またスマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。他にも複製コストゼロのデジタルソフトやシェアリングサービスの普及などもあり、価格は下がりやすくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争が起きると価格がゼロに近づく。

・イノベーション(新結合・技術革新)が加速している。今はインターネットやAIにより、情報・人・モノの「新結合」が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。
・産業の「自動化」により、生産コストが低下している。
・世界的に経済成長率が鈍化傾向にある。過去40年で米国の潜在成長率は3%前後から2%前後に低下している。日経
・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向(収入に占める支出の割合)は低い。
・世界的に少子高齢化が進んでいる。高齢者は支出が少ない。労働者は高齢者を支えるための税金が増え、収入や支出が減りやすい。
・人手不足で成長力が低下している。
・株安などで資産価格が下落している。

以上をまとめると、インフレの大きな要因はサービス価格の上昇、財物価の上昇、資源高、金融緩和による住宅市場の過熱あたりになる。このうちサービス価格の上昇以外はすでに終わりが見えているので、米国のインフレ率は徐々に落ち着いていきそう。ただサービス価格のインフレはしぶといので、FRBが目指す2%で落ち着くのは2024年頃になりそう。

日本のインフレは値上げラッシュがまだしばらく続きそうなので、2023年の2月頃まで3~4%のインフレが続きそう。その後はピークアウトして1~2%あたりで落ち着きそう。(11/22日経11/30日経12/11日経12/13日経12/28日経)。

今回のインフレの波がおさまった後も、人口動態や非グローバル化、気候変動などの構造要因は残るので、以前のような超低インフレ環境には戻らないかもしれない。

■金利
・米国の政策金利は4.5%で、3ヶ月金利は4.37%、2年金利は4.42%で、10年金利は3.87%、30年金利は3.95%になる。
・日本の2年金利は-0.03%で10年金利は0.42%、30年金利は1.57%になる。

*名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態では、国債を買ったり銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。現在の実質金利は上昇基調にあり、米国の実質10年金利は約1%、日本は-1%くらいになる。

*現在の債券は魅力的な水準になっている。たとえばリスクの低い米2年債は利回りが4.4%もある。その他の質の高い債権にも魅力的な利回りのものが多くなっている。今後利回りがさらに上がる可能性もあるが、急上昇期はすでに終わった可能性が高いので、不安定な値動きの他の資産よりも資金を吸収しやすくなる。12/24日経

*投資家は企業が将来生み出すであろう利益から金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益は減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分は多くなり、理論価値が下がりやすくなる。

*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.4%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。
*米10年金利が米2年金利を下回ると、その1年~1年半後に景気後退に陥ることが多い。米国では2022年6月に一時10年金利が2年金利を下回っており、現在もそれが続いている(日経)。8月には英国、スウェーデン、カナダ、ニュージーランドでも逆イールドが発生している。日経
*米10年金利が米3ヶ月金利を下回ると、その後、比較的すぐに景気後退する傾向がある。10月の終わりから逆イールドが発生している。

*景気拡大期の「良い長期金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場へのネガティブな影響が大きい。ヴェリタス
*景気拡大期終盤に金利が上昇すると、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こりやすい。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。

*利上げ局面で中銀が利上げを停止すると市場は急速に利下げを織り込み始め株高が続くことが多い。警戒が必要なのはその後になる。金利が高い中での株高は危うい株高となり、なにかのきっかけでショックが起こることが多い。過去を振り返っても、利上げ終了後は1年ほど株が上がり、「サブプライムローン」の破綻などがショックの引き金を引くことが多かった。今の流れでいくと、本当の景気後退がくるのは23年終わりから24年にかけてになる。12/8日経

・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は3の段階になる。

■債務
・世界の債務はコロナ下で急拡大し過去最高水準のGDP比343%に達している(11/27日経)。ただ、対コロナの経済対策により、家計や企業、金融機関の財務状態はコロナ前よりも健全になっている。デフォルトが急に増える状況ではない。日経日経ヴェリタス日経ヴェリタス

・債務の質は劣化しており、米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割超が格付けの最も低いトリプルBになっている。*日本には低格付け債市場がない。
・米欧でハイイールド債の国債に対するスプレッド(上乗せ金利)が10%を超える債券の割合が1割程度まで増えている。日経
・欧州企業全体の信用リスクを示す指数は7月に一時、コロナ危機下の2020年3月並みの水準まで悪化している。日経
・米欧の低格付け企業向けの融資「レバレッジドローン」の融資実行額が過去最高水準で推移している。また企業負債のGDP比率は12年には65%前後だったが、足元では80%に迫る水準まで上昇している。借り手の返済能力は落ちており、今後の金利上昇局面では返済に行き詰まる企業が続出する可能性がある。日経ヴェリタス

・日本政府の債務残高はGDPの2倍を超えており、先進国の中で断トツトップ。放漫財政により債務残高は毎年着実に膨らみ続けている。日経

*金利が経済成長率を下回っている状態では、企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にすることができるので債務が膨らみやすくなる。政府も多少の財政赤字を続けていても債務残高のGDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。
*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構造になっている(日経)。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りていない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。
・債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くと、どこかで必ず資金の逆回転が起こる。債務拡大ペースはここ10年、毎年GDPの成長速度を上回っている。

・中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業のものなので計画に沿って徐々に削減していけそう。削減できなくても政府債務は実質的に返済不要なので特に問題なさそう。
・中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる。日経

・新興国のドル建て債務の増加も著しく、10年前の約2倍(約500兆円)まで増えている。足元ではドル高が続いており実質的な返済負担が増している。一部の国ではデフォルト懸念が高まっており、デフォルトがいったん起きればドル高が一段と進み、デフォルトが連鎖しやすくなる。日経日経10/12日経10/12日経11/1日経

・国際金融協会(IIF)によると、新興国の債務残高は22年3月に1京3000兆円とリーマン危機直後の4倍まで増えている。新興国の3分の1で外貨建て国債の利回りが10%を上回っており、新興国の30%、低所得国の60%が債務返済危機に陥っている。日経

・世界で過剰債務企業が増えている。本業の利益が借金の利払いより少ない”ゾンビ”企業が全上場企業(2万4500社)に占める比率は2021年度に16%になっている。直近ではこうした企業が破綻に追い込まれる事例が相次いでおり、仏アリアンツ・トレードは23年に世界の企業の倒産が21年比で26%増えると予想している。日経

・米ムーディーズは今後の世界の社債について、最も悲観的なシナリオだとデフォルト率が14.5%になると予想している。これは1933年の世界大恐慌の最中の15.8%以来の水準になる。リーマン・ショック時のデフォルト率は12.1%になる。日経

<バブルについて>
バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより生じる現象。現在バブルは発生しているが、その投資主体は民間から政府(中央銀行)にシフトしているので(日経)、バブルは破裂しにくい。政府が資産を売却すればバブルは破裂するが、政府債務は実質的に返済不要なので資産を大きく売却する可能性は低い。足元ではインフレ対策として資産の売却を始めてはいるが、インフレが落ち着けば売却をやめると思うので、バブルが完全崩壊する可能性は低い。

■金融政策、財政政策
・世界中の中銀がインフレ対策で金融引き締めを行っている。ただ日本や中国など一部の中銀は金融緩和を続けている。

日銀が金融引き締めをしないのは、日本のインフレ率が2%程度と低く、コストプッシュ型の悪いインフレのため。日銀は現在のような需要不足の状態(10/6日経12/7日経)で引き締めをすると景気後退に陥ると考えている。ただ、2000年以降の7割の期間は需要不足の状態であり(11/15日経)、需要不足は今に始まったことではない。このような状況で金融緩和で競争力の乏しい産業を支えると競争力はさらに落ちていく。日本の長期金利は0%台。これは投資先がなくなっていることを意味する。このような状況で無理矢理投資をすると歪みが生じる。

日銀は長期金利の上限を引き上げる予定は「全くない」と言っておきながら、12月にその上限を突如引き上げた。これは投機筋対策としては効果があったようだが、市場からの信頼を失ったように見える。

日銀は12月に長期金利の上限を引き上げると同時に月間の国債買い入れ額を増やした。これは矛盾する政策で、金融政策の限界が近づいているように見える。

日銀は現在も市場金利の不自然な押さえ込みを続けているが、その副作用として円安・インフレが発生している。

*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利をあまり引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀は政策金利を1%まで上げると2年程度で債務超過に陥るとされる(日経日経日経)。FRBは政策金利を3.0~3.8%まで上げると金利収支が「逆ざや」に転じるとされる(ヴェリタス日経ヴェリタス)。ECBも金利引き上げにより財務状態が危機に陥る可能性が高い、とされる。12/10ヴェリタス
*MMTは日本が行っている金融・財政政策とは若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。

■政治
・日本の政治は比較的安定。ただ、日銀の財政ファイナンス(12/19日経)により財政のタガが緩みまくっている。今年度の赤字国債は50兆円超で(11/5日経)、来年度の赤字国債も同程度になる見込み(12/24日経)。国の予算の大半は成長投資ではなく、国の“ランニングコスト”として使われているので(12/25日経)今後税収が増える見込みもほぼない。足元では金利が上昇しており(12/24日経)、国債格下げリスクが生じているので(12/25日経)、近い将来、日本の財政は危機を迎える可能性が高い。

・海外は不安定。ウクライナ紛争により、ロシアと西側の関係は当分冷え込みそう。
・米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に長期にわたり続きそう。
*米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制を強化しているので、民間の活力がそがれそう。日経10/24日経
・中国では習近平総書記の3期続投が決まったが、周りを全てイエスマンで固めており、マクロ経済に詳しい人物が1人もいないので経済が低迷・混乱しそう。米中対立の影響で先端技術が入ってこなくなっているので、それも低迷に拍車をかけそう。
・米欧は格差拡大や価値観の分断を背景にしたポピュリズム(大衆迎合主義)が拡大しつつある。ポピュリズムは目先の利益を優先するので、長期では成長が伸び悩みやすくなる。
・EU域内で財務格差が広がりつつある。財務状態の異なる国々で単一の通貨を使うことにはもともと無理があるので、EUは崩壊する可能性がある。・・と思っていたが、コロナ危機やウクライナ紛争などの危機でEU加盟国の結束は強まっているらしい(10/14日経10/27日経)。・・ただ金利上昇局面では債務問題絡みのゴタゴタは避けられないように思う。

■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はピークアウトしたようにみえる。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。自動車販売もピークアウトの兆しが出ている。10/22日経
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は低下傾向で49.0と中立水準を下回っている。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数は56.5と高水準を維持している。
*同指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増える。
ユーロ圏のPMIは47.8。好不況の分かれ目である50を6カ月連続で下回っている。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは47.0。3月以降の10ヶ月間で50を下回る月が8ヶ月ある。
米国の失業率は減少傾向で現在は3.7%。ほぼ「完全雇用」の水準(3.5%)にある。
*米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥るとされる。
*米失業率が「完全雇用」の水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。日経
・米景気の先行指標であるダウ輸送株ラッセル2000は下げ基調になっている。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りは1月頃から上昇基調になっている。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれる。現在は3つ起きている。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照

■その他の株式シグナル
米個人投資家の心理は株価の先行指標になる。個人投資家の心理は株式市場の「逆指標」になるとされ、「悲観」の場合は大底、「楽観」の場合は天井を示唆することが多い。9月の個人投資家心理は「弱気」が60%を占めており、「異常な弱気」の水準。この指標が「異常な弱気」を付けた後の6~12ヶ月は平均以上の株価上昇になりやすい(日経)。現在の「弱気」は47%。

ブルベア指数も米個人投資家の心理を示し、株価の先行指標になる。同指数は4月27日にマイナス42%、6月20日にマイナス41%と「極度の悲観」に達している。マイナス40%を超える悲観はリーマンショック後の2009年3月に記録したマイナス51%以来になる(東洋経済)。現在はマイナス21%と「悲観」の状態にある。

投資家の強欲と恐怖指数(Greed and Fear Index)も株価の先行指標になる。この指標が「Extreme Fear(極度の恐怖)」となっている場合は、すでに株価にほぼすべての悪材料が織り込まれていることが多く、株価は好材料に反発しやすくなる(東洋経済)。現在は37で「Fear」の水準。

・米国債の予想変動率を示すMOVE指数も株価の先行指標になる。この指数が株価の予想変動率を示すVIX指数の5倍に達すると株式市場は下落することが多い。7月頃にMOVE指数はVIX指数の5倍くらいまで上昇している(日経)。現在のMOVE指数は121、VIX指数は21になる。

・1871年以降の米国の平均的な景気後退期間は16.7ヶ月で、その期間の株式の平均下落期間も16.7ヶ月になる。株式は景気に6ヶ月先行するので、景気後退が始まって10ヶ月くらいたった頃が仕込み時になる。日経

・景気後退入りして最初の数ヶ月間に株価が大きく下落する傾向がある。そして景気後退入りして最初の4ヶ月間のどこかで株を買った場合、その後6ヶ月間のリターンはマイナスに終わる可能性が高い。しかし景気後退入りから5~14ヶ月の間に株を買った場合は、その後6ヶ月の投資リターンはプラスになりやすい。12/17ヴェリタス

■その他の指標
・日経平均の騰落レシオは78とやや低めの水準。
・日本株の信用評価損益率は-12.47%と平均的な水準。
・チャートは全体的に天井を打って下降トレンドが始まったようにみえる。ナスダックの週足チャートはデッドクロスを形成しているので、中長期の弱気相場に入った可能性が高い。
<ナスダック5年チャート>

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