商品情報管理プラットフォームとITアウトソーシング(ソフトウェアの受託開発など)を手がける会社。両事業の売上高比率はだいたい半々で、事業は国内のみで運営。
2020年3月期の業績の内訳は
商品情報管理プラットフォーム事業(eBASE事業)の売上高が20億円(前年比10%増)で、経常利益は10億円。
ITアウトソーシング事業(eBASEプラス事業)の売上高が23億円(前年比3%増)で、経常利益は3億円。
トータルの経常利益率は30%程度。
2021年3月期の業績予想はコロナの影響により未定。
■成長ストーリー
「最強の商品情報管理プラットフォームに」が基本シナリオ。
インターネットによる「情報爆発」により現在、消費者のニーズは多様化・高度化しており、それに伴い製品数やそれに付随する情報は増え続けている。一方で、日本は少子高齢化により労働人口の減少が続いており(2019年に外国人労働者が20万人日本に入国しているが、このペースでも労働人口の減少は続くとされる)、各社がこれら製品情報を逐一入力していくのは非常に困難な状況になりつつある。eBASEのシステムを導入すればこの手間を省けるので、今後もeBASEのシステム需要が高まっていく可能性は高い。
現在、eBASEのプラットフォームが最も浸透しているのは食品業界になる。食品スーパー売上高上位50社のうち31社がeBASEのシステムを導入しており、すでにこの業界ではデファクトスタンダード(事実上の標準)になっている。2020年4月には食品表示法が改正されアレルゲンや原材料情報の表示が厳格化されたので、今後もeBASEのシステムを導入する流れは続きそう。ただ、すでに市場の大半を抑えてしまっているので成長余地はあまり残されていない。そのため今後の主なターゲットは食品以外の業界になる。
eBASEのプラットフォームは日用雑貨、文具、家電、市販用医薬品、調剤薬局用医薬品、住宅部材、工具などの業界でも普及しはじめており、その中でも掃除用品やカー用品などを扱う日用雑貨業界向けは特に伸びている。この業界向けの売上高は前期に食品業界向けを超えており、この市場は大きいので今後も当面この勢いが続く可能性は高い。
次いで伸びているのが住宅部材(サッシ、トイレ、キッチンなど)業界で、同システムを導入すればデータ管理が楽になるだけでなく、リフォーム現場で即座に部材の発注ができたり、住宅メーカーと部材メーカーが即座に情報交換できたりするので、システムの普及は順調に進んでいる。
そして今後の新たな成長ドライバーにしようとしているのが、付加価値をつけたデータの販売になる。eBASEが持つデータベースとPOS(販売時点情報管理)データなどを組み合わせ、それをAIなどで分析すれば新商品の提案や各店舗の個別化を図れるようになるという。今年1月には自動発注システムを手がけるシノプスと業務提携。シノプスの持つ需要予測システムとeBASEの商品情報を掛け合わせれば、需要予測の精度をさらに高められるという。
eBASEプラス事業(ITアウトソーシング事業)の方はほぼ横ばいの業績が続いており、今後も穏やかな成長を続ける予定だという。eBASE事業へエンジニアを回す案もあるらしい。
■問題点
・成長力がやや弱い
ビジネスモデルは強固だが、売上高の伸びがやや弱い。過去5年の決算資料を見ると前期比で10%以上伸びている期がない。ただ市場の開拓余地はまだまだありそうなので長期の成長は期待できる。
・景気後退の影響を受けやすい?
eBASE事業はストック型のビジネスモデルのように見えるが、この事業の収益構造は継続課金で稼ぐというよりも、システム導入時に大きく稼ぐモデルなので、景気後退期は設備投資の減退からシステム導入が減る可能性がある。ただ、eBASEのシステムを導入すれば中長期的にコストを大幅に削減できるので、景気後退期でもそれほど引き合いが減らない可能性もある。
eBASEプラス事業(ITアウトソーシング事業)の方も景気後退による投資抑制の影響を受けるかもしれないが、デジタルシフトは今のメガトレンドなのでこちらの事業もそれほど落ち込まない可能性もある。
・社長ががめつい?
この会社は以前インフォマートのシステムを受託開発しているが、システム納品後、しばらくしてから、「システムの著作権料を払え」と訴訟を起こしている(後に棄却)。訴訟を起こしたタイミングがインフォマートの事業が急拡大し始めたころなので、訴訟のきっかけは社長の「嫉妬」の可能性がある。
インフォマートのシステムはeBASEのシステムとよく似ており、eBASEのエンジニアがインフォマートのシステム開発を主導した面も大きそうなので、eBASE側の主張もあながち無理なものとは言えないのかもしれないが、それでも契約にないものを後で要求するのは問題があるように思う。
ただ、もしここに書いたことが事実で、社長が嫉妬深い性格だったとしても、その性格によって強靱なビジネスモデルが構築されたという面もありそうなので、必ずしも悪い性格とは言い切れないのかもしれない。
・小売り業は淘汰が進んでいく
足下ではドラッグストアなど小売業の淘汰が進んでおり、国の生産性を高めるためにもそれは必用だとは言われているが、eBASEの顧客数が減るという側面もある。ただその場合はシステム使用料を従量制にすれば問題ないのかなとも思う。
■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★★
*eBASE事業のみを分析
・参入障壁は高いか。★★★★☆。eBASEの商品情報管理プラットフォームは競合がほとんどいないため参入障壁は高い。システム使用料を非常に安い価格に抑えているので競合も現れにくい。独SAP系のハイブリスも似たようなシステムを提供しているが、猟場がだいぶ違うようなので問題なさそう(要調査)。
・ストック型ビジネスか。★★★☆。プラットフォームを継続的に使ってもらうビジネスモデルなのでストック型には見えるが、システム導入時に大きく稼ぐモデルなので、ストック型収益は全体の4割くらいしかない。
・時流に乗っているか。★★★★★。クラウドによるデータの一元管理(共有化)はメガトレンド。
■チャート
過熱感はあるが、特に問題はなさそう。
■まとめ
成長力は穏やかだがビジネスモデルは強く成長余地はまだまだ残されている。株価が大きく下がることがあればもう少し買いたい。
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