2021年4月2日金曜日

10倍株候補 ココナラ

 ■どんな会社か
個人スキルをネット上で売買するプラットフォーム「ココナラ」を運営する会社。他に法律相談サイト「ココナラ法律相談」、ユーザー同士が直接会ってサービスを提供する「ココナラミーツ」も手がける。今年3月にマザーズ上場。従業員数は110人。

個人スキルをネット経由で提供するクラウドソーシング企業はいくつかあるが、クラウドワークスやランサーズなどが扱う企業向けサービスでは、企業が発注元になり、企業が価格を決めているのでサービスの内容は限られている。対して、「ココナラ」が提供するサービスは、売り手の知識、経験、スキルなど、どのようなものでも出品でき、売り手が価格を決められるので、扱うサービスは幅広い。

「ココナラ」で出品されるサービスには大きく分けて「制作・ビジネス系カテゴリ」と「相談系カテゴリ」がある。そこから21のカテゴリに細分化され、さらにそこから211のサブカテゴリに細分化される。

現在の「ココナラ」の会員登録者数は約200万人になる。出品者数は約20万人で約40万件のサービスが出品されている。希望するサービスがない場合は「仕事・相談の公開依頼」を通じて、出品者に新規サービスを要請することもできる。

収益はユーザー間取引の手数料から得る。手数料は取引金額の25%(取引金額が5万円を超える場合は段階的に10%まで引き下げ)になる。

サービスを1度利用した購入者は、他のカテゴリのサービスを購入する傾向があり、また足元ではサービス単価の高いビジネス向けが伸びているので、平均販売単価は上昇傾向にある。

ココナラの経営指針は「「ココナラに行けば解決する」という相談窓口になる」というもので、そこから法律相談サイトやユーザー同士が直接会ってスキルを提供するプラットフォーム事業が立ち上がっている。

業績推移は
2018年8月期が売上高7.6億円、経常利益が0.4億円
2019年8月期が売上高11.3億円、経常損失が10.5億円
2020年8月期が売上高17.7億円、経常損失が0.8億円
(予)2021年8月期が売上高24.2億円、経常利益が0.4億円
になる。売上は毎期35%超伸びている。足元では損益分岐点を超えたもようで、今後は売上の拡大に伴い利益率が高まっていきそう。

■成長ストーリー
「最強のスキルシェア・プラットフォームに」が基本シナリオ。

日本では少子高齢化の影響で人手不足が慢性化している。一方で、経済のグローバル化に伴い、企業間の競争が激化している。このような状況で企業が競争力を高めていくには社外の知恵やスキルを活用することが不可欠になる。

また子育て中の主婦や引退したシニアなど、スキルを持っているのになんらかの理由で職に就くことができない人がいる。一方で、フリーランス人材が増加しており、自らに足りないスキルを補完するサービスが求められている。

ココナラではこのようなニーズをマッチングさせることを生業に、成長していくことを基本戦略としている。

現在、「ココナラ」における個人間ユーザーのマッチングはクリティカル・マス(商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がる分岐点)に達しているので、今後はほっといても、ネットワーク効果で市場が自己増殖するフェーズに入っている。

一方で、法人向けではまだそのレベルには達しておらず、テコ入れが必要な段階にある。ココナラは現在、法人向けに最も力を入れており、ここでも圧倒的なポジションを築こうとしている。

「ココナラ」に出品されている法人向けのサービスには、起業相談からマーケティング、HP作成、ロゴ作成、動画編集、Web集客サポートなど、起業から事業拡大まで一連のサービスがそろっている。また企業が利用しやすいように出品者の信頼性を認定する「PRO認定制度」を設けたり、エンタープライズ向けの機能を拡充させたりして普及促進を図っている。これら施策の成果はすでに出始めており、足元では売上の過半をビジネス向けが占めるようになっている。

「ココナラ」で得た圧倒的な知名度を利用して、対面取引の「ココナラミーツ」も立ち上げている。この分野の競合は限られているので、この分野でも覇権を取れる可能性がある。

また記事や動画、楽曲を販売できる「ココナラブログ」も立ち上げている。この分野の競合も限られているので、ここでも覇権を取れる可能性がある。

日本におけるスキルシェアはまだ緒に就いたばかりなので拡大余地は大きい。総務省によると2017年の日本におけるスキルシェアの利用率は3.7%だが、米国では29.6%ある(「スマートフォン経済の現在と将来に関する調査研究の請負の報告書 (2017年)」)。この市場はまだまだ成長市場であるので、それを加味すると日本でのスキルシェア市場は少なくともあと10倍以上の成長余地がある。

シェアリングエコノミー協会(東京・千代田)によると、2020年度の国内スキルシェア市場は2500億円程度になるが、2030年度にはそれが最大で2兆6千億円になるいう。3/20日経
*シェアリングエコノミー協会の理事・幹事はココナラの会長を含むシェアリング企業の社長らで構成されているので、上記予測には当事者らの願望が多分に含まれている可能性がある。

■問題点
・競合がいくつか存在する
企業向けのクラウドシーシング企業には「クラウドワークス」「ランサーズ」「ビザスク」などがおり、個人向けのスキルシェア市場には「ストアカ」「カフェトーク」「タイムチケット」「モッシュ」などがいる。ただ、それぞれの会社には特色があり、数も限られているので棲み分けはできそうでもある。

海外には「ココナラ」と同じような事業を世界展開するファイバー・インターナショナルという会社も存在するが、ファイバー社はまずは英語圏を押さえる方向のようなので、当面は心配しなくてもよさそう。

・手数料が高い
「ココナラ」での取引金額は大半が5万円以下になるが、そこでの手数料は25%もかかる。ただ他のスキルシェア企業もだいたい似たようなものなので(カフェトーク40%、ストアカ35%、タイムチケット26%、ファイバーインターナショナル26%)、相対的に見れば割高感はなさそう。

ビジネス向けではクラウドワークスやランサーズなどが手数料10%程度と低いが、ココナラでもビジネス向けの単価が高いサービスになると、10%程度まで手数料が下がるので、ここでもそれほど問題なさそう。

ただ、新興のスキルシェア企業「モッシュ」は8%(割引中の現在は3.6%)と低いので、状況次第では手数料競争が始まる可能性もある。

クラシファイドサイトを運営するジモティーも競合になる可能性がある。「ジモティー」では基本的に手数料がかからないので、ジモティーがうまいことやれば手強い競合になる可能性がある。

・匿名性であること
「ココナラ」はユーザーが気軽に利用することを重視して設計されているので匿名出品が多い。ただ、匿名だと信頼性が低下するという問題が生じる。「スキル」といった形のないものは外部からは評価しにくいので、それが匿名で出品されることにより、より評価をしにくくなる。また匿名になると責任の所在が曖昧に感じられるので著作権侵害などの法的トラブルが発生する可能性もある。

「ココナラ」では「PRO認定制度」などを設けて、出品者を審査し、出品者の信頼性を高めるような施策も打っているが、それもまだ限定的な話になる。ただ出品者側も匿名だとサービス単価が安くなることに気づいているはずなので、長期で考えれば自然と実名出品が増えていきそうでもある。

・テレビCMを多用する
クラウドワークスやランサーズなどの会社は営業担当者を抱えているが、ココナラでは抱えていない。そのためテレビCMを流して認知度の拡大を図っている。ただテレビCMはお金がかかるので、今後利益を圧迫する可能性もある。ただ、これは必要経費であり、現時点ではそろそろ黒字化しそうなので、それほど問題なさそうでもある。

・占い事業が主力
ココナラの目論見書には「「占い」カテゴリのサービス全体に占める割合は高い状況にあり、2019年8月期通期、 2020年8月期通期及び2021年8月期第1四半期における同カテゴリの当社流通高全体に占める割合はそれぞれ 41.6%、32.2%及び28.8%(同営業収益に占める割合は51.2%、40.7%及び36.6%)となっております」とある。少し怪しげな印象を受けるが、「占い」の売上比率は徐々に低下しているので、これもそれほど問題ではなさそうではある。

・コロナが収束すると利用が減る可能性がある
コロナで巣ごもりが続く状態ではクラウドソーシング需要が高まるが、コロナが落ち着けばそれも落ち着きそう。ただ長期で考えれば需要が増加していくのはほぼ確実なので、これも特に問題なさそうではある。今回のコロナで業務のオンライン化や社外人材の活用が一気に根付いた感もあるので、今後普及が加速する可能性もある。

・社会保証が手薄
現在の法律は「会社勤め」を前提に作られているので、クラウドソーシング分野の法整備が遅れている。そのためクラウドソーシング従事者は休業補償などの社会保障を受けにくかったり、納税などでややこしい思いをしたりすることがある。ただ、これは時間が解決してくれそう。

しかし、ココナラが最低賃金などの保障をしなければならなくなった場合は、コスト増になり利益が圧迫される恐れがある。米ウーバーでは労働者保護の負担が増しており、黒字転換が遠のいている。

・法律相談サイトは厳しそう
「ココナラ法律相談」の最大の強みは無料で法律相談ができることになるが、ココナラの法律相談では弁護士の層が薄いためか(いつも同じおじさん弁護士が回答している)、検索ランクが徐々に低下している。「ココナラ法律相談」事業の生命線はアクセス数にありそうなので、この調子でいくと収益化できなくなる可能性がある。LINE法律相談(LINE×弁コム×日本法規情報)や「みんなの法律相談」は弁護士の層が厚いので、これらに「無料」で太刀打ちできないとなると、厳しい状況になる。

・情報を探しにくそう
2020年11月末時点では約40万件のサービスが出品されているが、目的のサービスを見つけるのが大変そう。出品してもサービスが誰にも気づかれないこともありそう。そうなると出品数が頭打ちになりやすくなる。ただ、検索機能やAIマッチング機能が強化され、ユーザー数が増えていけば、その問題も解消しそう。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★4.5/5
・参入障壁は高いか。★4.5。スキルシェア分野では圧倒的なユーザー数を誇るので参入障壁は高い。スキルシェア市場でユーザーがサービスを購入する際、最大の判断材料となるのは、他のユーザーが付けたレビューになるが、「ココナラ」では270万超の圧倒的なレビュー数を誇っているので、これが高い参入障壁となっている。後発組のメルカリやDMM、クラウドワークスは「ユーザー候補はたくさんいるのに、ユーザーが思うように増えない」といった理由から撤退している。

・ストック型か。★4。人気のあるプラットフォームなのでストック型。ただ手数料の引き下げ競争が激化した場合は収益が低下する。

・時流に乗っているか。★5。スキルシェアはメガトレンド。

■チャート
上場日とその翌日に大商い(売買代金500億円程度)があったので、そこで取引された水準が1つの目安になりそう。現在はそのラインを下回っており、出来高(エネルギー)が減少しているので、そのラインを超えるのはしばらく先になるかもしれない。
<1ヶ月チャート>


■まとめ
大きな成長を見込める会社だが、足元では金利上昇局面に入っており、ココナラのような割高株は敬遠されそう。時価総額が300億円(株価1400円、PSR13倍)以下になることがあれば積極的に買っていきたい。

■補記
・実際に「ココナラ」で検索してみて
「ココナラ」で試しに「株式投資」と検索してみると約400件のサービスが出てきた。中には「香港株式IPO情報及び投資判断を提供できます」や「株式投資の判断分析資料作成します ファンダメンタル分析(基礎的要素)で根拠のある投資判断を」など、一瞬興味をひかれたものもあった。これらのサービスを出品している人は「動画編集」や「社会人の大学院進学相談」など様々なジャンルのスキルを出品していることもわかった。これは紛れもない新市場だとわかった。

ただ、やはり匿名性であることに問題を感じた。上記の香港株IPO情報を提供している人は、「モナコ在住のプライベートバンカー」らしいが、それを裏付ける情報がないので、胡散臭さが拭えなかった。また、似たり寄ったりのサービスがたくさん出品されており、スキルは形がないので、選ぶのが大変そうだと思った。

・ココナラで出品するときのポイントについて
将来、「ココナラ」になんらかのスキルを出品する可能性もあるので、ココナラが推奨する出品方法を簡単にメモっておく。出品するときのポイントは「最初は安い値段から始め、実績を積んでから値上げする」「自分の興味や適正に合ったこと楽しんでやる」の2つ。この2つをやれば長く続けることができ、収益を上げやすくなるという。

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