2021年4月2日金曜日

スマホ依存と株式投資の共通点

 スマホ依存について書かれた『スマホ脳』(アンディシュ・ハンセン)を読んだ。株式投資と通じる点があったので少し考えてみた。まずはスマホ依存になる仕組みから。

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人類の文明が今ほど進化する前、狩猟採集社会では人は飢えに苦しむ中、少しでも多くの食料を獲得し、長く生きようとした。生存のため、周囲の状況を把握し新しい情報を求める過程で、脳はドーパミンを放出し、情報収集に専念するよう促した。新しい情報があるSNSやネットニュースを見るのも、この脳の働きが関与している。

脳は新しい情報を得るときにドーパミンを放出するが、最もそれを放出するのは「何か新しい情報があるかも」という期待があるときになる。そのためチャット着信のような不確かな結果に人は強く引きつけられる。SNSの投稿につく「いいね」にも脳は大量のドーパミンを放出し、人はデジタルが与える“ご褒美”に次々と飛びついていく。そしていったん依存症になるとそこからなかなか抜け出せなくなってしまう。覚醒剤などの薬物依存をやめられないのも、このドーパミンが関与している。

フェイスブックなどのSNS企業は脳が不確かな情報を偏愛していることや、どのくらいの刺激、頻度が適切なのかを熟知しており、脳科学や行動科学の専門家を雇って、最大限の依存性を発揮するようなソフトウェアの開発に力を注いでいる。フェイスブック初代CEOのショーン・パーカーは「人間の心の脆弱性を利用した」と語り、元副社長のチャマス・パリハビティヤは「私たちが作り出したのは、短絡的なドーパミンを原動力にした、永遠に続くフィードバックのループだ」と語っている。

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株式投資との共通点は、情報収集の重要性と「何かが起こるかも」という期待感になる。株式投資をしていると情報感度が高まり、常に情報を求めた状態になる。そして、株式市場が開いているときは、株価は常に変動している、つまり、常に「何かが起きている」状態なので、一度株価が気になりだすと何度もチェックしてしまうことが多い。

これまでこの行為は無駄だとはわかってはいたが、なかなかやめられずにいた。しかし、脳の仕組みとスマホ依存の弊害(下記記載)を理解すると自然にやめることができた。現在、株式の売買は市場が開く前の成行注文のみにしているが、そうするようになってから、企業の成長シナリオやマクロ分析に集中できるようになった。今のところ特に問題を感じてないので今後もこれは続けていこうと思う。

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<スマホ依存の弊害(一部)>

人がマルチタスクをしていると、脳はドーパミンを与えて気持ちよくしてくれる。このような仕組みは、先祖があらゆる刺激に迅速に対応できるようにするために作られた。生き残るためにドーパミンを与えて簡単に気が散るようにしたのだ。

しかし、マルチタスクをしていると長期記憶の形成に問題が生じる。長期記憶には対象に集中して「これは大事なことだ」と脳に認識させることが必要になるが、対象に集中しているときにSNSなどをチェックして他の情報が入り込むと、記憶の固定化が妨げられてしまう。また人は複数の作業を同時にこなしていると思っていても、実際は1度に1つのことしか集中できない。集中の対象を変えるときに脳は切り替え時間を要するが、ほんの数秒メールをしただけでも再び元の作業に100%戻るには数分かかるので、それもまた長期記憶の妨げになる。切り替え速度の速い”スーパーマルチタスカー”も人口の1~2%存在するが、それはあくまでも例外的な話だ。

記憶の固定化には睡眠も重要なるが、スマホを夜に使用するとブルーライトや情報過多の影響で脳が覚醒(興奮)し睡眠の質が低下することもわかっている。スウェーデンでは眠れなくて受診する若者の数が2000年頃と比べて8倍まで増加しているという。

スマホ依存には人生の満足度を下げる作用があることもわかっている。心の平安など、気分に関わる神経伝達物質セロトニンは、ヒエラルキー(社会階層)の高い方が分泌が増えることがわかっている。人は昔から競い合ってきたが、昔のライバルはせいぜい20~30人程度で、トップに立つのはそれほど難しくはなかった。しかし、現在はネットでライバルが数百万人いることを認識できてしまう。そうなると自分より賢かったり、かっこよかったり、リッチな人が必ずいる(少なくとも見かけ上は)。その結果、自分のヒエラルキーが低く感じられ、セロトニンの分泌量が減り、人生の満足度が低下する。実際、SNSに費やした時間が長い人ほどストレスの問題を抱えている率が高く、うつ症状のあるケースが多いことがわかっている。

他にも、スマホをよく使う人はすぐに手に入る”ご褒美”に慣れているため衝動的(短期思考)になりやすい、などの問題もある。

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もともとスマホはあまり使う方ではなかったが、このような問題を知ってからさらに使用頻度が減った。今のところスマホの使用を減らしたことが体調や記憶にどの程度影響したのかはよくわからないが、時間に余裕ができたことだけは確か。今後もスマホとは一定の距離を保っていこうと思う。

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