株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などを見ていく。
■EPS成長率・世界株式の2021年のEPS増加率は30%超、2022年は10%超。
・米国株式の2021年のEPS増加率は50%超、2022年は8%超。
・欧州株式の2021年のEPS増加率は30%超、2022年は10%超。
・日本株式の2021年のEPS増加率は30%超、2022年は10%超。
*参照:7/26日経、12/12日経、12/18ヴェリタス、12/25ロイター、12/25ヴェリタスなど
*今は金利低下で企業の利払い費が減少しており、経済のデジタル化で設備投資や人件費も減少しているので、利益が増えやすくなっている。
■経済成長率
・世界の2021年の成長率は5.9%、2022年は4.9%。
・米国の2021年の成長率は6.0%、2022年は5.2%。
・中国の2021年の成長率はは8.0%、2022年は5.6%。
・ユーロ圏の2021年の成長率は5.0%、2022年は4.3%。
・日本の2021年の成長率は2.4%、2022年は3.2%。
*数値はIMF予想。10/13日経
■インフレ
・米国の予想インフレ率は2021年が3.5~4.5%、2022年が2.2~3.2%。
・欧州の予想インフレ率は2021年が1.5~2.5%、2022年が1.5~2.5%。
・日本の予想インフレ率は2021年が0.5%、20222年が1.0~2.0%。
*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業のものなので、計画に沿って徐々に削減していけそう。削減できなくても政府債務は実質的に返済不要なので特に問題なさそう。
*コロナの影響で企業が破綻し生産基盤がなくなってしまうと、コロナが収束した後の景気回復が弱いものになってしまう。それを避けるには政府や中銀が大規模な支援をすることが必要になる。支援規模はGDPの落ち込みと同程度のものが必要で、これを実行すると財政赤字は莫大なものになる。しかし、これをしなければ恒久的な経済的損害が生じ、より莫大な財政赤字が発生する確率が高まる。参照
■政治
■その他指標
*世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほどには不況感が強まらない可能性もある。経済成長率を測る指標のGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。
*コロナ禍ではGDPが大幅に落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が上がっていれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。日経
■インフレ
・米国の予想インフレ率は2021年が3.5~4.5%、2022年が2.2~3.2%。
・欧州の予想インフレ率は2021年が1.5~2.5%、2022年が1.5~2.5%。
・日本の予想インフレ率は2021年が0.5%、20222年が1.0~2.0%。
*インフレ率が上がらないのもデジタル経済の影響が大きい。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。例えば検索やSNSは無料だし、ネット上では価格比較を簡単にできるので売り手は超過収益を得にくくなっている。またスマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。他にも複製コストゼロのデジタル商品やシェアリングサービスの普及などもあり、物価は上がりにくくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下するという性質がある。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争が起こると価格がゼロに近づく。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下するという性質がある。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争が起こると価格がゼロに近づく。
世界的にインフレが過熱し始めている。インフレ要因とデフレ要因を一通り列記して、今後のインフレ動向について考えていく。
<インフレ要因>
☆コロナ禍特有のもの
・供給基盤が破壊され供給不足が生じている。
・コロナがなかなか収束せず供給不足が長引いている。
・コロナで対面型サービスの人気が落ち、賃金が上昇している。
・コロナとの付き合いがこなれてきて需要が急増している。
・政府から給付金が支給され需要が増している。
・金融緩和の影響で資産価格や商品価格が上昇している。
・金融緩和(量的緩和)の影響で通貨価値が下落している。
☆コロナ後も続くもの
・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。再生可能エネルギーの生産コストは化石燃料由来のエネルギーと比べ割高になる。2030年までの8年間に年率で0.7%世界の物価を押し上げるともいわれる。11/19日経、11/6ヴェリタス、11/6ヴェリタス
*脱炭素シフトが一巡すれば再生可能エネルギーはデフレ要因になる。
・人手不足で賃金が上昇している。コロナ禍の株高で米国では55歳以上の早期退職者が160万人ほど出たもよう。引退した人は労働市場には戻らないので人手不足は長期に及ぶ可能性がある。11/19日経
・経済の脱グローバル化で、自国生産にシフトし生産コストが上昇している。
・世界の生産年齢人口比率は2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなく可能性がある。11/10日経
・政府は今後も大規模な財政出動をしていく予定。需要を押し上げる効果がある。
<デフレ要因>
・経済や社会がデジタルシフトしている。先に述べたようにデジタルシフトは強いデフレ要因になる。コロナでデジタル化の流れは加速している。
・イノベーションが加速している。今はネットやAIによりイノベーション(新結合)が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。
・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向は低い。
・世界的に少子高齢化が進んでいる。高齢者は支出が少ない。
・世界的に労働人口が減少傾向にある。消費が縮小する。
・人手不足で成長力が低下する。人手不足により経済・社会のデジタル化が加速する。
・なんだかんだで経済のグローバル化が進んでいる。安価な輸入品が増える。
・世界的に経済成長率が鈍化している。
・金融政策が金融引き締めに転じている。
まとめると、今後1年くらいはインフレが高進し、その後は徐々に落ち着いていきそう。ただ米国では需給ギャップが当面プラス圏で推移するようなので(10/29日経)、あと2年くらいは高水準のインフレが続きそう。
■金利
・米国の2年金利は0.73%で10年金利は1.50%。30年金利は1.94%。
・日本の2年金利は-0.094%で10年金利は0.069%。
・米国の2年金利は0.73%で10年金利は1.50%。30年金利は1.94%。
・日本の2年金利は-0.094%で10年金利は0.069%。
*名目金利からインフレ分を差し引いた実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態で、国債を買ったり、銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。現在、G20の半数以上の国で実質長期金利がマイナスになっている。この状態は今後もしばらく続く見込み。
*投資家は企業が将来生み出すであろう利益を金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益が減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分が多くなり、理論価値が下がりやすくなる。
*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.5%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。
*景気拡大期の「良い金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場への影響の方が大きくなっている。ヴェリタス
*景気拡大期終盤の金利上昇では、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こりやすくなる。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。
■債務
・世界の債務は2021年9月に過去最高のGDP比350%に達している。12/17日経
*債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くとどこかで必ず逆回転が起こる。債務拡大ペースは10年近くGDP成長率を上回っている。
*債務の質は劣化しており、米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割超が格付けの最も低いトリプルBになっている。*日本には低格付け債市場がない。
*米欧の低格付け企業向けの融資「レバレッジドローン」の融資実行額が過去最高水準で推移している。借り手の返済能力は落ちており、今後の金利上昇局面では返済に行き詰まる企業が続出する可能性がある。5/10日経
*低成長、低インフレ、過剰貯蓄の状況では、余ったお金で国債を買うか現金のまま持つようになるので、金利が上がりにくく、高債務の状態が維持されやすくなる。
*今のように金利が経済成長率を下回っている状態が続くと企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にできるので債務が膨らみやすくなる。政府債務においても、多少の財政赤字を続けていても債務残高GDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる
*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構図になっている(参照)。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りてない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。
*中国の企業債務は積み上がっているが、その大半は国営企業のものなので、計画に沿って徐々に削減していけそう。削減できなくても政府債務は実質的に返済不要なので特に問題なさそう。
*中国の可処分所得に対する家計債務比率は日本のバブル期並の120%まで高まっている。中国は今後深刻な消費不振に陥る可能性がある。参照
*中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる。9/28日経
*中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる。9/28日経
<バブルについて>
・バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより生じる現象。今回もバブルは発生しているが、投資主体はこれまでの民間から政府へとシフトしている。政府(中央銀行)が民間銀行から資金を借りて国債などの資産を買いまくっている。中銀が資産を売却すればバブルは破裂するが、中銀はインフレにこだわっており、また財政ファイナンスの面からも資産を売却する可能性は低い。中銀の借金は実質的に返済不要なので、その意味でも資産を売却する可能性は低い。
・先進国の金融機関の財務状態は比較的良好なため、先進国では金融危機(バブル崩壊)が起こりにくい。デフォルトが発生し、それが連鎖しても金融機関は7%超の自己資本比率を維持できるとされる。参照
■金融政策、財政政策
・世界中の中銀がインフレ対策で金融政策を引き締めに転じている。ただ景気が回復途上なのでそのペースは穏やか。
*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利を引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀が金利を2%まで上げると日銀は債務超過に陥るとされる。10/1日経
*MMTと日本が行っている金融・財政政策は若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利を引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀が金利を2%まで上げると日銀は債務超過に陥るとされる。10/1日経
*MMTと日本が行っている金融・財政政策は若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。
*コロナの影響で企業が破綻し生産基盤がなくなってしまうと、コロナが収束した後の景気回復が弱いものになってしまう。それを避けるには政府や中銀が大規模な支援をすることが必要になる。支援規模はGDPの落ち込みと同程度のものが必要で、これを実行すると財政赤字は莫大なものになる。しかし、これをしなければ恒久的な経済的損害が生じ、より莫大な財政赤字が発生する確率が高まる。参照
■政治
・日本の政治は比較的安定。岸田政権の支持率は安定して推移しているもよう(12/28日経)。ただ財政支出ではばらまき色が強く、その効果を検証する仕組みもないので、今後も愚策が繰り返されそう。日本の長期的な見通しはあまりよくない。
・海外は不安定。米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に今後長期にわたり続きそう。
*米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制が強化されつつある。今後成長力が弱まる可能性がある。
・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制が強化されつつある。今後成長力が弱まる可能性がある。
・米欧は格差拡大や価値観の分断を背景にしたポピュリズム(大衆迎合主義)が拡大しつつある。ポピュリズムは目先の利益を優先するので、成長力が落ちやすくなる。
■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数は高水準で推移している。
・米景気の先行指標である米住宅着工件数は高水準で推移している。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は61と高水準で推移している。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数は69とさらに高水準で推移している。
*同指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増える。
・米国の失業率は減少傾向で現在は4.2%。
*米国では失業率が前四半期と比べて0.25%上がると景気後退に陥るといわれる。
*失業率が最低水準(3.5%)まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。日経
・米景気の先行指標であるダウ輸送株やラッセル2000は足元ではやや調整気味だが、高値圏で推移している。
*失業率が最低水準(3.5%)まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。日経
・米景気の先行指標であるダウ輸送株やラッセル2000は足元ではやや調整気味だが、高値圏で推移している。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るといわれる。現在は「物価上昇」のみ。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照
・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は1~2の段階になる。
■その他指標
・日米の騰落レシオは94、98と問題のない水準。
・日本株の信用評価損益率は-10.86%と問題のない水準。
・チャートは全体的に上昇チャート。ただマザーズだけは下降チャート。
・チャートは全体的に上昇チャート。ただマザーズだけは下降チャート。
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