2016年9月16日金曜日

ダブルスコープ

9月9日の日経産業新聞にダブルスコープの記事が載っていた。記事によるとダブルスコープが新たに開発したセパレータは電気自動車の燃費を4割以上向上させることができ、ダブルスコープはそのセパレータの生産設備を倍増させるとのこと。

ダブルスコープの今年の予想売上成長率は34%であり、現在のPERは24倍と割安感がある。ここ3週間で出来高をつけて大きく上がっているので上昇トレンドが生まれそうな雰囲気がある。詳しく調べてみる。

■どんな会社か
リチウムイオン電池のセパレータ(分離膜フィルム)製造に特化している会社。リチウムイオン電池はスマホやパソコンなどで使われている電池だが、足下では電気自動車向けの需要が急増しているという。

電気自動車の一番重要な部品は走行距離を決めるリチウムイオン電池といわれている。そのリチウムイオン電池は主に負極剤、正極剤、電解液、セパレータで構成されているが、その中で一番重要な部材は性能を決めるセパレータになる。このような状況から電気自動車の普及で一番恩恵を受けるのはおそらくセパレータ製造企業になる。

電気自動車はスマホの1万倍のセパレータを使うため、電気自動車の普及にともないセパレーター企業の業績が一気に拡大していく可能性が高い。

■電気自動車について
地球温暖化や大気汚染問題で日米欧及び中国では燃費規制、排ガス規制が強化されている。2020年頃にはそれが一段と強化されEV(電気自動車)、PHV(ガソリンを補助的に使う電気自動車)の普及が加速するという。

中国では現在、政府が補助金で電気自動車支援をしているので販売台数は世界トップになる。2020年には500万台の販売をめざしているという。
電気自動車で有名なテスラは2020年に100万台、フォルクスワーゲンはは2025年に300万台の目標を掲げている。他の大手自動車メーカーも電気自動車の開発を急ピッチで進めている。

米調査会社IHSオートモーティブによると電気自動車の販売台数は今後年率30%以上のペースで上昇していき、2018年以降はさらに加速していくという。車載用電池の市場規模は2020年に2015年の5倍以上になるという。

ダブルスコープは中国における車載用電池の湿式セパレータのシェアがトップであり、今後は欧州向けの販売が拡大していくという。今回の生産設備の増強はその需要に対応したもので、生産能力は2018年に2015年比で250%以上になるという。

■なぜ株価に割安感があるのか
株価は5月頃をピークに、そこから半値以下まで落ちている。5月に10%程度の公募増資をしたのも影響しているのかもしれないが、一番の理由は競争激化の懸念によるものかもしれない。あるアナリストが中国企業が湿式セパレーターの出荷を開始したため2017年頃には値崩れする可能性があると指摘したあたりから下落している。

しかし車載用電池には高い安全性が要求されるため、新興企業が出荷できるようになるのにはしばらくかかるとも言われている。リチウムイオン電池は発火しやすく、サムスンのスマホのようなことが車で起きれば一大事になるからだ。

ただ中国企業を除外して考えても競争は激化しそうな雰囲気ではある。ダブルスコープは18年までに200億円を投資すると言っているが、旭化成や東レ、SKイノベーション(韓国)、住友化学も200億円以上投資するという。2018年の湿式の生産能力はダブルスコープが3億平方メートル、住友化学は4億平方メートル、旭化成も4億平方メートル、東レは5億平方メートルになるという。供給量は各社とも現在より2倍以上に増え、供給過剰になる可能性がある。

住友化学はテスラ向けを作っているが、4億平方メートルでテスラ車50万台分をまかなえるという。上記に上げた会社の生産能力を合計すると16億平方メートルになり、テスラ社200万台分の電池を作れることになる。4社の湿式セパレーターの世界シェアを50%と見積もると、全世界での生産能力は32億平方メートルとなり、それだけあればテスラ車400万台分の電池が作れることになる。湿式セパレーターはすべてが車載向けではないので仮に300万台分としても、やや供給過剰になるかもしれない。
*独コンサルのローランド・ベルガーの予測では2020年に200万台。

ダブルスコープは生産性を毎年最低でも10-15%は上げられるというので、10-15%程度の価格下落には対応できそうだ。しかし単価下落はその程度でおさまるのだろうか。
ちなみに2015年の下落率は5%ほどになる。高付加価値品を求める顧客が多いためほとんど単価が下落しなかったという。

■その他の問題点
・現在の売上高比率は中国が5割以上となっているが、中国の経済は失速する可能性が高い。
・中国のEV市場は政府主導のため長続きしないといわれている。実際すでに補助金政策はペースダウンしており2016年度の販売台数は下振れするともいわれている。
・リチウムイオンの全固体電池が完成したらセパレーターが不要になる。しかし実用化は2020年以降との話。
・ダブルスコープはセパレータ専業会社のためリスクが高い。
・地合いが悪い。
・空売り機関は1500円台で空売りをしており彼らの目標株価は1300円以下になる。

■結論
環境負荷やエネルギー効率の観点からみると、電気自動車への移行は間違いなく進んでいきそう。ダブルスコープがこの大きな流れに乗れれば業績も堅調に推移していくように思う。社長はやり手っぽいので波に乗れそうでもある。

現時点でも割安感はあるが、中国リスク、過剰供給リスク、専業リスク、下げ相場ということをふまえると、仕込むタイミングはPER20倍の1600円あたりかなと思う。

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