米国では失業率の低下が止まると地合いが反転しやすいという。
失業率の低下が続いているときは景気回復期であるため株価は上昇するが、その低下が止まり横ばいの状態が続くのは景気拡大が止ったことを意味するため株価の上昇も止まるという。過去を振り返ってみると失業率と株価の動きは反比例しており、2001年と2008年のバブル崩壊は失業率が低位の横ばいからやや上昇したときに起きている。
足下の2016年は6月の4.7%から横ばいが続いており、直近の8月は4.9%とやや上昇している。この調子でさらに上昇すれば地合いが反転する可能性がある。
ただし2001年の暴落前の失業率は4.1%であり、2008年は4.6%のため、今の4.9%にはまだ低下余地が残されているようにも見える。
他にも地合いが反転しそうな材料はある。
米株価は指標面ではすでに割高で、S&P500種株指数のPER19倍であり、シラーPERでも割高とされる25倍を超えて今は27倍になっている。この水準はリーマンショック前に近い。
バフェット指標(全株式時価総額とGDPを比較したもの)ではリーマンショック前をすでに上回っている。
景気循環的にも終盤に近い。
反対に、相場を下支えするような材料も依然残っている。
今は過去に例がないほどの低金利状態が続いており、短期金利が0.5%で長期金利が1.7%しかない。2000年時の短期・長期金利は約6%、2007年は5%である。
2001年と2008年のバブル崩壊直前には、政府が景気の過熱を冷ますため利上げを繰り返し、短期金利が長期金利を上回るほどの引き締めを行っているが、今回は景気に過熱感はなく利上げは非常にゆっくりと行われている。
また米景気は相対的に堅調で、米ドルの実質実行レートは16%割高になっている。ドル高は米国にとって引き締め効果があるが、ドルの下落余地が16%残されているので、これは今後の緩和材料になりえる。
それと金融緩和によりかつてないほどの金余り状態でもある。現時点での機関投資家の現金保有比率は、バブルが崩壊してないにもかかわらず、リーマンショック後よりも高くなっている。
■まとめ
今回のバブルは政府・中銀主導で始まった。今のところ中銀がきつい引き締めを行う気配はないのでバブルは当面はじけないのではないように思う。バブルは金融緩和策が限界に達するまで、あるいは政府が事態を収拾しきれないような出来事が起こるまで膨らんでいくのかもしれない。先日亡くなった”日本一の個人投資家”竹田和平氏は「2020年代前半に国債バブルが破裂する」といっていたが、もしかしたらそのあたりまでバブルは膨らみ続けるのかもしれない。
そもそも今回のバブルは国が市場に流通するお金の量を増やして市場を底上げしたものだから、お金の量を減らしていかない限りははじけないのかもしれない。今のところ中銀がお金の量を急激に減らしていくような気配はない。もしかすると、今回のはバブルではなく、中銀の市場底上げ策による株価上昇なのかもしれない。
参考:日経新聞「米国株の高値波乱、2つの不安と1つの希望」(2016/9/12)、「株安局面の株高リスク 英投票後の待機資金に思惑」( 2016/6/17)、eワラント証券のコラム「米国株は高値警戒ゾーン突入か?」(2016/08/15)
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