2020年10月2日金曜日

10倍株候補 ジモティー

■どんな会社か
地元取引掲示板「ジモティー」を運営する会社。「ジモティー」とは全国市区町村の情報を目的別に分類(クラシファイ)して掲載するクラシファイドサイトで、ユーザーは基本無料で「三行広告」を出すことができる。取引は直接会って行うのが原則。

収益の8割はサイトに表示される広告枠の販売から得ており、2割は提携サイトへの送客による成果報酬と、投稿有料オプション(投稿を目立たせる機能)からの収入になる。事業は国内のみで運営されており、完全な競合は存在しない。

広告枠の販売はページビューが増えるほど広告収入も増える仕組みで、ページビューはテレビCMや上場による知名度向上、コロナによる巣ごもりなどで順調に増えている。投稿が増えると自然検索でヒットする順位が上がり、広告宣伝費が軽くなるという仕組みでもあるので、ユーザーが増えるほど利益率が上昇するビジネスモデルになる。

業績は
2017年12月期が売上高6.6億円、営業損失-3.7億円
2018年12月期が売上高9.8億円、営業利益900万円
2019年12月期が売上高12.6億円、営業利益0.8億円
2020年12月期が予想売上高14.3億円、予想営業利益3億円
になる。2018年12月期から投資回収期に入っており、足下の業績も順調に拡大している。

利益は各四半期でばらつきが出るが、これは広告宣伝(テレビCM)の影響になる。大型家具・家電の処分が多くなる4月と12月の少し前にテレビCMを集中的に打つので、第1四半期と第4四半期の利益は下ブレやすくなる。

■成長ストーリー
「最強の地元取引プラットフォームに」が基本シナリオ。

ジモティーの基本ミッションは「粗大ゴミ削減」「貧困緩和」「ご近所付き合いの再構築」の3つになる。ジモティーはこれらのミッションをこなすことで、地域住民にとってなくてはならないプラットフォームになることを目指している。

現在、世界中で温暖化や環境破壊が続いているが、これらを食い止め、持続可能な状態にしていくにはリサイクルやシェアリングの発想が不可欠になる。リサイクルやシェアリングはネットとの相性がよく、ジモティーはこれらを円滑に行えるプラットフォームを提供することで地球への負荷を低減しようとしている。

ジモティーは各自治体との連携も強化し始めており、今年2月にはさいたま市、7月には北海道北見市との連携を発表している。各自治体では増え続ける粗大ゴミの処分が課題となっており、ジモティーと連携することで粗大ゴミの削減を目指している。

2つ目のミッションは「貧困緩和」になる。日本では世帯の貧困化が社会問題になりつつあるが、日本の世帯の平均所得は非正規雇用の増加などにより長期的に低下傾向で(*2014年以降は最低賃金引き上げ策などによりいったん反発)、今後もAIやロボットなど影響により、さらに低下していく可能性が高い。現在、平均所得が300万円以下の世帯は全世帯の約33%あり、このような状況で一定の生活水準を維持するには地域内での譲り合いが不可欠になる。ジモティーは不要品を譲り合えるプラットフォームを提供することで「貧困緩和」に貢献しようとしている。

3つ目のミッションは「ご近所付き合いの再構築」になる。日本では核家族化やインターネットなどの影響により地域住民同士の繋がりが希薄化しつつある。そのため、何か助けが必用になったときに近隣住民に協力を求めにくくなっている。ジモティーは個人が気軽に「三行広告」を出せるようなプラットフォームを提供することで近隣住民の繋がりを再構築しようとしている。

これらのミッションをこなして「ジモティー」が地域社会にとってなくてはならないプラットフォームに成長していくと、今度は「仕事」や「不動産」のカテゴリーの隆盛も期待できるようになる。もともとこれらのカテゴリーは「地元」との相性がよく、米国でクラシファイドサイトを運営するクレイグスリストの求人広告プラットフォームは全米最大規模にまで成長している。

日本でのクラシファイドサイトは始まったばかりで、ジモティーの売上高はまだ15億円にも満たない。先行する米中のクラシファイドサイト企業の売上高は2000億円を超えているので、ジモティーには少なくともあと10倍以上の成長余地がある。

■問題点
・ヤフーやメルカリが参入してくる可能性がある
クラシファイドサイトはフリマサイトとの相性が良さそうなので、ヤフーやメルカリが参入してくる可能性がある。両者とも知名度抜群で資金力(開発力)があるので、参入してきたら脅威になる。ただクラシファイドサイトが地域に定着するまで最低でも5年はかかるようなので(参照)、今からジモティーに追いつくのは難しそうでもある。

・買収される可能性がある
ジモティーは前途有望なクラシファイド広告市場を独占しているので買収される可能性がある。買収しそうな会社はZホールディングス(ヤフー・LINE連合)やメルカリあたりになるが、もし買収されたらテンバガーを達成できなくなる。

・広告枠の価値が低い
ジモティーのユーザーは基本的に金欠気味の人が多いので、広告枠を高い価格に設定できない。ただジモティーの広告枠は現状でかなり安い水準に設定されているようなので(参照)、今以上に下がることはなさそう。
*広告枠の価値が低いためか、「ジモティー」で表示される広告の中にはぞっとするような気持ちの悪いものもある。こういうのを見るとサイトを見る気が失せるので載せない方が良いのではないかと思う。

広告枠の価値が低いとドコモから提携を解消される可能性も出てくる。過去、ジモティーに出資していた三菱UFJキャピタル、KDDI、フジ・スタートアップ・ベンチャーズはすでにジモティーから撤退しているが、撤退したのはここらへんに理由がある可能性がある。ただドコモの真の狙いは国内最強のクラシファイドサイトを手に入れることだと思うので、この点はあまり心配しなくてもよいかもしれない。
参照:ジモティーIPOまでの資本政策。VCファンド主導型スタートアップの今後

・売り圧力が強い
この会社は昨年12月にベンチャーキャピタルのイグジット(保有株売却)を目的に上場されたが、ベンチャーキャピタルの保有株は少なくともあと25%は残っているので、売り圧力はまだまだ強そう。ただこれは本質的な問題ではないので、あまり気にしなくてもよさそう。

追記。8月にオプトが3%売却しているので、現在のVC保有比率は22%超まで低下している。

・株主目線の経営は期待できない
社長は自社株を8%保有する”オーナー経営者”ではあるが、創業者ではなく、株式上場後に「自社の戦略を説明する必用はない」として記者会見を行っていないので(3/4日経)、株主目線の経営は期待できそうにない。

ただ社長はリクルートのマネージャー時代のインタビューで「お客さんは熱い思いを持っている経営者が多い。とにかくお役に立ちたい。単なる金儲けには興味がありません」と語っており、2014年のインタビューでは「将来的に高収益事業になることを見据えて息の長いサイト運営を目指す」と言っているので、経営能力の方は特に問題なさそう。
*創業者はインフィニティ・ベンチャーズ・パートナーズの小野裕史氏になる。インフィニティ・ベンチャーズは主に海外で流行っている事業を国内に移植する事業を行うベンチャーキャピタルになる。
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<社長の経歴など>
・大学卒業後、リクルートで約10年間フロムエーやカーセンサーなどのB2Cプラットフォーム事業に携わる。2011年にヘッドハンターから声がかかり、CGM型プラットフォームにチャレンジしてみたいとのことで、2011年10月にジモティー社長に就任。
*B2C とは、Business to Customerの略で、企業と消費者の取引のこと。
*CGMとは「消費者生成メディア」の意で、一般ユーザーが参加してコンテンツができていくメディアのこと。口コミサイトやSNS、YouTubeなどがそう。CGM型は数千万人のユーザーが利用するので、B2C型を凌駕するコンテンツ生成力があるとされる。
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・創業者が株式を売っている
ジモティーはインフィニティ・ベンチャーズ・パートナーズが100%出資して作った会社だが、そのベンチャーキャピタルが持ち株をほとんど売り尽くしている(現在残っているとしても4%程度)。ベンチャーキャピタルは株式公開後に保有株式を売却してキャピタルゲインを得ることを目的にしている会社なので、株式上場後に株式を売却するのは当然なのだが、成長期待があるならもう少し持っていてもよいはず。内部事情をよく知るインサイダーが売っているので成長は頭打ちの可能性もある。ただインフィニティ代表の小野氏は2014年にジモティ-の取締役を退いているので、現在の内部事情にはそれほど通じてないのかもしれない。

・コロナで広告需要が減少している
ジモティーの収益の柱は広告収入になるが、コロナの影響で広告需要が大きく減少している。ただ、コロナは一過性のことであり、コロナが過ぎ去れば広告需要は元に戻るのでこれは本質的な問題ではない。コロナ下ではジモティーの利用率・知名度が向上するので、長期で考えるとコロナの影響はプラスに働きそうでもある。

・コロナでシェアリングが減るかもしれない
コロナの感染が拡大した場合は、感染リスクから対面取引や物品譲渡が敬遠される可能性がある。

・トラブルが頻発する可能性がある
「ジモティー」では対面取引が基本なのでトラブルが頻発する可能性がある。先行する米中では深刻な事件も発生しているもよう。ただジモティーはこの事業を10年近くやっており、米中のサイトも研究しているようなので、ここらへんのノウハウは蓄積されていそうでもある。ただ、それでもなにか大きな事件が起きた場合はユーザーが離れる可能性がある。

■チャート
過熱感はあるが、特に問題なさそう。
*現在のチャートは「ヤフー掲示板の影響力」を参照。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★★☆(4.3)
・参入障壁は高いか。★★★★☆。市場をほぼ独占しているのでかなり高い。
・ストック型ビジネスモデルか。★★★☆。人気のあるプラットフォームなのでストック型にはなるが、不況時は広告収入が落ち込む。
・時流にのっているか。★★★★★。地域に特化した取引サイトは社会に不可欠。

■まとめ
屁理屈をいろいろ書いてきたが、この会社は単純にビジネスモデルが強いので業績は順調に拡大していきそう。今後1,2年はコロナの影響で業績(広告収入)が伸び悩みそうだが、長期的な見通しは悪くない。株は長期で保有しようと思う。

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