2020年10月2日金曜日

WDBココ

■調べようと思ったきっかけ
・チャートが出来高をつけて“ブレイク”していたから。
・情報が少なく調べるのが簡単そうだったから。

<9月11日の1年チャート>
・このチャートではわかりにくいが、9月上昇時の出来高は平均出来高の5倍以上をつけている。
・3000円台にある「壁」を突破。
・ゴールデンクロスを形成。

■どんな会社か
医薬品の安全性情報管理業務を製薬会社から請け負う会社(CRO)。他に、ドキュメントサポート事業、開発サポート事業、臨床開発支援事業なども手がける。両事業ともほぼストック型収益事業で、売上の内訳は安全性情報管理事業が約75%、その他事業が約25%になる。
*安全性情報管理業務とは、主に医薬品の副作用情報を管理する業務。
*CRO(医薬品開発業務受託機関)とは臨床試験や安全性情報管理などの業務を製薬会社から受託・代行する機関。

業績は
2019年3月期が売上高17.8億円、経常利益3.3億円
2020年3月期が売上高22.8億円、経常利益4.6億円
2021年3月期(予)が24.1億円、経常利益4.7億円
になる。売上は順調に伸びており、経常利益率は20%程度で推移している。

■成長ストーリー
「最強の安全性情報管理プラットフォームに」が基本シナリオ。

近年、日本では少子高齢化に伴い社会保障費(医療費等)の抑制機運が高まっており、国は薬価引き下げやジェネリック薬の利用促進などを行っている。創薬においてはバイオ医薬品へのシフトや新技術の取り込み、大型薬の出尽くしなどにより製薬会社の投資負担は増している。加えて、医薬品の安全性情報(副作用情報)のガイドラインが強化され、製薬会社はその対応を迫られている。

製薬会社の収益環境は年々厳しくなってきており、製薬会社は低コスト体質と革新的な創薬を両立できる体制に向けて、創薬以外の業務をアウトソーシング(外部委託)する流れになってきている。外部委託される業務のなかで今最も伸びているのが医薬品の安全性情報管理業務で、この業務受託を主業とするWDBココはこの需要を確実に取り込んでいくことを基本戦略としている。

安全性情報管理市場は年約10%のペースで拡大しており、2019年には186億円の市場になっている。市場の拡大は今後も続く見込みで、2030年には400億円くらいまで成長する可能性がある。

<WDBココの強み>
安全性情報管理業務を請け負うCROは他にもあるが、ここではWDBココならではの強みについて考えていく。

・人材コストが低い
他のCROでは臨床試験のモニタリングや統計解析などを行う専門性の高い人材が安全性情報管理業務も行っているので人材コストが高くなるが、WDBココは専門性をそれほど必用としない安全性情報管理業務に特化しているので、未経験者を採用し、人材コストを低く抑えることができる。

・業務効率化のノウハウが豊富
WDBココはメディカル系人材派遣会社WDBホールディングスの子会社なので、業務効率化のノウハウが豊富にある。安全性情報管理においてもこのノウハウを活用して徹底的に合理化している。RPAなどの自動化テクノロジーの導入にも積極的で、人がやるべきでない業務は全て自動化する方向で動いている。
*RPAとはロボティック・プロセス・オートメーションの略で、ソフトウェア型のロボットが作業を代行する手法。

・人材の供給源がある
親会社はメディカル系人材派遣会社のトップ、WDBホールディングスなので、WDBココは機動的に人員を補充できる。

これらの強みにより、WDBココの安全性情報管理業務の請負料金は他社よりも10~30%安い。WDBココは顧客との取引期間中に継続的にコストを落としていく仕組みも導入しているので価格競争力は極めて高い。

■問題点
・市場がそれほど大きくなさそう
安全性情報管理市場は10年後に現在の2.5倍くらいの規模にとどまりそうなので、WDBココはそれほど成長できなさそう。他のCROから仕事を奪ってくれば市場拡大ペース以上に成長できそうだが、下記のエムスリーの問題などもあり、このシナリオにはやや不透明感がある。

社長は「事業領域を拡大していく」ともいっているが、WDBココはWDBホールディングスが抱えるCRO事業の一部門にすぎないので、他の部門との兼ね合いでWDBココだけが新たな事業領域を拡大していくのは難しいのではないかと思う。現時点では新規事業の具体性がないので、この点にも不透明感がある。

・最終的にはエムスリーのプラットフォームに集約される?
WDBココの安全性情報管理業務では、製薬会社のMR(医療情報担当者)が病院から回収した副作用情報を受け取って、それを処理しているが、このMRを介する一手間は無駄に見える。エムスリーのプラットフォームを使えばこの一手間を省くことができるので、最終的には安全情報管理はエムスリーのプラットフォームに集約される可能性がある。

エムスリーもCRO事業を手がけており、もしエムスリーが本腰を入れて安全性情報管理業務を始めたら脅威になる。しかし、現時点でその気配はなさそうなので、最終的にはWDBココがエムスリーのプラットフォームで副作用情報を収集し業務を行っていく、という流れになるのかもしれない。
*副作用の情報収集はMRの病院での聞き込みや調査が重要な可能性もある。もし情報収集にMRを外せないとしたらエムスリーの脅威は半減する(要調査)。

・離職率が高い?
社員の口コミをみると「単純労働」「給料が上がらない」などの口コミが目立つ。WDBココの安全性情報管理は未経験社員の生産性を高めてコストを落としていくところに強みがあるので、離職率が高くなるとコストを落とせなくなる。

・コロナの影響を受ける
社長は「コロナによる業績への大きな影響はない」とはいっているが、MRの医療機関への訪問自粛や通院患者の減少により副作用情報の入手量が減少しているようなので、委託業務量も減少している可能性が高い。また製薬会社との交渉が停滞している可能性もある。コロナは一過性の問題なので長期ではそれほど問題なさそうだが、コロナ下では業績が伸び悩みそうでもある。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★☆
・参入障壁は高いか ★★★☆ 地味でややこしい領域なので新規参入はなさそう。ただエムスリーが本格参入してきたらピンチになる。
・ストック型か ★★★★ 安全性情報管理業務は基本的に医薬品の販売が終了するまでの契約なのでストック型。
・時流に乗っているか ★★★★ 製薬会社のコア業務以外のアウトソーシングはメガトレンド。ただ市場の拡大余地は現在の3倍くらいしかなさそう。

■チャート
<1年チャート>
やや過熱感はあるが、青天井モードに入っているので上値は軽そう。

■まとめ
調べ始めてすぐに良さそうだとは思ったが、情報が少なく、過去の苦い記憶がフラッシュバックしたので、「妄想」を一週間ほど寝かせることにした。しかし、その間に株価は大きく上がってしまった(笑)。

この会社のビジネスモデルはそこそこ強いので、株価は5500円(PSR5倍、時価総額120億円)くらいまでは上がりそう。ただそれ以上は市場規模の問題やエムスリーの問題があるので難しいのではないかと思う。もう買うチャンスは来ないと思うが、もう少し様子を見ようと思う。

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