2020年10月2日金曜日

中村超硬

■調べようと思ったきっかけ
SBIがジモティーを大量保有したのがきっかけ。SBIの売買動向を見るとジモティーを買ってNexToneを売っていたので、このブログと考え方が近いと思った。そんなSBIが中村超硬を買い増していたので興味が湧いた。

■どんな会社か
去年までダイヤモンドワイヤーの製造・販売が主力だった会社(現在は採算悪化のためほぼ撤退)。現在は化学繊維用紡糸ノズル事業(マスクの不織布製造装置など)と特殊精密機器事業(5G関連機器など)が主力。新規事業のナノゼオライト事業を育成中。

業績は
20193月期が売上高48億円 営業損失42億円
20203月期が売上高28億円 営業損失5億円
20213月期(予)が売上高33億円 営業利益3億円
になる。業績は下げ止まった感じ。

■成長ストーリー
「ナノゼオライトでテンバガー達成」が基本シナリオ。

現在の業績の柱である2事業はマスク特需や5G特需の影響でしばらくは堅調に推移しそうだが、長期的な見通しはパッとしない。今後、この会社の成長ドライバーになりそうなのはナノゼオライト事業になる。

ナノゼオライトとは従来の工業用ゼオライトを100分の1くらいの大きさにしたもので、従来のゼオライトが持つ特徴(吸着、イオン好感、抗菌、触媒、消臭など)に、透明性、高分散、なめらかな感触、吸着量増加、吸着速度向上、沈降速度低下の機能が付加されたものになる。この新たな特性により、これまのゼオライトでは実現できなかった用途での活用が期待されている。

ナノサイズのゼオライトはこれまでも存在はしていたが、製造コストが高く、ほとんど普及してこなかった。こうした状況に対し、中村超硬は2012年から東大と共同研究を始め、2019年に低コストでのナノゼオライトの製造に成功した(特許取得済み)。

中村超硬は現在、約50社にサンプル出荷しており、様々な製品での開発が進められている。その中で最も開発が進んでいるのが高機能フィルムで、薬や食品、電子部品などの包材としての利用が期待されている。

潜在市場が最も大きのがリチウムイオン電池向けで、リチウムイオン電池にナノゼオライトを添加すると放電容量を低下させ、電池を高寿命化させることがわかっている。

他には、水と混ざると発熱する特徴を活かしたパック・クレンジング剤、半導体の封止材、二液型接着剤などへの活用が期待されている。

■問題点
・リチウムイオン電池市場はレッドオーシャン市場
リチウムイオン電池市場は巨大なので競合が多い。この市場ではまず素材同士の競争に勝たねばならない。多孔性金属錯体などナノゼオライトに似た物質は他にもあり、米テスラの160万キロ走行できるとされる次世代バッテリーには長寿命化のためにジフルオロリン酸ナトリウムが添加されている(9/5EVスマートブログ)。仮にここでの競争に勝ち抜いても、次はナノゼオライト市場に参入してくるであろう企業群と戦わなければならない。

・資金不足
ナノゼオライトはゼオライトを微細化したものにすぎないので、技術障壁はおそらくそれほど高くはない。競争優位性を保つには研究開発投資が必用になるが、中村超硬は4月に債務超過を解消したばかりなので投資できる資金がほとんどない。ナノサイズのゼオライトは旭化成なども製造しているので早々に追いつかれる可能性がある。

これらの点を考慮すると、中村超硬は今後、研究開発や工場建設のために増資をする可能性がある。

・リチウムイオン電池の「次」の電池でナノゼオライトが使われるかわからない
近い将来、リチウムイオン電池に代わる全固体電池や空気電池などが登場すると言われているが、そこでナノゼオライトが活躍できるかわからない。

・テンバガーストーリーを描きにくい
この会社がテンバガーを達成するには売上高を現在の10倍(300億円)程度まで増やす必用があるが、現在売上ゼロのナノゼオライトが売上100億円を突破するところを想像しにくい。ナノゼオライト事業の売上が立つのは早くて2022年になるが、売上が10億円を超すのは早くても2024年頃になりそう。

■チャート
<1年チャート>
底値を切り上げている
移動平均線が収斂
三角持ち合い
一目均衡表の雲は薄く、あと少しで抜けそう
ハイプサイクル的には期待相場が終わり、業績相場に入ったところ
ただし200日線が下向きに転じており、1000円台に分厚い「壁」があるので天井感がある。

<5年チャート>
「壁」が分厚い。

■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★☆
・参入障壁は高いか ★★★☆ ナノゼオライトはそこそこ高そう。
・ストック型か ★ 全事業がフロー型。
・時流に乗っているか ★★★☆ ナノゼオライトに関して言えば機能面でも環境面でも時流に乗りそうな感じがするが、それも成功したらの話。

■まとめ
ナノゼオライト事業には中村超硬の社運がかかっているので、なんとか軌道に乗せてきそうではある。ナノゼオライトを活用した製品が市場に出てくるあたりで、株価は1000円台の「壁」を突破するのではないかと思う。ただ、現時点では不透明要素が多いので、しばらく様子を見ようと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿