エムスリーが4月に出した決算説明資料に「FY2027の売上~6000億円」とあった。今期の予想売上高は2500億円なので、今期含めて5年で売上高を2倍以上に引き上げようとしているのがわかる。この目標が達成可能かどうかについて考えてみる。
*FY2027とは2027会計年度、つまり2028年3月期のこと。
売上6000億円を達成するには年25%の成長が必要になる。年20%の成長率では売上5200億円になる。今期の予想成長率は8%になる。
成長ストーリーの大枠を考えてみる。
まず潜在市場はどのくらいあるか。ダイヤモンド3/8には「国内の医療DXの潜在市場は1兆円超」とある。その内訳は「製薬マーケティング支援3000億円、医療データ利活用1000億円、治験業務2000~3000億円、健康保険業務2000億円、医療業務2000億円」になる。
エムスリーの海外売上高比率は25%くらいあるので、海外の市場についても考えてみる。人口や経済規模を考慮すると、世界の医療DX市場は40兆円くらいはありそう。
需要の強さはどのくらいか。世界的に、高齢化による医療費の上昇、人手不足、薬価の上昇、財政問題などの問題は山積しているので、医療DXへの需要は相当強い。
エムスリーの競争力はどのくらいあるか。エムスリーは世界の医師の60%超が登録するプラットフォームを持っているので、競争力はありそう。
エムスリーの成長戦略はどのようなものになるか。既存事業の成長と、M&Aによる成長が基本戦略になる。エムスリーは年に10件以上のM&Aをしている。エムスリーは買収巧者で、これまでに買収した会社を買収後平均5年で利益を6倍にしている。今後もM&Aを成長ドライバーにしていく方針。
市場規模、需要の強さ、エムスリーの競争力・戦略を考慮すると高成長はできそう。
1つ目は競争激化。DX市場は医療分野に限らず参入障壁が低いので競争が激化しやすい。国内の医療DX市場ではJMDCやメドレーなどが急成長しており、それぞれの分野でエムスリーのシェアを浸食している。市場自体が拡大しているので、エムスリーの伸びが止まることはなさそうだが、伸び率は鈍化しそう。
3つ目は景気後退のあおりを受けそうなこと。エムスリーが力を入れている米欧では近々景気が後退する可能性がある。米欧が景気後退に陥れば日本もそのあおりを受ける。そうなればエムスリーの成長が鈍化するのは避けられない。
2021年 29%
2022年 23%
(予)2024年 8%
問題は年々成長率が落ちていること。これは売上高が増えるにつれ成長率が落ちるという自然な現象ではあるが、このペースでいくと年20%成長に戻るのは難しそう。今後5年間は順調にいっても13~18%くらいが限界ではないかと思う。仮に来期以降4年の平均成長率を年15%とすると、2028年3月期の売上高は4370億円になる。売上高2倍は難しそう。
エムスリーは20%成長に戻れるか。おそらく戻れない。18%成長くらいが限界になりそう。ただそれでも優良な成長企業であることに変わりはないので、株価が2600円を大幅に割り込むようなことがあれば買っていきたい。エムスリー株は円安対策に使えそうなのもいい。
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