2023年10月1日日曜日

長期計画

「平時にじっくり考えて決めておいたことは、後悔する判断にはなりにくい」といわれているので、今のうちから長期的な計画を考えていく。

■今後の景気について
インフレ高止まりにより景気後退に陥る確率が高まってきた。民間・政府ともに債務山積みの状態で中銀が金利を引き上げているので、景気には強い下押しの圧力がかかっている(日経9/12日経)。ただ家計や企業、金融機関の財務状態は比較的良好なので深刻な景気後退に陥る確率は低い(日経日経日経)。今回のインフレは長引きそうなので、しばらく金融緩和や財政政策による景気刺激は期待しにくい。景気後退は浅く長いものになるのではないかと思う。景気の底は2023年12月~2024年5月あたりになりそう。

*景気循環(債務循環)の基本的なパターンは、不景気 →金融緩和 →景気拡大(債務拡大)・失業率低下 →景気過熱・インフレ過熱 →金融引き締め →景気後退(債務圧縮)の流れになる。

ただ、最近は「景気後退に陥らない」という意見も増えてきた。ゴールドマンサックスを筆頭に、FRB、モルガンスタンレー、ブラックロック、バンクオブアメリカあたりがそのようなことをいっている。7/18日経7/21日経7/21日経7/25日経7/27日経8/5日経

本当にそんなことが可能なのか。景気後退要因と景気浮揚要因を列記して考えみる。

<景気後退要因>
・企業債務はGDP比で過去最高水準まで高まっており、金利も2008年の金融危機前と同水準まで上昇している。いつ資金の逆回転が起きてもおかしくない。一度「債務爆弾」が爆発すると、爆発が連鎖しやすくなる。
・米欧などの先進国中銀はインフレ抑制に苦労しており、キツめの金融引き締め策を長い期間とらざるを得ない状況になっている。その影響は1年くらいの時差をもって経済に反映される。
・逆イールドが発生している影響で、融資・投資が減っている。銀行の融資態度は景気との相関が強く、過去、融資基準の厳格化が進んだ時期には景気後退が発生している。8/1日経
・米家計のコロナ貯蓄はほぼゼロになっている。10月からは、学生ローンの支払い猶予期間も終わり、返済が始まる。
・米国の商用不動産で不良債権が急増している。金利高などにより今後それがさらに増加していく可能性が高い。8/2日経
・市場のカンフル剤になった「生成AIブーム」がいったんしぼむ可能性がある。9/26日経
・2008年に起きた金融危機では、中国の大型投資により世界経済は救われたが、今回はそれが期待できない。

<景気浮揚要因>
・失業率が低い。米GDPの7割は個人消費が占めるが、失業率が低水準の状態で維持されると、所得が増え、消費が落ち込みにくくなる。1960年代以降に8回あった景気後退局面では、失業率が平均で3%強上昇しているが、今後想定される失業率の上昇幅はその半分にも満たない。9/1日経
・米家計のバランスシートは健全。家計の可処分所得に占める元利払いの返済負担比率は低下している。9/28日経
・インフレが鈍化している。コロナ禍で深刻になっていた移民減少や半導体不足などの供給制約が緩和されてきている。インフレ指数の大部分を占める賃料も落ち着き始めている。
・過剰流動性(金余り)が維持されている。コロナ禍で政府がばらまいた資金が市場にまだ高水準で残っている。景気サイクルの終盤にもかかわらず、家計の貯蓄も豊富にある。7/20日経
・現在はサービス業が経済成長を主導しているので、景気が落ち込みにくい。サービス業は投資資金を製造業ほど必要とせず、イノベーションが起こりやすいので、成長力が落ちにくい。
・米国では半導体産業や環境産業(EVなど)を政府が支援しているので、景気が落ち込みにくい。8/5ヴェリタス
・市場はすでに景気後退をかなり織り込んでいる。
・インドなどの新興国経済が好調。中国はいろいろと問題を指摘されているが、それでも今年、来年と5%程度の成長を維持できる見通し。

<まとめ>
景気後退に陥らないかどうかは微妙なところだが、現時点では深刻な景気後退は避けられそうな雰囲気。米失業率がポイントになりそうなので、そこを重点的に見ていきたい。


■他の景気後退シナリオ
景気後退シナリオ1:中国のバブル崩壊で景気後退
中国の民間債務は積み上がっており、GDP比220%に達している(日経日経)。景気下振れなどによりいったんデフォルトが起こると、急激な資金の引き上げが発生して連鎖的なデフォルトが起こる可能性が高い。バブルが崩壊すれば独裁政権に責任が集中し、政権が転覆する可能性もある。そうなれば政治的混乱も相まって不況が深刻化する。経済大国・中国の不況が世界に連鎖していく。ただ中国政府には財政・金融政策をする余地があるのでバブルが崩壊する可能性は低い。

中国政府がとれる政策が限られてきた。政府や民間企業の債務残高の合計はGDP比で約300%に膨らんでおり、これまで成長を支えてきた公共支出のさらなる拡大はしにくい。人民元安も進んでおり、中国人民銀行(中央銀行)は景気を支えるための大幅な利下げをしにくい。8/19ヴェリタス9/21日経


景気後退シナリオ2:中国が武力で台湾を併合し、米中戦争が激化して景気後退
中国が2024年頃までに武力で台湾を併合するとの予想がある(日経日経日経日経)。実際にそれが起きれば米中戦争が激化し、世界景気には強い下押し圧力がかかる(日経日経日経)。ただ中国は西側から制裁を受けると食糧危機に陥るリスクが高いので、中国が台湾に侵攻する可能性は低い。戦争を仕掛けるとしたら米国側からになる。日経日経

ただ、中国は米国債を着実に売り続けている。一方で「安全資産」である金の保有は増やしている。台湾に侵攻する気持ちも少しはあるのかもしれない。7/1ヴェリタス


景気後退シナリオ3:「脱成長」経済システムに転換して景気後退
COP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)は「産業革命以前から21世紀末までの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指して、努力を追求することを決意」することで合意したが、現在その実現は絶望的な状況にある。各国の2030年時点での目標がすべて達成されても21世紀末までの気温上昇は2.4度になるとされる。そうなれば海面上昇で沈む島国が出て、山火事や巨大台風などの自然災害が多発し、水不足、食糧危機、感染症のリスクなどが増大する。このような未来が科学的に予測されている現状で対策を取らないという選択肢はない。問題の根幹は現在の「成長型」経済システムにあるので、「脱成長」の経済システムに転換する必要がある(日経ロイター)。ただ、現在の状況で「脱成長」の経済システムに転換すれば景気後退は避けられなくなる。

深刻な景気後退に陥ると、財政問題や福祉問題など目先の深刻な問題が噴出するようになり、それらの問題に対処せざるを得なくなる。そのため経済システムの転換はしばらく先になりそう。環境危機が目先の大問題に発展したときに初めて転換の機運が生まれるのではないかと思う。

2022年は世界各地で記録的な熱波や干ばつが発生した(日経産業ヴェリタス日経日経)。2023年もしかり(7/31日経8/1日経8/12日経9/27日経)。英保険仲介大手のエーオンによると22年の気象災害の損失は2990億ドル(約40兆円)に達するという。IPCCは3月に「産業革命前に比べた世界の気温上昇は2030年代初めにも抑制目標の1.5度に達する」と予測している(日経)。経済システム転換の機運は早々に訪れるのかもしれない。

もしくはAI・ロボット社会が温暖化問題の打開策になる可能性もある。温暖化の最大の要因は「人の活動」になるが、AIやロボットが進化・普及すれば、数十億人の「無用者階級」が生まれるともいわれているので(『21 Lessons』)、人が減っていく可能性がある。そうなれば環境負荷の低い社会が実現する。

国連が2022年7月に発表した世界人口推計では「2086年に104億人で人口はピークを迎える」と予測しているが、この数値は2019年の予測「2100年に109億人でピークを迎える」からピーク時期が前倒しされている(日経日経)。AIやロボット、教育(日経)などの影響を考えると、今後もピーク時期の前倒しが続く可能性が高い。


景気後退シナリオ4:災害や紛争で景気後退?
大災害や戦争が起こると景気には強い下押し圧力がかかる。しかし、こうしたことが起こると必ず政府が大規模な支援策を講じるので景気は反発しやすくなる。また一過性の問題が過ぎ去されば景気はV字回復することが多い。一般に、災害や紛争は押し目買いのチャンスといわれている。今回のような新型コロナウイルスのパンデミックも株式市場には追い風で、社会・経済構造の転換や金融緩和などにより、株高が発生しやすくなる。ロイター

ただし、日本で南海トラフ地震と首都圏直下型地震が同時に起きた場合は1000兆円規模の損失が発生するようなので(日経)、景気後退もしくは財政破綻する可能性がある。


■今後の計画
円が120円くらいまで上昇したら、3倍以上の値上がりが見込める海外資産を買っていく。

・米市場に上場している「銅ETF」「銀ETF」
「グリーン革命」で銅需要は右肩上がりだが、優良鉱山の減少や環境規制などで供給不足に陥りそう(日経日経8/21日経)。仕込むタイミングは2024年の半ば頃にくるかもしれない(日経)。銀もグリーン経済などの影響で供給不足に陥りそう(7/15ヴェリタス)。

・QQQ(インベスコQQQトラスト・シリーズ1ETF)
ナスダック100指数に連動するETF。アルファベット、マイクロソフト、テスラ、アマゾン、アドビ、アップル、メタ、エヌビディア、(セールスフォース)などの大型テクノロジー株はまだまだ成長しそう。

・ファーストトラスト・クラウド・コンピューティングETF
この「クラウドETF」は、マイクロソフトやアマゾンなどクラウド基盤を提供する銘柄と、クラウド経由でソフトウェアを提供するSaaS銘柄で構成されている。現在は大きく売り込まれているが、ビジネスモデルや長期的な見通しは悪くない。日経

・ヴァンエック半導体ETF、「サイバー・セキュリティETF」
AI・ロボット社会では半導体企業とサイバー・セキュリティ企業の力強い成長が期待できる。半導体株は「シリコンサイクル」的に2023年後半あたりが仕込み時になりそう(日経)。ただ米国の対中輸出規制や、世界的な半導体過剰投資には気をつけたい。日経日経日経

・メルカドリブレ
ナスダックに上場している南米最大のeコマース企業。ビジネスモデルはAmazonのマーケットプレイスに近い。もう一つの事業がフィンテック事業。南米は欧米などと異なり、銀行口座やクレジットカードを保有してない利用者も多い。ラテンアメリカ市場ではオンラインで販売した際に支払処理をどのように行うかが大きな問題となっている。メルカドリブレはそれぞれの国情に併せてQRコードなどを活用した様々な決済サービスを提供している。ラテンアメリカはインターネットの普及自体が遅れているため先進国と比べて出遅れ感があり、その分成長余地が残されている。問題はカントリーリスクになる。サービスを提供している18カ国のうち、アルゼンチン、ベネズエラ、ニカラグアのリスク評価は最低ランクで、最大の売上を稼ぐブラジルも下から3番目の評価になる。ビジネス自体は順調であっても為替レートが大幅に低下すればドル建ての業績は悪化してしまう。週刊エコノミスト

・(つみたてNISA用) iシェアーズ・コア S&P 500 ETF
S&P500指数に連動するETF。手数料は0.03%と安い。金融庁に承認された現時点で唯一の米国市場に上場するETFになる。問題はこのETFをNISAで買える証券会社がないこと(5/14ヤフーニュース)。SBI証券で買えるようにしてくれればと思う。

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