2023年10月1日日曜日

市場環境

株式市場への影響が大きい企業業績(EPS)、金利、金融政策などを見ていく。

■EPS成長率
・世界株式の2023年の予想EPS成長率は-10~5%、2024年は-5~10%。
・米国株式の2023年の予想EPS成長率は-10~5%、2024年は-5~8%。
・欧州株式の2023年の予想EPS成長率は-10%~5%、2024年は-10~5%。
・日本株式の2023年の予想EPS成長率は0%~10%、2024年は-5~10%。


■経済成長率
・世界の2023年の予想GDP成長率は3.0%、2024年は2.7~3.0%。
・米国の2023年の予想GDP成長率は1.8~2.2%、2024年は1.0~1.3%。
・中国の2023年の予想GDP成長率は5.1~5.2%、2024年は4.5~4.6%。
・ユーロ圏の2023年の予想GDP成長率は0.6~0.9%、2024年は1.1~1.5%。
・日本の2023年の予想GDP成長率は1.4~1.8%、2024年は1.0%。
・インドの2023年の予想GDP成長率は6.1%、2024年は6.3%
*数値はIMFとOEDCの予想。7/25日経9/20日経

世界の経済成長率が3%を下回ると不況感が強まるとされる。ただし、デジタル経済で増している経済厚生(経済的幸福度)は成長率には反映されにくいので、見かけほど不況感は強まらない可能性もある。
*経済規模を示すGDPは1年間で生み出された付加価値額の総和になるが、デジタル経済で生み出されたサービスの大半は公共財に近い性質があるので、金銭的な数値には反映されにくい。

*コロナの影響で2020年の日本のGDPは落ち込んでいるが、消費者のお得感を示す消費者余剰は増えている。野村総研がネットの利用時間などを基に消費者余剰を試算したところ、2020年にデジタルサービスから生まれた消費者余剰の総額は日本全体で200兆円を超えている。16年時点では160兆円程度なので4年で25%ほど増えたことになる。2020年のGDPは16年比で2.4%減っているが、消費者余剰との合計では4%増加した計算が成り立つ。日々の生活の満足度が向上していれば、GDPの落ち込みほど豊かさは失っていないともいえる。日経


■インフレ
・米国の2023年の予想インフレ率は3.5~4.5%、2024年は2.0~3.0%。
・欧州の2023年の予想インフレ率は4.5~6.0%、2024年は2.0~3.5%。
・日本の2023年の予想インフレ率は2.0~3.0%、2024年は1.2~2.0%。
*参照:9/12日経など
*米国のブレーク・イーブン・インフレ率(10年)は2.39%。ブレーク・イーブン・インフレ率とは債券市場の予想物価上昇率で、実質金利を算出するときなどに用いる。

世界中でインフレが高止まりしている。インフレ要因とデフレ要因を一通りあげて、今後のインフレ動向を予想していく。

<インフレ要因>
★コロナ特有のもの
・供給基盤が破壊され供給不足が生じている。
・コロナで対面型サービスの人気が落ち、賃金が上昇している。
・コロナが落ち着いてきて需要が増している。
・政府から給付金が支給され需要が増している。
・金融緩和の影響で資産価格や商品価格が上昇している。
・量的緩和の影響で通貨価値が下落している。
→現在、これらの要因はほぼ解消されている。

★コロナ後も続くもの
・人手不足で賃金が上昇している。求人件数が700万件程度まで減ると賃金上昇率が3%程度まで落ち、FRBの2%物価目標と整合するとされるが(日経)、8月の求人件数は882万件とまだ少し多い。ただ順調に減ってはいるので、人手不足は徐々に解消されていきそう。

・脱炭素シフトでエネルギー価格や資源価格が上昇している。脱炭素シフトにより2030年まで年0.7~1.0%程度の物価押し上げ効果が見込まれている。ヴェリタス日経
*脱炭素シフトが完了すれば再生可能エネルギーは強力なデフレ圧力になる。

・異常気象や世界人口増、新興国の経済成長、バイオ燃料需要、肥料価格上昇、ウクライナ紛争などにより、食料価格が上昇傾向にある(日経ヴェリタス)。農作物・肥料価格の先行指標である農業ETFは高値圏で推移している。

・経済の脱グローバル化(グローバル化の再構築)で製造が自国生産にシフトし生産コストが上昇している。日経

・米住居費が上昇している。家賃上昇が2023年の米CPIを1.1ポイント押し上げると見込まれている。日経

・世界の生産年齢人口が2010年代にピークアウトしている。今後は労働者が減る一方で人口は増えるので供給が追いつかなくなる可能性がある。日経日経


<デフレ要因>
・世界中の中央銀行が強力な金融引き締めをしている。金融引き締めには需要を減らす効果がある。

・経済や社会のデジタルシフトが加速している。デジタル経済で登場している財やサービスは既存のものより便利で安価なものが多い。検索やSNSは無料で、ネット上では価格比較を簡単にできるため売り手は超過収益を得にくくなっている。スマホが登場してからはカメラやオーディオプレーヤー、電子辞書などが売れなくなっており、5000万曲をいつでも自由に聴けるSpotifyは月980円で利用できる。複製コストゼロのデジタルソフトやシェアリングサービスの普及などもあり、価格は下がりやすくなっている。
*市場競争が起こっている財(商品・サービス)は、差異化が図れない場合、価格が限界費用(追加生産のコスト)まで低下する性質がある。デジタル財は限界費用がほぼゼロなので、競争が起きると価格がゼロに近づく。

・イノベーション(新結合・技術革新)が加速している。今はインターネットやAIにより、情報・人・モノの「新結合」が起こりやすくなっている。イノベーションも強力なデフレ圧力になる。

・産業の「自動化」により、生産コストが低下している。
・世界的に経済成長率が鈍化傾向にある。過去40年で米国の潜在成長率は3%前後から2%前後に低下している。日経
・富の集中が加速している。デジタル経済では資本やアイデアの出し手に富が集中しやすくなっている。富裕層の支出性向(収入に占める支出の割合)は低い。
・世界的に少子高齢化が進んでいる。子どもが減って高齢者が増えると総需要が減る。
・人手不足で成長力が低下している。
・金融引き締めなどの影響で資産価格が下落している。

以上をまとめると、賃金(サービス)以外のインフレは落ち着きつつあるので、インフレは徐々に落ち着いていきそう。ただ過去の例では賃金インフレはしぶとく続くので、米国でインフレ率が2%になるのは2024年末頃になりそう。日経ヴェリタス

インフレが落ち着いた後も、脱炭素シフトや人手不足、脱グローバル化などの構造要因は残るので、しばらくは以前のような超低インフレには戻らない可能性が高い。

日本においては、今後人手不足がより悪化していきそうなので(日経7/15ヴェリタス9/26日)、デフレからインフレに転換する可能性がある。9/23日経9/29日経

超長期では、エネルギー革命や材料革命、AI・ロボット革命により超デフレ(無料社会)になる可能性が高い。


■金利
・米国の政策金利は5.50%で、3ヶ月金利は5.48%、2年金利は5.03%、10年金利は4.59%、30年金利は4.72%になる。
・日本の2年金利は-0.52%、10年金利は0.77%、30年金利は1.65%になる。

*名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利は資金の流れを決める最大の材料になる。実質金利がマイナスの状態では、国債を買ったり銀行にお金を預けたりすると実質的に損をするので、株式や不動産、商品などに資金が流れやすくなる。逆に実質金利がプラスの状態では国債などの「無リスク資産」に資金が集まりやすくなる。現在、米国の実質金利はプラス圏にあり、「無リスク資産」に資金が流れやすくなっている。日本の実質金利はいまだマイナス圏にある。

*現在の債券は魅力的な水準まで高まっている。たとえばリスクのほとんどない米2年債は利回りが4.89%もある。その他の質の高い債権にも魅力的な利回りのものが多くなっている。今後利回りがさらに上がる可能性もあるが、急上昇期はすでに終わった可能性が高いので、株式などのリスク資産より、債券に資金が流れやすくなっている。日経日経

*投資家は企業が将来生み出すであろう利益から金利分を割り引いて企業価値を算出する。金利が上がると割り引く分が多くなり、将来の予想利益は減る。将来の利益創出期待が大きいグロース企業ほど割り引く分は多くなり、理論価値が下がりやすくなる。

*米30年物国債の利回りが自然利子率(2.4%)に達すると米株は天井を付ける傾向がある。

*米10年金利が米2年金利を下回ると、その1年~1年半後に景気後退に陥ることが多い。米国では2022年7月から10年金利が2年金利を下回っており、現在もその状態が続いている。ヴェリタス
*米10年金利が米3ヶ月金利を下回ると、その後、比較的すぐに景気後退する傾向がある。2022年10月からこの逆イールドが発生している。
*銀行は短期金利で資金を調達して、長期金利で企業などに貸し出して利ザヤを得る。しかし、長短金利が逆転すると逆ザヤになるので、融資が減る。その結果、投資も減り、景気が後退しやすくなる。

*景気拡大期の「良い長期金利上昇」では、株価も上昇する傾向がある。過去の例では長期金利上昇よりも政策金利を引き上げたときの方が株式市場へのネガティブな影響が大きかった。ヴェリタス

*景気拡大期終盤に金利が上昇すると、資金の流れが「借り入れ」から「返済」に転換し、資金の逆回転が起こる。過去のバブル崩壊は全てこの金利上昇がきっかけになっている。

*利上げ局面で中銀が利上げを停止すると市場は急速に利下げを織り込み始め、株高が続くことが多い。警戒が必要なのはその後になる。金利が高い中での株高は危うい株高となり、なにかのきっかけでショックが起こることが多い。過去を振り返っても、利上げ終了後は1年ほど株が上がり、「サブプライムローン」の破綻などがショックの引き金を引くことが多かった(日経)。過去のパターンでは、「○○ショック」は懸念された箇所からではなく、疑いもしなかったところから起こることが多い。ヴェリタス7/8

・FRBの利上げ局面における株式相場は「1,金融緩和の終了を嫌気した調整」→「2,利上げ中盤にかけての良好なファンダメンタルズを好感した上昇」→「3,利上げ終盤の過度な引き締めを懸念した反落」→「4,利上げの打ち止めを好感した反発」→「5,ファンダメンタルズの悪化を織り込んだ大幅な下落」という経過をたどることが多い。今は4の段階になる。


■債務
・世界の債務はコロナ下で急拡大し過去最高水準のGDP比336%に達している(9/20日経)。ただ、コロナ過の経済対策により、家計や企業、金融機関の財務状態はコロナ前よりも健全になっているためデフォルトが急に増える状況ではない(日経ヴェリタス)。

・銀行の財務状態は比較的良好だが、銀行に比べて規制・監督体制の緩い「シャドーバンク」の債務は急拡大している。世界のファンドや年金基金、保険会社などノンバンクの金融資産は21年に239兆ドルと07年比で2.4倍に増え、銀行を大きく上回っている。「シャドーバンク」は信用力の低い企業への融資が多い。9/16日経

・債務の質は劣化しており、米国の投資適格債の半分以上、欧州では4割超が格付けの最も低いトリプルBになっている。

・米国の企業負債のGDP比率は12年には65%前後だったが、足元では80%に迫る水準まで上昇している。借り手の返済能力は落ちており、今後の金利上昇局面では返済に行き詰まる企業が続出する可能性がある。ヴェリタス8/14日経

*金利が経済成長率を下回っている状態では、企業は財務レバレッジを効かせるだけで(低金利で社債を発行して自社株買いをするなど)で利益を手にすることができるので債務が膨らみやすくなる。政府も多少の財政赤字を続けていても債務残高のGDP比を一定の水準に維持できるので債務が膨らみやすくなる。

*今は企業がお金を借りて経済を牽引しなくなった分、政府がお金を借りて経済を下支えする構造になっている(日経)。政府がお金を借りて経済を下支えすると財政赤字は膨らむが、民間需要が足りていない中でそれをしないと、景気悪化を招き、財政赤字がさらに膨らみやすくなる。

*債務拡大ペースがGDPの成長速度を上回る状態が続くと、どこかで必ず資金の逆回転が起こる。債務拡大ペースはここ10年以上、毎年GDPの成長速度を上回っている。

・中国は2013年に労働人口がピークアウトしているので、今後は経済成長減速と同時に社会保障費が増加し、政府債務が膨張しやすくなる(日経)。2023年は過去最大の財政赤字(約74兆円、GDP比3%)を計上する見通し。日経
・国際決済銀行(BIS)によると、22年6月の中国の非金融部門の債務残高はGDP比295%に達し、98年3月末の日本の296%と肩を並べている。日経

・新興国のドル建て債務の増加も著しく、10年前の約2倍(約500兆円)まで増えている。足元ではドル高が続いており実質的な返済負担が増している。一部の国ではデフォルト懸念が高まっており、デフォルトがいったん起きればドル高が一段と進み、デフォルトが連鎖しやすくなる。日経日経

・国際金融協会(IIF)によると、新興国の債務残高は22年3月に1京3000兆円とリーマン危機直後の4倍まで増えている(日経)。債務破綻の危機に直面する新興国が増えている。

・世界で過剰債務企業が増えている。本業の利益が借金の利払いより少ない”ゾンビ”企業が全上場企業(2万4500社)に占める比率は2021年度に16%になっている。直近ではこうした企業が破綻に追い込まれる事例が相次いでおり、仏アリアンツは23年に世界の企業の倒産が21年比で26%増えると予想している。日経

・米ムーディーズは今後の世界の社債について、最も悲観的なシナリオだとデフォルト率が14.5%になると予想している。これは1933年の世界大恐慌の最中の15.8%以来の水準になる。リーマン・ショック時のデフォルト率は12.1%になる。日経

<バブルについて>
バブルとは投資家が借金をして資産を買いまくることにより生じる現象。現在バブルは発生しているが、その投資主体は民間から政府(中央銀行)にシフトしているので(日経)、バブルは破裂しにくい。政府が資産を売却すればバブルは破裂するが、政府債務は実質的に返済不要なので資産を大きく売却する可能性は低い。中銀は足元でインフレ対策として資産の売却を始めているが、インフレが落ち着けば売却をやめるので、バブルが完全崩壊する可能性は低い。


■金融政策、財政政策
・世界中の中銀がインフレ対策で金融引き締めを行っている。ただ日本や中国など一部の中銀は金融緩和を続けている。

・日銀が金融引き締めをしないのは、日本のインフレ率が2%程度と低く、コストプッシュ型の悪いインフレのため。日銀は現在のような需要不足の状態(日経日経)で引き締めをすると景気後退に陥ると考えている。ただ、4~6月期は需要超過に転じたもよう(9/2日経)。この状態が続けば金融引き締めに転じる可能性がある。しかし需要超過は大きく上振れそうにはないので(2021/10/29)、引き締めに転じるとしても穏やかなものになりそう。

・日銀総裁に植田和男氏が就任した。植田氏はマクロ経済学(金融政策)のスーパースターだが、日銀は身動きの取れない状態に陥っているので、できることはあまりなさそう。とはいえ一番マシな選択肢を選んでくれるのではないかと思う。スーパースターの吉川洋氏も日銀に加わった(日経)。吉川氏は金融緩和に否定的なので、金融政策は徐々に引き締めにシフトしていきそう。

*米国や日本は現在、財政赤字拡大を容認する現代貨幣理論(MMT)のような金融・財政政策をしているが、歴史的には中銀の貨幣発行によって財政赤字の穴埋めをしてきた国は、インフレを制御できなくなり、投資や成長が著しく落ち込むという結果に終わっている。
*MMTとは自国通貨で借金をできる国は破産することがなく、高インフレを招かない限りは財政支出のしすぎを心配しなくてよいという政策。提唱者のケルトン教授によると、財政支出を拡大してインフラや教育、研究開発に投資すれば長期的に国の潜在成長率を高めることができ、財政赤字を縮小できるという。高インフレ問題についてはインフレ防止条項(増税など)を入れておけば問題ないという。
*MMTで潜在成長率を高められなかった場合は、膨張した政府債務を国民が増税や高インフレで負担しなければならない。
*MMTで高インフレになった場合、中銀は金利をあまり引き上げられない。中銀のバランスシートの質はすでに劣化しており、そこで金利を上げたら自己資本がさらに劣化し、さらに金利が上昇するという悪循環に陥ってしまう。日銀は政策金利を1%まで上げると2年程度で債務超過に陥るとされる(日経日経)。FRBは政策金利を3.0~3.8%まで上げると金利収支が「逆ざや」に転じるとされる(日経ヴェリタス)。ECBも金利引き上げにより財務状態が危機的な水準に陥る可能性が高い。ヴェリタス
*MMTは日本が行っている金融・財政政策とは若干異なる。MMTは財政再建をそれほど重視せず、中央銀行を政府の支配下に置くが、日本の政策の場合は、政府は一応は財政再建を目指し、中央銀行は政府から独立している。


■政治
・日本の政治は比較的安定。ただ、日銀の財政ファイナンスにより財政のタガが緩んでいる。この調子でいくと近い将来財政破綻する。
・海外は不安定。ウクライナ紛争により、ロシアと西側の関係は当分冷え込みそう。
・米国と中国の覇権争いは、ハイテク・軍事分野を中心に長期にわたり続きそう。
*米中貿易戦争が激化・長期化すると、貿易環境に強い不透明感が生じ世界的に投資が落ち込む。米中貿易摩擦の最大の敗者は、貿易依存度が高い日本やアジア、ユーロ圏ともいわれる。
・中国は政府が「共同富裕」のスローガンを掲げ規制を強化しているので、民間の活力がそがれつつある。日経日経8/2日経8/16日経
・EU域内では財務格差が広がりつつあるが、コロナ危機やウクライナ紛争などの危機でEU加盟国の結束は強まっており、政治は比較的安定している。


■その他の景気後退シグナル
・米景気の先行指標である米住宅着工件数はピークアウトはしているが依然高水準にある。
*景気拡大期の終盤に入ると、消費者はまず住宅や自動車などの大型耐久消費財の購入を手控えるようになる。
・米個人消費の先行指標である9月の消費者信頼感指数は103.0とそこそこな水準にある。同指数が80を下回ると景気後退のリスクが高まる。
・米景気の先行指標である米ISM製造業景況指数は低下傾向で47.6と10ヶ月連続で中立水準を下回っている。米経済の牽引役である米ISM非製造業指数は54.5と中立水準を上回っているが、下降トレンドになっている。もうじき50を下回るかもしれない。
*ISM指数やPMI指数が45を下回るか、50割れの期間が半年を超えるとデフォルトが増えやすくなる。
ユーロ圏のPMIは43.4。好不況の分かれ目である50を15カ月連続で下回っている。
・世界景気の先行指標である中国製造業PMIは49.7とほぼ中立な水準。基調としては横ばい傾向。
・世界景気の先行指標である銅価格はピークアウトしているが、高値圏で推移している。
・世界景気の先行指標である半導体指数(SOX指数)は2022年10月頃に底を打ち、大きく反発している。ただ現在の上昇は世界景気の回復を予兆するものではなく、単なるAIブームの可能性がある。
米国の失業率は減少傾向で現在は3.8%。ほぼ「完全雇用」の水準(3.5%)にある。
*米国では失業率が前年同月と比べて0.25%上がると景気後退に陥るとされる。
*米失業率が「完全雇用」の水準まで下がると賃金上昇により企業収益が圧迫され、労働力不足で経済成長は頭打ちになる。
*米株が安定的な回復基調になるのは失業率がピークを打って低下し始めた後になる。日経
・米景気の先行指標であるダウ輸送株ラッセル2000は高値圏で推移している。
・経済危機をいち早く察知する米低格付け債の利回りは高止まりしている。
・米国で「長短金利の逆転」「社債スプレッド(社債利回りと国債利回りとの差)の拡大」「物価上昇」のうち、2つが起きたら景気後退に陥るとされる。現在は3つ起きている。
*社債スプレッドが1%増加すると株式を7%下落させる効果があるとされる。参照


■その他の株式シグナル
米個人投資家の心理は株価の先行指標になる。個人投資家の心理は株式市場の「逆指標」になるとされ、「悲観」の場合は大底、「楽観」の場合は天井を示唆することが多い。この指標が「異常な弱気」を付けた後の6~12ヶ月は平均以上の株価上昇になりやすい(日経)。現在は「弱気」に傾きつつある。

ブルベア指数も米個人投資家の心理を示し、株価の先行指標になる。現在は-13.15%と「弱気」に傾きつつある。

投資家の強欲と恐怖指数も株価の先行指標になる。この指標が「Extreme Fear(極度の恐怖)」となっている場合は、すでに株価にほぼすべての悪材料が織り込まれていることが多く、株価は好材料に反発しやすくなる(東洋経済)。現在は29で「Fear」の状態。

米VIX指数(変動率指数、別名「恐怖指数」)も株価の先行指標になる。この指標が低位にある場合は「楽観」を意味し、株価が上昇しやすくなる。しかし、低位の状態が続くと投機的売買が盛んになり、その後株価が急落することが多い。現在のVIX指数は17.34と比較的低位な水準にある。

・1871年以降の米国の平均的な景気後退期間は16.7ヶ月になる。株式は景気に6ヶ月先行するので、景気後退が始まって10ヶ月くらいたった頃が仕込み時になる。日経

・景気後退入りすると最初の数ヶ月間に株価が大きく下落する傾向がある。景気後退入りして最初の4ヶ月間のどこかで株式を買った場合、その後6ヶ月間のリターンはマイナスに終わる可能性が高い。景気後退入りから5~14ヶ月の間に株式を買った場合は、その後6ヶ月の投資リターンはプラスになりやすい。ヴェリタス


■その他の指標
・日経平均の騰落レシオは110とやや過熱の水準。
・日本株の信用評価損益率は-8.93%とやや買われすぎの水準。
・先進国の株価チャートは高値圏でもみ合っている状態。

<NYダウの5年チャート> 累積売買高の「天井」をやっと超えたと思ったら、また下回りそうな感じ。

<ナスダックの5年チャート> チャート的にはどっちに振れてもおかしくない感じだが、コロナ過以降、NYダウもナスダックも出来高が急増し、高水準を維持している。これはおそらく過剰流動性(金余り)の表れであり、この状態は今後も維持されそうなので、なんらかのショックが起きても、株価はそれほど落ちないのかもしれない。

<銅の5年チャート> 世界景気の先行指標である銅チャートが大きな三角持ち合いを形成している。これがどちらに振れるかで、世界景気の行方がわかりそう。

<銅の10年チャート> ファンダメンタルズ的には下振れてもよさそうだが、一目均衡表的には上振れそう。

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