2017年4月28日金曜日

「経済は機械のように動く」YouTube編

レイ・ダリオ作「経済は機械のように動く」(日本語版)の動画があったので見てみた。一見わかりやすそうに見えたが、なかなかわかりにくかったので、書いて整理していく。

導入はこんな感じ。
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「これは 型破りな考え方だが30年以上たって確かな効果が証明され、私はそれにより金融危機を予知して避けることができた 」 レイ・ダリオ
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■経済の仕組み
経済とは取引の積み重ねによるものである。取引とは買い手がお金やクレジットを提供し、それと引き替えに売り手は物品やサービス、資産などを提供するものである。

取引において買い手と売り手の最大手は政府機関になり、政府機関は政府と中央銀行の2つに分けられる。政府の役割は税金を徴収しお金を支出することであり、中央銀行の役割はお金とクレジットの総量をコントロールすることである。

クレジットはお金の15倍以上流通しており、しかも変動が大きいため経済において最も重要な要素になる。しかし一番理解されてない要素でもある。
クレジットは借り手が元本に利子を加えて返済することを約束し、買い手がそれを信じた時に発生する。クレジットが発生すると借金が発生する。
*クレジットは「信用」「信用貸し」の意味で使われている

借り手がクレジットを得ると支出を増やすことができる。支出は他の人の収入となるので、支出を増やすと他の人の収入が増えることになる。それが巡り巡って自分の収入が増えると信用力が増すためもっと借りられるようになる。そしてさらに支出を増やして、他の人の収入が増えて・・という循環が生まれる。この循環が経済を押し上げていく。

クレジットのない経済では支出を増加させるには所得を増加させるしかなく、所得を増やすには生産性を上げるか労働時間を増やすしかない。このような環境では生産高の成長が経済成長そのものになる。しかしクレジットがあると所得以上に支出を増やすことができ、それを投資にも回す事ができるので、借金をテコに経済成長率を上げることができる。

経済が好循環に入り所得が増え、資産価値が上がり、株価が高騰していくと、お金を借りてさらに資産やモノを買うのが良策になる。これがさらに資産価値を押し上げクレジットが増して・・という循環になり景気が過熱していく。

この調子で数年たつと借金は大きくなり返済額が増えてくる。やがて返済額が収入を上回るようになり、返済のために支出を減らすときがくる。
一方で、支出や収入が生産高より早いペースで増えていくと価格が上昇しはじめる。価格の上昇はインフレを招き、中央銀行はインフレを抑制するために金利を上げていく。金利が上がるとお金を借りにくくなり、既存の債務コストも増えるため、このためにも支出は減っていく。

支出は他の人の収入でもあるため、全体的に収入が減っていく。また支出が減ると価格が下がるため経済活動は縮小していく。
このようにして不景気になりインフレの問題が解消されると、中央銀行は金利を下げ、再び貸し出しと支出が増え好景気へ向かっていく。

このような借り入れによる支出とその返済によって経済の波がつくられる。この波の周期はだいたい5~8年になる。そしてこの債務周期の波は何十年にもわたって繰り返されていく。ここで注目すべきなのは債務は波をつくりながらその総量が徐々に増えていくこと。債務の総量が増えていくのは、人間はもともと債務を返済するより借入と支出を増やす傾向があるため。債務は所得より早いペースで増大していき、75-100年でピークに達する。アメリカではそのピークが1929年と2008年に来ている。

この長期周期のピークから経済が下落するときは通常の不景気とは異なる現象が起こる。通常の不景気ならば金利を引き下げれば借りる金額が増えて景気は押し上げられるが、この状態では金利はすでに0%に達しており、それ以上引き下げることができなくなっている。借り手は返済不可能な程の膨大な債務を抱えており、クレジットは消滅しているため、貸し手は貸すことができない。結果、支出が減り、そのため所得もへり、資産価格は急落し、市場は売りに出される資産であふれかえる。不動産価格も落ち、担保の価値も減るので、借り入れがさらに難しくなるという悪循環に陥る。


■このようなときの膨大な債務を減らすにはどうしたらよいか
1,支出を減らす
まずは支出を減らしその分を返済にまわしていく。
しかしこれをすると債務負担率(収入に占める債務返済額の割合)は増えていってしまう。なぜなら支出が減ると他の人の所得も減ってしまい、巡り巡って自分の所得も債務返済額よりも早いペースで減ってしまうから。
企業においては支出を減らすために雇用を減らすので失業が増えていく。

2,債務を再編する
貸し手は相手が返済できないとわかると、債権の消滅を避けるために債務の縮小や返済期間の延長に同意する。しかしこれをすると貸し手側の体力も奪われていく。

3,富裕層から資産を徴収する
政府は富裕層からお金を集めて、それ以外の人に再分配する。
しかしこれをすると貧困層と富裕層の間に軋轢が生まれ、社会不安が生じる。

4,中央銀行がお金を印刷する
普通の人がお金だと思っていたものは実際はクレジットで、クレジットが消滅している状態では、お金が不足することになる。金利がゼロまで低下している場合、お金を供給する唯一の方法はお金を印刷することになる。
*リーマンショック時には5000兆円あった不動産担保証券(関連する金融商品を含む)の価値が一時的にゼロになった。

中央銀行はお金を印刷し、それで金融資産を買い市場にお金を供給する。そうすると金融資産を持っている人が真っ先に恩恵を受ける。
政府は中央銀行に政府の債権を買ってもらってお金を借り、そのお金で物品やサービスを購入して人々にお金を供給していく。国の赤字は増えてしまうが、国民の所得は増え債務総額を減らしていくことができる。

*お金を印刷するとインフレが起こると懸念されるが、それがクレジットの暴落を相殺する場合においてはインフレは起こらない。

政府がこの4つの方法をバランスよく行い実質経済を向上させることができれば、所得を債務より速いペースで増やすことができ、債務を返済していくことができる。

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