企業向け自動車情報ポータルサイトを手がける会社。サイトには自動車の生産・販売台数をはじめ、部品メーカー情報、技術・市場調査レポート、環境規制・法規制情報など、自動車産業に関連するあらゆる情報が網羅されている。英語や中国語にも対応しグローバルで展開。有料会員の約半数は海外企業になる。
2019年12月期の売上高は23.8億円で営業利益は8.7億円(営業利益率36%)。
売上高の内訳は大きい順に
情報プラットフォーム事業 17.5億円
コンサル事業 2億円
プロモーション・部品調達代行事業など 1.8億円
市場予測情報販売事業 1.3億円
人材紹介事業 1.2億円
になる。売上高の伸び率は情報プラットフォーム事業が前期比+11%で、それ以外の「プラットフォーム関連事業」が前期比+34%になる。
2020年12月期の予想売上高は29億円(前期比+22%)、営業利益は10億円(前期比+14%)になる。
■成長ストーリー
「最強の自動車情報プラットフォームに」が基本シナリオ。
現在、自動車業界ではCASE(つながる、自動運転、シェアリング、電動化)というキーワードを軸に「100年に1度」の大変革が起きており、自動車業界にはこれまで自動車とあまり関わりのなかった通信やAI、IOT企業などが新規参入してきている。また動力源も多様化しており、従来のガソリンやディーゼルに加えて、EV(電気自動車)、燃料電池車、HVなどが登場してきている。このような大きな変化が起きているときに最も重要になるのは情報になる。マークラインズは自動車業界で中核の情報プラットフォームになることを目指している。
そうなるための戦略は主に3つ。まず1つ目が海外市場の開拓になる。マークラインズの潜在顧客は日本が約7000社、海外が約9万社になるので、海外市場の開拓が重要になる。海外ではすでに5拠点(米国、中国、ドイツ、インド、タイ)に営業所を設けており、今後はここへの投資を強化して営業機能や調査能力を高めていくという。第1四半期にはドイツと中国の営業所を移転・増床している。サイトの一部では韓国語、タイ語、スペイン語、ドイツ語などにも対応し始めており、アクセス数は増加傾向にあるという。
2つ目はCASE関連企業の取り込み、になる。今後自動車の付加価値は「車体」から「サービス、ソフトウェア」に移行していくので、自動運転やシェアリング関連の会社を取り込んでいくことが重要になる。マークラインズの会員はすでに業種的な広がりができつつあり、日本の通信大手3社や中国のファーウェイなども顧客になっているという。
3つ目が関連事業の拡大になる。ネットビジネスには成功するための3つのCがあるという。まず1つ目のCがコンテンツで、これは「良質なコンテンツを作る」という意味になる。2つ目のCがコミュニティで、「多くの会員が集まるコミュニティを作る」、3つ目のCがコマースで、「多くの会員が集まったコミュニティで多彩なサービスを提供していく」という意味になる。マークラインズは2018年にようやくこのコマースの段階にたどり着いたので、今後はコマース(プラットフォーム関連事業)に力を入れていくという。
関連事業にはコンサル事業や市場予測調査、部品調達代行、人材紹介などあるが、これらの事業は年率30%超の勢いで伸びている。
「情報プラットフォーム」で扱う情報コンテンツも引き続き強化していくという。現時点では予測調査に強い英LMCオートモーティブ、自動運転調査に強い米VSI、調査会社の米HISオートモーティブ、分解調査に強いMunro社などと提携し、レポートなどを販売しているが、今後も各調査会社との提携を増やしていくという。
社長は「プラットフォームは規模の経済が働きやすいので今後業績の伸びは加速していくだろう」と語っている。
■問題点
・海外への投資が弱い
マークラインズは海外市場を開拓するとは言っているが、海外へ積極的に投資をしているようには見えない。マークラインズの従業員数は現在140人くらいいるが、日本要員は約100人で、海外には40人くらいしかいない。海外には5拠点あり、単純計算すると1拠点当たり約8人になる。8人でいったい何ができるのかと思う。
経営幹部に外国人(中国人)が2人しかいないのも問題で、本気で海外に攻め込もうとしているようには見えない。
それ以前の問題として、投資自体が少ない。2019年12月期の投資キャッシュフローはわずか1100万円しかない。そして配当性向は40%を維持している。この会社のお金の使い方を見ていると、今後力強く成長していけるようには見えない。
・プラットフォーム機能が弱い?
マークラインズの「情報プラットフォーム」は、情報や部品の売り手と買い手をダイレクトにマッチングさせる作りにはなってないようなのでプラットフォームとしての機能が弱そう。社長は「自社サイトを顧客にとってなくてはならないものにしていきたい」と語っているが、現時点ではその段階には達してないように見える。
情報収集はマークラインズの社員がメーカーなどに直接聞き取り調査などをして集めているようだが、そのようなやり方では集められる情報はたかが知れているし、即時性にも欠ける。マークラインズの「プラットフォーム」に部品メーカーや調査会社などが直接情報を入力できる仕組みにすれば自然と情報が集まるとは思うのだが、今のところそのような仕組みを作ろうとしている気配はない。
*実際にマークラインズのサイトを使ったことがないので詳細は不明。要調査。
・アクセス数が減少してる?
昨年11月から新規会員数の伸びが前年同月比減となっている。これはグーグルの検索エンジンに新AIアルゴリスズム「BERT」が導入された影響かもしれない。マークラインズは情報サイトを主業としているのでアクセス数の落ち込みは致命傷になり得る。
*2月の新規会員数は4ヶ月ぶりに前年同期比でプラスになっているが、これはアクセス数が回復したためか、コロナショックで情報需要が増加したためなのか、どちらなのかわからない。
2018年7月にも「アルゴリズムショック」が起きてるが、そのときはインデックスページ(見せるページ)を5倍に増やすなどしてアクセス数を回復させている。今回もSEO(検索エンジン最適化)対策を実施しているとは思うが、「BERT」にはこれまでのような小手先のテクニックは効かない可能性もある。アクセス数の回復にはやや不透明感が漂う。
それとマークラインズはアクセス数の推移を、問題が起こったときにしか公開してないのも問題。
・社風に問題がある?
従業員の口コミには「ワンマン経営」というコメントが目立つ。また「離職率が高い」「キャリアアップは望めない」「売上至上主義」などの口コミもあり、最近まで労働訴訟を起こされていたようなので、企業風土はあまりよくないのかもしれない。このような状態では優秀な人材は集まりにくそう。
・景気後退の影響を受ける
情報投資は基本的には数年先を見据えてするのもなので、多少の景気後退では落ちにくいという性質がある。しかし2008年の金融危機後には2年連続で減収減益となっている。世界の自動車の新車販売台数は2017年にすでにピークアウトしているので、今後業績が下振れていく可能性がある。
・地合いが悪い
中小型株指数はすでにピークアウトしているので、今後の相場環境はあまりよくない。
・自動車業界では企業が減っていく?
今後、自動車はシェアリングやライドシェアなどでコモディディ化していくといわれている。また電動化により部品数が10分の1に減り、工場の自動化により働く人も減っていくともいわれている。もしそうなれば、自動車メーカーや部品メーカーの淘汰が進んでいき、マークラインズの顧客も減っていく可能性がある。しかしデロイト・トーマツの予測では「自動車産業の総付加価値は2015年の450兆円から2030年には630兆円まで拡大する」とのことなので、マークラインズが良質な情報・サービスを提供し続けるかりぎりは、それほど問題ないのかなと思う。
*参照:『週刊エコノミスト 2020年 1/28号』「自動車革命で伸びる会社」
■利益成長を続けやすいビジネスモデルか ★★★(3.3)
・参入障壁は高いか。★★★★。社長は「競合はおらず、18年間かけて作ったサイトなので簡単には真似できない」と語っているのでそこそこ高そう。
・ストック型ビジネスか。★★★☆。会員事業なので基本的にはストック型になる。ただプラットフォーム機能が弱く、顧客にとってなくてはならないという感じではなさそうなので、強固な顧客基盤とはいえないのかもしれない。
・時流にのっているか。★★☆。ネットでの情報提供サービスは今のトレンドになるが、投資が弱いので時流には乗り切れてないように見える。
■チャート
<5年チャート> 特に問題はなさそうだが、1年チャートでは200日線を割っているので、しばらく上値の重い展開が続きそう。
■まとめ
ビジネスモデルはそこそこ強そうなので業績が急落することはなさそうだが、投資が弱いので今後の力強い成長は期待しにくい。買い増しはなし。しばらく様子見。
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